【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的のうちの少なくとも1つ1つは、独立請求項の特徴を有する安全制動機および方法によって達成される。
【0010】
エレベータ昇降路内のガイドレールおよび/または制動レールに沿って移動可能なように配置された、少なくとも1つの移動体を有するエレベータ装置のための安全制動機は、必要とされるときにガイドレールおよび/または制動レールにおいて移動体を制動および固定するのに適している。安全制動機は、制動体を実装するための支持体、ならびにガイドレールおよび/または制動レールに対して制動体を位置決めするための制御プレートまたは基本プレートを備える。制動体は少なくとも2部品構造であり、第一制動要素および第二制動要素を備える。2つの制動要素は、実質的に互いに無関係に移動可能である。第一制動要素は実質的に、上方向へのガイドレールおよび/または制動レールに沿った移動体の移動の場合の制動および固定のみのために、設計されている。第二制動要素は実質的に、下方向へのガイドレールおよび/または制動レールに沿った移動体の移動の場合の制動および固定のみのために、設計されている。制御プレートは、制動要素を基本位置に保持する構造になっているので、基本プレートと称されることも可能である。これらの用語はこの関連性において同等である。
【0011】
2つの制動要素は、必要とされるときに、ガイドレールおよび/または制動レールとまとめて接触させられるか、または互いに対して調整されることが可能である。制動体の移動方向に応じて、制動体とガイドレールおよび/または制動レールとの間の摩擦対により、対応する制動要素が必ず引き込まれて、末端または第二制動位置にもたらされる。
【0012】
これは、上方向および/または下方向に対する制動力のそれぞれの要件に制動体が容易に適合して、制動機の動作をより確実かつより経済的にするという利点を有する。たとえば、制動要素の対応する摩耗の場合に、制動体の制動要素の摩耗が方向によって異なっていれば、これだけを交換することが可能である。このため、任意の場合における安全制動機の動作は、従来より周知の安全制動機と比較して、より経済的である。加えて、必要とされる制動要素は別の制動要素とは無関係に動くことができるので、安全制動機の空間の必要性が最適化されることが可能である。
【0013】
具体的には装置は、ガイドレールおよび/または制動レールが制動作用を生じるために制動体とカウンタ制動体との間で締め付けられることが可能なように配置された、カウンタ制動体を備える。制動力はこの場合、特にガイドレールおよび/または制動レールに対してカウンタ制動体によって印加される力によって、設定される。たとえば、カウンタ制動体は、有効な制動力が設定可能となる板バネで形成されることが可能である。ガイドレールまたは制動レールに対する制動要素の調整を通じて、支持体は好ましくはカウンタ制動体とともに、ガイドレールまたは制動レールが制動体とカウンタ制動体との間で締め付けられるように、変位させられる。
【0014】
制御プレートは好ましくは、静止位置および制動位置において位置決め可能である。位置決めは、制御プレートの線形移動および/または枢動移動によって行われることが可能である。たとえば、制御プレートはこのようにして、線形移動、枢動移動、または線形移動と枢動移動の組み合わせによって、静止位置から制動位置に位置決めされることが可能である。加えて、制動位置から静止位置に戻る制御プレートの位置決めも、線形移動、枢動移動、または線形移動と枢動移動の組み合わせによって同様に行われることが可能である。
【0015】
これは、安全制動機の作動の目的のため、制御プレートのみが支持体内に位置決めされ、これによって制動体を第一制動位置に移動させるかまたはレールに対して調整するという利点を有する。このため、安全制動機の作動は移動方向とは無関係に行われることが可能であり、作動目的のため、たとえば安全制動機の筐体全体が変位させられる必要はない。これは安全制動機、特にその作動機器の構造を、従来技術と比較してより単純かつ経済的にする。加えて、単なる制御プレートの静止位置から制動位置への、およびその反対の線形移動および枢動移動が、構造的に単純かつ確実なやり方で、実現されることが可能である。
【0016】
制御プレートは好ましくは、具体的にはスイッチを切ることが可能な電磁石によって、静止位置に保持されることが可能である。これは、この種の構造が簡単に実現されることが可能であり、したがって経済的であるという利点を有する。また、たとえば停電の場合に、電磁石のスイッチが切れ、これによって安全制動機の制動作用が起動して、非常制動機としての安全制動機の動作を可能にすることが、保証される。明らかに、たとえば電池またはコンデンサなどの非常用電源が、一時的電源遮断を切り抜けるように提供されることが可能である。そしてこの種の非常用電源は明らかに、エレベータ装置の安全または制御概念に組み込まれる。
【0017】
制御プレートを静止位置に保持するための、具体的にはスイッチを切ることが可能な電磁石の使用の代替案として、グリッパまたはピンなどの機械的係止装置の使用も考えられる。これは、制御プレートが静止位置から制動位置へ移動可能なように、制御プレートと解放可能に接続されることが可能である。
【0018】
制御プレートは好ましくは、圧縮バネによって制動位置になるよう移動可能である。これは、制御プレートが、たとえば停電の場合に、制動位置の方向への少なくとも1つの圧縮バネによる制御プレートに対する力の印加によって、静止位置から制動位置まで確実に移動可能であるという利点を有する。
【0019】
静止位置から制動位置への制御プレートの位置決めのための圧縮バネの使用の代替案として、位置決めはまた、専門家にとって周知のものなど、油圧、空気圧、または電気駆動部によって行われることも可能である。加えて、たとえば引張バネもまた考えられる。
【0020】
第一制動要素および/または第二制動要素は好ましくは枢動可能である。具体的には、第一制動要素および/または第二制動要素は、好ましくは支持体の中または上に配置された共通心軸を中心に、具体的には反対方向に、枢動可能である。これは、制御プレートの位置決めおよび制動要素の対応する枢動を通じて、これらがガイドレールおよび/または制動レールと接触させられることが可能であるという利点を有する。これは、安全制動機を位置決めするために複雑な機器を必要としないので、構造的に簡単に、確実に、および経済的に実現されることが可能である。加えて、各事例において個別の制動要素のみが枢動させられるので、有利なことに制動要素の作動に必要な初期力は小さい。
【0021】
第一制動要素および/または第二制動要素は好ましくは、第一制動要素および/または第二制動要素がガイドレールおよび/または制動レールと接触するように、基本位置から第一制動位置まで枢動可能である。
【0022】
本発明の意味において、第一制動要素および/または第二制動要素がガイドレールおよび/または制動レールと接触する第一制動位置にある場合には、実質的に制動または固定が生じることはない。
【0023】
好ましくは、第一制動要素および/または第二制動要素は、ガイドレールとの摩擦対によって、第一制動位置から第二制動位置まで枢動可能である。
【0024】
これは、ガイドレールおよび/または制動レールと接触している少なくとも1つの制動要素の単純な枢動移動によって、これが第一制動位置から第二制動位置にもたらされることが可能であり、これが構造的に簡単に実現されることが可能であるという利点を有する。ガイドレールおよび/または制動レールと対応する制動要素との間の相対移動のおかげで、制動要素のさらなる枢動が行われることが可能となり、これによって安全制動機の制動作用が強化される。この点に関して、このさらなる枢動が相対移動の方向に直接的に依存することは、特に有利である。したがってこの方向は、2つの制動要素のうちのどちらが最終的な第二制動位置まで枢動させられるかを決定する。下方移動および上方移動に対する制動力はこのように、制動要素の形状によって個別に事前決定されることが可能である。
【0025】
具体的には、第二制動位置から第一制動位置へのガイドレールおよび/または制動レールとの摩擦対を通じての第一制動要素および/または第二制動要素の戻り枢動による安全制動機の解放が、行われることが可能である。これは具体的には、第一制動位置から第二制動位置への対応する制動要素の枢動のための相対移動に対する逆相対移動に対応する。これは、たとえば追加の再設定機器が必要ではないので、第二制動位置から第一制動位置への対応する制動要素の枢動による安全制動機の解放が、構造的に簡単かつ確実に行われることが可能であるという利点を有する。対応する制動要素は、適切な戻り枢動によって、第一制動位置から基本位置にもたらされることが可能である。
【0026】
制御プレートは好ましくは、第一制動位置から第二制動位置までの第一制動要素および/または第二制動要素の枢動によって、制動位置から静止位置まで移動可能である。言い換えると、第一制動位置から第二制動位置までの制動要素のうちの1つの枢動を通じて、制御プレートは制動位置から静止位置に戻される。
【0027】
これは、一方では第一および/または第二制動要素はその静止位置から制動位置への制御プレートの位置決めによって第一制動位置まで移動させられるという利点を有する。他方では、第一制動要素または第二制動要素の、ガイドレールおよび/または制動レールとの摩擦対によって生じるその後のさらなる移動を通じて、制御プレートはその制動位置から静止位置まで戻される。基本位置において、制御プレートは、係止装置によって再び保持されることが可能である。係止装置は、たとえばスイッチを切ることが可能な電磁石として構築されることが可能である。こうして電磁石は制御プレートを静止位置で保持する。必要とされるときには、電磁石はスイッチが切られ、制御プレートは制動位置に変位され、この場合にはこれは制動要素を第一制動位置まで移動させる。移動体の移動方向に応じて、対応する制動要素は第二制動位置まで移動させられ、これによってガイドレールまたは制動レールが締め付けられて移動体が制動される。同時に、第一制動位置から第二制動位置への対応する制動要素の変位の際に、制御プレートは、記載されたように、電磁石に対して戻されることが可能である。今や制御プレートを静止位置に保持するために単に電磁石のスイッチが入れられればよいので、これは特に有利である。さらなる復元エネルギーは必要とされず、これはさらに安全制動機の構造設計を簡素化し、これをより安価にする。
【0028】
第一制動要素および/または第二制動要素は好ましくは、偏心ディスクとして構築される。これは有利なことに、安全制動機の小型で簡単な構造モードを可能にする。
【0029】
偏心ディスクによって、本発明の意味において、望ましい外部プロファイルを有するディスクが理解され、これは幾何学的中心点からずれた軸を中心に枢動可能なように実装されている。たとえば、適切に実装されたカムディスクは、本発明の意味において偏心ディスクであってもよい。
【0030】
偏心ディスクは好ましくは、ガイドレールおよび/または制動レールに対向する側の部分において湾曲している。具体的には、第一制動位置においてガイドレールおよび/または制動レールと接触している部分が湾曲している。特に好ましくは、偏心ディスクの半径は、第一から第二制動位置への枢動方向にしたがって増加する。これは、湾曲領域における偏心ディスクとガイドレールおよび/または制動レールとの間の摩擦対を通じて、偏心ディスクが所望の制動作用を実現するために第二制動位置まで確実に枢動可能であるという利点を有する。
【0031】
偏心ディスクは好ましくは、ガイドレールおよび/または制動レールに対向する側の部分が平坦である。具体的には、第二制動位置においてガイドレールおよび/または制動レールと接触するこの部分が平坦である。これは、安全制動機によって高レベルの制動作用を実現するために、偏心ディスクとガイドレールおよび/または制動レールとの間の最大可能な接触域が可能とされるという利点を有する。
【0032】
具体的には、偏心ディスクは第一湾曲部分および第二平坦部分を有する。安全制動機は、第一湾曲部分の領域にわたって締め付けられることが可能であり、第二平坦部分に到達時に、制動のための最大可能な接触域が利用可能である。同時に、平坦域を通じて、偏心ディスクのさらなる回転は停止させられることが可能である。代替案として、連続的に湾曲した偏心ディスクも明らかに使用可能である。この点に関して、制動位置は、偏心ディスクのさらなる回転を防止する当接によって画定されることが可能である。この代替案は、小さい負荷または小さい制動移動にしたがって制動負荷が低いので、小さい負荷または低速の場合に有利となり得る。
【0033】
偏心ディスクは好ましくは、特に偏心ディスクの第一制動位置から第二制動位置までの枢動を通じて、静止位置までの制御プレートの移動のために制御プレートに対して復元力が印加されるように、ガイドレールおよび/または制動レールから離れた側に形成される。
【0034】
制御プレートは好ましくは、制動位置への制御プレートの移動時に、偏心ディスクが第一制動位置まで枢動可能であって、第二制動位置への偏心ディスクの枢動のために制御プレートに対して復元力が印加されるような、接触面を有する。
【0035】
偏心ディスクおよび制御プレートのこの設計は、第二制動位置への偏心ディスクの枢動の際の静止位置への制動プレートの復元が、偏心ディスクと制御プレートとの間の機械的相互作用によって実現可能であるという利点を有する。
【0036】
たとえば、偏心ディスクの外面は、第二制動位置において、ガイドレールおよび/または制動レールから離れた側よりもガイドレールおよび/または制動レールに対向する側の方が、枢動軸からのより大きい間隔を有することができる。この場合、偏心ディスクの離れた側が制御プレートを押圧する。その結果、小型構造モードの安全制動機が有利に実現されることが可能である。静止位置への制御プレートの移動は、偏心ディスクと相互作用する制御プレートのプロファイルの適切な設計を通じて、実現されることが可能である。接触域として、制御プレートは偏心ディスクに対向する側に、たとえば、ガイドレールおよび/または制動レールから離れた偏心ディスクの側が協働できるくさび形表面を有することができる。その結果、第二制動位置への偏心ディスクの枢動の際に、制御プレートは相応に静止位置まで移動させられる。
【0037】
具体的には、制御プレートのくさび形表面は、各制動要素について、第一および第二制動要素の第一制動位置への所望の枢動が行われることが可能なように設計されている。たとえば、第一制動要素のためのくさび形表面は第一方向に配置されることが可能であり、第二制動要素のためには、実質的に第一方向の反対の第二方向に配置されることが可能である。
【0038】
安全制動機は好ましくは、第二制動要素の第二制動域よりも小さい第一制動要素の第一制動域を有する。具体的には、第一制動要素の制動域は第二制動域のせいぜい75%、より具体的にはせいぜい60%である。具体的には、第一制動要素は、第二制動要素の第二制動域のおよそ50%に対応する第一制動域を有する。
【0039】
上方向の移動体の制動の場合には、下方向の制動の場合よりも小さい制動力が必要とされるので、これは安全制動機の経済的な設計の利点を有する。これは、第一制動要素および第二制動要素の制動域の適切な適応によって、実現可能である。
【0040】
具体的には、制動要素の制動域は、偏心ディスクの平坦な部分によって形成される。
【0041】
好ましくは、制動域は制動要素の、具体的には偏心ディスクの、厚さによって決定される。たとえば、第一制動要素の厚さは第二制動要素の厚さの50%であってもよく、これによって第一制動域は第二制動域の50%となる。
【0042】
第二制動要素は好ましくは、具体的には実質的に同じ制動域を有する2つの部品を備えており、第一制動要素は第二制動要素の制動部品のうちの1つと実質的に等しい第一制動域を有する。これは、たとえば上方向および下方向の制動に同一の制動部品が使用可能であり、各事例において対応する方向のために制動部品の数が選択されるだけでよいという利点を有する。同じ制動部品が使用可能なので、これは取り扱いを簡素化し、加えて在庫管理が簡素化され、このことはますます経済的である。たとえば、制動部品は偏心ディスクまたはその他の制動ディスクとして構築されることが可能である。
【0043】
具体的には、第一制動要素は第二制動要素の2つの制動部品の間に配置される。これは、安全制動機の安定性および制動作用が改善されるという利点を有し、このことは動作中の安全制動機の信頼性を高める。
【0044】
好ましくは、少なくとも第一制動要素、第二制動要素、または制御プレート、あるいはこれらのいずれかの組み合わせの位置監視および/または状態監視のための少なくとも1つのセンサが、安全制動機におよび/またはその中に配置される。これは、たとえば摩耗または機能不良の発生が早めに認識可能であるという利点を有し、このことは動作の信頼性をさらに高める。
【0045】
「状態監視」は特に、制動要素の摩耗、発生する制動力、および制動要素の枢動速度、ならびにこれらのいずれかの組み合わせを監視するのに役立つ。
【0046】
第一制動要素および/または第二制動要素は好ましくは、制御プレートの方向に付勢される。具体的には、付勢は少なくとも1つのバネによって行われる。これは、制御プレートの静止位置において、制動要素がガイドレールおよび/または制動レールの方向に意図せず枢動して安全制動機が意図せず起動することがないことが保証されるという利点を有する。バネは引張バネとして実行されることが可能であり、これは第一制動要素および第二制動要素を基本位置の方向に付勢する。引張バネの代わりに、らせんバネまたは磁気引き込みシステムが可能である。
【0047】
さらなる態様は、上記で記載されたような安全制動機を備えるエレベータ装置に関する。
【0048】
付加的な態様は、必要とされるときに安全制動機によってエレベータ装置の移動体を制動および固定する方法に関する。具体的には、好ましくは先に記載されたような安全制動機が使用される。安全制動機は、ガイドレールおよび/または制動レールに対して制動体を位置決めするための制御プレートを備える。制動体は、第一制動要素および第二制動要素を備える。第一制動要素は実質的に、上方向へのガイドレールに沿った移動体の移動の場合の制動のみのために、設計されている。第二制動要素は実質的に、上方向と反対の、第二の下方向へのガイドレールに沿った移動体の移動の場合の制動のみのために、設計されている。方法は、ガイドレールおよび/または制動レールに第一および/または第二制動要素を位置決めすることによって、移動体を制動および/または固定するステップを備える。この場合、第一制動要素および第二制動要素は好ましくは、ガイドレールまたは制動レールに対して制御プレートによって調整されて第一制動位置にもたらされる。上方向へのガイドレールに沿った移動体の移動時に、第一制動要素は第二制動要素とは無関係に、第一制動位置から第二制動位置にもたらされる。反対に、下方向へのガイドレールに沿った移動体の移動時には、第二制動要素は第一制動要素とは無関係に、第一制動位置から第二制動位置にもたらされる。
【0049】
一用途において、この種の安全制動機は、エレベータ装置の装備および/または再装備に使用される。これは、上述のようなエレベータ装置を製造するために、上述のような安全制動機をエレベータ装置におよび/またはその中に設置するステップを含む。
【0050】
本発明のさらなる特徴および利点は、より良い理解のための実施形態によって、本発明を実施形態に限定することなく、以下により詳細に説明される。