特許第6181832号(P6181832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6181832
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20170807BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A01G31/00 612
   A01G9/24 G
   A01G9/24 N
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-191418(P2016-191418)
(22)【出願日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003207
【氏名又は名称】エーモン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】小田 容史
(72)【発明者】
【氏名】執行 正義
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 潔
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−191725(JP,A)
【文献】 特開昭47−029138(JP,A)
【文献】 特開2013−162750(JP,A)
【文献】 特開2004−121074(JP,A)
【文献】 特開平07−227162(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/111487(WO,A1)
【文献】 特開2015−006133(JP,A)
【文献】 特開2007−236235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14− 9/26
A01G 31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内で植物(P)を育成可能な家庭用の水耕栽培装置であって、
栽培容器(4)に植物(P)を保持させる植物育成ユニット(15)(15)が収納される植物収納室(10)と、該植物収納室(10)内の上記植物(P)に光を照射する照射器(5)を設けた光源室(20)とを、区画形成する区画内壁(11)を外壁(12)の内部に有する栽培ケース部(3)を備え、
該栽培ケース部(3)は、上記植物収納室(10)から上記光源室(20)へ空気を送るために上記区画内壁(11)に取着された植物収納室換気用の第1ファン(1)と、上記光源室(20)から外部へ空気を排出するために外壁(12)に取着された光源室換気用の第2ファン(2)とを、有し、
かつ、上記第1ファン(1)・第2ファン(2)を独立して制御可能なファン制御手段と、上記植物収納室(10)の室温を検出する温度検出手段(25)と、所定の設定育成適温域を記憶する設定記憶手段(26)とを、有する制御部(6)を備え、
上記植物収納室(10)の室温が、上記設定育成適温域の下限値(T)未満であれば、上記制御部(6)によって、上記第1ファン(1)を常時稼働させつつ上記第2ファン(2)を非稼働乃至間欠稼働として、上記光源室(20)で上記照射器(5)の発熱により加温された空気を、上記光源室(20)から上記植物収納室(10)に環流させる冬季循環運転状態とし、上記植物収納室(10)の室温が上昇して上記設定育成適温域の上限値(T)を超えている状態では、上記制御部(6)によって、上記第1ファン(1)・第2ファン(2)を常時稼働させて、上記光源室(20)で上記照射器(5)の発熱により加温された空気を、上記光源室(20)から外部へ排出する換気運転状態とし、上記冬季循環運転状態と上記換気運転状態に、切換えて上記植物収納室(10)が、植物(P)の育成に適した室温に維持されるよう構成され
上記栽培容器(4)内の液体肥料(L)を循環させる循環ポンプ(17)が上記栽培容器(4)に付設され、該循環ポンプ(17)をポンプ制御手段にて制御して、上記循環ポンプ(17)の発熱を、上記植物収納室(10)の室温の維持に利用するよう構成されていることを特徴とする水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内で、土を使わずに葉物野菜やハーブ類等の植物を栽培することができる家庭用の水耕栽培装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−65855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の水耕栽培装置で栽培される植物、例えば、葉物野菜は、その種類によって、育成に適した温度条件が異なるため、植物収納室内の温度が、育成する葉物野菜にとって最適な温度域を外れると、葉物野菜がうまく育たないことがあった。植物収納室の室温が上昇し過ぎた際の対策としては、換気を行って外気を取り込むことにより室温を下げることが効果的であるが、特に冬季に於て、植物収納室の室温が下がり過ぎた際には、電気ヒーターにより加温するか、又は、水耕栽培装置全体を保温カバーで覆うことで、植物収納室の温度調整が行われていた。
しかし、電気ヒーターは消費電力が大きく、また、保温カバーで覆う方法は、温度調整の為に保温カバーを付けたり外したりするのに非常に手間が掛かり面倒で、しかも、保温カバーを付けた状態では水耕栽培装置の美観が損なわれるという問題があった。また、植物を育成し易い好適な環境を保つ為に、植物育成室内には、常時空気の流れを作っておく必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、植物収納室を、簡便に、最適な室温に維持でき、植物を育成し易い好適な環境を保つことができる水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水耕栽培装置は、屋内で植物を育成可能な家庭用の水耕栽培装置であって、栽培容器に植物を保持させる植物育成ユニットが収納される植物収納室と、該植物収納室内の上記植物に光を照射する照射器を設けた光源室とを、区画形成する区画内壁を外壁の内部に有する栽培ケース部を備え、該栽培ケース部は、上記植物収納室から上記光源室へ空気を送るために上記区画内壁に取着された植物収納室換気用の第1ファンと、上記光源室から外部へ空気を排出するために外壁に取着された光源室換気用の第2ファンとを、有し、かつ、上記第1ファン・第2ファンを独立して制御可能なファン制御手段と、上記植物収納室の室温を検出する温度検出手段と、所定の設定育成適温域を記憶する設定記憶手段とを、有する制御部を備え、上記植物収納室の室温が、上記設定育成適温域の下限値未満であれば、上記制御部によって、上記第1ファンを常時稼働させつつ上記第2ファンを非稼働乃至間欠稼働として、上記光源室で上記照射器の発熱により加温された空気を、上記光源室から上記植物収納室に環流させる冬季循環運転状態とし、上記植物収納室の室温が上昇して上記設定育成適温域の上限値を超えている状態では、上記制御部によって、上記第1ファン・第2ファンを常時稼働させて、上記光源室で上記照射器の発熱により加温された空気を、上記光源室から外部へ排出する換気運転状態とし、上記冬季循環運転状態と上記換気運転状態に、切換えて上記植物収納室が、植物の育成に適した室温に維持されるよう構成され、上記栽培容器内の液体肥料を循環させる循環ポンプが上記栽培容器に付設され、該循環ポンプをポンプ制御手段にて制御して、上記循環ポンプの発熱を、上記植物収納室の室温の維持に利用するよう構成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水耕栽培装置によれば、気温が低下する冬季に、簡便に、植物収納室の室温が低くなるのを防止して、植物が育ちやすい環境を保つことができる。照射器によって、植物の光合成に必要な光を植物収納室に向けて照射すると共に、照射器から発生する熱を、植物収納室の室温を維持するために有効に利用することができ、余計な電力消費を避け、コストを低く抑えることができる。冬季の室温調整の為に保温カバーを被せる必要がなく、外観上の美観を保つことができる。保温カバーを着脱させる等の使用者の手間が省けて、至便である。構造が簡素で、安価かつ容易に製造できる。植物収納室内の室温の調整と空気の送風を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態を示した斜視図である。
図2】本発明の実施の一形態を示した簡略な断面正面図である。
図3】本発明の水耕栽培装置の作用を説明する断面正面図であり、(A)は冬季循環運転状態の断面正面図であり、(B)は換気運転状態の断面正面図である。
図4】栽培容器を示す分解斜視図である。
図5】栽培容器を示す要部拡大斜視図である。
図6】扉の合わせ目を示す要部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に示すように、本発明の水耕栽培装置は、屋内で使用され、土を使わずに葉物野菜やハーブ類等の植物Pを育成する家庭用の水耕栽培装置である。水耕栽培装置で育成される植物Pは、例えば、リーフレタス、小松菜、春菊、水菜、ルッコラ、ベビーリーフ等の葉物野菜、あるいは、バジルやパセリ等のハーブ類であり、これらの植物Pが栽培ケース部3に収納されている。
栽培ケース部3は、前面に、大半が透明な部材30で形成された観音開き式の扉13A,13Bを備え、扉13A,13Bを閉めた状態でも、外部から植物収納室10の植物Pを観察することができる。栽培ケース部3の前面上部には、主電源スイッチ兼用の異常報知点灯部31と、現在時刻や植物収納室10の室温等を表示するための表示部32と、表示部32の表示を切り換えたり育成環境の設定を変更したりするための操作部33とが、設けられている。栽培ケース部3は、背面や側壁面が局部的に透明な部材30で形成されても良い。
【0010】
図1図2に示すように、栽培ケース部3は、直方体状の外壁12と、外壁12内面に設けられた区画内壁11とを、有し、局部的な2重壁構造に形成されている。
栽培ケース部3は、区画内壁11によって、栽培容器4に植物Pを保持させた植物育成ユニット15,15を2個以上収納可能な植物収納室10と、植物収納室10の上方(天井)から光を照射する照射器5を設けた光源室20とが、区画形成されている。
区画内壁11は、植物収納室10の天井を形成する(光透過性の)透明壁部11Aと、外壁12の側壁12B,12B内面に連結された連結壁部11B,11Bとを、有している。連結壁部11B,11Bには、後述の第1ファン1が取着される植物収納室10の換気吸出口18と、植物収納室10の換気吸入口19が形成されている。
外壁12の側壁12B,12Bには、光源室20に連通する外気取込口7と、後述の第2ファン2が取着される排気口14が形成されている。
【0011】
照射器5は、LED5Aと基板5Bから成り、光源室20の天井面(外壁12の天井面)に複数個(図例では3個)並べて配設されている。照射器5は、LED5A各個が太陽光に近い波長の光を照射して、屋外に近似した日照条件で植物収納室10の植物Pに光合成をさせ、植物Pの生長を促すよう構成されている。照射器5は、1日24時間の内、例えば、16時間点灯して8時間消灯するように設定される。なお、照射器5は、LED以外の光源(例えば、蛍光灯など)を用いても良い。
【0012】
栽培ケース部3は、植物収納室10の換気吸出口18に取着された第1ファン1と、排気口14に取着された第2ファン2とを、有している。
また、栽培ケース部3は、第1ファン1・第2ファン2を独立して制御可能な制御部6を備えている。
制御部6は、第1ファン1・第2ファン2を制御するファン制御手段と、照射器5を制御する光制御手段と、後述の循環ポンプ17を制御するポンプ制御手段とを、備え、さらに、異常報知点灯部31の点灯状態及び色を制御する報知制御手段と、表示部32を制御する表示制御手段とを、備えている。また、植物収納室10の室温を検出する温度検出手段25と、所定の設定育成適温域を記憶する設定記憶手段26とを、備えている。
【0013】
本発明の水耕栽培装置の作用について説明する。
図3(A)に示すように、栽培ケース部3は、植物収納室10の室温が、設定記憶手段26に記憶させた所定の設定育成適温域の下限値T未満である際、制御部6によって、第1ファン1を常時稼働させ、かつ、第2ファン2が非稼働乃至間欠稼働に制御される。第2ファン2の間欠稼働とは、例えば、1時間の内、5分間だけ稼働し、それ以外の時間は停止している状態とする。第1ファン1が稼働することで、植物収納室10から光源室20に空気が送られ、外気取込口7からの外気と混ざり合って光源室20内を流通する。光源室20を流れる空気が、照射器5の発する熱を吸収して、温度上昇する。照射器5の発熱により加温された空気は、第2ファン2が非稼働(又は間欠稼働)であるため、外部に排出されずに、光源室20から植物収納室10に環流する。このように、植物収納室10の換気吸出口18から出た空気が、光源室20での加温を経て、植物収納室10の換気吸入口19に吸い込まれる状態を、冬季循環運転状態とし、冬季循環運転状態では、植物収納室10の室温が、照射器5の熱によって、次第に上昇する。また、栽培ケース部3内で空気を循環させることで、植物Pの葉の表面に適度な空気の流れを発生させて、光合成を促進する。
【0014】
次に、冬季循環運転状態下で植物収納室10の室温が上昇して、設定育成適温域の上限値Tを超えた際、制御部6によって、第1ファン1と第2ファン2を常時稼働させるよう自動的に切換える。
図3(B)に示すように、第2ファン2が稼働することで、照射器5の発熱により加温された空気が、光源室20から外部へ排出される。照射器5の発する熱が空気と共に外部へ放出される状態を、換気運転状態とし、換気運転状態下で、植物収納室10の室温は、徐々に低下していく。そして、植物収納室10の室温が下降して、設定育成適温域の下限値Tを再び下回った際、制御部6によって自動的に冬季循環運転状態に切り換えられ、植物収納室10の室温が、植物Pの育成に適した設定育成適温域に維持されるよう構成されている。
なお、設定育成適温域は、具体的には、下限値Tが10℃〜15℃、上限値Tが20℃〜25℃に設定されるのが好ましい。設定記憶手段26には、出荷時に設定育成適温域を予め記憶させておくも良く、操作部33によって自由に設定育成適温域を入力・変更できるようにしても良い。
【0015】
ここで、植物育成ユニット15について、詳しく説明する。
図1図2に示すように、植物育成ユニット15は、栽培容器4に収容した液体肥料Lに植物Pを浸漬させて養分を供給しつつ、植物Pを保持している。
栽培ケース部3の植物収納室10には、2個の植物育成ユニット15,15が収納されていて、各植物育成ユニット15に相違する植物Pを栽培し、2種類の植物P,Pを同時に育てることができ、あるいは、2個の植物育成ユニット15,15で植物P,Pの収穫時期をずらして栽培することが可能である。
【0016】
図4に示すように、栽培容器4は、液体肥料Lを収容するトレイ8と、トレイ8の開口部に施蓋されて植物Pを保持するパネル9とを、有している。
パネル9は、植物Pを差し込んで保持する栽培孔21が複数形成されている。栽培孔21には、植物P又は植物Pの種子を保持するための培地スポンジが差込まれ、植物Pが生長してくると、植物Pの根が液体肥料Lに浸漬されるよう構成されている。あるいは、栽培孔21に、植物Pを直接差込んで、植物Pの根を液体肥料Lに浸漬しても良い。なお、パネル9は、液体肥料Lの残量を確認するフロート23を有するも好ましく、また、トレイ8からパネル9を取り外す際のピックアップ用のツマミ22が設けられても良い。
【0017】
図5に示すように、パネル9は、一端縁に、ヒンジによって揺動自在の帯状副蓋部24を備え、副蓋部24を起立させることで、トレイ8に液体肥料Lを補給するための注ぎ口16が形成される。注ぎ口16を開いた状態で、副蓋部24が壁となり、液体肥料Lがこぼれにくいという利点がある。注ぎ口16は、副蓋部24を上下に揺動することで開閉自在となっている。副蓋部24は、開閉時に指で摘むための摘持部24aを有している。また、使用していない(植物Pが差し込まれていない)栽培孔21を閉塞するためのキャップ部材27,27が着脱自在に設けられている。
植物収納室10に照射される照射器5の光が、栽培孔21や注ぎ口16から入射して液体肥料Lに当ると、アオコの発生原因となる虞れがある。この為、アオコの発生を防止するために、液体肥料Lを補給する時以外は副蓋部24を倒して注ぎ口16を閉め、植物Pが差し込まれていない栽培孔21を、キャップ部材27によって閉塞しておく。なお、キャップ部材27は、栽培孔21に差込まれる差込部27Aと、差込部27Aの上端に連結された畝(うね)型の傘部27Bとを、有し、キャップ部材27を栽培孔21に差し込んだ状態(図5参照)で、パネル9と傘部27Bが、畑に畝が盛られたように見えるデザインに形成され、なおかつ、キャップ部材27の取付・取外しの際、傘部27Bの縁に指を掛け易い利点がある。
なお、パネル9の注ぎ口16は、開閉式(稼働式)でなくても良く、単に、パネル9に液体肥料Lを注入するための孔部を追加するも好ましい。
【0018】
また、図2図3に示すように、栽培容器4は、トレイ8内の液体肥料Lを循環させる循環ポンプ17が付設されている。
循環ポンプ17は、液体肥料Lを吸入・吐出して、植物Pの根に十分な酸素と養分の吸収を促す。
植物収納室10の室温が、設定記憶手段26に記憶させた設定育成適温域の上限値T(20℃〜25℃)未満であれば、制御部6によって、循環ポンプ17が常時稼働するように制御される。即ち、冬季には、循環ポンプ17の稼働に伴って発生する熱が、植物収納室10の室温の維持に利用されるよう構成されている。
また、設定育成適温域の上限値Tより少し高温のポンプ稼働調整温度T(具体的には、25℃〜30℃)を設定し、このポンプ稼働調整温度Tを超えた際、制御部6によって、循環ポンプ17を間欠稼働に切換える。循環ポンプ17の間欠稼働とは、例えば、1時間の内、15分間ポンプが稼働し、それ以外の時間は停止している状態とする。つまり、気温の上昇する夏季には、循環ポンプ17の熱により植物収納室10の室温が上昇しすぎるのを防止する。
【0019】
図1に於て、栽培ケース部3の前面に設けた異常報知点灯部31は、通常(正常動作時)は緑色又は青色に点灯しているが、植物収納室10の室温が、40℃を超えた際、あるいは、−10℃を下回った際、制御部6は、栽培ケース部3の前面の異常報知点灯部31を赤く点滅させて、使用者に植物収納室10の室温が異常上昇している事、あるいは、異常降下している事を報知するよう構成されている。
また、循環ポンプ17は、液体肥料Lの液量が減少したのを検出する液量検出センサーを有しており、液体肥料Lの液量が過少となって不足している際にも、異常報知点灯部31を赤く点滅させるよう構成されている。
【0020】
図1に示す栽培ケース部3の観音開き式の扉13A,13Bは、ヒンジによって揺動自在に取付けられ、上端に設けた把持部34,34を手前側に引くことにより、ヒンジを中心として弧を描くようにして開く。なお、図6に示すように、扉13A,13Bは、閉めた際、合わせ目39からの虫や埃の侵入を防止するため、肉厚が約1/2倍の薄肉部37,38が相互に重ね合わさるように形成されていても良い。
【0021】
栽培ケース部3は、第1ファン1・第2ファン2を保護するためのファンカバー35,36を有している。ファンカバー35,36は、空気を通すためのスリットが多数形成されており、栽培ケース部3の外壁12・区画内壁11と面一状に形成されている。ファンカバー35,36に取手を設けて、栽培ケース部3の持ち運びを容易とするも好ましい。また、外気取込口7には、着脱自在のフィルターが設けられており、このフィルターによって、栽培ケース部3に、外部から埃が入るのを防止している(図示省略)。
【0022】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、栽培ケース部3の形状、サイズ等は自由に変更できる。また、図示省略するが、植物収納室10に収納される植物育成ユニット15,15の間に、透明な間仕切り板を配設しても良い。間仕切り板は、風の流れを遮らないようにスリットが形成される。植物育成ユニット15,15に違う種類の植物Pを育てる場合や、収穫時期をずらして栽培する場合に、一方の生長の早い植物Pが、隣の植物育成ユニット15まで伸びて、他方の植物Pへの光を遮って生長を妨げるのを防止する目的で、間仕切り板が設置される。
【0023】
以上のように、本発明に係る水耕栽培装置は、屋内で植物Pを育成可能な家庭用の水耕栽培装置であって、栽培容器4に植物Pを保持させる植物育成ユニット15,15が収納される植物収納室10と、該植物収納室10内の上記植物Pに光を照射する照射器5を設けた光源室20とを、区画形成する区画内壁11を有する栽培ケース部3を備え、該栽培ケース部3は、上記植物収納室10から上記光源室20へ空気を送る植物収納室換気用の第1ファン1と、上記光源室20から外部へ空気を排出する光源室換気用の第2ファン2とを、有し、かつ、上記第1ファン1・第2ファン2を独立して制御可能な制御部6を備え、上記第1ファン1を常時稼働させ、かつ、上記第2ファン2を非稼働乃至間欠稼働として、上記光源室20で上記照射器5の発熱により加温された空気を、上記光源室20から上記植物収納室10に環流させる冬季循環運転状態と、上記第1ファン1・第2ファン2を常時稼働させて、上記光源室20で上記照射器5の発熱により加温された空気を、上記光源室20から外部へ排出する換気運転状態に、上記制御部6によって切換自在とし、上記植物収納室10が、植物Pの育成に適した室温に維持されるよう構成されているので、気温が低下する冬季に、植物収納室10の室温が低くなるのを簡便に防止して、植物Pが育ちやすい環境を保つことができる。照射器5によって、植物Pの光合成に必要な光を植物収納室10に向けて照射すると共に、照射器5から発生する熱を、植物収納室10の室温を維持するために有効に利用することができ、余計な電力消費を避け、コストを低く抑えることができる。冬季循環運転状態で、栽培ケース部3内の空気の循環により植物収納室10の室温を調整でき、保温カバーを被せる必要がなく、外観上の美観を保つことができる。保温カバーを着脱させる等の使用者の手間が省けて、至便である。構造が簡素で、安価かつ容易に製造できる。植物収納室内の室温の調整と空気の送風を両立できる。
【0024】
また、上記植物収納室10の室温を検出する温度検出手段25と、所定の設定育成適温域を記憶する設定記憶手段26とを、備え、上記植物収納室10の室温が、上記設定育成適温域の下限値T未満であれば、上記制御部6によって、上記第1ファン1を常時稼働させつつ上記第2ファン2を非稼働乃至間欠稼働として上記冬季循環運転状態とし、上記植物収納室10の室温が上昇して上記設定育成適温域の上限値Tを超えている状態では、上記制御部6によって、上記第1ファン1・第2ファン2を常時稼働させて、上記換気運転状態に切換えるよう構成されているので、植物収納室10の室温を、設定育成適温域の温度範囲に確実にコントロールすることができ、植物Pの育成に最適な環境を保つことができる。冬季循環運転状態と換気運転状態の切換えを、制御部6によって、自動で行うことができ、植物収納室10の室温を常に監視しておく手間が省けて、使用者の負担を軽減でき、植物Pを枯らさずに、順調に育成できて、新鮮な野菜(植物P)を家庭に供給できる。
【0025】
また、上記栽培容器4は、液体肥料Lを収容するトレイ8と、該トレイ8の開口部に施蓋されて植物Pを保持するパネル9とを、有し、該パネル9は、上記トレイ8に液体肥料Lを補給するための注ぎ口16を有しているので、パネル9に植物Pを保持させたままで、容易にトレイ8に液体肥料Lを補給することができる。
【0026】
また、上記栽培容器4は、上記トレイ8内の液体肥料Lを循環させる循環ポンプ17が付設され、上記植物収納室10の室温が、上記設定育成適温域の上限値T未満であれば、上記循環ポンプ17が常時稼働するように制御され、上記循環ポンプ17の発熱によって、上記植物収納室10の室温が維持されるよう構成されているので、循環ポンプ17によって、植物Pの酸素と養分の吸収を促すと共に、循環ポンプ17から発生する熱を、植物収納室10の室温を維持するために有効に利用することができ、余計な電力消費を避け、コストを低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 第1ファン
2 第2ファン
3 栽培ケース部
4 栽培容器
5 照射器
6 制御部
8 トレイ
9 パネル
10 植物収納室
11 区画内壁
15 植物育成ユニット
16 注ぎ口
17 循環ポンプ
20 光源室
25 温度検出手段
26 設定記憶手段
P 植物
設定育成適温域の下限値
設定育成適温域の上限値
L 液体肥料
【要約】      (修正有)
【課題】植物収納室を最適な室温に維持でき、植物を育成し易い好適な環境を保つことができる水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】屋内で植物Pを育成可能な家庭用の水耕栽培装置であって、栽培容器4に植物Pを保持させる植物育成ユニット15が収納される植物収納室10と、植物収納室内の植物に光を照射する照射器5を設けた光源室20とを有する栽培ケース部3を備え、栽培ケース部は、植物収納室から光源室へ空気を送る植物収納室換気用の第1ファン1と、光源室から外部へ空気を排出する光源室換気用の第2ファン2とを、有し、かつ、第1ファン・第2ファンを独立して制御可能な制御部6を備え、第1ファンを常時稼働させ、かつ、第2ファンを非稼働乃至間欠稼働とした冬季循環運転状態と、第1ファン・第2ファンを常時稼働させる換気運転状態に、制御部によって切換自在とし、植物収納室が、植物の育成に適した室温に維持されるよう構成されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6