【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、燃料インジェクタと、燃料インジェクタを動作させる方法と、燃料インジェクタのための制御システムとに関する。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
前記第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを、燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第1のノズル制御バルブは、また、制御チャンバを、高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを、燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能である、燃料インジェクタに関する。
【0009】
第1および第2のノズル制御バルブは、ニードル制御チャンバに接続されている。複数の噴射要件を満たすための構成を含む、構成の範囲が可能である。本発明は、用途の範囲に適する柔軟性を提供し、静的なリークの低減(潜在的に静的にリークのない)と複雑性との間のバランスを提供することが可能である。少なくとも特定の実施形態では、本発明は、用途の中の主要な動作点において、例えば、複数の噴射チェーン(chain)の一部として、ニードル開放速度が特定の噴射事象のために制御されることを可能にし、または、用途にわたって異なる特性を可能にすることができる。
【0010】
特定の実施形態では、本発明は、「スクエア型」噴射速度を送達するのに適切な高いニードル開放速度を提供し、高い噴霧エネルギーおよび改善した油圧効率を提供することが可能である。また、特定の実施形態では、本発明は、正確な量制御が重要なときに、特定の燃焼モードのための、または、パイロット噴射およびポスト噴射のための、より遅い混合を送達するのに適切な低いニードル開放速度を提供することが可能である。また、低い開放速度は、後処理制御のために使用されるレイトポスト噴射の過剰な噴霧ペネトレーションを防止するために使用することが可能である。
【0011】
第1および第2のノズル制御バルブは、互いに独立して作動させることが可能である。これによって、先行技術の配置と比較して、とりわけ、ニードル減衰、高い減衰、または低い減衰、および、減衰率の組み合わせにおいて、改善された制御が可能となる。第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、第1のノズル制御バルブと独立して選択的に動作可能である。したがって、少なくとも特定の実施形態では、第1のノズル制御バルブまたは第2のノズル制御バルブのいずれかは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように動作させることが可能である。
【0012】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを低圧燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。燃料ドレンの中に収集される燃料は、車両のための燃料タンクに戻すことが可能である。燃料ドレンは、貯蔵部へ燃料を供給するための1つまたは複数のドレン通路を含むことが可能である。ドレン通路は、互いに分離させるか、または、互いに連通させることが可能である。
【0013】
第1のノズル制御バルブは、第1の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、第2の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第1の制限された経路は、第1の制限された経路を通る流量を制御するための第1の制限部を含むことが可能である。第2の制限された経路は、第2の制限された経路を通る流量を制御するための第2の制限部を含むことが可能である。第1および第2の制限部の断面積は、同じであるか、または異なっていることが可能である。第1の制限部の断面積は、第2の制限部の断面積よりも、小さくするか、または大きくすることが可能である。例えば、第1の制限部の断面積は、第2の制限部の面積の半分と2倍との間とすることが可能である。異なる断面積を提供することによって、バルブニードルの速度が、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させることによって制御されることが可能となる。とりわけ、第1のノズル制御バルブ、第2のノズル制御バルブ、または、第1および第2のノズル制御バルブの両方を開けることによって、3つの異なる動作速度を実施することが可能である。制限された経路は、適当な直径を有する孔部によって形成することが可能である。
【0014】
第1のノズル制御バルブは、第1の制限された入口経路を介して、高圧供給ラインに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、第2の制限された入口経路を介して、高圧供給ラインに流体連通することが可能である。第1の制限された入口経路および/または第2の制限された入口経路は、制御チャンバの充填を制御することが可能である。前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブへの高圧燃料の供給を制御する(または、絞る)ことによって、ドレン排出の機能性に支障を来すことなく、制御チャンバの充填を制御することが可能である。
【0015】
第1のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、バランス式バルブまたはアンバランス式バルブとすることが可能である。第2のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、バランス式バルブまたはアンバランス式バルブとすることが可能である。
【0016】
第1のノズル制御バルブは、充填バルブとして、および、随意的に、ドレンバルブとしても、動作するように構成することが可能である。第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。また、第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。代替的に、第2のノズル制御バルブは、高圧供給ラインに連通していないドレンバルブとして機能することが可能である。
【0017】
制御チャンバは、例えば、第3の制限された経路を介して、高圧供給ラインに連続的に流体連通することが可能である。第3の制限された経路は、高圧供給ラインから制御チャンバへの流量を制御するための第3の制限部を有することが可能である。第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、高圧供給ラインを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように動作可能とすることが可能である。高圧供給ラインと燃料ドレンとの間の連通は、第3の制限された経路を介することが可能である。
【0018】
第1および第2のノズル制御バルブは、それぞれ、電気機械的なソレノイドまたは圧電アクチュエータなどのような、アクチュエータを含むことが可能である。第1および第2のノズル制御バルブは、それぞれの第1および第2のソレノイドを含むことが可能である。第1および第2のソレノイドは、それぞれの第1および第2のノズル制御バルブを作動させるために通電することが可能である。
【0019】
また、インジェクタは、高圧供給ラインからの燃料の供給を制御するための充填バルブを含むことが可能である。充填バルブは、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。充填バルブは、第1および第2のノズル制御バルブと独立して作動させることが可能である。代替的に、充填バルブは、第1のノズル制御バルブに応答して動作可能とすることが可能である。ばねは、充填バルブを閉位置へ付勢するために設けることが可能である。
【0020】
充填バルブは、第1のノズル制御バルブと第1の制限された経路との間に設けることが可能である。充填バルブは、高圧供給ラインと第1のノズル制御バルブとの間に連続的な流体連通を提供するための第3の制限された経路を含むことが可能である。第1のノズル制御バルブを動作させることは、高圧供給ラインと燃料ドレンとの間に連通を選択的に確立することが可能である。
【0021】
本明細書で説明されている充填バルブは、独立して特許可能であると考えられる。さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流をそれぞれ制御するための第1のノズル制御バルブと、
第1のノズル制御バルブに応答して、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である充填バルブと
を含む、燃料インジェクタに関する。ばねなどのような付勢手段は、充填バルブを閉位置へ付勢するために設けることが可能であり、閉位置では、高圧供給ラインと制御チャンバとの間の流体連通が防止される。
【0022】
第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能とすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、第1の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、制御チャンバの中への、および/または、制御チャンバからの流体流を制御するために設けることが可能である。
【0023】
充填バルブは、第2の制限された経路を有する充填バルブ部材を含むことが可能である。第2の制限された経路は、充填バルブ部材を横切る流体連通を提供するように構成することが可能である。第2の制限された経路は、高圧供給ラインを(第1のノズル制御バルブを介して)燃料ドレンに流体連通した状態に置くことが可能である。
【0024】
本発明のさらなる態様では、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
燃料インジェクタは、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である充填バルブをさらに含む、燃料インジェクタが提供される。
【0025】
一層さらなる態様では、本発明は、充填バルブに関し、充填バルブは、充填バルブ部材を横切る流体連通を確立するために制限された経路を有する充填バルブ部材を含む。充填バルブは、制御バルブに応答して動作可能とすることが可能である。充填バルブは、充填バルブ部材を第1の方向に付勢するためのばねをさらに含むことが可能である。充填バルブは、燃料インジェクタの制御チャンバへ燃料を供給するように構成することが可能である。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含む、燃料インジェクタに関する。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、制御チャンバの中の燃料圧力に応答して閉位置と開位置との間で移動可能なバルブニードルを有するノズルを含む燃料インジェクタを制御する方法であって、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するために、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含み、
第1のノズル制御バルブは、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるように選択的に動作され、
また、第1のノズル制御バルブは、高圧供給ラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を上昇させるように選択的に動作され、
第2のノズル制御バルブは、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるように選択的に動作される、方法に関する。
【0028】
方法は、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるために、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開けるように、前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるさらなるステップを含むことが可能である。制御チャンバの中の圧力の低減は、バルブニードルが開くことを可能にし、燃料が噴射されることを可能にすることができる。
【0029】
第1および第2のノズル制御バルブは、バルブニードルの移動を制御するために、同時にまたは逐次的に動作させることが可能である。第1および第2のノズル制御バルブの同時の動作または逐次的な動作は、閉位置から開位置へ第1の方向に、および/または、開位置から閉位置へ第2の方向に、バルブニードルの移動を制御するように行うことが可能である。
【0030】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、バルブニードルが移動する速度を制御するように動作させることが可能である。バルブニードルが、例えば、減衰を制御するために、前記第1の方向および/または前記第2の方向に移動するときに、バルブニードル移動の速度は変化することが可能である。バルブニードルの速度を低減させるために、第1のノズル制御バルブまたは第2のノズル制御バルブは、バルブニードルが前記閉位置と前記開位置との間で(前記第1の方向に、または、前記第2の方向に)移動するときに、制御チャンバと燃料ドレンとの間の連通経路を閉鎖するように動作させることが可能である。
【0031】
また、方法は、高圧供給ラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を上昇させるために、前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含むことが可能である。制御チャンバの中の圧力を上昇させることによって、バルブニードルを閉位置へ変位させることができる。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、制御チャンバの中の燃料圧力に応答して閉位置と開位置との間で移動可能なバルブニードルを有するノズルを含む燃料インジェクタを制御する方法であって、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するために、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含む、方法に関する。
【0033】
一層さらなる態様では、本発明は、燃料インジェクタのための制御システムであって、本明細書で説明されている方法を実施するように構成されている制御システムに関する。
【0034】
本明細書で説明されている方法は、マシンにより実施する(machine−implemented)ことが可能である。本明細書で説明されている方法は、電子的なマイクロプロセッサなどのような1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータ計算デバイスの上に実装することが可能である。プロセッサは、メモリの中に、または、記憶デバイスの中に保存されているコンピュータ計算命令を実施するように構成することが可能である。本明細書で説明されているデバイスは、コンピュータ計算命令を実施するように構成されている1つまたは複数のプロセッサを含むことが可能である。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、プログラマブル回路と、本明細書で説明されている方法を実施するためにプログラマブル回路をプログラムするように少なくとも1つのコンピュータ可読媒体の上にコード化されたソフトウェアとを含むコンピュータシステムに関する。
【0036】
一層さらなる態様によれば、本発明は、コンピュータ可読命令を有する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読命令は、コンピュータによって実行されるときに、本明細書で説明されている方法のすべてのステップをコンピュータに行わせる、コンピュータ可読媒体に関する。
【0037】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として、添付の図を参照して、説明されることとなる。