(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
別段の指示がない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」において先に使用した分子量や反応条件等の成分の量や特性を表す全ての数値は、いかなる場合においても「約」という語で修飾されているものと解されるべきである。したがって、特に異議を唱えない限り、先の明細書及び添付した特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは、当業者により本発明の技術を利用して獲得しようとされてきた所望の性質に応じて変化しうる概算である。少なくとも、また特許請求の範囲に対する均等物の理論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮し、通常の四捨五入を適用することによって解釈されなければならない。本発明の広範囲で記載される数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体的な実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値も、それらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含む。
【0018】
重量パーセント(weight percent)、重量パーセント(percent by weight)、重量%(% by weight)、及び同種のものは、材料の重量を組成物の重量で除して100を乗じたものとして、材料の濃度を指す同義語である。
【0019】
数値範囲の終点による列挙は、その範囲内に入る全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する組成物への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用されるとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0020】
本発明の印刷媒体において印刷面は、第1樹脂成分組成物及び第2樹脂成分組成物の混合物のミクロ相分離によって画定される。結果として生じる印刷面は、その主要な部分が第1樹脂成分である第1ドメインと、その主要な部分が第2樹脂成分である第2ドメインとのマトリクスからなるということ、及びこれらのドメインは、驚くべき性能をもたらす物理的構成及び特性の組み合わせを有するということが既に判明している。
【0021】
典型的な実施形態においては、インク受容層が、第2樹脂成分より多くの第1樹脂成分を包含する複数の第1ミクロ相分離領域を有し、且つ第1樹脂成分より多くの第2樹脂成分を包含する第2ミクロ相分離領域が、複数の第1ミクロ相分離領域のそれぞれを、ほぼリング(すなわち、実質的に完全に囲まれたセル)形状で囲んでおり、第2ミクロ相分離領域は、相対的に凸状である。
【0022】
ミクロ相分離の結果生じる第1ミクロ相分離領域と第2ミクロ相分離領域との間の、特有の不均一な表面特性の結果として、印刷時に水性インクの傾向が減少しても、ぼけのない鮮明な印刷画像の情報が結果として実現され、25mm/秒より速い(例えば、100mm/秒の)高速印刷の例さえも実現される。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、第1樹脂成分は、ポリアルキレンオキシドを含む。そのような実施形態において、ポリアルキレンオキシドが、粘着性と合わせて、水性インクに対する受容性の改善をもたらすので、印刷面の印刷特性及び粘着性は改善される。
【0024】
いくつかの実施形態において、第2樹脂成分のアクリルポリマーは、フェノキシ基を含む。この化合物により作られたインク受容層は、その所望の被着体に対する粘着性が改善しており、且つその上に印刷された画像の水分への抵抗を向上させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1樹脂成分と第2樹脂成分との相対的比率は、結果生じるインク受容層において、第1樹脂成分と第2樹脂成分との合計を100質量%とした場合に、第1樹脂成分が30〜60質量%を占めるようになっている。本配合において、印刷面の高速印刷特性と、印刷された画像の耐水性との間の良好なバランスを実現することが可能である。
【0026】
本発明の他の態様は、水性インク用印刷媒体の製造方法に関するものである。当該水性インク用印刷媒体の製造方法は、第1樹脂成分と、第2樹脂成分と、溶媒と、を包含する混合物を基材に塗布して基材上にコーティングを形成することと、溶媒をコーティングから取り除いて、第1樹脂成分及び第2樹脂成分のミクロ相分離を生じさせることと、を含む。
【0027】
本製造方法によれば、印刷面は、粘着面として機能し且つ良好な粘着性と印刷特性とをともに有する印刷媒体であり、加えて、水性染料インクで印刷された場合でさえも、印刷された画像が良好な耐水性とにじみ特性とを有する、水性インク用印刷媒体が容易に得られる。
【0028】
いくつかの実施形態において、塗布液は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を含む懸濁液であってよい。そのような塗布液により形成されるインク受容層は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を用いてミクロ相分離構造が印刷面に形成されるのを容易にする。
【0029】
図1は、本発明の印刷媒体の1つの例示的実施形態を示す模式的断面図である。印刷媒体10は、基材12と、インク受容層11と、表面F1と、を有し、表面F1は基材12に対向していない、すなわち、図示されている実施形態では、基材12の反対側にあり、印刷面として、基材12の一方の側に設けられている。
【0030】
インク受容層11は、親水性の第1樹脂成分と熱接着性の第2樹脂成分とを含み、且つ本質的にそれらから成っている。また、インク受容層11は、第1樹脂成分と第2樹脂成分とによって、印刷面F1に形成されるミクロ相分離構造を有する。第2樹脂成分は、四級アミノ基を有するアクリルポリマーを含む。
【0031】
印刷媒体10の印刷面F1において、第1樹脂成分は、例えば、インクジェットで用いられた水性インクのような画像形成用インクに対する所望の受容性を提供し、水性インク受容エリアとして機能し得る。また、第2樹脂成分は、媒体の所望の被着体に対する所望の粘着性を提供し、粘着性エリアとして機能し得る。それゆえに、水性インクによる画像印刷が印刷面F1で可能であり、且つ印刷面F1は粘着面として機能する。
【0032】
更に、印刷媒体10は上述のような構成を有しているので、良好な粘着性及び良好な高速印刷特性を印刷面F1に有し、例えば25mm/秒より速い高速のジェット印刷用印刷媒体として用いるのに適している。
【0033】
加えて、印刷媒体10において、水性インクを用いて印刷面F1上に形成される印刷画像は、耐水性及び耐にじみ性に優れたものとなる。特に、従来の印刷媒体(例えば、参照文献D5に記載された印刷媒体)においては、染料インクが水性インクとして用いられると、印刷画像の色流れを防ぐのは難しかった。しかし、本印刷媒体10によれば、水性染料インクを用いて形成された印刷画像においてさえ、にじみは十分に抑制できる。それゆえに、印刷媒体10は、水性染料インク用印刷媒体として好適に用いることができる。
【0034】
理論に縛られずに言えば、以下のことが考えられる。第1樹脂成分によって作られる微細なインク受容エリアと第2樹脂成分によって作られる微細な粘着性エリアとが、この複雑な構造を印刷面F1に、ミクロ相分離によって実現している。それゆえに、水性インクはその着弾点でインク受容エリアに浸透するが、他方で、着弾点のインク受容エリアから着弾点以外のインク受容エリアへの浸透による拡張(にじみ)は、粘着性エリアによって妨げられる。それゆえ、印刷物における水性インクのにじみは防止でき、且つ鮮明なイメージを形成することが可能であると考えられる。加えて、水性インクのにじみが、同様の理由で防止できるので、水性インクが印刷された後においてさえ、印刷画像は耐水性に優れると考えられる。
【0035】
第2樹脂成分は、印刷面F1において、四級アミノ基を含む。それゆえに、水性染料インクで印刷された場合、染料の固定力が非常に優れ、インク受容エリアと粘着性エリアとの界面において色流れが抑制される。なお、染料が酸性染料の場合、この固定力は更に顕著に得られ、且つにじみがさらに顕著に抑制されると考えられる。このため、印刷媒体10が、酸性染料インク用印刷媒体として特に好適に用いられ得る。
【0036】
ここで、ミクロ相分離構造という用語は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分が、微細な相分離構造を示すことを意味する。例えば、第1樹脂成分及び第2樹脂成分のうちの少なくとも一方が、独立相を印刷面F1において作り、且つその相の平均直径が、100マイクロメーター以下の場合、ミクロ相分離構造であると言われる場合がある。なお、相の平均直径は、任意の数だけ足し合わせることで得られ、また、10〜100の層の平均直径は、表面光学顕微鏡写真及び電子顕微鏡写真によって観測することができる。
【0037】
ミクロ相分離構造は、好ましくは印刷面F1に提供される水性インクのドット径以下である、上述の独立相の平均直径を有するべきである。例えば、インクジェット印刷において、インクドットの平均直径が30マイクロメーター以下、20マイクロメーター以下、又は10マイクロメーター以下の場合、上述の独立相は、好ましくは30マイクロメーター、20マイクロメーター、又は10マイクロメーターの平均直径以下の微細なサイズであるべきである。それにより、さらに鮮明な画像を形成することが可能になる。
【0038】
理解できるように、上述の独立相の平均直径の最小値は、特に限定されておらず、0.01マイクロメーターより大きくてもよく、いくつかの実施形態においては、0.1マイクロメーターより大きくてもよい。
【0039】
島状構造、円筒状構造、ラメラ構造、及び共連続構造が、ミクロ相分離構造の例として挙げられる。具体的には、親水性を有する第1樹脂成分が島の形をして、及び第2樹脂成分がその周りに海をなしている島状構造は望ましい。
【0040】
第1樹脂成分は、親水性である。これが意味するのは、第1樹脂成分は、水性インクを吸収できるようにする属性を持っているということである。例えば、もし水滴が樹脂成分表面上に、広いエリアをカバーするのに十分な量で落ち、且つ前記樹脂成分が水滴を数秒(例えば、5秒)以内で吸収した場合に、その樹脂成分は親水性があるといえる。
【0041】
例示的実施形態において、第1樹脂成分は、ポリアルキレンオキシド、親水性のアクリル酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性のポリウレタン樹脂、及び親水性のエチレンビニルアルコールのうちの1種類以上を含んでいてよい。
【0042】
好ましくは、第1樹脂成分はポリアルキレンオキシドを含有する。この場合、ポリアルキレンオキシドは、水性インクの受容性に優れており、且つ粘着性を有しているので、印刷面F1の印刷特性及び粘着特性はさらに向上する。ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシド共重合体が、ポリアルキレンオキシドとして挙げられる。
【0043】
第1樹脂成分内では、好ましくはポリアルキレンオキシドが全質量の80質量%より多くなるとよく、より好ましくは90質量%より多くなるとよい。また、第1樹脂成分はポリアルキレンオキシドであってもよい。
【0044】
第2樹脂成分は、熱接着性の樹脂成分であり、且つ少なくとも、四級アミノ基を有する1種類のアクリルポリマーを含有する。
【0045】
アクリルポリマーは更にフェノキシ基を含んでいてもよい。これにより、印刷面の粘着性及び印刷された画像の耐水性がさらに一層改善される。
【0046】
アクリルポリマーは、そのモノマー成分が四級アミノ基を有するアクリル系モノマーを含むポリマーであってよい。また、モノマー成分は、フェノキシ基を有するアクリル系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリル酸をさらに含んでいてよい。
【0047】
例えば、四級アミノ基を有するアクリル系モノマー、及びアルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸を含むモノマー成分を有するポリマーが、アクリルポリマーの1つの形態としてあげられ、且つモノマー成分は、フェノキシ基を有するアクリル系モノマーを含んでいてよい。
【0048】
ここで、四級アミノ基を有するアクリル系モノマーのモノマー成分における比率は、3〜13質量%、又は5〜11質量%であり得る。また、アルキル(メタ)アクリレートのモノマー成分における比率は、20〜90質量%であり得るが、好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%であるべきである。更に、モノマー成分の(メタ)アクリル酸の比率は、1〜8質量%であってよい。また更に、フェノキシ基を有するアクリル系モノマーのモノマー成分中の比率は、0〜70質量%であってよいが、好ましくは10〜65質量%、より好ましくは20〜60質量%であるべきである。
【0049】
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレート及びフェノキシ基を有するアクリル系モノマーを合計すると、モノマー成分中で、60〜94質量%であってよく、好ましくは70〜90質量%であるべきである。
【0050】
例えば、次式(1)で表される基が、四級アミノ基として挙げられる。
【0052】
式中、R
l、R
2、及びR
3は、独立してアルキル基又はアリル基であり、X
−は、一価の陰イオンである。R
l、R
2、及びR
3はそれぞれ、好ましくはアルキル基又はフェニル基であるべきであり、より好ましくはアルキル基、更により好ましくはC
1〜2のアルキル基(炭素数1又は2のアルキル基)であるべきである。
【0053】
上式のX
−である一価の陰イオンは特に限定されないが、例としてはハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)が挙げられる。中でも、塩化物イオンが、その入手が容易であることからより好ましい。
【0054】
塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及び塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドは、四級アミノ基を有するアクリル系モノマーとして用いるのに適している。
【0055】
フェノキシエチル(メタ)アクリレートが、フェノキシ基を有するアクリル系モノマーの例として挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、C
1〜16アルキル(メタ)アクリレートは好ましく、且つC
1〜10アルキル(メタ)アクリレートはより好ましい。ここで、「C
1〜16」及び「C
1〜10」は、(メタ)アクリロイル基を除くアルキル基の炭素の数を示す。
【0056】
第2樹脂成分は、アクリルポリマー以外の熱接着性の樹脂成分として、疎水性の樹脂成分を含有してよい。例えば、第2樹脂成分は、ポリエステル、疎水性のポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、及びエチレンビニルアセテートを含有してよい。なお、「疎水性」とは、水性インクをはじく性質を有していることを意味する。例えば、ある樹脂の表面に落ちた水滴がほぼすべてはじかれる時、その樹脂は疎水性の樹脂ということができる。
【0057】
好ましくは、第2樹脂成分中で、上述のアクリルポリマーは、50質量%より大きい比率を占め、より好ましくは60質量%より大きい比率を占める。いくつかの例において、第2樹脂成分は、本質的にアクリルポリマーから成っていてよい。
【0058】
インク受容層11中の第1樹脂成分の含有量は、20〜70質量%であり得るが、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の総重量を100質量%とした場合には、その30〜60質量%でもあり得る。これにより、印刷面F1のミクロ相分離構造中のインク受容エリアと粘着性エリアとの存在比率が好適なものとなり、且つ印刷面F1の高速印刷特性と印刷された画像の耐水性との間の良好なバランスが達成可能であると考えられる。この際、例えば、にじみのない鮮明な印刷画像が、100mm/秒より速い高速印刷でも得られる。
【0059】
印刷面F1において、第1樹脂成分からなるインク受容エリアの総面積(S
l)と、第2樹脂成分からなるインク受容エリアの総面積(S
2)との比率(S
1/S
2)は、例えば、0.2〜4.0であってよく、且つそれは0.4〜1.5であるとよい。印刷特性、粘着性及び耐水性は、インク受容エリアと粘着性エリアを上記のような面積比とすることによって更に一層改善される。
【0060】
インク受容層11は、例えば、10〜40マイクロメーター、及び20〜30マイクロメーターに設定され得る。このような厚さに製造されたインク受容層11は、更に良好な印刷面F1の印刷特性及び粘着性を有する。そのような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、厚みが15マイクロメートルを超えると、第2樹脂成分の粘着力が効果的に発揮され、且つ良好な粘着力が確保できると考えられる。その厚みが40マイクロメーター未満である場合には、均質なミクロ相分離構造が容易に形成できる。
【0061】
インク受容層11は、光学的に透明であるべきである。そのようなインク受容層11によれば、印刷面F1上に印刷される画像は、印刷面F1以外の表面から見ることができる。この場合、基材12(後述)が追加され、そしてそれが光学的に透明であることが好ましい。
【0062】
インク受容層11は、第2樹脂成分よりも多くの第1樹脂成分を含有する第1ミクロ相分離領域と、第1樹脂成分よりも多くの第2樹脂成分を含有する第2ミクロ相分離領域と、を有していてよい。また、第2ミクロ相分離領域は、第1ミクロ相分離領域をほぼリング形状に囲い、相対的に凸状である。このように、比較的多くの第2樹脂成分が存在する領域(第2ミクロ相分離領域)を比較的多くの第1樹脂成分が存在する領域(第1ミクロ相分離領域)の周りに配置することで、領域の界面でにじみが効果的に防止され、高速印刷特性は大いに改善される。
【0063】
なお、「第2樹脂成分よりも多くの第1樹脂成分含有すること」が意味するのは、領域を占める第1樹脂成分により作られる表面の面積の割合が、第2樹脂成分により作られる表面の面積の割合より大きいということである。更に、「相対的に凸状」とは、その領域が、隣接する第1アスペクト分離領域より少なくとも高いことを意味する。
【0064】
好ましくは複数の第1ミクロ相分離領域が存在するべきであり、且つそれらは、好ましくは第2ミクロ相分離領域のそれぞれを囲む、ほぼリング形状であるべきである。すなわち、インク受容層11は、好ましくは第2ミクロ相分離領域が、第1ミクロ相分離領域の周りに囲われる構造を有するべきである。また、この構造的ユニットは、1つの単位として、不均質な繰返し構造を印刷面F1において有する。
【0065】
言い換えると、印刷面F1において、好ましくはインク受容層11が、凹状の部分と、ほぼリング形状に凹状の部分を囲む凸状の部分とを有する不均質な構造を有するべきである。凹状の部分は、第2樹脂成分よりも多くの第1樹脂成分を含有する第1ミクロ相分離領域を形成し、凸状の部分は、第1樹脂成分よりも多くの第2樹脂成分を含有する第2ミクロ相分離領域を形成する。
【0066】
このようにして、印刷面F1における水性インクの保持が改善され、第1ミクロ相分離領域を作る凹状の部分の外側を囲む第2ミクロ相分離領域を作る、火山の噴火孔の外輪部に似た、凸状の部分によって印刷特性が更に改善される、と考えられる。
【0067】
加えて、第1ミクロ相分離領域は第1樹脂成分をより多く含み、且つ水性インクに対する良好な吸収性を有する。凹状の部分によって保持された水性インクが、ミクロ相分離領域を凹状部で作ることにより、高められた第1ミクロ相分離領域吸収力により、インク受容層11に定着すると考えられる。
【0068】
更に、第2ミクロ相分離領域は、より多くの第2樹脂成分を含み、第1樹脂成分は比較的少ししか存在しない。対象物に接着される時、この種の第2ミクロ相分離領域が接触させられる凸状の部分により、優れた粘着性及び耐水性は実現されると考えられる。
【0069】
第1ミクロ相分離領域の形状はほぼ、円、楕円、多角形の形状であってよいが、典型的には円形である。第1ミクロ相分離領域の直径は、例えば、10マイクロメーター〜500マイクロメーター、又は50マイクロメーター〜300マイクロメーターであるとよい。
【0070】
第2ミクロ相分離領域は、相対的に凸形状をなしている。しかしながら、第2ミクロ相分離領域の平均の高さh
2と隣接する第1ミクロ相分離構造の平均の高さh
1との差(h
2−h
1)は通常、1マイクロメーター〜30マイクロメーターであってよく、いくつかの例においては、2マイクロメーター〜20マイクロメーターであってよい。
【0071】
なお、第2ミクロ相分離領域は、好ましくは第1ミクロ相分離領域を、リング形状で囲むべきである。しかしながら、第2ミクロ相分離領域が第1ミクロ相分離領域の周りに、ほぼリング形状に形成されている限り、完全な円形をなしている必要はない。
【0072】
基材12は、インク受容層11を設けることが可能な表面を有しているべきである。印刷媒体10において、基材12はフィルム形状をなしているが、本発明において用いられる基材は、必ずしもフィルム形状でなくてもよい。
【0073】
紙、合成紙、及び、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエステル、及びポリウレタン樹脂のような樹脂から作られる樹脂フィルム又は樹脂シートが基材12として用いられ得る。基材は、単層又は多層のいずれでもよい。また、基材は、インク受容層をその上に形成し、その後の取り扱いを受け、さらに印刷媒体として処理を受けるのに十分な寸法安定性を提供できるものであるべきである。当業者は、所望の可撓性、引裂き強さ、伸縮性、弾力性、重量等を考慮して、基材に好適な材料をいつでも選択することができるであろう。
【0074】
基材12が光学的透明性を有することは好ましい。基材12及びインク受容層11の両方が光学的透明性を有することにより、印刷面F1に印刷された画像は、インク受容層11及び基材12を通して見ることができる。
【0075】
本実施形態に係る水性インク用印刷媒体の使用法を以下に説明する。本発明の水性インク用印刷媒体の使用法は以下のものに限られない。
【0076】
印刷媒体10を用いれば、水性インクを使って印刷面F1上に、鮮明な画像が印刷できる。また、印刷面F1は、粘着面としても機能する。それゆえに、印刷媒体10は対象物に対して、追加的に粘着性を増す処理を必要とせずに容易に接着することができる。
【0077】
例えば、印刷媒体10は、ICカード、写真付きIDカード等に貼り付けるフィルムとして使うのに適している。この場合、例えば、まず、ICカードに表示させたい画像を印刷面F1上に印刷し、次に、印刷済みの印刷面F1とICカードを互いに向き合わせて熱でラミネートする。
【0078】
そのような使用法において、印刷媒体10は、印刷特性、粘着性、及び耐水性が優れているので鮮明な画像を有するICカードを、素早く作ることができる。また、こうして作ったICカードは、耐水性にも優れている。
【0079】
また、例えば、印刷媒体10がICカードに貼り付けられた後で、剥離される予定である場合には、印刷媒体10の印刷面F1のミクロ相分離構造により、微細なインク受容エリアが破壊され、印刷内容が読み取り不能になる。それゆえに、印刷媒体10によれば、ICカードは、不正な目的のために再利用されるのを防ぐことができる。
【0080】
加えて、印刷媒体10は、装飾用フィルムとして用いるために、凹凸のある表面や湾曲した表面を有する対象物にも接着することができる。この場合、好ましくは熱伸長性の基材が印刷媒体10の基材12として用いられるべきである。例えば、そのような印刷媒体10は、印刷媒体10をドライヤー等で熱しながら、凹凸のある表面や湾曲した表面を有する対象物に、その形状になるように接着することができる。
【0081】
印刷媒体10は、用途によっては、印刷媒体10を支え、取り扱いやすくするための支持層を、エリア上の基材12の他の表面側に有してもよい。そのような状況が
図2に示されている。
【0082】
図2に示される印刷媒体20は、基材22、基材22の一方の側に設けられたインク受容層21及び表面F2、並びに基材22の他方の側に設けられた支持層23を有する。ここで表面F2は、基材22と対向していない。なお、印刷媒体20内の基材22及びインク受容層21は、印刷媒体10内の基材12及びインク受容層11の均等物である。
【0083】
印刷媒体20は、その取り扱いやすさが優れている。それは、基材22及びインク受容層21が支持層23によって支えられているからである。印刷媒体20を用いる場合には、例えば、水性インクで印刷された画像が形成された後で支持層23を剥離することができ、その結果、基材22及びインク受容層21のみを対象物に接着することができる。
【0084】
印刷媒体10は、用途によっては、印刷媒体10が対象物に接着された後で、塵や埃が最外側の表面に付着するのを防ぐため、エリア上の基材12の他の表面上に、塵埃防止層を有していてもよい。そのような状況が
図3に示されている。
【0085】
図3に示す印刷媒体30は、基材32と基材22とは対抗しない表面F3を有する、基材32の一方の側に印刷面として設けられるインク受容層31と、基材32の他方の側に設けられる塵埃層33と、を有する。なお、印刷媒体30内の基材32及びインク受容層21は、印刷媒体10内の基材12及びインク受容層11の均等物である。例えば、塵埃防止層33は、フッ素樹脂を含有する樹脂組成物から作られることができる。
【0086】
加えて、印刷媒体30は、基材32、インク受容層31、及び塵埃防止層33を支持するための支持層34も有していてよい。印刷媒体30を用いる場合には、例えば、水性インクで印刷された画像が形成された後で支持層34を剥離することができ、その結果、基材32、インク受容層31、塵埃防止層33のみを対象物に接着することができる。
【0087】
次に、本実施形態に係る、水性インク用印刷媒体に対する印刷方法の1つの例を説明する。
【0088】
水性インクを印刷媒体10の印刷面F1上に印刷する方法は、特に限定されないが、インクジェット印刷が好ましい。インクジェット印刷が実行されると、印刷画像はすばやく形成され得る。また、上述のICカードが更に素早く製造できる。
【0089】
ジェット印刷の印刷速度は、25mm/秒より速く、50mm/秒より速く、又は100mm/秒より速くさえなり得る。本発明の利点には、インクのにじみに悩まされることもなく、しかも上記のような高速の印刷速度で、鮮明な画像が本発明の媒体上に形成され得ることがある。それは、印刷媒体10が、その印刷面F1における高速印刷特性に優れているからである。
【0090】
印刷に用いる水性インクは特に限定されないが、水性染料インクであってよく、又は、酸性染料インクであってよい。印刷媒体10によれば、染料インクが使われる場合、にじみが十分に抑制できる。
【0091】
次に、本実施形態に係る、水性インク用印刷媒体の製造方法を説明する。なお、本発明の水性インク用印刷媒体は、以下の製造方法により製造される印刷媒体に限られない。
【0092】
本製造方法は、第1樹脂成分と、第2樹脂成分と、溶媒と、を含有する溶液を、基材に塗布し、基材にコーティングを形成するステップと、溶媒をコーティングから取り除き、第1樹脂成分と第2樹脂成分とのミクロ相分離を起こすステップと、を含む。
【0093】
本製造方法によれば、印刷面は、粘着面として機能し、且つ良好な粘着性及び印刷特性の両方を有する印刷媒体である。そして、水性染料インクで印刷されても、印刷画像の良好な耐水性及びにじみ特性を有する水性インク用印刷媒体(具体例については、印刷媒体10を参照)を容易に得ることができる。
【0094】
上記最初の工程の塗布液においては、第1樹脂成分及び第2樹脂成分が溶媒に溶解していてよく、且つ樹脂成分の微粒子として溶媒中に分散して、懸濁液を形成していてもよい(本明細書では「溶媒」という用語は、対象流体が、より正確には、液状媒体、液体留分等と呼ばれるべき実施形態に言及するために用いる)。
【0095】
溶媒は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分が、塗布液に溶解しているか、又は、塗布液中に均一に分散できるようなものであってよく、また、有機溶媒が好適に用いられてもよい。有機溶媒の例としては:ベンゼン、トルエン、及びキシレンのような芳香族;アセトン及びメチルエチルケトンのようなケトン;エチルアセテート及びブチルアセテートのようなエステル;メタノール及びエタノールのようなアルコール、が挙げられる。これらのものは、組み合わせて用いても、個別に用いてもよい。また、水、又は水とアルコールとの混合物が、本製造方法における溶媒として用いられてよい。
【0096】
塗布液は、必要に応じて加熱してもよい。例えば、塗布液は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を溶解するために30〜60℃に加熱してもよい。
【0097】
本製造方法の1つの状況においては、塗布液は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を含む懸濁液であってよい。このような塗布液で形成されるインク受容層は、凹状の部分と、凹状の部分を囲む尖った形の凸状の部分と、を有する、特徴的な不均質な形状を印刷面において作る。また、そのようなインク受容層は、凸状及び凹状に形成された場合には、印刷画像の耐水性及びにじみ特性を更に向上させる。
【0098】
第1樹脂成分と第2樹脂成分との間の溶解性の違いを利用して、且つ溶液及び第2溶液を混合する際に、第1樹脂成分及び/又は第2樹脂成分の部分的分離を可能にして、樹脂の微粒子が形成され得る。
【0099】
例えば、第1樹脂成分がポリアルキレンオキシドの場合、第1樹脂成分は、メチルエチルケトン/トルエン/メタノール(重量比は、2:1:1)の混合溶媒中に、40℃で溶解させることができる。また、第2樹脂成分であるアクリルポリマーは、アセトン/メタノールの混合溶媒中に室温(例えば、20℃)で溶解させることができる。
【0100】
例えば、第1樹脂成分が、メチルエチルケトン/トルエン/メタノール(2:1:1)の混合溶媒中に溶解した40℃の第1溶液と、第2樹脂成分が、室温(20℃)のアセトン/メタノールの混合溶媒中に溶解した20℃の第2溶液を混合することによって、上述の樹脂微粒子を含有する塗布液が得られる。
【0101】
第1樹脂成分がポリアルキレンオキシドである場合、第1溶液は、好ましくはメチルエチルケトン、トルエン、及びメタノールを溶媒として含有すべきである。また、第1溶液は、好ましくは35〜60℃に加熱すべきである。他方、第2溶液は、好ましくはメチルエチルケトン又はアセトン、及びメタノールを溶媒として含有すべきである。また、その温度は、好ましくは15〜30℃とするべきである。
【0102】
第1樹脂成分の第1溶液中の密度は、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは14〜16質量%とするべきである。加えて、第2樹脂成分の第2溶液中の密度は、好ましくは30〜40質量%、より好ましくは33〜38質量%とするべきである。
【0103】
基材の一方の側に塗布液を塗布することにより、コーティングが施され得る。塗布液の塗布方法は特に限定されず、ナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、シルクスクリーンコート法、及びグラビアコート法のような周知の方法を用いることができる。
【0104】
好ましくは、2番目の工程の後で形成されるインク受容層の厚さが10〜40マイクロメーターになるように、コーティングが形成されるべきである。上記の厚みにコーティングが形成される場合には、得られるインク受容層の印刷面は、印刷特性及び粘着性に一層優れるものとなる。
【0105】
溶媒はコーティングから、2番目の工程で除去される。加熱することにより溶媒を揮発させ取り除く方法、及び空気乾燥法が、有機溶媒を除去する方法として挙げられる。2番目の工程において、コーティングの溶媒は必ずしも完全に取り除かれなくてもよく、インク受容層は、溶媒を幾分か含有していてもよい。
【0106】
理解できるように、本発明の印刷媒体はシート状にもロール状にも形成してよい。
【0107】
上述のように、本発明の好適な1つの実施形態が説明されたが、本発明は、上述の実施形態に限られない。例えば、本発明では、水性インクで印刷媒体10の印刷面F1上に形成された印刷画像は、装飾用のフィルムであってよい。また、本発明は、水性インクで印刷面F1上に形成された印刷画像を有する印刷媒体10が、対象物(例えば、ICカード本体)に接着されたような、修飾された品物(例えば、印刷画像を有するICカード)であってもよい。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明がさらに詳しく、以降の例を参照しながら説明される。
【0109】
アクリルポリマーB1:33質量%のメチルアクリレート(以下、場合により「MA」)、55質量%のフェノキシエチルアクリレート(以下、場合により「PhEA」)、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(以下、場合により「DMAEA−Q」)、及び2質量%のアクリル酸(以下、場合により「AA」)が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB1の35質量%溶液が得られた。
【0110】
アクリルポリマーB2:43質量%のメチルアクリレート、45質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB2の35質量%溶液が得られた。
【0111】
アクリルポリマーB3:23質量%のメチルアクリレート、65質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB3の35質量%溶液が得られた。
【0112】
アクリルポリマーB4:73質量%のメチルアクリレート、15質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB4の35質量%溶液が得られた。
【0113】
アクリルポリマーB5:33質量%の2−エチルヘキシルアクリレート(以下、場合により「2EHA」)、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB5の35質量%溶液が得られた。
【0114】
アクリルポリマーB6:29質量%のメチルアクリレート、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB6の35質量%溶液が得られた。
【0115】
アクリルポリマーB7:88質量%のメチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。なお、固形分濃度79質量%の水溶液が、DMAEA−Qとして使用された。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB7の35質量%溶液が得られた。
【0116】
アクリルポリマーB8:58質量%のメチルアクリレート、35質量%のフェノキシエチルアクリレート、5質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB8の35質量%溶液が得られた。
【0117】
アクリルポリマーB9:33質量%のメチルアクリレート、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%のN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(場合により、「DMAEA」と表現する第3級アミン)、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB9の35質量%溶液が得られた。
【0118】
アクリルポリマーB10:43質量%のメチルアクリレート、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB10の35質量%溶液が得られた。
【0119】
アクリルポリマーB11:28質量%のメチルアクリレート、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、15質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び2質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB5の35質量%溶液が得られた。
【0120】
アクリルポリマーB12:25質量%のメチルアクリレート、55質量%のフェノキシエチルアクリレート、10質量%の塩化メチルで四級化されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及び10質量%のアクリル酸が、148.58質量%のアセトンと34.49質量%のメタノールとの混合溶媒中に均一に溶解され、溶液を反応させた。この反応液が、耐圧耐熱ガラス容器に注がれ、脱酸を行うために、0.1質量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加えた後で、10分間かき混ぜながら窒素が反応液に通された。次に、50℃に温めて20時間、共重合反応が実行され、アクリルポリマーB5の35質量%溶液が得られた。
【0121】
アクリルポリマーB1〜B10を構成するモノマー単位の比率(質量比)が以下の表1に示される。
【0122】
【表2】
【0123】
(実施例1)
アクアコーク(登録商標)(住友精化株式会社より入手可能、ポリアルキレンオキシド、固形分濃度100質量%)が、メチルエチルケトン/トルエン/メタノール(質量比2:1:1)の混合溶媒中に40℃で溶解され、固相密度15質量%の溶液A1が第1樹脂成分として生成された。また、35質量%のアクリルポリマーB1の溶液(以下、溶液B1)が第2樹脂成分として用いられた。
【0124】
溶液A1及び溶液B1が40℃で、第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が60:40となるように混合され、混合液C1が生成された。
【0125】
溶液C1を、厚さ50マイクロメートルのポリエチレンテレフタレートのフィルム(PETフィルム)に、ナイフコート法によって塗布し、溶液C1を10分間、80℃にセットしたオーブンで乾燥させてインク受容層をPETフィルム上に形成し、印刷媒体1が得られた。次に、乾燥後に形成されたインク受容層の厚さを調整し、25マイクロメーターとした。なお、インク受容層の厚さの調整は、PETフィルムの面とナイフの面との間の隙間を調整することで実行した。
【0126】
印刷媒体1が得られたら、印刷媒体1を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体1のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。結果を表4に示す。
【0127】
また、得られた印刷媒体1のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。結果を表5に示す。
図5に示す結果から、ほぼ円形状の第1ミクロ相分離領域と、その外周を囲む、ほぼリング形状の、凸形状第2ミクロ相分離領域と、からなる構造的ユニットを有する、独特の不均質な構造的配列が確認された。換言すれば、独特の不均質な構造が形成された第2ミクロ相分離構造が尖った形状に立ち上がり、ほぼ円形状の第1ミクロ相分離領域を囲っていたということが確認された。
【0128】
印刷面のミクロ相分離構造は島状構造を形成し、島の平均直径は約5マイクロメーターであった。また、ほぼ円形状の第1ミクロ相分離領域の直径は、大体50〜300マイクロメーターであり、第1ミクロ相分離構造の平均の高さh
1と、第2ミクロ相分離領域の平均の高さh
2との差(h
2−h
1)は、大体25〜30マイクロメーターであった。
【0129】
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた表面観察から、第2樹脂成分よりも多くの第1樹脂成分が第1ミクロ相分離領域に存在し、且つ第1樹脂成分よりも多くの第2樹脂成分が第2ミクロ相分離領域に存在することが確認された。具体的には、このような存在は、第1樹脂成分によって示される、結晶方位状態から確認された。
【0130】
また、印刷媒体1について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0131】
(実施例2)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB2の溶液(以下、溶液B2)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体2が得られた。
【0132】
得られた印刷媒体2を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体2のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0133】
また、得られた印刷媒体2のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体2のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0134】
また、印刷媒体2について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0135】
(実施例3)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB3の溶液(以下、溶液B3)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体3が得られた。
【0136】
得られた印刷媒体3を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体3のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0137】
また、得られた印刷媒体3のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体3のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0138】
また、印刷媒体3について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0139】
(実施例4)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB4の溶液(以下、溶液B4)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体4が得られた。
【0140】
得られた印刷媒体4を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体4のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0141】
また、得られた印刷媒体4のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体4のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0142】
また、印刷媒体4について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0143】
(実施例5)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB5の溶液(以下、溶液B5)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体5が得られた。
【0144】
得られた印刷媒体5を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体5のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0145】
また、得られた印刷媒体5のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体5のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0146】
また、印刷媒体5について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0147】
(実施例6)
第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が50:50となるように、溶液A1と溶液B1とを40℃で混合した混合液C2を、溶液C1の代わりとして用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体6が得られた。
【0148】
得られた印刷媒体6を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体6のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0149】
また、得られた印刷媒体6のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体6のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0150】
また、印刷媒体6について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0151】
(実施例7)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB6の溶液(以下、溶液B6)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体7が得られた。
【0152】
得られた印刷媒体7を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体7のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0153】
また、得られた印刷媒体7のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体7のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0154】
また、印刷媒体7について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0155】
(実施例8)
アクアコーク(登録商標)(住友精化株式会社より入手可能、ポリアルキレンオキシド、固形分濃度100質量%)が、メチルエチルケトン/トルエン/メタノール(質量比2:1:1)の混合溶媒中に40℃で溶解され、固相密度15質量%の溶液A2が第1樹脂成分として生成された。溶液A2を溶液A1の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体8が得られた。
【0156】
得られた印刷媒体8を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体8のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0157】
また、得られた印刷媒体8のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器による測定の結果として、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷媒体8のインク受容層の印刷面においては観察されず、表面構造を形成している大きな山形状のセルが存在した。
【0158】
また、印刷媒体8について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0159】
(実施例9)
溶液A2が、実施例8と同様にして調製された。次に、溶液A2及び溶液B1が40℃で、第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が30:70となるように混合され、混合液C3が生成された。
【0160】
混合液C3を混合液C1の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体9が得られた。
【0161】
得られた印刷媒体9を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体9のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0162】
また、得られた印刷媒体9のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器による測定の結果として、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷媒体8のインク受容層の印刷面においては観察されず、表面構造を形成している大きな山形状のセルが存在した。
【0163】
また、印刷媒体9について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0164】
(実施例10)
溶液A2が、実施例8と同様にして調製された。また、35質量%のアクリルポリマーB7の溶液(以下、溶液B7)が第2樹脂成分として用いられた。次に、溶液A2及び溶液B7が40℃で、第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が40:60となるように混合され、混合液C4が生成された。
【0165】
混合液C4を混合液C1の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体10が得られた。
【0166】
得られた印刷媒体10を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体10のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0167】
また、得られた印刷媒体10のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器による測定の結果として、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷媒体9のインク受容層の印刷面においては観察されず、表面構造を形成している大きな山形状のセルが存在した。
【0168】
(実施例11)
また、第2樹脂成分として、溶液B1の代わりに35質量%のアクリルポリマーB8の溶液(以下、溶液B8)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、印刷媒体11が得られた。
【0169】
得られた印刷媒体11を表面光学顕微鏡で観察した。印刷媒体11のインク受容層は、その印刷面において、ほぼ均質なミクロ相分離構造を有していた。
【0170】
また、得られた印刷媒体11のインク受容層の印刷面が、印刷面の表面粗さを測定するための非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)を用いて測定された。非接触表面粗さ測定器を用いた測定の結果から、第1ミクロ相分離領域と、第1ミクロ相分離領域の外周を、ほぼリング形状で囲む凸形状の第2ミクロ相分離領域と、を有する、多数配列された、独特の不均質な構造が、印刷媒体11のインク受容層の印刷面にさえ、実施例1のそれと同様に形成されているということが確認された。
【0171】
また、印刷媒体9について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0172】
比較例C1
溶液A2が、実施例8と同様にして調製された。次に、溶液A2と、35質量%のアクリルポリマーB9の溶液(以下、溶液B9)とが、第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が40:60になるように混合され、混合液D1が調製された。
【0173】
混合液D1を混合液C1の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体21が得られた。
【0174】
また、印刷媒体21について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0175】
なお、印刷媒体21は、ほぼ均質なミクロ相分離構造をその印刷面において有していることが、表面光学顕微鏡を用いて観察した際に確認された。しかしながら、非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)による測定の結果から、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷面においては観察されず、表面構造を形成している大きな山形状のセルが存在した。表面光学顕微鏡による観察結果が
図6に示され、非接触表面粗さ測定器による測定結果が
図7に示される。
【0176】
比較例C2
溶液A1が、実施例1と同様にして調製された。次に、溶液A1と、35質量%のアクリルポリマーB10の溶液(以下、溶液B10)とが、第1樹脂成分と第2樹脂成分との質量比が40:60になるように混合され、混合液D2が調製された。
【0177】
混合液D2を混合液C1の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして印刷媒体22が得られた。
【0178】
また、印刷媒体22について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0179】
なお、印刷媒体22は、ほぼ均質なミクロ相分離構造をその印刷面において有していることが、表面光学顕微鏡を用いて観察した際に確認された。しかしながら、非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)による測定の結果から、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷面においては観察されなかった。
【0180】
比較例C3
40質量%のアクアコーク(登録商標)(住友精化株式会社より入手可能、固相で100質量%)、熱粘着性を有する疎水性の樹脂としての40質量%の疎水性ポリエステル、バイロン(登録商標)670(東洋紡株式会社より入手可能なポリエステル)、及び20質量%のポリウレタン樹脂、バイロン(登録商標)UR−3200(東洋紡株式会社より入手可能なポリエステルウレタン樹脂、ガラス転移温度は−3℃、固形分濃度30質量%)を、メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1)の混合溶媒中で、60℃で十分に撹拌されて分散させた。
【0181】
溶液D3を、厚さ50マイクロメートルのポリエチレンテレフタレートのフィルム(PETフィルム)に、ナイフコート法によって流し込み、溶液D3を10分間、80℃にセットしたオーブンで乾燥させてインク受容層をPETフィルム上に形成し、印刷媒体23が得られた。次に、乾燥後に形成されたインク受容層の厚さを調整し、25マイクロメーターとした。
【0182】
なお、印刷媒体23は、ほぼ均質なミクロ相分離構造をその印刷面において有していることが、表面光学顕微鏡を用いて観察した際に確認された。しかしながら、非接触表面粗さ測定器(ザイゴ(Zaygo)社)による測定の結果から、実施例1で観察された独特の不均質な構造は、印刷面においては観察されなかった。
【0183】
また、印刷媒体23について、印刷特性、耐水性、常温での粘着力、及び高温での粘着力が、後述の評価方法にしたがって評価された。評価の結果を表2に示す。
【0184】
試験方法
印刷特性の評価:CANON(登録商標)インクジェットプリンタp−640Lで、6色カラーの水性染料インク印刷を用いて、印刷速度25mm/秒又は100mm/秒で、人物写真及び文字を印刷媒体のインク受容層上に印刷した。印刷された画像は、目視により、下記の5つのランクに評価した。「D」は、印刷された画像が最も不明瞭であったことを意味し、印刷画像の鮮やかさは「C」、「B」、及び「A」でこの順番で次第に改善されるものとして示され、さらに、「AA」が、最も明瞭な印刷画像に対してつけられるスコアであった。なお、25mm/秒の印刷速度で得られた結果は「印刷特性」として評価され、100mm/秒の印刷速度で得られた結果は「高速印刷特性」として評価された。
【0185】
にじみ特性の評価:印刷媒体のインク受容層上に画像を印刷して、印刷特性の評価と同様にして評価をした。次に、印刷媒体と塩化ビニル樹脂カードを、印刷媒体の印刷面とカードの一方の面とが互いに対向するように配置して、ロール式の熱ラミネータを用いて、それらを熱でラミネートした(120℃で1秒間)。サンプルを7日間80℃で静置した後で、印刷画像を、ぼやけたところがないか探すために目視により観察した。評価は、以下に説明する5つのランクにランク付けをした。
【0186】
AA:全く変化なし。
A:対照と比べても、ほぼ変化なし。
B:対照と比べると、目につく変化がある。
C:目につくようなぼやけがある。
D:非常に明らかな目立つぼやけが表面全体にある。
【0187】
常温での粘着力の評価:印刷媒体のインク受容層上に画像を印刷して、印刷特性の評価と同様にして評価をした。次に、印刷媒体と塩化ビニル樹脂カードを、印刷媒体の印刷面とカードの一方の面とが互いに対向するように配置して、ロール式の熱ラミネータを用いて、それらを熱でラミネートした(120℃で1秒間)。
【0188】
得られた測定用サンプルを24時間23℃で静置した後で、プル試験機を用いて、角度180度での剥離強度(N/25mm)が、23℃で測定された。測定条件としては、引張速度が200mm/分に設定された。測定結果は、「A」が15N/25mmより大きい又は材料が破損した場合の評価で、「B」が15〜10N/25mmの場合の評価で、「C」が10N/25mmより小さい場合の評価であった。
【0189】
高温での粘着力の評価:測定用サンプルが、常温での粘着力の評価と類似の方法により得られた。得られた測定用サンプルを24時間23℃で静置した後で、プル試験機を用いて、角度180度での剥離強度(N/25mm)が、80℃で測定された。測定条件としては、引張速度が200mm/分に設定された。測定結果は、「A」が15N/25mmより大きい又は材料が破損した場合の評価で、「B」が15〜10N/25mmの場合の評価で、「C」が10N/25mmより小さい場合の評価であった。
【0190】
耐水性の評価:測定用サンプルが、常温での粘着力の評価と類似の方法により得られた。測定用サンプルが24時間室温(25℃)の水中に静置された後で、見た目における変化が目視により確認された。なお、耐水性の評価においては、「AA」とランクされたのは、変化が見られなかった場合であり、「A」とランクされたのは、ラミネート物の端部が3〜5mm幅で膨らんでいるが、元の状態に戻すことが可能であった場合であり、「B」にランクされたのは、ラミネート物の端部が3〜5mm幅で膨らんでいて、元の状態に戻すことが不可能であった場合であり、「C」にランクされたのは、粘着層が溶出してしまっていた場合であり、「D」にランクされたのは、フィルムにまくれが生じた場合である。
【0191】
【表3】