(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る対象物の移動装置の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態においては、移動対象物が生体由来の細胞、特に細胞凝集塊である場合について説明する。なお、移動対象物は細胞凝集塊に限られるものではなく、小型の電子部品や機械部品、有機又は無機の破砕片や粒子、ペレット等であっても良い。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る細胞の移動装置1の外観を示す斜視図である。移動装置1は、装置本体10と、この装置本体10の各部の動作を制御するパーソナルコンピューターや制御ボード等からなる制御部16とを含む。装置本体10は、箱形のアウターカバー、すなわちフロントカバー101、サイドカバー102、トップカバー103及び図面には現れないリアカバーで覆われている。フロントカバー101の上部には開口部104が設けられ、この開口部104を通して、装置本体10の内部が露呈している。開口部104は、透明なカバーで覆われる。制御部16は、装置本体10に対して通信可能に接続されている。
【0013】
図2は、移動装置1(装置本体10)の、前記アウターカバーを取り外した状態の斜視図である。
図2には、XYZの方向表示を付している。以下では、X方向を左右方向(水平方向に延びる第1方向)、Y方向を前後方向(第2方向)、及びZ方向を上下方向とし、+Xが右、−Xが左、+Yが前、−Yが後、+Zが上、及び−Zが下として説明を行う。
【0014】
移動装置1は、支持フレーム11、支持フレーム11によって支持される基台12、基台12に組み付けられる細胞移動ライン20、基台12の上方に配置されるヘッドユニット30及び照明ユニット40、及び、基台12の下方に配置されるカメラユニット50を含む。
図3は、ヘッドユニット30、照明ユニット40及びカメラユニット50の側面図である。
【0015】
さらに移動装置1は、ヘッドユニット30を左右及び前後方向に移動させるヘッドユニット駆動装置30M(第1駆動機構)と、照明ユニット40を左右及び前後方向に移動させる照明ユニット駆動装置40M(第2駆動機構)と、カメラユニット50を左右及び前後方向に移動させるカメラユニット駆動装置50M(第3駆動機構)とを備える。制御部16は、これら駆動ユニット30M、40M、50Mの動作を制御することによって、ヘッドユニット30、照明ユニット40及びカメラユニット50の左右及び前後方向の移動を制御する。
【0016】
支持フレーム11は、ベースフレーム111と、一対のサイドフレーム112とを含む。ベースフレーム111は、移動装置1の最下層に位置する矩形のフレーム枠である。ベースフレーム111の下面の四隅には、キャスター及びアジャスターフットが各々取り付けられている。サイドフレーム112は、ベースフレーム111の左右方向両端から、それぞれ上方向に突出しているフレーム枠である。2つのサイドフレーム112の上端縁で、基台12の左右方向の端部が各々支持されている。
【0017】
基台12は、所定の剛性を有し、その一部又は全部が透光性の材料で形成され、上面視においてベースフレーム111と略同じサイズの有する長方形の平板である。本実施形態では、基台12はガラスプレートである。基台12をガラスプレートのような透光性材料によって形成することで、基台12の下方に配置されたカメラユニット50にて、基台12の上面に配置された細胞移動ライン20の各作業部を、当該基台12を通して撮像することができる利点がある。なお、前記撮像に必要な部分だけをガラス窓とした板金プレートを、基台12として用いても良い。
【0018】
基台12の上方には、左右方向に長い平板である上フレーム13と、同じく左右方向に長い平板であって上フレーム13の下方に間隔を置いて配置された中フレーム14とが配置されている。これらフレーム13、14は、基台12の上に立設された図略のフレーム架台で保持されている。上フレーム13の上面には、ヘッドユニット30を左右方向に沿って移動させるための一対の上ガイドレール131が敷設されている。中フレーム14の上面には、照明ユニット40を左右方向に沿って移動させるための一対の中ガイドレール141が敷設されている。また、基台12の下方には、左右方向に長い平板である下フレーム15が配置されている。下フレーム15の左右端部は、サイドフレーム112にて保持されている。下フレーム15の上面には、カメラユニット50を左右方向に沿って移動させるための一対の下ガイドレール151が敷設されている。
【0019】
細胞移動ライン20は、細胞含有液から所望の細胞凝集塊を抽出し、これを所定の容器へ移動させる一連の細胞移動工程の実施に必要な複数の作業部を備える。これらの作業部は、基台12に対して左右方向(第1方向)に並べられて組み付けられている。細胞移動ライン20は、前記複数の作業部として、細胞含有液を貯留する対象物ストック部21、分注チップストック部22、細胞凝集塊の選別のために分注された細胞含有液(細胞培養液)を貯留する細胞選別部23(第1容器)、チップストック部24、チップ撮像部25、選別された細胞凝集塊を受け入れる細胞移載部26(第2容器)、ブラックカバー載置部27及びチップ廃棄部28を備えている。これら各部の詳細は後述する。
【0020】
ヘッドユニット30は、ユニット本体31とヘッド部32とを含む。
図8は、ヘッド部32の斜視図である。ヘッド部32は、いずれも上下方向に移動可能な複数のヘッド33、第1ノズル321及び第2ノズル322を備えている。ヘッド33は、上下動が可能なロッド331(
図9参照)を含み、ヘッド部32のハウジングの下端面から突出している。このヘッド33には、細胞凝集塊の吸引およびその吐出を行うシリンダチップ70が装着される。本実施形態では、8本のヘッド33が左右方向に一列に配列されている例を示している。ヘッド33の本数は任意であり、またX−Y方向にマトリクス状に配列されていても良い。
【0021】
第1ノズル321及び第2ノズル322は、吸引気流及び吐出気流を発生することが出来るノズルであり、それぞれの下端には開口部が備えられている。これら開口部において吸引力及び吐出力を発生するためのピストン機構(後述)が、第1ノズル321及び第2ノズル322の内部に備えられている。ユニット本体31の内部には、ヘッド33、第1ノズル321及び第2ノズル322を上下動させるための機構と、ロッド331及び前記ピストン機構を動作させるための機構を含むヘッド駆動装置17(
図13参照)が内蔵されている。
【0022】
ヘッドユニット駆動装置30Mは、ヘッドユニット30を左右方向へ移動させるための第1Xスライダ装置30Xと、ヘッドユニット30を前後方向に移動させるための第1Yスライダ装置30Yとを備える。第1Xスライダ装置30Xは、第1Xボールねじ装置34と、この第1Xボールねじ装置34によって左右方向に移動される第1Xスライダ35とを含む。第1Xボールねじ装置34は、第1Xモータ341(
図19参照)、第1Xねじ軸342及び第1Xナット部材343を含む。第1Xモータ341は、第1Xねじ軸342を軸回りに正回転及び逆回転させる回転駆動力を発生するモータである。第1Xねじ軸342は、左右方向に延び、周面に雄ねじが刻まれている。第1Xナット部材343は、雌ねじを内面に有し、第1Xねじ軸342に係合されている。第1Xねじ軸342が正回転又は逆回転することで、第1Xナット部材343は右方又は左方に移動する。
【0023】
第1Xスライダ35は、第1Yスライダ装置30Y及びヘッドユニット30を保持する平板状の部材である。第1Xスライダ35の下面には、一対の上ガイドレール131に嵌め込まれる被ガイド部352が備えられている。
図2では第1Xスライダ35の記載を省いているが、第1Xスライダ35は第1Xナット部材343に固定されている。従って、第1Xモータ341の動作によって、第1Xスライダ35は上ガイドレール131にガイドされつつ左右方向に移動することができる。
【0024】
第1Yスライダ装置30Yは、第1Yボールねじ装置36と、この第1Yボールねじ装置36によって前後方向に移動される第1Yスライダ37と、第1Yスライダ37に取り付けられたスライダアーム38(スライダ)とを含む。第1Yボールねじ装置36は、第1Yモータ361、第1Yねじ軸362及び第1Yナット部材363を含む。第1Yモータ361は、第1Yねじ軸362を軸回りに正回転及び逆回転させる回転駆動力を発生するモータである。第1Yねじ軸362は、前後方向に延び、周面に雄ねじが刻まれている。第1Yナット部材363は、雌ねじを内面に有し、第1Yねじ軸362に係合されている。第1Yねじ軸362が正回転又は逆回転することで、第1Yナット部材363は前方又は後方に移動する。
【0025】
第1Yスライダ37は、第1Yナット部材363に固定されている。第1Yスライダ37の下面には、第1Xスライダ35の上面に敷設された前後方向に延びるガイドレール351に嵌め込まれる被ガイド部371が取り付けられている。従って、第1Yモータ361の動作によって、第1Yスライダ37はガイドレール351にガイドされつつ前後方向に移動することができる。スライダアーム38は、前後方向に長い断面矩形のハウジング型の部材であり、第1Yスライダ37の上面に取り付けられている。スライダアーム38は、第1Yスライダ37の前後方向の移動に伴って、前後方向に進退移動する。ヘッドユニット30は、スライダアーム38の前端(先端)に取り付けられている。
【0026】
スライダアーム38内には、ヘッドユニット30が備える電気機器のための給電ケーブルや制御ケーブルが配線されている。これらのケーブルの、スライダアーム38から延出する部分は、第1Yスライダ37の移動に追従し後方に凸のU字型に屈曲したケーブル保護部材36Cと、第1Xスライダ35の移動に追従し左方に凸のU字型に屈曲したケーブル保護部材35Cとによって保護されている。
【0027】
以上の構成を備えたヘッドユニット駆動装置30Mにより、スライダアーム38の前端に取り付けられたヘッドユニット30は、左右方向及び前後方向に移動自在である。従って、ヘッドユニット30(ヘッド部32)は、基台12の上方において、細胞移動ライン20上を所定の移動経路に沿って移動することができる。なお、スライダアーム38は、
図2では後方に退行した状態を、
図3では前方に進行した状態をそれぞれ示している(
図2の状態に対応する側面図は
図17である)。
【0028】
照明ユニット40は、専ら細胞選別部23及び細胞移載部26を上方から照明するために、基台12の上方において左右方向及び前後方向に移動可能に配置されている。前記照明は、細胞選別部23又は細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊をカメラユニット50にて撮像する際に、透過照明として使用される。照明ユニット40は、照明光を発する照明ヘッド41(光源)と、照明ユニット本体部42とを含む。
【0029】
照明ユニット本体部42には、上下方向に配列された、光源としてのハロゲンランプと、コレクターレンズ、リングスリット、開口絞り、光学フィルター、コンデンサレンズなどの光学部品とを含む。照明ヘッド41には、最も像面側の光学部品(コンデンサレンズ)が配置されている。なお、ハロゲンランプに代えて、タングステンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、発光ダイオード(LED)等を、光源として使用してもよい。照明ユニット本体部42の下端付近には、左右方向に突出した突出部421が備えられている。この突出部421の位置は、前記光学フィルターが配置される高さ位置である。本実施形態の照明ユニット40は、細胞凝集塊を蛍光観察のために複数種(3種)の光学フィルターが備えられている。突出部421は、光学フィルターの切り替え時に、不使用のフィルターを光路から退避させるための空間を提供する部分である。
【0030】
照明ユニット駆動装置40Mは、照明ユニット40を左右方向へ移動させるための第2Xスライダ装置40Xと、照明ユニット40を前後方向に微小移動させるための第2Yスライダ装置40Yとを備える。第2Xスライダ装置40Xは、第2Xボールねじ装置43と、この第2Xボールねじ装置43によって左右方向に移動される第2Xスライダ44とを含む。第2Xボールねじ装置43は、第2Xモータ431、第2Xねじ軸432及び第2Xナット部材433を含む。第2Xモータ431は、第2Xねじ軸432を軸回りに正回転及び逆回転させる回転駆動力を発生するモータである。第2Xねじ軸432は、左右方向に延びるねじ軸であり、第2Xナット部材433は第2Xねじ軸432に係合されている。第2Xねじ軸432が正回転又は逆回転することで、第2Xナット部材433は右方又は左方に移動する。なお、
図2では第2Xナット部材433を仮想的に描いており、実際は第2Xスライダ44に第2Xナット部材433が固定されている。
【0031】
第2Xスライダ44は、第2Yスライダ装置40Y及び照明ユニット40を保持する平板状の部材である。第2Xスライダ44の下面には、一対の中ガイドレール141に嵌め込まれる被ガイド部(図には現れていない)が備えられている。従って、第2Xモータ431の動作によって、第2Xスライダ44は中ガイドレール141にガイドされつつ左右方向に移動することができる。
【0032】
第2Yスライダ装置40Yは、第2Yボールねじ装置(図には現れていない)と、この第2Yボールねじ装置によって前後方向に比較的短距離だけ移動される第2Yスライダ46とを含む。前記第2Yボールねじ装置は、第2Yモータと、この第2Yモータにより回転駆動される第2Yねじ軸と、第2Yねじ軸が正回転又は逆回転することで前方又は後方に移動する第2Yナット部材(いずれも図には現れていない)とを含む。第2Yスライダ46は、前記第2Yナット部材に固定されている。
【0033】
第2Yスライダ46は、その下面に被ガイド部461を備え、第2Xスライダ44の上面に配置されたガイドレールに組み付けられている。第2Yスライダ46の上面には、照明アーム部47が取り付けられている。照明アーム部47は、第2Yスライダ46の前後方向の移動に伴って、前後方向に移動することができる。照明ユニット40は、照明アーム部47の前端に取り付けられている。従って、照明ユニット40は、照明ユニット駆動装置40Mによって、基台12の上方において左右方向及び前後方向に移動可能である。
【0034】
図3に示されているように、スライダアーム38が前方に延び出した状態では、照明ユニット40は当該スライダアーム38と基台12との間に配置されることになる。つまり、照明ユニット40の上面が、スライダアーム38の下面よりも下方に位置している。スライダアーム38が後方に退行している状態では、共に基台12の上方に配置されているヘッドユニット30と照明ユニット40とは、左右方向において互いに干渉する位置関係である(
図17参照)。しかし、スライダアーム38が前方に延び出した状態では、照明ユニット40はヘッドユニット30と干渉しない位置関係となる。従って、ヘッドユニット30は、左右方向への移動時に照明ユニット40を迂回する経路を移動して、該照明ユニット40とすれ違うことが可能である。
【0035】
カメラユニット50は、細胞選別部23及び細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊を基台12の下方から撮像するために、基台12の下方において左右方向及び前後方向に移動可能に配置されている。さらに、本実施形態では、カメラユニット50は、チップ撮像部25においてシリンダチップ70のヘッド33への装着状態を観察するためにも用いられる。カメラユニット50は、カメラ51、コンデンサレンズ52、切り替え式の対物レンズユニット53及び図には現れていない落射照明器を含む。
【0036】
カメラ51は、CCDイメージセンサ等の撮像素子を含み、対象物の静止画像及び動画像を取得する。コンデンサレンズ52及び対物レンズユニット53は、前記CCDイメージセンサの受光面に対象物の光像を結像させるための光学部品である。前記落射照明器は、コンデンサレンズ52の側方に配置されている。本実施形態では、前記細胞凝集塊を撮像する場合、照明ユニット40の照明ヘッド41から照明光が出射されている状態で、カメラ51は撮像動作を行う(透過照明)。一方、チップ撮像部25において前記チップを撮像する場合は、前記落射照明器が点灯された状態で(又は、チップ撮像部25内に組み付けられたLED照明具が点灯された状態で)、カメラ51は撮像動作を行う(側射照明)。なお、前記チップの撮像用に、専用の照明装置をカメラユニット50に具備させても良い。
【0037】
カメラユニット駆動装置50Mは、カメラユニット50を左右方向へ移動させるための第3Xスライダ装置50Xと、カメラユニット50を前後方向に微小移動させるための第3Yスライダ装置50Yとを備える。第3Xスライダ装置50Xは、第3Xボールねじ装置54と、この第3Xボールねじ装置54によって左右方向に移動される第3Xスライダ55とを含む。第3Xボールねじ装置54は、第3Xモータ541、第3Xねじ軸542及び第3Xナット部材543を含む。第3Xモータ541は、第3Xねじ軸542を軸回りに正回転及び逆回転させる回転駆動力を発生するモータである。第3Xねじ軸542は、左右方向に延びるねじ軸であり、第3Xナット部材543は第3Xねじ軸542に係合されている。第3Xねじ軸542が正回転又は逆回転することで、第3Xナット部材543は右方又は左方に移動する。なお、
図2では第3Xナット部材543を仮想的に描いており、実際は第3Xスライダ55に第3Xナット部材543が固定されている。
【0038】
第3Xスライダ55は、第3Yスライダ装置50Y及びカメラユニット50を保持する平板状の部材である。第3Xスライダ55の下面には、一対の下ガイドレール151に嵌め込まれる被ガイド部551が備えられている。従って、第3Xモータ541の動作によって、第3Xスライダ55は下ガイドレール151にガイドされつつ左右方向に移動することができる。
【0039】
第3Yスライダ装置50Yは、第3Yボールねじ装置56と、この第3Yボールねじ装置56によって前後方向にカメラ視野範囲を所望距離だけ移動させる第3Yスライダ57とを含む。第3Yボールねじ装置56は、第3Yモータ561と、この第3Yモータ561により回転駆動される第3Yねじ軸562と、第3Yねじ軸562が正回転又は逆回転することで前方又は後方に移動する第3Yナット部材(図には現れていない)とを含む。第3Yスライダ57は、前記第3Yナット部材に固定されている。なお、対物レンズユニット53は、カメラユニット50の枠フレームに対して前後方向に移動自在の第4Yスライダに搭載されており、一の対物レンズを光軸上に配置することが可能である。
【0040】
第3Yスライダ57は、第3Xスライダ55の上面に配置されたガイドレールに組み付けられている。第3Yモータ561の動作によって、第3Yスライダ57は前記ガイドレールに沿って前後方向に移動することができる。カメラユニット50は、第3Yスライダ57の上に搭載されている。従って、カメラユニット50は、カメラユニット駆動装置50Mによって、基台12の下方において左右方向及び前後方向に移動可能である。
【0041】
続いて、細胞移動ライン20の詳細について説明する。
図4は、細胞移動ライン20の上面視の平面図である。細胞移動ライン20は、
図4の左端側から順に、分注チップストック部22、対象物ストック部21、チップストック部24、チップ撮像部25、細胞選別部23、ブラックカバー載置部27、細胞移載部26及びチップ廃棄部28が、左右方向(第1方向)に一列に配列されてなる。ここに示した細胞移動ライン20の配列は一例であり、作業効率等を考慮して各部の配置位置を適宜設定することができる。例えば、ブラックカバー載置部27を、細胞選別部23、細胞移載部26の前方側(+Y)又は後方側(−Y)に配置しても良い。
【0042】
対象物ストック部21は、分注元となる、多量の細胞凝集塊(移動対象物)が分散された細胞培養液を貯留する部位である。対象物ストック部21は、ボックス211と、このボックス211で保持されたチューブ212と、ボックス211上に載置された蓋部材213とを備える。ボックス211は、チューブ212の上端が突出する状態で、チューブ212を保持している。ボックス211は、基台12に設けられた矩形の開口にその上端縁が嵌め込まれる態様で、基台12に対して組み付けられている。チューブ212は、上面が開口した円筒状容器であり、細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液を貯留する。蓋部材213は、チューブ212の開口を塞ぐための部材である。分注作業が実行されない期間、塵埃等がチューブ212内に進入しないよう、蓋部材213はチューブ212の開口部上に被せられる。蓋部材213の移動は、第2ノズル322に装着される吸盤ヘッド323(
図8)による蓋部材213の吸着及び吸着解除動作と、ヘッド部32の移動動作とによって実現される。
【0043】
分注チップストック部22は、複数個の分注チップ80を保管する部位である。
図8及び
図11(C)を参照して、分注チップ80は、細長いチューブ状の部材であり、第1ノズル321に嵌め込まれる上端部81と、細胞培養液を吸引及び吐出する開口を端縁に備えた下端部82と、両者の間に延在する中間部83とを含む。中間部83は、上端部81側から下端部82側に向けて、外径が徐々に縮小するテーパ形状を備えている。分注チップ80は、第1ノズル321に対して装着及び取り外しが可能である。既述の通り、第1ノズル321は吸引力及び吐出力を発生可能なノズルであり、分注チップ80は、前記吸引力が与えられることで細胞培養液を吸引する一方、前記吐出力を与えられることで吸引した細胞培養液を吐出する。
【0044】
分注チップストック部22は、立設状態でマトリクス状に整列された分注チップ80を保持する保持ボックス221を備える。分注チップ80は、その上端部81が保持ボックス221の上端面から上方に突出した状態で、保持ボックス221に保持されている。つまり、上下方向に移動する第1ノズル321に対して装着が容易に行い得る状態で、分注チップ80は、保持ボックス221に保持されている。
【0045】
細胞選別部23は、細胞移動ライン20において左右方向のセンターポジションに配置され、各種サイズの細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液から、所望のサイズの細胞凝集塊を選別するための部位である。細胞選別部23は、ディッシュ60(第1容器)と保持テーブル231とを含む。ディッシュ60は、分注チップ80によって細胞凝集塊を含む細胞培養液が分注され、該細胞培養液を貯留することができる上面開口の容器である。保持テーブル231は、基台12の上に載置され、ディッシュ60を位置決めして保持する透明な部材である。
【0046】
図5は、ディッシュ60の斜視図である。ディッシュ60は、ウェルプレート61、シャーレ(schale)62及びカバー部材63を含む。ウェルプレート61は、所望のサイズの細胞凝集塊を担持させるための、上面視で正方形のプレートである。シャーレ62は、上面開口の底の浅い平皿であり、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液を回収するための容器である。ウェルプレート61は、シャーレ62の中央部の底面付近において保持される。カバー部材63は、シャーレ62の外径よりも大きい内径を有する筒部631と、この筒部631の上端を塞ぐ円板状の蓋部632とを含む、下面開口の部材である。カバー部材63は、シャーレ62の上面開口を蓋部632が覆うように、シャーレ62に被せられている。蓋部632には貫通孔633が穿孔されている。この貫通孔633を通して、シャーレ62のキャビティに細胞培養液を注液したり、シャーレ62から吸液したりすることが可能である。本実施形態では、ディッシュ60は、透光性の部材、例えば透明プラスチックや透明ガラスによって形成される。
【0047】
蓋部632の中央には開口63Hが設けられている。開口63Hは、ウェルプレート61よりも大きい正方形の開口である。カバー部材63は、この開口63Hを区画する4つの辺からディッシュ60の円筒中心方向に向かうように延びる、各々下方に傾斜した4つの台形型の傾斜プレート64を含む。傾斜プレート64の各下端縁は、ウェルプレート61の各端辺付近にそれぞれ位置している。傾斜プレート64の下端付近には、帯状のメッシュ開口部65が設けられている。メッシュ開口部65は、傾斜プレート64を貫通する複数の孔からなり、シャーレ62のキャビティと4つの傾斜プレート64で区画される内部空間とを連通させている。メッシュ開口部65のメッシュサイズは、所望のサイズの細胞凝集塊は通過できず、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を通過させるサイズに選ばれている。
【0048】
図6は、ウェルプレート61の斜視図、
図7は、
図5のVII−VII線断面図であって、ディッシュ60における細胞選別動作を説明するための断面図である。ウェルプレート61は、上面側に、細胞凝集塊を担持するための複数の凹部61Cを備えている。各凹部61Cは、半球状のキャビティを有しているが、その上端開口縁611は六角形である。複数の凹部61Cは、各々の上端開口縁611が隣接する態様で、ハニカム状に配列されている。他の凹部61Cの実施形態では、その上端開口縁611が六角形以外の多角形、例えば四角形とされる。
図7に示す通り、凹部61Cの曲率は、底部付近では比較的小さく、上端開口縁611付近では比較的大きい。従って、隣接する凹部61Cの上端開口縁611同士が接することにより形成される稜線部分は、鋭利な凸状先端部分によって形成されている。
【0049】
各凹部61Cには、ウェルプレート61を上下方向に貫通する逃がし孔612が穿孔されている。逃がし孔612は、凹部61Cの中心部(最深部)に配置されている。逃がし孔612のサイズは、所望のサイズの細胞凝集塊は通過できず、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を通過させるサイズに選ばれている。各凹部61Cには、1個の細胞凝集塊を収容することが企図されている。ウェルプレート61の裏面とシャーレ62の内底面との間には所定高さの隙間が設けられている。
【0050】
細胞選別動作が行われる際、先ずは細胞凝集塊Cを含まない細胞培養液Lmが、例えば貫通孔633を通してシャーレ62内に注液される。細胞培養液Lmの液位は、
図4に示す通り、ウェルプレート61及び傾斜プレート64のメッシュ開口部65を浸漬させる液位とされる。その後、抽出対象となる細胞凝集塊Cと、不可避的に混在する夾雑物Cxとを含む細胞培養液が、蓋部632の開口63Hから注入される。そうすると、所望のサイズの細胞凝集塊Cは、メッシュ開口部65を通過できないので、ウェルプレート61上に導かれる。一方、夾雑物Cxはメッシュ開口部65を通過し、シャーレ62に回収される(Cx1)。仮に、夾雑物Cxがメッシュ開口部65にトラップされず、ウェルプレート61の凹部61Cに入り込んだとしても、当該夾雑物Cxは逃がし孔612から落下し、シャーレ62に回収される(Cx2)。
【0051】
以上の通りの細胞凝集塊Cと夾雑物Cxとの選別が行われるので、ウェルプレート61上には細胞凝集塊Cだけが残存するようになる。但し、一つの凹部61Cに複数の細胞凝集塊Cが担持されてしまう場合がある。このことが問題となる場合は、ウェルプレート61に振動を与える機構を、保持テーブル231に具備させることが望ましい。保持テーブル231にX方向及びY方向の水平振動を施与することで、一つの凹部61Cに重複して担持された細胞凝集塊Cを、他の凹部61Cに容易に移動させることができる。これには、凹部61Cの曲面が、底部付近では平坦に近いなだらかな曲面である一方、上端開口縁611付近では比較的急峻に湾曲した曲面であることも寄与している。既述の通り、ディッシュ60は透明な部材で形成され、且つ基台12も透光性であるので、凹部61Cに担持された状態の細胞凝集塊Cの画像を、照明ヘッド41の点灯下でカメラ51にて撮像することができる。
【0052】
チップストック部24は、細胞選別部23の左隣に配置され、複数個のシリンダチップ70(チップの一例)を保持する部位である。シリンダチップ70は、
図8に示すように細長いチューブ状の部材であり、ヘッド33に対して装着及び取り外しが可能である。シリンダチップ70は、上述のウェルプレート61の凹部61Cに担持された細胞凝集塊を吸引し、ヘッドユニット30の移動に伴い該細胞凝集塊を運搬し、これを細胞移載部26へ吐出する機能を果たす。
【0053】
チップストック部24は、立設状態でマトリクス状に整列されたシリンダチップ70を保持する保持ボックス241を含む。シリンダチップ70は、その上端部分が保持ボックス241の上端面から上方に突出した状態で、保持ボックス241に保持されている。つまり、上下方向に移動するヘッド33に対して装着が容易に行い得る状態で、シリンダチップ70は、保持ボックス241に保持されている。
【0054】
図9は、シリンダチップ70及びヘッド33の内部構造を示す断面図である。シリンダチップ70は、細胞凝集塊を吸引するための吸引経路となる管状通路71Pを内部に備えるシリンジ71と、管状通路71Pを画定するシリンジ71の内周壁と摺接しつつ管状通路71P内を進退移動するプランジャ72とを備える。シリンジ71は、大径の円筒体からなるシリンジ基端部711と、細径で長尺の円筒体からなるシリンジ本体部712と、基端部711と本体部712とを繋ぐテーパ筒部713とを含む。管状通路71Pは、シリンジ本体部712に形成されている。シリンジ本体部712の先端には、吸引口71T(吐出口でもある)が設けられている。プランジャ72は、円筒体からなるプランジャ基端部721と、針状のプランジャ本体部722と、基端部721と本体部722とを繋ぐ半球部723とを含む。
【0055】
シリンジ基端部711は、円筒型の中空部71Hを備えている。プランジャ基端部721の外径は、中空部71Hの内径よりも所定長だけ小さく設定されている。プランジャ本体部722の外径は、管状通路71Pの内径よりも僅かに小さく設定されている。また、テーパ筒部713の内周面の形状は、半球部723の外周面の曲面形状に合致している。プランジャ基端部721が中空部71H内に収容され、プランジャ本体部722がシリンジ本体部712の管状通路71Pに挿通される態様で、シリンジ71に対してプランジャ72が組み付けられている。
【0056】
図9では、プランジャ本体部722がシリンジ本体部712に最も深く挿通されている状態、つまりプランジャ72が最も下降した状態を示している。このとき、テーパ筒部713のキャビティに、半球部723が完全に受容された状態となる。プランジャ本体部722の長さは、シリンジ本体部712よりもやや長く、
図9の状態では、吸引口71Tから先端部724が突出している。また、シリンジ基端部711の内周面とプランジャ基端部721の外周面との間にはギャップが存在している。
【0057】
プランジャ72は、
図9の状態から、シリンジ71に対して上方向(+Z)へ移動することができる。所定長だけ上方向にプランジャ72が移動すると、プランジャ本体部722の先端部724は管状通路71Pの内部に没する。この際、吸引口71Tに吸引力を発生させ、該吸引口71Tの周囲の液体(本実施形態では細胞培養液)を管状通路71P内へ吸引することができる。この吸引の後、プランジャ72を下側へ移動させると、前記管状通路71P内へ吸引された液体を吸引口71Tから吐出させることができる。
【0058】
ヘッド33は、上下方向に移動可能な円柱状のロッド331と、このロッド331の周囲に配置され上下方向に移動可能な円筒状の移動筒332と、該移動筒332の周囲に配置された円筒状の固定筒333とを備えている。また、ヘッド33は、全体的にZ方向へ移動することが可能である。
【0059】
プランジャ基端部721には、上方向の端面に開口を有する、円筒状の中空空間からなる装着孔72Hが備えられている。この装着孔72Hは、ロッド331の先端を圧入させるための孔であり、該圧入によってロッド331とプランジャ72とが一体的に上下方向へ移動できるようになる。移動筒332は、ロッド331とは独立して上下方向に移動可能である。移動筒332の下端面は、プランジャ基端部721の上端面と対向している。固定筒333は、シリンジ基端部711が圧入される筒であり、この圧入時にはシリンジ基端部711とプランジャ基端部721との間の前記ギャップに入り込む。
【0060】
続いて、
図10(A)〜(E)を参照して、シリンダチップ70による細胞凝集塊Cの吸引及び吐出動作を説明する。ここでは、シリンダチップ70にて、容器C1に貯留されている細胞培養液Lm1中に存在する細胞凝集塊Cを吸引し、容器C2に貯留されている細胞培養液Lm2中に当該細胞凝集塊Cを吐出する場合について説明する。本実施形態に当て嵌めれば、容器C1は細胞選別部23、容器C2は細胞移載部26に各々配置される容器である。
【0061】
図10(A)に示すように、シリンダチップ70を吸引対象とする細胞凝集塊Cの真上に移動させる。プランジャ72がシリンジ71に対して相対的に上方(+Z)に移動しており、プランジャ本体部722の先端部724がシリンジ本体部712内に没入した状態であるときは、
図10(B)に示すように、プランジャ72を最も下方(−Z)に移動させ、先端部724を吸引口71Tから突出させる。つまり、シリンジ本体部712の管状通路71P内に空気が存在しない状態とする。その後、
図10(C)に示すように、シリンダチップ70を全体的に下降させ、吸引口71Tを容器C1の細胞培養液Lm1中に突入させる。このとき、なるべく吸引口71Tを細胞凝集塊Cに接近させる。
【0062】
続いて、
図10(D)に示すように、プランジャ72を所定高さだけ上方へ移動させる。この動作により、吸引口71Tには吸引力が発生し、細胞凝集塊Cと一部の細胞培養液Lmaとがシリンジ本体部712内に吸引される。この状態で、シリンダチップ70は全体的に上昇され、容器C2の配置位置まで移動される。そして、
図10(E)に示すように、吸引口71Tが容器C2の細胞培養液Lm2中に突入するまで、シリンダチップ70が全体的に下降される。しかる後、所定高さ位置にあるプランジャ72を、先端部724が吸引口71Tから突出するまで下降させる。この下降動作により、細胞凝集塊Cは容器C2の細胞培養液Lm2中に吐出される。
【0063】
図4に戻って、チップ撮像部25は、ヘッド33に装着されたシリンダチップ70の画像が撮像される位置を提供するピットである。チップ撮像部25の配置位置は、細胞選別部23とチップストック部24との間である。前記撮像を行うのは、本実施形態ではカメラユニット50である。従って、前記撮像が行われる際、カメラユニット50は、チップ撮像部25の直下に移動され、前記落射照明器の照明下において各シリンダチップ70の画像を撮像する。シリンダチップ70の画像並びに撮像時における焦点位置情報に基づき、シリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置が求められる。当該座標位置と、予め定められた基準位置との差分から補正値が導出される。当該補正値は、ヘッド33(ヘッドユニット30)の移動制御の際の補正値として利用される。なお、前記落射照明器に代えて、チップ撮像部25自体にLED照明具のような照明器具を装備させ、該照明器具の照明下で前記撮像を行うようにしても良い。
【0064】
細胞移載部26は、細胞移動ライン20において右端部付近に配置され、細胞選別部23のディッシュ60から吸引された細胞凝集塊の移動先となる部位である。細胞移載部26は、細胞凝集塊を収容するマイクロプレート90(第2容器)を含む。なお、マイクロプレート90に代えて、ディッシュ60と同様な容器を細胞移載部26に具備させても良い。マイクロプレート90は、上面が開口した多数の小さなウェル91が、マトリクス状に配列されたプレートである。マイクロプレート90は、透光性の部材、例えば透明プラスチックで形成されている。一般に、一つのウェル91には、一つの細胞凝集塊が収容される。従って、各ウェル91に収容された状態の細胞凝集塊を、カメラ51によって撮像することができる。また、ウェル91の配列ピッチは、一列に並んだヘッド33に装着されたシリンダチップ70群の配列ピッチと略同一に設定されている。これにより、一群のシリンダチップ70から同時にウェル91に細胞凝集塊を吐出させることが可能である。なお、一つのウェル91に、指定個数の細胞凝集塊を収容させたり、指定量(総体積又は総面積)の細胞凝集塊を収容させたりすることもできる。
【0065】
ブラックカバー載置部27は、細胞選別部23又は細胞移載部26に被せられるブラックカバー271が載置される部位である。ブラックカバー271は、下面開口のボックスであって、ディッシュ60又はマイクロプレート90に担持された細胞凝集塊を、遮光された状態で撮像する際に用いられる遮光体である。ブラックカバー271は、例えば、細胞培養液に蛍光剤を添加し、細胞凝集塊を蛍光観察する際に、ディッシュ60又はマイクロプレート90に対して、これらを覆い隠すように被せられる。
【0066】
チップ廃棄部28は、細胞移動ライン20の右端に配置され、上述の吸引及び吐出動作を終えた使用後のシリンダチップ70及び分注チップ80が廃棄される部位である。チップ廃棄部28は、使用後のシリンダチップ70及び分注チップ80を収容するための回収ボックス281を含む。前記廃棄の際、シリンダチップ70又は分注チップ80を装備したヘッド部32が回収ボックス281の開口部282上に移動され、シリンダチップ70又は分注チップ80のヘッド部32からの取り外し動作が実行される。この取り外し動作により、シリンダチップ70又は分注チップ80は、開口部282を通して回収ボックス281に落下する。
【0067】
ここで、ヘッド33に対するシリンダチップ70の着脱動作を説明する。シリンダチップ70のヘッド33への装着時、ヘッド部32がチップストック部24上に移動され、1のシリンダチップ70に対して位置合わせられた1のヘッド33が降下される。このとき、
図9に示しているように、ロッド331の下端面と固定筒333の下端面とは略面一に設定される一方で、これら下端面に対して移動筒332の下端面は上方に没入した状態とされる。この状態のヘッドが下降することで、ロッド331はプランジャ基端部721の装着孔72Hに圧入され、また、固定筒333はシリンジ基端部711の中空部71Hに圧入される。これにより、シリンダチップ70のヘッド33への装着が完了する。この状態でロッド331だけを上下動させることで、プランジャ72をシリンジ71に対して進退移動させることができる。
【0068】
シリンダチップ70のヘッド33からの取り外し時、上方に退避していた移動筒332(
図9の状態)が下降される。これにより、移動筒332の下端面によってプランジャ基端部721が下方に押圧され、プランジャ基端部721がロッド331から抜け出し始める。すると、プランジャ72の半球部723がシリンジ71のテーパ筒部713の内周面を押圧するようになり、シリンジ71に対しても固定筒333から抜け出す押圧力が作用するようになる。移動筒332の下降がさらに進むと、ついにはシリンダチップ70はヘッド33から脱落する。
【0069】
次に、
図11(A)〜(D)は、第1ノズル321への分注チップ80の着脱動作を説明するための斜視図である。第1ノズル321に対して、ガイドアーム841が付設されている。ガイドアーム841は、側方に開口し、第1ノズル321の外径よりも僅かに大きい開口幅を有するガイド凹部842を備えている。第1ノズル321は、ガイド凹部842のキャビティ内に収容された状態で上下方向に移動する。
【0070】
分注チップ80の装着時、
図11(A)に示すように、ヘッド部32が分注チップストック部22上に移動され、1の分注チップ80に対して位置合わせられた第1ノズル321が降下される。この降下により、
図11(B)に示すように、第1ノズル321の下端321Lが分注チップ80の上端部81に嵌り込に、両者は実質的に連結される。つまり、第1ノズル321のシリンダ空間と分注チップ80内のチューブ内空間とは密に連結される。従って、第1ノズル321が吸引力を発生させると、分注チップ80の下端部82の開口から液体を吸引することができる。一方、第1ノズル321が吐出力を発生させると、吸引した前記液体を下端部82の開口から吐出させることができる。
【0071】
分注チップ80の取り外し時、
図11(C)に示すように、分注チップ80が装着された状態の第1ノズル321が、上方に引き上げられる。第1ノズル321の引き上げがある程度進むと、ガイドアーム841の下端面843と分注チップ80の上端縁とが干渉するようになる。前記干渉によって分注チップ80は徐々に第1ノズル321から外されて行き、最終的には分注チップ80は第1ノズル321から脱落する。
【0072】
図12(A)及び(B)は、第2ノズル322及び吸盤ヘッド323の斜視図、
図12(C)及び(D)はその断面図である。第2ノズル322は、シリンジパイプ851と、このシリンジパイプ851に収容され上下方向に進退移動するピストンロッド852とを含む。シリンジパイプ851は、真直な筒体であり、その下端には脱着が可能な継ぎパイプ851Aが取り付けられ、その上端内部にはピストンロッド852の下端部分を受け入れるシリンダ空間851Hが形成されている。ピストンロッド852の下端にはシール部材853が取り付けられている。吸盤ヘッド323は、継ぎパイプ851Aの下端開口を塞ぐように、当該継ぎパイプ851Aに取り付けられている。但し、吸盤ヘッド323の中央部には吸引口323Aが備えられており、吸引口323Aを通してシリンジパイプ851の内部空間が外部に連通している。
【0073】
第2ノズル322は、ガイド部材854にガイドされつつ全体的に上下動することができる。また、ピストンロッド852は、独立して上下動することができる。ピストンロッド852の上下動に伴い、シール部材853を備えたピストンロッド852の下端部分がシリンダ空間851H内を上下動する。この上下動に伴い、吸盤ヘッド323の吸引口323Aには吸引力又は吐出力が発生する。つまり、ピストンロッド852の上昇によってシリンジパイプ851内が負圧となって吸引力が発生し、ピストンロッド852の下降によって吐出力が発生する。吸盤ヘッド323は、例えば、ブラックカバー271を細胞選別部23又は細胞移載部26に移動させる際に、当該ブラックカバー271を吸着するために用いられる。
【0074】
図13は、移動装置1の制御部16の構成を示すブロック図である。制御部16は、主制御部161、軸制御部162(制御部)、照明制御部163、カメラ制御部164、画像処理部165及び位置補正部166を機能的に備えている。主制御部161は、移動装置1の装置本体10における各種の制御を統合的に行う。すなわち、主制御部161は、ヘッドユニット30(ヘッド部32)を細胞移動ライン20の各作業部へ向かうように移動させ、シリンダチップ70又は分注チップ80の装着及び取り外しや、細胞培養液(細胞凝集塊)の吸引及び吐出動作等を行わせ、また、照明ユニット40及びカメラユニット50を移動させ、ディッシュ60又はマイクロプレート90に担持された細胞凝集塊、或いはヘッド33に装着されたシリンダチップ70の画像を撮像させる。
【0075】
軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30M、ヘッド駆動装置17、照明ユニット駆動装置40M及びカメラユニット駆動装置50Mの動作を制御する。実際に軸制御部162が制御するのは、ヘッドユニット駆動装置30Mの第1Xモータ341及び第1Yモータ361、ヘッド駆動装置17が備えるヘッド33(ロッド331及び移動筒332)を上下動させる駆動モータ(図略)、照明ユニット駆動装置40Mの第2Xモータ431及び第2Yモータ(図略)、及び、カメラユニット駆動装置50Mの第3Xモータ541及び第3Yモータ561である。
【0076】
具体的には軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御することで、ヘッドユニット30の前後左右の移動を制御する。ヘッド駆動装置17の制御により、ヘッド33、第1ノズル321及び第2ノズル322の上下動、ヘッド33におけるロッド331他の昇降動作(吸引及び吐出動作)、第1ノズル321及び第2ノズル322における吸引及び吐出動作などが制御される。本実施形態では、8本のヘッド33(
図8)を同時に動作させて、シリンダチップ70の各ヘッド33への装着、シリンダチップ70による吸引及び吐出動作、及びシリンダチップ70の廃棄動作を、同時に実行させることが可能である。照明ユニット駆動装置40Mの制御により、照明ユニット40の前後左右の移動が制御される。カメラユニット駆動装置50Mの制御により、カメラユニット50の前後左右の移動が制御される。
【0077】
照明制御部163は、照明ユニット本体部42内に備えられている光源40Lの発光動作を制御する。具体的には、照明制御部163は、細胞選別部23又は細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊をカメラ51にて撮像する際に、透過照明を発生させるために光源40Lを所定のルーチンで点灯及び消灯させる。
【0078】
カメラ制御部164は、カメラ51の撮像動作を制御する。例えばカメラ制御部164は、上記撮像動作の際に、カメラ51のフォーカシング、シャッタータイミング、シャッター速度(露光量)などを制御する。
【0079】
画像処理部165は、カメラ51により取得された画像に対して、シェーディング補正やホワイトバランス調整などの画像処理を施す。本実施形態では、細胞選別部23又は細胞移載部26において取得される細胞凝集塊の画像に前記画像処理を施し、モニター167に当該画像を表示させる。また、画像処理部165は、チップ撮像部25において取得されるシリンダチップ70の認識画像に対して公知の画像処理技術を適用して、ヘッド33に装着されたシリンダチップ70の吸引口71TのXY位置情報を求める。
【0080】
位置補正部166は、画像処理部165により求められた吸引口71TのXY方向の位置情報と、及びカメラ制御部164のフォーカシング動作により定まる吸引口71TのZ方向の焦点位置情報(撮像の動作によって得られる情報)とから、ヘッド33に装着されたシリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置を求める処理を行う。そして、位置補正部166は、前記XYZ座標位置と、予め定められた基準位置との差分から補正値を導出する。軸制御部162は、この補正値を参照して、ヘッドユニット駆動装置30M及びヘッド駆動装置17を制御し、シリンダチップ70による吸引及び吐出動作を、正確な位置で実行させる。
【0081】
図14は、ヘッドユニット30、照明ユニット40及びカメラユニット50の、前後左右方向(XY方向)の移動範囲を示す図である。細胞移動ライン20の各作業部は、左右方向に並んでおり、その左端には分注チップストック部22が、右端にはチップ廃棄部28が配置されている。ヘッドユニット30の左右方向の移動範囲D1は、全ての作業部の上空に移動できるよう、細胞移動ライン20の左端から右端までの範囲に設定されている。すなわち、ヘッドユニット駆動装置30Mは、ヘッドユニット30を、分注チップストック部22において分注チップ80の装着作業が可能な位置である第1端部D11と、チップ廃棄部28においてチップの廃棄作業が可能な位置である第2端部D12との間で移動させる。詳しくは、第1端部D11は、少なくとも分注チップストック部22に保持されている最も左寄りの分注チップ80に、ヘッド部32の第1ノズル321が位置合わせできる位置である。第2端部D12は、ヘッド部32に装着されているシリンダチップ70又は分注チップ80が、チップ廃棄部28の開口部282に対向する位置である。
【0082】
また、ヘッドユニット30の前後方向の移動範囲D2は、照明ユニット40との干渉を回避できる長さに設定されている。この移動範囲D2は、スライダアーム38の前後方向における進退範囲に相当する。ヘッドユニット駆動装置30Mは、ヘッドユニット30と照明ユニット40とが干渉する場合には、
図3に示すようにスライダアーム38を前方に伸び出させて、両者の干渉を防止させる。
【0083】
照明ユニット40の左右方向の移動範囲D3は、チップ撮像部25と細胞移載部26との間に設定されている。照明ユニット駆動装置40Mは、照明ユニット40を、細胞選別部23においてディッシュ60に照明光を照射できる位置よりもさらに左方の第3端部D31と、細胞移載部26においてマイクロプレート90のウェル91に照明光を照射できる位置である第4端部D32との間で移動させる。
図14から明らかな通り、移動範囲D3は移動範囲D1の内側、つまり第3端部D31は第1端部D11よりも内側にあり、第4端部D32は第2端部D12よりも内側にある。第1端部D11と第3端部D31との間には分注チップストック部22、対象物ストック部21及びチップストック部24が存在し、第2端部D12と第4端部D32との間にはチップ廃棄部28が存在している。
【0084】
カメラユニット50の左右方向の移動範囲D5は、照明ユニット40移動範囲D3と同じである。すなわち、カメラユニット50の移動範囲D5は、チップ撮像部25と細胞移載部26との間に設定されている。カメラユニット駆動装置50Mは、カメラユニット50を、チップ撮像部25においてシリンダチップ70のヘッド33への装着状態を撮像できる位置である第5端部D51と、細胞移載部26においてマイクロプレート90のウェル91に保持されている細胞凝集塊を撮像できる位置である第6端部D52との間で移動させる。
【0085】
照明ユニット40及びカメラユニット50もまた、前後方向の移動範囲D4及びD6を有している。これは、ディッシュ60及びマイクロプレート90が左右方向だけでなく前後方向にも幅を持つ部材であるため、これらの全領域を照明及び撮像するには照明ユニット40及びカメラユニット50を前後方向にも移動させる必要があるからである。カメラユニット50の対物レンズとして4倍程度の低倍率レンズを用いたとしても、その視野範囲は3mm×3mm程度である。一方、ウェルプレート61のサイズは一辺が10mm〜30mm程度、ウェル91は5mm〜12mm程度のピッチでマイクロプレート90にマトリクス配置されている。従って、照明ユニット40及びカメラユニット50についても、前後方向の移動を要する。
【0086】
照明ユニット駆動装置40Mは、照明ユニット40を前後方向に移動範囲D4だけ移動させ、また、カメラユニット駆動装置50Mは、カメラユニット50を前後方向に移動範囲D6だけ移動させる。これら移動範囲D4及びD6は、ヘッドユニット30の前後方向の移動範囲D2に比べて十分小さい。
図3に示すように、スライダアーム38が前方に最も延び出した状態では、照明ユニット40が移動範囲D4のいずれの位置に移動されても、照明ユニット40とヘッドユニット30とは干渉することはない。
【0087】
図15は、ヘッドユニット30が取り得る移動経路を示す図である。ヘッドユニット30は、左右方向に並ぶ細胞移動ライン20に沿って左右方向に直線状に延びる第1経路L1と、この第1経路L1の前方であって第1経路L1と平行に並ぶ直線状の第2経路L2と、第1経路L1と第2経路L2との間において前後方向に延びる第3経路L3とにおいて移動することができる。細胞移動ライン20の各作業部の前方には、各々の作業部を覆う蓋部材などが載置される置き場スペース20Lが設けられている。第1経路L1は細胞移動ライン20の上空に、第2経路L2は、置き場スペース20Lの上空に設定される経路である。
【0088】
第3経路L3は、第1経路L1と第2経路L2との間において任意の位置に設定される経路である。
図15では、細胞選別部23とその前方の蓋部材の置き場スペース20Lとの間に第3経路L3が設定されている例を示しているが、第3経路L3は、他の作業部上、若しくは二つの作業部間において設定され得る。
【0089】
本実施形態では、チップ廃棄部28だけが他の作業部に対して前方にずれた位置に配置されている。このため、ヘッドユニット30は、第1経路L1及び第2経路L2の左端とチップ廃棄部28との間においては前後方向及び左右方向の双方に移動する斜行経路L11、L21を移動する。
図15では斜行経路L11、L21を単純に斜線矢印で示しているが、実際の斜行経路L11、L21は、前後方向の移動と左右方向の移動とが順次行われる階段状の経路、若しくは、右端(第2端部D12)まで第1経路L1又は第2経路L2の延長線上を移動した後、前方又は後方に移動するL字型の経路に設定され得る。
【0090】
照明ユニット40の左右方向の移動経路は、第1経路L1上である。照明ユニット40は、第1経路L1上で、上述の移動範囲D3内で左右方向に移動する。照明ユニット40は、前後方向に比較的短い範囲で移動できるが、第1経路L1を基軸として微小範囲で前後方向に移動し得るものであり、第2経路L2上を移動することはできない。カメラユニット50の左右方向の移動経路は、第1経路L1に対応して基台12の下方に設定される経路である。この経路上を、カメラユニット50は、上述の移動範囲D5内で左右方向に移動する。同様に、カメラユニット50は、第1経路L1に対応する前記経路を基軸として微小範囲で前後方向に移動し得る。
【0091】
軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、ヘッド33及びシリンダチップ70を用いて細胞凝集塊を細胞選別部23と細胞移載部26との間において移動させる作業を含む、細胞移動ライン20の複数の作業部での作業のため、ヘッドユニット30を第1経路上で移動させる。また、軸制御部162は、照明ユニット駆動装置40M及びカメラユニット駆動装置50Mを制御して、細胞選別部23及び細胞移載部26における細胞凝集塊の撮像のため、照明ユニット40及びカメラユニット50を、第1経路L1上において細胞選別部23と細胞移載部26との間で移動させる。さらに、軸制御部162は、第1経路L1上においてヘッドユニット30と照明ユニット40とが干渉する場合に、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、ヘッドユニット30を第3経路L3に沿って前方に移動させると共に、第2経路L2上において該ヘッドユニット30を左右方向に移動させる制御を行う。
【0092】
ヘッドユニット駆動装置30Mは、細胞移動ライン20の後方側(−Y)に配置されている。スライダアーム38(スライダ)は、
図3に示すように、第1Xスライダ35に対して前方に延び出す。このようなスライダアーム38の前方への進行方向の上流側に第1経路L1が、下流側に第2経路L2がそれぞれ設定されている。軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御することで、少なくともスライダアーム38を、ヘッドユニット30が第1経路L1に対して位置合わせされる後方位置(第1位置)と、ヘッドユニット30が第2経路L2に対して位置合わせされる前方位置(第2位置)との間で移動させる。照明ユニット40は、スライダアーム38が前記前方位置の状態のとき、ヘッドユニット30と干渉することなく第1経路L1上を移動することができる。
【0093】
図14で説明した通り、照明ユニット40の左右方向の移動範囲D3は、ヘッドユニット30の左右方向の移動範囲D1の内側にある。つまり、ヘッドユニット30が第1経路L1上において少なくとも第1端部D11又は第2端部D12に存在している状態においては、照明ユニット40が第1経路L1上を移動してもヘッドユニット30と干渉しない位置に、第3端部D31及び第4端部D32が設定されている。本実施形態では、ヘッドユニット30が第1経路L1(斜行経路L11を含む)上において、分注チップストック部22、対象物ストック部21、チップストック部24若しくはチップ廃棄部28に存在している状態においては、照明ユニット40が第1経路L1上の如何なる位置に存在していても、両者は互いに干渉しない。
【0094】
逆に、ヘッドユニット30が第1経路L1上において上記以外の作業部に存在すると、ヘッドユニット30と照明ユニット40とは互いに干渉する。この場合に軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、ヘッドユニット30を第2経路L2上に退避させる。そして軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30M及び照明ユニット駆動装置40Mを制御して、照明ユニット40を第1経路L1に沿って左右方向に移動させる一方で、ヘッドユニット30を第2経路L2に沿って左右方向に移動させることで、両者をすれ違わせ、各々を所期の作業部へ効率的に移動させる。以下、このような制御の具体例を説明する。
【0095】
制御部16が移動装置1の装置本体10に実行させる動作(作業)は、大別すると、分注チップ80を用いた細胞培養液の分注動作と、シリンダチップ70を用いた細胞移動動作とである。前記分注動作は、順次行われる次の作業ステップ1〜5を含む。
[作業ステップ1]ヘッドユニット30を分注チップストック部22上に移動させ、ヘッド部32の第1ノズル321に分注チップ80を装着させる。
[作業ステップ2]ヘッドユニット30を対象物ストック部21上に移動させ、チューブ212に貯留された、細胞凝集塊を含む細胞培養液を所定の分注量だけ分注チップ80内に吸引させる。
[作業ステップ3]ヘッドユニット30を細胞選別部23上に移動させ、分注チップ80内の前記細胞培養液をディッシュ60に吐出させる。
[作業ステップ4]照明ユニット40及びカメラユニット50を細胞選別部23の上方及び下方に移動させ、前記細胞培養液が分注されたディッシュ60を撮像させる。
[作業ステップ5]ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させ、使用済みの分注チップ80を第1ノズル321から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。
【0096】
前記細胞移動動作は、次の作業ステップ6〜11を含む。
[作業ステップ6]ヘッドユニット30をチップストック部24上に移動させ、ヘッド33にシリンダチップ70を装着させる。
[作業ステップ7]ヘッドユニット30及びカメラユニット50をチップ撮像部25の上方及び下方に移動させ、ヘッド33に装着されたシリンダチップ70を撮像し、得られた画像からシリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置を求める。
[作業ステップ8]ヘッドユニット30を細胞選別部23上に移動させ、ディッシュ60に貯留された細胞凝集塊をシリンダチップ70内に吸引させる。
[作業ステップ9]ヘッドユニット30を細胞移載部26上に移動させ、各シリンダチップ70内の細胞凝集塊をマイクロプレート90のウェル91にそれぞれ吐出させる。
[作業ステップ10]ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させ、使用済みのシリンダチップ70をヘッド33から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。
[作業ステップ11]照明ユニット40及びカメラユニット50を細胞移載部26の上方及び下方に移動させ、ウェル91内の細胞凝集塊を撮像する。
【0097】
以下、
図16〜
図27と、先に説明した
図14及び
図15を参照して、上記の作業ステップ1〜10が実行される際のヘッドユニット30、照明ユニット40及びカメラユニット50の位置関係について説明する。
図16は、「作業ステップ1」が実行されている状態を示す図である。
図17は、「作業ステップ1」が行われている状態における、ヘッドユニット30、照明ユニット40及びカメラユニット50の、右方向から見た側面図である。
【0098】
「作業ステップ1」において軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、ヘッドユニット30を第1経路L1上において、移動範囲D1の第1端部D11(−Xリミット)付近に移動させる。また、軸制御部162は、照明ユニット駆動装置40Mを制御して、照明ユニット40を第1経路L1上において、移動範囲D3の第4端部D32(+Xリミット)へ移動させる。さらに軸制御部162は、カメラユニット駆動装置50Mを制御して、カメラユニット50を照明ユニット40に追従させて、移動範囲D5の第6端部D52(+Xリミット)へ移動させる。「作業ステップ1」においては、ヘッドユニット30と照明ユニット40とはいずれも第1経路L1上にあるので、
図17に示すように、側面視では完全に重複する位置関係となる。しかし、両者は左右方向において離間した位置に配置されているので、互いに干渉しない。
【0099】
「作業ステップ1」では、軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、分注チップストック部22上にヘッドユニット30を位置決めさせた後、ヘッド駆動装置17を制御して、ヘッド部32の第1ノズル321を下降させ、第1ノズル321の下端に分注チップ80を装着させる。具体的な動作は、先に
図11(A)及び
図11(B)にて説明した通りである。このとき、照明ユニット40及びカメラユニット50は休止状態である。
【0100】
「作業ステップ2」が行われる際には、軸制御部162は、ヘッドユニット30を、
図16の状態から右方へ移動させ対象物ストック部21上に停止させる。この停止位置は、第1ノズル321がチューブ212の上面開口の真上となる位置である。次いで、軸制御部162はヘッド駆動装置17を制御して、第1ノズル321を降下させ、分注チップ80の下端部82(
図11(C))を、チューブ212に貯留されている細胞凝集塊を含む細胞培養液に浸漬させる。そして、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17をさらに制御して、第1ノズル321に吸引力を発生させ、チューブ212内の細胞培養液を所定の分注量だけ分注チップ80に吸引させる。その後、第1ノズル321は上昇される。
【0101】
「作業ステップ3」が行われる際には、軸制御部162は、第1ノズル321が細胞選別部23のディッシュ60上に位置するよう、ヘッドユニット30をさらに右方に移動させる。このヘッドユニット30の移動の際、第1経路L1を単に右方に移動させても良いが、チップストック部24の上空を迂回するルートを取らせても良い。この場合、ヘッドユニット30を第1経路L1上から第2経路L2へ向かわせ、第2経路L2上を右方向に細胞選別部23の対応位置まで移動させた後、第3経路L3を後方向に移動させるというルートを取らせる。これにより、細胞培養液を吸引している分注チップ80からのチップストック部24への液垂れを回避することができる。しかる後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、第1ノズル321をディッシュ60に向けて降下させ、さらに第1ノズル321に吐出力を発生させ、分注チップ80内の細胞培養液をディッシュ60に吐出させる。その後、第1ノズル321は上昇される。これら「作業ステップ2」及び「作業ステップ3」が行われる際にも、照明ユニット40及びカメラユニット50は
図16と同位置で休止状態となる。
【0102】
「作業ステップ4」が行われる際には、軸制御部162は、
図18に示すようにヘッドユニット30を細胞選別部23上から前方向に移動させ、第2経路L2上へ退避させる。また、軸制御部162は、照明ユニット駆動装置40M及びカメラユニット駆動装置50Mを制御して、照明ユニット40及びカメラユニット50を第1経路L1上において、細胞選別部23の配置位置へ移動させる。
図18の状態における各ユニット30、40、50の側面視の位置関係は、
図3に示す通りとなる。このようなヘッドユニット30の退避動作により、ヘッドユニット30とカメラユニット50とが左右方向において同位置にありながら、両者の干渉を回避することができる。
【0103】
「作業ステップ4」では、ウェルプレート61(
図6)上における細胞凝集塊の担持状況を確認するために、ディッシュ60(ウェルプレート61)の画像が取得される。当該画像は、照明制御部163及びカメラ制御部164の制御下で、照明ユニット40が透過照明を発し、カメラ51がウェルプレート61を撮像する。この撮像の際、軸制御部162は、必要に応じて移動範囲D4、D6の範囲で照明ユニット40及びカメラユニット50を前後方向に移動させる。
【0104】
そして、画像処理部155により撮影画像に対する画像処理が実行され、その画像に基づいて、各凹部61Cに所望の通り細胞凝集塊が良好に担持されているか否かが確認される。これは、所定の条件(大きさ、形状等)を満たす細胞凝集塊が、ウェルプレート61のどの位置に存在するか(どの凹部61Cに担持されているか)を確認するためのプロセスである。良好な担持状態が確認されたら、「作業ステップ5」の分注チップ80の廃棄作業が実行される。この「作業ステップ5」が実行される際の各ユニット30、40、50の配置については後述する。なお、担持状態が不良であったなら、再度の前記細胞懸濁液の分注、或いはディッシュ60に振動を与える等の手段が取られる。
【0105】
次に、細胞移動動作の「作業ステップ6」が行われる際には、軸制御部162は、ヘッドユニット30をチップストック部24上に移動させる。このとき、軸制御部162は、照明ユニット40及びカメラユニット50を、
図16の図例と同様に、第4端部D32及び第6端部D52(+Xリミット)へ移動させる。その後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、ヘッド部32のヘッド33を下降させ、ヘッドの下端にシリンダチップ70を装着させる。具体的な動作は、先に
図9に基づき説明した通りである。
【0106】
「作業ステップ7」が行われる際には、軸制御部162は、ヘッドユニット駆動装置30Mを制御して、
図19に示すようにチップ撮像部25上にヘッドユニット30を移動させる。また、軸制御部162は、カメラユニット駆動装置50Mを制御して、カメラユニット50をチップ撮像部25の直下、つまり第5端部D51(−Xリミット)付近へ移動させる。照明ユニット40は、細胞移載部26の上空に移動され、位置決めされる。その後、軸制御部162は、撮像対象となるシリンダチップ70Aが装着された1のヘッド33を下降させる。また、カメラ制御部164は、カメラ51にシリンダチップ70Aの画像を撮像させる。このとき、照明制御部163は、シリンダチップ70Aの照明用に前記落射照明器を点灯させる(又は、チップ撮像部25内に組み付けられたLED照明具が点灯される)。
【0107】
具体的には、シリンダチップ70を撮影可能範囲まで下降させた後、ヘッド33を一定ピッチ、例えば10μmずつ下降させ、その度にカメラ51でシリンダチップ70Aの撮像を行わせる。この際、プランジャ72の先端部724(
図9)と、吸引口71Tとが揃うように、プランジャ本体部722がシリンジ本体部712に深く挿通された状態とされる。これは、一般に当該状態が細胞凝集塊の吸引を開始する状態であり、プランジャ本体部722の挿通状態によって、吸引口71Tの位置ズレが生じるからである。なお、細胞凝集塊を損傷しないように、細胞培養液中にシリンダチップ70を浸漬後であって吸引を開始する前に、プランジャ72の先端部724を吸引口71Tより僅かに上昇させる場合がある。これらの撮像で得られた複数枚の画像のうち、最もコントラストが高い画像を合焦画像として選択し、当該合焦画像が得られたときの焦点位置情報から吸引口71TのZ座標位置が求められる。また、前記合焦画像に対する画像処理によって、吸引口71TのXY座標位置が求められる。このXYZ座標位置と、予め定められた基準位置との差分から、ロッド331の先端に対するズレを示す補正値が導出される。他のヘッド33に装着されるシリンダチップ70についても、上記と同様な撮像動作及び補正値導出動作が行われる。
【0108】
図20は、「作業ステップ8」が行われている状態を示す。「作業ステップ8」において軸制御部162は、ヘッドユニット30をチップ撮像部25から細胞選別部23上に移動させ、一つのヘッド33がディッシュ60の所定位置と対向する位置で停止させる。この所定位置とは、上述の「作業ステップ4」におけるディッシュ60の撮像と、その後の画像処理によって得られた、吸引ターゲットとなる細胞凝集塊が収容されたウェルプレート61の、一つの凹部61Cの上空位置である。
【0109】
その後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、前記一つのヘッド33をディッシュ60に向けて下降させる。そして、
図10(A)〜(D)に基づき説明した手法にて、吸引ターゲットとなる細胞凝集塊が、細胞培養液と共にシリンダチップ70内に吸引される。しかる後、前記一つのヘッド33は上昇される。以降、残りのヘッドについても、順次同様な動作が行われる。なお、吸引効率が悪いと想定される細胞凝集塊を吸引ターゲットとする場合は、前記吸引動作後にディッシュ60の撮像が行われる。ディッシュ60に吸い残しが存在する場合は、シリンダチップ70による吸引のリトライが行われる。
【0110】
これらの動作の際に、軸制御部162は、カメラユニット駆動装置50Mを制御して、カメラユニット50を右方に移動させ、細胞移載部26の直下に位置決めさせる。なお、照明ユニット40は、既に細胞移載部26上に位置決めされている。これは、マイクロプレート90に既に細胞凝集塊が担持されている場合に行われる動作であり、マイクロプレート90における細胞凝集塊の担持状況の把握のために、カメラ51にマイクロプレート90の撮像を行わせるための動作である。照明制御部163及びカメラ制御部164の制御下で、照明ユニット40が透過照明を発し、カメラ51がマイクロプレート90を撮像する。この撮像で取得された画像に基づき、空いているウェル91が確認され、次の細胞凝集塊の移動先が認識される。或いは、当該画像に基づいて、単に細胞凝集塊がマイクロプレート90へ良好に吐出されているか否かが確認される。
【0111】
図18〜
図20に示した通り、本実施形態によれば、細胞凝集塊をシリンダチップ70で吸引させるために、第2経路L2を経由してヘッドユニット30を細胞選別部23(第1容器)に位置合わせさせる一方で、細胞移載部26での撮像のために、照明ユニット40及びカメラユニット50をマイクロプレート90(第2容器)に対して位置合わせさせるという作業を並行して実行させることができる。従って、作業効率を向上させることができる。
【0112】
図21は、「作業ステップ9」が行われている状態を示す。「作業ステップ8」の後に軸制御部162は、ヘッドユニット30を細胞選別部23上から細胞移載部26上に移動させる一方、照明ユニット40を細胞移載部26上から細胞選別部23上に移動させる。この際、軸制御部162は、ヘッドユニット30を第1経路L1上から第2経路L2へ向かうように第3経路L3上を前方向に一旦移動させ、第2経路L2上を右方向に移動させた後、後方向に移動させて細胞移載部26上で停止させる。このようにヘッドユニット30を第2経路L2に迂回させている間に、軸制御部162は、照明ユニット40を第1経路L1上において左方に移動させ、細胞選別部23上で停止させる。このように、共に基台12の上方に配置されているヘッドユニット30と照明ユニット40とが、互いにすれ違うように移動されるので、両者を干渉させることなく、また、一方が他方の移動待ちとなるということもない。なお、照明ユニット40を移動させるタイミングで、軸制御部162は、カメラユニット50も細胞選別部23の直下に移動させる。
【0113】
その後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、ヘッド部32の8本のヘッド33をマイクロプレート90に向けて一斉に下降させる。そして、
図10(E)に基づいて説明した手法にて、各シリンダチップ70内の細胞凝集塊を、一斉に各ウェル91に吐出させる。勿論、一斉ではなく、シリンダチップ70の一本ずつから、順次細胞凝集塊を吐出させるようにしても良い。他方で、照明制御部163及びカメラ制御部164の制御下で、照明ユニット40が透過照明を発し、カメラ51がウェルプレート61を撮像する。これにより、細胞選別部23に収容されている(残存している)細胞凝集塊の位置情報を取得することが可能となる。
【0114】
図22は、「作業ステップ10」が行われている状態を示す。「作業ステップ9」の後に軸制御部162は、ヘッドユニット30を細胞移載部26上からチップ廃棄部28上に移動させる。この移動の際、ヘッドユニット30は、
図15で説明した斜行経路L11上を移動する。ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上で停止させた後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、先に
図9に基づいて説明した手法で、シリンダチップ70をヘッド33から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。なお、シリンダチップ70からマイクロプレート90へ細胞凝集塊を吐出させる際、シリンダチップ70に薬品等が付着しない場合は、必ずしもこの廃棄を吐出の度に実行しなくとも良い。
【0115】
分注チップを廃棄させる「作業ステップ5」が行われるとき、軸制御部162は、ヘッドユニット30を細胞選別部23上から第3経路L3を経て第2経路L2へ移動させ、第2経路L2上を右方向に移動させた後、斜行経路L21を通してチップ廃棄部28上に移動させる。その後、軸制御部162は、ヘッド駆動装置17を制御して、先に
図10(C)及び(D)に基づいて説明した手法で、分注チップ80を第1ノズル321から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。
【0116】
図23は、「作業ステップ10」又は「作業ステップ5」が行われている状態における、ヘッドユニット30と照明ユニット40との配置関係を示す側面図である。この図では、理解を容易にするため、照明ユニット40を手前側に置いている。この状態では、ヘッドユニット30の前方への退避が不十分な状態であり、ヘッドユニット30と照明ユニット40とは互いに干渉する位置関係にある。
【0117】
図24は、「作業ステップ11」が行われている状態を示す。「作業ステップ10」の後に軸制御部162は、照明ユニット40及びカメラユニット50を細胞選別部23から細胞移載部26へ移動させる。この移動は、「作業ステップ10」が実行されている最中に行われても良い。かかる移動によって、ヘッドユニット30と照明ユニット40とは最接近する。
【0118】
図25は、
図24の状態におけるヘッドユニット30及び照明ユニット40の拡大斜視図である。既述の通り、照明ユニット40の照明ユニット本体部42は、光学フィルターの退避先となる突出部421を有する。ヘッドユニット30のハウジング300は、垂直な平面壁からなる左面壁32Lを有する。左面壁32Lの下端は、ヘッド部32の下端面までは至らず、該下端面よりも上方の中間下端面32Bまでしか延びていない。従って、ヘッドユニット30の左下端付近には、収容空間が存在する。
【0119】
照明ユニット本体部42のハウジング401は、垂直な平面壁からなる右面壁402を有する。右側の突出部421は、この右面壁402の下端から右方に突出している。中間下端面32Bに右側の突出部421の上面が近接する態様で、当該突出部421は前記収容空間に入り込んでいる。但し、この入り込み位置は、突出部421の右側面が吸盤ヘッド323と干渉しない位置までである。これにより、左面壁32Lと右面壁402との間の距離dを小さくすることができ、ヘッドユニット30と突出部421を有する照明ユニット40とを近接させながらも、両者が干渉しないようにすることができる。これにより、移動装置1のコンパクト化が図れると共に、互いに隣接する細胞移載部26とチップ廃棄部28とにおいて、照明ユニット40とヘッドユニット30とに各々の作業を行わせることができる。
【0120】
「作業ステップ11」では、細胞凝集塊の吐出の成否を確認するために、マイクロプレート90の撮像が行われる。照明制御部163及びカメラ制御部164の制御下で、カメラ51がマイクロプレート90の画像を撮像する。撮影された画像は、画像処理部165にて画像処理が施され、モニター167に表示される。吐出ターゲットとしたマイクロプレート90のウェル91に、細胞凝集塊が担持されていれば、吐出は成功である。ウェル91に細胞凝集塊が担持されていない場合、再度そのウェル91が吐出ターゲットとされる。
【0121】
図26及び
図27は、次のサイクルの細胞移動動作のための、ヘッドユニット30の移動の様子を示す図である。軸制御部162は、まずチップ廃棄部28上のヘッドユニット30を前方に移動させる(
図26)。これにより、ヘッドユニット30と照明ユニット40との側面視の位置関係は
図3に示す状態となり、両者は干渉しない状態となる。次いで軸制御部162は、ヘッドユニット30を第2経路L2に沿って左方向にチップストック部24の対応位置に向かうように移動させ(
図27)、第2経路L2上から第1経路L1へ向かうように後方向に移動させ、チップストック部24上に停止させる。そして、軸制御部162は、ヘッド33を一斉に下降させ、次の吸引動作を行うシリンダチップ70をヘッド33に装着させる。
【0122】
細胞凝集塊の蛍光観察が行われる場合には、ブラックカバー載置部27のブラックカバー271が利用される。この場合、軸制御部162は、ヘッドユニット30をブラックカバー載置部27上に移動させ、ヘッド駆動装置17を制御して、吸盤ヘッド323をブラックカバー271に向けて下降させる。吸盤ヘッド323が第1ブラックカバー271の上面に当接すると、軸制御部162は、第2ノズル322に吸引力を発生させ、ブラックカバー271を吸盤ヘッド323に吸着させる。その後、軸制御部162は、ヘッドユニット30を細胞移載部26まで移動させ、吸盤ヘッド323を下降させる。これにより、マイクロプレート90がブラックカバー271で覆われた状態とする。しかる後、軸制御部162は、第2ノズル322の吸引力を停止させ、吸盤ヘッド323によるブラックカバー271の吸着を解除させる。この状態で、カメラ制御部164は、カメラ51に、マイクロプレート90に担持されている細胞凝集塊の蛍光観察を実行させる。この際、カメラユニット50に搭載されている図略の蛍光照明が点灯される。観察後、上記と逆の手順で、ブラックカバー271はブラックカバー載置部27に戻される。ブラックカバー271をディッシュ60に被せる際も同様である。
【0123】
以上説明した通りの本実施形態の移動装置1によれば、カメラユニット50に追従して移動させる必要のある照明ユニット40を細胞選別部23と細胞移載部26との間に存在させつつ、第1経路L1及び第2経路L2を利用して、ヘッドユニット30を左右方向に移動させることができる。すなわち、第1経路L1上においてヘッドユニット30を移動させる際に照明ユニット40が邪魔になる場合は、ヘッドユニット30を第2経路L2に迂回させることで両者をすれ違わせることができる。従って、細胞凝集塊の移動作業効率を格段に高めることができる。
【0124】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0125】
本発明の一局面に係る対象物の移動装置は、基台と、前記基台の上方に配置され、上下方向に移動可能なヘッドを備えるヘッドユニットと、前記基台の上方に配置され、照明光を発する光源を有する照明ユニットと、前記基台の下方に配置され、前記照明光の下で画像を取得するカメラを備えるカメラユニットと、前記ヘッドユニットを、水平方向に延びる第1方向と、該第1方向と前記水平方向において直交する第2方向とに移動させる第1駆動機構と、前記照明ユニットを、前記第1方向に移動させる第2駆動機構と、前記カメラユニットを、前記第1方向に移動させる第3駆動機構と、前記第1、第2及び第3駆動機構の動作を制御する制御部と、複数の作業部を備え、これら作業部が前記基台に対して前記第1方向に並べられて組み付けられてなり、前記複数の作業部が、移動対象物を貯留する第1容器と、前記移動対象物を受け入れる第2容器とを含む移動ラインと、を備え、前記制御部は、前記第1駆動機構を制御して、前記ヘッドを用いて前記移動対象物を前記第1容器と前記第2容器との間において移動させる作業を含む前記複数の作業部での作業のため、前記ヘッドユニットを前記移動ラインに沿った第1経路上で移動させ、前記第2及び第3駆動機構を制御して、前記第1容器及び第2容器の撮像のため、前記照明ユニット及び前記カメラユニットを、前記第1経路上において前記第1容器と前記第2容器との間で移動させ、さらに、前記第1経路上において前記ヘッドユニットと前記照明ユニットとが干渉する場合に、前記第1駆動機構を制御して、前記ヘッドユニットを前記第2方向に移動させると共に、前記第1経路と並ぶ第2経路上において該ヘッドユニットを前記第1方向に移動させる制御を行う。
【0126】
この移動装置によれば、共に基台の上方に配置されるヘッドユニットと照明ユニッとについて、カメラユニットに追従して移動させる必要のある照明ユニットを第1容器と第2容器との間に存在させつつ、第1経路及び第2経路を利用して、ヘッドユニットを左右方向に移動させることができる。すなわち、第1経路上においてヘッドユニットを移動させる際に照明ユニットと干渉する場合は、ヘッドユニットを第2経路に迂回させることで両者をすれ違わせることができる。従って、対象物の移動作業効率を格段に高めることができる。
【0127】
上記の移動装置において、前記第1駆動機構は、前記第2方向に進退移動するスライダを備え、前記ヘッドユニットは前記スライダの先端に取り付けられており、前記スライダの進行方向の上流側に前記第1経路が、下流側に前記第2経路がそれぞれ配置され、前記照明ユニットは、前記スライダと前記基台との間に配置され、前記スライダは、前記ヘッドユニットを前記第1経路に対して位置合わせする第1位置と、前記ヘッドユニットを前記第2経路に対して位置合わせする第2位置との間で移動するものであり、前記照明ユニットは、前記スライダが前記第2位置の状態のとき、前記ヘッドユニットと干渉することなく前記第1経路上を移動することが望ましい。
【0128】
この移動装置によれば、前記スライダが前記第2位置の状態のとき、照明ユニットは前記スライダと前記基台との間に収まるようになる。従って、前記スライダを移動させるという簡単な制御だけで、照明ユニットをヘッドユニットと干渉することなく前記第1経路上を移動させることができる。
【0129】
上記の移動装置において、前記第1駆動機構は、前記ヘッドユニットを前記第1方向における第1端部と第2端部との間で移動させ、前記第2移動機構は、前記照明ユニットを、前記第1方向における前記第1端部より内側の第3端部と、前記第2端部よりも内側の第4端部との間で移動させ、前記ヘッドユニットが前記第1経路上において少なくとも前記第1端部又は前記第2端部に存在している状態において、前記照明ユニットが前記第1経路上を移動しても前記ヘッドユニットと干渉しない位置に、前記第3端部及び前記第4端部が設定されていることが望ましい。
【0130】
この移動装置によれば、照明ユニットの第1経路における移動範囲が、ヘッドユニットの移動範囲の内側となる。このため、ヘッドユニットは、照明ユニットが存在していない作業部間において第1経路上を自在に移動することができる。従って、ヘッドユニット及び照明ユニットにおいて、作業を同時進行することができる。
【0131】
この場合、前記移動ラインの複数の作業部は、前記ヘッドに対して装着及び取り外しが可能であり、前記移動対象物の吸引と吸引した前記移動対象物の吐出とを行うチップを、前記ヘッドに対して装着可能な状態で複数個保持するチップストック部と、前記移動対象物の前記吸引及び吐出を終え、前記ヘッドから取り外された前記チップを回収するチップ廃棄部と、をさらに含み、前記チップストック部は、前記第1端部と前記第3端部との間に配置され、前記チップ廃棄部は、前記第2端部と前記第4端部との間に配置されていることが望ましい。
【0132】
この移動装置によれば、照明ユニット及びカメラユニットによる作業と、ヘッドユニットによるチップストック部及びチップ廃棄部での作業とを同時進行させることができる。
【0133】
上記の移動装置において、前記ヘッドには、前記移動対象物の吸引と吸引した前記移動対象物の吐出とを行うチップが装着され、前記制御部は、前記第1移動機構を制御して、前記移動対象物を前記チップで吸引させるために、前記第2経路を経由して前記ヘッドユニットを前記第1容器に位置合わせさせると共に、前記第2移動機構を制御して、前記第2容器の撮像のために、前記照明ユニット及び前記カメラユニットを前記第2容器に対して位置合わせさせる制御、又は、前記第1移動機構を制御して、吸引させた前記移動対象物を前記チップから吐出させるために、前記第2経路を経由して前記ヘッドユニットを前記第2容器に位置合わせさせると共に、前記第2移動機構を制御して、前記第1容器の撮像のために、前記照明ユニット及び前記カメラユニットを前記第1容器に対して位置合わせさせる制御、のうちの少なくとも一方の制御を実行することが望ましい。
【0134】
この移動装置によれば、第2経路を経由させることでヘッドユニットと照明ユニットとをすれ違わせ、両ユニットにより各々の作業を効率的に実行させることができる。
【0135】
上記の移動装置において、前記第2駆動機構は、前記照明ユニットを前記第2方向にも移動させ、前記第3駆動機構は、前記カメラユニットを前記第2方向にも移動させることが望ましい。これにより、撮像範囲を拡張することができる。
【0136】
上記の対象物の移動装置において、複数本の前記ヘッドが前記ヘッドユニットに備えられ、前記制御部は、前記ヘッドの上下方向の移動を制御するものであって、前記複数本のヘッドを同時に動作させることが可能であることが望ましい。
【0137】
この移動装置によれば、前記複数本のヘッドを同時に動作させることにより、ヘッドを用いた様々な作業を同時実行させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0138】
以上説明した本発明によれば、カメラユニットに追従して移動させる必要のある照明ユニットを第1容器と第2容器との間に存在させつつ、第1経路及び第2経路を利用して、ヘッドユニットを第1方向に移動させることができる。すなわち、第1経路上においてヘッドユニットを第1方向に移動させる際に照明ユニットと干渉する場合には、ヘッドユニットを第2経路に迂回させることで両者をすれ違わせることができる。従って、対象物の移動作業効率を格段に高めることができる。