特許第6181780号(P6181780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181780
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20170807BHJP
   A01D 41/127 20060101ALI20170807BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20170807BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A01D41/12 B
   A01D41/127
   A01F12/60
   A01D69/00 301
   G01N21/47 Z
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-1253(P2016-1253)
(22)【出願日】2016年1月6日
(62)【分割の表示】特願2011-269181(P2011-269181)の分割
【原出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-63829(P2016-63829A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】関 光宏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 淳
(72)【発明者】
【氏名】松藤 和憲
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−313638(JP,A)
【文献】 特表2003−526079(JP,A)
【文献】 特開2002−223629(JP,A)
【文献】 特開2001−204240(JP,A)
【文献】 特開2000−4663(JP,A)
【文献】 特開平8−172887(JP,A)
【文献】 特開2006−246831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D41/00−41/16
A01D69/00
A01F12/46
A01F12/50
A01F12/60
G01N21/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈を脱穀処理して得られた穀粒を回収するように構成されているコンバインであって、
脱穀処理された穀粒が存在する穀粒存在空間を形成する壁部の外方側に設置される状態で、前記穀粒存在空間に存在する穀粒の内部品質を前記壁部に備えられた光透過部を通して計測可能な光学式の内部品質計測手段が備えられ
前記穀粒存在空間が、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒タンクの内部空間であり、
脱穀処理された穀粒が、前記穀粒タンクの上部に形成された供給口から、回転羽根により前記穀粒タンク内に跳ね飛ばし供給され、かつ、前記供給口から跳ね飛ばされた穀粒の一部が、前記穀粒タンク内部の前記光透過部に対応する箇所に設けられた受け止め保持部によって受け止められるように構成され、
前記受け止め保持部は、前記穀粒タンクにおける前記供給口が設けられた側壁部とは異なる側壁部に設けられ、且つ、穀粒を受け止め保持する保持状態と穀粒を前記穀粒タンク内に排出する排出状態とに切り換え可能であり、
前記受け止め保持部は、上部に穀粒を取り込む開口が形成されるとともに、底部に排出口が形成され、
前記受け止め保持部に、前記排出口を閉じて穀粒を保持する閉状態と前記排出口を開放して穀粒を排出する開状態とに切り換え自在な底板と、前記受け止め保持部に穀粒が所定量以上供給されたことを検出する供給状態検出手段と、が備えられ、
前記供給状態検出手段によって前記受け止め保持部に所定量以上の穀粒が供給されたことが検出されると、前記内部品質計測手段による計測が実行され、前記底板は、前記内部品質計測手段による計測が終了すると前記開状態に切り換わり、穀粒を排出させた後に前記閉状態に戻されるコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取穀稈を脱穀処理して得られた穀粒を回収するように構成されているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインは、機体前部の刈取部により植立穀稈を刈り取り、脱穀装置の内部で駆動回転する扱胴により刈取穀稈の穂先部を扱くことにより脱穀処理して、その脱穀処理により得られた穀粒を脱穀装置の横側に備えられた穀粒タンクに向けて搬送して貯留するように構成されている。そして、このようなコンバインにおいて、従来では、脱穀処理した穀粒を貯留する穀粒タンクの内部に、脱穀装置から穀粒タンクに搬入されてくる穀粒を計測対象として、例えば、水分量や食味値等の穀粒の内部品質を計測する内部品質計測手段が備えられたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
尚、上記従来構成は、刈取作業の実行中に内部品質計測手段により穀粒の内部品質を計測するようにして、収穫される穀粒の状態を検出してその情報を有効に利用することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−313638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、コンバインでは、脱穀処理の際に、駆動回転する扱胴によって刈取穀稈を扱くことにより脱穀処理するものであり、その脱穀処理の際に細かなワラ屑や粉塵等が多く発生することになる。そして、このような脱穀処理により発生する細かなワラ屑や粉塵が穀粒に混じった状態で穀粒タンクに搬送されることがあり、穀粒タンクの内部には、穀粒の搬送に伴って発生する細かなワラ屑や粉塵等が存在することになる。
【0006】
しかしながら、上記従来構成では、穀粒タンクの内部に内部品質計測手段が備えられる構成となっているが、上述したように、穀粒タンクの内部は細かなワラ屑や粉塵等の塵埃が存在することから、このような塵埃が内部品質計測手段による計測処理に悪影響を与えるおそれがあり、穀粒の内部品質を精度よく計測できないおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、刈取作業の実行中に内部品質計測手段により穀粒の内部品質を精度よく計測することが可能となるコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンバインは、刈取穀稈を脱穀処理して得られた穀粒を回収するように構成されているものであって、その第1特徴構成は、
脱穀処理された穀粒が存在する穀粒存在空間を形成する壁部の外方側に設置される状態で、前記穀粒存在空間に存在する穀粒の内部品質を前記壁部に備えられた光透過部を通して計測可能な光学式の内部品質計測手段が備えられ
前記穀粒存在空間が、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒タンクの内部空間であり、
脱穀処理された穀粒が、前記穀粒タンクの上部に形成された供給口から、回転羽根により前記穀粒タンク内に跳ね飛ばし供給され、かつ、前記供給口から跳ね飛ばされた穀粒の一部が、前記穀粒タンク内部の前記光透過部に対応する箇所に設けられた受け止め保持部によって受け止められるように構成され、
前記受け止め保持部は、前記穀粒タンクにおける前記供給口が設けられた側壁部とは異なる側壁部に設けられ、且つ、穀粒を受け止め保持する保持状態と穀粒を前記穀粒タンク内に排出する排出状態とに切り換え可能であり、
前記受け止め保持部は、上部に穀粒を取り込む開口が形成されるとともに、底部に排出口が形成され、
前記受け止め保持部に、前記排出口を閉じて穀粒を保持する閉状態と前記排出口を開放して穀粒を排出する開状態とに切り換え自在な底板と、前記受け止め保持部に穀粒が所定量以上供給されたことを検出する供給状態検出手段と、が備えられ、 前記供給状態検出手段によって前記受け止め保持部に所定量以上の穀粒が供給されたことが検出されると、前記内部品質計測手段による計測が実行され、前記底板は、前記内部品質計測手段による計測が終了すると前記開状態に切り換わり、穀粒を排出させた後に前記閉状態に戻される点にある。
【0009】
構成によれば、刈取作業に伴って脱穀処理された穀粒は回収されることになるが、コンバインの機体内部において、脱穀処理された穀粒が存在する穀粒存在空間を形成する壁部の外方側に内部品質計測手段が設置される。この内部品質計測手段は、光学式に構成されており、穀粒存在空間に存在する穀粒の内部品質を壁部に備えられた光透過部を通して計測することができる。つまり、刈取作業の実行中に内部品質計測手段により穀粒の内部品質を計測することが可能となる。
【0010】
そして、内部品質計測手段は、穀粒存在空間の内部ではなく穀粒存在空間を形成する壁部の外方側に位置するので、穀粒存在空間の内部に多く存在する塵埃が降りかかることがなく、例えば、塵埃が装置内部に侵入して計測処理を阻害する等の塵埃による悪影響を受けるおそれがない。つまり、内部品質計測手段は、塵埃による悪影響を受けるおそれがない良好な環境に位置する状態で穀粒の内部品質を計測することができる。
【0011】
従って、刈取作業の実行中に内部品質計測手段により穀粒の内部品質を精度よく計測することが可能となるコンバインを提供できるに至った。
【0012】
【0013】
又、本構成によれば、刈取作業に伴って刈取穀稈を脱穀処理された穀粒が穀粒タンクにて貯留されるが、この穀粒タンクの内部の壁部に備えられた光透過部を介して内部品質計測手段が穀粒タンクの内部に貯留される穀粒の内部品質を計測することになる。
【0014】
従って、穀粒を回収するためにコンバインでは一般的に備えられる穀粒タンクを利用して、穀粒の内部品質を適切に計測することができる。
【0015】
【0016】
さらに、本構成によれば、光透過部に対応する箇所に備えられた受け止め保持部を保持状態に切り換えることによって、穀粒タンクの内部に供給された穀粒の一部を受け止め保持することができる。
【0017】
そして、受け止め保持部が穀粒を受け止め保持している状態で、内部品質計測手段がその受け止め保持部に受け止め保持されている穀粒の内部品質を計測し、内部品質の計測が終了したのちに受け止め保持部を排出状態に切り換えることで、受け止め保持部が受け止め保持している穀粒を穀粒タンク内に排出させることができる。
【0018】
従って、受け止め保持部により受け止め保持されて安定した状態で穀粒の内部品質を精度よく計測することができ、そのように精度よく計測が行われたのちに、穀粒を穀粒タンク内に戻すことができる。
【0019】
【0020】
さらに、本構成によれば、脱穀処理された穀粒が搬送装置により穀粒タンク内に搬送されるが、そのとき、穀粒タンクの上部に形成された供給口から回転羽根により穀粒タンク内に跳ね飛ばし供給される。このように回転羽根により穀粒タンク内に跳ね飛ばし供給することによって、穀粒タンクの内部に偏りが少なく極力均平な状態で穀粒を貯留することができる。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】コンバインの全体側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】穀粒タンクの正面図である。
図4】穀粒タンクの一部切欠平面図である。
図5】穀粒タンクの重量計測箇所の縦断正面図である。
図6】穀粒タンクの重量計測箇所の斜視図である。
図7】制御ブロック図である。
図8】内部品質計測装置の構成を示す図である。
図9】穀粒タンクの一部切欠側面図である。
図10】穀粒受け止め保持部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて、本発明に係るコンバインの実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、コンバインは、自脱型に構成され、左右一対のクローラ走行装置2を備えるとともに、機体前部に収穫対象の植立穀稈を刈り取り刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する刈取部5が備えられ、その後方に、操縦部4、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀装置6、脱穀装置6にて選別回収された穀粒を貯留する穀粒タンク9、排ワラを処理する排ワラ処理装置7等が装備されている。そして、エンジン3、操縦部4、脱穀装置6、穀粒タンク9等が機体フレーム1にて載置支持される構成となっている。
【0034】
図示は省略するが、エンジン3からの動力が左右のクローラ走行装置2に伝達され、その走行用の伝動系から分岐した動力が刈取搬送用の伝動系を介して刈取部5に伝達され、さらに、エンジン3からの動力が脱穀装置6に伝達され、そこから分岐した動力が排ワラ処理装置7に伝達されるように伝動系が構成されている。
【0035】
脱穀装置6は、刈取部5から搬送された刈取穀稈の株元側を図示しないフィードチェーンにより挟持して搬送しながら、扱室内で回転駆動される扱胴(図示せず)により穂先側を扱いて脱穀処理して、脱穀装置6の内部に備えられた選別機構(図示せず)による選別作用により、脱穀処理物を、単粒化した穀粒とワラ屑等の塵埃とに選別し、単粒化した穀粒を回収して穀粒タンク9に搬送して回収し、塵埃は機外に排出するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラは排ワラ処理装置7にて細断処理されるように構成されている。
【0036】
図2に示すように、脱穀装置6の底部に一番物回収スクリュー10が備えられ、この一番物回収スクリュー10により穀粒を機体横幅方向に沿って穀粒タンク9側に横送り搬送するように構成され、又、脱穀装置6と穀粒タンク9との間には、一番物回収スクリュー10と図示しないベベルギア伝動機構により連動連結される状態で搬送装置としてのスクリューコンベア式の揚穀装置12が備えられている。
【0037】
そして、一番物回収スクリュー10にて横送りされた穀粒は、揚穀装置12にて上方に搬送されて、図4に示すように、その揚穀装置12の上端部に形成された吐出口13から穀粒タンク9の左側壁部9Aの上部に形成された供給口14を通して穀粒タンク9内に搬送するように構成されている。
図4に示すように揚穀装置12の駆動軸12aの上端部には、穀粒を穀粒タンク9内に向けて跳ね飛ばす回転羽根12bが設けられ、穀粒を極力均した状態で穀粒タンク9内に貯留させることができるように構成されている。
【0038】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク9の底部に穀粒を機体後方側に向けて搬送する搬出用底スクリュー15が備えられ、穀粒タンク9の機体後部側に、搬出用底スクリュー15とベベルギア伝動機構(図示せず)を介して連動連結される状態で、搬送終端部から穀粒を揚上搬送する縦送りスクリューコンベア16が備えられている。又、縦送りスクリューコンベア16の上部には、揚上搬送された穀粒を横送り搬送して先端の排出口17から排出する横送りスクリューコンベア18の基端部が水平軸芯P1周りで上下揺動自在にベベルギア伝動機構(図示せず)を介して連動連結されている。
【0039】
つまり、穀粒タンク9内に貯留される穀粒は、搬出用底スクリュー15、縦送りスクリューコンベア16、及び、横送りスクリューコンベア18により搬送されて排出口17から外部に排出することができるように構成されている。
【0040】
縦送りスクリューコンベア16は、減速機付きの電動モータ19の作動により縦軸芯P2周りで回動操作可能に構成され、横送りスクリューコンベア18は油圧シリンダ20により基端部の水平軸芯P1周りで上下揺動操作可能に構成されており、横送りスクリューコンベア18を旋回操作並びに昇降操作させて排出口17の位置を変更させることにより、穀粒を機外の運搬用トラック等に排出させることができる。
【0041】
図1に示すように、穀粒タンク9の後側壁部9Cの下部には、搬出用底スクリュー15と縦送りスクリューコンベア16とを連動連結する図示しないベベルギア伝動機構を内装するとともに、穀粒タンク9の後方に突出して露出する搬出用底スクリュー15の後端部並びに縦送りスクリューコンベア16の始端部を覆うベベルギアケース24が連結されている。このベベルギアケース24には、その底部から下方に向けて延出する円筒状の支軸部24Aが一体形成されている。
【0042】
機体フレーム1にはベベルギアケース24の支軸部24Aを相対回転可能に支持する軸支部1Gが備えられ、穀粒タンク9は、上下向きの支軸となるベベルギアケース24の支軸部24Aを支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように機体フレーム1に支持される構成となっている。
【0043】
このような構成から、穀粒タンク9は、その後端に位置するベベルギアケース24の支軸部24Aを支点にして機体前部側を左右方向に揺動変位させることにより、機体内方側に引退して左側壁部9Aが脱穀装置6に隣接して供給口14が揚穀装置12の吐出口13に連通する作業位置と、横側外方に張り出して前部側が脱穀装置6から離間してエンジン3の後方及び脱穀装置6の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって位置変更自在に構成されている(図2参照)。
【0044】
但し、図3に示すように、エンジン3からの動力を搬出用底スクリュー15に伝える伝動状態と伝動を遮断する遮断状態とに切り換え自在なベルトテンション式の排出クラッチ70が備えられるので、穀粒タンク9を作業位置からメンテナンス位置に切り換えるときは、予め、この排出クラッチ70を遮断状態に切り換えたのち伝動ベルト71を取り外しておくことになる。又、図3に示すように、穀粒タンク9の底部及び左側壁部9Aの近傍には、穀粒タンク9が作業位置に切り換えられた状態でロックするバネ係合式のロック機構72,73が備えられている。
【0045】
そして、このコンバインでは、穀粒タンク9に貯留される穀粒の重量を計測する重量計測手段としてのロードセル25が、作業位置に位置する穀粒タンク9の荷重を受け止めて重量を計測可能な状態で機体フレーム1に備えられており、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動するに伴って、穀粒タンク9の下端部を受け止め支持しながらロードセル25にて重量計測が可能な所定位置まで案内する受け止め案内体26が備えられている。
【0046】
図3及び図5に示すように、受け止め案内体26にて案内される穀粒タンク9の下端支持部は、水平軸芯周りで回転可能に支持されて受け止め案内体26上を転動可能なローラ27にて構成されている。このローラ27は、穀粒タンク9の前側下部に取り付けられた支持部材21に対して、その支持部材21の下端部よりも下方に突出する状態で横向き支持軸28により回動自在に支持されている。
【0047】
受け止め案内体26は、ロードセル25の上部に備えられる重量検知部25Aに対して上方から載置される荷重受け止め状態と、ロードセル25の上方を開放するように外方に退避する退避状態とに切り換え自在に設けられている。すなわち、図5及び図6に示すように、機体フレーム1における横幅方向外側部に設けられた前後向きフレーム部1Aにおける横外側面に前後一対のブラケット30が固定状態で設けられ、この前後のブラケット30により機体前後軸芯P4周りで回動自在に受け止め案内体26の基端部26Aが支持されている。
【0048】
そして、基端部26Aから一体的に延設される状態で案内載置部26Bが設けられ、受け止め案内体26が荷重受け止め状態に切り換えられると、図5の実線にて示すように、案内載置部26Bが基端部26Aよりも機体内方側に位置する状態となり、受け止め案内体26が退避状態に切り換えられると、図5の仮想線にて示すように、案内載置部26Bが基端部26Aよりも機体外方側に位置する状態となる。
【0049】
図5に示すように、案内載置部26Bの上部案内面31は、荷重受け止め状態に切り換えられた状態で、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動するに伴って転動案内されるローラ27が上方に変位するように緩い傾斜角での傾斜状態となるように傾斜姿勢に形成されている。
【0050】
図5及び図6に示すように、荷重受け止め状態に切り換えられた受け止め案内体26の下方側に位置して重量検知部25Aにて受け止め案内体26を受け止める状態で、且つ、機体フレーム1における支持用フレーム部1Bにて本体部25Bが載置支持される状態でロードセル25が設けられている。このロードセル25は、穀粒タンク9が作業位置にあるとき、機体前後方向視で穀粒タンク9の略重心位置に対応する箇所に位置する状態で、支持用フレーム部1Bに対してフランジ部25Cをネジ止めすることにより着脱自在に取り付ける構成となっている。
【0051】
穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動すると、ローラ27が案内載置部26Bの傾斜姿勢の上部案内面31に沿って転動案内され、ローラ27が少しだけ上方に持ち上がる状態で案内されることになる。そうすると、穀粒タンク9の荷重がローラ27及び受け止め案内体26を介してロードセル25の重量検知部25Aにて受け止められることになる。
【0052】
このように作業位置にある穀粒タンク9の機体前部側の荷重が受け止め案内体26を介してロードセル25にて受け止められることになり、このロードセル25により穀粒タンク9に貯留されている穀粒の重量を計測することが可能な構成となっている。尚、穀粒タンク9を揺動可能に機体フレーム1に支持する支持箇所においては、穀粒タンク9が上下方向に少しだけ移動可能なように上下方向に融通があり、その融通を利用してロードセル25にて穀粒タンク9の荷重をそのまま受け止める構成とすることができ、貯留される穀粒の重量を計測可能な構成となっている。
【0053】
ロードセル25の検出値は、コンバインの機体が傾斜すると、そのことに起因して誤差が生じるおそれがあるが、このような機体の傾斜に起因する計測誤差を修正するようになっている。つまり、図7に示すように、機体の左右傾斜角を検出する左右傾斜角センサ32と、前後傾斜角を検出する前後傾斜角センサ33とが備えられ、後述する制御装置57によって、前後傾斜角及び左右傾斜角の検出値と、予め実験等により求められた修正用の演算式とを用いて、ロードセル25の検出値を補正して、正確な穀粒の貯留量を求めるように構成されている。
【0054】
そして、刈取作業が行われるのに伴って穀粒の貯留量が逐次変化することになるが、ロードセル25によって検出され、それを補正して求められた穀粒の貯留量を操縦部4に備えられた表示装置34にて表示するように構成されている。ロードセル25は無段階に穀粒の貯留穀粒の重量を検出することができ、しかも、表示装置34は、多段階のレベルメータ表示あるいは数値表示等、少量ずつの変化も判るような高分解能の表示形態となっている。このように構成することで、刈取作業中だけでなく、例えば、作業開始時に表示装置34の表示内容を確認することで、少量であっても穀粒タンク9内に穀粒が残っているか否かをチェックすることもできる。
【0055】
このコンバインでは、穀粒タンク9の穀粒存在用の内部空間を形成する壁部としての前側縦壁部9Bの外方側(前部側)に位置して、その前側縦壁部9Bに形成された光透過部35を介して穀粒タンク9の内部空間のうちの計測対象空間Q(穀粒存在空間の一例)に貯留される穀粒の内部品質を計測可能な光学式の内部品質計測手段としての内部品質計測装置36が備えられている。
この内部品質計測装置36は、穀粒タンク9の外部から光透過部35を通して内方に向けて光を投射する投光部Oと、穀粒タンク9の内部に位置する穀粒から光透過部35を通して外方に向けて放出される光を受光する受光部Iとを備えた反射型の内部品質計測装置36にて構成されている。
【0056】
すなわち、図8に示すように、内部品質計測装置36は、赤外線光を測定用光線として放射するタングステン−ハロゲンランプを備えて構成される光源部37と、光源部37からの測定用光線及び穀粒からの拡散反射光を導く計測用プローブ38と、計測用プローブ38にて導かれた測定用光線を穀粒に照射するとともに、穀粒からの拡散反射光を受光して計測用プローブ38へ導く投受光アダプタ39と、計測用プローブ38にて導かれた拡散反射光の分光スペクトルを計測する分光計測部40と、分光計測部40で得られた分光スペクトルに基づいて穀粒に含まれる成分に基づく成分の演算処理を行う演算部41とを備えて構成されている。尚、図示はしないが、光源部37からの測定用光線を穀粒に照射する照射状態と照射しない非照射状態とに切り換え自在なシャッタ部が備えられている。
【0057】
計測用プローブ38は、照射用光ファイバ42と、受光用光ファイバ43とを備えて構成されている。照射用光ファイバ42と受光用光ファイバ43とは、照射用光ファイバ42における測定用光線の入射端部側及び受光用光ファイバ43における拡散反射光の出射端部側を除いた部分を、環状の照射用光ファイバ42の内部に受光用光ファイバ43が位置する同軸状に形成してあり、同軸状の先端面では、照射用光ファイバ42の環状の先端面とその内部の受光用光ファイバ43の円形状の先端面が面一になっている。
【0058】
投受光アダプタ39は、計測用プローブ38の先端に取り付けられ、外筒体39a、その外筒体39aの内部にその外筒体39aと間隔を隔てて同軸状に位置する内筒体39b、外筒体39aと内筒体39bとを連結する連結部材39c、計測用プローブ38と接続して固定する支持部材39d等を備えて構成されている。
内筒体39bは、筒内径及び筒外径が基端側のファイバ接続部に近づくほど小径となる略円錐形状に形成されるとともに、周壁の厚みが計測用プローブ38に近づくほど小となるように形成されており、内筒体39bの内周面及び外周面は光の反射が可能な鏡面に仕上げられている。外筒体39aも同様に、筒内径及び筒外径が基端側のファイバ接続部に近づくほど小径となる略円錐形状に形成され、外筒体39aの内周面は、光の反射が可能な鏡面に仕上げられている。そして、内筒体39bの先端部と外筒体39aの先端部とにより形成される環状の開口部を投光部Oとして、内筒体3bの内部側の先端開口部を受光部Iとして、夫々機能させるようにしている。
【0059】
投受光アダプタ39が穀粒タンク9の光透過部35に対応する箇所に設置され、穀粒タンク9の外部から光透過部35を通して内方に向けて光を投射するとともに、穀粒タンク9の内部に位置する穀粒から光透過部35を通して外方に向けて放出される光を受光するように構成されている。
【0060】
図8に示すように、内部品質計測装置36における投受光アダプタ39の計測対象空間Qに対向する部分を除く他の外方側領域を覆う遮光部材からなるカバー体44が備えられている。このようなカバー体44を備えることにより、外部からの外乱光が穀粒に照射されて外乱光に起因して計測誤差が生じるおそれが少ないものとなる。
【0061】
分光計測部40は、図示はしないが、受光用光ファイバ43にて導かれた拡散反射光を分光反射する回折格子や分光反射された各波長毎の光線束強度を検出するアレイ型受光素子等を備えて構成され、アレイ型受光素子は分光反射された拡散反射光を、同時に波長毎に受光するとともに波長毎の信号に変換して出力するように構成されている。つまり、受光した光の分光スペクトルデータを得ることができる。
【0062】
光透過部35を構成する透光部材としての透明ガラス板45は着脱自在に穀粒タンク9の前側縦壁部9Bに備えられている。つまり、図8に示すように、透明ガラス板45は前側縦壁部9Bに形成された凹部46に入り込ませカバー体44の連結用フランジ部44aにて挟み込む状態で、連結用フランジ部44aを前側縦壁部9Bにネジ47で締め付けて固定する構成となっており、ネジ47を取り外すことで透明ガラス板45を容易に取り外すことができるように構成されている。
【0063】
この内部品質計測装置36は、近赤外光の吸収スペクトルを利用した成分分析方法を用いて内部品質を計測するものであって、近赤外光を穀粒に当てて、その透過光の分光分析に基づいて吸収スペクトルを解析して、その解析結果により、穀粒に含まれる、水分、タンパク質、アミロース等の成分量を判別して、それらに基づいて食味を計測するようになっている。そして、刈取作業に伴って連続的に穀粒タンク9内に供給される穀粒をサンプリングして、上記したような計測を行うようになっている。
【0064】
計測処理について簡単に説明を加えると、穀粒からの光を受光して得られる計測分光スペクトルデータと予め設定されている基準スペクトルデータとから波長毎の吸光度を示す吸光度スペクトルデータを求め、それを二次微分した値のうちの特定波長の値と、予め対象となる成分毎に予め設定されている検量線とを用いて、穀粒に含まれる内部品質として、水分量、タンパク質、アミロース等の化学的成分の定量値を求め、さらに、それらの化学的成分の定量値から穀粒の食味評価値を求めることができる。
【0065】
尚、成分毎の複数の検量線は、次のようにして予め作成されることになる。つまり、内部品質計測装置36により実際に計測された吸光度スペクトルデータと、そのとき計測に使用された穀粒について破壊して成分分析した結果から得られた化学的成分の計測値とに基づいて、内部品質計測装置36の計測結果と実際の穀粒の化学的成分量との対応を示す検量線を作成するのである。
【0066】
そして、図9に示すように、穀粒タンク9内部の光透過部35に対応する箇所に、脱穀処理された穀粒の一部を受け止め保持する保持状態と穀粒を穀粒タンク9内に排出する排出状態とに切り換え可能に構成された受け止め保持部48が設けられ、内部品質計測装置36が受け止め保持部48に受け止め保持されている穀粒の内部品質を計測するように構成されている。
【0067】
受け止め保持部48は、揚穀装置12の駆動軸12aの上端部に備えられた回転羽根12bにより穀粒タンク9内に穀粒が跳ね飛ばし供給される供給口14よりも低い箇所に位置する状態で備えられ、跳ね飛ばし供給される穀粒がこの受け止め保持部48にて受け止められ易くなるようにしている。
【0068】
前記受け止め保持部48は、外部から供給される穀粒の一部を回収可能なように上部が開口された有底箱状体49を備えて構成され、且つ、この有底箱状体49における底板50が穀粒を保持する閉状態と穀粒を下方に排出する開状態とに揺動自在に構成されている。
【0069】
説明を加えると、図9及び図10に示すように、有底箱状体49が穀粒受け止め空間の周面を形成する角筒部51と、穀粒受け止め空間の底部を形成する底板50とを備えて構成され、角筒部51が穀粒タンク9の前側縦壁部9Bに固定支持されており、底板50の端部が角筒部51に対して揺動自在に支持されている。角筒部51の穀粒タンク9の内方側の側面には、底板50を角筒部51の下部開口52を開放する開状態と下部開口52を閉じる閉状態とに切り換え操作自在な切り換え機構53が内装された駆動用ケーシング54が取付けられている。又、角筒部51のタンク外方側の側面には、内部品質計測用の光透過用の開口55が形成されている。
【0070】
前記切り換え機構53は、アクチュエータとしての減速式付きの電動モータ56により底板50を開状態と閉状態とにわたって揺動操作自在に構成されており、駆動用ケーシング54の内部には、切り換え機構53に加えて、底板50が開状態にまで揺動したことを検出するとオンする開状態検出スイッチ58と、底板50が閉状態にまで揺動したことを検出するとオンする閉状態検出スイッチ59とが備えられている。
【0071】
又、図7に示すように、電動モータ56の作動を制御する制御手段としてのマイクロコンピュータからなる制御装置57が備えられている。
この制御装置57による底板50の開閉操作について説明すると、開状態に切り換えるときは、閉状態にある底板50を開状態に向けて揺動させるように電動モータ56を作動させ、その後、開状態検出スイッチ58がオンすると、電動モータ56の作動を停止させる。逆に、閉状態に切り換えるときは、開状態にある底板50を閉状態に向けて揺動させるように電動モータ56を作動させ、その後、閉状態検出スイッチ59がオンすると、電動モータ56の作動を停止させる。
【0072】
受け止め保持部48の内部の上端部には、穀粒が所定量以上供給されたことを検出する供給状態検出手段としての供給状態検出センサ60が備えられ、受け止め保持部48の下方側箇所であって、開状態に切り換わったときの底板50の下端位置よりも少し下方側の位置に、その場所に穀粒が存在するか否かを検出する穀粒存否検出手段としての穀粒存否センサ61が備えられている。供給状態検出センサ60及び穀粒存否センサ61は夫々静電容量型の近接センサにて構成されている。
【0073】
制御装置57は、穀粒存否センサ61にて穀粒の存在が検出されていなければ、刈取作業に伴って受け止め保持部48に穀粒が所定量以上供給されたことが供給状態検出センサ60にて検出される毎に、内部品質計測装置36による計測処理を実行し、その後、底板50を開状態に切り換えて穀粒を穀粒タンク9内に排出させたのち閉状態に戻す穀粒排出処理を実行するように電動モータ56を作動させるように構成されている。但し、穀粒存否センサ61にて穀粒の存在が検出されると、穀粒に接当して底板50を開状態に切り換えることができないので、その後は、計測処理及び穀粒排出処理を行わないようにしている。
【0074】
つまり、1つの圃場内で内部品質の計測が複数回行われる。又、穀粒タンク9内の穀粒の貯留量が略満杯状態になったことが図示しない満杯検知センサにて検出されると、そのときの穀粒貯留量の重量の計測が行われ、このような穀粒貯留量の重量の計測も1つの圃場内で複数回行われ、それらの計測データは図示しない記憶装置に記憶される。内部品質計測装置36は、穀粒の内部品質として水分量も計測するので、穀粒貯留量の重量の計測が行われるときに、制御装置57は、穀粒が乾燥処理された状態、つまり、水分量が所定値(例えば、14.5%)になったと仮定した場合の乾燥重量も合わせて演算にて求めるようになっている。
【0075】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、反射型の内部品質計測装置36にて穀粒の内部品質を計測するものを示したが、このような構成に代えて、透過型の内部品質計測装置にて構成されるものでもよい。例えば、穀粒タンク9の壁部9Bに一部外方に突出する突起部を両側を透明体にて形成して左右両側に投光部Oと受光部Iとを対向配置させるようしたり、又、投光部Oを受光部Iが備えられる壁部とは異なる別の壁部に備える構成としてもよい。
【0076】
【0077】
)上記実施形態では、光透過部35を構成する透光部材45が着脱自在に壁部9Bに取付けられる構成としたが、清掃を容易に行える構成として位置固定状態で備えるようにしてもよい。
【0078】
)上記実施形態では、自脱型のコンバインに適用したものを示したが、普通型のコンバインでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自脱型のコンバインや普通型のコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0080】
9 穀粒タンク
9B 壁部
12 搬送装置
12b 回転羽根
14 供給口
35 光透過部
36 内部品質計測手
8 受け止め保持部
50 底板
60 供給状態検出手段(供給状態検出センサ)
穀粒存在空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10