(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181855
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】リチウムイオンキャパシタの固体電解質相間形成及び陽極プリリチウム化方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/86 20130101AFI20170807BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20170807BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20170807BHJP
【FI】
H01G11/86
H01G11/06
H01G11/50
【請求項の数】28
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-510742(P2016-510742)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-521007(P2016-521007A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014035012
(87)【国際公開番号】WO2014176267
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】61/815,157
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508035757
【氏名又は名称】マックスウェル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンタナム ラマン
(72)【発明者】
【氏名】シャオメイ シ
(72)【発明者】
【氏名】シャンロン イエ
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0042490(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0310529(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0300366(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0045427(US,A1)
【文献】
特開2006−260847(JP,A)
【文献】
特表2010−532071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/86
H01G 11/06
H01G 11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置における陽極のプリドーピング方法であって、
前記陽極及びリチウムイオン源を含むドーパント源を電解質に浸す工程と、
前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程とを含み、
前記カップリングは、所定の期間、前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程を含み、前記陽極と前記ドーパント源との間に0.01Vから0.4Vまでの電位差を実現する、陽極のプリドーピング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記エネルギー貯蔵装置はリチウムイオンキャパシタを含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記カップリングは、所定の期間、前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程を含み、60%から90%までの陽極プリドーピングレベルを実現する、陽極のプリドーピング方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程は、C/72からC/144までの電流Cレートに相当する実質的に定電流を供給する電流源をカップリングする工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記陽極と隣接する実質的に均質な固体電解質相間層を形成する工程をさらに含み、
前記固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を実質的に変えることがない、陽極のプリドーピング方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電流とカップリングした後に、前記電解質から前記ドーパント源を除去する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記電解質に陰極を浸す工程をさらに含み、
前記ドーパント源を浸す工程は、前記陰極と対向する前記陽極の側面に前記ドーパント源を浸す工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電流とカップリングした後に、形成工程を実行する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、前記陽極と前記ドーパント源との間に2Vから4.2Vの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、5hから75hの間、前記陽極と前記ドーパント源との間に2Vから4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項11】
エネルギー貯蔵装置における陽極のプリドーピング方法であって、
前記陽極及びリチウムイオン源を含むドーパント源を電解質に浸す工程と、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電圧でカップリングする工程とを含み、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電圧でカップリングする工程は、0.01Vから0.4Vまでの実質的に定電圧を供給する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記エネルギー貯蔵装置はリチウムイオンキャパシタを含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電圧でカップリングする工程は、所定の期間、実質的に定電圧でカップリングする工程を含み、60%から90%までの陽極リチウムイオンプリドーピングレベルを実現する、陽極のプリドーピング方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電圧でカップリングした後に、形成工程を実行する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、前記陽極と前記ドーパント源との間に、2Vから4.2Vの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、5hから75hの間、前記陽極と前記ドーパント源との間に2Vから4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法において、
前記陽極と隣接する実質的に均質な固体電解質相間層を形成する工程をさらに含み、
前記固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を実質的に変えることがない、陽極のプリドーピング方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電圧とカップリングした後に、前記ドーパント源を除去する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法において、
前記電解質に陰極を浸す工程をさらに含み、
前記ドーパント源を浸す工程は、前記陰極と対向する前記陽極の側面に前記ドーパント源を浸す工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項20】
エネルギー貯蔵装置における陽極のプリドーピング方法であって、
前記陽極及びリチウムイオン源を含むドーパント源を電解質に浸す工程と、
前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程とを含み、
前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程は、C/72からC/144までの電流Cレートに相当する実質的に定電流を供給する電流源をカップリングする工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記エネルギー貯蔵装置はリチウムイオンキャパシタを含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、
前記カップリングは、所定の期間、前記陽極と前記ドーパント源との間を実質的に定電流でカップリングする工程を含み、60%から90%までの陽極プリドーピングレベルを実現する、陽極のプリドーピング方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法において、
前記陽極と隣接する実質的に均質な固体電解質相間層を形成する工程をさらに含み、
前記固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を実質的に変えることがない、陽極のプリドーピング方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電流とカップリングした後に、前記電解質から前記ドーパント源を除去する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、
前記電解質に陰極を浸す工程をさらに含み、
前記ドーパント源を浸す工程は、前記陰極と対向する前記陽極の側面に前記ドーパント源を浸す工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項26】
請求項20に記載の方法において、
前記陽極と前記ドーパント源とにわたって実質的に定電流とカップリングした後に、形成工程を実行する工程をさらに含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、前記陽極と前記ドーパント源との間に2Vから4.2Vの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記形成工程を実行する工程は、5hから75hの間、前記陽極と前記ドーパント源との間に2Vから4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含む、陽極のプリドーピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気エネルギー貯蔵装置(蓄電装置)に関し、特に、イオン種によるエネルギー貯蔵装置の電極へのプリドーピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
<本願に関するクロスリファレンス>
この出願は、2013年4月23日に出願された米国仮出願61/815157号、名称「リチウムイオンキャパシタの固体電解質相間形成及び陽極プリリチウム化方法」に全て参照され、ここに取り込まれることにより、その利益を主張する。
【0003】
リチウムイオンキャパシタは、例えば、産業機械並びに輸送システムにおいて、風力発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電及び/又はエネルギー回収システムを含め、電子デバイスの多様な領域への動力の供給に利用される。リチウムイオンキャパシタは、種々の形状を有し得る(例えば、角柱状、円筒状及び/又はボタン状)。リチウムイオンキャパシタ(LIC)は、陽極と陰極との間でイオン種の輸送を行う電解質に浸された陽極及び陰極を含み得る。リチウムイオンキャパシタは、極めて大きな静電及び電気化学エネルギーの貯蔵を示す、ハイブリッドウルトラキャパシタの1つのタイプであり得る。例えば、充電は、電解質と電極との界面(例えば、リチウムイオンキャパシタ電解質とリチウムイオンキャパシタ陰極との界面)に形成される電気二重層になされ得る。リチウムイオンキャパシタの電気エネルギーは、イオン種の電極への吸着(例えば、リチウムイオンキャパシタ陽極へのリチウムイオンの吸着)によっても電極に蓄えられる。リチウムイオンは、リチウムイオンキャパシタの陽極にプリドーピングプロセスによって取り込まれ得る。
【0004】
固体電解質相間(SEI)層は、リチウムイオンキャパシタ陽極の表面に隣接して形成され得る。固体電解質相間層は、陽極プリドーピングプロセス中に生じる。例えば、固体電解質相間層は、電気化学反応により、電解液及び/又は電界質塩を含む陽極表面の少なくとも一部に生じる。固体電解質相間層は、陽極にイオンを輸送させる一方、該陽極を電気的に絶縁する。
【発明の概要】
【0005】
実施形態は、エネルギー貯蔵装置の陽極へのプリドーピング方法を含む。該プリドーピング方法は、電解質に陽極とドーパント源とを浸す工程を含み、該ドーパント源は、リチウムイオン源を含み得る。プリドーピング方法は、陽極と陰極との間に実質的に定電流をカップリング(結合)する工程を含み得る。
【0006】
ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタを含み得る。
【0007】
ある実施形態において、カップリングは、陽極とドーパント源との間に約0.01Vから約0.4Vまでの電位差を得るために、所定の期間、陽極とドーパント源との間に実質的に定電流をカップリングする工程を含み得る。ある実施形態において、カップリングは、約60%から約90%までの陽極プリドーピングレベルを得るために、所定の期間、陽極とドーパント源との間に実質的に定電流をカップリングする工程を含み得る。ある実施形態において、陽極とドーパント源との間に実質的に定電流をカップリングする工程は、約C/72から約C/144までの電流Cレートに相当する実質的に定電流を供給する電流源をカップリングする工程を含み得る。
【0008】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極と隣接する実質的に均質な固体電解質相間層を形成する工程を含み得る。ここで、固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を実質的に変える(乱される)ことがない。
【0009】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極とドーパント源とにわたって実質的に定電流をカップリングした後に、電解質からドーパント源を除去する工程を含み得る。ある実施形態において、プリドーピング方法は、電解質に陰極を浸す工程を含み得る。ここで、ドーパント源を浸す工程は、陰極と対向する陽極の側面にドーパント源を浸す工程を含み得る。
【0010】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極とドーパント源とにわたって実質的に定電流をカップリングした後に、形成工程を実行する工程を含み得る。該形成工程は、陽極とドーパント源との間に、約2Vから約4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含み得る。ある実施形態において、形成工程の実行は、約5hから約75hまでの所定の期間に、陽極とドーパント源との間に約2Vから約4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含み得る。
【0011】
実施形態は、エネルギー貯蔵装置の陽極のプリドーピング方法を含み得る。該プリドーピング方法は、電解質に陽極とドーパント源とを浸す工程を含み得る。ドーパント源は、リチウムイオン源を含み得る。プリドーピング方法は、陽極からドーパント源にわたって実質的に定電圧をカップリングする工程を含み得る。
【0012】
ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタを含み得る。
【0013】
ある実施形態において、陽極からドーパント源にわたって実質的に定電圧をカップリングする工程は、約0.01Vから約0.4Vまでの実質的に定電圧を供給する電圧源をカップリングする工程を含み得る。ある実施形態において、陽極からドーパント源にわたって実質的に定電圧をカップリングする工程は、約60%から約90%までの陽極リチウムイオンプリドーピングレベルを得るために、所定の期間、実質的に定電圧をカップリングする構成を含み得る。
【0014】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極からドーパント源にわたって実質的に定電圧をカップリングした後に、形成工程を実行する工程を含み得る。該形成工程は、陽極とドーパント源との間に、約2Vから約4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含み得る。ある実施形態において、形成工程の実行は、約5hから約75hまでの所定の期間に、陽極とドーパント源との間に約2Vから約4.2Vまでの実質的に定電圧を印加する工程を含み得る。
【0015】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極とする実質的に均質な固体電解質相間層を形成する工程を含み得る。ここで、固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を実質的に変えることがない。
【0016】
ある実施形態において、プリドーピング方法は、陽極とドーパント源とにわたって実質的に定電圧をカップリングした後に、ドーパント源を除去する工程を含み得る。ある実施形態において、プリドーピング方法は、電解質に陰極を浸す工程を含み得る。ドーパント源を浸す工程は、陰極と対向する陽極の側面にドーパント源を浸す工程を含み得る。
【0017】
実施形態は、陰極と、約60%から約90%までのリチウムイオンプリドーピングレベルを有する陽極と、該陽極と陰極とを電気的に絶縁するように設けられた陽極と陰極との間のセパレータとを有するエネルギー貯蔵装置を含み得る。
【0018】
ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、陰極と対向する陽極の側面にドーパント源を含み得る。ある実施形態において、ドーパント源は、リチウム金属を含み得る。ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、陽極とドーパント源との間に第2セパレータを含み得る。
【0019】
ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンの導電性非水電解質を含み得る。ある実施形態において、陽極は、グラファイトを含み得る。
【0020】
ある実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタを含み得る。
【0021】
本発明の要約及び従来技術を超えて実現される効果を目的とし、ある目的及び効果がここに記される。もちろん、そのような全ての目的及び効果が、必ずしも個別の実施形態によって実現されないことは理解され得る。従って、例えば、必ずしも他の目的及び効果を実現することなく、本発明を実施し又は一の効果若しくは一群の効果を最大限に活用するように、本発明が例示され又は実行されることを、当業者は認識するであろう。
【0022】
これらの全ての実施形態は、ここに開示される発明の領域内にあることが意図されている。これらの実施形態及び他の実施形態は、当業者には、添付された図面を参照して以下の詳細な記載から容易に明らかとなるであろう。
【0023】
本開示に係るこれらの特徴及び他の特徴、態様並びに効果は、ある実施形態の図面を参照して記述される。各図面は、ある実施形態の例示を意図するが、本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は一実施形態に係る例示的なリチウムイオンキャパシタを示す断面図である。
【
図2】
図2は一実施形態に係る例示的なリチウムイオンキャパシタにおける陽極プリドーピング装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は一実施形態に係る例示的なリチウムイオンキャパシタにおける陽極プリドーピング装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は定電圧プリドーピング工程における電圧の印加に対応する容量値を測定したグラフである。
【
図5】
図5は定電圧プリドーピング工程を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタの測定した性能パラメータを示す表である。
【
図6】
図6は定電圧プリドーピング工程を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタの充放電サイクル性能を示す折れ線グラフである。
【
図7】
図7は定電流プリドーピング工程を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタの測定した性能パラメータを示す表である。
【
図8】
図8は定電流プリドーピング工程を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタの充放電サイクル性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ある実施形態及び例示が以下に記述されるにも拘わらず、当業者は、本発明が具体的に開示された実施形態を超えて拡がり且つ/又は使用されること、及びその改変及び等価物は明白であることを認識するであろう。従って、ここに開示された本発明の範囲は、以下に記述される個別の実施形態によって制限されるべきではないことが意図されている。
【0026】
本発明に係る実施形態は、リチウムイオンキャパシタと、キャパシタ性能の向上を容易にするキャパシタの製造方法とに関する。一の実施形態において、キャパシタは、定電圧法を用いてキャパシタ陽極をプリドープすることによって製造される。定電圧プリドーピング法は、ドーパント源とキャパシタ陽極とを電解質に浸す工程を含み得る。定電圧は、陽極とドーパント源とにわたって、固体電解質相間層が陽極の表面との隣接面を形成するように、所定の期間だけ引加され得る。電圧及び/又は定電圧プリドーピング工程の期間は、陽極リチウムイオンプリドープの所望のレベルに達することを容易(例えば、所望のキャパシタの電気的性能及び/又はライフサイクル性能の実現を容易)にするために選択され得る。定電圧プリドーピング法は、陽極とドーパント源との間で、約0.01Vから約0.4Vまでの定電圧又は実質的に定電圧を供給する工程を含み得る。一実施形態において、キャパシタは、定電流法を用いてキャパシタ陽極をプリドープすることによって製造される。定電流プリドーピング法は、ドーパント源と陽極とを電解質に浸している間に、該ドーパント源と陽極との間に定電流を維持する工程を含み得る。定電流は、固体電解質相間層が陽極の表面との隣接面を形成するように、所定の期間だけ維持され得る。電流及び/又は定電流工程の期間は、陽極とドーパント源との間が所望の電圧差に達するのを容易にするために選択され得る。定電流プリドーピング法は、陽極とドーパント源との間で約0.01Vから約0.4Vまでの電圧差が実現され得るように、該陽極とドーパント源との間で定電流又は実質的に定電流を維持する工程を含み得る。定電流プリドーピング法は、陽極とドーパント源との間で約C/24から約C/144までの電流Cレートに相当する定電流又は実質的に定電流を維持する工程を含み得る。電圧、定電圧プリドーピング工程の期間、電流及び/又は定電流工程の期間は、陽極リチウムイオンプリドープの所望のレベルに達するために選択され得る。例えば、所望のキャパシタの電気的性能及び/又はライフサイクル性能が容易に向上するように、約60%から約90%までの陽極リチウムプリドープのレベルを含む。定電圧及び/又は定電流プリドーピング法のための適当なドーパント源は、リチウムイオン源を提供する。定電圧プリドーピング法及び/又は定電流プリドーピング法は、固体電解質相間層がその形成以降、その形状を乱され得ないように、その場で実行され得る。定電圧プリドーピング法及び/又は定電流プリドーピング法は、固体電解質相間層の形成中に、より均質な及び/又はより安定した固体電解質相間層の形成を容易にするように、制御を増強する。固体電解質相間層の向上した均質性及び安定性は、リチウムイオンキャパシタの容量、抵抗及び/又は信頼性能を向上し得る。
【0027】
ここに記載したように、また、
図1に示すように、リチウムイオンキャパシタ(LIC)10は、陰極14とイオンを伝達する陽極12を有し得る。陽極12及び陰極14は電解質28に浸され、該電解質28は、陽極12と陰極14との間でイオン種を輸送する。電解質28は電解液及び電解質塩を含み、該電解質塩はアニオン及びカチオンを含む。電解質28は、リチウムイオンの導電性非水電解質であってもよい。例えば、電解質28は、リチウム塩及び/又はアンモニウム塩を含んでいてもよい。ある実施形態においては、電解質28は、非プロトン性の有機溶媒を含み得る。電解質溶媒は、所望の塩溶解性、粘度、及び/又は化学的水準、及び/又はある温度範囲での熱的安定性を与える。例えば、電解質溶媒は、エーテル及び/又はエステルを含んでいてもよい。ある実施形態において、電解質溶媒は、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ビニレン、炭酸ジエチレン、炭酸エチレン、スルホラン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、若しくは炭酸エチルメチル、又は以上の組み合わせ等々を含み得る。ある実施形態において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO
2CF
3)
2)、若しくはトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO
3CF
3)、又は以上の組み合わせ等々を含み得る。
【0028】
リチウムイオンキャパシタ10は、陽極12と陰極14との間に、セパレータ24を含み得る。該セパレータ24は、陽極12と陰極14と間の電気的短絡を防止する一方、陽極12と陰極14と間のイオン種の輸送を可能にする。ある実施形態において、セパレータ24は、多孔質で電気的な絶縁材により形成され得る。ある実施形態において、セパレータ24は重合体材料であり得る。ある実施形態においては、セパレータ24は紙により形成され得る。
【0029】
陽極12は陽極電流コレクタ16を有し、陰極14は陰極電流コレクタ18を有する。陽極電流コレクタ16及び/又は陰極電流コレクタ18は、陽極12及び/又は陰極14と外部回路との間の電気的な接続を容易にするようにそれぞれ設けられている。電流コレクタ(例えば、陽極電流コレクタ16及び/又は陰極電流コレクタ18)は、例えば金属材料を含む、導電性材料から形成され得る。ある実施形態において、電流コレクタは、アルミニウム箔により形成され得る。ある実施形態においては、電流コレクタは、銀、銅、金、白金、パラジウム、及び/又はこれらの合金により形成され得る。他の適当な導電性材料も可能である。電流コレクタは、適当な形状及び/又は寸法(例えば、幅、長さ、及び/又は厚さ)を有している。例えば、電流コレクタは、長方形状又は実質的に長方形状(例えば、長方形状のアルミニウム箔)を有していてもよい。ある実施形態において、電流コレクタの厚さは、約20μmから約100μmであってもよい。ある実施形態においては、電流コレクタの厚さは、約30μmから約50μm、例えば40μmであってもよい。
【0030】
ある実施形態において、陰極14は、陰極電流コレクタ18の表面30と隣接する第1陰極電極フィルム22を含み得る。ある実施形態においては、陰極14は、隣接する第1陰極電極フィルム22と反対側の陰極電流コレクタ18の第2陰極電極フィルム隣接表面32を含み得る。陰極14は、陰極活材成分を含み得る。ある実施形態においては、第1陰極電極フィルム22は、多孔性材料を含む活材により形成されていてもよい。例えば、多孔性活材は、陰極14における高い表面領域に設けられていてもよい。ある実施形態においては、多孔性材料は、多孔性炭素材料を含んでいてもよい。しかし、それだけでなく、活性炭を含んでいてもよい。該活性炭は、リチウムイオンキャパシタ性能を容易に高めるように設けられた多孔性(例えば、微小孔、メソ細孔及び/又はマクロ細孔の分布)を供し得る。
【0031】
ある実施形態において、第1陰極電極フィルム22は、バインダ成分及び/又は添加成分を含み得る。ある実施形態においては、バインダ成分は、活電極材料の構造的な支持を与えてもよい。例えば、バインダ成分は、1つ又はそれ以上のポリマを含んでいてもよい。該ポリマは、第1陰極電極フィルム22における1つ又はそれ以上の他の成分に対して重合体マトリクス支持構造を与えてもよい。ある実施形態において、バインダ成分は、フルオロポリマ(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリプロピレン、これらの共重合体、及び/又はこれらのポリマブレンドを含み得る。ある実施形態において、第1陰極電極フィルム22は、例えば、該第1陰極電極フィルム22の導電性を向上するために、少なくとも1つの導電性活材成分を含み得る。導電性活材成分は、導電性炭素粒子(例えば、グラファイト及び/又はグラフェン)を含み得る。他の活材成分、バインダ成分、及び/又は添加成分も適する。
【0032】
第1陰極電極フィルム22の組成は、所望のリチウムイオンキャパシタ性能を可能にするように最適化してもよい。例えば、第1陰極電極フィルム22の組成は、例えば所望のデバイスエネルギー密度及び/又は電力密度性能を供する所望のキャパシタ性能及び/又は抵抗を与えるように設定される。ある実施形態において、第1陰極電極フィルム22の組成は、所望のサイクル性能を与えるように設定される。ある実施形態においては、第1陰極電極フィルム22は、陰極活材成分(例えば、活性炭素)を約50重量%から約99重量%まで、さらに約60重量%から約95重量%までを含み得る。ある実施形態においては、第1陰極電極フィルム22は、バインダ成分を約1重量%から約50重量%までを含み得る。ある実施形態においては、第1陰極電極フィルム22は、添加成分、例えば、陰極14の導電性を促進する導電性添加成分を約30%まで含み得る。
【0033】
ある実施形態において、陽極12は、陽極電流コレクタ16の表面34と隣接する第1陽極電極フィルム20を含み得る。ある実施形態においては、陽極12は、隣接する第1陽極電極フィルム20と反対側の陽極電流コレクタ16の第2陽極電極フィルム隣接表面36を含み得る。第1陽極電極フィルム20は、リチウムイオンが可逆に入り込ことができる材料により形成され得る。例えば、電極フィルムは、リチウムイオンが可逆に入り込ことができる炭素材料を含み得る。しかし、それだけでなく、グラファイト材料を含み得る。
【0034】
ある実施形態において、第1陽極電極フィルム20は、添加成分及び/又はバインダ成分を含み得る。例えば、第1陽極電極フィルム20は、陽極12の導電性を促進する添加物成分のような、導電性添加物を含み得る。ある実施形態においては、導電性添加物は、導電性カーボンブラック材料のような導電性炭素添加物であり得る。ある実施形態においては、第1陽極電極フィルム20のバインダ成分は、フルオロポリマ(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの共重合体、及び/又はこれらのポリマブレンドを含む重合体マトリクス支持構造を与えるように構成された1つ又はそれ以上の重合体を含み得る。
【0035】
第1陽極電極フィルム20の組成は、所望のリチウムイオンキャパシタ性能、例えば、所望のネルギー密度、電力密度、及び/又はサイクル性能を可能にするように最適化され得る。ある実施形態においては、第1陽極電極フィルム20は、活材成分(例えば、グラファイト)を約50重量%から約99重量%にまで、さらに約60重量%から約95重量%までを含み得る。ある実施形態においては、第1陽極電極フィルム20は、バインダ成分を約1重量%から約50重量%まで含み得る。ある実施形態においては、第1陽極電極フィルム20は、導電性炭素添加成分、例えば、導電性カーボンブラック成分を含め、約30重量%まで含み得る。
【0036】
固体電解質相間(SEI)層26は、例えば陽極プリドーピング工程中に、リチウムイオンキャパシタ陽極12の表面との隣接面に生じ得る。ある実施形態においては、固体電解質相間層26は、電解質28と隣接するリチウムイオンキャパシタ陽極12の表面に、電解溶液及び/又は電解質塩を含む電気化学反応により生じ得る。例えば、固体電解質相間層26は、電解質28の1つ又はそれ以上の成分の分解物の少なくとも一部によって生じる。固体電解質相間層26は、陽極12と隣接した層を与える。該層は、1つ又はそれ以上のイオン種に対して透過性を持ちながら、陽極12と電気的な絶縁性を供し得る。
【0037】
ある実施形態において、陽極12にリチウムイオンの向上した接触を供する固体電解質相間層26を含むリチウムイオンキャパシタ10は、性能が向上したリチウムイオンキャパシタ10を提供し得る。固体電解質相間層26の形成における改善された制御は、向上した均質性(例えば、SEIの構成及び/又は組成における増した均等性)、減少した厚さ、増した安定性(例えば、熱的及び/又は化学的安定性)、及び/又はそれを透過するリチウムイオンの輸送に対する減少した抵抗を持つ固体電解質相間層26の形成を容易にすることが分かった。ある実施形態においては、向上した均質性、減少した厚さ、向上した安定性、及び/又はリチウムイオンの増大した透過性を有する固体電解質相間層26は、向上した容量、減少した等価直列抵抗、及び/又は向上した信頼性を有するリチウムイオンキャパシタ10を容易にする。
【0038】
ある実施形態において、陽極プリドーピングプロセスにおける特性又はパラメータは、固体電解質相間層26の特性に影響を与えることが分かった。例えば、固体電解質相間層26の特性は、取り込まれたリチウムイオン(例えば、陽極リチウムイオンプリドーピングのレベル)を有する利用可能な取り込みサイトの百分率のように、陽極12がプリドーピングプロセス中にリチウムイオンを取り込むレベルの少なくとも一部に依存する。ある実施形態においては、陽極プリドーピングプロセスにおける1つ又はそれ以上のパラメータの改善された制御は、陽極12がリチウムイオンでプリドープされるレート及び/又はレベルにおける改善された制御のように、減少した厚さ、向上した均質性、安定性、及び/又はリチウムイオンの透過性を有する固体電解質相間層26の形成を容易にすることが分かった。
【0039】
図2を参照しながら、一実施形態において、リチウムイオンキャパシタ40の陽極42は、定電圧充電又は定電圧プリドーピングプロセスを用いて、プリドープされ得る。定電圧プリドーピング工程を含むプリドーピングプロセスを用いたリチウムイオンキャパシタ陽極42のプリドープは、それぞれに増した均質性、安定性、及び/又はリチウムイオンの透過性を有する固体電解質相間層の形成を容易にする。これにより、向上した容量、減少した等価直列抵抗、及び/又は向上したサイクル性能を有するリチウムイオンキャパシタ40の提供が可能となる。例えば、定電圧プリドーピングプロセスを用いた陽極42のプリドープは、ピンホールのない又は実質的にピンホールのない固体電解質相間層の形成が容易となる。これにより、多数回の充放電を繰り返した後の容量消失の程度を縮小することができるリチウムイオンキャパシタ40の提供が可能となる。ある実施形態においては、定電圧プリドーピング工程を含むプリドーピングプロセスは、陽極プリリチウム化における所望のレベルを実現するための期間の短縮を容易とする。
【0040】
陽極42とドーパント源46とにわたり制御された電圧の印加によって、陽極42のプリドープは、例えば、陽極42とドーパント源46との間が短絡しないで、均質性が増した固体電解質相間層の形成が容易となることが分かった。これにより、減少した等価直列抵抗、及び/又は向上したサイクル性能を有するリチウムイオンキャパシタ40を提供することができる。陽極42とドーパント源46とにわたる短絡を利用し、同時に又は実質的に同時に陽極42とドーパント源46との間に約0Vの電位差を生じるプリドーピングプロセスは、固体電解質相間層に、その均質性、安定性、及び/又はリチウムイオンの透過性を減じ、及び/又は陽極プリリチウム化に対して所望のレベルに達するための時間がより長くなることが分かった。例えば、固体電解質相間層は、約1Vの電位差を生成する。陽極42とドーパント源46との間の電位差が即時に約0Vに低下するということは、陽極42へのプリドーピングプロセスに対する制御プロセスを減らす、例えば、プリドーピングプロセス中の固体電解質相間層の形成に対する制御プロセスを減らすということである。
【0041】
ある実施形態において、
図2に示すように、リチウムイオンキャパシタ陽極42のプリドーピング装置は、電解質54(図示せず)に浸されたドーパント源46及び陽極42を含み得る。ある実施形態においては、ドーパント源46はリチウムイオン源を構成し得る。例えば、ドーパント源46は、リチウム金属を含み得る。ドーパント源46は、陽極42の側面に位置してもよい。例えば、ドーパント源46は、キャパシタ陰極44と対向する陽極42の側面に配置されてもよい。ある実施形態においては、プリドーピング装置は、ドーパント源46と陽極42との間にセパレータ48を含み得る。セパレータ48は、陽極42とドーパント源46との間の短絡を防ぐ一方、該陽極42とドーパント源46との間でイオン種(例えば、リチウムイオン)を輸送させるように設けられていてもよい。ある実施形態において、セパレータ48は、多孔性の絶縁性材料(例えば、セルロース材料を含むポリマからなる材料)により形成され得る。
【0042】
ある実施形態において、リチウムイオンキャパシタ陽極42のプリドープは、その場で実行され得る。
図2を参照しながら、ある実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ陽極42のプリドープは、陽極42、ドーパント源46、キャパシタ陰極44、陽極42と陰極44との間のセパレータ48、及び陽極42とドーパント源46との間のセパレータ48を含むリチウムイオンキャパシタセル40内において実行され得る。陽極42、ドーパント源46、陰極44及びセパレータ48は、電解質54(図示せず)に浸されてもよい。ドーパント源46は、定電圧充電又は定電圧プリドーピング工程中に消費されてもよい。ある実施形態においては、ドーパント源46は、定電圧プリドーピング工程中に、完全に又は実質的に完全に消費されてもよい。ある実施形態においては、ドーパント源46の少なくとも一部は、定電圧プリドーピング工程後に残る。残ったドーパント源46は、プリドーピングプロセスの完了時に除かれる。ある実施形態においては、残ったドーパント源46は、リチウムイオンキャパシタ40から除去されることができ、続いて、該リチウムイオンキャパシタ40は封止され得る。例えば、電圧プリドーピング工程を含む陽極プリドーピングプロセス中に形成される固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を変えない又は実質的に変えることがない。ある実施形態においては、残ったドーパント源46は、ここでさらに詳述するように、定電圧プリドーピング工程に続いて実行される形成工程の完了後まで除去されなくてもよい。
【0043】
ある実施形態において、電源52は、陽極42とドーパント源46(例えば、リチウム金属電極)とにわたって置かれ得る。ここで、電源52は、陽極42とドーパント源46とにわたって、該ドーパント源46に一定の又は実質的に一定の電圧を供給する。例えば、ドーパント源46は、電源52の正極のような、電源52の第1電極と結合されてもよく、また、陽極42は、電源52の負極のような、電源52の第2電極と結合されてもよい。この電源52は、ドーパント源46と陽極42との間で所望の電位差を維持することができる。ある実施形態においては、一定の又は実質的に一定の電圧は、陽極プリリチウム化の所望のレベルに達するまでの期間中、陽極42とドーパント源46とにわたって引加され得る。プリドーピングプロセスの間、ドーパント源46のドーパントは放出されてもよい。例えば、リチウム金属電極を含むドーパント源46におけるリチウム金属は酸化されてもよい。リチウム金属の酸化は、リチウムイオンの放出を容易にし、これにより、陽極42に取り込まれるリチウムイオンが供給される。
【0044】
陽極プリドーピングプロセスの特性又はパラメータは、陽極プリドーピングプロセス中の陽極表面と隣接して形成される固体電解質相間層の特性に影響を与える。ある実施形態においては、陽極42と隣接する固体電解質相間層の形成は、電圧が陽極42とドーパント源46とにわたって引加される期間及び/又は陽極42に取り込まれるドーパントの所望のレベルの期間に、陽極42とドーパント源46とにわたって引加される電圧の少なくとも一部に依存し得る。例えば、陽極プリドーピングプロセス中に陽極42とドーパント源46とにわたって引加される電圧値、陽極プリドーピングプロセス中に陽極42に取り込まれるドーパントのレベル、及び/又は電圧が陽極42とドーパント源46とにわたって引加される期間は、陽極プリドーピングプロセス中に陽極表面に隣接してできる固体電解質相間層の厚さ、均質性、安定性、及び/又は透過性に影響を与える。
【0045】
プリドーピングプロセス中に陽極42とドーパント源46とにわたって引加される電圧、陽極42とドーパント源46とにわたって電圧が引加される期間、及び/又は陽極プリリチウム化のレベルは、所望のリチウムイオンキャパシタ性能の少なくとも一部に基づいて決定されてもよい。例えば、電圧が引加される期間及び/又は陽極プリリチウム化のあるレベルの期間は、所望のリチウムイオンキャパシタの等価直列抵抗性能、キャパシタ容量性能、及び/又はキャパシタサイクル性能の少なくとも一部に基づいて選択してもよい。ある実施形態においては、リチウムイオンキャパシタのサイクル性能は、多数回の充放電サイクル後のキャパシタに現れる容量消失の程度を含んでいてもよい。例えば、陽極42とドーパント源46とにわたって引加される電圧、及び該電圧が引加される期間は、陽極プリリチウム化の所望のレベルの少なくとも一部に基づいて選択してもよい。陽極42の表面と隣接する固体電解質相間層の形成に相当するプリリチウム化のレベルは、所望の特性を有する。これにより、向上した性能(例えば、低減した等価直列抵抗、及び/又は、向上したサイクル性能)を持つリチウムイオンキャパシタを提供することができる。
【0046】
ある実施形態において、定電圧プリドーピングプロセスは、陽極42とドーパント源46とにわたって、約0.01Vから約0.2Vまでを含め、約0.001Vから約0.400Vまでの印加電圧を含む。例えば、約0.01Vから約0.4Vまでの電圧が、陽極42とドーパント源46とにわたって印加されてもよい。例えば、約0.1Vの電圧が陽極42とドーパント源46とにわたって印加されてもよい。
【0047】
ある実施形態において、形成工程が、定電圧プリドーピング工程に続いて実行されてもよい。形成工程は、プリドーピング工程中に、形成された固体電解質相間層の特性において、その向上と及び/又は安定性とを容易にする。例えば、該形成工程は、固体電解質相間層における構造的、熱的、及び/又は化学的特性の安定化を容易にし得る。さらに、固体電解質相間層の均質性、完全性、及び/又はリチウムイオンの透過性を向上する。ある実施形態においては、該形成工程は、ある期間、陽極42とドーパント源46とにわたる定電圧の印加を含み得る。ある実施形態においては、約2Vから約5Vまでの形成工程電圧が、陽極42とドーパント源46との間に引加され得る。例えば、形成工程電圧は、約3Vから約4Vまでを含め、また、約3.5Vから約4Vまでを含め、約2Vから約4.5Vまでであり得る。ある実施形態においては、形成工程電圧は、約2Vから約4.2Vまでであり得る。形成工程電圧は、約10hから約50hを含め、約5hから約75hまでの期間だけ引加され得る。例えば、約3.5Vから約4Vまでの形成工程電圧は、約10hから約50hまでの間、陽極42とドーパント源46とにわたって引加され得る。
【0048】
ドーパント源46は、形成工程中に消費されてもよい。ある実施形態において、ドーパント源46は、形成工程中に、完全に又は実質的に完全に消費されてもよい。残ったドーパント源46は、形成工程の完了後に除去することができる。ある実施形態においては、残ったドーパント源46は、リチウムイオンキャパシタ40から除去され得る。その後、リチウムイオンキャパシタ40は封止され得る。陽極プリドーピングプロセス中、及び/又は形成工程中の固体電解質相間層は、リチウムイオンキャパシタ40の連続して起こる充電及び/又は放電において輸送されるリチウムイオンを介した固体電解質相間層と好都合にも同一である。このとき、固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を変える又は実質的に変えることがない。
【0049】
図3を参照すると、ある実施形態において、リチウムイオンキャパシタ80の陽極82は、定電流プリドーピング工程を含むプロセスを用いてプリドープされ得る。定電流プリドーピング工程を用いたリチウムイオンキャパシタ陽極82に対するプリドープは、向上した均質性、安定性、及び/又はリチウムイオンの透過性を有する固体電解質相間層の形成を容易にすることが分かった。例えば、固体電解質相間層の形成を容易にする定電流プリドーピング工程を用いた陽極82のプリドープは、向上した構造的、熱的、及び/若しくは化学的安定性、並びに/又はピンホール欠陥がない若しくは実質的にピンホール欠陥がない固体電解質相間を持つ。これにより、多数回の充放電後の容量消失の程度が縮小したリチウムイオンキャパシタ80を提供することができる。ある実施形態においては、定電流プリドーピング工程を含むプリドーピングプロセスは、陽極プリリチウム化の所望のレベルに達するのに必要な期間を削減することができる。
【0050】
陽極82とドーパント源86とにわたる制御された電流の印加による陽極82のプリドープは、例えば、陽極82とドーパント源86との短絡に代えて、増した均質性を有する固体電解質相間層の形成を容易にする。これにより、等価直列抵抗が減少し、及び/又はサイクル性能が向上したリチウムイオンキャパシタ80を提供することができる。
【0051】
図3を参照すると、ある実施形態において、定電流プリドーピング工程を含むプロセスを用いたリチウムイオンキャパシタ陽極82のプリドープは、リチウムイオンキャパシタセル80内(例えば、その場(in-situ)実施)で実行され得る。該リチウムイオンキャパシタ80は、陽極82、陰極84、及び陽極82と陰極84との間のセパレータ88を含む。ある実施形態においては、
図3に示すように、リチウムイオンキャパシタ80は、ドーパント源86を含み得る。ドーパント源86は、リチウムイオン源を構成してもよい。例えば、ドーパント源86は、リチウム金属(例えば、リチウム金属電極)を含み得る。ドーパント源86は、陽極82の側面に置かれてもよい。例えば、ドーパント源86は、陰極84と対向する陽極82の側面に置かれてもよい。ある実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ80は、ドーパント源86と陽極82との間にセパレータ88を含み得る。セパレータ88は、1つ又はそれ以上のイオン種(例えば、リチウムイオン)を透過させることができる一方、陽極82とドーパント源86又は陰極84との間の短絡を防ぐように設けられてもよい。セパレータ88は、多孔性の絶縁性材料(例えば、セルロース材料を含むポリマからなる材料)により形成され得る。陽極82、陰極84、ドーパント源86及びセパレータ88は、電解質94(図示せず)に浸されてもよい。
【0052】
ドーパント源86は、定電流充電中又はプリドーピング工程中に消費されてもよい。ある実施形態においては、ドーパント源86は、定電流プリドーピング工程中に、完全に又は実質的に完全に消費されてもよい。ある実施形態においては、ドーパント源86の少なくとも一部は、定電流プリドーピング工程後に残り、定電流プリドーピング工程後に残ったドーパント源86は、プリドーピングプロセスの完了時に除去され得る。ある実施形態においては、残ったドーパント源86は、リチウムイオンキャパシタ80から除去することができ、続いて、該リチウムイオンキャパシタ80は、封止され得る。例えば、定電流プリドーピング工程を含む陽極プリドーピングプロセス中に形成される固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を乱され得ない又は実質的に乱され得ない。ある実施形態においては、ドーパント源86は、ここでより詳細に記述するように、定電流プリドーピング工程に続いて実行される形成工程が完了するまでに除去されてもよい。
【0053】
ある実施形態において、一定又は実質的に一定の電流フローを供給する電流源92は、陽極82とドーパント源86(例えば、リチウム金属電極)とにわたって置かれ得る。例えば、ドーパント源86は、電流源92の第1電極と結合されてもよく、また、陽極82は、電流源92がドーパント源86と陽極82との間を所望の電流フローを維持できるように、電流源92の第2電極と結合されてもよい。ある実施形態において、約C/48から約C/120までの及び約C/72から約C/96までの電流Cレートを含め、約C/24から約C/144までの電流Cレートに相当する電流が、陽極82とドーパント源86との間で維持されてもよい。(例えば、約C/24の電流Cレートとは、キャパシタが約24時間で完全に又は実質的に完全に放電するような電流に相当し、約C/144の電流Cレートとは、キャパシタが約144時間で完全に又は実質的に完全に放電するような電流に相当し得る。)ある実施形態においては、電流源92は、約C/72から約C/144までの電流Cレートに相当する電流を供給することができる。例えば、約C/72の電流Cレートに相当する電流は、陽極82とドーパント源86との間で維持される。
【0054】
ある実施形態において、一定又は実質的に一定の電流フローは、ある期間、陽極82とドーパント源86との間で維持され得る。例えば、電流フローは、陽極82とドーパント源86との間に所望の電位差が実現されるまで維持されてもよい。ある実施形態においては、陽極82とドーパント源86との間の電位差は、約開放電圧値から所望の電圧値まで低減してもよい。例えば、一定又は実質的に一定値の電流フローは、陽極82とドーパント源86との間の電位差が約開放電圧(OCV)(例えば、約3V)から所望の電位差まで低減するように、陽極82とドーパント源86との間で維持されてもよい。ある実施形態においては、陽極82とドーパント源86との間の定電流フローの維持を含む陽極プリドーピングプロセスは、陽極プリリチウム化を制御する方法を提供し得る。例えば、一定又は実質的に一定の電流は、陽極82とドーパント源86とにわたって、約0.01Vから約0.2Vまでを含め、約0.01Vから約0.4Vまでの電位差が実現されるまで維持され得る。ある実施形態においては、一定又は実質的に一定の電流は、陽極82とドーパント源86とにわたって、約0.1Vの電位差が実現されるまで維持され得る。
【0055】
ある実施形態において、定電流充電工程を含む陽極プリドーピングプロセスは、陽極プリリチウム化レベルの拡大した制御、及び/又は陽極82と隣接した固体電解質相間層の形成にわたる向上した制御を与え得る。ある実施形態においては、プリドーピングプロセス中に、陽極82と隣接して形成された固体電解質相間層の特性は、プリドーピングプロセスの特性又はパラメータの少なくとも一部、しかしそれだけではなく、陽極82とドーパント源86との間で維持された電流フロー、該電流フローが維持される期間、及び/又は陽極82に取り込まれるドーパントの所望のレベルを含めて依存し得る。例えば、陽極プリドーピングプロセス中に陽極82とドーパント源86との間で維持される電流値、プリドーピングプロセス中に陽極82に取り込まれるドーパントのレベル、及び/又は陽極82とドーパント源86との間で維持された電流値の期間は、陽極プリドーピングプロセス中に陽極表面と隣接して生じ得る固体電解質相間層における、厚さ、均質性、安定性、及び/又は透過性に影響を及ぼす。
【0056】
プリドーピングプロセス中に、陽極82とドーパント源86との間で維持された電流、陽極82とドーパント源86との間で維持された電流の期間、及び/又は陽極プリリチウム化のレベルは、所望のリチウムイオンキャパシタ性能の少なくとも一部に基づいて決定されてもよい。例えば、電流フロー、維持された電流の期間、及び/又は陽極プリリチウム化のレベルは、所望のリチウムイオンキャパシタの等価直列抵抗性能、容量性能、及び/又はサイクル性能(例えば、多数回の充放電サイクル後にキャパシタに現れる容量消失の程度)の少なくとも一部に基づいて選択されてもよい。例えば、陽極82とドーパント源86との間で維持された電流、及び維持された電流の期間は、陽極プリリチウム化の所望のレベル、及び所望の特性を有する陽極表面と隣接した固体電解質相間層の形成に相当するプリリチウム化のレベルの少なくとも一部に基づいて選択されてもよい。これにより、向上した性能(例えば、低減した等価直列抵抗、及び/又は向上したサイクル性能)を有するリチウムイオンキャパシタ80を提供することができる。
【0057】
ある実施形態において、形成工程は、定電流プリドーピング工程に続いて実行され得る。形成工程は、定電流プリドーピング工程中に形成された固体電解質相間層の特性に対する向上及び/又は安定化を容易にする。例えば、定電流プリドーピング工程に続いて実行される形成工程は、固体電解質相間層における構造的、熱的、及び/又は化学的特性の安定化を容易にし得る。さらに、固体電解質相間層に対する均質性、完全性、及び/又はリチウムイオンの透過性を向上させる。ある実施形態においては、この形成工程は、ある期間、陽極82とドーパント源86とにわたる定電圧の印加を含み得る。約2Vから約5Vまでの形成工程電圧が、形成工程中に陽極82とドーパント源86とに印加され得る。例えば、形成工程電圧は、約3Vから約4Vまで、及び約3.5Vから約4Vまでを含め、約2Vから約4.5Vまでであり得る。ある実施形態においては、形成工程電圧は、約2Vから約4.2Vまでであり得る。形成工程電圧は、約10hから約50hまでを含め、約5hから約75hまでの期間だけ引加され得る。例えば、約3.5Vから約4Vまでの形成工程電圧が、陽極82とドーパント源86とにわたって約10hから約50hまで引加され得る。
【0058】
ドーパント源86は、完全に又は実質的に完全に消費されるのを含め、形成工程中に消費されてもよい。ある実施形態においては、ドーパント源86の少なくとも一部は、形成工程の完了後に残り、残ったドーパント源86は、リチウムイオンキャパシタ80から除去され得る。その後、リチウムイオンキャパシタ80は封止され得る。定電流陽極プリドーピングプロセス中、及び/又は形成工程中の固体電解質相間層は、連続して起こるキャパシタ充電及び/又は放電において輸送されるリチウムイオンを介した固体電解質相間層と好都合にも同一である。このとき、固体電解質相間層は、その形成以降、その形状を変えない又は実質的に変えることがない。
【0059】
ある実施形態において、定電圧プリドーピング工程の電圧、定電流プリドーピング工程の電流、及び/又はプリドーピング工程の期間は、キャパシタ陽極におけるリチウムイオンプリドープの所望のレベルの実現のために選択され得る。例えば、リチウムイオンプリドープのレベルは、それぞれに向上したキャパシタ容量、抵抗、及び/又はサイクル性能を容易にするために選択され得る。ある実施形態においては、定電圧プリドーピングプロセスの電圧、定電流プリドーピングプロセスの電流、及び/又はプリドーピングプロセスの期間は、約60%から約65%までを含め、約50%から約90%までのリチウムイオンプリドープのレベルを容易にするために選択され得る。
【0060】
図4から
図8は、ここで記述される1回又はそれ以上の定電圧プリドーピングプロセス又は定電流プリドーピングプロセスを用いてプリドープされた1つ又はそれ以上のリチウムイオンキャパシタにおける容量、抵抗、及び/又はサイクル性能を示している。ここに記述されるように、1つ又はそれ以上のキャパシタの構成要素は、1つ又はそれ以上の組成を含み得る。
【0061】
図4は、定電圧プリドーピングプロセスを含むプリドーピングプロセスを用いてプリドープされたリチウムイオンキャパシタの例示的な陽極の測定された容量性能を表している。リチウムイオンキャパシタは、定電圧プリドーピング工程(例えば、
図2に示される例示的キャパシタ40を含むプリドーピングプロセス)を含むプリドーピングプロセスの対象となり、且つ、リチウムイオンキャパシタの容量が引き続き測定された。
図4は、定電圧プリドーピングプロセス中に引加された電圧が減少するほど、測定された容量(単位:ミリアンペア時(mAh))が増大することを示している。
図4に示すように、約0.1Vの定電圧の定電圧プリドーピング工程を用いてプリドープされた陽極を持つリチウムイオンキャパシタは、約0.2Vの定電圧を用いてプリドープされた陽極を持つリチウムイオンキャパシタの容量(例えば、約14mAh)よりも大きい陽極容量の測定値(例えば、約18mAh)を示し得る。
【0062】
図4は、また、陽極リチウムイオンプリドープのレベルと、定電圧プリドーピング工程中に維持された電圧とを示している。
図4に示すように、陽極へのリチウムイオンプリドープのレベル(例えば、リチウムイオンの取り込みレベル、又はプリリチウム化のレベル)は、プリドーピングプロセス中に引加された定電圧値と比例する。ここでは、リチウムイオンの取り込みレベルは、定電圧値が増大するのに伴って減少している。例えば、約0.4Vの定電圧値を用いて陽極プリドープされたリチウムイオンプリドープのレベルは、約0.1Vの定電圧値を用いて陽極プリドープされたリチウムイオンプリドープのレベルよりも低い。定電圧プリドーピング工程中に引加される電圧は、陽極リチウムイオンプリドープの所望のレベルに基づいて選択されてもよい。
【0063】
図5は、
図4に示すキャパシタ陽極に相当するキャパシタの例示的に測定されたリチウムイオンキャパシタ性能のパラメータを示した表である。
図5は、定電圧プリドーピングプロセス中に引加された電圧値(例えば、「プリリチウム化電圧」)に相当する測定されたリチウムイオンキャパシタ性能のパラメータを表している。
図5に挙げられた各印加定電圧に対して、陽極プリリチウム化の対応する百分率(例えば、「プリドープ(%)」)、単位ファラド(F)で測定された容量値(例えば、「容量(F)」)、単位Ω(オーム)で測定された等価直列抵抗(例えば、「ESR(Ω)」)、及びリチウムイオンキャパシタの測定された容量値及び測定された抵抗値から計算されたRC時定数が挙げられている。
図5に示す各値に対して、定電圧プリドーピング工程中において、約0.1Vの定電圧を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタは、最も低いRC時定数、及び/又は測定された等価直列抵抗を示した。
図5に示すように、最も低いRC時定数を有するキャパシタの陽極は、リチウムイオンプリドープのレベルが約60%にプリドープされた。
【0064】
図6は、
図4のリチウムイオンキャパシタにおけるサイクル性能を示している。例えば、リチウムイオンキャパシタの容量は、サイクル試験(例えば、容量消失性能)を行う前のリチウムイオンキャパシタの初期容量と比較する際の、測定された容量における減少の百分率を測定するために、環境条件下において約30Cの電流Cレートで、約2.2Vと約4.2Vとの間の多数回のサイクル数を行った後に測定された。なお、例えば、約30Cの電流Cレートとは、1時間の約1/30の間に完全に又は実質的に完全に放電し得るキャパシタの電流に相当し得る。
図6は、定電圧プリドーピング工程中の印加電圧が減少するに連れて、サイクル性能における通常の向上を示している。例えば、
図6において、定電圧プリドーピング工程で約0.1Vの定電圧を用いてプリドープされた陽極を有するリチウムイオンキャパシタは、多数回の充放電サイクル後に、例えば、約0.4Vの定電圧を用いてプリドープされた陽極を有するキャパシタの容量消失の程度と比べて、その消失の程度が縮小していることが分かる。容量消失の程度の縮小、等価直列抵抗の低減、及び/又はRC時定数の低減を示すリチウムイオンキャパシタは、減少した厚さ、増した均質性、向上した安定性、及び/又はリチウムイオンの増大した透過性を持つ固体電解質相間層を有する。
【0065】
図7は、陽極プリドーピングプロセスの定電流プリドーピング工程中に維持された電流フローレート(例えば、「Cレート」)に相当する例示的に測定されたリチウムイオンキャパシタ性能のパラメータを示した表である。
図7において、定電流プリドーピング工程中に維持された電流は、キャパシタがより大きい電流に相当する、より高いCレートで放電及び/又は充電し得るキャパシタのレートとして表される。例えば、約C/48のCレートに相当する電流は、約C/96のCレートに相当する電流よりも大きい。
図7に挙げられた、それぞれ維持された定電流に対して、リチウムイオンキャパシタの陽極に取り込まれたリチウムイオンに相当するレベル(例えば、「プリドープ(%)」)、単位ファラド(F)で測定された容量値(例えば、「容量(F)」)、単位Ω(オーム)で測定された等価直列抵抗(例えば、「ESR(Ω)」)、及びリチウムイオンキャパシタの容量値及び抵抗値から計算されたRC時定数が挙げられている。
図7に示す各値に対して、陽極とドーパント源との間に維持された減少する定電流フローレートは、リチウムイオンキャパシタにおける、等価直列抵抗及び/又はRC時定数を低減し得る。例えば、
図7に示すように、低減された電流でプリドープされた陽極を有するキャパシタは、等価直列抵抗(ESR)の低少及び/又はRC時定数の低減を例証し得る。ある実施形態においては、定電流プリドーピング工程中に維持された電流の低下が、リチウムイオンのプリドープレベルの増大を容易にし得る。
図7に示すように、約60%から約65%までのレベルの陽極プリドープは、等価直列抵抗(ESR)及び/又はRC時定数の低減を例証し得る。
【0066】
図8は、
図7のリチウムイオンキャパシタにおけるサイクル性能を示している。例えば、リチウムイオンキャパシタの容量は、サイクル試験(例えば、容量消失性能)を行う前のリチウムイオンキャパシタの初期容量と比較する際の、測定された容量における減少の百分率を測定するために、環境条件下において約30Cの電流Cレートで、約2.2Vと約4.2Vとの間の多数回のサイクル数を行った後に測定された。なお、例えば、約30Cの電流Cレートとは、1時間の約1/30の間に完全に又は実質的に完全に放電し得るキャパシタの電流に相当し得る。
図8は、定電流工程中に維持される電流が減少するに連れて、サイクル性能における通常の向上を示している。例えば、
図8に示すように、約C/96の電流Cレートで実行される定電流充電工程を用いてプリドープされた陽極を持つリチウムイオンキャパシタは、多数回の充放電サイクル後に容量消失の程度が縮小していることが分かる。ある実施形態において、それぞれに、容量消失の縮小した程度、低減した等価直列抵抗、及び/又は低減したRC時定数を示すリチウムイオンキャパシタは、減少した厚さ、増した均質性、向上した安定性、及び/又はリチウムイオンの増大した透過性を持つ固体電解質相間層を有している。
【0067】
定電圧プリドーピング工程及び/又は定電流プリドーピング工程を含む陽極プリドーピングプロセスは、陽極プリリチウム化の程度を超えて拡大した制御を与えてもよい。定電圧プリドーピング工程で維持された電圧又は定電流プリドーピング工程で維持された電流は、陽極リチウムイオンプリドープの所望のレベルに基づいて選択され得る。リチウムイオンがリチウムイオンキャパシタ陽極に取り込まれるレベルに対する向上した制御は、例えば、向上したリチウムイオンキャパシタ性能を容易にする固体電解質相間層の形成に対する向上した制御を与える。ある実施形態において、定電圧プリドーピング工程及び/又は定電流プリドーピング工程を含む極プリドーピングプロセスは、向上した安定性、均質性、及び/又はリチウムイオンの透過性を有する固体電解質相間層の形成を容易にし得る。定電圧プリドーピング工程及び/又は定電流プリドーピング工程を含む陽極プリドーピングプロセスは、多数回の充放電サイクルを行った後の等価直列抵抗の低減、RC時定数の低減、及び/又は容量消失の程度の縮小を示すリチウムイオンキャパシタを提供する。
【0068】
本発明は、ある実施形態及び例示の文脈に開示されているものの、本発明が、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代わりの実施形態、及び/又は本発明の使用及び明らかな改変、及びその等価物にまで拡張することは、当業者には理解されるであろう。加えて、本発明に係る実施形態のいくつかの変形は、詳細に示され且つ記述される一方、本発明の範囲内である他の変形は、本開示に基づいて当業者には容易に明らかとなるであろう。各実施形態の特定の特徴及び態様における種々の組み合わせ又は下位の組み合わせは、本発明の範囲内にあり且つさらに属する。開示された実施形態の種々の特徴及び態様は、開示された発明の各実施形態における変更の様式を得るために、互いに組み合わされ又は取り替えることができる。従って、ここに開示された本発明の範囲は、上述した特定の実施形態によって制限されるべきでないことが意図される。
【0069】
ここに付与された頭付けは、もしあるなら、便宜上に過ぎず、必ずしもここに開示された装置及び方法の範囲及び意味に影響を与えない。