(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分A)〜E)に加えるか、またはC)および/またはD)および/またはE)に代えて、F)少なくとも1種の成分B)、C)、D)およびE)とは異なるさらなる添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリ−1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタレートから選択される少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレートを使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
成分D)として、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、ビスメラミンジンコホスフェート、および/またはビスメラミンアルミノトリホスフェートを使用することを特徴とする、請求項3〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の組成物をベースとする製品は、驚くべきことには、ポリオレフィンを使用しないにも関わらず、従来技術における場合と少なくとも同等レベルのトラッキング抵抗性を示しながらも、曲げ強度、外側繊維歪み(outer fibre strain)またはIZOD衝撃強度の機械的パラメーターの面では、低下をまったく示さない。
【0009】
ここで明確にしておくが、本発明の文脈においては、以下で、一般的にまたは好ましい範囲としてのいずれにおいても、記述されるすべての定義およびパラメーターは、各種所望の組合せの中に包含されるものと理解されたい。
【0010】
さらに明確にしておくと、技術的力学(technical mechanics)における曲げ強度とは、それを超えれば、その構成部材の破壊が伴う、曲げ試験にかけた構成部材における曲げ歪みの値であると理解されたい。それは、部材が、曲げまたはその破壊に対する抵抗性を表している。ISO 178の促進曲げ試験においては、ここでは端から端までが80mm×10mm×4.0mmの寸法であるビームの形態の試験片を、二つの支点の上におき、曲げ用のダイを用いてその中心に負荷をかける(Bodo Carlowitz:Tabellarische Uebersicht ueber die Pruefung von Kunststoffen,6th Edition,Giesel−Verlag fuer Publizitaet,1992,pp.16−17)。
【0011】
「http://de.wikipedia.org/wiki/Biegeversuch」によれば、曲げモジュラスは、試験片を二つの支点の上に位置させ、試験用ダイを用いてその中心に負荷をかける、3点曲げ試験で測定される。フラットな試料では、次いで、以下の式(III)にしたがってその曲げモジュラスを計算する:
E=l
v3(X
H−X
L)/4 D
Lba
3 (III)
式中、E=曲げモジュラス(単位:kN/mm
2);l
v=スパン(単位:mm);X
H=曲げモジュラス測定の終点(単位:kN);X
L=曲げモジュラス測定の開始点(単位:kN);D
L=X
HとX
Lとの間での曲げ(単位:mm);b=試料の幅(単位:mm);a=試料の厚み(単位:mm)。
【0012】
耐衝撃性は、破壊されることなく衝撃エネルギーおよび衝突エネルギーを吸収する、材料の能力を記述するものである。耐衝撃性は、衝撃エネルギーと試験片の断面積との比として計算する(測定単位:kJ/m
2)。
【0013】
耐衝撃性は、各種のタイプのノッチ付き衝撃曲げ試験(Charpy、Izod)により求めることができる。ノッチ付きの耐衝撃性とは対照的に、試験片の耐衝撃性の場合において実施される場合、ノッチ無しも存在する。本発明の文脈においては、射出成形した直後の、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片について、ISO 180−1Uに従ったIzod耐衝撃性を求めた。
【0014】
トラッキング抵抗性は、特に湿分および汚染物質に曝露させた場合の、絶縁材料の表面(トラックパス)の絶縁耐力の特性を示す。それは、決められた試験の手はず(電極の間隔、電極の形状)における標準化された試験条件(所定の電圧、導電層物質)の下で、もたらされることが可能な、最大のトラッキング電流と定義されている。トラッキング抵抗性は、CTI(Comparative Tracking Index=比較トラッキング指数)を使用して表される。CTIは、標準化された電解質溶液を滴下により50滴滴下したときに、そのベース材料がトラッキングを示さない最大の電圧である(AまたはBが、KA値またはKB値を与える)。測定は、その表面の上で、二つの白金電極の間に30秒ごとに1滴ずつ滴下させて実施する。破損の基準は、0.5Aを超えるトラッキング電流である。CTIの測定方法の詳細は、IEC 60112に規定されている。
【0015】
溶融物体積流量(melt volume−flow rate=MVR、過去においておよび現在でも業界用語では、Melt Volume Rate、またはMVI(Melt Volume Index))が、所定の圧力および温度条件下における熱可塑性プラスチックの流動挙動(成形組成物の試験)を特性表示するために使用される。溶融物質量流量も、溶融物体積流量として求めるが、その結果は溶融物の密度で異なる。MVRは、ポリマーの溶融物の粘度の尺度である。MVRから、重合度を結論づけることが可能であるが、これは、一つの分子の中のモノマー単位を平均した数である。
【0016】
本発明の文脈においては、MVRは、ISO 1133にしたがって、キャピラリー粘度計の手段によって求めるが、そこでは、加熱可能な円筒の中で材料(ペレットまたは粉体)を溶融させ、加えた負荷から生ずる圧力の下で加圧して、所定のノズル(キャピラリー)の中を通過させる。ポリマーの溶融物(押出し物と呼ばれる)の排出体積または質量それぞれを、時間の関数として測定する。溶融物体積流量のキーとなる利点は、排出された溶融物の体積を求めるのに、公知のピストンの直径でのピストンの移動距離を測定するという、単純さにある。あてはまる等式は次の通りである:MVR=体積/10分。MVRの単位は、cm
3/10分である。
【0017】
「アルキル」という用語は、本発明の文脈においては、直鎖状もしくは分岐状の飽和炭化水素基を指している。ある種の実施態様においては、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基が使用される。それは、「低級アルキル基」と呼ぶことも可能である。好ましいアルキル基は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル、より特にはn−プロピルおよびイソプロピル、ブチル、より特にはn−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル基、より特にはn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル基などである。「ポリアルキレン」という用語の場合でも、同様のコメントが適用される。
【0018】
「アリール」という用語は、本発明の文脈においては、単環式の芳香族炭化水素環構造、またはその中で2個以上の芳香族炭化水素環が縮合している多環状の環構造、または1個または複数のシクロアルキル環および/またはシクロヘテロアルキル環と縮合している少なくとも1個の芳香族単環式炭化水素環を指している。本発明による実施態様においては、アリールまたはアリーレンは、6〜14個の炭素原子を有するアリール基である。好ましい、芳香族炭素環式環系を有するアリール基は、フェニル、1−ナフチル(二環式)、2−ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナントレニル(三環式)、ペンタセニル(五環式)、および同様の基である。その他の好ましいアリール基は、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基などである。ある種の実施態様においては、本明細書に記載されたようなアリール基が置換されていてもよい。ある種の実施態様においては、アリール基が、1個または複数の置換基を有していてもよい。
【0019】
本発明の感覚においては、「アルキルアリール」という用語は、アルキル−アリール基を表していて、そのアルキルアリール基が、そのアルキル基を介して所定の化学構造に共有結合的に結合されている。本発明において好ましい一つのアルキルアリール基は、ベンジル基(−CH
2−C
6H
5)である。本発明におけるアルキルアリール基は、交互に(alternatively)置換されていてもよいが、これの意味するところは、アリール基および/またはアルキル基のいずれかが置換されていてもよいということである。これとは対照的に、「アリールアルキル」という用語は、本発明の感覚においては、そのアリールアルキル基が、そのアリール基を介して所定の化学構造に共有結合的に結合されているような、アリール−アルキル基を表している。
【0020】
本明細書に引用して標準類は、本特許出願の出願日におけるそれらの版で適用される。
【0021】
成分A)
本発明における成分A)として使用するためのポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートは、各種の方法で調製することができ、各種の構成単位から合成することができ、そして、特定の使用シナリオにおいては、単独または、加工助剤、安定剤、ポリマーアロイ用の共成分(たとえばエラストマー)、またはそうでなければ補強用物質(たとえば鉱物質充填剤またはガラス繊維)ならびに場合によってはさらなる添加剤との組合せを備えていて、注文通りの性質の組合せ有する材料を与えることができる。他のポリマーを部分的に含むブレンド物もまた好適であるが、このようなケースでは、場合によっては1種または複数の相溶化剤を採用することも可能である。必要であれば、エラストマーを添加することによって、ポリマーの性質を改良することもできる。
【0022】
好ましいポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートは、公知の方法により、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と、2〜10個のC原子を有する脂肪族もしくは脂環族ジオールとから調製することができる(Kunststoff−Handbuch,vol.VIII,pp.695〜,Karl Hanser Verlag,Munich,1973)。
【0023】
好ましいポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートには、ジカルボン酸を基準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のテレフタル酸基と、ジオール成分を基準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%の、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはエチレングリコールおよび/またはプロパン−1,3−ジオール(ポリプロピレンテレフタレートの場合)および/またはブタン−1,4−ジオール基とが含まれる。
【0024】
好ましいポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートには、テレフタル酸基に加えて、最高で20mol%までの量で、8〜14個のC原子を有する他の芳香族ジカルボン酸の基、または4〜12個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、より特には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸の基を含んでいてもよい。
【0025】
好ましいポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートには、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはエチレングリコールおよび/または1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールに加えて、最高で20mol%までの量での、3〜12個のC原子を有する他の脂肪族ジオール、または最高で20mol%までの量での、6〜21個のC原子を有する脂環族ジオール、好ましくはプロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、3−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、および2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンの基を含んでいてもよい。
【0026】
特に好ましいのは、単に、テレフタル酸およびその反応性誘導体、特にそのジアルキルエステルと、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはエチレングリコールおよび/または1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールとから調製されたポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレート、特に好ましくはポリ−1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート、ならびにそれらの混合物である。
【0027】
好ましいポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートはさらに、上述の酸成分の少なくとも2種からおよび/または上述のアルコール成分の少なくとも2種から調製されたコポリエステルである。特に好ましいコポリエステルは、ポリ(エチレングリコール/ブタン−1,4−ジオール)テレフタレートである。
【0028】
それらのポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートは一般的に、それぞれの場合においてフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1、重量部)中、25℃で測定して、30〜150cm
3/gの範囲、好ましくは40〜130cm
3/gの範囲、より好ましくは50〜100cm
3/gの範囲の固有粘度を有している。固有粘度IVは、Staudinger Indexまたは極限粘度とも呼ばれ、Mark−Houwink式にしたがって、平均分子質量に比例し、粘度数VNをポリマー濃度ゼロにまで外挿した値である。それは、一連の測定から、あるいは適切な近似法(たとえば、Billmeyer)を使用して予測することができる。VN[mL/g]は、キャピラリー粘度計、たとえばUbbelohde粘度計の中で溶液粘度を測定することにより得られる。溶液粘度は、ポリマーの平均分子量の目安である。測定は、各種の溶媒(ギ酸、m−クレゾール、テトラクロロエタン、フェノール、1,2−ジクロロベンゼンなど)を用いて溶解させたポリマーについて、各種の濃度を用いて実施される。粘度数VNから、ポリマーの加工性および使用時の性質を知ることができる。ポリマーに対する熱負荷、老化性または化学薬品に対する曝露、耐候性および耐光性は、相応の測定法の手段によって調べることができる。その手法は、一般的なポリマーについては標準化されており、本発明の文脈においては、ポリエステルのためのDIN ISO 1628−5に従う。この点に関しては、以下も参照されたい:「http://de.wikipedia.org/wiki/Viskosimetrie」および「http://de.wikipedia.org/wiki/Mark−Houwink−Gleichung」。
【0029】
本発明における成分A)として使用するポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートは、他のポリエステルおよび/またはさらなるポリマーとの混合物で使用してもよい。
【0030】
成分A)として使用されるポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートに対して、コンパウンディングの際に、その溶融物の中に慣用される添加剤、特に離型剤を混合してもよい。
【0031】
当業者ならば、コンパウンディング(Compound=混合)とは、プラスチックスの加工とみなしうるプラスチックス技術からの用語として、そして性能プロファイルを目標の最適にするための、補助剤(充填剤、添加剤など)を混合することによる、プラスチックスの性能向上プロセスを指していると理解している。コンパウンディングは、好ましくはエクストルーダー中、より好ましくは共回転二軸スクリューエクストルーダー、異方向回転二軸スクリューエクストルーダー、プラネタリーローラーエクストルーダー、またはコニーダーの中で実施され、搬送、溶融、分散、混合、脱気、および昇圧のプロセス操作が包含されている。
【0032】
成分A)として好適に使用されるのは、ポリエチレンテレフタレート[CAS No.25038−59−9]またはポリブチレンテレフタレート[CAS No.24968−12−5]、特にポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択される少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレートである。
【0033】
成分A)として代わりに使用されるのは、好ましくはポリシクロアルキレンテレフタレートとしてのポリ−1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタレート[CAS No.25037−99−4]である。
【0034】
成分B)
本発明において成分B)として使用される、先に示した式(I)の有機ホスフィン酸塩および/または先に示した式(II)の有機ジホスフィン酸塩、および/またはそれらのポリマーもまた、本発明の文脈においては、ホスフィン酸塩と呼ばれる。
【0035】
式(I)または(II)においては、Mがアルミニウムであるのが好ましい。式(I)または(II)においては、R
1とR
2とが、同一であるかまたは異なっていて、直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
6アルキル、および/またはフェニルであるのが好ましい。R
1とR
2とが、同一であるかまたは異なっていて、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよび/またはフェニルであれば、より好ましい。
【0036】
式(II)におけるR
3が、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、またはフェニルブチレンであるのが好ましい。より好ましくは、R
3がフェニレンまたはナフチレンである。好適なホスフィン酸塩が、国際公開第A 97/39053号パンフレットの中に記載されているが、ホスフィン酸塩に関するその内容は、本明細書にも包含される。本発明の感覚において特に好ましいホスフィン酸塩は、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、およびメチル−n−プロピルホスフィン酸のアルミニウム塩および亜鉛塩、ならびにそれらの混合物である。
【0037】
式(I)において、mは、好ましくは2および3、より好ましくは3である。
【0038】
式(II)において、nは、好ましくは1および3、より好ましくは3である。
【0039】
式(II)において、xは、好ましくは1および2、より好ましくは2である。
【0040】
成分B)として極めて好適に使用されるのは、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム[CAS No.225789−38−8]であり、このものは、たとえばClariant International Ltd.,Muttenz,Switzerlandから、Exolit(登録商標)OP1230またはExolit(登録商標)OP1240の商品名で入手可能である。
【0041】
成分C)
成分C)として採用されるのは、成分C)における金属がナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅および/またはアルミニウムである、リン酸水素金属塩、リン酸二水素金属塩、ピロリン酸二水素金属塩および/またはピロリン酸金属塩の群からの少なくとも1種の無機リン酸塩である。
【0042】
本発明において成分C)として使用するための無機リン酸塩には、それらの相当する水和物も含まれる。
【0043】
成分C)の金属として好ましいのは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、またはアルミニウムである。特に好ましい金属は、マグネシウムおよび/または亜鉛である。金属として特に好ましいのは、亜鉛である。
【0044】
成分C)として好適に採用されるのは、2〜6の範囲、より好ましくは2〜4の範囲のpHを有する無機リン酸塩であるが、ここでそのpHの数値は、20℃、1g/Lの濃度の水性媒体をベースとするものである。
【0045】
ピロリン酸二水素金属塩およびピロリン酸金属塩の群から好適に採用されるのは、ピロリン酸二水素ナトリウム[CAS No.7758−16−9]、ピロリン酸マグネシウム[CAS No.13446−24−7]、およびピロリン酸亜鉛[CAS No.7446−26−6]であり、ピロリン酸亜鉛が特に好ましい。後者は、たとえばChemische Fabrik Budenheim KG,Budenheim,GermanyからZ34−80の商品名で入手することが可能である。
【0046】
リン酸水素金属塩の群では、リン酸水素マグネシウム[CAS No.7757−86−0]およびリン酸水素亜鉛[CAS No.7664−38−2]を使用するのが好ましい。
【0047】
成分C)として特に好適に使用されるリン酸二水素金属塩の群では、リン酸二水素アルミニウム[CAS No.13530−50−2]、ビス(リン酸二水素)マグネシウム[CAS No.13092−66−5]、ビス(リン酸二水素)亜鉛[CAS No.13598−37−3]およびビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物[CAS No.13986−21−5]を使用するのが好ましく、ビス(リン酸二水素)亜鉛およびビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物が極めて特に好ましく、ビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物が特に好ましい。後者は、たとえばChemische Fabrik Budenheim KG,Budenheim,GermanyからZ21−82の商品名で入手することが可能である。
【0048】
成分C)の化合物は、個別に使用することも、あるいは混合物として使用することも可能であり、場合によっては、ピロリン酸カルシウム[CAS No.7790−76−3]またはリン酸水素カルシウムがさらに添加される。
【0049】
本発明の組成物およびそれらから製造される成形コンパウンド物には、成分A)が68〜93.99重量%で、成分B)が6〜30重量%で、そして成分C)が0.01〜2重量%で含まれるのが好ましく、それらの重量パーセントを全部合計したものがかならず100になるようにする。
【0050】
本発明の組成物およびそれらから製造される成形コンパウンド物に、成分A)を79〜89.9重量%の範囲で、成分B)を10〜20重量%の範囲で、そして成分C)を0.1〜1重量%の範囲で含むのが特に好ましいが、それらの重量パーセントを全部合計したものがかならず100になるようにする。
【0051】
さらなる用途のための本発明の成形コンパウンド物の調製は、本発明の組成物を少なくとも1種のミキサー、好ましくはコンパウンダーの中で混合することによって実施される。このことによって、中間体としての、本発明の組成物をベースとする成形コンパウンド物が得られる。それらの成形コンパウンド物(熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物とも呼ばれる)は、成分A)、B)およびC)のみからなっていてもよいし、あるいは成分A)、B)およびC)に加えてさらなる成分が含まれていてもよい。その場合においては、成分A)、B)およびC)で特定されている量の範囲を変化させて、それらの重量パーセントを全部合計したものがかならず100になるようにすることができる。
【0052】
熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物およびそれらから製造される製品の場合においては、それらの中の本発明の組成物の割合を、40〜100重量%の範囲とするのが好ましく、その残りの成分は、それらの製品の後々の使用に応じて当業熟練者に選択される、好ましくは、以下で定義される成分D)〜F)の少なくとも1種からの補助剤で構成される。
【0053】
成分D)
一つの好ましい実施態様においては、成分A)、B)およびC)に加えて、少なくとも1種の窒素含有難燃剤成分D)を、好ましくは0.1〜15重量%の範囲、より好ましくは3〜10重量%の範囲でさらに使用し、そして成分A)、B)またはC)の少なくとも一つを、成分A)、B)、C)およびD)の重量パーセントを合計したものが、成形コンパウンド物を基準にして、かならず100となるように、規定された定量的範囲の中で変化させる。
【0054】
好ましい窒素含有難燃剤は、メラミンおよび/またはメラミンとの縮合反応生成物を含むもの、より特にはmelem[CAS No.1502−47−2]、melam[CAS No.3576−88−3]、およびmelon[CAS No.32518−77−7]である。メラミンを含む窒素含有難燃剤の中でも特に好ましいのは、メラミンと酸との反応生成物であり、極めて特に好ましいのは、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、および/または国際公開第2012/025362 A1号パンフレットに記載されているような、メラミンがインターカーレートされた縮合リン酸塩のアルミニウム、亜鉛またはマグネシウム塩である。特に好ましいのは、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、ビスメラミンジンコホスフェート(欧州特許出願公開第2 609 173 A1号明細書)および/またはビスメラミンアルミノトリホスフェート(欧州特許出願公開第2 609 173 A1号明細書)であり、極めて特に好ましいのは、メラミンポリホスフェートおよび/またはメラミンシアヌレートである。メラミンポリホスフェート[CAS No.218768−84−4]は、各種の製品グレードで市場で入手することが可能である。その例としては、BASF,Ludwigshafen,GermanyからのMelapur(登録商標)200/70、およびBudenheim,Budenheim,GermanyからのBudit(登録商標)3141が挙げられる。メラミンシアヌレート[CAS No.37640−57−6]は、各種の製品グレードで市場で入手することが可能である。その例としては、BASF,Ludwigshafen,GermanyからのMelapur(登録商標)MC25が挙げられる。
【0055】
成分E)
さらに好ましい実施態様においては、それらの組成物ならびにそれらから製造される成形コンパウンド物および製品には、さらに、成分A)〜D)に加えるか、またはD)に変えて、好ましくは0.1〜50重量%の範囲、より好ましくは3〜40重量%の範囲、極めて好ましくは10〜30重量%の範囲で、E)少なくとも1種の充填剤または補強剤が含まれており、そして成分A)、B)、C)およびD)または成分A)、B)およびC)の少なくとも一つを、成分A)、B)、C)、D)およびE)、または成分A)、B)、C)およびE)の重量パーセントを合計したものがそれぞれ、その成形コンパウンド物を基準にして、かならず100となるように、規定された定量的範囲の中で変化させる。
【0056】
それにも関わらず、マイカ、シリケート、石英、より特には微細に摩砕した石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、微細に摩砕したガラスをベースとする充填剤および/または補強剤、および/または炭素繊維をベースとする繊維質の充填剤および/または補強剤の2種以上の異なったものの混合物を成分E)として使用するのが好ましい。マイカ、シリケート、石英、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョークまたは長石をベースとする、微粒子状の鉱物質充填剤を使用するのが好ましい。さらには、針状の鉱物質充填剤を添加剤として使用すれば、特に好ましい。針状の鉱物質補強剤(充填剤とも呼ばれる)は、本発明においては、特に目立つ針状の性質を有する鉱物質充填剤が含まれることが理解される。その鉱物質が、好ましくは2:1から35:1までの範囲、より好ましくは3:1から19:1までの範囲、最も好ましくは4:1から12:1までの範囲の、長さ:直径の比率を有している。本発明において使用するための針状の鉱物質の中央粒径d50は、CILAS GRANULOLMETERを用い、ISO 13320:2009にならい、レーザー回折の手段で測定して、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
【0057】
それらを成形コンパウンド物または製品へ加工した結果として、成分E)として使用されることが可能な充填剤および/または補強剤はすべて、それらの成形コンパウンド物または製品の中では、元々採用した充填剤および/または補強剤および/またはガラス繊維よりも小さいd97またはd50値を有している可能性がある。
【0058】
本明細書におけるd50およびd97値、それらの測定法、およびそれらの意義に関しては、Chemie Ingenieur Technik(72),pp.273−276,3/2000,Wiley−VCH Verlags GmbH,Weinheim,2000を参照すればよいが、そこでは、次のように書かれている:
d50とは、それ以下に粒子全量の50%が存在している粒径(中央)であり、そして
d97とは、それ以下に粒子全量の97%が存在している粒径である。
【0059】
本発明の文脈においては、粒径分布または粒径の記述は、それぞれ熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物の中に組み入れる前の、表面ベースの(surface−based)粒径と呼ばれているものを意味している。粒径の測定は、レーザー回折法によって実施されるが、これについては以下の文献を参照されたい:C.M.Keck,Moderne Pharmazeutische Technologie 2009,Freie Universitaet Berlin,section 3.1.、またはQUANTACHROME PARTIKELWELT NO 6,June 2007,pp.1−16。それらの根拠となっている標準は、ISO 13317−3である。
【0060】
充填剤および補強剤は、単独で使用することもできるし、あるいは2種以上の異なった充填剤および/または補強剤の混合物として使用することもできる。
【0061】
一つの好ましい実施態様においては、成分E)として使用される充填剤および/または補強剤が、より好ましくは接着促進剤または接着促進剤系を用いて、特に好ましくはエポキシドベースのものを用いて表面変性されているものであってもよい。しかしながら、そのような前処理が絶対に必要という訳ではない。
【0062】
一つの特に好ましい実施態様においては、成分E)としてガラス繊維が使用される。「http://de.wikipedia.org/wiki/Faser−Kunststoff−Verbund」によれば、0.1〜1mmの範囲の長さを有するチョップトファイバー(短繊維とも呼ばれる)と、1〜50mmの長さを有する長繊維と、L>50mmの長さを有する連続繊維とは、区別される。短繊維は、射出成形技術において使用され、エクストルーダーを用いて直接的に加工することも可能である。長繊維もやはり、エクストルーダーで加工することができる。それらは、スプレー・レイアップで広く使用されている。長繊維は、熱硬化性樹脂に充填剤として添加されることが多い。連続繊維は、繊維強化プラスチックにおいて、ロービングまたは織物の形態で使用される。連続繊維を含む製品は、最高の剛性および強度値を与える。さらに利用することが可能なのが、摩砕したガラス繊維であって、摩砕した後のそれらの長さは、典型的には、70〜200μmの範囲である。
【0063】
本発明においては、1〜50mmの範囲、より好ましくは1〜10mmの範囲、極めて好ましくは2〜7mmの範囲の初期長さを有するチョップトガラス長繊維を成分E)として使用するのが好ましい。成形コンパウンド物中または製品中においては、成分E)として好適に使用されたガラス繊維が、成形コンパウンド物または製品への加工をした結果として、元々採用されたガラス繊維よりも小さいd97および/またはd50を有している可能性がある。したがって、加工後のガラス繊維の長さの算術平均は、多くの場合、わずか150μm〜300μmの範囲である。
【0064】
本発明の文脈においては、ガラス繊維の長さおよびガラス繊維の長さ分布は、加工されたガラス繊維の場合には、ISO 22314にならって測定するが、そこでは最初に、試料を625℃で灰化するように規定されている。次いで、その灰分を、適切な結晶皿の中の、脱イオン水を用いて被覆した顕微鏡スライドグラスの上に置き、その灰分を、超音波浴を用い、機械的な作用は加えずに分散させる。次の工程では、オーブン中130℃での乾燥が含まれ、それに続けて、光学顕微鏡画像を用いてガラス繊維の長さを測定する。この目的のためには、3枚の画像で少なくとも100本のガラス繊維を測定するので、合計して300本のガラス繊維を用いて長さを確定する。ガラス繊維の長さは、次式にしたがって算術平均として計算することもできるし、
【数1】
[式中、l
i=i番目の繊維の長さ、n=測定した繊維の数、ヒストグラムで近似的に表される]、あるいは別な方法として、測定したガラス繊維の長さlが正規分布とみなされる場合においては、次式にしたがってガウス関数の手段で求めることもできる。
【数2】
【0065】
この式においては、l
cおよびσは正規分布に特有のパラメーターであって、l
cは平均値であり、σは標準偏差である(参照:M.Schossig,Shaedigungsmechasismen in faserverstaerkten Kunststoffen,1,2011,Vieweg und Teubner Verlag,p.35,ISBN 978−3−8348−1483−8。ポリマーマトリックスの中に組み入れられなかったガラス繊維は、上述の方法にしたがってそれらの長さに関する分析を行うが、ただし灰化処理および灰分からの分離は行わない。
【0066】
本発明において成分E)として好適に使用されるガラス繊維[CAS No.65997−17−3]は、7〜18μmの範囲、より好ましくは9〜15μmの範囲の繊維直径を有しているのが好ましいが、それは、当業熟練者が利用可能な少なくとも1種の機器、特に以下の文献にならって、μ−レントゲンコンピューター断層撮影法によって測定することができる:「Quantitative Messung von Faserlaengen und −verteilung in faserverstaerkten Kunststoffteilen mittels μ−Roentgen−Computertomographie」[Quantative measurement of fibre lengths end fibre distribution in fibre−reinforced plastic components by microroentgen computer tomography],J.KANSTNER,et al.DGZfP−Jahrestagung 2007,paper 47。成分E)として好適に使用されるガラス繊維は、連続繊維として、またはチョップトもしくは摩砕ガラス繊維として使用されるのが好ましい。
【0067】
成分E)として使用するための充填剤および/または補強剤、より特にはガラス繊維は、好適な寸法系と、接着促進剤または接着促進剤系、より好ましくはシランベースのものとを備えているのが好ましい。
【0068】
前処理のために特に好ましいシランベースの接着促進剤は、一般式(IV)のシラン化合物である。
(X−(CH
2)
q)
k−Si−(O−C
rH
2r+1)
4−k (IV)
[式中、置換基は以下のように定義される:
X:NH
2−、HO−、
【化2】
q:2〜10、好ましくは3〜4の整数、
r:1〜5、好ましくは1〜2の整数、
k:1〜3の整数、好ましくは1。]
【0069】
特に好ましい接着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、およびX置換基としてグリシジル基を含む相当するシランの群からのシラン化合物である。
【0070】
ガラス繊維に付着させるためには、シラン化合物を、表面コーティングするための充填剤および/または補強剤、より特にはガラス繊維を基準にして、好ましくは0.05〜2重量%の範囲、より好ましくは0.25〜1.5重量%の範囲、より特には0.5〜1重量%の範囲の量で使用する。
【0071】
成分F)
さらに好ましい実施態様においては、その組成物および/または、それをベースとする成形コンパウンド物および製品には、成分A)〜E)に加えるか、またはC)および/またはD)および/またはE)に代えて、成分B)、C)、D)およびE)とは異なる少なくとも1種のさらなる添加剤であるF)を、それぞれの場合において組成物全体を基準にして、好ましくは0.01〜60重量%の範囲、より好ましくは0.1〜50重量%の範囲、極めて好ましくは0.2〜25重量%の範囲の量でさらに含むが、成分A)、B)、C)、D)、E)、F)、または成分A)、B)、D)、E)、F)、または成分A)、B)、C)、E)、F)、または成分A)、B)、C)、D)、F)、または成分A)、B)、E)、F)、または成分A)、B)、C)、F)、または成分A)、B)、D)、F)、または成分A)、B)、E)、F)、または成分A)、B)、F)の全部の重量パーセントを合計したものが、組成物全体を基準にして、かならず100であるようにする。
【0072】
本発明の感覚において好ましいさらなる添加剤は、UV安定剤、成分D)とは異なるさらなる難燃剤、熱安定剤、潤滑剤および離型剤、充填剤および補強剤、レーザー吸収剤、2以上の官能価を有し、分岐または鎖伸張作用を有する添加剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、可塑剤、加工助剤、流動助剤、エラストマー変性剤、および着色剤である。それらの添加剤は、それぞれの場合において、単独で使用することもできるし、あるいは混合物中および/またはマスターバッチの形態で使用することもできる。
【0073】
潤滑剤および離型剤は、一連の長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のエステル誘導体、およびモンタンワックスから選択したものであるのが好ましい。
【0074】
好ましい長鎖脂肪酸は、ステアリン酸またはベヘン酸である。好ましい長鎖脂肪酸の塩は、ステアリン酸Caまたはステアリン酸Znである。好ましい長鎖脂肪酸のエステル誘導体は、ペンタエリスリトールをベースとするもの、より特にはペンタエリスリトールのC
16〜C
18脂肪酸エステル[CAS No.68604−44−4]または[CAS No.85116−93−4]である。
【0075】
本発明の感覚においては、モンタンワックスは、28〜32個のC原子の鎖長を有する、直鎖の飽和カルボン酸の混合物である。本発明において使用するのに特に好ましいのは、8〜40個のC原子を有する飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸と、2〜40個のC原子を有する脂肪族飽和アルコールとのエステル、さらには8〜40個のC原子を有する飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸の金属塩の群からの潤滑剤および/または離型剤であり、極めて特に好ましいのは、四ステアリン酸ペンタエリスリトール、ステアリン酸カルシウム[CAS No.1592−23−0]および/または二モンタン酸エチレングリコール、ここでより特にはLicowax(登録商標)E[CAS No.74388−22−0](Clariant,Muttenz,Basel)であり、特別に好ましいのは、たとえばEmery Oleochemicals GmbH,Duesseldorf,GermanyからLoxiol(登録商標)P861として入手可能な、四ステアリン酸ペンタエリスリトール[CAS No.115−83−3]である。
【0076】
使用するのに好適なUV安定剤は、置換されたレソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、トリアジン誘導体、またはベンゾフェノンである。
【0077】
使用される着色剤は、好ましくは、有機顔料、好ましくはフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、およびさらには染料、好ましくはニグロシンまたはアントラキノン、およびさらには無機顔料、特に二酸化チタンおよび/または硫酸バリウム、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、硫化亜鉛またはカーボンブラックである。
【0078】
本発明において顔料として好適に使用される二酸化チタンとしては、好適な二酸化チタン顔料は、そのコア構造を硫酸プロセス(SP)または塩素プロセス(CP)により製造することが可能で、アナターゼおよび/またはルチル構造、好ましくはルチル構造を有するものである。そのコア構造を前もって安定化させることは必要ないが、特定の安定化をされているのが好ましい:CPコア構造の場合においては、(Al
2O
3として計算して)0.3〜3.0重量%のAlドーピングをすることおよび四塩化チタンを酸化して二酸化チタンとする際に、気相中で酸素を少なくとも2%過剰とすることにより安定化させ;SPコア構造の場合においては、たとえばAl、Sb、NbまたはZnを用いてドーピングすることにより安定化させる。特に好ましいのは、Alを用いた「軽(light)」安定化、または、Alの量がもっと多い場合には、アンチモンを用いて補償したドーピングである。ペイントおよびコーティング、プラスチックスなどにおける白色顔料として二酸化チタンを使用する場合に、UV吸収によって生起される望ましくない光触媒的反応が、その顔料処理した物質の分解をもたらすということが公知である。このことには、二酸化チタン顔料が近紫外領域の光を吸収し、電子・正孔対が形成され、それが二酸化チタンの表面上に高度に反応性の高いフリーラジカルを作り出すという現象が含まれている。形成されたフリーラジカルが、有機媒体の中のバインダーの分解をもたらす。本発明において好ましいのは、二酸化チタンを無機的に後処理することによって、より好ましくはSiおよび/またはAlおよび/またはZrの酸化物を用いるか、および/またはSn化合物を使用することによって、二酸化チタンの光活性を低下させることである。
【0079】
顔料用の二酸化チタンの表面を、SiO
2および/またはAl
2O
3および/または酸化ジルコニウムの化合物の酸化物水和物を非晶質的に沈降させることによって被覆するのが好ましい。Al
2O
3のシェルによって、ポリマーマトリックスの中への顔料の分散が容易となり;SiO
2シェルによって、顔料表面における電荷の交換がより困難となり、それによってポリマーの分解が防止される。
【0080】
本発明においては、その二酸化チタンが、特にシロキサンまたはポリアルコールを用いた、親水性および/または疎水性の有機コーティングを備えているのが好ましい。
【0081】
本発明における成分F)の着色剤として好ましい二酸化チタン[CAS No.13463−67−7]は、90nm〜2000nmの範囲、より好ましくは200nm〜800nmの範囲の平均粒径d50を有しているのが好ましい。その平均粒径d50は、粒径分布から求められる値であって、そこでは、粒子の50重量%が、そのd50の数値よりも小さい相当球径を有している。それらの根拠となっている標準は、ISO 13317−3である。
【0082】
二酸化チタンについての粒径分布および平均粒径の記述は、それぞれの場合において、熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物の中に組み入れる前の、いわゆる表面ベースの粒径に基づいている。本発明においては、粒径の測定は、レーザー回折法によって実施されるが、これについては以下の文献を参照されたい:C.M.Keck,Moderne Pharmazeutische Technologie 2009,Freie Universitaet Berlin,section 3.1.、またはQUANTACHROME PARTIKELWELT NO 6,June 2007,pp.1−16。
【0083】
市場で入手可能な二酸化チタンの例としては、Kronos,Dallas,USAからの、Kronos(登録商標)2230、Kronos(登録商標)2233、Kronos(登録商標)2225、およびKronos(登録商標)vlp7000が挙げられる。
【0084】
本発明においては、顔料として使用するのに好適な二酸化チタンは、好ましくは0.1〜15重量%の範囲、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲、極めて好ましくは1〜5重量%の範囲で使用される。
【0085】
充填剤としてすでに使用されているのでなければ、一つの特に好ましい実施態様において、硫酸バリウム[CAS No.7727−43−7]を顔料として使用することも可能である。それは、天然に産出されるバライトの形態であっても、あるいは公知の技術的プロセスによって合成的に製造された硫酸バリウムの形態であっても使用することができるが、合成品が好ましい。たとえば「http://de.wikipedia.org/wiki/Bariumsulphat」に教示があるような、硫酸バリウムの慣用される調製方法は、硫酸ナトリウムを用いた、硫化バリウムまたは塩化バリウムの沈降法である。その場合の平均粒径[d50]は、好ましくは0.1〜50μmの範囲、より好ましくは0.5〜10μmの範囲、極めて好ましくは0.6〜2μmの範囲である。この場合の硫酸バリウムは、無処理であってもよいし、あるいは、有機および/または無機の表面処理を受けたものであってもよい。無機または有機の表面処理の例およびそれを表面に適用するための方法は、たとえば、国際公開第2008/023074 A1号パンフレットに教示されている。適切な硫酸バリウムが、たとえばSachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germanyから、Albasoft(登録商標)90、Albasoft(登録商標)100、ならびにBlanc fixe FおよびBlanc Fixe Super Fの商品名で入手することができる。
【0086】
成分F)として使用するための硫酸バリウムは、好ましくは0.1〜7重量%の定量的範囲、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で使用される。
【0087】
成分F)としては、好ましくは、2以上の官能価を有し、分岐または鎖伸張作用を有し、そして、1分子あたり少なくとも2個で、かつ15個以下の分岐または鎖伸張作用を有する官能基を含む添加剤を使用することもできる。適切な分岐性または鎖伸張性の添加剤としては、1分子あたり少なくとも2個で、かつ15個以下の分岐または鎖伸張作用を有する官能基を有し、一級および/または二級アミノ基、および/またはアミド基および/またはカルボン酸基と反応することが可能な、低分子質量またはオリゴマー性の化合物が挙げられる。鎖伸張作用を有する官能基は、好ましくは、イソシアネート、アルコール、ブロックトイソシアネート、エポキシド、無水マレイン酸、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾロンである。
【0088】
2以上の官能価を有し、分岐または鎖伸張作用を有する特別に好ましい添加剤は、個別または混合物の形での、ジグリシジルエーテルをベースとするジエポキシド(ビスフェノールおよびエピクロロヒドリン)、アミンエポキシ樹脂をベースとするジエポキシド(アニリンおよびエピクロロヒドリン)、ジグリシジルエステルをベースとするジエポキシド(脂環族ジカルボン酸およびエピクロロヒドリン)、さらには、2,2−ビス[p−ヒドロキシフェニル]プロパンジグリシジルエーテル、ビス[p−(N−メチル−N−2,3−エポキシプロピルアミノ)フェニル]メタン、およびさらには1分子あたり少なくとも2個で15個以下のエポキシド基を含む、エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルである。
【0089】
2以上の官能価を有し、分岐または鎖伸張作用を有する特に好ましい添加剤は、グリシジルエーテル、極めて好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル[CAS No.98460−24−3]、またはエポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステル、およびさらに、極めて好ましくは、エポキシ化大豆油[CAS No.8013−07−8]である。
【0090】
さらに、以下に示すものは、分岐/鎖伸張に特に好ましく適している:
1.少なくとも2個の遊離のアルコール性ヒドロキシル基および/またはフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と、適切に置換されたエピクロロヒドリンとを、アルカリ性条件下で反応させるか、または酸性触媒の存在下の反応に続けてアルカリ処理することによって得ることが可能なポリ−および/またはオリゴグリシジルまたはポリ(β−メチルグリシジル)エーテル。
【0091】
ポリ−および/またはオリゴグリシジルまたはポリ(β−メチルグリシジル)エーテルは、好ましくは、非環状アルコール、特にエチレングリコール、ジエチレングリコールおよび高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールと、ポリエピクロロヒドリンとから誘導される。
【0092】
しかしながら、それらはさらに、好ましくは、脂環族アルコール、特に1,3−もしくは1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、または1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ−3−エンから誘導されるか、またはそれらが、芳香族核、特にN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンを含んでいる。
【0093】
エポキシド化合物はさらに、好ましくは単核フェノールから、より特にはレソルシノールまたはヒドロキノンから誘導されてもよいか、またはそれらは、多核フェノール、より特にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、または酸性条件下で得られるフェノールとホルムアルデヒドとの縮合反応生成物、特にフェノールノボラックをベースとしている。
【0094】
2.エピクロロヒドリンと、少なくとも2個のアミノ水素原子を有するアミンとの反応生成物を脱塩化水素化することによって得ることが可能なポリ−および/またはオリゴ(N−グリシジル)化合物。それらのアミンは、好ましくはアニリン、トルイジン、n−ブチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、m−キシリレンジアミン、またはビス(4−メチルアミノフェニル)メタンであるが、さらにはN,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノールまたはN,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールである。
【0095】
しかしながら、それらのポリ(N−グリシジル)化合物にはさらに、好ましくは、シクロアルキレン尿素、より好ましくはエチレン尿素または1,3−プロピレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、およびヒダントイン、特に5,5−ジメチルヒダントインのN,N’−ジグリシジル誘導体が含まれる。
【0096】
3.ポリ−および/またはオリゴ(S−グリシジル)化合物、特に、ジチオール、好ましくはエタン−1,2−ジチオールまたはビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導されるジ−S−グリシジル誘導体。
【0097】
4.エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステル、特にエポキシ化植物油。それらは、不飽和脂肪酸のトリグリセリドの反応性オレフィン基をエポキシ化することによって得られる。エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルは、グリセロールの不飽和脂肪酸エステル、好ましくは植物油と、有機ペルオキシカルボン酸とから出発して調製することができる(Prilezhaev反応)。エポキシ化植物油を調製するためのプロセスは、たとえばSmith,March,March’s Advanced Organic Chemistry(5th edition,Wiley−Interscience,New York,2001)に記載されている。エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルが、植物油であるのが好ましい。本発明においては特に好ましいエポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルは、エポキシ化大豆油[CAS No.8013−07−8]である。
【0098】
成分F)として好適に使用される可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、またはN−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0099】
成分F)として好適に使用される流動助剤は、少なくとも1種のα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマーである。ここで特に好ましいのは、そのα−オレフィンがエテンおよび/またはプロペンから構成され、そのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルが、そのアルコール成分として、6〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を含んでいるコポリマーである。極めて特に好ましいのは、アクリル酸2−エチルヘキシルである。本発明における流動助剤に適したコポリマーは、その組成だけではなく、その低分子量性の点でも注目に値する。したがって、特に好ましいのは、190℃、2.16kgの負荷の下で測定して、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、より好ましくは少なくとも300g/10分のMFIを有するコポリマーである。MFI、すなわちメルトフローインデックスは、熱可塑性プラスチックの溶融物の流動特性を表すために使用され、標準のISO 1133またはASTM D 1238に規定されている。本発明の文脈においては、MFI、およびMFIに関連するすべての数値は、ISO 1133に記載の標準法により、190℃、試験荷重2.16kgで測定するか、求めたものである。
【0100】
成分F)として好適に使用されるエラストマー変性剤としては、なかんずく、
F.1:5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー
F.2:95〜5重量%、好ましくは70〜10重量%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する1種または複数のグラフトベース
の1種または複数のグラフトポリマーが挙げられる。
【0101】
グラフトベースのF.2は、一般的には0.05〜10μmの範囲、好ましくは0.1〜5μmの範囲、より好ましくは0.2〜1μmの範囲の平均粒径(d50)を有している。
【0102】
モノマーF.1は、好ましくは
F.1.1:50〜99重量%の、ビニル芳香族化合物および/または環置換されたビニル芳香族化合物、特にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、および/またはメタクリル酸の(C
1〜C
8)アルキルエステル、より特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ならびに
F.1.2:1〜50重量%のビニルシアニド、特に不飽和ニトリルたとえば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸の(C
1〜C
8)アルキルエステル、特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、および/または誘導体、特に不飽和カルボン酸の無水物およびイミド、特に無水マレイン酸またはN−フェニルマレイミド
の混合物である。
【0103】
好適なモノマーF.1.1は、スチレン、α−メチルスチレンおよびメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択され、好適なモノマーF.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択される。
【0104】
特に好ましいモノマーは、F.1.1としてのスチレンおよびF.1.2としてのアクリロニトリルである。
【0105】
エラストマー変性剤において使用するグラフトポリマーに好適なグラフトベースのF.2の例は、ジエンゴム、EPDMゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび場合によってはジエンをベースとするもの、さらには、アクリル酸エステル、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン、およびエチレン/酢酸ビニルゴムである。EPDMは、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを表している。
【0106】
好適なグラフトベースのF.2は、ジエンゴム、特にブタジエン、イソプレンなどをベースとするもの、またはジエンゴムもしくはジエンゴムのコポリマーもしくはそれらの混合物と、さらなる共重合性モノマー、特にF.1.1およびF.1.2に記載のものとの混合物であるが、ただし、成分F.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−10℃未満である。
【0107】
特に好ましいグラフトベースのF.2は、ABSポリマー(エマルション法、バルク法、および懸濁法のABS)であるが、ここでABSは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンを表しており、たとえば以下の文献に記載されている:独国特許出願公開第A 2 035 390号明細書(=米国特許第A 3 644 574号明細書)、または独国特許出願公開第A 2 248 242号明細書(=英国特許出願公開第A 1 409 275号明細書)、またはUllmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,vol.19(1980),p.280〜。グラフトベースのF.2のゲル分率は、(トルエン中で測定して)好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%である。
【0108】
それらのエラストマー変性剤またはグラフトポリマーは、フリーラジカル重合、好ましくはエマルション重合、懸濁重合、溶液重合、またはバルク重合、特には、エマルション重合またはバルク重合で調製される。
【0109】
特に好適なグラフトゴムはさらに、ABSポリマーであるが、このものは、米国特許第A 4 937 285号明細書に従った、有機過酸化物とアスコルビン酸とからなる重合開始剤系を用いた酸化還元開始によって調製される。
【0110】
周知のように、グラフト化反応においては、グラフトモノマーがグラフトベースの上に完全にグラフトされる必要はないので、本発明においては、グラフトポリマーとは、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーを(共)重合させることによって得られ、仕上げ作業においても同様に存在している、反応生成物を意味しているとも理解されたい。
【0111】
同様にして、好適なアクリル酸エステルゴムは、グラフトベースのF.2をベースにしているが、それは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルと、場合によってはF.2を基準にして40重量%までの他の重合性のエチレン性不飽和モノマーとのポリマーである。好適な重合性アクリル酸エステルとしては、以下のものが挙げられる:C
1〜C
8アルキルエステル、たとえばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロC
1〜C
8アルキルエステル、好ましくはアクリル酸クロロエチル、グリシジルエステル、ならびにそれらのモノマーの混合物。この文脈において特に好ましいのは、コアとしてのアクリル酸ブチルとシェルとしてのメタクリル酸メチルを含むグラフトポリマー、より特には、Paraloid(登録商標)EXL2300,Dow Corning Corporation,Midland Michigan,USAである。
【0112】
F.2として特に好適なさらなるグラフトベースは、グラフト活性のある部位を有するシリコーンゴムであって、たとえば以下の特許に記載がある:独国特許出願公開第A 3 704 657号明細書(=米国特許第4 859 740号明細書)、独国特許出願公開第A 3 704 655号明細書(=米国特許第4 861 831号明細書)、独国特許出願公開第A 3 631 540号明細書(=米国特許第4 806 593号明細書)および独国特許出願公開第A 3 631 539号明細書(=米国特許第4 812 515号明細書)。
【0113】
シリコーンを部分的に含む好ましいグラフトポリマーは、シェルとしてメタクリル酸メチルまたはスチレン−アクリロニトリルを、そしてコアとしてシリコーン/アクリル酸エステルグラフト物を含むものである。使用することが可能な、シェルとしてスチレン−アクリロニトリルを含むものとしては、たとえば、Metablen(登録商標)SRK200が挙げられる。使用することが可能な、シェルとしてメタクリル酸メチルを含むものとしては、たとえば、Metablen(登録商標)S2001、Metablen(登録商標)S2030および/またはMetablen(登録商標)SX−005が挙げられる。使用するのに特に好ましいのは、Metablen(登録商標)S2001である。Metablen(登録商標)の商品名がついた製品は、三菱レイヨン(株)、日本国、東京から入手することが可能である。
【0114】
架橋させるために、2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを共重合させることも可能である。架橋性モノマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12個の炭素原子を有する不飽和1価アルコールまたは2〜4個のOH基および2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル;ポリ不飽和ヘテロサイクリック化合物、好ましくはトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能ビニル化合物、好ましくはジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;さらにはリン酸トリアリルおよびフタル酸ジアリル。
【0115】
好適な架橋性モノマーは、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、および少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロサイクリック化合物である。
【0116】
特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋させるモノマーの量は、グラフトベースのF.2を基準にして、好ましくは0.02〜5重量%、より特には0.05〜2重量%である。
【0117】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状の架橋性モノマーの場合には、グラフトベースのF.2を1重量%未満の量に制限するのが有利である。
【0118】
アクリル酸エステルに加えて、場合によってはグラフトベースのF.2の調製に使用される、好適な「その他の」重合性、エチレン性不飽和モノマーとしては、以下のものが挙げられる:アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC
1〜C
6アルキルエーテル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、およびブタジエン。グラフトベースのF.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有するエマルションポリマーである。
【0119】
グラフトポリマーをベースとするエラストマー変性剤に加えて、グラフトポリマーをベースとせず、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー変性剤を使用することも同様に可能である。好ましくは、これらには、ブロックコポリマー構造を有するエラストマーおよびそれに加えて、熱可塑性的に溶融することが可能なエラストマー、特に、EPM、EPDMおよび/またはSEBSゴム(EPM=エチレン−プロピレン・コポリマー、EPDM=エチレン−プロピレン−ジエン・ゴム、SEBS=スチレン−エテン−ブテン−スチレン・コポリマー)が含まれる。
【0120】
成分F)として好適に使用される難燃剤は、成分B)およびC)とは異なる、モノマー性およびオリゴマー性のリン酸およびホスホン酸のエステル、ホスホネートアミン、ホスホン酸塩、特にホスホン酸アルミニウム、三リン酸塩、特に三リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホスフィンオキシド、およびホスファゼンの群から選択されるリン含有化合物である。特に好ましいのは、フェノキシホスファゼンオリゴマーである。ホスファゼンおよびそれらの調製法は、たとえば欧州特許出願公開第A 728 811号明細書、独国特許出願公開第A 1961668号明細書、および国際公開第A 97/40092号パンフレットに記載されている。本発明において特に好適に使用されるのは、環状のフェノキシホスファゼン、たとえば2,2,4,4,6,6−ヘキサヒドロ−2,2,4,4,6,6−ヘキサフェノキシトリアザトリホスホリン[CAS No.1184−10−7]および/または、たとえば、(株)伏見製薬所、日本国、香川からRabitle(登録商標)FP110の名称で得られるもの[CAS No.1203646−63−2]である。
【0121】
成分D)とは異なった窒素含有難燃剤を、単独または混合物の形で、成分F)の難燃剤として使用することもまた可能である。好ましいのは、グアニジン塩、特にグアニジン炭酸塩、一級グアニジンシアヌレート、一級グアニジンリン酸塩、二級グアニジンリン酸塩、一級グアニジン硫酸塩、二級グアニジン流酸塩、グアニジンペンタエリスリチルホウ酸塩、グアニジンネオペンチルグリコールホウ酸塩、尿素リン酸塩、および尿素シアヌレートである。さらに、melem、melamおよびmelonと縮合リン酸との反応生成物を使用することも可能である。同様に好適なのが、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたはそれのカルボン酸との反応生成物、ベンゾグアナミンおよびそのアダクトおよび/または塩、さらには、窒素上で置換されているその反応生成物、ならびに、それらの塩およびアダクト物である。好適なさらなる窒素含有成分としては、アラントイン化合物、およびそれとリン酸、ホウ酸またはピロリン酸との塩、さらには、グリコルリル(glycoluril)またはそれらの塩が挙げられる。成分D)とは異なる、その他の好ましい窒素含有難燃剤は、トリクロロトリアジン、ピペラジン、およびモルホリンの反応生成物[CAS No.1078142−02−5]、特にMCA PPM Triazin HF,MCA Technologies GmbH,Biel−Benken,Switzerlandである。
【0122】
本明細書では特に取り上げなかったその他の難燃剤または難燃相乗剤もまた、成分F)として採用することができる。そのようなものとしては、なかんずく、成分C)とは異なる純粋に無機のリン化合物、より特には赤リンまたはリン酸ホウ素水和物が挙げられる。さらに、鉱物質の難燃添加剤または脂肪族および芳香族のスルホン酸の塩、特に1−ペルフルオロブタンスルホン酸の金属塩を使用することもまた可能である。それらに加えて好適なのは、以下の群からの難燃相乗剤である:その金属が亜鉛、モリブデン、カルシウム、チタン、マグネシウム、またはホウ素である、酸素含有、窒素含有、または硫黄含有金属化合物、好ましくは酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化モリブデン、ならびに、着色剤としてすでに使用されているものでなければ、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、またはそれらの混合物。
【0123】
適切であり、成分F)として好適に使用されるさらなる難燃添加剤としては以下のもの挙げられる:炭化層形成剤、より好ましくはポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニル)エーテル、特にポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル[CAS No.25134−01−4]、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリエーテルケトン、さらには、垂れ防止剤、特にテトラフルオロエチレンポリマー。テトラフルオロエチレンポリマーは、純粋な形態で使用できるし、あるいは他の樹脂、好ましくはスチレン−アクリロニトリル(SAN)、またはアクリレート類、好ましくはメタクリル酸メチルおよび/またはアクリル酸ブチルと組み合わせて使用することもできる。特に好ましい適合性を有しているテトラフルオロエチレン−スチレン−アクリロニトリル樹脂の一例は、たとえば、Cycolac(登録商標)INP449[CAS No.1427364−85−9]Sabic Corp.,Riad,Saudi Arabiaであり;特に好ましい適合性を有しているテトラフルオロエチレン−アクリレート樹脂の一例は、たとえば、Metablen A3800[CAS No.639808−21−2]、三菱レイヨン(株)、日本国、東京である。テトラフルオロエチレンポリマーを含む垂れ防止剤は、本発明において成分F)としては、好ましくは0.01〜1重量%の範囲、より好ましくは0.1〜0.6重量%の範囲の量で使用される。
【0124】
追加して成分F)として使用される難燃剤は、純粋な形態でも使用できるし、さらにはポリアルキレンテレフタレートまたはポリシクロアルキレンテレフタレートに対するマスターバッチまたはコンパクト化調製物として使用することもできる。
【0125】
成分F)として好適に使用される熱安定剤は、以下の群から選択される:硫黄含有安定剤、特にスルフィド、ジアルキルチオカルバメート、またはチオジプロピオン酸、さらには、鉄塩および銅塩の群から選択されるもの、後者の場合においては特に、好ましくはヨウ化カリウムおよび/または次亜リン酸ナトリウムNaH
2PO
2と組み合わせて使用されるヨウ化銅(I)、さらには立体障害アミン、特にテトラメチルピペリジン誘導体、芳香族二級アミン、特にジフェニルアミン、ヒドロキノン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノン、ならびにさらに立体障害フェノール、および脂肪族もしくは芳香族で置換された亜リン酸塩、さらには、これらの群の各種置換された典型物。
【0126】
立体障害フェノールの中でも使用するのに好ましいのは、少なくとも1個の3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル構成単位および/または少なくとも1個の3,5−ジ(tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)構成単位を有するものであって、特に好ましいのは以下のものである:1,6−ヘキサンジオール ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.35074−77−2](Irganox(登録商標)259,BASF SE,Ludwigshafen,Germany、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.6683−19−8]BASF,Irganox(登録商標)1010,BASF SE、および3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン[CAS No.90498−90−1](ADK Stab(登録商標)AO 80)。ADK Stab(登録商標)AO 80は、Adeka−Palmerole SAS,Mulhouse,Franceからの市販品である。
【0127】
使用される脂肪族もしくは芳香族で置換された亜リン酸塩の中で好ましいのは、二亜リン酸ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール[CAS No.154862−43−8](このものは、たとえばDover Chemical Corp.,Dover,USAからDoverphos(登録商標)S9228の商品名で入手可能)、およびテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジイル ビスホスホナイト[CAS No.38613−77−3](このものは、たとえば、Clariant International Ltd.,Muttenz,SwitzerlandからのHostanox(登録商標)P−EPQである)である。
【0128】
好ましい実施態様においては、本発明は、A)ポリブチレンテレフタレート、B)トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、およびC)ビス(リン酸二水素)亜鉛を含む組成物、それから製造することが可能な成形コンパウンド物、およびさらには製品に関する。
【0129】
好ましい実施態様においては、本発明はさらに、A)ポリブチレンテレフタレート、B)トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、およびC)ビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物を含む組成物、それから製造することが可能な成形コンパウンド物、およびさらには製品に関する。
【0130】
好ましい実施態様においては、本発明はさらに、A)ポリブチレンテレフタレート、B)トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、およびC)ピロリン酸亜鉛を含む組成物、それから製造することが可能な成形コンパウンド物、およびさらには製品に関する。
【0131】
好ましい実施態様においては、本発明はさらに、A)ポリブチレンテレフタレート、B)トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、C)ビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物、およびD)メラミンシアヌレートを含む組成物、それから製造することが可能な成形コンパウンド物、およびさらには製品に関する。
【0132】
好ましい実施態様においては、本発明はさらに、A)ポリブチレンテレフタレート、B)トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、C)ビス(リン酸二水素)亜鉛二水和物、D)メラミンシアヌレート、およびE)ガラス繊維を含む組成物、それから製造することが可能な成形コンパウンド物、およびさらには製品に関する。
【0133】
使用
しかしながら、本発明はさらに、トラッキング抵抗性の製品、特に電気または電子集成部品および構成部品を製造するための、本発明の組成物、特に成形コンパウンド物の形態における使用に関する。
【0134】
しかしながら、本発明はさらに、ポリエステルベースの製品、好ましくは電気または電子産業の製品、より特には、使用されるポリエステルが、少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレートおよび/または少なくとも1種のポリシクロアルキレンテレフタレート、特には少なくともポリブチレンテレフタレートであるような電気または電子産業の製品のトラッキング抵抗性を向上させるための、本発明の組成物の使用に関する。
【0135】
方法
しかしながら、本発明はさらに、本発明の組成物を混合して成形コンパウンド物を形成させることにより、製品、好ましくは電気または電子産業のための製品、より好ましくは電気または電子集成部品および構成部品を製造するための方法に関する。それらの成形コンパウンド物はさらに、ストランドの形態で排出され、ペレット化が可能になるまで冷却され、ペレット化された後に、マトリックス材料として射出成形または押出し成形、好ましくは射出成形にかけられることができる。
【0136】
240〜310℃の範囲、好ましくは260〜300℃の範囲、より好ましくは270〜295℃の範囲の温度で混合して溶融物とするのが好ましい。この目的では、二軸スクリューエクストルーダーを使用するのが特に好ましい。
【0137】
一つの実施態様においては、本発明の組成物を含むペレットを、好ましくは真空乾燥キャビネットまたは乾燥空気ドライヤー中、約120℃の範囲の温度で2時間の範囲の時間をかけて乾燥させた後、マトリックス材料として、射出成形または押出し成形プロセスにかけて、本発明による製品を製造する。
【0138】
しかしながら、本発明はさらに、マトリックス材料として成形コンパウンド物の形態にある本発明の組成物を、射出成形または押出し成形により、ポリエステルとして、少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレートおよび/または少なくとも1種のポリシクロアルキレンテレフタレート、より特には少なくともポリブチレンテレフタレートを使用して加工することによる、ポリエステルベースの製品のトラッキング抵抗性を改良するための方法にも関する。
【0139】
熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物の射出成形および押出し成形のプロセスは、当業者には公知である。
【0140】
押出し成形または射出成形によってポリエステルベースの製品を製造するための本発明による方法は、240〜330℃の範囲、好ましくは260〜300℃の範囲、より好ましくは270〜290℃の範囲の溶融温度と、さらに場合によっては、2500bar以下の圧力、さらに好ましくは2000bar以下の圧力、より好ましくは1500bar以下の圧力、極めて好ましくは750bar以下の圧力で実施される。
【0141】
逐次共押出し法では、2種の異なった材料を連続的に、交互の順で押出し加工することが含まれる。このようにすると、押出される方向に交互に異なった材料組成物を有するプリフォームが形成される。材料を相応に選択するという手段によって、物品の特定の部分に、特定の要求性能を備えさせることが可能となるが、そのような物品の例としてはたとえば、軟質の末端部と硬質の中央部を有する物品や、一体化された軟質の蛇腹領域を有する物品が挙げられる(Thielen,Hartwig,Gust,「Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern」,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,pp.127−129)。
【0142】
射出成形のプロセスの特徴は、好ましくはペレットの形態の、本発明の組成物を含む成形コンパウンド物を加熱された円筒状のキャビティの中で溶融させ(すなわち、可塑化させ)、加熱されたキャビティに圧力をかけて、射出コンパウンド物として射出することにある。その材料を冷却(固化)させてから、射出成形物を脱型する。
【0143】
以下の相に区別できる:
1.可塑化/溶融
2.射出相(充填操作)
3.圧力保持相(結晶化の過程で熱収縮が起きるため)
4.脱型
【0144】
これに関しては、「http://de.wikipedia.org/wiki/Spritzgie%C3%9Fen」を参照されたい。射出成形機は、型締めユニット、射出ユニット、駆動系および制御系からなっている。型締めユニットには、金型のための固定および移動熱盤および端盤、さらにはタイバーおよび移動型熱盤のための駆動系(トグリング機構または油圧型締めユニット)が含まれる。
【0145】
射出ユニットには、電気加熱可能なバレル、スクリューのための駆動装置(モーター、ギアボックス)、およびスクリューおよび射出ユニットを移動させるための油圧系が含まれる。射出ユニットの作業は、粉体またはペレットを溶融させること、それらを計量すること、それらを射出すること、および(収縮対策のために)保持圧力を維持することである。溶融物がスクリューの内部で逆向きに流れるという問題(漏れ流れ)は、逆止弁によって解決される。
【0146】
射出成形金型の中では、入ってきた溶融物が分離、冷却され、製造目的の製品が製造される。この目的のためには、二つ割りの金型(two halves of the mould)が常に必要である。射出成形においては、次のような機能系に区別される:
− ランナー系
− 成形インサート系
− ベント系
− マシンケースおよび力吸収系
− 脱型系および移動伝送系
− 加熱系
【0147】
射出成形とは対照的に、押出し成形では、エクストルーダーの中で、本発明の成形コンパウンド物の連続的に成形されたポリマーストランドを使用するが、そのエクストルーダーは、成形した熱可塑性プラスチック部品を製造するための機械である。以下の文献を参照されたい:「http://de.wikipedia.org/wiki/Extrusionsblasformen」。単軸スクリューエクストルーダーと二軸スクリューエクストルーダーは区別されるし、さらには、通常の単軸スクリューエクストルーダー、搬送用単軸スクリューエクストルーダー、異方向回転二軸スクリューエクストルーダー、および共回転二軸スクリューエクストルーダーのそれぞれサブグループも区別される。
【0148】
押出し成形システムは、エクストルーダー、金型、下流側の機器、押出し吹込み金型からなっている。異形品を製造するための押出しシステムは以下のものからなっている:エクストルーダー、異形金型、キャリブレーション、クーリングゾーン、キャタピラーテークオフおよびロールテークオフ、分離装置、および傾斜シュート。
【0149】
したがって本発明はさらに、本発明の組成物から得ることが可能な成形コンパウンド物を押出し成形、好ましくは異形押出し成形、または射出成形することによって得られる、製品、特にトラッキング抵抗性の製品にも関する。
【実施例】
【0150】
本発明で記載した、トラッキング抵抗性および機械的性質における改良を実証する目的で、まず最初に、相当するポリエステルの成形コンパウンド物をコンパウンディングにより調製した。この目的のための個々の成分を、二軸スクリューエクストルーダー(ZSK32 Mega Compuounder,Coperion Werner & Pfleiderer,Stutgart,Germany)の中、260〜300℃の範囲の温度で混合し、ストランドとして排出し、ペレット化が可能になるまで冷却し、ペレット化した。(一般的には真空乾燥キャビネット中、120℃で2時間)乾燥させてから、ペレットを加工して、試験片を作成した。
【0151】
表2に列記した試験のための試験片は、Arburg 320−210−500射出成形機を用い、溶融温度260℃、金型温度80℃で成形した。
− 試験ロッド:80mm×10mm×4mm(ISO 178またはISO 180/1Uに準拠)
− UL94V試験:ASTM標準試験片
− グローワイヤ−試験のための試験片:DIN EN 60695−2−13
− トラッキング抵抗性の測定のための試験片:IEC 60112
【0152】
曲げ強度および外側繊維歪みは、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片についてのISO 178に従った曲げ試験から得られた。
【0153】
耐衝撃性は、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片についてのISO 180−1Uに従うIZOD法によって得た。
【0154】
難燃性は、UL94V法によって求めた(Underwriters Laboratories Inc.Standard of Safety,「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」,pp.14−18,Northbrook,1998)。試験片の寸法は、125mm×13mm×0.75mmであった。
【0155】
グローワイヤ−抵抗性は、DIN EN 60695−2−13に従ったGWIT(Glow Wire Ignition Temperature)試験をベースにして求めた。GWIT試験の文脈においては、報告された数値はグローワイヤ−発火温度であるが、これは連続して3回の試験で、グローワイヤ−への曝露時間の間に発火に至らなかった最大のグローワイヤ−温度よりも25K(または900℃〜960℃の範囲の温度の場合は30K)高い温度である。ここにおける「発火」とは、5秒以上の燃焼時間を有する火炎と理解されたい。この試験では、直径80mm、厚み0.75mmの円板を使用した。
【0156】
比較トラッキング指数(すなわち、トラッキング抵抗性)は、IEC 60112に従い、60mm×40mm×4mmの寸法を有する試験片を用いて求めた。
【0157】
溶融粘度は、ISO 1133−1にしたがって溶融物体積流量(MVR)の形で求めたが、それぞれの場合において260℃および280℃の温度で、それぞれの場合においてペレットに2.16kgの重量をかけ、それぞれの場合において組成物を、温度安定性を評価する目的で、5分間の滞留時間で保持した。使用したポリマーの初期の粘度と比較すれば、MVRは、加熱負荷の結果としてのポリマーの分解の目安である。MVRの数値が高いということは、溶融粘度が低い、したがって熱分解が大きいということを表している。
【0158】
実験には以下のものを使用した:
成分A):直鎖状のポリブチレンテレフタレート(Pocan(登録商標)B1300,Lanxess Deutschland GmbH,Leverkusen,Germanyからの市販品)、固有粘度93cm
3/g(フェノール:1,2−ジクロロベンゼン=1:1の中、25℃で測定)
成分B:トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム[CAS No.225789−38−8](Exolit(登録商標)OP1230,Clariant SE,Muttenz,Switzerland)
成分C):ビス[リン酸二水素]亜鉛二水和物[CAS No.13986−21−5](Z21−82,Chemische Fabrik Budenheim KG,Budenheim,Germany)
成分D):メラミンシアヌレート(Melapur(登録商標)MC25,BASF SE,Ludwigshafen,Germany)
成分E):10μmの直径を有し、シラン含有化合物を用いてサイジングしたガラス繊維(CS7967,Lanxess N.V.,Antwerp,Belgiumの市販品)
成分F1):硫酸バリウム[CAS No.7727−43−7](BLANC FIXE Super F,Sachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germany)
【0159】
実施例で成分F2)として使用されたさらなる成分F)の添加剤は、難燃性の熱可塑性ポリエステルにおいて慣用される以下の成分であった:
離型剤:四ステアリン酸ペンタエリスリチル(PETS)[CAS No.115−83−3](Loxiol(登録商標)VPG861,Cognis Deutschland GmbH,Duesseldorf,Germany)
熱安定剤:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジイル ビスホスホナイト[CAS No.38613−77−3](Hostanox(登録商標)P−EPQ,Clariant International Ltd.,Muttenz,Switzerland)
垂れ防止添加剤:ポリテトラフルオロエチレン[CAS No.9002−84−0](Dyneon(登録商標)PA 5932,Dyneon GmbH & Co.KG,Neuss,Germany)
【0160】
さらに使用された添加剤(成分F2)は、それぞれの場合において、相当する本発明実施例および比較例に合わせてある(F2)=0.7重量%)。
【0161】
それらの成分の画分を合計したものは、それぞれの場合において、100重量%とする。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
実施例からは、成分C)を使用すると、成分C)を含まない比較例に対して、トラッキング抵抗性および機械的性質における改良を達成することができることがわかる。機械的性質における改良は、耐衝撃性の向上ならびに外側繊維歪みおよび曲げ強度における改良のいずれからも明らかである。機械的性質が改良されていることはさらに、成分C)を含まない比較例よりも、はるかに小さいMVR値を有していることからも認めることができるが、これは、ポリマーの分解レベルがより低いことを表している。すべての改良において、難燃性へのマイナスの影響は伴っていない。