(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181868
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】自動車の内燃機関およびそのような内燃機関を運転する方法
(51)【国際特許分類】
F02M 26/52 20160101AFI20170814BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20170814BHJP
F02M 26/16 20160101ALI20170814BHJP
F02M 26/71 20160101ALI20170814BHJP
F02D 17/02 20060101ALI20170814BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
F02M26/52
F02M26/05
F02M26/16
F02M26/71
F02D17/02 C
F02D17/02 Q
F02D23/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-524701(P2016-524701)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公表番号】特表2016-526640(P2016-526640A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014001875
(87)【国際公開番号】WO2015003801
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】102013011587.6
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】クェンツェル,シュテファン
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102009004418(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0265454(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102008064264(DE,A1)
【文献】
実開昭59−022967(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08−47/10
F02D 13/00−28/00
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの燃焼室と、排気ガスターボチャージャーのタービン(12)に排気を誘導するために前記燃焼室に割り当てられ前記燃焼室から前記排気を流すことのできる少なくとも1つの第1の排気流路(20)を備える排気管(10)と、前記第1の排気流路(20)から分岐している排気ガス再循環ライン(28)と、調整可能な遮断部材であって、該遮断部材を用いて前記排気ガス再循環ライン(28)および前記第1の排気流路(20)のそれぞれの排気流入横断面を調節できる遮断部材(30)と、少なくとも1つの第3の燃焼室とを備える自動車の内燃機関であって、前記排気管(10)は、前記排気を前記タービン(12)へ誘導するために、前記第3の燃焼室に配置されて前記第3の燃焼室から前記排気を流すことができ、前記第1の排気流路(20)から少なくとも部分的に流体的に切り離された少なくとも1つの第2の排気流路(22)を備える内燃機関において、
前記内燃機関は気筒休止モードで運転可能であり、該気筒休止モードでは、第1の燃焼室への燃料供給が妨げられ、第2の燃焼室への燃料供給が行われ、前記第3の燃焼室への燃料供給が行われ、
前記第1の燃焼室および前記第2の燃焼室は、前記第1の排気流路(20)に接続され、
前記遮断部材(30)は、第1の位置と少なくとも1つの第2の位置との間で調整可能であり、前記遮断部材(30)は、前記気筒休止モードでは前記第2の位置に調整され、該位置では、前記排気ガス再循環ライン(28)の前記横断面の大きさは、前記第1の位置よりも大きくされ、前記第1の排気流路(20)の前記横断面の大きさは小さくされ、
前記第2の位置は、前記遮断部材(30)を調整可能な異なる位置と比較して、前記排気ガス再循環ライン(28)の前記横断面が最大解放位置にあり、かつ
前記第1の排気流路(20)の前記横断面は、前記遮断部材(30)によって前記第2の位置で流体的に遮断される
ことを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
前記第1の排気流路(20)が第1のタービン流路(34)に割り当てられ、前記第2の排気流路(22)が前記第1のタービン流路(34)から少なくとも部分的に流体的に切り離された前記タービン(12)の第2のタービン流路(36)に割り当てられ、前記第1のタービン流路(34)は、前記排気が流れることのできる流入横断面が前記第2のタービン流路(36)よりも小さい
ことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車の内燃機関を運転する方法であって、
前記内燃機関は気筒休止モードで運転され、該気筒休止モードでは、前記第1の燃焼室への燃料供給が妨げられ、前記第2の燃焼室への燃料供給が行われ、前記第3の燃焼室への燃料供給が行われる
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車の内燃機関、および請求項
3の前段に記載のそのような内燃機関を運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような内燃機関およびそのような内燃機関を運転するための方法が、特許文献1の開示により知られている。内燃機関は、少なくとも2つの燃焼室および1つの排気管を備えている。排気管は、排気ガスターボチャージャーのタービンに排気を誘導するために燃焼室に割り当てられ、燃焼室から排気を流すことのできる少なくとも1つの排気流路を備えている。換言すれば、少なくとも1つの排気流路は、少なくとも2つの燃焼室と流体接続されるか流体接続可能であり、その結果、排気は、燃焼室から少なくとも1つの排気流路に流れ込み、この排気流路を通って流れる。
【0003】
さらに、排気流路から分岐している排気ガス再循環ラインが設けられている。そのような排気ガス再循環ラインによって、排気は排気流路から少なくとも部分的に分岐し、内燃機関の排気管から吸気管へ再循環する。再循環した排気は、新鮮な空気とともに燃焼室に流れ込むことができ、燃焼室で進行している燃焼時に不活性ガスとして作用できる。これによって、燃焼時のいわゆるホットスポットの発生を回避できる。燃焼時に温度が極端に高くなるような場所をホットスポットと呼ぶ。この局所的な高温が原因で、ホットスポットで窒素酸化物の発生が高まってしまうおそれがある。排気ガス再循環により、窒素酸化物排出(NO
x排出)を低く抑えることができる。
【0004】
さらに、調節可能な遮断部材が設けられ、この遮断部材を用いて、排気ガス再循環ラインおよび排気流路の排気流入横断面をそれぞれ調節できる。そのため、1つの同一の遮断部材で、排気ガス再循環ラインおよび排気流路の排気流入横断面を変化させることが可能になる。制御部材を用いて、例えば排気ガス再循環率を容易かつ好ましい方法で適切に調節できる。
【0005】
特許文献2には、車両、とりわけ商用車の多気筒内燃機関の排気流を後処理する方法が開示されている。内燃機関は、複数の異なる気筒群を備え、各気筒には関連する吸気管および排気管が割り当てられている。排気管は、マルチフロー型で流れ、それに対応してマルチフロー型に形成された排気ガスターボチャージャーの排気タービンに流れ、排気タービンは排気後処理要素の下流に接続されている。内燃機関の所定の運転パラメータに応じて設定される内燃機関の昇温運転、とりわけ内燃機関の無負荷運転または低負荷運転では、少なくとも1つの昇温気筒群で形成された気筒群の第1の部分が設定程度で燃焼運転される一方で、少なくとも1つの休止気筒群で形成された別の気筒群の第2の部分が、所定の通常運転と比較して、および/または少なくとも1つの昇温気筒群を計量した燃料量と比較して少ない燃料量で部分燃焼されるか、燃料供給なしで運転される。
【0006】
例えばレシプロ内燃機関として形成された内燃機関の燃焼室、とりわけシリンダに燃料が供給されない運転を通常、気筒休止または気筒休止モードとも呼ぶ。燃焼室に燃料が供給されない運転で運転されるような気筒休止によって燃料を節約でき、通常は燃料が一切供給されない。しかし、まだ燃焼運転で運転されている燃焼室の吸気管で窒素酸化物の発生を低く抑えられるようにするために、十分に高い排気ガス再循環率を実現するには、つまり十分に大量の排気を排気ガス再循環ラインを介して排気管から吸気管に再循環できるようにするには、そのような気筒休止では問題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008064264A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009004418A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、内燃機関およびそのような内燃機関を運転する方法を提供することであり、これによって、内燃機関の運転を極めて低燃費に実現することができると同時に、高い排気ガス再循環率を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を備えた内燃機関、および請求項
3の特徴を備えたそのような内燃機関を運転させるための方法によって解決される。本発明の便利で自明なさらなる発展と有利な形態は、その他の請求項に記載されている。
【0010】
請求項1の前段に記載したような自動車の内燃機関であって、極めて低燃費の運転を実現できると同時に、極めて高い排気ガス再循環率を実現する内燃機関を提供するために、本発明によれば、内燃機関は気筒休止モードで運転可能であり、この気筒休止モードでは、燃料供給が燃焼室のうちの第1の燃焼室には行われず、第2の燃焼室で起こるようになっている。換言すれば、気筒休止モードでは第2の燃焼室に燃料が供給され、その結果、第2の燃焼室では燃焼プロセスが進行する。この燃焼プロセスから排気が生じ、この排気は、排気流路を流れて、排気流路に流体接続しているか流体接続可能な再循環ラインで分岐できる。
【0011】
第1の燃焼室は気筒休止モードでは燃料が供給されず、その結果、第1の燃焼室は、燃焼されずにまたは非燃焼状態で運転される。これによって、内燃機関の燃費を低く抑えることができる。ただし、排気流は、第2のシリンダからの排気とともに流れるため、極めて大量の排気を再循環でき、その結果、極めて高いあるいは十分な排気ガス再循環率を実現できる。このように、窒素酸化物の排出量を低く抑えることが可能である。
【0012】
この場合、排気ガス再循環率は、遮断部材を用いて必要に応じて調節でき、1つの同一の封鎖部材で排気流路の排気流入横断面も排気ガス再循環ラインの排気流入横断面も調節できる。ただしこの場合、排気ガス再循環ラインの流入横断面が変化するたびに、排気流路の流入横断面の変化が必ずしも伴うわけではない。しかし、遮断部材によって排気流路の流入横断面が縮小するため、このようにして極めて高い排気ガス再循環率を極めて容易に調節することが可能になる。
【0013】
気筒休止モードは通常、気筒休止とも呼ばれ、好ましくは内燃機関の部分負荷運転で調節され、この部分負荷運転では、内燃機関の燃焼室の一部のみが燃焼状態で運転され、燃焼室の残りの部分が非燃焼状態で、つまり気筒休止モードで運転されている場合、自動車の運転者から要求された内燃機関のトルクも提供できる。
【0014】
本発明の有利な実施形態では、遮断部材は、第1の位置と少なくとも1つの第2の位置との間で調整可能である。遮断部材は、気筒休止モードでは第2の位置に調整され、この位置では、排気ガス再循環ラインの横断面の大きさは、第1の位置よりも大きくなり、排気流路の横断面は小さくなる。これによって、排気流路を流れる極めて大量の排気は分岐して排気ガス再循環ラインを流れることができ、その結果、極めて高い排気ガス再循環率を達成できる。
【0015】
排気流路の横断面が遮断部材によって第2の位置で流体的に遮断されたとき、特に有利であることがわかる。これによって、少なくとも本質的に全体の排気が、排気流路を気筒休止モードで流れ、あるいは排気流路に流れ込み、少なくとも排気ガス再循環ラインまで流れる排気が排気流路から誘導され、排気ガス再循環ラインに供給されることができ、よって、気筒休止が起きていても極めて高い排気ガス再循環率を実現できる。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態では、第2の位置は、遮断部材を調整できる異なる位置と比較して、排気ガス再循環ラインの横断面を最大に解放した位置になるように定められている。換言すれば、遮断部材は、排気ガス再循環ラインの横断面を遮断せずに少なくとも部分的に解放しているいくつかの位置で調整可能であり、第2の位置もそのような位置のうちの一つである。この場合、第2の位置は、排気ガス再循環ラインの横断面を少なくとも部分的に解放している他の位置と比較して排気ガス再循環ラインの横断面が最も広い位置、つまり最大限に解放されている位置である。これによって、排気ガス再循環ラインを流れる排気の流れ抵抗を小さく抑えることができ、その結果、極めて大量の排気をより短時間で再循環させることができる。
【0017】
本発明の有利な別の形態では、内燃機関は、少なくとも1つの第3の燃焼室を備え、排気管は、排気をタービンへ誘導するために、第3の燃焼室に割り当てられて第3の燃焼室から排気を流すことができ、排気流路から少なくとも部分的に流体的に分離された少なくとも1つの第2の排気流路を備える。換言すれば、第2の排気流路は、第3の燃焼室に流体接続されるか流体接続可能であり、その結果、第3の燃焼室からの排気は第2の排気流路に流れ込み、この排気流路を流れることができる。その際、第3の燃焼室への燃料供給が気筒休止モードで起こるようになっている。これによって、気筒休止モードで高効率あるいは高トルクの内燃機関も提供できる。
【0018】
第1のタービン流路の第1の排気流路と、第1のタービン流路から少なくとも部分的に流体的に分離された、タービンの第2のタービン流路の第2の排気流路とが割り当てられているとき、特に有利であることがわかる。この場合、第1のタービン流路は、第2のタービン流路よりも小さい、排気が流れる流入横断面を有している。換言すれば、第1の排気流路は、排気を第1のタービン流路に誘導する役割を果たす。そのため、排気は、第1の排気流路から第1のタービン流路へ流れ込むことができる。第2の排気流路は、排気を第2のタービン流路に誘導する役割を果たし、第2の排気流路からの排気は、第2のタービン流路に流出できる。
【0019】
この場合、タービン流路は互いに非対称に形成され、第1のタービン流路は第2のタービン流路よりも小さい。そのため、第1のタービン流路は、堆積特性が第2のタービン流路よりも優れており、その結果、これによって特に高い排気ガス再循環率を達成できる。燃費を下げるための気筒休止は、第1の燃焼室で起こり、よって、第1の排気流路およびそれに伴い第1のタービン流路に割り当てられた燃焼室でも起こり、その間に、第2の排気流路および第2のタービン流路に割り当てられた第3の燃焼室は、気筒休止モードで燃料を供給され、したがって燃焼状態で運転される。
【0020】
好ましくは、第2の排気流路および第2のタービン流路に割り当てられ、気筒休止モードで燃料を供給される燃焼室の数は、第1の排気流路およびそれに伴い第1のタービン流路に割り当てられ、気筒休止モードで燃料を供給される内燃機関の燃焼室の数よりも多くなっている。好ましくは、第2の排気流路およびそれに伴い第2のタービン流路に割り当てられた内燃機関の燃焼室はすべて、気筒休止モードで燃料を供給され、したがって燃焼状態で運転される。これによって、内燃機関の全排気の大部分を誘導するために、第2の排気流路および第2のタービン流路が用いられる。第2のタービン流路は第1のタービン流路よりも大きいため、排気の大部分に対する流れ抵抗を小さく抑えることができ、そこから特に高効率の内燃機関が実現される。これが、効率的で低燃費の運転につながる。
【0021】
このほか、極めて高い排気ガス再循環率を実現するために、小さい方の第1のタービン流路あるいはそれに対応する第1の排気流路を利用できる。第1の排気流路に割り当てられた第2の燃焼室は、ディスペンサシリンダとして利用され、その排気は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に再循環される。
【0022】
請求項
3の前段に記載したような方法であって、この方法を用いて極めて低燃費および極めて高い再循環率の内燃機関の運転を実現できる方法を提供するために、本発明によれば、内燃機関は気筒休止モードで運転され、この気筒休止モードでは、燃料供給が燃焼室のうちの第1の燃焼室には行われず、第2の燃焼室で起こるようになっている。換言すれば、気筒休止モードでは、第2の燃焼室に燃料が供給され、その結果、第2の燃焼室は、燃料供給運転状態または燃焼状態で運転され、この状態では、第2の燃焼室で燃焼プロセスが進行する。この燃焼プロセスから排気が生じ、この排気は、排気ガス再循環ラインを介して内燃機関の吸気管に再循環できる。
【0023】
第1の燃焼室は、気筒休止モードでは燃料を供給されず、その結果、第1の燃焼室は、燃焼されずにまたは非燃焼状態で運転される。これによって、燃料を節約できる。本発明による内燃機関の有利な形態は、本発明による方法の有利な形態と見なされ、この逆も同様である。
【0024】
本発明の有利な形態では、遮断部材は、第1の位置と少なくとも1つの第2の位置との間で調整でき、遮断部材は、気筒休止モードでは第2の位置に調整され、この位置では、排気ガス再循環ラインの横断面は、対向する第1の位置よりも大きくなり、排気流路の横断面は小さくなる。排気流路の横断面が小さくなることによって、排気流路の逆流または堆積特性が調節され、その結果、極めて大量の排気を再循環できる。このほか、排気ガス再循環ラインの横断面は、大量の排気が排気ガス再循環ラインを好適に流れることができるように解放され、その結果、極めて大量の排気をより短時間で再循環させることができる。
【0025】
排気流路の横断面が遮断部材によって第2の位置で流体的に遮断されると、特に有利になることがわかる。これによって、排気ガス再循環ラインへと排気流路を流れる排気の全てを利用し、再循環させることができる。
【0026】
本発明のその他の利点、特徴および詳細は、以下の好適な実施形態の説明から、及び図面に基づいて明らかになる。上述特徴および特徴を組み合わせたもの、ならびに以下の図面の説明に記載し、及び/または唯一の図に示した特徴および特徴を組み合わせたものは、本発明の範囲を逸脱しない限り、それぞれの実施形態で述べた組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは単独でも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の唯一の図には、シリンダの形態の複数の燃焼室を備えた内燃機関の排気管の概略横断面を部分的に示しており、この排気管には遮断部材が設けられ、このそれぞれの遮断部材を用いて、内燃機関の排気管の排気流路および排気ガス再循環ラインの排気流入横断面を調節できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図は、自動車の内燃機関の排気管10を示している。内燃機関は、レシプロ内燃機関として形成され、自動車を駆動するための駆動装置として使用される。内燃機関は、シリンダの形態で複数の燃焼室を備えている。内燃機関は、例えば6気筒エンジンとして形成され、よって6つのシリンダを備えている。各々のシリンダの燃焼状態においては、燃料がシリンダにもたらされる。これによってそれぞれのシリンダには燃料−空気混合気が形成され、この混合気が燃焼する。これはつまり、それぞれの燃焼状態において、それぞれのシリンダで燃焼プロセスが進行し、そこから排気が生じることを意味する。
【0029】
燃料とは、例えばガソリンまたはディーゼル形態の液体燃料のことであり、この燃料は、例えばそれぞれのインジェクタによってシリンダに直接噴射される。
【0030】
排気が流れる排気管10は、排気をシリンダから排出する役割を果たす。排気管には、図に特に概略的に示したタービン12が割り当てられ、このタービンに排気が誘導される。タービン12は、内燃機関の排気ガスターボチャージャーの構成要素であり、コンプレッサも備えている。タービン12のタービンハウジングに割り当てられたタービンホイールは、排気によって駆動可能で、排気ガスターボチャージャーの回転軸に回転不能に連結され、この回転軸には、コンプレッサのコンプレッサホイールも連結される。したがって、コンプレッサは、タービンホイールによって駆動可能である。コンプレッサは空気を圧縮する役割を果たし、空気は、図示していない吸気管を介して内燃機関に供給される。圧縮された空気は、吸気管を通ってシリンダに流れ、シリンダでは、空気および注入された燃料からそれぞれの燃料−空気混合気が形成される。
【0031】
排気管10は、1つの排気誘導部材14および2本の排気パイプ16、18を備えている。排気誘導部材14は、排気が流れることのできる第1の排気流路20と、排気が流れることのできる第2の排気流路22とを備えている。排気流路20、22は、少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも大部分が、流体的に互いに離れている。第1の排気流路20には、6つのシリンダのうちの第1、第2および第3のシリンダが割り当てられ、第2の排気流路22には、6つのシリンダのうちの第4、第5および第6のシリンダが割り当てられる。これはつまり、排気は、第1、第2および第3のシリンダから第1の排気流路20に流れる、あるいは流れることができると同時に、排気は、第4、第5および第6のシリンダから第2の排気流路22に流れる、あるいは流れることができるということである。第1および第2のシリンダは、例えば排気パイプ18を介して第1の排気流路20に流体接続しているか、流体接続可能であり、第3のシリンダは、排気誘導部材14の通路開口24を介して第1の排気流路20と流体接続しているか、あるいは流体接続可能である。例えば第4および第5のシリンダは、排気パイプ16を介して第2の排気流路20と流体接続しているか、あるいは流体接続可能であり、第6のシリンダは、排気誘導部材14の通路開口26を介して第2の排気流路22と流体接続しているか、あるいは流体接続可能である。第1、第2および第3のシリンダは、第1のシリンダ列に割り当てられ、第4、第5および第6のシリンダは、内燃機関の第2のシリンダ列に割り当てられる。
【0032】
内燃機関は、図で部分的に認識できる排気ガス再循環ライン28も備えている。排気ガス再循環ライン28は、第1の排気流路20によって分岐している。これはつまり、排気ガス再循環ライン28は第1の排気流路20と流体接続可能であるか、流体接続しているということである。これによって、第1の排気流路20を流れる排気、つまり第1の排気流路20に流れ込んで少なくとも排気ガス再循環ライン28まで流れる排気の少なくとも一部は、分岐して排気ガス再循環ライン28に流入することができる。第1の排気流路20から分岐した排気は、排気ガス再循環ライン28を介して排気管10から吸気管へ再循環することができ、内燃機関に供給されている空気に供給されることができる。再循環した排気は、空気とともにシリンダに流れ込み、燃焼プロセスで不活性ガスとして作用する。これによって、燃焼プロセスで局所的に望ましくない温度上昇が起こることを回避でき、それによって窒素酸化物排出量(NO
x排出量)を少なくとも低く抑えることができる。
【0033】
排気管10は、調節可能な遮断部材を弁30の形態で備え、この弁は、排気誘導部材14に割り当てられ、この排気誘導部材上で、排気誘導部材14に対して少なくとも2つの位置の間で回転軸32周りに回転可能である。弁30を回転させるために、例えばモータが、特に電気モータの形態で設けられ、このモータは図示していない。
【0034】
図からわかるように、弁30により、排気が流れることのできる排気ガス再循環ライン28の横断面も、排気が流れることのできる第1の排気流路20の横断面も調節できる。弁30は、例えば図示されていない第1の位置と図示された第2の位置との間で回転可能である。排気ガス再循環ライン28及び/または排気ガス再循環ラインの横断面に関して、第1の位置は閉鎖位置であり、この位置では、排気ガス再循環ライン28の横断面およびそれに伴い排気ガス再循環ライン28自体は、流体的に遮断される。閉鎖位置では、第1の排気流路20に流れ込む排気は、第1の排気流路20から排気ガス再循環ライン28に流れ込むことができない。閉鎖位置では、第1の排気流路20の横断面は、少なくとも部分的に流体的に解放され、その結果、排気は第1の排気流路20を流れることができる。
【0035】
図示した第2の位置は解放位置であり、この位置では、排気ガス再循環ライン28の横断面およびそれに伴い排気ガス再循環ライン28は、閉鎖位置に比べて全体的に解放され、その結果、排気は、第1の排気流路20から排気ガス再循環ライン28に流れ込むことができる。解放位置では、第1の排気流路20の横断面は、閉鎖位置と比べて狭くなるか、あるいは少なくとも一部の領域で流体的に遮断され、これによってこの一部の領域は、閉鎖位置で解放される。図からわかるように、第1の排気流路20の横断面およびそれに伴い第1の排気流路20は、全体的に解放位置で流体的に遮断され、その結果、第1の排気流路20を流れる、あるいは第1の排気流路20に流れ込む排気はすべて分岐し、排気ガス再循環ライン28に流入する。
【0036】
弁30は、第1の位置から、かつ第2の位置から、少なくとももう一方の異なる位置に回転できるため、両方の横断面が解放される。そのため、好ましくは、排気流路20の横断面が弁30の閉鎖位置ではもう一方の位置に基づいて最大限に解放されるように、すなわち最も大きくなるように定められる。したがって、好ましくは、排気ガス再循環ライン28の横断面が弁30の解放位置では最大限に解放される、つまり最も大きくなるように定められる。これによって閉鎖位置にある排気流路20、あるいは解放位置にある排気ガス再循環ライン28は、極めて大量の排気を極めて良好に流すことができ、その結果、流れ抵抗およびそれに対応する流れ損失を小さく抑えることができる。
【0037】
極めて高効率で、それによって低燃費の内燃機関の運転を実現するために、この内燃機関を通常運転モードからいわゆる気筒休止モードに切り替えることができる。通常運転モードでは、全シリンダが燃焼状態で運転される。これはつまり、通常運転モードでは各々のシリンダで燃焼プロセスが進行し、そこから排気が生じるということを意味する。
【0038】
気筒休止とも呼ばれる気筒休止モードでは、シリンダの第1の部分のみに燃料が供給され、シリンダの第2の部分には燃料が供給されない。そのため、第1の部分は燃焼状態で運転され、その結果、シリンダの第1の部分のみで燃焼プロセスが進行し、そこから排気が生じる。シリンダの第2の部分は、非燃焼状態で運転され、その結果、シリンダの第2の部分では燃焼が一切起こらないため、排気が一切生じない。
【0039】
本発明では、気筒休止モードで第1および第2のシリンダが休止し、他のシリンダは燃焼状態で運転されるようになっている。これはつまり、気筒休止モードでは第1および第2のシリンダへの燃料の供給が妨げられ、その結果、第1および第2のシリンダでは燃焼プロセスが一切起こらないということである。気筒休止モードでは、第3、第4、第5および第6のシリンダへの燃料供給が起こり、その結果、これらのシリンダでは燃焼プロセスが進行し、そこから排気が生じる。
【0040】
図に矢印で示したように、気筒休止モードでは、第1の排気流路20には、第3のシリンダのみから排気が供給される。第1の排気流路20には、第1および第2のシリンダから排気が供給されない。気筒休止モードでは、第2の排気流路22には、第4、第5および第6のシリンダから排気が供給される。
【0041】
タービン12またはそのタービンハウジングは、第1のタービン流路34と第2のタービン流路36を備えている。タービン流路34、36は、少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも大部分が流体的に互いに離れ、内燃機関の排気をタービンホイールの方へ誘導する役割を果たす。図からわかるように、第1のタービン流路34は第1の排気流路20に割り当てられている。これはつまり、第1のタービン流路34には第1の排気流路20を介して排気が供給されることを意味する。そのため、第1のタービン流路34は、第1の排気流路20と流体接続可能であるか、または流体接続される。
【0042】
第2のタービン流路36は、第2の排気流路22に割り当てられる。これはつまり、第2のタービン流路36には第2の排気流路22を介して排気が供給されることを意味する。そのため、第2のタービン流路36は、第2の排気流路22と流体接続されるか、流体接続可能である。タービン流路34、36は互いに非対称に形成され、タービン流路34はタービン流路36よりも小さい。すなわち、タービン流路34は、排気を流すことのできる流入横断面が第2のタービン流路36よりも小さいということである。そのため、第1のタービン流路34は、堆積特性が第2のタービン流路36よりも優れており、その結果、第1のタービン流路34によって、かつそれに伴い第1の排気流路20によって、極めて大量の排気をせき止め、あるいは逆流でせき止め、その後に再循環することができる。弁30を用いて第1の排気流路20の横断面を調節できる点をさしあたり無視すれば、同じことが排気流路20、22にも当てはまる。これはつまり、第1の排気流路20は、原則として排気を流すことのできる横断面が第2の排気流路22よりも小さく、弁30がその閉鎖位置にあればなお好ましいということである。
【0043】
非対称に形成されたタービン12がさらに、可変タービン・ジオメトリを備えていることを構想することも可能である。このとき、タービン流路34と36との両方がそれぞれ、1つの可変タービン・ジオメトリまたは共通の可変タービン・ジオメトリを備えることができる。大きい方のタービン流路36に作用する単一の可変容量ターボを備えていることが好ましい。排気ガスターボチャージャーあるいは可変タービン・ジオメトリ(VTG)を備えたタービンは、先行技術で十分に知られている。
【0044】
そのため、気筒休止モードでは、内燃機関の全排気の大部分が第2の排気流路22を通って流れる。これは、気筒休止モードでは、排気を誘導するために、第1の排気流路20よりも大きい第2の排気流路22が用いられ、第1のタービン流路34よりも大きい第2のタービン流路36が用いられることを意味する。これによって、第2の排気流路22および第2のタービン流路36のそれぞれの大きい方の横断面あるいは流入横断面に基づいて、極めて高い内燃機関の効率を実現でき、それによって燃費が極めて低くなる。
【0045】
やはりここでも極めて大量の排気を再循環できるようにするために、第1の排気流路20に割り当てられたシリンダのうちの2つか3つが気筒休止モードで休止するものの、弁30は、気筒休止モードではその解放位置に移動するようになっており、その結果、第1の排気流路20の横断面は流体的に完全に遮断される。換言すれば、弁30は完全に開放され、その結果、小さいタービン流路34は流体的に遮断され、第3のシリンダの全排気量は排気ガス再循環ライン28を介して再循環する。これによって、例えば排気ガス再循環率(EGR率)を25%にすることができる。これによって、内燃機関の運転を極めて低燃費にすることが可能になる。そのため、気筒休止モードでまだ燃焼状態にある第3のシリンダは、極めて高い再循環率を達成できるようにするために、ディスペンサシリンダとして用いられる。