特許第6181878号(P6181878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181878厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181878
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20170807BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01B11/06 Z
   G01N21/01 D
   G01N21/27 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-542655(P2016-542655)
(86)(22)【出願日】2014年9月23日
(65)【公表番号】特表2016-531303(P2016-531303A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】KR2014008852
(87)【国際公開番号】WO2015041506
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0112738
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】316004022
【氏名又は名称】エスエヌユー プレシジョン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク フェイジャー
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ヤンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー テヤン
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−521560(JP,A)
【文献】 特表2013−521900(JP,A)
【文献】 特開2011−083531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01N 21/00−21/01
21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光度計(Reflectometer)を用いる厚さ測定装置において、
光を放出する光源、
前記光源から放出される光の提供を受けて、互いに異なる複数の周波数に対して選択的に透過させて強度分布を有する光に変調し、前記強度分布を有する光の波長幅を調節することができる光フィルタ部、
前記光フィルタ部から変調された光を測定対象物側に照射し、前記測定対象物側から反射される光が入射される光学系、
前記光学系を通過した光の提供を受けて反射率情報を獲得する光検出部、および
前記光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定して、前記光フィルタ部によって変調される光の波長幅を調節し、数式によってモデリングされて、あらかじめ−記憶された理論反射率情報と前記光検出部により獲得された反射率情報を比較することによって測定対象物の厚さを測定する制御部を含み、
前記制御部は、
前記光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定する周波数設定モジュール、
数式によってモデリングされて、それぞれの厚さごとに対応する複数の理論反射率情報を記憶する記憶モジュール、
前記光検出部から測定された反射率情報と前記記憶モジュールに記憶された理論反射率情報を比較することによって測定対象物の厚さを判断する比較判断モジュール、および
前記周波数設定モジュールによって調節された周波数に対応して前記光検出部から測定された反射率情報および前記記憶モジュールに記憶された理論反射率情報のうちの少なくともいずれか1つを変換する変換モジュールをさらに含み、
前記比較判断モジュールは、前記反射率情報および前記理論反射率情報のうちの少なくともいずれか1つの変換された情報を用いて測定対象物の厚さを測定する
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項2】
前記光フィルタ部は、光源から放出される光の進行方向に沿って、互いに離隔されて配置される複数の音響光学変調フィルタ(Acousto−Optical Tunable Filter)であることを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項3】
前記光フィルタ部は、前記あらかじめ−設定された複数の周波数のそれぞれを透過した光の波長を維持した状態で光を結合することによって、前記光フィルタ部から透過した光が強度分布を有するように変調することを特徴とする請求項2に記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記光フィルタ部によって変調された光を反射するか、測定対象物から反射した光を透過させる第1光分割器、および前記第1光分割器と測定対象物との間に設けられて、前記第1光分割器から反射した光を測定対象物側に集束させるレンズ部を含み、
前記測定対象物で反射した光を前記光学系から提供を受けて、測定対象物の映像情報を獲得するカメラ部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
光源から放出される光を変調する光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定して、前記光フィルタ部によって変調される光の強度分布の波長幅を調節する変調段階、
数式によってそれぞれの厚さに対応する理論反射率情報を提供する理論反射率情報提供段階、
測定対象物側に前記光フィルタ部によって変調された光を照射して測定対象物の反射率情報を獲得する反射率情報獲得段階、
前記理論反射率情報と前記反射率情報を比較して前記理論反射率情報のうちから、前記反射率情報と最も類似した理論反射率情報を選択するマッチング段階、および
前記マッチング段階から選択された理論反射率情報に対応する厚さを測定対象物の厚さと決定する厚さ決定段階を含み、
前記理論反射率情報提供段階は、前記変調段階によって設定された複数の周波数を考慮して、前記理論反射率情報提供段階によって提供された理論反射率情報を変換する変換段階を含むことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項6】
前記マッチング段階において、前記反射率情報と最も類似した理論反射率情報を選択できない場合、前記変調段階を再遂行することを特徴とする請求項5に記載の厚さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法に関する。より詳細には、測定対象物の素材または測定位置に関係なく、厚さ測定の正確度を向上させることができる厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD、半導体分野において、多く使用される透明薄膜は、その特性上、厚さの分布が後工程に大きな影響を与えるため、透明薄膜の厚さをモニタリングすることができるシステムが社会全般的に要求されている。
【0003】
一般的に、薄膜の厚さは、探針(Stylus)を用いた機械的な方法および光学的な方法によって測定することができ、光学的な方法としては、干渉計(Interferometer)と反射計(Reflectometer)が広く用いられている。
【0004】
図1は、従来の反射光度計(Reflectometry)を用いた厚さ測定装置を概略的に示す概念図である。
【0005】
図1を参考すると、従来の反射光度計を用いた厚さ測定装置の場合、光源10から照射された光は、各種レンズ21、22を通過した後、光分割器30を介して測定対象物側に入射され、対物レンズ31によって集束される。その後、透明薄膜Sによって反射した光は、光分割器30を通過して分光器(Spectrometer)40またはカメラ50に入射される。ここで、分光器40を用いて、測定対象物から反射した光の波長に関する反射率の変化を示す反射率分布曲線を獲得する。
【0006】
ここで、透明薄膜Sの厚さを決定するために、分光器40から測定された反射率分布曲線と数式によってモデリングされた反射率分布曲線を比較する方法が活用されている。(参考先行文献韓国公開特許第10−2013−0021425号)
【0007】
まず、互いに異なる厚さを有する様々な透明薄膜Sを仮定し、それぞれの透明薄膜Sごとに数式を用いて反射率分布曲線を生成する。この後、モデリングされた複数の反射率分布曲線の中から測定された反射率分布曲線と最も一致するモデリングされた反射率分布曲線を採択することによって、そのモデリングされた反射率分布曲線に対応する厚さを薄膜層の厚さと決定する。
【0008】
ところが、従来の厚さ測定装置では、測定対象物の中心部に対しては測定された反射率曲線の生成が容易であるが、測定対象物の端側に行くほど反射率分布曲線の反射率数値が落ちて、モデリングされた反射率分布曲線と比較することが困難であるか、または不可能な問題が発生する。
【0009】
また、測定対象物の素材特性によって測定対象物から測定される反射率分布曲線の反射率数値が高すぎて、モデリングされた反射率分布曲線と比較することが困難であるか、または不可能な問題が発生する。
【0010】
すなわち、測定対象物の素材、測定位置などによって厚さ測定の正確度が落ちる問題点が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、このような従来の問題点を解決するためのものであって、測定対象物の素材または測定位置に関係なく、厚さ測定の正確度を向上させることができる厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は、本発明により、反射光度計(Reflectometer)を用いる厚さ測定装置において、光を放出する光源と、前記光源から放出される光の提供を受けて、あらかじめ−設定された互いに異なる周波数に対して選択的に透過させて強度分布を有する光に変調し、前記強度分布を有する光の波長幅を調節することができる光フィルタ部と、前記光フィルタ部から変調された光を測定対象物側に照射し、前記測定対象物側から反射される光が入射される光学系と、前記光学系を通過した光の提供を受けて反射率情報を獲得する光検出部と、前記光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定して、前記光フィルタ部によって変調される光の波長幅を調節し、数式によってモデリングされて、あらかじめ−記憶された理論反射率情報と前記光検出部により獲得された反射率情報を比較することによって測定対象物の厚さを測定する制御部を含むことを特徴とする厚さ測定装置によって達成される。
【0013】
ここで、前記光フィルタ部は、光源から放出される光の進行方向に沿って、互いに離隔されて配置される複数の音響光学変調フィルタ(Acousto−Optical Tunable Filter)であることが好ましい。
【0014】
ここで、前記光フィルタ部は、前記あらかじめ−設定された複数の周波数のそれぞれを透過した光の波長を維持した状態で光を結合することによって、前記光フィルタ部から透過した光が強度分布を有するように変調することが好ましい。
【0015】
ここで、前記光学系は、前記光フィルタ部によって変調された光を反射するか、測定対象物から反射した光を透過させる第1光分割器と、前記第1光分割器と測定対象物との間に設けられて、前記第1光分割器から反射した光を測定対象物側に集束させるレンズ部を含み、前記測定対象物で反射した光を前記光学系から提供を受けて、測定対象物の映像情報を獲得するカメラ部をさらに含むことが好ましい。
【0016】
ここで、前記制御部は、前記光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定する周波数設定モジュールと、数式によってモデリングされて、それぞれの厚さごとに対応する複数の理論反射率情報を記憶する記憶モジュールと、前記光検出部から測定された反射率情報と前記記憶モジュールに記憶された理論反射率情報を比較することによって測定対象物の厚さを判断する比較判断モジュールを含むことが好ましい。
【0017】
ここで、前記制御部は、前記周波数設定モジュールによって調節された周波数に対応して前記光検出部から測定された反射率情報および前記記憶モジュールに記憶された理論反射率情報のうちの少なくともいずれか1つを変換する変換モジュールをさらに含み、前記比較判断モジュールは、前記反射率情報および前記理論反射率情報のうちの少なくともいずれか1つの変換された情報を用いて測定対象物の厚さを測定することが好ましい。
【0018】
一方、前記目的は、本発明により、光源から放出される光を変調する光フィルタ部を透過することができる複数の周波数を設定して、前記光フィルタ部によって変調される光の強度分布の波長幅を調節する変調段階と、数式によってそれぞれの厚さに対応する理論反射率情報を提供する理論反射率情報提供段階と、測定対象物側に前記光フィルタ部によって変調された光を照射して測定対象物の反射率情報を獲得する反射率情報獲得段階と、前記理論反射率情報と前記反射率情報を比較して前記理論反射率情報のうちから、前記反射率情報と最も類似した理論反射率情報を選択するマッチング段階と、前記マッチング段階から選択された理論反射率情報に対応する厚さを測定対象物の厚さと決定する厚さ決定段階を含むことを特徴とする厚さ測定方法によって達成される。
【0019】
ここで、前記理論反射率情報提供段階は、前記変調段階によって設定された複数の周波数を考慮して、前記理論反射率情報提供段階によって提供された理論反射率情報を変換する変換段階を含むことが好ましい。
【0020】
ここで、前記マッチング段階において、前記反射率情報と最も類似した理論反射率情報の選択が不可能なとき、前記変調段階を再遂行することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、測定対象物に入射される強度分布を有する光の波長幅を容易に調節することができる厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法が提供される。
【0022】
また、反射率分布曲線の反射率数値が落ちる測定対象物の端の領域でも、正確な厚さ測定を実施することができる。
【0023】
また、測定対象物が反射率分布曲線の反射率数値が高過ぎに形成される素材で形成されても、正確な厚さ測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の反射光度計(Reflectometry)を用いた厚さ測定装置を概略的に示す概念図である。
図2】本発明の一実施形態に係る厚さ測定装置を概略的に示す概念図である。
図3図2に係る厚さ測定装置において、光フィルタ部を概略的に示す図である。
図4図2に係る厚さ測定装置において、制御部の構成を概略的に示す概念図である。
図5】本発明の一実施形態に係る厚さ測定方法を概略的に示すフローチャートである。
図6図5に係る厚さ測定方法において、変調段階前後の光の強度を波長に対して概略的に示すグラフである。
図7図5に係る厚さ測定方法において、変調段階前後の光による反射率情報を概略的に示すグラフである。
図8図5に係る厚さ測定方法において、変換段階を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法について詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る厚さ測定装置を概略的に示す概念図である。
【0027】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る厚さ測定装置100は、光が測定対象物Sに入射される前に、強度分布を有するように光を変調して、強度分布を有する光の波長幅を調節することによって、測定対象物Sから反射された後に測定される反射率情報を向上させることができるものであって、光源110と光フィルタ部120と光学系130と光検出部140とカメラ部150と制御部160を含む。
【0028】
前記光源110は光を放出するものであって、本発明の一実施形態では、白色光を放出するように設けられるが、これに制限されるものではない。
【0029】
また、本発明の一実施形態においては、光源110としてハロゲンランプが使用されるが、これに制限されるものではなく、様々な光源を使用することができる。
【0030】
図3は、図2に係る厚さ測定装置において、光フィルタ部を概略的に示す図であって、図3aは、互いに異なる周波数を有する3つの音波発生部が備えられた光フィルタ部を概略的に示し、図3bは、互いに異なる周波数を有する5つの音波発生部が備えられた光フィルタ部を概略的に示す図である。
【0031】
図3を参考すると、前記光フィルタ部120は、光源110から放出される光の提供を受け、あらかじめ−設定された複数の周波数に対して選択的に透過させることによって強度分布を有する光に変調し、強度分布を有する光の波長幅を調節するものである。
【0032】
一方、ここでは説明の便宜のために、図3aに示された光フィルタ部120を基準として説明する。
【0033】
本発明の一実施形態において、光フィルタ部120は、光の進行方向と交差する方向に特定の周波数の音波を放出する音波発生部121によって、微細な波長幅を有するように光を変調する。
【0034】
ここで、音波発生部121は、光の進行方向に沿って複数が配置され、それぞれの音波発生部121は、互いに異なる周波数の音波を発生するように設けられる。
【0035】
本発明の一実施形態において、音波発生部121は、光の進行方向に沿って、それぞれ120MHz、130MHz、140MHzの周波数を有する音波を発生させる第1音波発生部121aと第2音波発生部121bと第3音波発生部121cを含んでいるが、これに制限されるものではなく、変調された光の波長幅を広げたり狭めるために、それぞれの音波発生部121の周波数差を増加させるか、減少させることができる。
【0036】
一方、光源110から放出される光は、それぞれの音波発生部121a、121b、121cによって特定の周波数を有し、微細な波長幅を有する光に変調される。
【0037】
ここで、音波発生部121a、121b、121cによって、光はそれぞれの特定の周波数が保存された状態に結合され、強度分布を有する光に変調される。
【0038】
再度説明すると、それぞれの音波発生部121a、121b、121cを通過した光を結合すれば強度分布を有するようになるが、強度分布の範囲内で光が連続的に連結されるものではなく、それぞれの特定の周波数を有する光のみが断続的に連結される。
【0039】
これにより、光変調時に強度分布を有するとともに、ノイズが発生することを防止することができる。
【0040】
一方、光フィルタ部120によって変調された光が、ユーザーが望む強度分布を有するように、それぞれの音波発生部121a、121b、121cによって光の強度を調節することが好ましい。
【0041】
すなわち、本発明の一実施形態においては、第2音波発生部121bによって変調される光が最も強い強度を有するうように制御され、第1音波発生部と121aおよび第3音波発生部121cによって変調される光は、ほぼ同じ強度を有するように制御される。
【0042】
本発明の一実施形態においては、光フィルタ部120が光の進行方向に沿って、互いに離隔される複数の音響光学変調フィルタ(Acousto−Optical Tunable Filter)で設けられるが、これに制限されるものではない。
【0043】
前記光学系130は、前述した光フィルタ部120によって変調された光の提供を受け、測定対象物S側に入射させて、測定対象物Sから反射される光が入射されるものであって、光分割器(Beam splitter)131とレンズ部132と半透過ミラー133を含む。
【0044】
前記光分割器131は、光フィルタ部120によって変調された光の提供を受けて測定対象物S側に反射させるか、測定対象物Sから反射された光を透過させるものである。
【0045】
前記レンズ部132は、光分割器131から反射された光を測定対象物S側に集束させるものであって、対物レンズで設けられることができるが、これに制限されるものではない。
【0046】
前記半透過ミラー133は、測定対象物Sから反射される光の一部を反射させるか、または透過させることによって、後述する光検出部140側やカメラ部150側に光の進行方向を案内するものである。
【0047】
一方、光分割器131と半透過ミラー133との間には、測定対象物から反射された光を集束させる第2レンズ部132bを備えることができるが、これに制限されるものではない。
【0048】
一方、光学系130の構成は周知であるため、前述した構成に制限されるものではなく、他の構成をさらに含む光学系または前述した構成を省略した光学系130を用いることができるのは当然である。
【0049】
前記光検出部140は、測定対象物Sから反射されて光学系130を通過した光の提供を受け、スペクトルを分析して反射率情報を獲得するものである。
【0050】
本発明の一実施形態において、反射率情報とは光の強度と波長に対する反射率の変化を示す反射率分布曲線を意味しているが、これに制限されるものではない。
【0051】
前記カメラ部150は、測定対象物Sから反射されて光学系130を通過した光の提供を受け、反射率情報をイメージとして結像するものである。本発明の一実施形態において、カメラ部150は、測定しようとする領域に適した画素個数を有するCCD(Charge coulped device)カメラを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0052】
図4は、図2に係る厚さ測定装置において、制御部の構成を概略的に示す概念図である。
【0053】
図4を参考すると、前記制御部160は、光フィルタ部120を透過することができる複数の周波数を設定して、光フィルタ部120によって変調される光の波長幅を調節し、数式によってモデリングされてあらかじめ−記憶された理論反射率情報と光検出部140によって獲得された反射率情報を比較することによって、測定対象物Sの厚さを測定するものであって、周波数設定モジュール161と記憶モジュール162と変換モジュール163と比較判断モジュール164を含む。
【0054】
前記周波数設定モジュール161は、光フィルタ部120を透過することができる複数の周波数を設定するものであって、本発明の一実施形態によれば、それぞれの音波発生部121から放出される音波の特定の周波数を設定するものである。
【0055】
ここで、それぞれの音波発生部121から放出される音波の特定の周波数の差または発生する音波の個数などを制御することによって、光フィルタ部120により変調される光の強度分布の波長幅を変更することができる。
【0056】
ここで、光フィルタ部120によって変調される光の強度分布の波長幅が変更されると、この後、光検出部140から獲得される反射率情報の反射率数値が変更され、反射率情報の反射率の値が理論反射率情報と比較するのに、最適の値になるように周波数設定モジュール161を制御することができる。
【0057】
前記記憶モジュール162は、数式によってそれぞれの厚さに対応する複数の理論反射率情報を記憶するものである。
【0058】
ここで、理論反射率情報をモデリングする数式は下記の通りである。
【0059】
【数1】
【0060】
ここで、R(d、λ)は入射面に平行なP波のトータル反射係数であり、r12は空気層と測定対象物の境界面でのP波のフレネル(Fresnel)反射係数であり、r23は測定対象物と測定対象物を支持する支持層の境界面でのP波のフレネル反射係数であり、βは光(L)が測定対象物を通る時に発生する位相変化量である。
【0061】
【数2】
【0062】
ここで、Rδ(d、λ) は入射面に直交するS波のトータル反射係数であり、rδ12は空気層12と測定対象物の境界面でのS波のフレネル(Fresnel)反射係数であり、rδ23は測定対象物と支持層の境界面でのS波のフレネル反射係数である。
【0063】
【数3】
【0064】
ここで、dは測定対象物の厚さであり、
は測定対象物の複素屈折率(complex refractive index)であり、φは測定対象物での屈折角である。
【0065】
【数4】
【0066】
ここで、Rは数学的モデリングによる理論反射率であり、Iは入射される光(L)の強度(intensity)であり、Iは反射する光(L)の強度である。
【0067】
数式1〜数式3を数式4に代入して、一定の厚さについて理論反射率を求めることができ、波長を変化させながら反射率分布をグラフで示して、理論反射率分布曲線を生成することができる。
【0068】
一方、前述した数式4によって生成された理論反射率分布曲線に測定対象物から反射される光の強度分布を乗じて、理論積分反射率分布曲線を求めることができ、これは下記の数式によって計算される。
【0069】
【数5】
【0070】
ここで、Rは数学的モデリングによる理論積分反射率であり、λ*は特定の波長であり、Iは入力強度であり、Iは出力強度であり、Iは特定の波長での強度の最大値であり、I×Fλは特定の波長の強度分布曲線であり、Rは理論反射率分布曲線である。
【0071】
すなわち、記憶モジュール162は、それぞれの厚さに対応する反射率分布曲線を獲得した後、これによって、それぞれの厚さに対応する積分反射率曲線を獲得して記憶する。
【0072】
一方、記憶モジュール162は、周波数設定モジュール161によって光の強度分布が変化する時に、変化した強度分布値を用いて理論反射率情報を再獲得して記憶することができるが、これに制限されるものではなく、後述する変換モジュール163によってあらかじめ−記憶された理論反射率情報を変換することができる。
【0073】
前記変換モジュール163は、周波数設定モジュール161による周波数調節時に光検出部140から測定される反射率情報または記憶モジュール162に記憶された理論反射率情報のうちの少なくともいずれか1つを変換するものである。
【0074】
前述したように、数学的モデリングによって理論反射率情報を獲得する場合、入射される光の光度を初期設定された値と仮定して計算する。
【0075】
ここで、周波数設定モジュール161により光の強度分布が変更される場合には、入射される光の強度も変更されるので、反射率情報と理論反射率情報が同じ条件下で比較されない問題点が発生することがあり、このような条件を一致させるように2つのうちのどちらかの条件を変換させる必要がある。
【0076】
本発明の一実施形態においては、記憶モジュール162にあらかじめ−記憶された理論反射率情報を変換する方法を採択し、変換された積分反射率分布曲線は下記の数式によって決定される。
【0077】
【数6】
【0078】
ここで、Fλ**(λ)は初期設定値に対する光の強度の変化量を意味し、他の数式は前述したものと同じである。
【0079】
一方、本発明の一実施形態のように、理論反射率情報を変換して反射率情報と同じ条件で行われるようにする方法も可能であるが、反射率情報を理論反射率情報の条件と同一になるように変換させることができる。
【0080】
前記比較判断モジュール164は、光検出部140によって獲得した反射率情報と記憶モジュール162および変換モジュール163によって変換された理論反射率情報を比較して、測定対象物の厚さを決定するものである。
【0081】
すなわち、光検出部140によって獲得した反射率情報と理論反射率情報を比較して、最も類似した理論反射率情報を検索し、最も類似した理論反射率情報を検索時に、最も類似した理論反射率と対応する厚さ値を測定対象物の厚さと決定する。
【0082】
ここからは、前述した厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法の一実施形態の作動について説明する。
【0083】
図5は、本発明の一実施形態に係る厚さ測定方法を概略的に示すフローチャートである。
【0084】
図5を参考すると、本発明の一実施形態に係る厚さ測定方法は、理論反射率情報と比較しやすい反射率を有するように、反射率情報の反射率を調節することによって、厚さ測定の正確性を向上させることができるものであって、変調段階S110と理論反射率情報提供段階S120と変換段階S125と反射率情報獲得段階S130とマッチング段階S140と厚さ決定段階S150を含む。
【0085】
前記変調段階S110は、光フィルタ部120を透過することができる複数の周波数を設定し、光源110から放出される光が光フィルタ部120によって変調時の強度分布を有して波長幅を調節する段階である。
【0086】
ここで、波長幅は、音波発生部121から放出される音波の個数および周波数の値によって決定され、後述する反射率情報獲得段階S140で獲得される反射率情報の反射率数値と関連する。
【0087】
図6は、図5に係る厚さ測定方法において、変調段階前後の光の強度を波長に対して概略的に示すグラフであり、図7は、図5に係る厚さ測定方法において、変調段階前後の光による反射率情報を概略的に示すグラフである。
【0088】
図6または図7を参考すると、変調段階S110を行うことに応じて、光の強度および反射率情報での反射率数値が変更されたことが分かる。
【0089】
一方、本発明の一実施形態においては、複数の音波発生部121の中から音波を放出する、すなわち作動する音波発生部121の個数を決定して、作動する音波発生部121から放出される音波の周波数を個別に決定することによって、変調段階S110を行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0090】
本発明の一実施形態においては、変調段階S110によって3つの音波発生部121を作動させ、それぞれの音波発生部121a、121b、121cから放出される音波は、それぞれ120MHz、130MHz、140MHzを有する。
【0091】
一方、本発明の一実施形態において、それぞれの音波発生部121から放出される音波は、光源110から離れるほど順次に大きくなるように設けられるが、これに制限されるものではなく、順次に小さくなったり不規則にも配置することができる。
【0092】
また、それぞれの音波発生部121から放出される音波の中で最小値と最大値の差が大きいほど、変調される光の強度分布は広くなり、最小値と最大値の差が小さいほど変調される光の強度分布は狭くなる。
【0093】
一方、本発明の一実施形態によれば、それぞれの音波発生部121から放出される音波は、光源110から離れるほど10MHzずつ一定に増加するように設けられるが、これに制限されるものではない。
【0094】
前記理論反射率情報提供段階S120は、数学的モデリングによって理論反射率情報を前述した記憶モジュール162に記憶する段階であって、モデリング段階S124と変換段階S125を含む。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、理論反射率情報は、特定の周波数の微細な波長幅を有する光を最初の光の強度値に決定するが、これに制限されるものではない。
【0096】
前記モデリング段階S124は、本発明の一実施形態によれば、理論反射率分布曲線および理論積分反射率分布曲線を決定する段階であって、前述したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0097】
図8は、図5に係る厚さ測定方法において、変換段階を概略的に示すグラフであり、図8aは、変調段階によって、光の強度が変化する様子を示す図であり、図8bは、光の強度変化に応じて、同じ厚さでの反射率情報と理論反射率情報が異なっていることを示す図であり、図8cは、変換段階によって同じ厚さでの反射率情報と理論反射率情報が一致することを示す図である。
【0098】
図8を参考すると、前記変換段階S125は、変調段階S110によって、理論反射率情報提供段階S120で設定された最初の光の強度値とは異なった強度値を有する光に変調される時、理論反射率情報を変換する段階である。
【0099】
前述したように、理論反射率情報は、理論反射率情報提供段階S120で設定された光の強度値を基準として理論積分反射率分布曲線を獲得する。
【0100】
ここで、設定された光の強度値が変更されると、理論反射率情報と反射率情報を比較することができる前提条件がずれるので、厚さ決定の正確性を期待することができない。
【0101】
したがって、理論反射率情報を、変更された強度値を基準として変換したり反射率情報を最初強度値に変換する過程が必要であり、本発明の一実施形態においては、理論反射率情報を変更された強度値を基準として変換する。
【0102】
前記反射率情報獲得段階S130は、測定対象物Sから反射される光を光検出部140で入力を受けて、反射率分布曲線を獲得する段階である。
【0103】
反射率情報獲得段階S130で光検出部140によって反射率分布曲線を獲得することは周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0104】
前記マッチング段階S140は、理論反射率情報獲得段階S120によって獲得した理論反射率情報と反射率情報獲得段階S140によって獲得した反射率情報を比較して、反射率情報と最も類似した理論反射率情報を検索する段階である。
【0105】
最も類似しているかどうかは、最小自乗法(least square method)を用いた誤差関数を求め、最小の誤差を有する理論反射率情報と反射率情報を「最も類似した」と判断し、このような方法は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0106】
ただし、前述したように、最小自乗法だけでなく、他の方法により「最も類似した」かどうかを判断することができるのは当然である。
【0107】
一方、マッチング段階S140において、光検出部140によって測定される反射率情報の反射率値が、比較することができなかったり、比較することが難しいほど低いか高く測定されることがあり得る。
【0108】
このような場合、前述した変調段階S110を再遂行し、反射率情報の反射率値が非常に低く測定されるなら、変調段階S110で光の強度分布波長幅が広くなるように周波数の数値および個数などを再設定し、反射率情報の反射率値が非常に高く測定されるなら、変調段階S110で光の強度分布波長幅が狭くなるように周波数の数値および個数などを再設定する。
【0109】
すなわち、変調段階S110を再遂行することによって、この後マッチング段階S150で反射率情報と理論反射率情報を容易に比較することができるように反射率数値を加工する。
【0110】
ここで、変調段階S110の再遂行によって変更された数値を基盤として理論反射率情報を再獲得して記憶した後、マッチング段階S140を再随行して反射率情報と最も類似した理論反射率情報を検索する。
【0111】
前記厚さ決定段階S150は、反射率情報と最も類似した理論反射率情報を選択して、選択された理論反射率情報に対応する厚さを測定対象物の厚さと決定する。
【0112】
一方、測定対象物Sの検査表面をマイクロまたはナノスケールで設けられる複数の領域に区画し、それぞれの領域ごとに検査して測定された結果を組み合わせると、測定対象物S表面の厚さと、3次元形状などを含む測定対象物Sの検査表面の総合的な情報を算出して、これを可視化することができる。
【0113】
本発明の権利範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲内で様々な形態の実施形態で具現することができる。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも変形可能な多様な範囲まで本発明の請求範囲の記載の範囲内にあるものとみなす。
【産業上利用の可能性】
【0114】
測定対象物の素材または測定位置に関係なく、厚さ測定の正確度を向上させることができる厚さ測定装置およびこれを用いた厚さ測定方法を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8