特許第6181766号(P6181766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK株式会社の特許一覧

特許6181766キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法
<>
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000003
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000004
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000005
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000006
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000007
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000008
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000009
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000010
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000011
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000012
  • 特許6181766-キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181766
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 1/02 20060101AFI20170807BHJP
   A44B 1/08 20060101ALI20170807BHJP
   A44B 17/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A44B1/02 A
   A44B1/08 610G
   A44B17/00
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-540312(P2015-540312)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2013076881
(87)【国際公開番号】WO2015049752
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2015年12月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修久
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−008714(JP,A)
【文献】 実開昭60−079312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/00 − 9/20
A44B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン類本体(13、43)とキャップ(20、50)を含むボタン類(10、40)を形成する方法であって、
第1の材料からなる第1板(23)と、第2の材料からなる第2板(24)を重ね合わせる工程と、
重ね合わせた第1板(23)及び第2板(24)を打ち抜くと共に、第1板が内側になるようにして底部(22)と底部(22)の端縁部から立ち上がって延びる周側部(21)とを有するカップ形状のキャップ(20、50)を成形する工程と、
前記キャップ(20、50)の周側部(21)を前記ボタン類本体(13、43)に対し加締めて、前記ボタン類本体(13、43)を保持する工程とを含むボタン類形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法に関し、更に詳しくは、ボタン又はボタン用取付具の1部品であるキャップと、キャップを用いるボタン類であるボタン又はボタン用取付具と、このようなボタン又はボタン用取付具を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタンやボタン用取付具として、これらの本体と、本体に取り付けられるキャップ(シェルとも呼ばれる)とを含むものが知られている。キャップの外側面は、ボタン又はボタン用取付具の表面となり、ここに文字、ロゴ等のデザインが印刷、刻印等される場合もある。このようなキャップを有するボタンの一例は、例えば実開昭63−22107号公報に開示されており、該公報の図1にキャップであるシェル部材4が示される。このようなキャップは、その周側部をボタン本体(上記公報図1において釦バック部材3)に対し加締め付けることにより、ボタン本体に取り付けられる。上述したようにキャップの外側面はボタン等の表面となるため、キャップは、比較的傷の付き難い銅又は銅合金から一般的に形成されている。しかし、銅又は銅合金製のキャップは、ダイ等を使用してキャップの周側部を本体に対して加締め加工する際に、ダイ等を離すと、変形した周側部が若干元に戻るスプリングバックが生じ易い。そのため、ボタン本体に対するキャップの連結力が経時的に弱まるおそれがあり、この場合、ボタン本体に対してキャップが回転してしまう。この場合、キャップの外側面すなわちボタンの表面に、方向付けされた文字等のデザインが付され、そのようなボタンが衣服等に所定の配向で取り付けられていると、キャップの回転により、そのデザインの配向がずれるという問題があった。このような点を解決するため、上記実開昭63−22107号公報では、キャップ(シェル部材6)に別個の補強部材(10)を付加する技術を提案している(同公報図3及び4参照)。
【0003】
しかしながら、キャップとは別個の部品を付加することは、部品数の増加によるコスト増を招き、ボタン等の製造工程も面倒になる。また、銅又は銅合金の材料費は比較的高価である。他方、キャップの材料としてスプリングバックが比較的生じ難いアルミニウムやアルミニウム合金を使用した場合、キャップの外側面に傷が付き易くなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−22107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、その目的は、部品数を増やすことなく、経時的に生じ得るキャップの本体に対する回転を防ぐことができ、コスト的にも有利なキャップ、ボタン類、及びボタン類形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一側面によれば、ボタン又はボタン用止具のキャップであって、前記キャップは底部と底部の端縁部にて、底部から立ち上がる周側部とを有し、前記キャップは、底部及び底部から立ち上がる周側部にかけて、第1の材料からなる内側層と、第1の材料とは異なる第2の材料から外側層とが連続して積層されてなり、前記第1の材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とするキャップが提供される。
【0007】
本発明では、ボタン又はボタン用止具の1部品であるキャップを、第1の材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金からなる内側層と、内側層の一面に積層した、アルミニウム又はアルミニウム合金とは異なる第2の材料からなる外側層とから構成する。キャップは、底部と底部の端縁部から立ち上がる周側部とを有し、内側層と外側層とは底部及び周側部にかけて連続して積層される。外側層をなす第2の材料の具体例としては、銅又は銅合金を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、他にニッケル又はニッケル合金、亜鉛又は亜鉛合金等を挙げることができる。銅合金としては、例えば、銅−亜鉛系や、銅−すず系がある。ニッケル合金としては、例えば、ニッケル−銅系や、ニッケル−銅−亜鉛系がある。亜鉛合金としては、例えば、亜鉛−すず系や、亜鉛−アルミニウム系がある。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記第2の材料におけるビッカース硬さは、第1の材料におけるビッカース硬さよりも硬いことを特徴とする。これにより、ボタン又はボタン用止具の本体に対しキャップの周側部を加締める際、内側層のアルミニウム又はアルミニウム合金により加締め時のスプリングバックを低減することができる。また、外側層がアルミニウム又はアルミニウム合金よりもビッカース硬さが硬い材料からなるため、キャップの外側面に傷が付き難い。本発明では、例えば、前記第1の材料のビッカース硬さを、26Hv以上95Hv以下にすると共に、前記第2の材料のビッカース硬さを、100Hv以上175Hv以下にすることができる。このようなビッカース硬さの範囲にある第1及び第2の材料をそれぞれ内側層及び外側層として使用することにより、キャップの外側面が傷付き難いキャップを提供することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記第1の材料は、引っ張り強さが260N/mm2未満であり、前記第2の材料は、引っ張り強さが260N/mm2以上である。キャップの周側部の加締め時に生じ得るスプリングバックは、一般に、引っ張り強さ260N/mm2を超えると大きくなるため、スプリングバックを低減するためにはキャップの材料の引っ張り強さを260N/mm2未満にすることが望ましいが、この場合、キャップの強度も落ちてしまう。本実施形態では、内側層の引っ張り強さを260N/mm2未満とし、外側層の引っ張り強さを260N/mm2以上とすることにより、内側層のスプリングバックを低減しつつ外側層で強度を確保することができる。本発明において、例えば、前記第1の材料の引っ張り強さを200N/mm2以下にすることができる。この場合、上記スプリングバックを更に低減することができる。
【0010】
本発明の別の側面によれば、ボタン類本体と、ボタン類本体に対し周側部を加締めることにより取り付けられるキャップとを含むボタン類であって、前記キャップは、底部と底部の端縁部にて、底部から立ち上がる周側部とを有し、前記キャップは、前記底部及び前記底部から立ち上がる前記周側部にかけて、前記ボタン類本体側を向く、第1の材料からなる内側層と、内側層の前記ボタン類本体とは反対側の面に積層した、第1の材料とは異なる第2の材料からなる外側層とが連続して積層されてなり、前記第1の材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とするボタン類が提供される。
【0011】
本発明において、ボタン類はボタン又はボタン用取付具であり、キャップは上述した本発明の一側面に係るキャップに相当する。本発明では、ボタン類の1部品であるキャップを、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる内側層と、内側層の一面に積層した、アルミニウム又はアルミニウム合金とは異なる第2の材料からなる外側層とから構成する。キャップは、底部と底部の端縁部から立ち上がる周側部とを有し、内側層と外側層とは底部及び周側部にかけて連続して積層される。第2の材料として、第1の材料よりもビッカース硬さが硬いものを選択することにより、ボタン類本体に対しキャップの周側部を加締める際、内側層のアルミニウム又はアルミニウム合金により加締め時のスプリングバックを低減することができる。また、外側層をアルミニウム又はアルミニウム合金よりもビッカース硬さが硬い材料とすれば、キャップの外側面に傷が付き難い。外側層をなす第2の材料の具体例としては、銅又は銅合金を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、他にニッケル又はニッケル合金、亜鉛又は亜鉛合金等を挙げることができる。
【0012】
本発明の更に別の側面によれば、ボタン類本体とキャップを含むボタン類を形成する方法であって、第1の材料からなる第1板と、第2の材料から第2板を重ね合わせる工程と、重ね合わせた第1板及び第2板を打ち抜くと共に、第1板が内側になるようにして底部と底部の端縁部から立ち上がって延びる周側部とを有するカップ形状のキャップを成形する工程と、前記キャップの周側部を前記ボタン類本体に対し加締めて、前記ボタン類本体を保持する工程とを含むボタン類形成方法が提供される。
【0013】
本発明において、ボタン類はボタン又はボタン用取付具である。本発明では、重ね合わせた第1板と第2板からキャップを打ち抜くと同時にカップ形状に成形する。そのため、例えば、キャップにめっきを行っても、めっき液が第1板と第2板との間に貯まることはない。本発明において、第1の材料は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金であり、第2の材料は例えば銅又は銅合金、ニッケル又はニッケル合金、亜鉛又は亜鉛合金等である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ボタン又はボタン用止具の1部品であるキャップを、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる内側層と、内側層の一面に積層した、アルミニウム又はアルミニウム合金とは異なる第2の材料からなる外側層とが底部及び周側部にかけて連続するように構成する。これにより、部品数を増やすことなく、キャップの周側部の加締め時に生じ得るスプリングバックを低減することが可能となる。そのため、経時的に生じ得るキャップの本体に対する回転を防ぐことができる。また、キャップの一部に銅又は銅合金に比べて安価なアルミニウム又はアルミニウム合金を使用するため、従来の銅又は銅合金のみからなるキャップに比べコスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るキャップを使用したボタン用止具の一実施形態を示す断面図である。
図2図2は、止具本体の断面図である。
図3図3は、止具本体の低面図である。
図4図4は、図1におけるキャップの周側部付近の拡大図である。
図5図5は、第1板と第2板を重ね合わせる状態を示す工程説明図である。
図6図6は、キャップを止具本体に取り付ける直前の状態を示す工程説明図である。
図7図7は、キャップの周側部を加締めた状態を示す工程説明図である。
図8図8は、図1のボタン用止具を用いて雌スナップボタンを生地に取り付けた状態を示す断面図である。
図9図9は、本発明に係るキャップを使用したボタンの一実施形態を示す断面図である。
図10図10は、図9におけるキャップの周側部付近の拡大図である。
図11図11は、図9のボタンが生地に取り付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で変更等がなされ得る。図1は、本発明に係るキャップ20を使用するボタン類の一例であるボタン用止具(以下、単に「止具」ともいう)10の一実施形態を示す断面図である。止具10は、ほぼ円板状のベース11と、ベース11から上方(上下は図1の紙面に基づく)にベース11と同心状に延びる円筒状のポスト12とを有する。止具10は、図8に示すように、ポスト12を生地1に貫通させた後に加締めることにより、雌スナップボタン30等のボタンを生地1に取り付けるためのものである。止具10は、ボタン類本体としての止具本体13とキャップ20の2部品のみから構成される。止具本体13は、金属製の板材を絞り加工等して形成され、ポスト12と、ベース11の上面側部分であるベースコア14とをなす。キャップ20は、図4に拡大して示すように、その周側部21はC字状に加締められた状態であり、止具本体13のベースコア14の上面の半径方向外側端部に係止される。これにより、キャップ20は、ベースコア14に対しその下面を下方から覆うように取り付けられ、ベース11の下面側部分をなす。キャップ20は、周側部21が加締められる状態の前は、図6に示すように、円板状の底部22と、底部22の縁端部(半径方向外側端部)から上方に延びる周側部(すなわち外周部)21とを有するカップ形状である。キャップ20の下面22aは止具10の表面となる。以下、キャップ20の下面22aを止具10の表面22aとも呼ぶ。なお、周側部21は底部22の端縁部から上方に延びるともいえる。
【0017】
図2及び3は、止具本体13の断面図及び底面図である。止具本体13のベースコア14は、周方向等間隔で三つのホームべース形状の開口15を有する。各開口15は、そのホームベース形状の山形頂部15aが半径方向外側を向き、山形頂部15aに対向するホームベース形状の底辺15bが半径方向内側を向くように配置される。各開口15は、ベースコア14を、底辺15bを除いてホームべース形状に切開した後、この切開部分15cをベースコア14の底面側に180度折り曲げることにより形成される。これにより、三つの切開部分15cが止具本体13のポスト12の下方開口をほぼ塞ぐようになる。また、止具本体13のベースコア14は、半径方向内側部分14aと、半径方向内側部分14aよりも若干下方にある半径方向外側部分14bと、これら半径方向内側及び外側部分14a、14b間を連結する連結部14cとを有する。開口15から折り曲げられた切開部分15cは半径方向外側部分14bの最下端よりもわずかに上方にある。また、各開口15の山形頂部15aは半径方向外側部分14bの範囲にあり、底辺15bは半径方向内側部分14aの範囲にある。
【0018】
キャップ20は、止具本体13のベースコア14に対面する内側層20Aと、内側層20Aの下面全域に積層された外側層20Bとからなる。従って、内側層20A及び外側層20Bは、キャップ20の底部22及び周側部21にかけて連続して積層される。ここで、「連続」とは、内側層20Aと外側層20Bとが隙間無く全域にわたって積層されていることをいう。本実施形態において、内側層20Aは、第1の材料の一例であるアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、外側層20Bは、第2の材料の一例である銅又は銅合金からなる。内側層20Aの厚さは一例として0.2mmであり、外側層20Bの厚さは一例として0.15mmである。そのため、キャップ20の厚さは0.35mmであり、この厚さは、銅又は銅合金のみからなる従来のキャップの厚さとほぼ同じである。そのため、キャップ20では、アルミニウム又はアルミニウム合金に比べ高価な銅又は銅合金の使用量を従来のキャップに比べ減らすことができる。なお、本実施形態における内側層20A及び外側層20Bのビッカース硬さ、引っ張り強度、比重等を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1にて、26Hv〜95Hvとは26Hv以上95Hv以下を示し、100Hv〜175Hvは100Hv以上175Hv以下を示す。また、比重にて2.5g/cm〜2.8g/cmは2.5g/cm以上2.8g/cm以下、8.4g/cm〜8.9g/cmは8.4g/cm以上8.9g/cm以下を示している。表1にて、内側層20Aのビッカース硬さと外側層20Bのビッカース硬さとでは、内側層20Aの下限値は外側層20Bの下限値より小さく、また、内側層20Aの上限値は外側層20Bの上限値より小さいことがわかる。また、外側層20Bのビッカース硬さにて、105Hv以上が好ましい。表1から分かるように、外側層20Bは内側層20Aよりもビッカース硬さが硬い。そのため、外側層20Bが規定する止具10の表面22aは、銅又は銅合金のみからなる従来のキャップと同様に傷が付き難い。また、内側層20Aの引っ張り強さが260N/mm2未満であるため、キャップ20の周側部21をカーリング加工する際、銅又は銅合金のみからなる従来のキャップをカーリング加工する場合に比べ、内側層20Aはスプリングバックが生じ難くなり、カーリング加工した状態で、ベースコア14をしっかりと保持することができる。なお、より好ましくは、内側層20Aの引っ張り強さが200N/mm2以下であると、スプリングバックがより生じ難くなるのでよい。更に、内側層20Aの比重が2.5〜2.8g/cm3であるため、同じ厚さの銅又は銅合金のみからなる従来のキャップに比べ、軽量となる。銅又は銅合金のみからなる従来のキャップに比べて、重量にして30%〜40%軽いキャップを得ることができる。一例であるが、具体的に使用可能な材料としては、硬度26Hv〜95Hvの第1材料は、A1100−O(純アルミ)、A1100−H24(純アルミ)、A5052−O(Al−Mg系)、A5052−H34(Al−Mg系)、A5052−H112(Al−Mg系)、A5056−H34(Al−Mg系)、A5056−H112(Al−Mg系)、A5083−O(Al−Mg系)、A6063−T5(Al−Mg−Si系)などがある。また、硬度100Hv〜175Hvの第2材料は、C2600−H(黄銅1種)、C2680−H(黄銅1種)、C4250−H(すず入り黄銅)、C7540R−1/2H(洋白)などがある。洋白は銅と亜鉛とニッケルから構成される合金である。
【0021】
次に、上述したボタン用止具10を製造する工程について説明する。図5は、キャップ20の内側層20Aとなる帯状の第1板23と、外側層20Bとなる帯状の第2板24とを重ね合わせる工程を示す。第1板23はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、第2板24は銅又は銅合金からなる。第1及び第2板23、24はそれぞれ図示しない供給ロールから巻き出された後、一対の圧着ローラ25間に通されて互いに積層される。次いで、下方のダイ26と上方のパンチ27との間で第1及び第2板23、24からキャップ20が打ち抜かれると同時にカップ形状に成形される。すなわち、キャップ20は、ダイ26とパンチ27間で打ち抜かれる際、底部22及び周側部21を有するカップ形状(図6参照)に成形される。なお、図6においてダイ28に接する側が内側層20Aとなり、図6において止具本体13に接する側が外側層20Bとなる。この成形により、内側層20Aと外側層20Bは、これらの間に接着剤等を用いることなく一体化される。しかしながら、内側層20Aと外側層20Bの積層を確実にするため、これらの間に接着剤等を用いたり、あるいは内側層20A又は(及び)外側層20Bの積層側面に微細な凹凸を設ける等することができる。カップ状のキャップ20は、次いで洗い加工された後、止具本体13に対し組み付けられる。
【0022】
図6は、キャップ20を止具本体13に取り付ける直前の状態を示す。この際、キャップ20はダイ28上に載置され、キャップ20の周側部21は底部22の半径方向外側端から上方に突出している。また、キャップ20の底部22の上面上に止具本体13が配置される。この状態のキャップ20及び止具本体13に対し止具10、上方からパンチ29が降下する。パンチ29は、環状の下方部分の下面29aに上方に半円形状に窪む環状の凹部29bを有する。このようなパンチ29が降下すると、図7に拡大して示すように、キャップ20の周側部21がパンチ29の凹部29bに沿って半径方向内側へとC字状に加締められ、止具本体13のベースコア14の上面の半径方向外側端部に係止される。これにより、キャップ20が止具本体13に対し取り付けられる。なお、上述したように、内側層20Aにより、キャップ20の周側部21の加締め時のスプリングバックが低減する。そのため、経時的にキャップ20が止具本体13に対し回転してしまうようなことが生じ難くなる。
【0023】
図8は、ボタン用止具10を用いてボタンの一例である雌スナップ30を生地1に取り付けた状態を示す断面図である。雌スナップ30は、円形の底部31と、底部31の半径方向外側端から上方(図5の紙面に基づく)に延びる環状の側部32とを有し、側部32の内側に、図示しない雄スナップの突起を受け入れるスペース33が規定される。側部32は、その上端部に半径方向外側に拡張する拡張部34を含み、拡張部34の内側に、雄スナップの突起との係合を確実にするためのばね35が配置される。雌スナップ20の底部31には開口36が設けられる。雌スナップ30を生地1に取り付ける際、止具10のポスト12は生地1を上方に貫通し、次いで雌スナップ30の開口36を通った後、図示しないパンチで加締められる。これにより、図8に示すように雌スナップ30が生地1に固定される。
【0024】
図9は、本発明に係るキャップ50を使用するボタン類の一例であるボタン40の一実施形態を示す断面図である。ボタン40は、外周が円形の胴部41と、胴部41の上端(上下は図9の紙面に基づく)から半径方向外側に外径が拡張する頭部42とを有する。ボタン40は、ボタン類本体としてのボタン本体43と、キャップ50と、頭部42の内部に配置される補強板44との3部品から構成される。ボタン本体43は、金属板から形成され、胴部41の周側部43aと、胴部41の底部43bと、底部41bから上方の周側部43aの内部へと延びる円筒部45と、周側部43aの上端から半径方向外側に延びる頭部底部43cと、頭部底部43cの半径方向外側端から上方に延びる頭部内側部43dとを含む。胴部41の底部43bにおける円筒部45に対応する部分は開口46となっている。円筒部45は、径が上方へと次第に縮小し、円筒部45の上端は補強板44から離れている。円筒部45の上端部は半径方向外側に若干拡張して、後述するボタン用止具60の軸部62の変形後の先端部62aを係止する係止部45aをなす。ボタン40のキャップ50は、その周側部51が、図10に拡大して示すように、ボタン本体43の頭部内側部43dに対し外側から加締め付けれる。これにより、キャップ50はボタン本体43に取り付けられ、頭部42の上面側部分をなす。キャップ50の上面はボタン40の表面となり、文字、ロゴ等のデザインが付され得る。
【0025】
キャップ50は、ボタン本体43を向き、補強板44に対面する内側層50Aと、内側層50Aの上面全域に積層された外側層50Bとからなる。内側層50Aは、第1の材料の一例であるアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、外側層50Bは、第2の材料の一例である銅又は銅合金からなる。内側層50A及び外側層50Bのビッカース硬さ、引っ張り強度及び比重は、第1実施形態のキャップ20とほぼ同様である。
【0026】
図11は、ボタン40をボタン用止具60を用いて生地2に取り付けた状態を示す断面図である。止具60は、ほぼ円板状のベース61と、ベース61から上方に延びる軸部62とを有する。また、止具60は、軸部62と、ベース61の内部補強部であるベースコア63とをなす止具本体63と、ベースコア63に下方から被せるベースキャップ64とから構成される。このベースキャップ64は本発明に係るキャップではない。ボタン40を生地2に取り付ける際、止具60の軸部62は生地2を上方に貫通し、次いでボタン40の開口46から円筒部45を通った後、補強板44に突き当たる。これにより、軸部62の先端部62aが潰れて半径方向外側に若干膨らむ。このように変形した軸部62の先端部62aは、円筒部45の上端開口を通過不能となり、係止部45aにより係止される。これにより、図11に示すようにボタン40が生地2に固定される。
【符号の説明】
【0027】
1、2 生地
10 ボタン用止具
11 ベース
12 ポスト
13 止具本体
14 ベースコア
20、50 キャップ
20A、50A 内側層
20B、50B 外側層
21、51 周側部
22 底部
30 雌スナップ
40 ボタン
41 胴部
42 頭部
43 ボタン本体
60 ボタン用止具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11