(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181785
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ポリアクリル酸ナトリウムと水溶性ポリマーを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20170807BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20170807BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-14028(P2016-14028)
(22)【出願日】2016年1月28日
(62)【分割の表示】特願2013-541881(P2013-541881)の分割
【原出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-74735(P2016-74735A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0120847
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】キム キュム ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン チュン
【審査官】
駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−286757(JP,A)
【文献】
特開2001−342451(JP,A)
【文献】
特開2006−008616(JP,A)
【文献】
特開2005−008613(JP,A)
【文献】
特開2003−199781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸ナトリウム及び水溶性増粘剤を含む化粧料組成物であって、
前記水溶性増粘剤は、セルロースガム、キサンタンガム及びジェランガムの混合物であり、
前記ポリアクリル酸ナトリウムの含有量は、組成物の全重量に対して1.5〜2.5重量%であり、
前記セルロースガム、キサンタンガム及びジェランガムの含有量は、それぞれ組成物の全重量に対して0.25〜0.5重量%であり、
前記組成物の粘弾性は16〜18Nであることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸ナトリウムの含有量は、組成物の全重量に対して2.0〜2.5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記セルロースガム、キサンタンガム及びジェランガムの含有量は、いずれも組成物の全重量に対して0.25重量%であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記組成物の粘弾性が18Nであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記化粧料組成物は、可溶化剤形のマスクパック類、乳化剤形のマスクパック類又はクリーム形態に剤形化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項6】
角質除去用化粧料組成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
皮膚保湿用化粧料組成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリル酸ナトリウムと水溶性ポリマーの組合せを含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、‘自然主義’のトレンドと共に天然素材化粧品に対する関心が絶えず増加しつつこのような素材を用いて皮膚保湿問題を解決しようとする動きが増えている。これによって一般家庭でも即刻で集中的な皮膚管理のために、蜂蜜、黄土、きゅうりなどを利用した天然素材のパックを利用して皮膚管理をしている。パック剤形の化粧品は一時的に皮膚の上に薄い被膜を着せて外部への水分蒸発を遮断させて皮膚をしっとりとし、有効成分を効果的に浸透させる特性を有する剤形として最近このようなパック剤形の化粧品に対する関心がだんだん増えている。
【0003】
一方、化粧品は粘性と弾性が入り組まれている複雑なレオロジー的性質を有する製品である。混合される原料の特性を利用して多様な見掛け及び物性を有する剤形を製造することができる。このようなレオロジー的性質と剤形の物性に重要な原料としては高分子物質を挙げることができ、使用される高分子物質の特性によって化粧品の見掛け、質感、物性、及び使用感が大きく変わる。したがって、多様な性質の高分子原料をスクリーニングし、各剤形に適した高分子原料を利用して多様な特性の製品を製造しようとする努力が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らはシャーベットと類似の化粧品剤形を製造するために研究した結果、高分子物質であるポリアクリル酸ナトリウムと水溶性天然増粘剤を含有する場合、シャーベットと類似の化粧品剤形を製造することができ、このような剤形は柔らかい物性を有すると共に消費者がより容易に皮膚管理に利用することができることを発見し、本発明を完成するようになった。
【0005】
したがって、本発明は高分子原料であるポリアクリル酸ナトリウム及び水溶性天然増粘剤を含有してシャーベットと類似の見掛け及び物性を有する化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は皮膚に保湿効果、柔軟効果又は角質除去効果を提供する化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明はポリアクリル酸ナトリウム及び水溶性増粘剤を含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧料組成物はシャーベットと類似の剤形を有しており、柔らかい物性を有すると共に消費者がより容易に皮膚管理に利用することができ、皮膚に保湿効果、柔軟効果又は角質除去効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例1〜5、実施例6及び比較例1〜2の化粧料組成物の塗布の後、皮膚水分量を測定した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化粧料組成物はポリアクリル酸ナトリウムと水溶性増粘剤を含む。
本発明において使用する高分子原料であるポリアクリル酸ナトリウムは組成物の全重量に対して1.5〜3.0重量%の量で含有される。また、ポリアクリル酸ナトリウム単独使用の時の粘弾性は10〜15Nであれば良い。
【0011】
本発明において水溶性増粘剤としてはセルロースガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天(agar)などの水溶性ポリマーを使用することができ、その他にタマリンドガム、グアーガム、アラビアガムなどを使用することができる。セルロースガム類としてはC.M.C−Na陽イオンセルロースパウダーなどがあり、キサンタンガム類はKeltrol−Fなどがあり、ジェランガム類としてはKELCOGELなどがある。上記水溶性増粘剤は組成物の全重量に対して0.25〜0.5重量%の量で含有される。
【0012】
本発明の化粧料組成物は粘弾性が10〜18Nの範囲であれば良い。
【0013】
本発明の化粧料組成物はその剤形において特別に限定されるものではなく、 例えば柔軟化粧水、栄養化粧水、乳液、マッサージクリーム、栄養クリーム、パックなどの剤形を有する化粧料組成物であることができ、特に、本発明の化粧料組成物は好ましくは可溶化剤形のマスクパック類、乳化剤形のマスクパック類又はクリームなどの形態に剤形化されることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の内容を実施例及び試験例によって具体的に説明する。これら実施例は本発明の内容を理解するために提示されるものであるだけであり、本発明の権利範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0015】
[試験例1]ポリアクリル酸ナトリウムの含量による粘弾性とピーリング効果の評価
以下の表1の組成でポリアクリル酸ナトリウムを多様な含量で含ませて化粧料組成物を製造し、これら組成物の粘弾性及びピーリング効果を測定した。ピーリング効果程度はパネル10名の点数を平均としたものである。
【0016】
粘弾性の測定はレオメーター(Sun scientific co.,LTD)を利用して測定し、ピーリング効果はパネル10名を選定して5分間ローリング後のピーリング程度を、10点満点を基準で測定した。
【0017】
【表1】
【0018】
上記の表1によれば、ポリアクリル酸ナトリウムの含量が増加するほど粘弾性も比例的に増加するが、粘弾性があまり高くなればピーリング効果はむしろ減少することが分かる。
【0019】
[試験例2]ポリアクリル酸ナトリウム及び水溶性増粘剤との組合せ
上記試験例1の結果に基づいて、ポリアクリル酸ナトリウムの含量はピーリング効果が大きいことで出た2重量%又は2.5重量%とし、様々な水溶性増粘剤を使用して以下表2の組成で化粧料組成物を製造した。
【0020】
製造した組成物の粘弾性及びピーリング効果を測定し、この結果は以下の表2に記載した。ピーリング効果程度はパネル10名の点数を平均としたものである。
【0021】
【表2】
【0022】
上記の表2によれば、ポリアクリル酸ナトリウムを単独使用した上記試験例1の表1に示した粘弾性及びピーリング効果程度と比べて、水溶性増粘剤を組み合わせて使用した場合、粘弾性がより高く、かつ安定し、ピーリング効果も格段に良いことを確認することができる。特にセルロースガム、キサンタンガム、ジェランガムをポリアクリル酸ナトリウムと共に使用する場合、効果が優れたことが分かる。
また、水溶性2種以上の増粘剤を組み合わせて使用する場合にも粘弾性及びピーリング効果が良い。
【0023】
[試験例3]水溶性増粘剤の多様な含量による組合せ
以下の表3の組成で水溶性増粘剤を多様な含量で含ませて化粧料組成物を製造し、これら組成物の粘弾性及びピーリング効果を測定した。
ピーリング効果程度はパネル10名の点数を平均としたものである。測定結果は以下の表4に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
上記の表4によれば、ポリアクリル酸ナトリウムを単独で使用した比較例1、2より、水溶性増粘剤と共に使用した参考例1〜5及び実施例6の場合が、粘弾性程度がより高くピーリング効果も格段に高いことを確認することができる。
【0027】
[試験例4]皮膚保湿力の改善効果測定
乾燥を訴える成人男女もしくは乾燥肌の成人男女10名(29±3歳)を選抜し、恒温、恒湿条件(24〜26℃、相対湿度40〜50%)で15分間待機させた後、参考例1〜5、実施例6及び比較例1〜2の化粧料組成物を下腕に塗布して皮膚保湿力を比べた。塗布開始前と、塗布の後0、2、4、6、12、24時間が経過した時点でそれぞれコルネオメーター(Corneometer、C+K社、ドイツ)で皮膚水分量を測定した。この結果を
図1に示した。
【0028】
その結果、
図1に表示されたように、参考例1〜5及び実施例6の組成物を塗布した場合の皮膚水分量が比較例1〜2の組成物を塗布した場合に比べ、より高い値を示すことが分かる。この皮膚水分量の増加は1日が経った24時間後にも継続観察された。