特許第6181748号(P6181748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181748燃料インジェクタおよび燃料インジェクタを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181748
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】燃料インジェクタおよび燃料インジェクタを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 47/00 20060101AFI20170807BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F02M47/00 C
   F02M51/00 F
   F02M47/00 E
   F02M47/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-514402(P2015-514402)
(86)(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公表番号】特表2015-518108(P2015-518108A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】EP2013059511
(87)【国際公開番号】WO2013178443
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】12169828.6
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ハークーム,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ミーク,ジョージ
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−239822(JP,A)
【文献】 特表2003−507636(JP,A)
【文献】 特開2008−261309(JP,A)
【文献】 特開2008−025345(JP,A)
【文献】 特開2006−200428(JP,A)
【文献】 特表2005−517118(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10257641(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、前記バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、前記バルブニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
前記制御チャンバを加圧および減圧するために、前記制御チャンバの中への、および、前記制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
前記第1のノズル制御バルブは、前記制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第1のノズル制御バルブは、前記制御チャンバを高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第2のノズル制御バルブは、前記制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第1のノズル制御バルブが、第1の制限部を含む第1の経路を介して、前記制御チャンバに流体連通しており、および/または、前記第2のノズル制御バルブが、第2の制限部を含む第2の経路を介して、前記制御チャンバに流体連通し、
前記制御チャンバが、第3の制限部を含む第3の経路を介して、高圧供給ラインに連続的に流体連通する、燃料インジェクタ。
【請求項2】
前記第1および第2の制限部の断面積が、同じであるか、または異なっている、請求項に記載の燃料インジェクタ。
【請求項3】
前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブが、前記高圧供給ラインを、前記第3の経路を介して、前記燃料ドレンに流体連通した状態に置くように動作可能である、請求項に記載の燃料インジェクタ。
【請求項4】
内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、前記バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、前記バルブニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
前記制御チャンバを加圧および減圧するために、前記制御チャンバの中への、および、前記制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
高圧供給ラインを前記制御チャンバに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である充填バルブをさらに含み、
前記充填バルブが、前記第1のノズル制御バルブに応答して動作可能であり、
前記充填バルブが、前記高圧供給ラインと燃料ドレンとの間の連通を提供するための第3の制限部を含む第3の経路を含む燃料インジェクタ。
【請求項5】
前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブが、前記制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である、請求項に記載の燃料インジェクタ。
【請求項6】
前記第1のノズル制御バルブが、第1の制限部を含む第1の経路を介して、前記制御チャンバに流体連通しており、および/または、前記第2のノズル制御バルブが、第2の制限部を含む第2の経路を介して、前記制御チャンバに流体連通する、請求項に記載の燃料インジェクタ。
【請求項7】
前記第1および第2の制限部の断面積が、同じであるか、または異なっている、請求項に記載の燃料インジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンのための燃料インジェクタに関する。また、本発明は、燃料インジェクタを動作させる方法、および、燃料インジェクタのための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン燃焼を最適化するために、燃料インジェクタによって送達される燃料の量の正確な制御を有することが必要である。燃料圧力の幅広い範囲にわたって、少量の燃料を噴射することができることが望ましい。典型的に、燃料インジェクタは、ノズルニードルを有する噴射ノズルを含み、ノズルニードルは、エンジンの中への燃料噴射を制御するように、ノズルニードル着座部に向かって、および、ノズルニードル着座部から離れるように移動可能である。ノズルニードルは、ノズル制御バルブによって制御され、ノズル制御バルブは、ノズルニードルのために、制御チャンバの中の燃料圧力を制御する。
【0003】
コモンレール噴射システムは、複数の燃料インジェクタへ高圧燃料供給を提供する。既存のコモンレール噴射システムの場合、排気ガスおよび制御可能性に関する性能を微調整するために、妥協することが必要である。最大圧力エネルギーが噴霧エネルギーに変換されることを確実にするために、「スクエア型(square)」の噴射速度(換言すれば、噴射率または噴射量)パターンが必要とされる場合がある。正確な量制御のために、または、最適な噴霧混合率を確実にするために、より遅い速度が必要とされる場合もある。
【0004】
1つのアプローチは、個別の用途の設計および開発の間に、制御オリフィスまたは同等の制限部の流量を調節することである。この調節の主な影響は、ニードル開放速度を制御することである。いくつかの概念によって、これは、ニードル閉鎖速度または最小噴射圧力に悪影響を有する可能性がある。このアプローチは、それぞれの異なる用途のための個別の開発プログラムを必要とする。
【0005】
代替的な手法では、増幅ピストン(amplifier piston)が使用され、増幅ピストンは、切り替えられないときには低い噴射速度を提供することに加えて、高い噴射速度を提供することが必要とされるときには、切り替えることが可能である。増幅ピストンにパワーを与えるために必要とされる非常に高い流量、および、必要とされる大型の制御バルブは、これらのシステムを、非効率的で、大型で、高価なものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、先行技術システムに関連する問題のうちの少なくともいくつかを、改善または克服することを助けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、燃料インジェクタと、燃料インジェクタを動作させる方法と、燃料インジェクタのための制御システムとに関する。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
前記第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを、燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第1のノズル制御バルブは、また、制御チャンバを、高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能であり、
前記第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを、燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能である、燃料インジェクタに関する。
【0009】
第1および第2のノズル制御バルブは、ニードル制御チャンバに接続されている。複数の噴射要件を満たすための構成を含む、構成の範囲が可能である。本発明は、用途の範囲に適する柔軟性を提供し、静的なリークの低減(潜在的に静的にリークのない)と複雑性との間のバランスを提供することが可能である。少なくとも特定の実施形態では、本発明は、用途の中の主要な動作点において、例えば、複数の噴射チェーン(chain)の一部として、ニードル開放速度が特定の噴射事象のために制御されることを可能にし、または、用途にわたって異なる特性を可能にすることができる。
【0010】
特定の実施形態では、本発明は、「スクエア型」噴射速度を送達するのに適切な高いニードル開放速度を提供し、高い噴霧エネルギーおよび改善した油圧効率を提供することが可能である。また、特定の実施形態では、本発明は、正確な量制御が重要なときに、特定の燃焼モードのための、または、パイロット噴射およびポスト噴射のための、より遅い混合を送達するのに適切な低いニードル開放速度を提供することが可能である。また、低い開放速度は、後処理制御のために使用されるレイトポスト噴射の過剰な噴霧ペネトレーションを防止するために使用することが可能である。
【0011】
第1および第2のノズル制御バルブは、互いに独立して作動させることが可能である。これによって、先行技術の配置と比較して、とりわけ、ニードル減衰、高い減衰、または低い減衰、および、減衰率の組み合わせにおいて、改善された制御が可能となる。第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、第1のノズル制御バルブと独立して選択的に動作可能である。したがって、少なくとも特定の実施形態では、第1のノズル制御バルブまたは第2のノズル制御バルブのいずれかは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように動作させることが可能である。
【0012】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを低圧燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。燃料ドレンの中に収集される燃料は、車両のための燃料タンクに戻すことが可能である。燃料ドレンは、貯蔵部へ燃料を供給するための1つまたは複数のドレン通路を含むことが可能である。ドレン通路は、互いに分離させるか、または、互いに連通させることが可能である。
【0013】
第1のノズル制御バルブは、第1の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、第2の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第1の制限された経路は、第1の制限された経路を通る流量を制御するための第1の制限部を含むことが可能である。第2の制限された経路は、第2の制限された経路を通る流量を制御するための第2の制限部を含むことが可能である。第1および第2の制限部の断面積は、同じであるか、または異なっていることが可能である。第1の制限部の断面積は、第2の制限部の断面積よりも、小さくするか、または大きくすることが可能である。例えば、第1の制限部の断面積は、第2の制限部の面積の半分と2倍との間とすることが可能である。異なる断面積を提供することによって、バルブニードルの速度が、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させることによって制御されることが可能となる。とりわけ、第1のノズル制御バルブ、第2のノズル制御バルブ、または、第1および第2のノズル制御バルブの両方を開けることによって、3つの異なる動作速度を実施することが可能である。制限された経路は、適当な直径を有する孔部によって形成することが可能である。
【0014】
第1のノズル制御バルブは、第1の制限された入口経路を介して、高圧供給ラインに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、第2の制限された入口経路を介して、高圧供給ラインに流体連通することが可能である。第1の制限された入口経路および/または第2の制限された入口経路は、制御チャンバの充填を制御することが可能である。前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブへの高圧燃料の供給を制御する(または、絞る)ことによって、ドレン排出の機能性に支障を来すことなく、制御チャンバの充填を制御することが可能である。
【0015】
第1のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、バランス式バルブまたはアンバランス式バルブとすることが可能である。第2のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、バランス式バルブまたはアンバランス式バルブとすることが可能である。
【0016】
第1のノズル制御バルブは、充填バルブとして、および、随意的に、ドレンバルブとしても、動作するように構成することが可能である。第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。また、第2のノズル制御バルブは、制御チャンバを高圧供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。代替的に、第2のノズル制御バルブは、高圧供給ラインに連通していないドレンバルブとして機能することが可能である。
【0017】
制御チャンバは、例えば、第3の制限された経路を介して、高圧供給ラインに連続的に流体連通することが可能である。第3の制限された経路は、高圧供給ラインから制御チャンバへの流量を制御するための第3の制限部を有することが可能である。第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、高圧供給ラインを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように動作可能とすることが可能である。高圧供給ラインと燃料ドレンとの間の連通は、第3の制限された経路を介することが可能である。
【0018】
第1および第2のノズル制御バルブは、それぞれ、電気機械的なソレノイドまたは圧電アクチュエータなどのような、アクチュエータを含むことが可能である。第1および第2のノズル制御バルブは、それぞれの第1および第2のソレノイドを含むことが可能である。第1および第2のソレノイドは、それぞれの第1および第2のノズル制御バルブを作動させるために通電することが可能である。
【0019】
また、インジェクタは、高圧供給ラインからの燃料の供給を制御するための充填バルブを含むことが可能である。充填バルブは、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように、選択的に動作させることが可能である。充填バルブは、第1および第2のノズル制御バルブと独立して作動させることが可能である。代替的に、充填バルブは、第1のノズル制御バルブに応答して動作可能とすることが可能である。ばねは、充填バルブを閉位置へ付勢するために設けることが可能である。
【0020】
充填バルブは、第1のノズル制御バルブと第1の制限された経路との間に設けることが可能である。充填バルブは、高圧供給ラインと第1のノズル制御バルブとの間に連続的な流体連通を提供するための第3の制限された経路を含むことが可能である。第1のノズル制御バルブを動作させることは、高圧供給ラインと燃料ドレンとの間に連通を選択的に確立することが可能である。
【0021】
本明細書で説明されている充填バルブは、独立して特許可能であると考えられる。さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流をそれぞれ制御するための第1のノズル制御バルブと、
第1のノズル制御バルブに応答して、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である充填バルブと
を含む、燃料インジェクタに関する。ばねなどのような付勢手段は、充填バルブを閉位置へ付勢するために設けることが可能であり、閉位置では、高圧供給ラインと制御チャンバとの間の流体連通が防止される。
【0022】
第1のノズル制御バルブは、制御チャンバを燃料ドレンに流体連通した状態に置くように、選択的に動作可能とすることが可能である。第1のノズル制御バルブは、第1の制限された経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブは、制御チャンバの中への、および/または、制御チャンバからの流体流を制御するために設けることが可能である。
【0023】
充填バルブは、第2の制限された経路を有する充填バルブ部材を含むことが可能である。第2の制限された経路は、充填バルブ部材を横切る流体連通を提供するように構成することが可能である。第2の制限された経路は、高圧供給ラインを(第1のノズル制御バルブを介して)燃料ドレンに流体連通した状態に置くことが可能である。
【0024】
本発明のさらなる態様では、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含み、
燃料インジェクタは、高圧供給ラインを制御チャンバに流体連通した状態に置くように選択的に動作可能である充填バルブをさらに含む、燃料インジェクタが提供される。
【0025】
一層さらなる態様では、本発明は、充填バルブに関し、充填バルブは、充填バルブ部材を横切る流体連通を確立するために制限された経路を有する充填バルブ部材を含む。充填バルブは、制御バルブに応答して動作可能とすることが可能である。充填バルブは、充填バルブ部材を第1の方向に付勢するためのばねをさらに含むことが可能である。充填バルブは、燃料インジェクタの制御チャンバへ燃料を供給するように構成することが可能である。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクタであって、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するように閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたってバルブニードル着座部に対して移動可能であり、ノズルニードルの移動が、制御チャンバの中の燃料圧力によって制御される、ノズルと、
制御チャンバを加圧および減圧するために、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するための第1および第2のノズル制御バルブと
を含む、燃料インジェクタに関する。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、制御チャンバの中の燃料圧力に応答して閉位置と開位置との間で移動可能なバルブニードルを有するノズルを含む燃料インジェクタを制御する方法であって、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するために、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含み、
第1のノズル制御バルブは、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるように選択的に動作され、
また、第1のノズル制御バルブは、高圧供給ラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を上昇させるように選択的に動作され、
第2のノズル制御バルブは、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるように選択的に動作される、方法に関する。
【0028】
方法は、制御チャンバの中の燃料圧力を低減させるために、ドレンラインへの少なくとも1つの流体経路を開けるように、前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるさらなるステップを含むことが可能である。制御チャンバの中の圧力の低減は、バルブニードルが開くことを可能にし、燃料が噴射されることを可能にすることができる。
【0029】
第1および第2のノズル制御バルブは、バルブニードルの移動を制御するために、同時にまたは逐次的に動作させることが可能である。第1および第2のノズル制御バルブの同時の動作または逐次的な動作は、閉位置から開位置へ第1の方向に、および/または、開位置から閉位置へ第2の方向に、バルブニードルの移動を制御するように行うことが可能である。
【0030】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、バルブニードルが移動する速度を制御するように動作させることが可能である。バルブニードルが、例えば、減衰を制御するために、前記第1の方向および/または前記第2の方向に移動するときに、バルブニードル移動の速度は変化することが可能である。バルブニードルの速度を低減させるために、第1のノズル制御バルブまたは第2のノズル制御バルブは、バルブニードルが前記閉位置と前記開位置との間で(前記第1の方向に、または、前記第2の方向に)移動するときに、制御チャンバと燃料ドレンとの間の連通経路を閉鎖するように動作させることが可能である。
【0031】
また、方法は、高圧供給ラインへの少なくとも1つの流体経路を開け、制御チャンバの中の燃料圧力を上昇させるために、前記第1のノズル制御バルブおよび/または前記第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含むことが可能である。制御チャンバの中の圧力を上昇させることによって、バルブニードルを閉位置へ変位させることができる。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、制御チャンバの中の燃料圧力に応答して閉位置と開位置との間で移動可能なバルブニードルを有するノズルを含む燃料インジェクタを制御する方法であって、制御チャンバの中への、および、制御チャンバからの燃料流を制御するために、第1および第2のノズル制御バルブを選択的に動作させるステップを含む、方法に関する。
【0033】
一層さらなる態様では、本発明は、燃料インジェクタのための制御システムであって、本明細書で説明されている方法を実施するように構成されている制御システムに関する。
【0034】
本明細書で説明されている方法は、マシンにより実施する(machine−implemented)ことが可能である。本明細書で説明されている方法は、電子的なマイクロプロセッサなどのような1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータ計算デバイスの上に実装することが可能である。プロセッサは、メモリの中に、または、記憶デバイスの中に保存されているコンピュータ計算命令を実施するように構成することが可能である。本明細書で説明されているデバイスは、コンピュータ計算命令を実施するように構成されている1つまたは複数のプロセッサを含むことが可能である。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、プログラマブル回路と、本明細書で説明されている方法を実施するためにプログラマブル回路をプログラムするように少なくとも1つのコンピュータ可読媒体の上にコード化されたソフトウェアとを含むコンピュータシステムに関する。
【0036】
一層さらなる態様によれば、本発明は、コンピュータ可読命令を有する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読命令は、コンピュータによって実行されるときに、本明細書で説明されている方法のすべてのステップをコンピュータに行わせる、コンピュータ可読媒体に関する。
【0037】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として、添付の図を参照して、説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態によるインジェクタの概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるインジェクタの概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態によるインジェクタの概略図である。
図4】本発明の第4の実施形態によるインジェクタの概略図である。
図5】本発明の第5の実施形態によるインジェクタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、高圧ディーゼル燃料を内燃エンジン(図示せず)へ供給するための燃料インジェクタ1に関する。本発明の実施形態は、図1から図5を参照して説明されることとなる。
【0040】
本発明の第1の実施形態による燃料インジェクタ1の概略図が、図1に示されている。燃料インジェクタ1は、内燃エンジンのエンジンシリンダまたは他の燃焼スペースへ燃料を送達するのに適切である。燃料インジェクタは、インジェクタノズル(その一部分だけが示されている)、ならびに、第1および第2のノズル制御バルブ8、10を含む。インジェクタノズルは、インジェクタ本体部またはインジェクタハウジング12を含む。第1および第2のノズル制御バルブ8、10は、バルブハウジング14およびシムプレート16の中に収容されており、シムプレート16は、インジェクタ本体部12およびノズルハウジング14を離間させている。
【0041】
インジェクタノズルは、バルブニードルをさらに含み、バルブニードルは、第1および第2のノズル制御バルブ8、10によって動作可能であり、ノズル出口開口部を通した関連の燃焼スペース(図示せず)の中への燃料流を制御する。バルブニードルの下側部分は示されていないが、バルブ先端部において終端し、バルブ先端部は、出口開口部を通した燃焼スペースの中への燃料送達を制御するように、バルブニードルシートと係合可能である。また、バルブニードルシートに向けてバルブニードルを付勢するために、ばねを設けることが可能である。
【0042】
図1に見ることができるように、出口開口部から遠く離れたバルブニードルの上側端部20は、インジェクタ本体部12の中に画定されている制御チャンバ18の中に位置付けされている。バルブニードルの上側端部は、「ニードルピストン」20と称することが可能であり、「ニードルピストン」20の摺動運動は、インジェクタ本体部12の中に設けられているガイドボア22の中で案内される。ニードルピストン20は、バルブニードルの下側部分と一体とすることが可能であるが、代替的に、バルブニードルによって支持される別々のパーツとすることが可能である。
【0043】
使用時に、高圧下の燃料が、第1の燃料供給通路24からノズルチャンバ(図示せず)へ送達され、ノズルチャンバの中には、バルブニードルの下側部分が位置付けされている。バルブニードルがバルブニードルシートから離れるように移動させられるときに、高圧燃料は、ノズルチャンバから、ノズルの出口開口部を通って流れることが可能である。
【0044】
制御チャンバ18は、図1に示されている配向で、ニードルピストン20と一直線状に、および、ニードルピストン20の上方に、軸線方向に位置付けされている。制御チャンバ18は、インジェクタ本体部12の中において、一部は、ガイドボア22によって、および、一部は、ニードルピストン20の端部表面によって画定されており、シムプレート16の下側表面によって閉じられている。制御チャンバ18の中の燃料圧力は、ニードルピストン20に力を加え、それは、ニードルピストン20を下向き方向に押圧する役割を果たし、したがって、バルブニードルシートに対してバルブニードルを押圧する役割を果たし、出口開口部を通した燃料噴射を防止する。高圧下の燃料は、第2の燃料供給通路26から制御チャンバ18へ第1のノズル制御バルブ8を介して送達される。制限部または絞り部は、随意的に、第2の燃料供給通路26と第1のノズル制御バルブ8との間に設置され、制御チャンバ18の充填を制御することが可能である。
【0045】
使用時に、高圧燃料が、供給通路24を通してノズルチャンバへ供給されている状態で、上向きの力が、バルブニードルの1つまたは複数のスラスト表面(図示せず)に加えられ、それは、バルブニードルシートから離れるようにバルブニードルを押圧する役割を果たす。制御チャンバ18の中の燃料圧力が十分に低減される場合には、バルブニードルの先端部に作用する燃焼室の中のガス圧力からの力に加えて、ノズルチャンバの中の燃料圧力に起因してスラスト表面に作用する上向きの力が、ニードルピストン20の端部表面に作用する下向きの力、および、ばねによって提供されるバルブニードルにかかる力(ばね予荷重力)に打ち勝つのに十分である。したがって、バルブニードルは、バルブニードルシートから離れて持ち上がり、ノズル出口部を通して燃料噴射を開始する。制御チャンバ18の中の燃料圧力が増加した場合には、バルブニードルをバルブニードルシートから離して持ち上げるように作用する力が、制御チャンバ18の中の燃料圧力に起因して増加した力によって打ち負かされ、バルブニードルが着座させられる。したがって、制御チャンバ18の中の燃料圧力を制御することによって、出口開口部を通した燃料噴射の開始および終了を制御することが可能である。
【0046】
制御チャンバ18の中の燃料の圧力は、第1および第2のノズル制御バルブ8、10によって制御される。本実施形態では、第1のノズル制御バルブ8は、第2の供給通路26から制御チャンバ18への燃料の流れ、および、制御チャンバ18から第1の低圧ドレン28への燃料の流れを選択的に制御するためのバランス式(つりあい式)三方バルブである。第2のノズル制御バルブ10は、制御チャンバ18から第2の低圧ドレン30への燃料の流れを選択的に制御するためのバランス式二方バルブである。ここで、第1および第2のノズル制御バルブ8、10が、より詳細に説明されることとなる。
【0047】
第1のノズル制御バルブ8は、上側部分32aおよび下側部分32bを含む第1のバルブピン32を含む。第1のバルブピン32の上側部分(第1のガイド部分32aと称される)は、ハウジング14の中に画定されている第1のガイドボア34の中で摺動可能である。第1のバルブピン32の下側部分(第1のバルブヘッド32bと称される)は、シムプレート16の中に画定されている第1のチャンバ36の中に位置付けされ、摺動可能であり、第1のガイド部分32aと同調して移動する。インジェクタ本体部12には、シムプレートの下側面に隣接して、第1のドレン通路38が設けられており、第1のドレン通路38は、第1のチャンバ36の中へ開口している。第1のドレン通路38は、第1の低圧ドレン28に連通する。シムプレート16には、第1の軸線方向の貫通ドリル孔42が設けられ、シムプレート16の上側面に第1のクロススロット44が設けられており、第1のクロススロット44は、第1の軸線方向ドリル孔42に、その最上端部において連通しており、それによって、制御チャンバ18と第1のチャンバ36との間に経路を提供する。第1の軸線方向ドリル孔42は、低減された直径を有し、制御チャンバ18への第1の制限された経路を形成している。
【0048】
インジェクタ本体部12の上側面は、第1のバルブピン32のヘッド部分32bのための第1のバルブシート46を画定している。第1のバルブピン32のヘッド部分32bは、第1のバルブピンが第1のバルブ位置へ移動させられると、第1のバルブシート46に係合させられ、第1のバルブ位置では、制御チャンバ18と第1のドレン通路38との間の連通が遮断され、第1のチャンバ36と第2の供給通路26との間の連通が開かれる。ハウジング14は、その下側表面において、第1のバルブピン32のヘッド部分32bのための第2のバルブシート48を画定している。第1のバルブピンのヘッド部分32bは、第1のバルブピンが第2のバルブ位置へ移動させられると、第2のバルブシート48に係合させられ、第2のバルブ位置では、第2の供給通路26と第1のチャンバ36との間の連通が遮断され、制御チャンバ18と第1のドレン通路38との間の連通が開かれる。
【0049】
第2のノズル制御バルブ10は、上側部分50aおよび下側部分50bを含む第2のバルブピン50を含む。第2のバルブピン50の上側部分(第2のガイド部分50aと称される)は、ハウジング14の中に画定されている第2のガイドボア52の中で摺動可能である。第2のバルブピン50の下側部分(第2のバルブヘッド50bと称される)は、シムプレート16の中に画定されている第2のチャンバ54の中に位置付けされ、摺動可能であり、第2のガイド部分50aに同調して移動する。インジェクタ本体部12には、シムプレートの下側面に隣接して、第2のドレン通路56が設けられており、第2のドレン通路56は、第2のチャンバ54の中へ開口している。第2のドレン通路56は、第2の低圧ドレン30に連通する。シムプレート16には、第2の軸線方向の貫通ドリル孔60が設けられ、シムプレート16の上側面に第2のクロススロット62が設けられており、第2のクロススロット62は、第2の軸線方向ドリル孔60に、その最上端部において連通しており、それによって、制御チャンバ18と第2のチャンバ54との間に経路を提供する。第2の軸線方向ドリル孔60は、低減された直径を有し、制御チャンバ18への第2の制限された経路を形成している。
【0050】
例として、第1の軸線方向ドリル孔42は、0.05mmと0.3mmとの間の直径を有することが可能である。第2の軸線方向ドリル孔60の直径は、典型的に、第1の軸線方向ドリル孔42の面積の半分と2倍との間の断面積を提供するようにサイズ決めされている。寸法は、制御チャンバ18の容積および/またはバルブピン32、50の直径に応じて変化することが可能であるということが認識されることとなる。また、寸法は、燃焼条件に応じて変化することとなる。
【0051】
インジェクタ本体部12の上側面は、第2のバルブピン50のヘッド部分50bのための第3のバルブシート64を画定している。第2のバルブピン50のヘッド部分50bは、第2のバルブピンが第1のバルブ位置へ移動させられると、第3のバルブシート64に係合させられ、第1のバルブ位置では、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が遮断される。ハウジング14は、その下側表面において、第2のバルブピンの第2のヘッド部分50bのための第4のバルブシート66を画定している。第2のバルブピンのヘッド部分50bは、第2のバルブピン50が第2のバルブ位置へ移動させられると、第4のバルブシート66に係合させられ、第2のバルブ位置では、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が開かれる。
【0052】
本実施形態では、第1および第2のノズル制御バルブ8、10は、第1および第2の電気機械的なソレノイド68、70によって作動させられる。とりわけ、第1および第2のソレノイド68、70は、第1および第2のバルブピンをそれらのそれぞれの第1の位置(すなわち、前進位置)に向けて付勢するためのそれぞれの第1および第2のばね72、74を含み、それぞれの第1の位置では、制御チャンバ18と第1および第2のドレン通路38との間の連通が遮断される。ソレノイド68、70を作動させる(すなわち、通電する)ことは、第1および第2のバルブピンを、それらのそれぞれの第2の位置(すなわち、後退位置)に向けて変位させ、それぞれの第2の位置では、制御チャンバ18とそれぞれの第1および第2のドレン通路38、56との間の連通が開かれる。第1および第2のノズル制御バルブ8、10は、噴射制御ユニット(図示せず)によって制御され、互いに独立して作動および非作動にさせることが可能である。
【0053】
使用時に、第1のノズル制御バルブ8が非作動にされる(換言すれば、停止させられる)と、第1のバルブピン32は、第1のバルブ位置へ前進させられ、ヘッド部分32bがばね力の下で第1のバルブシート46に係合するようになっている(図1に示されているように)。この位置では、高圧の燃料は、第2の供給通路26から、第2のバルブシート48を通過して、第1のチャンバ36の中へ流れることが可能であり、第1のチャンバ36から、制御チャンバ18の中へ流れることが可能である。同様に、第2のノズル制御バルブ10が非作動にされると、第2のバルブピン50は、その第1のバルブ位置にあり、ヘッド部分50bが第3のバルブシート64に係合するようになっている。この位置では、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が遮断され、それによって、制御チャンバ18から第2のドレン通路56への燃料流を防止する。それによって、制御チャンバ18は加圧され、ニードルピストン20は下向きに押圧され、したがって、バルブニードルは、下向きに、バルブニードルシートに対して押圧され、出口開口部を通した噴射が起こらないようになっている。
【0054】
第1の制御バルブ8が作動させられると、すなわち、第1のバルブピン32が第1のバルブシート46から離れて第2のバルブシート48に係合するように移動させられると、第2の供給通路26の中の高圧燃料は、もはや、第2のバルブシート48を通過して制御チャンバ18へ流れることはできなくなる。実際に、制御チャンバ18の中の燃料は、第1のバルブシート46を通過して、第1のドレン通路38の中へ、第1の低圧ドレン28へ流れることが可能である。同様に、第2の制御バルブ10が作動させられると、すなわち、第2のバルブピン50a、50bが第3のバルブシート64から離れて第4のバルブシート66に係合するように移動させられると、制御チャンバ18の中の燃料は、第3のバルブシート64を通過して、第2のドレン通路56の中へ、第2の低圧ドレン30へ流れることが可能である。したがって、制御チャンバ18の中の燃料圧力が低減され、制御チャンバ18が減圧される。結果として、バルブニードルのスラスト表面に作用するノズルチャンバの中の燃料圧力の力に起因して、バルブニードルが、バルブニードルシートから離れるように上向きに押圧される。上記に概説されているように、第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60は、第1および第2の制限された経路を形成している。制限された経路は、制御チャンバ18から出る燃料流量を制御し、それによって、バルブニードルがバルブニードルシートから上向きに変位させられる速度を制御する。
【0055】
第1および第2のノズル制御バルブ8、10の作動および/または非作動を制御することは、バルブニードルが前記開位置と閉位置との間を(移動の一方向または両方向に)移動するときに、バルブニードルを制御するための動作モードの範囲を可能にする。例として、バルブニードルが前記閉位置から前記開位置へ移動するときにバルブニードルを制御する場合は、本実施形態によるインジェクタ1は、以下の動作モードを提供する。
【0056】
(i)第1のノズル制御バルブ8が非作動にされ、第2のノズル制御バルブ10が非作動にされる。第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径の比率に応じて、制御チャンバ18の中の制御圧力が低下する。バルブニードルは、第2の軸線方向ドリル孔60の直径によって制御された比較的に低い速度で持ち上がる。
【0057】
(ii)第1のノズル制御バルブ8が作動させられ、第2のノズル制御バルブ10が非作動にされる。第1の軸線方向ドリル孔42の直径に応じて、制御チャンバ18の中の制御圧力が低下する。バルブニードルは、第1の軸線方向ドリル孔42の直径によって制御された中間の速度で持ち上がる。
【0058】
(iii)第1および第2のノズル制御バルブ8、10が、両方とも作動させられる。並列の第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径に応じて、制御チャンバ18の中の制御圧力が低下する。バルブニードルは、並列の第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径によって制御された比較的に高い速度で持ち上がる。
【0059】
(iv)第2のノズル制御バルブ10が作動させられ、第1のノズル制御バルブ8の作動がそれに続く。第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径の比率に応じて、制御チャンバ18の中の制御圧力が低下する。バルブニードルは、初期に比較的に低い速度で、次いで、より高い速度で持ち上がる(「ブーツ」形状の噴射を提供する)。
【0060】
(v)第1および第2のノズル制御バルブ8、10が作動させられ、第2のノズル制御バルブ10の非作動がそれに続く。バルブニードルは、初期に比較的に高い速度で、次いで、より低い速度で持ち上がる。これは、複数の噴射を制御するときに、過度のニードルリフトを回避するように助けることが可能であり、上部停止部に対するバルブニードルの衝突速度を制限することが可能である。
【0061】
上記に説明されている動作モードのすべてにおいて、バルブニードルは、第1の軸線方向ドリル孔42の直径によって少なくとも部分的に決定される速度で閉じる。他の動作モードは、異なるバルブ同期を選ぶことによって実施することが可能であるということが認識されることとなる。インジェクタ制御ユニットは、第1および第2のノズル制御バルブ8、10の作動および/または非作動を制御するように設定された適当な命令とともにプログラムすることが可能である。これらの動作モードは、本明細書で説明されているインジェクタ1の実施形態のいくつかまたはすべてに適用可能である。
【0062】
本発明による燃料インジェクタ1の第2の実施形態が、図2に示されている。第2の実施形態は、第1の実施形態の修正版であり、ここで、同様の参照番号は、同様の構成要素のために使用されている。インジェクタ1は、バランス式三方バルブを含む第1のノズル制御バルブ8と、バランス式三方バルブを含む第2のノズル制御バルブ10とを含む。第1および第2のノズル制御バルブ8、10は、互いに独立して動作され、制御チャンバ18を充填および排出させることが可能である。第1のノズル制御バルブ8の構成は、第1の実施形態のものと同じである。
【0063】
第2のノズル制御バルブ10は、第3の燃料供給通路75から制御チャンバ18への燃料の流れを選択的に制御するために、バランス式三方バルブを提供するように修正されている。この配置によって、高圧下の燃料が、第3の燃料供給通路75から、制御チャンバ18へ、第2のノズル制御バルブ10を介して送達されることが可能となる。具体的には、第2のバルブピン50が第1のバルブ位置へ移動させられると、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が遮断され、第2のチャンバ54と第3の供給通路75との間の連通が開かれる。逆に、第2のバルブピン50が第2のバルブ位置へ移動させられると、第3の供給通路75と第1のチャンバ36との間の連通が遮断され、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が開かれる。制限部または絞り部が、随意的に、第3の燃料供給通路75と第2のノズル制御バルブ10との間に設けられ、制御チャンバ18の充填を制御することが可能である。
【0064】
第3の供給通路75の提供は、2つの充填経路が、制御チャンバ18へ高圧燃料を供給するために利用可能であるということを意味している。両方の充填経路が開くと(すなわち、図2に示されているように、第1および第2のバルブピン32、50がそれらのそれぞれの第1の位置にあると)、充填速度が増加させられ、潜在的に2倍になる可能性がある。しかし、充填速度の増加を提供するというよりもむしろ、第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径は、第1の実施形態の第1の軸線方向ドリル孔42よりも小さくなっている。これは、第1および第2のノズル制御バルブ8、10のそれぞれにとって必要とされるバルブリフトを低減させ、それによって、第1および第2のソレノイド68、70によって必要とされるリフト力を低減させる。そのうえ、第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の直径を低減させることは、ノズル制御バルブ8、10のうちの1つが作動させられ、もう一方が非作動にされるときに発生する直接的な貫流損失(through-flow losses)を低減させる。
【0065】
本発明による燃料インジェクタ1の第3の実施形態が、図3に示されている。第3の実施形態は、第1の実施形態のさらなる修正版であり、ここで、同様の参照番号は、同様の構成要素のために使用されている。第1のノズル制御バルブ8の構成は、第1の実施形態のものと同じである。
【0066】
第1のノズル制御バルブ8は、バランス式三方バルブを含み、第2のノズル制御バルブ10は、アンバランス式二方バルブを含む。第2のノズル制御バルブ10は、上側部分50aおよび下側部分50bを含む第2のバルブピン50を含む。第2のバルブピン50の上側部分(第2のガイド部分50aと称される)は、ハウジング14の中に画定されている第2のガイドボア52の中で摺動可能である。第2のバルブピンの下側部分(第2のバルブヘッド50bと称される)は、同様にハウジング14の中に画定されている第2のチャンバ54の中に位置付けされ、第2のガイド部分50aに同調して移動する。第2のドレン通路56は、シムプレート16の上側面に隣接して、ハウジング14の中に設けられており、第2のチャンバ54の中へ開口している。第2のドレン通路56は、第2の低圧ドレン30に連通する。シムプレート16には、第2の軸線方向の貫通ドリル孔60が設けられ、シムプレート16の下側面に第2のクロススロット62が設けられており、第2のクロススロット62は、その最下端部において、第2の軸線方向ドリル孔60に連通しており、それによって、制御チャンバ18と第2のチャンバ54との間に経路を提供する。第2の軸線方向ドリル孔60は、低減された直径を有し、第2の制限された経路を形成している。
【0067】
シムプレート16の上側面は、第2のバルブピンのヘッド部分50bのための第3のバルブシート64を画定している。第2のバルブピンのヘッド部分50bは、第2のバルブピン50が第1のバルブ位置へ移動させられると、第3のバルブシート64に係合させられ、第1のバルブ位置では、制御チャンバ18と第2のドレン通路56との間の連通が遮断される。
【0068】
第3の実施形態によるインジェクタ1の動作は、第1および第2のバランス式バルブ8、10を含む第1の実施形態から変わりがない。しかし、第2のノズル制御バルブ10にアンバランス式バルブを利用することは、第2のノズル制御バルブ10を設けることによって結果として生じる静的な漏出を低減させる。そのうえ、充填は第1のノズル制御バルブ8によって提供されるので、第2のノズル制御バルブ10の中の二方バルブに関する寄生的な充填流を回避することが可能である。
【0069】
第3の実施形態の第2のノズル制御バルブ10に必要とされる作動力は、第1および第2の実施形態において利用されているバランス式バルブに必要とされる作動力よりも大きい。しかし、第3の実施形態における第2の軸線方向ドリル孔60の小さい直径は、必要とされる作動力を低減させる。したがって、先行技術のインジェクタよりも、小さくて速い第2のソレノイド70を用いることが可能である。
【0070】
第3の実施形態による燃料インジェクタ1は、第2の燃料供給通路26と第1のノズル制御バルブ8との間に、制限部または絞り部を提供するように修正することが可能である。制限部は、制御チャンバ18の充填を制御することが可能である。
【0071】
本発明による燃料インジェクタ1の第4の実施形態が、図4に示されている。第4の実施形態は、第3の実施形態の修正版であり、ここで、同様の参照番号は、同様の構成要素のために使用されている。インジェクタ1は、アンバランス式二方バルブを含む第1のノズル制御バルブ8と、アンバランス式二方バルブを含む第2のノズル制御バルブ10とを含む。第2のノズル制御バルブ10の構成は、第3の実施形態のものと同じである。第1のノズル制御バルブ8および/または第2のノズル制御バルブ10が使用され、制御チャンバ18を排出させることが可能である。
【0072】
第1のノズル制御バルブ8は、上側部分32aおよび下側部分32bを含む第1のバルブピン32を含む。第1のバルブピンの上側部分(第1のガイド部分32aと称される)は、ハウジング14の中に画定されている第1のガイドボア34の中で摺動可能である。第1のバルブピンの下側部分(第1のバルブヘッド32bと称される)は、ハウジング14の中に画定されている第1のチャンバ36の中に位置付けされ、摺動可能であり、第1のガイド部分32aに同調して移動する。第1のドレン通路38は、シムプレート16の上側面に隣接して、ハウジング14の中に設けられており、第1のチャンバ36の中へ開口している。第1のドレン通路38は、共通の低圧ドレン28に連通する。シムプレート16には、第1の軸線方向の貫通ドリル孔42が設けられ、シムプレート16の下側面に第1のクロススロット44が設けられており、第1のクロススロット44は、第1の軸線方向ドリル孔42に、その最下端部において連通しており、それによって、制御チャンバ18と第1のチャンバ36との間に経路を提供する。第1の軸線方向ドリル孔42は、低減された直径を有し、制御チャンバ18への第1の制限された経路を形成している。
【0073】
第3の軸線方向の貫通ドリル孔76は、シムプレート16の中に設けられており、シムプレート16の上側面において、第2のクロススロット78を介して、第1の燃料供給通路24に連通する。また、第3の軸線方向ドリル孔76は、シムプレート16の下側面において、第1のクロススロット44に連通しており、第1の燃料供給通路24から制御チャンバ18への流体経路を形成している。第3の軸線方向ドリル孔76は、低減された直径を有し、第3の制限された経路を形成している。制御チャンバ18の充填は、第3の軸線方向ドリル孔76によって決定される。
【0074】
シムプレート16の上側面は、第1のバルブピンのヘッド部分32bのための第1のバルブシート46を画定している。第1のバルブピンのヘッド部分32bは、第1のバルブピンが第1のバルブ位置へ移動させられると、第1のバルブシート46に係合させられ、第1のバルブ位置では、制御チャンバ18と第1のドレン通路38との間の連通が遮断される(図4に示されているように)。
【0075】
制御チャンバ18は、第3の軸線方向ドリル孔76を介して、燃料供給通路24に連通したままである。それによって、第3の軸線方向ドリル孔76は、制御チャンバ16のための充填流路を提供する。第3の制限部を通る流量は、ニードルバルブ閉鎖速度を決定する。この構成によって、2つの二方バルブが使用されることが可能となり、それは、静的にリークのないように、および、狭いクリアランスのバルブステムに沿う(すなわち、第1および第2のガイド部分32a、50aを通過する)高温漏出の必要性を回避するように構成することが可能である。噴射を開始するために充填流を消失させる作業は、並列の第1および第2のノズル制御バルブ8、10によって行うことが可能である。したがって、第1および第2のソレノイド68、70は、より低い作動力を提供するように設計することが可能である。使用時に、複数の噴射が、ソレノイド68、70のうちの1つだけによって、または、両方のソレノイド68、70の同期によって制御され、向上した応答性を提供することが可能である。
【0076】
本明細書で説明されている以前の実施形態と同様に、3つのニードル開放速度は、第1および第2の制限部を形成する第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60の2つの異なる直径を使用して提供することが可能である。代替的に、第1および第2の軸線方向ドリル孔42、60が同じ直径を有している場合には、第1および第2のソレノイド68、70を交互に作動させ、良好に制御された複数の噴射を作り出すことが可能である。これは、それぞれのソレノイド68、70に関する噴射同士の間の休止時間が増加されるからである。また、この制御技法は、本明細書で説明されている燃料インジェクタ1の第2の実施形態に関して実施することも可能である。
【0077】
本発明による燃料インジェクタ1の第5の実施形態が、図5に示されている。第5の実施形態は、第4の実施形態の発展例であり、ここで、同様の参照番号は、同様の構成要素のために使用されている。インジェクタ1は、アンバランス式二方バルブを含む第1のノズル制御バルブ8と、アンバランス式二方バルブを含む第2のノズル制御バルブ10とを含む。第1および第2のノズル制御バルブ8、10の構成は、第4の実施形態のものと同じである。第1のノズル制御バルブ8は、制御チャンバ18の充填を制御するために使用され、第2のノズル制御バルブ10は、制御チャンバ18のドレン排出を制御するために使用される。
【0078】
充填バルブ80が、第1の燃料供給通路24からの高圧燃料の供給を制御するために設けられている。充填バルブ80は、上側部分82aおよび下側部分82bを含む第3のバルブピン82を含む。第3のバルブピン82の下側部分(第1のステム部分82aと称される)は、インジェクタ本体部12の中に画定されている第3のボア84の中で摺動可能である。第3のボア84は、第1のステム部分82aの直径よりも大きい直径を有しており、燃料流がステム部分82aを通過することを許容する。第3のバルブピン82の上側部分(第3のバルブヘッド82bと称される)は、シムプレート16の中に画定されている第3のチャンバ86の中に位置付けされ、摺動可能であり、第3のガイド部分82aに同調して移動する。シムプレート16の中に設けられている第1の軸線方向の貫通ドリル孔42は、第1のノズル制御バルブ8と第3のチャンバ86との間の連通経路を提供する。また、シムプレート16の下側面にある第1のクロススロット44は、第3のチャンバ86に連通しており、それによって、制御チャンバ18と第1のチャンバ36との間の経路を提供する。第1のクロススロット44は、随意的に、低減された断面積を有し、第1の制限された経路を形成している。制御チャンバ18と第3のチャンバ86との間の連通経路に対する制限部は、随意的に、本実施形態では省略することが可能である。充填バルブ80は、貫流を停止させるために使用することが可能である。
【0079】
インジェクタ本体部12の上側面は、第3のバルブピン82のヘッド部分82bの下側表面に係合するための第5のバルブシート88を画定している。第3のチャンバ86の上側面は、第3のバルブピン82のヘッド部分82bの上側表面に係合するための第6のバルブシート90を画定している。第3の軸線方向ドリル孔92は、第3のバルブピン82のヘッド部分82bを通して設けられており、第1のステム部分82aの中に設けられている横断方向ドリル孔94に連通する。第3のドリル孔92は、低減された直径を有し、第3の制限部を形成している。
【0080】
第3のバルブピン82のヘッド部分82bは、第3のバルブピンが第1のバルブ位置へ移動させられると、第5のバルブシート88に係合させられ、第1のバルブ位置では、制御チャンバ18と第3のチャンバ86との間の連通が遮断される(図5に示されているように)。第3のバルブピン82のヘッド部分82bは、第3のバルブピンが第2のバルブ位置へ移動させられると、第6のバルブシート90に係合させられ、第2のバルブ位置では、制御チャンバ18と第3のチャンバ86との間の連通が開かれる。第3のばね96は、制御チャンバ18の中の圧力が高いときにも、第3のバルブピン82を第1のバルブ位置へ向けて付勢するために設けられている。第3のドリル孔92および横断方向ドリル孔94は、第3のチャンバ86と第1の燃料供給通路24との間に、制限された連通経路を提供する。
【0081】
使用時に、第3のバルブピン82は、第1のノズル制御バルブ8によって制御される。第1のノズル制御バルブ8が非作動にされると、第1のバルブピン32は、ばね力の下で第1の前進位置へ移動する。第1のバルブピン32のヘッド部分32bは、シムプレート16の上側面に設けられている第1のバルブシート46に着座し、第3のチャンバ86と第1のドレン通路38との間の連通が遮断される(図5に示されているように)。第3のチャンバ86の中の燃料圧力が上昇し、第1の燃料供給通路24の中の燃料圧力と適合する。第3のバルブピン82のヘッド部分82bを横切る圧力差が十分に低減されると、第3のばね96は、第3のバルブピン82を、その第1のバルブ位置に向けて付勢し、制御チャンバ18と第1の燃料供給通路24との間の連通が遮断される(図5に示されているように)。第3のバルブピン82が第1の位置にあるときに、制御チャンバ18への充填流は存在しないが、第2のノズル制御バルブ10が閉じられたままである限り、制御チャンバ18は加圧されたままである。この構成は、ニードルピストン20が部分的なリフト位置にロックされることを可能にする。続いて第2のノズル制御バルブ10を開けることによって、ニードルピストン20がさらに持ち上げられる。
【0082】
第1のノズル制御バルブ8を作動させることは、第1のバルブピン32を第2の後退位置へ移動させる。第1のバルブピン32のヘッド部分32bは、第1のバルブシート46から持ち上がり、第3のチャンバ86と第1のドレン通路36との間の連通を確立する。第3のばね96が、もはや、第3のバルブピン82のヘッド部分82bを横切る圧力差に打ち勝つことができなくなるまで、第3のチャンバ86の中の燃料圧力は減少する。次いで、第3のバルブピン82は、その第2の位置へ移動し、制御チャンバ18と第1の燃料供給通路24との間の連通を提供する。それによって、制御チャンバ18は加圧され、ニードルピストン20は下向きに押圧され、したがって、バルブニードルは、下向きに、バルブニードルシートに対して押圧され、出口開口部を通した噴射が起こらないようになっている。したがって、第1のノズル制御バルブ8を開けることによって、ニードルピストン20が閉じられる。
【0083】
第5の実施形態によるインジェクタ1は、第1および第2のノズル制御バルブ8、10を使用し、切り替え可能なニードル開口部特性を提供する。この構成は、静的にリークのないものであり、充填バルブ80が開いている間に、第3の制限部を通した非常に低い流れだけが生じる。そのうえ、充填バルブ80は、バルブニードル20の再閉鎖の間にだけ開けられることが必要である。
【0084】
インジェクタ1は、第1のドレン通路38への経路を開けるために第2のノズル制御バルブ10を作動させることによって、バルブニードル20を高速に開けることを提供することが可能である。第1のノズル制御バルブ8を閉位置に維持することは、充填バルブ80が開くことを防止し、それによって、第1の燃料供給通路24から制御チャンバ18への燃料の供給を防止する。
【0085】
ノズルからの噴射を終わらせるために、第1のノズル制御バルブ8が作動させられる。第1のノズル制御バルブ8を作動させるタイミングを同期させることによって、ニードルバルブ20の微細な制御が可能であり、小さい体積の燃料の噴射を容易にする。より長い噴射のために、第2のノズル制御バルブ10を非作動にすることによって、および、ドレン流を止めることによって、ニードルバルブ20の開放を止めることが可能である。この制御シーケンスは、低い制限的なニードルリフトにおいてバルブニードル20を止めるために、または、停止部の衝突を低減させるためにバルブニードル20の速度を落とすために、実施することが可能である。
【0086】
様々な変形および修正が、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書で説明されている実施形態に合わせてなされるということが認識されることとなる。例えば、第1のノズル制御バルブ8は、第1の制限された入口経路を介して、高圧供給ラインに流体連通することが可能である。第2のノズル制御バルブ10は、第2の制限された入口経路を介して、制御チャンバに流体連通することが可能である。それによって、第1のノズル制御バルブ8および/または第2のノズル制御バルブ10への高圧燃料の供給を制御する(または、絞る)ことが可能である。特定の実施形態では、制御チャンバの充填は、低圧ドレンへのドレン排出を妥協することなく、実現することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5