(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既知の流動性を有する溶融プラスチック材料のショットが前記流頭センサに到達する時間に少なくとも部分的に基づいて、前記所定時間を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
前記測定することは、前記第1の成形サイクルの開始から前記流頭センサが前記溶融プラスチック材料の前記流頭の到着を検出するまでの前記第1の時間を測定することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
前記第1の比較することは、前記第1の時間が前記所定時間を上回るか又は下回るかのいずれであるかを決定することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記第1の比較することは、第1の比較結果を決定するために前記第1の時間と前記所定時間とを比較することを含み、前記第1の比較結果は、前記第1の時間と前記所定時間との間の時間差である、請求項4に記載の方法。
前記第1の成形サイクルの間に、前記測定することは、前記溶融プラスチック材料が、変換器である前記流頭センサに到達する前記第1の時間を測定することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記第1の成形サイクルの間に、前記測定することは、前記溶融プラスチック材料が、前記流頭センサに到達する前記第1の時間を測定することを含み、前記流頭センサは、前記金型キャビティの端部から30%の範囲内に位置する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記第1の成形サイクルの間に、前記測定することは、前記溶融プラスチック材料が前記流頭センサに到達する前記第1の時間を測定することを含み、前記流頭センサは、前記金型キャビティの内部での前記溶融プラスチック材料の流頭の存在を直接感知するように構成されたセンサである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記射出成形行程におけるそれぞれの成形サイクルについて、前記所定時間を使用する比較に基づいて、そのステップ時間を自動的に調節することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記射出成形行程におけるそれぞれの成形サイクルについて、前の成形サイクルにおいて前記溶融プラスチック材料のショットが前記流頭センサに到達する時間を使用する比較結果に基づいて、そのステップ時間を自動的に調節することを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、溶融可能材料でできた部品、最も一般的には熱可塑性ポリマーでできた部品の大量生産に一般に用いられる技術である。繰返し射出成形プロセス中に、ほとんどの場合に小さいビーズ又はペレットの形をしているプラスチック樹脂が、熱、圧力、及び剪断力をかけた状態で、樹脂ビーズを溶融する射出成形機へと導入される。現在の溶融樹脂は、特定キャビティ形状を有する金型キャビティの中に強制的に射出される。射出されたプラスチックは、金型キャビティの中で圧力下で保持され、冷却され、次いで金型のキャビティ形状を本質的に複製した形状を有する固化した部品として取り出される。金型自体が、単一のキャビティ又は複数のキャビティを有し得る。それぞれのキャビティは、溶融樹脂のフローをキャビティの中に導くゲートによって流路に接続され得る。成形された部品は、1つ以上のゲートを有する場合がある。大きい部品は、成形部品を充鎮するためにポリマーが移動しなければならないフロー距離を低減するために、2つ、3つ、又はそれ以上のゲートを有することが一般的である。キャビティ毎の1つ又は複数のゲートは、部品形状上のいずれに配置されてもよく、本質的に円形などの任意の断面形状を有してもよく、又は1.1又はそれを上回るアスペクト比で形成されてもよい。したがって、典型的な射出成形プロセスは、(1)プラスチックを圧力下で流れさせるために、射出成形機の中でプラスチックを加熱すること、(2)閉じられた2つの金型半体の間に画定された単数又は複数の金型キャビティの中に溶融プラスチックを射出すること、(3)プラスチックを圧力下でキャビティの中で冷却して硬化させること、(4)金型半体を開いて部品を金型から突き出すこと、という4つの基本操作を含む。
【0003】
射出成形プロセス中、溶融プラスチック樹脂は、金型キャビティの中に射出され、プラスチック樹脂は、プラスチック樹脂がゲートから最も遠いキャビティの中の位置に達するまで射出成形機によってキャビティの中に強制的に射出される。その後、プラスチック樹脂が、端部後方からゲートに向かってキャビティを充填する。これにより得られた部品の長さ及び壁厚は、金型キャビティの形状に起因している。
【0004】
場合によっては、最終部品のプラスチック含有量を低減し、したがってコストを低減するために、射出成形部品の壁厚を低減することが望ましくあり得る。従来の圧力変動の大きい射出成形プロセスを用いて壁厚を低減することは、高価で容易でない課題であり得る。実際、従来の射出成形機(例えば、より高い圧力で溶融プラスチック樹脂を射出する機械)は、部品の薄い壁が成形され得る方法に関して実用限界を有する。一般的には、従来の射出成形機は、約200を超える薄肉比(後述のL/T比によって定義される)を有する部品を成形することができない。更に、薄肉比が100を超える薄肉部品の成形は、現在の能力の上限の圧力を必要とし、したがって、こうした高圧に対処することができるプレス機を必要とする。
【0005】
薄肉部品を充填する場合、現在の工業上の実践は、成形機が達成し得る最高速度で金型キャビティを充填する。この手法は、ポリマーが金型の中で固化又は凝固する前に、金型キャビティが充填されることを確実にする。この手法は2つの欠点を有する。第1の欠点は、非常に高速な充填速度を達成するためには、非常に大きい電源負荷が必要であり、それには非常に高価な成形機器が必要なことである。更に、ほとんどの電動プレスは、こうした高い充填速度を達成するのに十分な電力を提供することができないか、又は、非常に複雑で高価な駆動システムを必要とし、成形機器の価格を実質的に増大させて、経済的に実現困難なものとする。
【0006】
第2の欠点は、高い充填速度は非常に高い圧力を必要とすることである。こうした高い圧力は、金型を閉じた状態に保持するために非常に強い型締力の必要性をもたらし、こうした強い型締力は成形機器を非常に高価なものとする。高い圧力は、また、非常に高強度の材料、典型的には硬化工具鋼でできた射出成形コアを必要とする。こうした高強度の金型は非常に高価でもあり、多くの成形品にとって経済的でも実用的でもあり得ない。たとえこうした事実上の欠点があったとしても、薄肉射出成形構成部品に対する必要性は依然として高く、その理由は、これら構成部品は成形部品を作製するためのポリマー材料の使用量を抑え、その結果、より高い機器費用を補って余りある材料上の節約となるからである。更に、一部の成形構成部品は、例えば、屈曲する必要がある設計要素又は他の設計要素の非常に小さい特徴と嵌合する必要がある設計要素といった、適切に機能するための非常に薄い設計要素を必要とする。
【0007】
液状プラスチック樹脂が、従来の射出成形プロセスにおいて射出成形金型の中に導入されると、キャビティの壁に隣接した材料は、直ちに「凝固」若しくは固結又は硬化し始め、あるいは結晶性ポリマーの場合には、プラスチック樹脂は結晶化し始めるが、その理由は、液状プラスチック樹脂が材料のノーフロー温度を下回る温度まで冷却し、液状プラスチックの一部が動かなくなるからである。金型の壁に隣接したこの凝固した材料は、熱可塑性樹脂が金型キャビティの端部に向かうにつれて、それが移動する流路を狭める。金型の壁に隣接した凝固材料層の厚さは、金型キャビティの充填が進むにつれて増加し、これが、金型キャビティを充填し続けるためにポリマーがそこを通って流れる必要がある断面積を漸減させる原因となる。材料が凝固するにつれて、材料も縮み、金型キャビティの壁から離れ、これが、金型キャビティの壁によって材料を冷却する効果を低下させる。その結果、従来の射出成形機は、非常に急速に金型キャビティをプラスチックで充填し、次に、金型キャビティの側面に対して材料を外側に押し付けるための填塞圧力を維持することにより、冷却を促進しかつ成形部品の正しい形状を維持する。従来の射出成形機は、典型的には、約10%の射出時間、約50%の填塞時間、及び約40%の冷却時間から成るサイクル時間を有する。
【0008】
プラスチックが金型の中で凝固するにつれて、従来の射出成形機は、(流れ断面積が小さくなるので、実質的に一定の体積流量を維持するために)射出圧力を高める。しかしながら、圧力を高めると、コストと性能の両方が低下する。構成要素を成形するのに必要とされる圧力が高くなると、成形機は、追加圧力に耐えられるほど十分に頑強でなければならないので、概してより高価になる。製造者は、こうした高い圧力に適応するために新しい設備を購入しなければならないことがある。したがって、所定の部品の壁厚を薄くすると、従来の射出成形技術による製造を達成するためのかなりの設備投資をもたらし得る。
【0009】
上述の欠点のいくつかを回避するために、多くの従来の射出成形操作は、剪断減粘性プラスチック材料を使用して、金型キャビティの中に入るプラスチック材料の流動特性を改善する。剪断減粘性プラスチック材料が金型キャビティの中に射出されると、プラスチック材料と金型キャビティの壁との間に生成される剪断力は、プラスチック材料の粘度を低減する傾向があり、それによって、プラスチック材料はより自由かつ容易に金型キャビティの中に流れ込むことが可能となる。結果として、十分に速く薄肉部を充填することが可能であることにより、金型が完全に充填される前に材料が完全に凝固することを回避する。
【0010】
粘度の低下は、プラスチック材料と供給システムとの間、及びプラスチック材料と金型キャビティ壁との間に生成される剪断力の大きさに直接関連する。したがって、こうした剪断減粘性材料の製造者及び射出成形システムのオペレータは、剪断力を増大させるため、したがって粘度を低減するために、射出成形圧力をより大きくしてきた。典型的には、高出力射出成形システム(例えば、クラス101及びクラス30のシステム)は、プラスチック材料を、典型的には103MPa(15,000psi)又はそれ以上の溶融圧力で、金型キャビティの中に射出する。剪断減粘性プラスチック材料の製造者は、射出成形機のオペレータに、最低溶融圧力超でプラスチック材料を金型キャビティの中に射出するように教示する。例えば、ポリプロピレン樹脂は、典型的には、41MPa(6,000psi)を上回る圧力で処理される(ポリプロピレン樹脂製造者からの推奨範囲は、典型的には、41MPa超〜約103MPa(6,000psi〜約15,000psi)までである)。プレス機械製造者及びプレス加工技術者は、典型的には103MPa(15,000psi)を超える可能な最大剪断減粘性を達成するための範囲の上限、又はそれより有意に高いところで剪断減粘性ポリマーを処理することにより、プラスチック材料から最大の減粘及びより良好な流動特性を引き出すことを典型的に推奨する。剪断減粘性熱可塑性ポリマーは、概して、41MPa超〜約207MPa(6,000psi〜約30,000psi)の範囲において処理される。剪断減粘性プラスチックを使用したとしても、薄肉部品の圧力変動の大きい射出成形には実際的な限界が存在する。この限界は、現在のところ、200以上の薄肉比を有する薄肉部品の範囲にある。更に、100〜200の薄肉比を有する部品でさえ、こうした部品は、概して約103MPa〜約138MPa(約15,000psi〜約20,000psi)の射出圧力を必要とするので、桁違いの費用がかかり得る。
【0011】
薄肉の消費者製品を製造する高生産射出成形機(即ち、クラス101及びクラス30の成形機)はもっぱら、金型の大部分が高硬度材料でできた金型を使用する。高生産射出成形機は、典型的には、年間500,000サイクル以上を経験する。工業品質の製造金型は、年間少なくとも500,000サイクル、好ましくは年間1,000,000サイクル超、より好ましくは年間5,000,000サイクル超、更により好ましくは年間10,000,000サイクル超に耐えるように設計されなければならない。こうした機械は、生産率を上げるために、複数キャビティ金型と複合冷却システムとを有する。高硬度材料は、硬度のより低い材料よりも、繰り返される高圧型締動作により耐えることができる。しかしながら、ほとんどの工具鋼のような高硬度材料は、概して0.3W/cm℃(20BTU/HR FT °F)未満の比較的低い熱伝導率を有し、それは、熱が溶融プラスチック材料から高硬度材料を通して伝達される際に、長い冷却時間をもたらす。
【0012】
既存の圧力変動の大きい射出成形機の射出圧力範囲がますます上昇しても、従来の圧力変動の大きい(例えば、138MPa(20,000psi))射出成形機の中で薄肉部品を成形することに対する実際的な限界は、約200(L/T比)のままであり、約100〜約200の薄肉比を有する薄肉部品は、多くの製造者にとって桁違いの費用がかかるものであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、概して、射出成形によるシステム、機械、製品、及び製品を製造するための方法に関し、より詳細には、低く実質的に一定の圧力の射出成形によるシステム、製品、及び製品を製造するための方法に関する。しかし、本明細書に記載された溶融プラスチック材料の粘度変化を考慮する方法及び装置は、低く実質的に一定の圧力の射出成形機に限定されない。むしろ、溶融プラスチック材料の粘度変化を考慮する開示の装置及び方法は、任意の射出成形機又はプロセスに仮想的に取り入れられ得、そのプロセスは、高圧プロセス、低圧プロセス、可変圧プロセス、一定又は実質的に一定の圧力プロセスを含むが、これらに限定されない。熱可塑性材料の溶融圧力に関して本明細書で用いる用語「低い圧力」とは、103MPa(15,000psi)以下の射出成形機のノズル付近の溶融圧力を意味する。
【0016】
熱可塑性材料の溶融圧力に関して本明細書で用いる用語「実質的に一定の圧力」とは、基線溶融圧からの偏差が、熱可塑性材料の物理的特性における重要な変化を生じさせないことを意味する。例えば、「実質的に一定の圧力」としては、溶融熱可塑性材料の粘度が有意に変化することがない圧力変動が挙げられるが、これに限定されない。この点に関して、用語「実質的に一定」とは、基線溶融圧からの約30%の偏差を含む。例えば、用語「約32MPa(4600psi)の実質的に一定の圧力」とは、約41MPa(6000psi)(32MPa(4600psi)よりも30%高い)〜約22MPa(3200psi)(32MPa(4600psi)よりも30%低い)の範囲内の圧力変動を含む。溶融圧力が、前述の圧力から30%以下の範囲で変動する限りにおいて、実質的に一定であると考えられる。
【0017】
用語「融液保持容器」は、本明細書で使用するとき、機械ノズルと流体連通した、溶融プラスチックを含有している射出成形機の一部分を指す。融液保持容器は、ポリマーが所望の温度で調製されて保持され得るように、加熱される。融液保持容器は、中央制御装置と連通した電源、例えば、油圧シリンダ又は電動サーボモータに接続され、機械ノズルを通して溶融プラスチックを押し進めるために隔膜を前進させるように制御され得る。次に、溶融材料は、ランナーシステムを通って金型キャビティの中に流れ込む。融液保持容器は、断面が円筒形であってもよく、又は0.7MPaという低い圧力から276MPa以上(100psiから40,000psi以上)の圧力の範囲にあり得る圧力下で、隔膜がポリマーを機械ノズルを通して押し進めることを可能にする代替の断面を有してもよい。隔膜は、随意に、射出前にポリマー材料を可塑化するように設計されたフライトを有する往復スクリューに一体的に接続されてもよい。
【0018】
用語「高L/T比」は、概して、100以上のL/T比、より特定すると200以上で1,000未満のL/T比を指す。L/T比の計算は以下に定義される。
【0019】
用語「ピーク流量」は、一般に、機械ノズルで測定された最大体積流量を指す。
【0020】
用語「ピーク射出速度」は、一般に、ポリマーを供給システムの中に押し進めるプロセスにおいて射出ラムが移動する最大線速度を指す。ラムは、一段階射出システムの場合などでは往復スクリューであり得、二段階射出システムの場合などでは水圧ラムであり得る。
【0021】
用語「ラム速度」は、一般に、ポリマーを供給システムの中に押し進めるプロセスにおいて射出ラムが移動する線速度を指す。
【0022】
用語「流量」は、一般に、機械ノズルで測定されたポリマーの体積流量を指す。この流量は、ラム速度及びラム断面積に基づいて計算するか、又は機械ノズル内に位置する好適なセンサを用いて測定することができる。
【0023】
用語「キャビティ充填百分率」は、一般に、充填されたキャビティの容積積基準に対する百分率を指す。例えば、キャビティが95%充填された場合には、充填された金型キャビティの総容積は、金型キャビティの総容積の95%である。
【0024】
用語「溶融温度」は、一般に、融液保持容器の中に保持されているポリマーの温度、及び、ポリマーを溶融状態に保つホットランナーシステムを使用する場合には、材料供給システムの中に保持されているポリマーの温度を指す。溶融温度は材料によって異なるが、望ましい溶融温度は、一般に、材料製造業者が推奨する範囲内であると理解される。
【0025】
用語「ゲートサイズ」は、一般に、ランナーと金型キャビティの交差により形成されるゲートの断面積を指す。ホットランナーシステムでは、ゲートは、ゲートにおいて材料の流れのポジティブな遮断のない開放設計か、又はゲートを通って金型キャビティに入る材料の流れを機械的に遮断するために弁棒を使用する閉鎖設計(一般に弁ゲートと呼ばれる)のものであり得る。ゲートサイズは、断面積を指し、例えば、1mmのゲート径は、ゲートが金型キャビティと交わる地点において1mmの直径を有するゲートの断面積に等価であるゲートの断面積を指す。ゲートの断面は、任意の所望の形状であってもよい。
【0026】
用語「有効ゲート面積」は、一般的に、金型キャビティと、金型キャビティに熱可塑性材料を供給する供給システム(例えば、ランナー)の材料流路との交差部に対応するゲートの断面積を指す。ゲートは加熱しても、加熱しなくてもよい。ゲートは、金型キャビティの中への望ましい熱可塑性流れを達成することに好適な円形又は任意の断面形状であってよい。
【0027】
用語「増圧比」は、一般に、機械ノズルを通して溶融ポリマーを押し進める射出ラムに対して射出源が有する機械的利益を指す。油圧源については、油圧ピスンは、射出ラムに対して10:1の機械的利益を有するのが一般的である。しかしながら、機械的利益は、2:1などの大幅に低い比から、50:1などの大幅に高い機械的利益比まで様々であり得る。
【0028】
用語「ピーク電力」は、一般に、金型キャビティを充填する際に生成される最大電力を指す。ピーク電力は、充填サイクルのどの時点であっても生じ得る。ピーク電力は、機械ノズルで測定されたプラスチック圧の積に、機械ノズルで測定された流量を乗じることによって決定される。電力は、式:P=p
*Q(式中、pは圧力であり、Qは体積流量である)で計算される。
【0029】
用語「体積流量」は、一般に、機械ノズルで測定された流量を指す。この流量は、ラム速度及びラム断面積に基づいて計算するか、又は機械ノズル内に位置する好適なセンサを用いて測定することができる。
【0030】
用語「充填された」及び「満タン状態」は、熱可塑性材料を含む金型キャビティに関して用いる場合、同じ意味で用いられ、共に、熱可塑性材料が金型キャビティに流れ込むのを中止したことを意味する。
【0031】
用語「射出能力(shot size)」は、一般に、金型キャビティを完全に充填するために融液保持容器から射出されるポリマーの体積を指す。射出能力の体積は、射出直前の融液保持容器中のポリマーの温度及び圧力に基づいて決定される。言い換えると、射出能力は、所与の温度及び圧力において射出成形ラムの1ストロークで射出される溶融プラスチック材料の総体積である。射出能力は、溶融プラスチック材料を1つ以上のゲートを介して1つ以上の射出キャビティの中に射出することを含み得る。溶融プラスチック材料のショットはまた、1つ以上の融液保持容器によって準備されて射出されてもよい。
【0032】
用語「ヘジテーション」は、一般に、ポリマーの一部がそのノーフロー温度未満に低下して凝固し始めるのに十分なだけ、流頭の速度が最小化される時点を指す。
【0033】
用語「電動モータ」及び「電動プレス」は、本明細書において使用される場合、電動サーボモータ及び電動のリニアモータの両方を包含する。
【0034】
用語「ピーク電力流動係数」は、1回の射出成形サイクル中に射出成形システムが必要とするピーク電力の正規化測定値を指し、このピーク電力流動係数を使用して、異なる射出成形システムの所要電力を直接比較することができる。ピーク電力流動係数は、最大成形圧力積に(本明細書において定義される)充填サイクル中の流量を乗じたものと一致するピーク電力を最初に決定し、次に、充填される金型キャビティの射出能力を決定することによって計算される。続いて、ピーク電力を射出能力で除してピーク電力流動係数を計算する。
【0035】
用語「低定圧射出成形機」は、103MPa(15,000psi)未満である実質的に一定の射出圧力を使用するクラス101又はクラス30の射出成形機として定義される。あるいは、用語「低定圧射出成形機」は、103MPa(15,000psi)未満である実質的に一定の射出圧力を使用し、金型コア(金型キャビティがその間に形成されている第1の金型部品と第2の金型部品とからできている)がその耐用年数の終了に達する前に、100万サイクル超、好ましくは125万サイクル超、より好ましくは200万サイクル超、更に好ましくは500万サイクル超、更に好ましくは1,000万サイクル超を実行する能力を有する射出成形機として定義され得る。「低定圧射出成形機」の特徴としては、100超の(好ましくは、200超の)L/T比を有する金型キャビティと、複数の金型キャビティ(好ましくは4個の金型キャビティ、より好ましくは16個の金型キャビティ、より好ましくは32個の金型キャビティ、より好ましくは64個の金型キャビティ、より好ましくは128個の金型キャビティ、及びより好ましくは256個の金型キャビティ、又は4個〜512個の間の任意の数の金型キャビティ)、加熱ランナー、及び誘導突き出しメカニズムが挙げられる。
【0036】
用語「耐用年数」は、故障又は予定の交換までの金型部品の予想寿命として定義される。金型部品又は金型コア(又は金型キャビティを画定する金型の任意の部品)とともに使用されるとき、用語「耐用年数」は、金型部品に品質問題が発生するまで、金型部品の一体性に問題が発生するまで(例えば、かじりきず、分割線の変形、遮断面の変形又は過度の摩耗)、又は、金型部品に機械的故障(例えば、疲労故障又は疲労亀裂)が発生するまで、金型部品又は金型コアが稼働すると予想される時間を意味する。典型的には、金型部品は、金型キャビティを形成する接触面が廃棄又は交換されなければならない時に、「耐用年数」の終了に到達する。金型部品は、一部の金型部品の「耐用年数」までに随時、修理又は改修を必要とすることがあり、この修理又は改修は、許容される成形部品品質及び成形効率を実現するために金型部品の完全な交換を必要としない。更に、部品が金型から正しく取り外されなかったり、金型が突き出し部品の上に無理に閉されたり、オペレータが間違った工具を使用して成形部品を取り外したり、金型構成要素を破損するなど、金型部品の通常の動作とは関係しない金型部品の損傷が発生する可能性がある。このため、金型部品がその耐用年数の終了に到達する前に、損傷した構成要素を交換するために予備の金型部品が使用されることが時々ある。損傷のために金型部品を交換しても、予想される耐用年数は変わらない。
【0037】
用語「誘導突き出しメカニズム」は、金型キャビティから成形部品を物理的に突き出すために起動する動的部品として定義される。
【0038】
用語「コーティング」は、金型キャビティを画定する金型部品の表面に配置された、厚さが0.13mm(0.005インチ)未満の材料の層であって、金型キャビティの形状を画定する以外の主要な機能(例えば、金型キャビティを画定する材料を保護する機能、成形部品と金型キャビティ壁との間の摩擦を低減して成形部品が金型キャビティから離れやすくする機能)を有する材料の層として定義される。
【0039】
用語「平均熱伝導率」は、金型キャビティ又は金型側方部若しくは金型部品を形成する任意の材料の熱伝導率として定義される。金型キャビティと一体であるか、金型キャビティから分離されているかに係らず、コーティング、積層板、支持板、ゲート、又はランナーを形成する材料は、平均熱伝導率の対象に含まれていない。平均熱伝導率は、加重容積単位で計算される。
【0040】
用語「有効冷却表面」は、熱が金型部品から除去される表面として定義される。有効冷却表面の1つの例は、能動冷却システムからの冷却流体の流路を形成する表面である。有効冷却表面の別の例は、熱が大気中に消散する時に通過する金型部品の外面である。金型部品は、2つ以上の有効冷却表面を有することがあり、したがって、金型キャビティ表面と各有効冷却表面との間に独特な平均熱伝導率を有し得る。
【0041】
用語「公称肉厚」は、金型キャビティが均一な厚さを有するように製作されている場合の、金型キャビティの理論的な厚さとして定義される。公称肉厚は、平均肉厚によって近似され得る。公称肉厚は、個別のゲートによって充填される金型キャビティの長さと幅を積分することによって計算され得る。
【0042】
用語「平均硬度」は、望ましい容積の任意の材料又は材料の組み合わせのロックウェル硬さとして定義される。2つ以上の材料が存在する場合、平均硬度は、各材料の加重容積パーセンテージに基づく。平均硬度の計算は、金型キャビティの任意の部分を構成する材料の硬度を含む。平均硬さの計算は、コーティング、積層板、金型キャビティと一体であるなしに関係のないゲート又はランナー、及び支持板を構成する材料を対象としない。一般的に、平均硬度は、金型冷却領域における材料の加重容積硬度を指す。
【0043】
用語「金型冷却領域」は、金型キャビティ表面と有効冷却表面との間に存在する材料の容積として定義される。
【0044】
用語「サイクル時間」又は「射出成形サイクル」は、射出成形部品を完全に成形するために必要である単一繰返しの射出成形プロセスとして定義される。サイクル時間又は射出成形サイクルは、溶融熱可塑性材料を金型キャビティの中へと前進させる工程と、金型キャビティを熱可塑性材料で実質的に充填する工程と、熱可塑性材料を冷却する工程と、第1の金型側方部と第2の金型側方部とを分離して冷却された熱可塑性材料を露出する工程と、熱可塑性材料を取り外す工程と、第1金型側方部と第2の金型側方部とを閉じる工程とを含む。
【0045】
用語「射出成形行程」は、本明細書において使用されるとき、共通の射出成形機において実行される一連の逐次的な射出成形サイクルを含む。
【0046】
用語「流動性」は、本明細書において使用されるとき、射出成形システムを通って流れるときの溶融プラスチック材料の流動抵抗を含み、そして、溶融プラスチック材料の組成、温度、せん断、金型設計及び部品設計を含むがそれらに限定しない、溶融プラスチック材料の相対粘度に及ぼす全ての影響を考慮に入れる。
【0047】
用語「ステップ時間」は、射出成形サイクルの開始と射出成形サイクルの終了との間の時間として定義される。射出成形サイクルの開始は、溶融プラスチック材料の射出が始められる時点である。射出成形サイクルの終了は、金型が成形部品の突き出しのために開けられる直前の時点である。言い換えると、射出成形サイクルの終了は、射出圧力が金型の中のプラスチック材料から除去された時点である。
【0048】
低定圧射出成形機は、高生産性射出成形機(例えば、クラス101若しくはクラス30射出成形機、又は「超高生産性成形機」)、例えば、本明細書に参照によって組み込まれる2012年8月31に出願された米国特許出願第13/601,514号において開示されている高生産性射出成形機であり得、それは歯ブラシバンドル及び剃刀ハンドルなどの薄肉消費生活用品の製造に使用され得る。薄肉部品は、概して、100以上の高L/T比を有するものとして定義される。
【0049】
図面を詳細に参照すると、
図1は、射出システム12と、型締システム14とを概して含む例示的な低定圧射出成形装置10を示す。熱可塑性材料は、熱可塑性ペレット16の形態で射出成形システム12に導入され得る。熱可塑性ペレット16は、ホッパ18の中に入れられてもよく、このホッパ18は、熱可塑性ペレット16を射出成形システム12の加熱バレル20の中に供給する。熱可塑性ペレット16は、加熱バレル20の中に供給された後、往復スクリュー22によって加熱バレル20の端部まで駆動され得る。加熱バレル20の加熱及び往復スクリュー22による熱可塑性ペレット16の圧縮は、熱可塑性ペレット16を溶融させて、溶融熱可塑性材料24を形成する。溶融熱可塑性材料は、典型的には、約130℃〜約410℃の温度で処理される。
【0050】
往復スクリュー22は、溶融熱可塑性材料24を熱可塑性材料のショットを形成するノズル26に向かって押し進め、この溶融熱可塑性材料24は、溶融熱可塑性材料24の流れを金型キャビティ32まで導く1つ以上のゲート30(好ましくは3個以下のゲート)を介して金型28の金型キャビティ32の中に射出される。他の実施形態では、ノズル26は、供給システム(図示せず)によって1つ以上のゲート30から分離され得る。金型キャビティ32は、金型28の第1の金型側方部25と第2の金型側方部27との間に形成され、これら第1の金型側方部25と第2の金型側方部27とは、圧力下でプレス又は型締ユニット34によって一緒に保持される。プレス又は型締ユニット34は、成形プロセス中、2つの半体25、27を分離させるように作用する射出圧力によってもたらされる力よりも大きい型締力を印加し、それによって、溶融熱可塑性材料24が金型キャビティ32の中に射出される間、第1の金型側方部25と第2の金型側方部27とを一緒に保持する。こうした型締力を支持するために、型締システム14は、金型枠と金型ベースとを含み得る。
【0051】
一旦溶融熱可塑性材料24のショットが金型キャビティ32の中に射出されると、往復スクリュー22は前方への移動を停止する。溶融熱可塑性材料24は、金型キャビティ32の形状を呈し、溶融熱可塑性材料24は、熱可塑性材料24が固化するまで金型28の内側で冷却する。一旦熱可塑性材料24が固化すると、プレス34は、第1及び第2の金型側方部25、27を解放し、第1の金型側方部25と第2の金型側方部27とは互いから分離され、完成部品が金型28から突き出され得る。金型28は、全体的な生産率を高めるために、複数の金型キャビティ32を備えていてもよい。複数の金型キャビティの形状は、互いに同一であっても、類似であっても、又は異なっていてもよい。(後者は、一群の金型キャビティと考えられ得る)。
【0052】
コントローラ50は、ノズル26の周辺に位置するノズルセンサ52、金型キャビティ32の内部又は金型キャビティ32の近傍に位置する流頭センサ53、及びネジ制御36と通信で接続されている。コントローラ50は、マイクロプロセッサ、メモリ、及び1つ以上の通信リンクを含んでもよい。流頭センサ53は、金型キャビティ32の中に流入する溶融熱可塑性材料の前縁又は流頭の位置の表示を提供し得る。流頭センサ53は、
図1において、金型キャビティ32の端部の近く(例えば、溶融プラスチック材料によって最後に充填することになっている金型キャビティの場所)に示されているが、流頭センサ53は、ゲートと、溶融熱可塑性材料によって最後に充填することになっている金型キャビティ32の中の位置との間の金型キャビティ32の中の任意の地点に位置し得る。流頭センサ53が金型キャビティ32の端部の近くに位置しない場合、時間補正係数が、溶融プラスチック材料の流頭が金型キャビティ32の端部に到達する時を近似するために適用され得る。
【0053】
流頭センサを53、金型キャビティ32の端部の30%の範囲内に、好ましくは金型キャビティ32の端部の20%の範囲内に、更により好ましくは金型キャビティ32の端部の10%の範囲内に設置することが望ましくあり得る。ノズルセンサ52及び流頭センサ53は、熱可塑性材料の存在を、光学的に、圧縮空気作用で、電気的に、超音波で、機械的に、又は熱可塑性材料の流頭の到着に起因する圧力及び/又は温度変化を感知することによって感知し得る。熱可塑性材料の圧力又は温度がノズルセンサ52によって測定されると、ノズルセンサ52は、圧力又は温度を示す信号を制御装置50に送信することにより、充填が完了したときに、制御装置50が金型キャビティ32の中(又はノズル26の中)において維持するべき目標圧力を制御装置50に提供し得る。この信号は、一般に、材料の粘度、金型温度、溶融温度の変動、及び充填速度に影響を与える他の変動が、制御装置50によって調節されるように、成形プロセスを制御するために使用され得る。こうした調節は成形サイクルの最中に行われてもよく、又は修正は以降のサイクルにおいて行われてもよい。更に、いくつかの信号を多くのサイクルにわたって平均化した後、制御装置50が成形プロセスに調節を加えるためにこれら信号を使用してもよい。制御装置50は、それぞれ、有線接続54、55、56を介してノズルセンサ52、及び/又は流頭センサ53、並びにスクリュー制御部36に接続され得る。別の実施形態では、制御装置50は、無線接続、機械的接続、流体圧接続、空気圧接続、又は制御装置50がセンサ52、53及びスクリュー制御部36の両方と通信することを可能にする当業者に公知の任意の他の種類の通信接続を介して、ノズルセンサ52、流頭センサ53及びスクリュー制御部56に接続されてもよい。
【0054】
図1の実施形態では、ノズルセンサ52は、ノズル26付近の溶融熱可塑性材料24の溶融圧力を(直接的又は間接的に)測定する圧力センサである。ノズルセンサ52は、コントローラ50に送信される電気信号を発生させる。次いで、コントローラ50は、スクリュー制御装置36に対して、ノズル26の中の溶融熱可塑性材料24の望ましい溶融圧力を維持する速度で、スクリュー22を前進させるように指示する。これは、圧力制御プロセスとして公知である。ノズルセンサ52は、溶融圧力を直接的に測定し得る一方、ノズルセンサ52は、また、溶融圧力の指標である温度、粘度、流速などの溶融熱可塑性材料24の他の特性も測定することによって、溶融圧力を間接的に測定し得る。同様に、ノズルセンサ52は、ノズル26の中に直接的に配置される必要はなく、むしろノズルセンサ52は、ノズル26と流体的に接続される射出システム12又は金型28の内部の任意の場所に配置されてもよい。ノズルセンサ52がノズル26の内部に配置されない場合、ノズル26の中の溶融圧力の推定値を計算するために、測定された特性に適切な補正係数が適用されてもよい。ノズルセンサ52は、射出された流体と直接接触する必要はなく、別の方法で流体と動的連通して、流体の圧力及び/又は他の流体特性を感知することができ得る。ノズルセンサ52がノズル26の内部に配置されない場合は、適切な補正係数を測定された特性に適用して、ノズル26の中の溶融圧力を算定してもよい。更に他の実施形態では、ノズルセンサ52は、ノズルと流体的に接続される場所に配置される必要はない。むしろ、ノズルセンサ52は、第1の金型部品25と第2の金型部品27との間の金型分割線において型締システム14によって生じさせられた型締力を測定することができるであろう。一態様では、コントローラ50は、ノズルセンサ52からの入力に従って、圧力を維持してもよい。あるいは、センサは、電動プレスによる電力需要を測定することができ、これは、ノズル26の中の圧力の推定値を計算するために用いられ得る。
【0055】
稼働中の閉ループコントローラ50が
図1に示されているが、他の圧力調整装置が閉ループコントローラ50の代わりに使用されてもよい。例えば、圧力調整弁(図示せず)又は圧力安全弁(図示せず)が、溶融熱可塑性材料24の溶融圧を調整するためのコントローラ50に置き換わってもよい。より具体的には、圧力調整弁及び圧力安全弁は、金型28の過加圧を防止することができる。金型28の過加圧を防止するための別の代替機構は、過加圧状態が検出されると作動する警報である。
【0056】
ここで、
図2を参照すると、例示の成形部品100が示されている。成形部品100は薄壁部品である。成形部品は、一般的に、流路の厚さTで割られた流路の長さLが100超(すなわち、L/T>100)であり、かつ1,000未満のときに薄肉であると見なされる。より複雑な構造を有する金型キャビティについては、L/T比は、ゲート30から金型キャビティ32の端部までの金型キャビティ32の長さにわたってT寸法を積分し、ゲート30から金型キャビティ32の端部までの流動の最長長さを決定することによって計算され得る。次いで、L/T比は、流動の最長長さを平均の部品厚さで割ることによって求められ得る。金型キャビティ32が複数のゲート30を有する場合には、L/T比は、L及びTをそれぞれの個々のゲートによって充填される金型キャビティ32の部分について積分することによって求められ、所定の金型キャビティに関する全体のL/T比は、いずれかのゲートに関して計算された最高のL/T比である。一部の射出成形業界では、薄肉部品は、L/T>100を有するか、又はL/T>200を有するが、<1,000である部品として定義され得る。流路長Lは、ゲート30から金型キャビティの端部104まで測定した最長の流動長さである。薄肉部品は、消費者製品業界に特に普及している。
【0057】
高L/T比部品は、一般に、約10mm未満の平均厚さを有する成形部品に見られる。消費者製品においては、高L/T比を有する製品は、概して、約5mm未満の平均厚さを有する。例えば、高L/T比を有する自動車用バンパーパネルは、概して、10mm以下の平均厚さを有し、高L/T比を有する背の高いグラスは、概して、約5mm以下の平均厚さを有し、高L/T比を有する容器(タブ又はバイアルなど)は、概して、約3mm以下の平均厚さを有し、高L/T比を有するボトル用キャップエンクロージャは、概して、約2mm以下の平均厚さを有し、高L/T比を有する歯ブラシの個々の毛は、概して、約1mm以下の平均厚さを有する。本明細書において開示されている低定圧射出成形プロセス及び装置は、5mm以下の厚さを有する部品に対して特に有利であり、開示されているプロセス及び装置は、より薄い部品に対してより有利である。
【0058】
高L/T比の薄肉部品は、射出成形する上である種の障害を提示する。例えば、流路の薄さは、材料が流路端部104に達する前に溶融熱可塑性材料を冷却する傾向がある。冷却が起こると、熱可塑性材料は凝固して、もはや流動しなくなり、そのために不完全な部品をもたらす。この問題を克服するため、従来の射出成形機は、典型的には103MPa(15,000psi)超の非常に高い圧力で溶融熱可塑性材料を射出し、その結果、溶融熱可塑性材料は、冷却及び凝固する機会を有する前に金型キャビティを急速に充填する。これが、熱可塑性材料の製造者が非常に高い圧力で射出するよう教示する1つの理由である。従来の射出成形機が高圧で射出する別の理由は、上述のように、剪断力の増加が流動特性を向上させるからである。こうした非常に高い射出圧力では、とりわけ金型28及び供給システムを形成するために、非常に硬い材料を使用する必要がある。更に、薄肉部品は、材料が凝固する前に充填される必要があるリビングヒンジ、フィラメント、クロージャ、ディスペンサー、スパウト、ベローズ、アクチュエータなどの1つ以上の特殊機構105を有する。
【0059】
(射出成形サイクル中に)実質的に一定の圧力で充填する場合には、従来の充填方法と比べて充填速度を低減する必要があると概して考えられていた。このことは、金型が完全に充填する前に、ポリマーがより長い時間にわたって冷えた鋳造表面と接触する状態にあることを意味する。したがって、より多くの熱が充填前に除去されることになり、このことは、金型が充填される前に材料の凝固をもたらすことが予想される。熱可塑性材料が、射出成形サイクル中、実質的に一定の圧力状態に曝されると、たとえ金型キャビティの一部分が熱可塑性材料の流動停止温度未満であっても流れることが予期せずして発見された。かかる条件は、熱可塑性材料が流れて金型キャビティを充填し続けるよりむしろ、熱可塑性材料が凝固して金型キャビティを塞ぐことを引き起こすと、当業者であれば一般的に予想するであろう。何ら理論に拘束されることを意図するものではないが、開示された方法及び装置の実施形態の射出成形サイクル中の実質的に一定の圧力状態は、充填中の金型キャビティ全体にわたって動的流動状態(すなわち、溶融前部を常に動かすこと)を可能にすると考えられる。溶融熱可塑性材料が流れて金型キャビティを充填するときには、溶融熱可塑性材料の流れの滞留はなく、したがって、金型キャビティの少なくとも一部分が熱可塑性材料の流動停止温度未満であるにも関わらず、流動が凝固することはない。
【0060】
更に、動的流動状態の結果として、溶融熱可塑性材料は、金型キャビティの中でかかる温度に曝されるにもかかわらず、剪断発熱の結果として、流動停止温度よりも高い温度を維持することができると考えられる。この動的流動状態は、熱可塑性材料が凝固プロセスを開始すると、熱可塑性材料の中における結晶構造の形成を抑制することが更に考えられる。結晶構造形成は、熱可塑性材料の粘度を増加させて、キャビティを充填するための好適な流動を妨げ得る。結晶構造形成及び/又は結晶構造サイズの低減は、熱可塑性材料がキャビティの中に流入して、材料の流動停止温度未満の金型の低い温度に曝されると、熱可塑性材料の粘度を低下させることが可能である。
【0061】
開示された低定圧射出成形方法及びシステムは、材料粘度の変化、材料温度の変化、及び他の材料特性の変化を監視するために、金型キャビティの内部又は金型キャビティの近傍に位置するセンサ(上記
図1の流頭センサ53など)を使用してもよい。溶融前部が金型キャビティの端部に達する前に溶融前部の圧力が解放されるのを確実にするように(これは金型のフラッシング、及び別の圧力及び電力ピークを引き起こし得る)、制御装置がプロセスをリアルタイムで修正できるように、このセンサからの測定値は制御装置に伝達され得る。更に、制御装置は、プロセスにおけるピーク電力点及びピーク流量点を調節し、それにより一貫した加工条件を得るために、センサ測定値を用いてもよい。センサ測定値を用いてプロセスをリアルタイムで、進行中の射出サイクルの間に微調整するのに加えて、制御装置はまた、プロセスを経時的に(例えば、複数の射出サイクルにわたって)調節するためにセンサ測定値を用いてもよい。このようにして、進行中の射出サイクルを、1つ以上のサイクルの間に生じる測定値に基づいて、できるだけ早期に修正することができる。一実施形態では、センサ測定値は、プロセス一貫性を達成するよう、多くのサイクルにわたって平均化されることができる。
【0062】
様々な実施形態では、金型は、金型キャビティ全体を流動停止温度未満の温度に維持する冷却システムを含むことができる。例えば、溶融熱可塑性材料を含むショットに接触する金型キャビティの表面であっても、より低い温度を維持するよう冷却され得る。任意の好適な冷却温度が使用され得る。例えば、金型は、実質的に室温で維持され得る。かかる冷却システムの組込みは、形成されたままの射出成形部品が冷却されて、金型からの突出しの準備が整う速度を有利に向上させる。
【0063】
熱可塑性材料
様々な熱可塑性材料を、本開示の低定圧射出成形方法及び装置において使用することができる。一実施形態では、溶融熱可塑性材料は、ASTM D1238に準拠して温度約230℃、2.16kg重で測定した場合、約0.1g/10分〜約500g/10分のメルトフローインデックスで定義された粘度を有する。例えば、ポリプロピレンに対して、メルトフローインデックスは、約0.5g/10分〜約200g/10分の範囲にあり得る。別の好適なメルトフローインデックスは、約1g/10分〜約400g/10分、約10g/10分〜約300g/10分、約20g/10分〜約200g/10分、約30g/20分〜約100g/10分、約50g/10分〜約75g/10分、約0.1g/10分〜約1g/10分、又は約1g/10分〜約25g/10分を含む。材料のMFIは、成形品の用途及び使用方法に基づいて選択される。例えば、0.1g/10分〜約5g/10分のMFIを有する熱可塑性材料は、射出ストレッチブロー成形(ISBM)用途用のプリフォームとしての使用に好適であり得る。5g/10分〜約50g/10分のMFIを有する熱可塑性材料は、物品を包装するためのキャップ及びクロージャとしての使用に好適であり得る。50g/10分〜約150g/10分のMFIを備える熱可塑性材料は、バケツ又はたらいの製造における使用に好適であり得る。150g/10分〜約500g/10分のMFIを備える熱可塑性材料は、薄板などの極めて高いL/T比を有する成形品に好適であり得る。かかる熱可塑性材料の製造者は、概して、その材料が41MPa(6000psi)を超過する、そして、しばしば41MPa(6000psi)を大きく超過する溶融圧を使用して射出成形されるべきであることを教示する。かかる熱可塑性材料の射出成形に関する従来の教示に反して、本開示の低定圧射出成形方法及び装置の実施形態は、かかる熱可塑性材料を使用し、103MPa(15,000psi)未満の、場合によっては、103MPa(15,000psi)をはるかに下回る溶融圧力で処理して、良質の射出成形部品を形成するのを有利に可能にする。
【0064】
熱可塑性材料は、例えばポリオレフィンであり得る。例示的なポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、及びポリブテン−1が挙げられるが、これらに限定されない。前述のポリオレフィンのいずれもが、バイオ−ポリプロピレン又はバイオ−ポリエチレンを生成するために、サトウキビ又は他の農産物などのバイオベースの原料から供給され得る。ポリオレフィンは、溶融状態にあるとき、有利に剪断減粘を示す。剪断減粘は、流体が圧縮応力下に置かれたときの粘度の減少である。剪断減粘は、熱可塑性材料の流動を射出成形プロセス全体にわたって有利に維持させることができる。何ら理論に拘束されることを意図するものではないが、熱可塑性材料、特にポリオレフィンの剪断減粘特性により、材料が一定圧力で処理される場合に、材料粘度の変動が小さくなると考えられる。その結果、本開示の方法及び装置の実施形態は、例えば、着色剤及び他の添加剤、並びに処理条件がもたらす熱可塑性材料の変動に対する感受性が低くなり得る。熱可塑性材料特性のバッチ間での変動に対するこの感受性の低下により、産業使用後及び消費者使用後の再生プラスチックを、本開示の方法及び装置の実施形態を用いて有利に処理することがまた可能である。産業使用後、消費者使用後の再生プラスチックは、消費財としてそれらのライフサイクルを完了した最終生産物及び固体老廃物として別途廃棄された最終生産物に由来するものである。かかる再生プラスチック、及び熱可塑性材料の配合物は、それらの材料特性の著しいバッチ間の変動を本来的に有する。
【0065】
熱可塑性材料は、また、例えば、ポリエステルであり得る例示的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられるが、これに限定されない。PETポリマーは、バイオ−PETポリマーを部分的又は全体的に製造するために、サトウキビ又は他の農産物などのバイオベースの原料から供給され得る。他の好適な熱可塑性材料としては、ポリプロピレン及びポリエチレンのコポリマー、並びに熱可塑性エラストマーのポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレンフラネート)ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(エチレンフラノエート)(PET代替、又はPETに置き換えて使用されると考えられる)、ポリヒドロキシアルカノエート等のバイオベースのポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、エチレン−αオレフィンゴム、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが挙げられる。熱可塑性材料は、また、複数のポリマー材料及び非ポリマー材料の配合物であり得る。熱可塑性材料は、例えば、多モード又は2モードの配合物を産生する高中低の分子量のポリマーの配合物であり得る。多モード材料は、優れた流動特性を有し、その上、満足すべき化学的/物理的特性を有する熱可塑性材料をもたらす態様で設計され得る。熱可塑性材料は、また、ポリマーと1つ以上の小分子添加剤との配合物であり得る。この小分子は、例えば、熱可塑性材料に添加されると、ポリマー材料の流動性を改善するシロキサン又は他の潤滑分子であり得る。
【0066】
他の添加剤としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、粘土(例えば、ナノクレイ)、水酸化アルミニウム、CaSiO3、繊維又はミクロスフィアに形成されたガラス、結晶性シリカ(例えば、石英、石英粉末、クリスタロバイト)、水酸化マグネシウム、雲母、硫酸ナトリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、酸化鉄等の無機充填剤;若しくはもみ殻、藁、麻すさ、木粉、又は木材、竹若しくはサトウキビ繊維等の有機充填剤を挙げることができる。
【0067】
他の好適な熱可塑性材料としては、ポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレラート、NODAX(登録商標))、及び細菌セルロース等の生物体から直接的に製造されたポリマーの非限定的例などの再生可能ポリマー;多糖類及びこれらの誘導体(例えば、ガム、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、デンプン、化学修飾したデンプン、セルロースアセテートの粒子)、タンパク質(例えば、ゼイン、乳清、グルテン、コラーゲン)、脂質、リグニン、及び天然ゴム等の植物、農林産物、及びバイオマスから抽出されたポリマー;デンプン又は化学修飾されたデンプンから製造された熱可塑性デンプン並びにバイオ−ポリエチレン、バイオ−ポリプロピレン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン11、アルキド樹脂、コハク酸系ポリエステル、及びバイオ−ポリエチレンテレフタレート等の天然に供給されるモノマー由来の最近のポリマー及び誘導体が挙げられる。
【0068】
好適な熱可塑性材料は、前述の例におけるような異なる熱可塑性材料のうちの1つ又は複数の配合物を含んでもよい。なお、その異なる材料は、未使用のバイオ由来材料若しくは石油由来材料から誘導された材料、又はバイオ由来材料若しくは石油由来材料の再生材料の組み合わせであってもよい。配合物中の熱可塑性材料のうちの1つ以上は、生分解性であってもよい。更に、非配合の熱可塑性材料に対して、その材料は生分解性であってもよい。
【0069】
代表的な熱可塑性樹脂をそれらの推奨動作圧力範囲と共に以下の表に示す。
【0071】
実施形態のうちの2つ以上は、射出成形サイクル中、溶融熱可塑性材料を含むショットの溶融圧力を実質的に一定圧力に維持しながら、溶融熱可塑性材料を含むショットで金型キャビティのほぼ全体を充填することを含むが、特定の熱可塑性材料は、異なる一定圧力において本発明の恩恵を受ける。具体的には次の通りである:PP、ナイロン、PC、PS、SAN、PE、TPE、PVDF、PTI、PBT、及びPLAは、69MPa(10000psi)未満の実質的に一定の圧力;ABSは、55MPa(8000psi)未満の実質的に一定の圧力;PETは、40MPa(5800psi)未満の実質的に一定の圧力;アセタールコポリマーは、48MPa(7000psi)未満の実質的に一定の圧力;ポリ(エチレンフラネート)ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンフラノエート(aka PEF)は、69MPa、又は55MPa、又は48MPa、又は41MPa、又は40MPa未満(10000psi、又は8000psi、又は7000psi、又は6000psi、又は5800psi未満)の実質的に一定の圧力。
【0072】
上記で詳細に説明したように、開示されている低定圧射出成形方法及び装置の実施形態は、従来の射出成形プロセスを凌ぐ1つ以上の有利性を実現し得る。例えば、実施形態は、金型キャビティの射出前の圧力と熱可塑性材料とのバランスをとる必要性を排除した、より費用効率が高く有効なプロセス、金型キャビティ圧力で大気圧を用いるのを可能とし、したがって、加圧手段の必要性を排除した単純な金型構造を可能とするプロセス、より費用効率が高くかつ機械加工しやすい、より低硬度で高熱伝導性の金型キャビティ材料を使用する能力、熱可塑性材料の温度、粘度、及び他の材料特性の変化に対する感受性が低い、よりロバストな加工方法、並びに、金型キャビティ内の熱可塑性材料の早期硬化がなく、かつ金型キャビティを加熱して一定温度に維持する必要なく、実質的に一定圧力で良質の射出成形部品を製造する能力、を含む。
【0073】
ここで
図3を参照すると、従来の圧力変動の大きい射出成形プロセスについての典型的な圧力−時間曲線が点線200で示されている。対照的に、開示された低定圧射出成形機についての圧力−時間曲線が実線210で示されている。
【0074】
従来の場合、溶融圧力は、103MPa(15,000psi)をはるかに上回るまで急速に増加し、次いで、第1の期間220にわたって、103MPa(15,000psi)を上回る比較的高い圧力で保持される。第1の期間220は、溶融プラスチック材料が金型キャビティの中に流れ込む充填時間である。その後、溶融圧力は低下し、第2の期間230にわたって、典型的には69MPa(10,000psi)以上の比較的低い圧力に保持される。第2の期間230は、金型キャビティの中の全ての間隙が充填し戻されることを確実にするように溶融圧力が維持される填塞時間である。填塞が完了した後、圧力は、必要に応じて、冷却時間である第3の期間232の間、再度低下されてもよい。従来の高変動の射出成形システムの金型キャビティは、流路の端部からゲートまで戻って填塞される。金型の中の材料は、典型的には、キャビティの端部の近くで凝固し、その後、材料の完全に凝固した領域は、1つ乃至複数のゲートの位置に向かって次第に移動する。結果として、金型キャビティの端部の近くのプラスチックは、1つ乃至複数のゲートの位置により近いプラスチック材料よりも、より短い期間にかつより低い圧力で填塞される。ゲートと金型キャビティの端部との中間の非常に薄い断面のような部品形状もまた、金型キャビティの領域の中の填塞圧力のレベルに影響を与え得る。一貫性のない填塞圧力は、上述のように、最終製品の不整合をもたらし得る。更に、固化の様々な段階におけるプラスチックの従来の填塞は、いくつかの理想的でない材料特性、例えば、残留成形応力、ヒケ、及び最適でない光学特性をもたらす。
【0075】
一方、低定圧射出成形システムは、充填期間240にわたって、実質的に一定圧力で金型キャビティの中に溶融プラスチック材料を射出する。
図3の実施例の射出圧力は、41MPa(6,000psi)未満である。しかし、他の実施形態は、より高い圧力を使用し得る。金型キャビティが充填された後、低定圧射出成形システムは、成形部品が冷却される第2の期間242にわたって徐々に圧力を低下させる。射出成形サイクル中、実質的に一定圧力を用いることによって、溶融熱可塑性材料は、流路を通ってゲートから流路の端部に向かって前進する連続的な溶融した流頭を維持する。言い換えると、溶融熱可塑性材料は、金型キャビティを通ってずっと移動し続け、それにより、早期凝固を防止する。したがって、プラスチック材料は、流路に沿ったあらゆる場所で比較的均一に維持され、その結果、より均一で一貫した最終製品が得られる。金型を比較的均一な圧力で充填することによって、最終成形部品は、従来の成形部品よりも良好な機械的及び光学的特性を有し得る結晶構造を形成する。更に、一定圧力で成形された部品は、従来の成形部品のスキン層と異なる特性を呈する。結果的に、一定圧力で成形された部品は、従来の成形部品の部品よりも良好な光学特性を有し得る。
【0076】
ここで
図4を参照すると、充填の様々な段階が、全充填時間の百分率として分割されている。例えば、従来の圧力変動の大きい射出成形プロセスでは、充填期間220は全充填時間の約10%を占め、填塞期間230は全充填時間の約50%を占め、冷却期間232は全充填時間の約40%を占める。一方、低定圧射出成形プロセスでは、充填期間240は、全充填時間の約90%まで占め、冷却期間242は、全充填時間の約10%のみを占める。低定圧射出成形プロセスは、溶融プラスチック材料が金型キャビティの中に流れ込むと冷えるので、冷却時間がより短くて済む。このようにして、金型キャビティが充填されるまでには、溶融プラスチック材料はかなり冷却されており(金型キャビティの断面中心が固化するのに十分ではないが)、凝固過程を完了するために除去しなければならない全熱量は少なくて済む。更に、溶融プラスチック材料は充填を通じて液体のままであり、填塞圧力はこの溶融断面中心を通して伝えられるので、溶融プラスチック材料は金型キャビティの壁と接触し続ける(凝固して縮まるのとは反対に)。結果として、本明細書に記載された低定圧射出成形プロセスは、従来の射出成形プロセスにおけるよりも短い合計時間で、成形部品を充填及び冷却することができる。
【0077】
高L/T部品を成形するための開示された低定圧射出成形方法及び装置では、部品は、所望の射出圧力を達成するように溶融熱可塑性ポリマーを増加する流量で金型キャビティの中に射出し、その後、実質的に一定の射出圧力を維持するように時間と共に流量を減少させることによって成形される。低定圧射出成形方法及び装置は、特に、薄肉部品(例えば、L/T比>100<1000)を成形するとき、及び0.1g〜100gのショットサイズを用いるときに有利である。最大流量が、キャビティ充填の最初の30%以内、好ましくはキャビティ充填の最初の20%以内、更により好ましくはキャビティ充填の最初の10%以内に生じるのが、特に有利である。充填圧力プロファイルを調節することにより、キャビティ充填のこれら好ましい範囲内に最大流量が生じ、また、成形部品の結晶構造が従来の成形部品と異なるので、成形部品は、上記した物理的な利点(例えば、より良好な強度、より良好な光学特性など)の少なくともいくつかを有することになる。更に、高L/T製品は薄いので、得られた製品に所望の色を付与するためにこれら製品が必要とする顔料は少なくて済む。更に、顔料を使用しない部品では、成形条件がより一貫しているので、部品の目に見える変形が少ない。顔料が少ない又は顔料を使用しないことでコストが削減される。
【0078】
あるいは、ピーク電力は、実質的に一定の射出圧力を維持するように調節されてもよい。より具体的には、充填圧力プロファイルは、ピーク電力が、キャビティ充填の最初の30%以内、好ましくはキャビティ充填の最初の20%以内、更により好ましくはキャビティ充填の最初の10%以内に生じるように調節されてもよい。ピーク電力をこの好ましい範囲内に生じさせた後、キャビティ充填の残りを通して低下した電力を有するようにプロセスを調節することにより、ピーク流量の調節に関して上述した成形部品と同じ利益がもたらされる。更に、上記のようにしてプロセスを調節することは、特に、薄肉部品(例えば、L/T比>100<1000)及び0.1g〜100gの射出能力)の場合に有利である。
【0079】
ここで
図5A〜
図5D及び
図6A〜
図6Dを参照すると、従来の射出成形機(
図5A〜5D)によって充填されているとき、及び実質的に一定圧力の射出成形機(
図6A〜
図6D)によって充填されているときの金型キャビティの一部分が示されている。
【0080】
図5A〜
図5Dに示すように、従来の射出成形機が、溶融熱可塑性材料24をゲート30を通して金型キャビティ32の中に射出し始めるとき、高い射出圧力は、溶融熱可塑性材料24を高速で金型キャビティ32の中に射出することに役立ち、それにより溶融熱可塑性材料24は、最も一般的には層流と呼ばれる積層物31の状態で流される(
図5A)。これら最も外側の積層物31は、金型キャビティの壁に付着し、続いて、冷却及び凝固して、金型キャビティ32が完全に満たされる前に、凝固した境界層33を形成する(
図5B)。しかしながら、熱可塑性材料が凝固すると、凝固した熱可塑性材料は、金型キャビティ32の壁から離れる方向に縮み、金型キャビティ壁と境界層33との間に間隙35が残される。この間隙35は、金型の冷却効率を低下させる。溶融熱可塑性材料24はまた、ゲート30付近で冷却及び凝固し始め、ゲート30の有効断面積を減少させる。一定の体積流量を維持するためは、従来の射出成形機は、狭いゲート30を通して溶融熱可塑性材料を押し進めるために、圧力を増大さなければならない。熱可塑性材料24が金型キャビティ32の中に流入し続けるにつれて、境界層33は厚くなる(
図5C)。最終的に、金型キャビティ全体32は、凝固した熱可塑性材料でほぼ満たされる(
図5D)。この時点で、従来の高圧射出成形機は、後退した境界層33を金型キャビティ32の壁に押し付け返して更に冷却するために、填塞圧力を維持しなければならない。
【0081】
一方、低定圧射出成形機は、常に動いている流頭37と共に溶融熱可塑性材料を金型キャビティ32に流し込む(
図6A〜
図6D)。流頭37の後方の熱可塑性材料24は、凝固する前に金型キャビティ37がほぼ充填されるまで(即ち、99%以上充填されるまで)溶融状態を維持する。その結果、ゲート30の有効断面積の減少はなく、有効断面積は、成形部品の公称肉厚の70%〜100%、好ましくは、80%〜90%であり得る。更に、流頭37の後方の熱可塑性材料24は溶融状態にあるので、熱可塑性材料24は金型キャビティ32の壁と接触し続ける。その結果、熱可塑性材料24は、成形プロセスの充填部分の間に冷却される(凝固せずに)。したがって、開示されている低定圧射出成形プロセスの冷却部分は、従来のプロセスほど長くある必要がない。
【0082】
熱可塑性材料は溶融したまま、金型キャビティ32の中へと移動し続けるので、必要となる射出圧力は従来の金型の場合よりも少なくて済む。一実施形態では、射出圧力は103MPa(15,000psi)以下であってもよい。結果的に、射出システム及び型締システムは、それほど強力である必要はない。例えば、開示の低定圧射出成形装置は、より低い型締力及びそれに対応するより低い型締用電源を必要とする型締装置を使用してもよい。更に、開示されている低定圧射出成形機は、所要電力がより小さいので、概して、高変動の圧力で薄肉部品を成形する従来のクラス101及び102射出成形機において使用するほど強力ではない電動プレスを採用してもよい。電動プレスが、ごく少数の金型キャビティを有する一部の単純な金型での使用に対して十分である場合でさえも、より小さく、より安価な電動モータを使用することができるので、開示されている低定圧射出成形方法及び装置によってプロセスを改善し得る。開示の低定圧射出成形機は、次のタイプの電動プレス、すなわち、直流サーボ駆動モータプレス、デュアルモータベルト駆動式プレス、デュアルモータ遊星歯車式プレス、及び電力定格が200HP以下であるデュアルモータボール駆動式プレスのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0083】
ここで
図7を参照すると、低定圧射出成型プロセスについての例示的な成形サイクル1000の動作が示されている。成形サイクル1000は、本開示に従って構成された低定圧射出成形機、例えば、
図1の低定圧射出成形機において実行され得る。より具体的には、例示の成形サイクル1000は、低定圧射出成形機において実行され得、その低定圧射出成形機は、第1の金型側方部及び第2の金型側方部を含む金型であって、その第1の金型側方部及び第2の金型側方部のうちの少なくとも1つは、51.9W/m ℃(30BTU/HR FT°F)を超え、385.79W/m ℃(223BTU/HR FT°F)以下の熱伝導率を有する金型と、その第1の金型側方部と第2の金型側方部との間に形成された金型キャビティとを有する。いくつかの好適な実施形態において、第1の金型側方部と第2の金型側方部の両方は、51.9W/m ℃(30BTU/HR FT°F)を超え、385.79W/m ℃(223BTU/HR FT°F)以下の平均熱伝導率を有し得る。
【0084】
第1及び/又は第2の金型側方部を製造するためのいくつかの好適な材料としては、アルミニウム(例えば、2024アルミニウム、2090アルミニウム、2124アルミニウム、2195アルミニウム、2219アルミニウム、2324アルミニウム、2618アルミニウム、5052アルミニウム、5059アルミニウム、航空機級アルミニウム、6000シリーズアルミニウム、6013アルミニウム、6056アルミニウム、6061アルミニウム、6063アルミニウム、7000シリーズアルミニウム、7050アルミニウム、7055アルミニウム、7068アルミニウム、7075アルミニウム、7076アルミニウム、7150アルミニウム、7475アルミニウム、QC−10、Alumold(商標)、Hokotol(商標)、Duramold 2(商標)、Duramold 5(商標)、Alumec 99(商標))、BeCu(例えば、C17200、C 18000、C61900、C62500、C64700、C82500、Moldmax LH(商標)、Moldmax HH(商標)、Protherm(商標))、銅、及び任意のアルミニウム合金(例えば、ベリリウム、ビスマス、クロム、銅、ガリウム、鉄、鉛、マグネシウム、マンガン、ケイ素、チタン、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム)、任意の銅の合金(例えば、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、ケイ素、クロム、アルミニウム、青銅)が挙げられる。これらの材料は、ロックウェルC(Rc)硬度0.5Rc〜20Rc、好ましくは2Rc〜20Rc、より好ましくは3Rc〜15Rc、更により好ましくは4Rc〜10Rcを有し得る。これらの材料は、工具鋼より軟らかい場合があるが、熱伝導特性はより好ましい。開示されている低定圧射出成形方法及び装置は、こうしたより軟らかく、熱伝導性がより高い材料でできた金型が、100万サイクル超、好ましくは125万サイクル〜1,000万サイクル、更に好ましくは200万サイクル〜500万サイクルの耐用年数を引き出すことを可能にする成形条件下で有利に作動する。
【0085】
最初に、溶融熱可塑性材料は、1110で薄肉部品(例えば、100<L/T<1000)を形成する金型の中へと前進させられる。溶融熱可塑性材料のショットは0.5g〜100gであってよく、3つ以下のゲートを通って金型キャビティの中へと前進させられ得る。いくつかの場合、3つ以下のゲートのうちの1つ又はそれ以上は、金型キャビティ内に形成される部品の公称肉厚の70%〜100%、及び好ましくは公称肉厚の80%〜90%である断面積を有し得る。いくつかの実施例において、このパーセンテージは、0.5mm〜10mmのゲートサイズに相当する。
【0086】
溶融熱可塑性材料は、1112において金型キャビティが実質的に充填されるまで金型キャビティの中へと前進させられる。金型キャビティは、金型キャビティが90%を超えて充填された時、好ましくは95%を超えて充填された時、より好ましくは99%を超えて充填された時に、実質的に充填され得る。金型が実質的に充填された後、溶融熱可塑性材料は、実質的に凝固又は固化されるまで1114で冷却される。溶融熱可塑性材料は、第1の金型側方部及び第2の金型側方部のうちの少なくとも1つを通って流れる冷却流体で能動的に冷却されるか、又は大気中への対流及び伝導により受動的に冷却され得る。
【0087】
熱可塑性材料が冷却された後、1116で冷却された熱可塑性材料を露出するために第1の金型側方部と第2の金型側方部が分離され得る。(成形部品の形の)冷却された熱可塑性材料は1118で金型から取り外され得る。熱可塑性材料は、例えば、突き出し、ダンピング、(手動又は自動プロセスを介した)抜出、引っ張り、押し、重力、又は冷却した熱可塑性材料を第1の金型側方部及び第2の金型側方部から分離する任意の他の方法によって取り外され得る。
【0088】
冷却された熱可塑性材料が第1の金型側方部及び第2の金型側方部から取り外された後、1120で、第1の金型側方部及び第2の金型側方部が閉じられて金型キャビティを再形成し、第1の金型側方部及び第2の金型側方部が新しい熱可塑性材料のショットを受け入れられるように準備をして、単一の成形サイクルが完了する。サイクル時間1001は、1回のみの成形サイクル1000として定義される。単一の成形サイクルは、部品のサイズ及び材料によって、2秒〜15秒、好ましくは8秒〜10秒かかり得る。
【0089】
全ての射出成形プロセスは、溶融プラスチック材料の粘度の変動に影響されやすい。溶融プラスチック材料の粘度の変動は、材料不足(ショートショット)及びフラッシングのような成形部品の欠陥を生じさせ得る。任意の数の因子が、溶融プラスチック材料の粘度を変動させ得る。例えば、周囲の温度又は圧力の変化、着色剤の添加、供給システムと溶融プラスチック材料で充填する最後のキャビティ場所との間でのせん断状態の変化、未使用のプラスチック材料自体の粘度変動、及び他の条件の変化は、全て、溶融プラスチック材料の粘度を変化させ得る。溶融プラスチック材料の粘度は変化するので、溶融プラスチック材料を金型の中に押し進めることに必要な圧力も変化する。例えば、粘度が増加すると、ポリマーを金型キャビティの中に押し進めるのに必要な圧力は、ポリマーがより厚くて金型キャビティの中に動くことがより困難なので、増加する。一方、粘度が減少すると、ポリマーを金型キャビティの中に押し進めるのに必要な力は、ポリマーがより薄くて金型キャビティの中に動くことがより容易であるので、減少する。調整が射出圧力又はサイクル時間に対してなされないならば、成形部品は欠陥を有することになる。現在の射出成形機及びプロセスは、時間ベースの成形サイクルを有する。言い換えると、成形サイクルは、射出成形サイクルが所定時間に終了するので、他の因子の中でも、時間によって制御される。その結果、溶融プラスチック材料についての粘度の変化は、溶融プラスチック材料を所定時間と異なる時間に金型キャビティの端部に到達させる。
【0090】
ここで
図8を参照すると、圧力対時間グラフは、単一の射出成形サイクルについて示されている。射出成形サイクルの初期段階の間に、圧力は、予定目標値1210(例えば、「充填圧力」)まで急速に増加し、その圧力は、金型キャビティが充填されているとき保持される。溶融プラスチック材料が金型キャビティ32の端部に近づくとき、第1の時間t
t(又はt
transducer)1212において、流頭センサ53(
図1)が示すように、金型キャビティ32の中の材料が冷えるにつれて、圧力は、1214においてより低い圧力(例えば、「填塞及び保持圧力」)まででわずかに低減される。充填シーケンスの開始から、金型が開放される充填サイクルの終了までの全サイクル時間である第2の時間t
s(又はt
step)1216において、成形部品は、金型キャビティ32から突き出される。
【0091】
溶融プラスチック材料の粘度の変化は、溶融プラスチック材料が金型キャビティ32の端部、又はt
sにおける金型キャビティの中の充填場所の端部に到達する時間に影響を及ぼし得る。例えば、溶融プラスチック材料の粘度が増加する場合、(「ショートショット」の可能性を伴って)、溶融プラスチック材料は、破線1220aが示すように、より長い時間の間、充填圧力に維持され得る。この例では、流頭センサ53は、所定時間より後の時間において溶融プラスチック材料を検出し得る。溶融プラスチック材料が流頭センサに到達する所定時間は、溶融プラスチック材料についての理想的な条件及び一定粘度に対して計算されても、実験的に導出されてもよい。一方、溶融プラスチック材料の粘度が減少する場合、(「フラッシング」の可能性を伴って)、溶融プラスチック材料は、破線1220bが示すように、より短い時間の間、充填圧力に維持され得る。この例では、流頭センサ53は、所定時間よりも早い時間t
tにおいて溶融プラスチック材料を検出し得る。
【0092】
粘度の変化に起因する問題を補償するために、コントローラ50(
図1)によって、ネジ制御装置26(
図1)は、粘度の変化に基づいてステップ時間(t
s)を増減させられ、それにより、金型キャビティ32が過剰に充填されることなく溶融プラスチックによって完全に充填されることを確実にする。ここで
図9を参照すると、修正された圧力対時間のグラフが示されている。例えば、溶融プラスチック材料の粘度が増加する場合、コントローラ50は、ネジ制御装置26に、線1222aが示すようにステップ時間を増加させるよう命令し、その結果、予定ステップ時間よりも長い新しいステップ時間(t
s1)が生じる。一方、溶融プラスチック材料の粘度が減少する場合、コントローラ50は、ネジ制御装置26に、線1222bが示すようにステップ時間を減少させるよう命令し、その結果、予定ステップ時間よりも短い新しいステップ時間(t
s2)が生じる。粘度が増加するときにステップ時間を増加させることによって、又は粘度が減少するときにステップ時間を減少させることによって、システムは、射出成形サイクルが、溶融プラスチック材料が金型キャビティの過剰充填を伴わずに完全に填塞される時間に終了することを確実にする。その結果、ショートショット及びフラッシングのような粘度の変化に起因する問題は、低減又は抑制される。
【0093】
ここで、
図10を参照すると、溶融プラスチック材料の流動性の変化を考慮するための処理1400の論理図が示されている。1410において、溶融プラスチック材料の第1のショットは、予定目標射出(又は充填)圧力で金型キャビティ32の中に射出され、溶融プラスチック材料の第1のショットにおける圧力が除去されることにより、第1の成形サイクルは第1のステップ時間を有する。1420において、流頭センサ53は、溶融プラスチック材料の流頭が流頭センサ53を通過したときを示す信号をコントローラ50に送る。コントローラ50は、第1の時間を所定時間と比較する。1440において、コントローラ50は、次に、第1の時間と所定時間との間の差を補償することに必要なステップ時間補正を計算する。1450において、第2以降の成形サイクル中に、コントローラ50は、溶融プラスチック材料の第2のショットから射出圧力を除去するようネジ制御装置26に命令することにより、第2の成形サイクルは、第1のステップ時間と異なる第2のステップ時間を有し、その第2のステップ時間は、第1の時間と所定時間との間の差に基づいている。コントローラ50は、かかる時間を比較して、両者の間の差に基づいて以降のステップ時間調整を続ける。
【0094】
第2以降の成形サイクルは、第1の成形サイクルの直後であってもよい。あるいは、第1の成形サイクルと第2の成形サイクルとは、1つ以上の介在する成形サイクルによって分離されてもよい。
【0095】
コントローラは、2つ以上の成形サイクルにわたる時間を平均して(又は別途組み合わせて)、第3以降の成形サイクルに適用され得るステップ時間補正を計算してもよい。更に、コントローラ50は、移動平均又は非移動平均を利用する統計制御方法論、管理図作成、統計学的に外れたデータ点の除去を限定することなく含む別の制御方法論を使用してもよい。
【0096】
場合によっては、第2のステップ時間は、第1の時間と所定時間との間の差に比例してもよい。溶融プラスチック材料の粘度が増加すると、第2のステップ時間はより大きくなる。一方、溶融プラスチック材料の粘度が減少すると、第2のステップ時間はより短くなる。第2のステップ時間は、概して、第1のステップ時間の350%だけより大きいものと75%だけより小さいものとの間にある。
【0097】
場合によっては、コントローラ50は、第1の時間と第2の時間とを平均し、次に、その平均を所定時間と比較してもよい。平均値を用いることで、コントローラ50は、ステップ時間の変化を平滑化し得、それによって、部品品質の均一性を向上させつつ、粘度の変化をも依然として考慮する。
【0098】
ここで
図11を参照すると、溶融プラスチック材料の流動性の変化を考慮するためのプロセス1500についての論理図の代替の実施形態が示されている。
図10の前の実施形態との主な相違は、
図11のプロセスがサイクル内でステップ時間を調節することである。言い換えると、
図11のプロセスは、単一サイクル内で調節されるステップ時間を計算する。
図10及び
図11の実施形態が組み合わされると、第1のサイクルの間に修正されたステップ時間を計算し、次に、それぞれの後続サイクルについての修正されたステップ時間を計算し続けるというプロセスをもたらす。2つの開示されたプロセスの組み合わせは、サイクル内及びサイクル間の両方において調節されたステップ時間を計算するプロセスをもたらし得る。更に、
図10に関して述べられるプロセスへの修正のうちのいずれもが、また、
図11に関して以下に述べられるプロセスを修正し得る。
【0099】
1510において、最初に、所定時間が獲得され得る。所定時間は、既知の流動性を有する溶融プラスチック材料のショットに対するものであり得る。所定時間は、プロセッサによって計算されても、又は射出成形システムにユーザによって入力されてもよい。1520において、所定時間を後に、溶融プラスチック材料の第1のショットが、金型キャビティの中に射出され得る。1530において、第1の射出成形サイクルの間に、溶融プラスチック材料が流頭センサに到達する第1の時間が測定され得る。その後、1540において、第1の時間が所定時間と比較されて、第1の比較結果を生じさせる。1550において、第1のステップ時間が決定されて得る。第1のステップ時間は、少なくとも部分的に、第1の比較結果に基づいてもよい。第1の時間の測定に続いて、1560において、射出圧力が、第1の射出成形サイクルの間の第1のステップ時間において、溶融プラスチック材料の第1のショットから取り除かれ得る。
【0100】
例えば、射出成形機は、3つの異なる射出成形サイクルの間、動作させられる。それぞれの射出成形サイクルは、異なる材料流動性を示す、異なるメルトフローインデックス(「MFI」)を有する材料を含む。その結果が以下の表中にまとめられている。
【0102】
上記の表に示すように、11MFIを有する材料は、金型キャビティを完全に充填するためにおよそ2.499秒を要し、一方、30MFIを有する材料は、金型キャビティを完全に充填するために0.719秒しか要しない。この例における金型キャビティを充填する時間は、+350%〜−75%の範囲内で変動する。本明細書に記載された射出成形方法は、これらの充填時間の差を考慮し、サイクルステップ時間を調節することにより、より良い品質の部品を確実に製造する。
【0103】
上述のように、溶融プラスチック材料の粘度の変化は、多くの因子を原因とし得る。例えば、オペレータが、低品質の部品を再粉砕し、再粉砕されたプラスチック材料を未使用のプラスチック材料と混合することによって、低品質の部品を再利用することを望むことがあり得る。再粉砕されたプラスチック材料と未使用のプラスチック材料との混合は、複合材料のMFIを変えることになる。同様に、オペレータが、射出行程中に、溶融プラスチック材料の中に着色剤を導入することによって部品カラーを変えることを望むことがあり得る。着色剤の導入は、しばしば、溶融プラスチック材料のMFIを変えることになる。最後に、周囲の操業条件の変化が、また、溶融プラスチック材料の粘度を変え得る。例えば、周囲温度が上昇すると、溶融プラスチック材料の粘度は、しばしば増加する。同様に、周囲温度が低下すると、溶融プラスチック材料の粘度は、しばしば減少する。
【0104】
開示された低定圧射出成形方法及び射出成形機は、部品品質を向上させながら、成形プロセスのサイクル時間を有利に短縮する。更に、開示された低定圧射出成形機は、いくつかの実施形態では、概して、エネルギー効率がより高く、油圧プレスよりも保守の必要性が少ない電動プレスを採用し得る。加えて、開示された低定圧射出成形機は、より広いプラテン幅、より大きいタイバーの間隔、タイバーの省略、より速い移動を促進するためのより軽量の構造、及び非自然均衡型供給システム等の、より可撓性の支持構造及びより順応性のある送達構造を利用することが可能である。したがって、開示された低定圧射出成形機は、送達の必要性に適合するように改善され得、特定の成形部品に対してより容易にカスタマイズ可能である。
【0105】
更に、開示された低定圧射出成形機及び方法によって、金型をより柔軟な材料(例えば、約30未満のRcを有する材料)で作製することが可能となり、そうした材料は、より高い熱伝導率(例えば、約0.3W/m ℃(20BTU/HR FT °F)超の熱伝導率)を有し得、それが、改善された冷却能力を有してより均一に冷却する金型をもたらす。改善された冷却能力を有するので、開示された低定圧射出金型は、簡略化された冷却システムを含み得る。概して、簡略化された冷却システムは冷却通路の数がより少なく、含まれる冷却通路がより真っ直ぐで加工軸がより少ない。簡略化された冷却システムを有する射出金型の一実施例が、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年2月24日に出願された米国特許出願第61/602,781号において開示されている。
【0106】
低定圧射出成形機のより低い射出圧力は、上記のより軟らかい材料でできた金型が100万回以上の成形サイクルを得ることを可能にするが、こうしたことが従来の射出成形機では可能でないと思われる理由は、こうした材料が高圧射出成形機においては100万回の成形サイクルに達する前に故障するであろうからである。
【0107】
「実質的に」、「約」、及び「およそ」という用語は、別途明記されない限り、本明細書において、任意の定量的な比較、値、測定値、又は他の表現に帰属され得る固有の不確実度を表すために使用され得ることに留意すべきである。これらの用語はまた、問題となる対象物の基本的機能の変化をもたらすことなく、定量的表現が述べられた基準から変動する程度を表すためにも使用される。本明細書において別途定義しない限り、用語「実質的に」、「約」、及び「およそ」は、定量的な比較、値、測定、又は他の表現が、述べられた基準の20%の範囲内に入り得ることを意味する。
【0108】
本明細書において例示及び記載された製品の様々な実施形態が、低く実質的に一定の圧力の射出成形プロセスによって製造され得ることがここに明らかである。特定の参照が、本明細書において、消費財又は消費財それ自体を含むために生産品についてなされてきたが、本明細書で検討された成形法は、消費財工業、食品サービス工業、運輸工業、医療産業、玩具工業等における使用のための生産品と関連付けた使用に好適であり得ることは明白であるはずである。更に、本明細書において開示された教示が、金型内の装飾、インサート成形、金型内組立品などと組み合わされて、スタック金型、回転及びコアバック金型を含む多数材料金型の構成において利用され得ることを、当業者であれば理解するであろう。
【0109】
本明細書において開示された実施形態のうちのいずれかの一部又は全ては、以下で説明される実施形態を含む、当該技術分野において既知の他の射出成形の実施形態の一部又は全てと組み合わされ得る。
【0110】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,045号、名称「Apparatus and Method for Injection Molding at Low Constant Pressure」(出願人案件12127)において開示され、米国特許出願公開第2012−0294963 A1号として公開されている低定圧での射出成形の実施形態と併用し得る。
【0111】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,047号「Alternative Pressure Control for a Low Constant Pressure Injection Molding Apparatus」(出願人案件12128)であって、現在の米国特許第8,757,999号において開示されている圧力制御の実施形態と併用し得る。
【0112】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,073号、名称「Non−Naturally Balanced Feed System for an Injection Molding Apparatus」(出願人案件12130)において開示され、米国特許出願公開第2012−0292823 A1号として公開されている非自然平衡型供給システムの実施形態と併用し得る。
【0113】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,197号、名称「Method for Injection Molding at Low,Substantially Constant Pressure」(出願人案件12131Q)において開示され、米国特許出願公開第2012−0295050 A1号として公開されている低圧で実質的に定圧での射出成形の実施形態と併用し得る。
【0114】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,178号、名称「Method for Injection Molding at Low,Substantially Constant Pressure」(出願人案件12132Q)において開示され、米国特許出願公開第2012−0295049 A1号として公開されている低圧で実質的に定圧での射出成形の実施形態と併用し得る。
【0115】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年2月22日に出願された米国特許出願第13/774,692号、名称「High Thermal Conductivity Co−Injection Molding System」(出願人案件12361)において開示されている共射出成形プロセスの実施形態と併用し得る。
【0116】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年2月12日出願の米国特許出願第13/765,428号、標題「Injection Mold Having a Simplified Evaporative Cooling System or a Simplified Cooling System with Exotic Cooling Fluids」(出願人案件12453M))、現在の米国特許第8,591,219号において開示されている簡素化冷却システムによる成形に関する実施形態と併用し得る。
【0117】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年5月21日に出願された米国特許出願第13/476,584「Method and Apparatus for Substantially Constant Pressure Injection Molding of Thinwall Parts」(出願人案件12487)において開示されている薄壁部品の成形の実施形態と併用し得る。
【0118】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年11月8日に出願された米国特許出願第13/672,246号、名称「Injection Mold With Fail Safe Pressure Mechanism」(出願人案件12657)において開示されているフェイルセーフ機構を伴う成形の実施形態と併用し得る。
【0119】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2012年11月20日に出願された米国特許出願第13/682,456号、名称「Method for Operating a High Productivity Injection Molding Machine」(出願人案件12673R)において開示されている高生産性成形の実施形態と併用し得る。
【0120】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年11月20日に出願された米国特許出願第14/085,515号、名称「Methods of Molding Compositions of Thermoplastic Polymer and Hydrogenated Castor Oil」(出願人案件12674M)において開示されている特定の熱可塑材の成形の実施形態と併用し得る。
【0121】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年11月21日に出願された米国特許出願第14/085,515号、名称「Reduced Size Runner for an Injection Mold System」(出願人案件12677M)において開示されているランナーシステムの実施形態と併用し得る。
【0122】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年5月13日に出願された米国特許出願第61/822,661号、名称「Low Constant Pressure Injection Molding System with Variable Position Molding Cavities」(出願人案件12896P)において開示されている移動成形システムの実施形態と併用し得る。
【0123】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年8月20日に出願された米国特許出願第61/861,298号、名称「Injection Molding Machines and Methods for Accounting for Changes in Material Properties During Injection Molding Runs」(出願人案件13020P)において開示されている射出成形制御システムの実施形態と併用し得る。
【0124】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年8月20日に出願された米国特許出願第61/861,304号、名称「Injection Molding Machines and Methods for Accounting for Changes in Material Properties During Injection Molding Runs」(出願人案件13021P)において開示されている射出成形制御システムの実施形態と併用し得る。
【0125】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年8月20日に出願された米国特許出願第61/861,310号、名称「Injection Molding Machines and Methods for Accounting for Changes in Material Properties During Injection Molding Runs」(出願人案件13022P)で開示されている射出成形制御システムの実施形態と併用し得る。
【0126】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、2013年12月19日に出願された米国特許出願第61/918,438号、名称「Methods of Forming Overmolded Articles」(出願人案件13190P)において開示されているオーバーモールド製品を形成するための射出成形の使用の実施形態と併用し得る。
【0127】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、1998年3月17日に発行された米国特許第5,728,329号、名称「Method and Apparatus for Injecting a Molten Material into a Mold Cavity」(出願人案件12467CC)において開示されている成形プロセスの制御の実施形態と併用し得る。
【0128】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、1998年2月10日に発行された米国特許第5,716,561号、名称「Injection Control System」(出願人案件12467CR)において開示されている成形プロセスの制御の実施形態と併用し得る。
【0129】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、米国特許出願第61/952,281号、名称「Plastic Article Forming Apparatus and Methods for Using the Same」(出願人案件13242P)において開示されているプリフォーム成形の実施形態と併用し得る。
【0130】
本開示の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれている、米国特許出願第61/952,283号、名称「Plastic Article Forming Apparatus and Methods for Using the Same」(出願人案件13243P)において開示されているプリフォーム成形に関する実施形態と併用し得る。
【0131】
本明細書において開示された寸法及び値は、列挙されたまさにその数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、別途指定されない限り、かかる寸法の各々は、列挙された値及びその値の周辺の機能的に等価な範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0132】
相互参照されるか又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書において引用される全ての文書は、特に除外すること又は別途限定することを明言しない限り、その全体が本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、その文献が本明細書において開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、その文献が、単独で、又は任意の他の単数又は複数の参考文献との任意の組み合わせにおいて、任意のこうした発明を教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と競合する程度に、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0133】
本発明の特定の実施形態が例示されて説明されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な他の変形及び変更が行われ得ることは当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれる全てのそのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲において網羅することを意図したものである。