特許第6181742号(P6181742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許6181742-HEVアッセイ 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181742
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】HEVアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170807BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-506198(P2015-506198)
(86)(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公表番号】特表2015-517810(P2015-517810A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】EP2013057783
(87)【国際公開番号】WO2013156432
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年1月20日
(31)【優先権主張番号】61/625,816
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ライイング,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,トーマス・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ルスマン,エーバーハルト
(72)【発明者】
【氏名】サン・フィリッポ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シェーンブラナー,ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルツ,ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シヤオニーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,カレン・クオック・イーン
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン,ディルク
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−289195(JP,A)
【文献】 特開2007−222092(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/009260(WO,A1)
【文献】 特表2009−536825(JP,A)
【文献】 特表2005−511096(JP,A)
【文献】 Journal of Medical Virology,2006年,Vol.78,p.1076-1082
【文献】 Journal of Clinical Microbiology,2011年,Vol.49, No.4,p.1339-1346
【文献】 Journal of Clinical Virology,2011年,Vol.52,p.50-54
【文献】 Journal of Virological Methods,2006年,Vol.131,p.65-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中に存在する場合にHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に増幅するための方法であって、以下の工程:
(a)該生物学的試料中に存在する核酸を単離し;
(b)工程(a)において単離された核酸を1種類の非縮重順方向プライマーおよび種類の非縮重逆方向プライマーの混合物を用いて増幅し、ここで該順方向および逆方向プライマーはHEVの遺伝子型1、2、3、および4を増幅することができる;
を含み、ここで該順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6を含み、そして該逆方向プライマーの混合物の核酸配列はSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14を含む、前記方法。
【請求項2】
順方向プライマーの核酸配列がSEQ ID NO:6からなり、2種類の逆方向プライマーの混合物の核酸配列がSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の核酸が固相への結合により単離される、請求項1または記載の方法。
【請求項4】
さらに増幅された核酸をプローブと該プローブの該増幅された核酸への結合に十分な条件下で接触させることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
プローブが核酸配列SEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列の少なくとも22〜35個の連続したヌクレオチドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プローブの核酸配列がSEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列から選択される配列からなる、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
プローブの核酸配列がSEQ ID NO:15〜18または25から選択される配列からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記のプローブが該プローブの5’末端に連結された蛍光体およびクエンチャーを含み、蛍光体およびクエンチャーの間の間隔が少なくとも9ヌクレオチドを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
順方向プライマーおよび種類の逆方向プライマーの混合物を含むプライマーのセットであって、該順方向プライマーの核酸配列がSEQ ID NO:6を含み、逆方向プライマーの混合物の核酸配列SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14を含む、前記プライマーのセット。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドのセットであって、前記のセットが請求項9記載のプライマーのセットおよび1種類のプローブからなり、前記のプローブが核酸配列SEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列の少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む、前記オリゴヌクレオチドのセット。
【請求項11】
前記のプローブが該プローブの5’末端に連結された蛍光体およびクエンチャーを含み、蛍光体およびクエンチャーの間の間隔が少なくとも9ヌクレオチドを含む、請求項10に記載のオリゴヌクレオチドのセット。
【請求項12】
生物学的試料中に存在する場合に遺伝子型1、2、3および/または4を同時に検出するための、請求項9〜11のいずれか1項に記載のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのセットの使用。
【請求項13】
鋳型依存性DNAポリメラーゼ、ヌクレオチドおよび請求項9〜11のいずれか1項に記載のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのセットを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEV感染を検出するための診断検査、プライマーセット、オリゴヌクレオチドセットおよびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
HEV感染は結果として急性疾患であるE型肝炎をもたらす。HEVはヘペウイルス科(Hepeviridae)に分類される非エンベロープ型、一本鎖、プラス鎖(positive sense)RNAウイルスである。ヒトにおいて感染症を引き起こすHEVの4つの主な遺伝子型:遺伝子型1、2、3および4が存在する。HEVに関する診断検査は、急性肝炎の他の原因が排除されている人々にとって重要である。
【0003】
HEVの異なる領域がHEVに関する核酸に基づく検査の設計のために用いられてきた。HEVのORF2およびORF3が核酸増幅によりHEVを検出するために主に用いられてきた。特許第04080995号および特許第04127722号は、HEVの5’UTR中に部分的に位置するプライマーに基づくネステッドプライマー増幅アプローチのための多数の縮重位置(degenerate positions)を有する縮重プライマーの使用を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第04080995号
【特許文献2】特許第04127722号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、以下の工程を含む、生物学的試料中に存在する場合にHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に増幅するための方法に関する:
(a)その生物学的試料中に存在する核酸を単離し;
(b)工程(a)において単離された核酸を1種類の非縮重順方向プライマーおよび少なくとも1種類の非縮重逆方向プライマーを用いて増幅し、ここでその順方向および逆方向プライマーはHEVの遺伝子型1、2、3、および4を増幅することができ、
ここでその順方向プライマーの核酸配列はSeq ID NO:6を含み、かつ1種類以上の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7〜14から選択される配列を含む。
【0006】
1観点において、本発明は順方向プライマーおよび少なくとも1種類の逆方向プライマーを含むプライマーのセットに関し、ここでその順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6を含み、かつここでその少なくとも1種類の逆方向プライマーの核酸配列またはその逆方向プライマーはSEQ ID NO:7〜14からなる群から選択される。
【0007】
1観点において、本発明はオリゴヌクレオチドのセットに関し、ここで前記のセットは本明細書で記載されるようなプライマーのセットおよび1つのプローブからなり、ここで前記のプローブは核酸配列SEQ ID NO:15〜19またはそれらの相補配列の少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む。
【0008】
1観点において、本発明は、生物学的試料中のHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に検出するための本明細書で記載されるようなプライマーまたはオリゴヌクレオチドのセットの使用に関する。
【0009】
1観点において、本発明は、鋳型依存性DNAポリメラーゼ、ヌクレオチドおよび本明細書で記載されるようなプライマーまたはオリゴヌクレオチドのセットを含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は液体試料からの核酸の単離のための作業の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下の工程を含む、生物学的試料中に存在する場合にHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に増幅するための方法に関する:
(a)その生物学的試料中に存在する核酸を単離し;
(b)工程(a)において単離された核酸を1種類の非縮重順方向プライマーおよび少なくとも1種類の非縮重逆方向プライマーを用いて増幅し、ここでその順方向および逆方向プライマーはHEVの遺伝子型1、2、3、および4を増幅することができ、
ここでその順方向プライマーの核酸配列はSeq ID NO:6を含み、かつ1種類以上の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7〜14から選択される配列を含む。
【0012】
1つの特定の態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6を含み、かつその少なくとも1種類の逆方向プライマーの核酸配列(単数または複数)はSEQ ID NO:7〜14からなる群から選択される。別の特定の態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6を含み、かつ2種類の逆方向プライマーの混合物の核酸配列はSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14を含む。別の特定の態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、かつその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7を含む。別の特定の態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、かつその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:13を含む。別の特定の態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、かつその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:11を含む。
【0013】
その方法は、HEVの遺伝子型1、2、3および4を単一反応で同時かつ効率的に増幅することができる利点を有する。
1つの特定の態様において、その核酸は固相への結合により単離される。
【0014】
1つの特定の態様において、その方法はさらに、その増幅された核酸をプローブと、そのプローブのその増幅された核酸への結合に十分な条件下で接触させることを含む。その1つの特定の態様において、そのプローブは核酸配列SEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列の少なくとも22〜35個の連続したヌクレオチドを含む。1つの特定の態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列から選択される配列からなる。その1つの特定の態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:15〜18もしくは25またはそれらの相補配列から選択される配列からなる。1つの特定の態様において、前記のプローブはそのプローブの5’末端に連結された蛍光体およびクエンチャーを含み、ここで蛍光体およびクエンチャーの間の間隔は少なくとも9ヌクレオチドを含む。
【0015】
その方法のさらなる特定の態様を下記に記載する。
本発明は、以下の工程を含む、生物学的試料中に存在する場合にHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に検出する方法にも関する:
(a)その試料中に存在する核酸を単離し;
(b)工程(a)において単離された核酸を1種類の非縮重順方向プライマーおよび少なくとも1種類の非縮重逆方向プライマーを用いて増幅し、ここでその順方向および逆方向プライマーはHEVの遺伝子型1、2、3、および4を増幅することができ、
ここでその順方向プライマーの核酸配列はSeq ID NO:6を含み、1種類以上の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7〜14から選択される配列を含み、
そして
(c)工程(b)において得られた増幅された核酸を、その生物学的試料中のHEVの遺伝子型1、2、3および/または4の少なくとも1つの存在の指標として検出する。
【0016】
用語“検出すること”は、本明細書で用いられる際、増幅された核酸の存在と相関するシグナルの検出に関する。検出は定量的または定性的であってよい。その増幅された核酸の検出は、その生物学的試料中のHEVの遺伝子型1、2、3および/または4の少なくとも1つの存在の指標を提供する。
【0017】
用語“同時検出”は、本明細書で用いられる際、単一反応混合物中のHEVの異なる遺伝子型を検出するための方法の設計に関する。これは、その方法において用いられるプライマーおよびプローブの配列が、その試料中に存在する場合に同時に検出されるべき遺伝子型の全てに関して適度な検出シグナルを生成することができることを必要とする。当然、1つの遺伝子型のみが試料中に存在する場合、その方法は、たとえそれが単一反応でGT1、GT2、GT3および/またはGT4の1つより多くを検出することができるとしても、その1つの遺伝子型のみを検出するであろう。
【0018】
いくつかの遺伝子型(以下GTと略す)の同時検出は、全ての遺伝子型の検出を可能とする増幅のための非縮重プライマーおよびプローブを設計するのに適した高度に保存された領域が利用可能でない限り、しばしばその必要とされる遺伝子型のすべてが検出されることを確実にするために縮重プライマーおよびプローブの使用を必要とする。そのような領域を常に同定することができるとは限らない。先行技術は、5’UTR以外の領域、例えばカプシド領域を、HEVを検出するためのアッセイを設計するために適したものとして同定した。上記で引用した先行技術の参考文献は縮重プライマーの使用を提案し、その一部は3個より多くの縮重位置を含み、従ってそれはネステッドプライマーアプローチに関して5’UTR領域から高度に縮重している。高度に縮重したプライマーに関する要求およびネステッドPCRを実施する必要性は、5’UTRの検出に基づく先行技術で開示された方法がORF2またはORF3の保存された領域からのプライマー配列を用いる方法ほど高感度ではないことを示唆している。用語(ter)“5’UTR”は、本明細書においてHEVの5’UTR配列と少なくとも部分的に重複している標的配列、プライマーおよびアンプリコンに関して用いられている。
【0019】
用語“生物学的試料”は、それに対して核酸を標的とする診断アッセイを行うことができ、通常生物学的な源に由来する物質に関する。一部の態様において、前記の生物学的試料はヒトに由来し、体液である。本発明の1態様において、その生物学的試料はヒトの血液、血漿、血清、尿、痰、汗、スワブ、ピペットで扱える便、または髄液である。その生物学的試料は、それから標的核酸を抽出することができる組織であることもできる。
【0020】
用語“非縮重”は、本明細書で用いられる際、全ての位置が単一のヌクレオチドにより定められる、すなわちA、G、TまたはCのどれかであるプライマーまたはプローブ核酸に関する。非縮重プライマーまたはプローブは当該技術で周知の方法を用いて化学合成され、精製することができる。
【0021】
用語“縮重”は、本明細書で用いられる際、特定の位置が単一の特定のヌクレオチドにより定められないプライマーまたはプローブ核酸に関する。従って、そのような縮重位置において、そのプライマーまたはプローブ配列は少なくとも2種類の異なるヌクレオチドのどれか1つであることができる。そのような位置はしばしばその標的核酸の遺伝子型における違いを表す。縮重配列は、この発明の目的のために少なくとも2つの位置において異なる多数の非縮重の個々の配列を混合したものとして表されてもよい。
【0022】
非縮重プライマーおよびプローブの使用はいくつかの利点を有する。1つの利点は、非縮重プライマーを用いて4つの遺伝子型を検出することにより、ミスプライミングの、縮重プライマー組成物中の異なる配列間の競合の危険性、およびその増幅の感度が改善されることである。従って、多数の遺伝子型を検出するために少なくとも単一の非縮重の順方向または逆方向プライマーを用いることが望ましい。相補プライマー(順方向プライマーが非縮重である場合は逆方向プライマー、または逆方向プライマーが非縮重である場合は順方向プライマー)は少なくとも1種類の非縮重プライマーを含んでいてよい。
【0023】
用語“プライマー”または“プローブ”は、本明細書で用いられる際、オリゴヌクレオチド配列に関する。この発明の文脈において、用語“オリゴヌクレオチド”は、それらの単量体単位としての複数のヌクレオチドから形成された構成要素を指す。用語“オリゴヌクレオチド”には修飾オリゴヌクレオチドも含まれ、すなわちそのプライマーおよび/またはそのプローブは修飾ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含む。用語“プライマー”はさらに、増幅反応において用いられ、標的配列にアニールするようなオリゴヌクレオチドに関する。用語“プローブ”はさらに、定性的または定量的検出のどちらかの目的のために標的核酸またはアンプリコンにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列に関する。
【0024】
プローブの場合、修飾には色素、例えばFAM、HEX、JA270、CY5、CY5.5、クマリン等および/またはクエンチャー分子が含まれ得る。色素分子はリンカーに連結することができる。しかし、そのような色素はプライマー中に存在していてもよい。他の典型的な修飾には、3’末端のホスフェート基が含まれる。そのような色素分子および/またはクエンチャー分子は、標的とされる核酸の検出のために用いることができる。
【0025】
プライマーの一般的な修飾には、非特異的増幅産物、例えばプライマーダイマーを防ぐための3’ヌクレオチドの修飾が含まれる。そのような修飾は当該技術では周知であり、それには、限定的でない例として、t−ブチルベンジル−dAまたは−ブチルベンジル−dCが含まれる。そのような修飾も用語“プライマー”に含まれる。
【0026】
従って、用語“順方向プライマー”は、本明細書で用いられる際、核酸のセンス鎖をプライミングしてポリメラーゼがその標的核酸の1つの鎖に沿って1方向に伸長することを可能にする1つのプライマーを意味することが理解されており、用語“逆方向プライマー”は、核酸のアンチセンス鎖をプライミングしてポリメラーゼがその標的核酸の相補鎖に沿って1方向に伸長することを可能にするプライマーを意味することが理解されており、その結果1つの末端において順方向プライマー配列およびその相補配列を有し、反対側の末端において逆方向プライマー配列およびその相補配列を有する二本鎖アンプリコンが得られる。逆転写(RT)工程が最初に実施される反応では、その逆方向プライマーは逆転写のためのRTプライマーの役目も果たす。RT−PCRは当該技術で周知の技術である。1態様において、RT工程が実施される。
【0027】
1つの特定の態様において、1種類の非縮重順方向プライマーおよび少なくとも1種類の非縮重逆方向プライマーが用いられる。あるいは、1種類の非縮重逆方向プライマーおよび少なくとも1種類の非縮重順方向プライマーが用いられる。さらなる特定の態様において、1種類の非縮重順方向プライマーおよび2種類の非縮重逆方向プライマーの混合物が用いられる。あるいは、2種類の非縮重順方向プライマーおよび1種類の非縮重逆方向プライマーの混合物が用いられる。特定の態様において、その2種類の非縮重プライマーは単一のヌクレオチド位置においてのみ異なる。これは、異なる遺伝子型のヌクレオチド配列における違いを埋め合わせる(compensated)ことができ、その遺伝子型を単一反応で検出する一方で1個より多くの縮重の位置を有するプライマーを用いる不都合を避けることができる利点を有する。
【0028】
従って、1種類の順方向プライマーおよび少なくとも1種類の逆方向プライマーを用いる場合、単一の順方向プライマー配列を用いる一方で1種類以上の逆方向プライマー配列を用いることができることが理解されている。2種類の逆方向プライマーを用いる場合、2種類の逆方向プライマー配列の混合物が用いられる。あるいは、1種類の逆方向プライマーおよび少なくとも1種類の順方向プライマーを用いる場合、単一の逆方向プライマー配列を用いる一方で1種類以上の順方向プライマー配列を用いることができる。2種類の逆方向プライマーを用いる場合、2種類の逆方向プライマー配列の混合物が用いられる。
【0029】
用語“増幅すること”は標的核酸からの複数の核酸分子の生成に関し、ここでプライマーはポリメラーゼによる伸長のための開始部位を提供するためにその標的核酸分子上の特定の部位にハイブリダイズする。増幅は当該技術で一般的に知られているあらゆる方法により実施することができ、それは例えば標準的なPCR、ロングPCR、ホットスタートPCR、qPCR、RT−PCRおよび等温増幅法であるが、それらに限定されない。PCRの1つの態様はリアルタイムPCRであり、それは当該技術で周知であり、それは増幅および検出を組み合わせる。
【0030】
その方法の1観点において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:1〜6からなる群から選択され、少なくとも1種類の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7〜14からなる群から選択される。これらの順方向および逆方向プライマーの異なる組み合わせを用いて得られるヒット率を表3において示す。表5および表8は、本明細書で記載されるようなプライマーおよびプローブ配列がHEV遺伝子型GT1、GT2、GT3およびGT4を検出することを示している。1つの具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:1、2、3、4または6である。より具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:2、3、4または6である。より具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:3、4または6である。具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6である。
【0031】
具体的な態様において、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7、8、9、10、11、13または14からなる。より具体的な態様において、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:8、9、10、11、13または14である。より具体的な態様において、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:9、10、11、13または14である。具体的な態様において、その2種類の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14からなり、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなる。別の具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:11からなる。別の具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:13からなる。別の具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなり、その逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7からなる。
【0032】
1観点において、存在する場合にGT1、GT2、GT3および/またはGT4の少なくとも2つを単一反応で同時に検出することができる。1つの具体的な態様において、存在する場合に少なくともGT1、GT2、GT3およびGT4を単一反応で同時に検出することができる。さらなる具体的な態様において、存在する場合にGT1、GT2、GT3およびGT4を単一反応で同時に検出することができる。
【0033】
1観点において、その方法はさらに核酸を単離することを含み、ここで前記の核酸の単離は工程(b)に先行し、かつここで前記の単離された核酸が工程(b)で増幅される。
用語“核酸を単離すること”は、溶解として知られる核酸の細胞またはウイルス粒子からの放出の後その核酸の濃縮(enrichment)を行うことに関する。そのような単離は増幅に関するその標的核酸のプライマーへの利用可能性を増大させ、その試料中に存在し得るその後の増幅反応の可能性のある阻害物質も除去する。1つの具体的な態様において、前記の核酸は固相への結合により単離される。核酸を結合させるための1つの有用な手順は、カオトロピック塩溶液中での核酸の例えば磁性粒子のような結合粒子のガラス表面への選択的結合およびその核酸の混入物質、例えばアガロース、タンパク質または細胞破壊片からの分離を伴う。一部の態様において、その粒子のガラスは国際公開第96/41811号において記載されているゲルゾルプロセスを用いて形成され、次いで乾燥および圧縮される。
【0034】
1つの具体的な態様において、その方法はさらに、工程(b)および(c)の間に(b1)その増幅された核酸をプローブのその増幅された核酸への結合に十分な条件下でプローブと接触させる工程を含み、
ここで前記の工程(c)における接触は以下の工程を含む:
その増幅された標的核酸およびそのプローブの間の結合生成物を、その生物学的試料中のHEVの遺伝子型1、2、3および/または4の少なくとも1つの存在の指標として検出する。
【0035】
1つの具体的な態様において、そのプローブは非縮重核酸配列を有する。これは、再び、ハイブリダイゼーションの間のミスプライミングまたは縮重プローブのプローブ分子間の干渉が回避され、検出の感度が向上する利点を有する。そのプローブは、順方向および逆方向プライマー(単数または複数)を用いる増幅により生成されるアンプリコンの配列にハイブリダイズすることができなければならない。具体的な態様において、そのプローブはそのプライマーの配列と重複しないアンプリコンの配列にハイブリダイズすることができる。そのアンプリコンはその順方向および逆方向プライマー(単数または複数)を用いる増幅の少なくとも1つの工程の産物に関連することが理解されている。
【0036】
1観点において、そのプローブは核酸配列SEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列の少なくとも22〜35個の連続したヌクレオチドを含む。
1つの具体的な観点において、そのプローブはSEQ ID NO:15〜19もしくは25またはそれらの相補配列から選択される核酸配列を有する。これらのプローブのHEV遺伝子型の検出における性能を表4において示す。1つの具体的な態様において、そのプローブはSEQ ID NO:15〜18から選択される核酸配列を有する。さらなる具体的な態様において、そのプローブはSEQ ID NO:15および18から選択される核酸配列を有する。
【0037】
本明細書で記載される方法、プライマーのセット、オリゴヌクレオチドのセットおよびキットの具体的な態様は、以下のプライマー核酸配列の組み合わせを含む:SEQ ID NO:8、10、11、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:1;SEQ ID NO:8、9、10、11、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:2;SEQ ID NO:7、8、9、10、11、12、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:3;SEQ ID NO:7、8、9、10、11、12、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:4;SEQ ID NO:10、11、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:5;SEQ ID NO:7、8、9、10、11、12、13または14と混合した13と組み合わせたSEQ ID NO:6;SEQ ID NO:3または4または6と組み合わせたSEQ ID NO:7;SEQ ID NO:2、3または4または6と組み合わせたSEQ ID NO:8;SEQ ID NO:2、3、4、5または6と組み合わせたSEQ ID NO:9;SEQ ID NO:1、2、3、4、5または6と組み合わせたSEQ ID NO:10;SEQ ID NO:1、2、3、4、5または6と組み合わせたSEQ ID NO:11;SEQ ID NO:3または4と組み合わせたSEQ ID NO:12。順方向および逆方向プライマーの組み合わせの核酸配列のさらなる具体的な態様は、SEQ ID NO:7と組み合わせたSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:13と組み合わせたSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14と組み合わせたSEQ ID NO:6、ならびにSEQ ID NO:11と組み合わせたSEQ ID NO:6である。1つの具体的な態様において、その順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:6からなる。1つの具体的な態様において、その核酸配列がSEQ ID NO:6からなる順方向プライマーを逆方向プライマーと組み合わせ、ここでその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7からなる。別の具体的な態様において、その核酸配列がSEQ ID NO:6からなる順方向プライマーを逆方向プライマーと組み合わせ、ここでその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:13からなる。別の具体的な態様において、その核酸配列がSEQ ID NO:6からなる順方向プライマーを逆方向プライマーと組み合わせ、ここでその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:11からなる。別の具体的な態様において、その核酸配列がSEQ ID NO:6からなる順方向プライマーを2種類の逆方向プライマーの混合物と組み合わせ、ここでその逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14からなる。
【0038】
これらのプライマーのセット、これらのプライマーのセットが用いられる方法、およびこれらのプライマーのセットを含むキットの利点は、HEVの全ての4つの遺伝子型1、2、3、および4を単一反応で無関係な微生物との交差反応性なしで効率的に増幅および検出することができることである。さらなる利点は、その試験は、特定の非縮重配列を有する全てのオリゴヌクレオチドが合成され得るため、単純化されていることである。これはそのオリゴヌクレオチドの質ならびにその方法の感度および特異性を著しく向上させる。さらに、内部対照のオリゴヌクレオチドの他に、(プローブを含めて)3〜4種類のHEV特異的オリゴヌクレオチドしかHEVの全ての4つの遺伝子型を同時に検出するために用いられないため、異なるオリゴヌクレオチド間の交差反応性の危険性が最小限になっている。HEVの異なる遺伝子型を別々に同定する必要がないため、本発明の方法、プライマー、オリゴヌクレオチドのセット、およびキットは、HEVの4つの遺伝子型のいずれかが試料中に存在するかどうかを決定するために単一の検査のみを行うことができるため、対費用効果も高い。
【0039】
上記のプライマーの組み合わせの特定の態様は、さらにSEQ ID NO:15〜19および21からなる群から選択される核酸配列を有する1種類のプローブと組み合わせることができる。1つの具体的な態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:15〜18からなる群から選択される。さらに具体的な態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:15または18から選択される。1つの具体的な態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:15からなる。1つの具体的な態様において、そのプローブの核酸配列はSEQ ID NO:18からなる。
【0040】
表1A〜Cは、本方法、プライマー、プローブ、使用およびキットにより、5’UTRにおいて、カプシド(ORF2)領域における非縮重プライマーおよびプローブの使用と比較して、500cp/mlの標的を用いてGT3またはGT1、GT3およびGT4(GTは遺伝子型を意味する)を検出した場合により優れたヒット率が得られることを示している。
【0041】
HEVのGT1の5’UTRに関する代表的な配列はSEQ ID NO:38であり、HEVのGT2の5’UTRに関する代表的な配列はSEQ ID NO:39であり、HEVのGT3の5’UTRに関する代表的な配列はSEQ ID NO:40であり、HEVのGT4の5’UTRに関する代表的な配列はSEQ ID NO:41である。HEVのGT1のカプシドに関する代表的な配列はSEQ ID NO:42であり、HEVのGT2のカプシドに関する代表的な配列はSEQ ID NO:43であり、HEVのGT3のカプシドに関する代表的な配列はSEQ ID NO:44であり、HEVのGT4のカプシドに関する代表的な配列はSEQ ID NO:45である。
【0042】
1つの具体的な観点において、そのプローブはプローブの5’末端に連結された蛍光体およびクエンチャーを含み、ここで蛍光体およびクエンチャーの間の間隔は少なくとも9ヌクレオチドを含む。用語“間隔”は、蛍光体およびクエンチャーの間のヌクレオチドの数に関する。他の具体的な観点において、そのプローブは蛍光体およびクエンチャーの間に少なくとも10または少なくとも11または少なくとも12ヌクレオチドを含む。1つの具体的な態様において、そのプローブは蛍光体およびクエンチャーの間に12ヌクレオチドを含む。
【0043】
プローブに連結された蛍光体およびクエンチャーを用いる検出は、核酸のリアルタイム増幅に関する周知の検出法である。プローブの未結合状態における蛍光体およびクエンチャーの間のエネルギー移動は励起した蛍光体による蛍光の放射の消失をもたらす。ハイブリダイズした状態では、蛍光体およびクエンチャーが分離し、エネルギー移動が阻害され、結果として励起した蛍光体からの光の放射がもたらされる。蛍光体は、励起後に特定の波長の蛍光を放射する色素である。これらの色素は検出のために用いられている。蛍光体の例には、FAM、HEX、JA270、CY5、CY5.5、クマリン等が含まれる。蛍光体は5’核酸にリンカー分子を介して連結することができる。そのようなリンカー分子は当該技術で周知である。限定的でない例は、threo−HEX、threo−FAM、threo−JA270等である。クエンチャーはダーククエンチャー(Dark Quencher)の群に属していてよい。そのようなクエンチャーの限定的でない例は、Dabcyl、Eclipse、BHQ1、BHQ2、BBQ650、TAMRAである。1つの具体的な態様において、その蛍光体はFAMまたはthreo−FAMであり、そのクエンチャーはBHQ2である。
【0044】
表4および6は、蛍光体およびクエンチャーの間の間隔を大きくすることにより、非縮重プローブ配列を用いたGT4の検出に関するより優れたヒット率が得られることを示している。従って、1つの具体的な態様において、そのプローブはSeq ID NO:15〜Seq ID NO:18およびSEQ ID NO:25からなる群から選択される核酸配列からなる核酸配列を含む。
【0045】
1つの具体的な態様において、そのプローブは86位においてTを含む。表4〜6は、そのプローブのこの位置におけるCは3つの遺伝子型全ての検出を妨げることを示している。従って、1つの具体的な態様において、そのプローブはSeq ID NO:15〜Seq ID NO:18およびSEQ ID NO:25からなる群から選択される核酸配列からなる核酸配列を含む。
【0046】
1つの具体的な態様において、75位のヌクレオチドはAである。表4、6および7は、この位置にAを有するプローブはこの位置にGを有するプローブよりも優れたヒット率をもたらすことを示している。従って、1つの具体的な態様において、そのプローブはSEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:18からなる核酸配列を含む。
【0047】
上記の方法の1観点において、その方法はさらに、並行して、第2標的核酸を含有することが疑われる試料中の第2標的核酸の検出を含み、ここで前記の第2核酸はHEVが増幅および検出されない容器中で増幅および検出され、HEVは第2標的核酸が増幅および検出されない容器中で増幅および検出され、かつここで前記のHEVが増幅および検出される容器ならびに前記の第2標的核酸が増幅および検出される容器は同じ熱ブロック中に保持され、同一条件下でサイクルを適用される(cycled)。これは、異なる検査を同じバッチプロセスにおいて同時に運転することができるため、核酸検査システムのスループットの最適化を可能にする。
【0048】
1観点において、本発明は順方向および少なくとも1種類の逆方向プライマー、または少なくとも1種類の順方向プライマーおよび1種類の逆方向プライマーを含むプライマーのセットに関し、ここでその順方向プライマーまたは少なくとも1種類の順方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:1〜6からなる群から選択され、かつここでその逆方向プライマーまたは少なくとも1種類の逆方向プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7〜14からなる群から選択される。そのプライマーの具体的な態様およびそれらの利点は本明細書で開示されている通りである。
【0049】
1観点において、本発明はオリゴヌクレオチドのセットに関し、ここで前記のセットは本明細書で記載されるようなプライマーのセットおよび1種類のプローブからなり、ここで前記のプローブは核酸配列SEQ ID NO:15〜19またはそれらの相補配列の少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む。そのプライマーおよびプローブの具体的な態様ならびにそれらの利点は本明細書で開示されている通りである。
【0050】
1観点において、本発明は、生物学的試料中のHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に検出するための本明細書で記載されるようなプライマーのセットまたはオリゴヌクレオチドのセットの使用に関する。プライマーのセットまたはオリゴヌクレオチドのセットの使用の具体的な態様は本明細書で開示されている通りである。
【0051】
1観点において、本発明は、鋳型依存性DNAポリメラーゼ、ヌクレオチドおよび本明細書で記載されるようなプライマーのセットまたはオリゴヌクレオチドのセットを含むキットに関する。そのプライマーまたはオリゴヌクレオチドの具体的な態様は本明細書で記載されている通りである。
【0052】
本明細書で記載される方法に従ってHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を増幅する工程を含む、試料がHEVの遺伝子型1、2、3および/または4の1つ以上を含んでいるかどうかを決定するための方法も開示される。本明細書で記載されるように試料中に存在する場合にHEVの遺伝子型1、2、3および/または4を同時に検出する工程を含む、試料がHEVの遺伝子型1、2、3および/または4の1つ以上を含むかどうかを決定するための方法も開示される。
【実施例】
【0053】
試料の調製
Armored RNAをHEVのGT1、GT2、GT3およびGT4に関して当該技術で既知の方法により調製し、鋳型として用いた。
【0054】
50cp/mlまたは500cp/mlのHEV遺伝子型を予め調製し、一夜保管した(−60〜−90℃における血漿希釈液):
それぞれの試料(850ul)を3重(triplicate)の分析のためにピペットでディープウェルプレート中に入れた。試料を含有するそれぞれのウェルに、50ulの内部対照核酸を添加した。定性的対照の役目を果たす対照RNA(IC/QS)を添加した(300個のarmored粒子/試料)。
【0055】
前記の対照核酸の配列は全ての場合で同一であり、SEQ ID NO:46〜49の群から選択された。
それぞれの対照核酸を以下の緩衝液中で保管した:
【0056】
【表1】
【0057】
試料の調製は、図1で示されるスキームに従う作業の流れに従って、以下の試薬を用いて自動的に実施された:
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
最後の工程の後、増幅試薬を含有するそれぞれのマスター混合物(MMx)をそれぞれのウェルに添加し、単離された核酸を含有する溶離液をそのMMxと混合し、それぞれの結果として得られた混合物をマイクロウェルプレートの対応するウェルに移し、そこで増幅を実施した。
【0064】
増幅および検出
増幅に関して、50ulの総体積での以下の濃度の2種類の溶液R1およびR2を用いた:
R1:16.73mM MnOAc、pH6.1、および0.09%アジ化ナトリウムpH7.0。
【0065】
R2:0.09%アジ化ナトリウムpH7.0、18% DMSO、400mM KOAc pH7.0、10%グリセロール、0.05% Tween20、200mMトリシンpH8.0、0.7uMアプタマー、10U UNG、1.333mM dGTP、1.333mM dATP、1.333mM dCTP、2.667mM dUTP、45U Z05Dポリメラーゼ(反応あたり)、0.667uM HEV順方向プライマー、0.417uM HEVセンスプローブ、0.333uM HEV逆方向プライマー;0.417uM対照順方向プライマー(SEQ ID NO:50)、0.417uM対照逆方向プライマー(SEQ ID NO:51)、0.333uM対照プローブ(SEQ ID NO:52)。
【0066】
2種類の逆方向プライマーを用いる場合、それぞれを0.333uMの濃度で用いた。
以下のPCRプロフィールを用いた:
【0067】
【表7】
【0068】
そのプレ−PCRプログラムは、最初の変性およびRNA鋳型の逆転写のための55℃、60℃および65℃での保温を含む。3つの温度での保温は、より低い温度ではわずかにミスマッチした標的配列(例えばある生物の遺伝子変異体)も転写され、一方でより高い温度ではRNA二次構造の形成が抑制され、従ってより効率的な転写につながるという好都合な作用を組み合わせている。
【0069】
PCRサイクルは2つの測定に分かれており、ここで両方の測定が(アニーリングおよび伸長を組み合わせた)1工程設定を適用する。最初の55℃における5サイクルはわずかにミスマッチした標的配列を予め増幅することにより増大した包括性を可能にし、一方で第2測定の45サイクルは58℃のアニーリング/伸長温度を用いることにより増大した特異性を提供する。
【0070】
500cp/ml HEVまたは50cp/ml HEVのどちらかを用いて、HEV遺伝子型1、2、3および4の増幅をプライマーおよびプローブの異なる組み合わせを用いて試験し、ヒット率を決定した。結果を下記の表において示す。
【0071】
5’UTRプライマーおよびプローブは、500cp/ml HEVにおいて、全ての遺伝子型の検出に関して、特にGT3およびGT4の検出に関して、一貫してカプシドプライマーおよびプローブよりも優れたヒット率を提供した(表1A〜1C)。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
表1Dは、カプシドプライマー/プローブの組み合わせが500cp/ml HEVを用いて90%のヒット率を与え、そのヒット率は標的核酸を50cp/mlに減少させた場合著しく低いことを示している。5’UTR領域からのプライマー/プローブの組み合わせを用いると、そのヒット率は標的を50cp/mlに減少させた場合でさえも高いままである。
【0076】
【表11】
【0077】
表2は、500cp/ml HEVを用いたHEVのGT3の検出に関する異なる順方向および逆方向プライマーの組み合わせのヒット率を示す。表2を見て分かるように、いくつかの順方向および逆方向プライマー対が100%のヒット率を与え、一方で他の組み合わせもなお優れたヒット率を提供した。
【0078】
【表12-1】
【0079】
【表12-2】
【0080】
表3は5’UTR領域からの異なる順方向および逆方向プライマーの組み合わせを用いた増幅の結果を示し、いくつかの組み合わせに関してたとえ50cp/mlのHEVしか用いなかった場合でもGT3の検出に関して77〜100%の高いヒット率がもたらされた。
【0081】
【表13】
【0082】
表4は、特定の順方向プライマーおよび2種類の逆方向プライマーの混合物と組み合わせた異なるプローブを用いた試験の結果を示す。1種類のプローブはうまく働かなかった。その他のプローブの全てがGT1の検出に関して高いヒット率を与え、GT3の検出に関しては50cp/mlしか用いなかった場合にいくらか低いヒット率を与えた。違いは50cp/ml HEVでのGT4の検出に関して見られ、いくつかのプローブ配列はGT4の検出に関して50%より大きい妥当なヒット率を与え、2種類のプローブは、GT3の検出に関する90%より大きいヒット率およびGT1の検出に関する100%のヒット率と組み合わせられた、70%より大きいヒット率での優れたGT4の検出を与えた。
【0083】
【表14-1】
【0084】
【表14-2】
【0085】
表5は、そのプライマーおよびプローブの配列が4つのHEVの遺伝子型GT1、GT2、GT3およびGT4全てを検出することを示している。
【0086】
【表15】
【0087】
表6は異なるプローブ配列の配列比較を示す。見て分かるように、異なるプローブの配列はほとんど同一である。一方でその違いはそのプローブ内のクエンチャーQの異なる位置に関する。その他の違いは、異なる遺伝子型における非保存ヌクレオチドに相当する。その異なる位置は表7においても示されている。その配列の違いおよび表4において示されるような得られたヒット率の比較は、これらの位置の全てがプローブ配列の性能に関連しているわけではないことを示している。86位のTはプローブ配列の性能に役立っている。75位のAもGT4の検出に関するプローブの性能に有益な作用を有する。さらに、蛍光体およびクエンチャーの間の9個以上のヌクレオチドの間隔はHEV 5’UTRプローブの性能を向上させる。
【0088】
【表16】
【0089】
【表17】
【0090】
表8Aは、SEQ ID NO:6のSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14の混合物とのプライマーの組み合わせ、ならびにSEQ ID NO:6のSEQ ID NO:11とのプライマーの組み合わせを用いた4つの遺伝子型GT1、GT2、GT3およびGT4全ての検出を示す。その表を見て分かるように、それぞれの遺伝子型に関してヒット率が100%であるため、500cp/mlのHEVにおいて4つの遺伝子型全てがそのプライマーの組み合わせにより効率的に増幅される。より低い濃度である50cp/ml HEVにおいて、ヒット率はまだ高く、その4つのHEV遺伝子型は全て75〜100%のヒット率で増幅される。対照的に、表8Bにおいて示されるように、HEVの同じ領域からの他のプライマーの組み合わせを用いると、500cp/mlのHEVを用いた場合にgt2、gt3およびgt4のみが効率的に増幅される。50cp/ml HEVでは、全ての遺伝子型を増幅することができるわけではない。対応する内部対照のヒット率はそれぞれの実験に関して100%であった。
【0091】
【表18】
【0092】
表8Bは、プライマーの組み合わせSEQ ID NO:4および8、SEQ ID NO:3および9を用いて遺伝子型3に関して高いHEV力価においてシグナルを生成した異なる遺伝子型に関する検出パターンを示す。500cp/mlおよび50cp/ml HEVでのHEV遺伝子型1、2、3、4の検出が示されている。遺伝子型2の認識は一般に遺伝子型1および3の認識よりも良好である。対応する内部対照のヒット率はそれぞれの実験に関して100%であった。
【0093】
【表19】
【0094】
表9は、プライマーおよびプローブの組み合わせSEQ ID NO:6、13、14、15(表9A)およびSEQ ID NO:6、11、15(表9B)に関する交差反応性試験の結果を示す。
【0095】
交差反応性は上記で記載した条件下で試験した。以下の微生物の濃度を用いた:ストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridians)(オラーリス(oralis)):1.00E+06cfu/ml;HAV:1.00E+06cp/ml;HBV:1.00E+06IU/ml;HCV:1.00E+06IU/ml;NSC:陰性スパイク(spike)対照:微生物の添加なし;PSC:陽性スパイク対照:150cp/ml HEVの添加。
【0096】
ICは内部対照を意味する。
【0097】
【表20】
【0098】
【表21】
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]