(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各無線通信装置は空中線電力1mW以下の陸上移動業務の作業連絡用無線局の無線設備であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の無線通信システム。
【背景技術】
【0002】
周波数の有効利用及び他の利用者との混信の回避を図る目的から国の技術基準と、併せて無線設備の適正品質、互換性の確保等、無線機器製造者及び利用者の利便を図る目的から、「特定小電力無線局無線電話用無線設備標準規格」が非特許文献1において定められている。この特定小電力無線局は無線局の免許が不要であることから全国で広く普及している。
【0003】
非特許文献1の2ページにおいて、標準システムの運用形態として「基本型」、「エリア拡大型」に分類でき、当該「基本型」として「対向型」、「集中基地型」が開示されている。また、非特許文献1の4〜9ページにおいて、同時通話を行うための「同報通信方式」又は「複信方式」の通信方式を用いる周波数帯、空中線電力、チャネル数、使用周波数が規定されている。
【0004】
以下、同時通話を行う従来例にかかる無線通信システムの構成例について以下に説明する。なお、以下の従来例及び実施例においては、非特許文献1に規定する使用周波数及びチャネルを準拠してその一例について説明するものである。図面において、例えば454MHz帯CHAは454MHz帯のチャネルAを表し、以下同様である。
【0005】
図1は従来例1にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図1の無線通信システムは、中継機である親機110と、例えば3個の子機101〜103とを備えて構成される。ここで、子機101〜103は互いに異なる送信周波数を有する1mW無線送信部と、互いに同じ受信周波数を有する無線受信部とを備える。一方、親機110は子機101〜103の無線受信部の受信周波数と同じ送信周波数を有する無線送信部と、各子機101〜103の無線送信部の送信周波数とそれぞれ同じ受信周波数を有する3個の無線受信部と、3個の無線受信部からの音声信号を加算混合して無線送信部に出力する加算器111とを備える。以上のように構成することで、同時通話用無線通信システムを構成している。
【0006】
図2は従来例2にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2の無線通信システムは、中継機である親機210と、例えば3個の子機201〜203とを備えて構成される。ここで、子機201〜203は互いに異なるペアチャネルの送受信周波数を有する10mW無線送信部及び無線受信部を備える。一方、親機210は、子機201と同時通話通信を行う中継装置211と、子機202と同時通話通信を行う中継装置212と、子機203と同時通話通信を行う中継装置213と、中継装置211〜213の各無線受信部からの音声信号を加算混合して分配器215に出力する加算器214と、加算器214からの音声信号を中継装置211〜213の各10mW無線送信部に3分配するように出力する分配器215とを備える。以上のように構成することで、同時通話用無線通信システムを構成している。
【0007】
ところで、従来例1の基本構成を有する無線通信システムが以下の特許文献1〜3において開示されている。
【0008】
特許文献1においては、複数の受信復調手段の出力信号を加算した音声信号を更に別の無線中継機の受信復調手段の出力信号に追加して加算することにより、無線中継機が製品として完成した後でも同時通話可能な無線通信機の数を理論上無限に増やすことができる無線中継機が開示されている。当該無線中継機は、無線電波を受信し音声信号を復調するための複数の受信復調手段と、音声信号を入力するための外部入力端子と、前記複数の受信復調手段によって出力されたそれぞれの復調信号及び前記外部入力端子から入力された音声信号を加算するためのミキサと、音声信号を変調し無線電波として送信するための変調送信手段と、前記変調送信手段を作動若しくは停止させるためのスイッチと、前記ミキサによって加算された音声信号を外部へ出力するための外部出力端子とを備える。
【0009】
また、特許文献2においては、複数の受信復調手段の出力信号を加算した音声信号を別の無線中継機内部の一つの受信復調手段の受信周波数として変調送信することにより、無線中継機が製品として完成した後でも同時通話可能な無線通信機の数を理論上無限に増やすことができる無線中継機が開示されている。当該無線中継機は、無線電波を受信し音声信号を復調するための複数の受信復調手段と、前記複数の受信復調手段によって出力されたそれぞれの復調信号を加算するためのミキサと、音声信号を変調し無線電波として送信するための変調送信手段と、複数の無線通信機が共有する一つの受信周波数を前記変調送信手段の第1の送信周波数とし、自局以外の他の一つの無線中継機内の一つの受信復調手段の受信周波数を前記変調送信手段の第2の送信周波数として設定することの出来る周波数設定手段と、前記第1及び第2の送信周波数を選択することが出来るスイッチとを備える。
【0010】
さらに、特許文献3においては、中継機能を持つ親機を介して親子間又は子機間の同時通話内容をすべての無線機にて受信可能とし、かつ、同時通話中でも他の子機が通話用の電波を発射可能な安価な複数無線機同時通話システムが開示されている。当該複数無線機同時通話システムは、子機へ同時通話内容を中継する親機として、受信チャネル周波数と送信チャネル周波数とをそれぞれ固有に割り当てた少なくとも2台以上の中継器1を中継ケーブルにより互いに相互接続し、制御部からの制御により、マイクアンプからのマイク入力信号、受信機で受信した子機からの受信信号、他の中継器からの中継ケーブル経由の入力信号、及び、これらの信号の中から第1のセレクタで選択した信号同士を混合器で混合した混合信号、のうちのいずれかを、第2のセレクタで選択してすべての子機に対して通話信号として送信機から送信し、また、第3のセレクタで選択して他の中継器に中継ケーブルにより送信する。
【0011】
ところで、非特許文献1の13ページにおいて、「キャリアセンス」について以下のように定められている(旧郵政省告示、平成元年第49号)。以下、「キャリアセンスの規定」という。
「(3)キャリアセンス
無線設備にはキャリアセンスを備えるものとする。キャリアセンスは、無線通信回線の設定に先立ち、他の無線局の電波を受信した場合、当該無線局の発射電波と同一の周波数(複信方式及び半複信方式のものにあっては受信周波数に対応する送信周波数)の電波の発射を行わないものとする。空中線電力が1mW以下のものについては、通信方式が複信方式及び半複信方式であっても自局の送信周波数でキャリアセンスを行うことができる。ただし、413.7MHz以上414.14375MHz以下及び454.05MHz以上454.19375MHz以下の周波数の電波を使用するものは、キャリアセンスの備え付けを要しないものとする。空き状態の判定は、絶対利得が2.14dBの空中線に誘起する電圧が7μV以下とし、判定時間は200ms以上、応答時間は20ms以内とする。」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の従来例1にかかる無線通信システムでは、前記キャリアセンスの規定のうちの但し書きの適用により、キャリアセンスを行う必要が無い。しかし、言い換えると、前記キャリアセンスの規定により、送信空中線電力が1mW以下に規定されており、送信電力がきわめて小さくて伝搬距離がきわめて短いという問題点があった。また、上述のように、特許文献1〜3において開示された同時通話可能な無線通信システムは従来例1と同様の基本構成を有しており、従来例1と同様の問題点があった。
【0015】
また、従来例2にかかる無線通信システムでは、子機201〜203及び中継装置211〜213がキャリアセンスの機能を有するように構成すれば、前記キャリアセンスの規定を満たした同時通話無線通信システムを構成できる。しかし、中継装置211〜213は同時に3個の電波を送信するので、電波干渉を回避するために、3個の中継装置211〜213を互いに所定以上距離だけ離隔させて配置させる必要がある。従って、親機210を小型で一体化することが難しいという問題点があった。
【0016】
本発明の目的は、親機を不要とすることができる、少なくとも4者同時通話可能な無線通信装置及びそれを用いた無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明にかかる無線通信システムは、
少なくとも4個の第1〜第4の無線通信装置を含む同時通話無線通信システムであって、
前記各無線通信装置は、
無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段と、
前記復調された音声信号と、自局で送信すべき音声信号とを混合して、混合後の音声信号を出力する音声混合手段と、
前記混合後の音声信号に従って変調することで変調された無線信号を送信する送信手段とを備え、
前記第1の無線通信装置は無線信号を前記第2の無線通信装置に送信し、
前記第2の無線通信装置は前記第1の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第3の無線通信装置に送信し、
前記第3の無線通信装置は前記第2の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第4の無線通信装置に送信し、
前記第4の無線通信装置は前記第3の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置は前記第4の無線通信装置からの無線信号を受信することで、前記第1〜第4の無線通信装置により音声信号のループ回路を形成し、
前記第1〜第4の無線通信装置のうちのいずれかは、前記音声信号のループ回路におけるハウリングを防止するハウリング防止手段を備えることを特徴とする。
【0018】
第2の発明にかかる無線通信システムは、
少なくとも6個の第1〜第6の無線通信装置を含む同時通話無線通信システムであって、
前記各無線通信装置は、
無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段と、
前記復調された音声信号と、自局で送信すべき音声信号とを混合して、混合後の音声信号を出力する音声混合手段と、
前記混合後の音声信号に従って変調することで変調された無線信号を送信する送信手段とを備え、
前記第1の無線通信装置は無線信号を前記第2の無線通信装置に送信し、
前記第2の無線通信装置は前記第1の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第3の無線通信装置に送信し、
前記第3の無線通信装置は前記第2の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第4の無線通信装置に送信し、
前記第4の無線通信装置は前記第3の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第5の無線通信装置に送信し、
前記第5の無線通信装置は前記第4の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第6の無線通信装置に送信し、
前記第6の無線通信装置は前記第5の無線通信装置からの無線信号を受信し、変調された無線信号を前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置は前記第6の無線通信装置からの無線信号を受信することで、前記第1〜第6の無線通信装置により音声信号のループ回路を形成し、
前記第1〜第6の無線通信装置のうちのいずれかは、前記音声信号のループ回路におけるハウリングを防止するハウリング防止手段を備えることを特徴とする。
【0019】
第3の発明にかかる無線通信システムは、
4個以上の偶数個の無線通信装置を含む同時通話無線通信システムであって、
前記各無線通信装置は、
無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段と、
前記復調された音声信号と、自局で送信すべき音声信号とを混合して、混合後の音声信号を出力する音声混合手段と、
前記混合後の音声信号に従って変調することで変調された無線信号を送信する送信手段とを備え、
前記4個以上の偶数個の無線通信装置を、1本の音声信号のループ回路を形成するように、前記4個以上の偶数個の無線通信装置のうちの各1対の無線通信装置を順次無線通信回線を介して接続し、
前記4個以上の偶数個の無線通信装置のうちのいずれかは、前記音声信号のループ回路におけるハウリングを防止するハウリング防止手段を備えることを特徴とする。
【0020】
前記第1〜第3の発明にかかる無線通信システムにおいて、
前記各無線通信装置は空中線電力1mW以下の陸上移動業務の作業連絡用無線局の無線設備であることを特徴とする。
【0021】
前記無線通信システムにおいて、
前記各無線通信装置の送信手段及び受信手段は互いに異なる周波数帯の無線チャネルを用いかつ、前記偶数個の無線通信装置の各送信手段は、前記1本の音声信号のループ回路に沿って順次互いに異なる周波数帯の無線チャネルを用いることを特徴とする。
【0022】
第4の発明にかかる無線通信装置は、前記無線通信システムのための前記無線通信装置であることを特徴とする。
【0023】
第5の発明にかかる無線通信システムは、第1〜第3の発明にかかる無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムを構成する4個以上の偶数個の無線通信装置のうちの少なくとも1個の無線通信装置は、当該無線通信装置の受信手段の無線チャネルとは異なる無線チャネルで無線信号を受信するサブ受信手段をさらに備え、
前記無線通信システムは、
前記4個以上の偶数個の無線通信装置とは別の無線通信装置であって、
自局で送信すべき音声信号に従って変調し、変調された無線信号を前記少なくとも1個の無線通信装置のサブ受信手段に送信する送信手段と、
前記少なくとも1個の無線通信装置の送信手段からの無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段とを備える別の無線通信装置を備えることで、
前記少なくとも1個の無線通信装置と前記別の無線通信装置とを全二重の無線通信回線を介して接続し、
これにより少なくとも5者以上の同時通話を行うことを特徴とする。
【0024】
前記第5の発明にかかる無線通信システムにおいて、前記別の無線通信装置は、
前記第1〜第3の発明にかかる無線通信システムとは別の無線通信システムであって、請求項1〜5記載の無線通信システムと無線チャネルを除き同一の構成を有する別の無線通信システム内の無線通信装置であることを特徴とする。
【0025】
第6の発明にかかる無線通信システムは、第1〜第3の発明にかかる無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムを構成する4個以上の偶数個の無線通信装置のうちの複数個の無線通信装置はそれぞれ、当該無線通信装置の受信手段の無線チャネルとは異なる無線チャネルで無線信号を受信するサブ受信手段をさらに備え、
前記無線通信システムは、
前記4個以上の偶数個の無線通信装置とは複数の別の無線通信装置であって、
自局で送信すべき音声信号に従って変調し、変調された無線信号を前記少なくとも1個の無線通信装置のサブ受信手段に送信する送信手段と、
前記少なくとも1個の無線通信装置の送信手段からの無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段とを備える複数の別の無線通信装置を備えることで、
前記複数の無線通信装置と前記複数の別の無線通信装置とをそれぞれ全二重の無線通信回線を介して接続し、
これにより少なくとも6者以上の同時通話を行うことを特徴とする。
【0026】
前記第6の発明にかかる無線通信システムにおいて、前記複数の別の無線通信装置はそれぞれ、
前記第1〜第3の発明にかかる無線通信システムとは別の無線通信システムであって、請求項1〜5記載の無線通信システムと無線チャネルを除き同一の構成を有する別の無線通信システム内の無線通信装置であることを特徴とする。
【0027】
第7の発明にかかる無線通信装置は、
第5又は第6の発明にかかる無線通信システムのための前記別の無線通信装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
従って、本発明にかかる無線通信装置及びそれを用いた無線通信システムによれば、親機を不要とし、同一の無線通信装置構成で、少なくとも4者同時通話を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0031】
実施形態1.
図3は実施形態1にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図3において、実施形態1にかかる無線通信システムは、4個の無線通信装置10−1〜10−4(総称して、符号10を付す。)を備えて構成される。なお、
図3のチャネル番号CH1〜CH4は例えば非特許文献2において規定される作業連絡用チャネルのチャネル番号から選択されるいずれかの異なるチャネル番号であり、以下の図面において同様である。
【0032】
図3において、無線通信装置10−1〜10−4はそれぞれ、1個の変調送信部13と、1個の受信復調部11と、可変増幅器19と、スピーカ16と、マイクロホン14とを備える。各無線通信装置10−1〜10−4において、各受信復調部11で受信して復調された音声信号は可変増幅器19を介してマイクロホン14からの音声信号と混合された後、変調送信部13に入力される。変調送信部13は入力される混合後の音声信号に従って無線信号を変調して、変調された無線信号を送信する。
【0033】
ここで、各無線通信装置10−1〜10−4のチャネル使用の動作例は以下の通りである。なお、使用するチャネルは一例であって、後述するように音声信号のループ回路を形成できればよい。
【0034】
(1)無線通信装置10−1の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル1で送信する。ただし、無線通信装置10−1の受信復調部11は無線信号を454MHz帯のチャネル4で受信待受けする。
(2)無線通信装置10−2の受信復調部11は無線通信装置10−1からの無線信号を413MHz帯のチャネル1で受信することで無線通信装置10−1,10−2間で無線通信回線L1が形成された後、無線通信装置10−2の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル2で送信する。
(3)無線通信装置10−3の受信復調部11は無線通信装置10−2からの無線信号を454MHz帯のチャネル2で受信することで無線通信装置10−2,10−3間で無線通信回線L2が形成された後、無線通信装置10−3の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル3で送信する。
(4)無線通信装置10−4の受信復調部11は無線通信装置10−3からの無線信号を413MHz帯のチャネル3で受信することで無線通信装置10−3,10−4間で無線通信回線L3が形成された後、無線通信装置10−4の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル4で送信する。
(5)無線通信装置10−1は無線通信装置10−4からの無線信号を454MHz帯のチャネル4で受信することで無線通信装置10−4,10−1間で無線通信回線L4が形成される。
【0035】
以上の無線通信装置10−1〜10−4の動作により、4本の無線通信回線L1〜L4がループ形状で連結されて、1本の音声信号のループ回路が形成される。これにより、無線通信装置10−1〜10−4の間で1本の音声信号ループ回路を形成して4者で同時通話できる。なお、奇数の無線通信回線L1,L3で413MHz帯の無線チャネルを使用する一方、偶数の無線通信回線L2,L4で454MHz帯の無線チャネルを使用することで、同一の無線通信装置10内の送受信周波数間の差をなるべく離隔させている。すなわち、各無線通信装置10の変調送信部13及び受信復調部11は互いに異なる周波数帯の無線チャネルを用いかつ、各無線通信装置10の各変調送信部13は、前記1本の音声信号のループ回路に沿って順次互いに異なる周波数帯の無線チャネルを用いる。言い換えれば、各無線通信装置10の各受信復調部11は、前記1本の音声信号のループ回路に沿って順次互いに異なる周波数帯の無線チャネルを用いる。
【0036】
以上のように構成された実施形態1にかかる無線通信システムの特徴は以下の通りである。
【0037】
(1)各無線通信装置10−1〜10−4はサブ受信手段又は回路なしで構成される。
(2)当該無線通信システムにおいて、1本の音声信号ループ回路を形成して4者で同時通話できる。
(3)当該無線通信システムにおいて、4者同時通話時に音声信号ループ回路が形成されるので、ハウリングが発生する可能性があるが、これを防止するために、工場出荷前にもしくは工場出荷後の所定の周期で定期的に、ハウリングが発生しないように、各無線通信装置10−1〜10−4の可変増幅器19の利得を調整する必要がある。理論的には「振幅条件と位相条件を含む発振条件」として公知であり、振幅条件としては例えば、音声信号ループ回路のループ利得が0以上でかつ1未満の所定値(最低値は通話用の音声信号が人間の耳で認識できるように設定される)であるように調整すれば、ハウリングを防止できる。
(4)当該無線通信システムにおいては、非特許文献2に規定する作業連絡用チャネルを使用するために、送信時間制限(空中線送信電力:1mW)がなく、また、キャリアセンスを要しないため、各無線通信装置10−1〜10−4のアクセスタイミングに制限はない。
(5)少なくとも4者同時通話が可能であって、拡張する場合は、実施形態2等で後述するように、無線通信装置10と同様の構成を有する無線通信装置10を追加することで、例えば6者、8者、10者など偶数のユーザによる同時通話が可能となる。
(6)従来例では、親局−子局の関係で無線通信システムを構成していたが、当該無線通信システムでは親局を必要としない、子局限定の無線通信システムを構成できる。
(7)なお、周波数の組合せの関係上、例えば5者、7者、9者などの奇数のユーザによる無線通信システムの構成は不可能である。
【0038】
以下、無線通信装置10の詳細構成及び詳細動作について説明する。
【0039】
図4は
図3の無線通信装置10の構成例を示すブロック図である。
図4において、無線通信装置10は、受信アンテナ11Aと、受信復調部11と、変調送信部13と、送信アンテナ13Aと、制御部15と、スピーカ16と、PTT(Push To Talk)キー18を有する操作部17とを備えて構成される。
【0040】
図4において、受信復調部11は受信アンテナ11Aで受信された無線信号を受信して音声信号を復調して、復調後の音声信号を、例えば利得が半固定である可変増幅器19を介して変調送信部13及びスピーカ16に出力する。変調送信部13は可変増幅器19及びマイクロホン14から入力される各音声信号(マイクロホン14から入力される音声信号は自局で送信すべき音声信号である)を音声混合し、混合後の音声信号に従って無線信号を変調した後、変調された無線信号を送信アンテナ13Aから送信する。スピーカ16は入力される音声信号を音声に変換して出力する。なお、無線通信装置10の操作者が操作部17のPTTキー18をオンしたとき、制御部15は変調送信部13の動作をオンさせ、このとき、変調送信部13は、マイクロホン14に入力される音声から変換された音声信号に従って無線信号を変調した後、変調された無線信号を送信アンテナ13Aから送信する。制御部15は所定の通信制御処理を実行することにより、無線通信装置10の動作を制御する。ここで、制御部15は、受信復調部11の受信周波数を制御し、変調送信部13の送信周波数を制御する。
【0041】
なお、
図4の構成例において、受信アンテナ11A及び送信アンテナ13Aをデュプレクサ(図示せず)を介した1つのアンテナ装置で構成してもよい。また、変調送信部13は例えば非特許文献2に準拠させるために空中線電力1mWで送信するが、本発明はこれに限らず、1mW未満又は1mWを超えて送信してもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、無線通信装置10−1〜10−4の動作により、4本の無線通信回線L1〜L4がループ形状で連結されて、1本の音声信号のループ回路が形成される。これにより、無線通信装置10−1〜10−4の間で1本の音声信号ループ回路を形成して4者で同時通話できる。なお、実施形態1において、上述のように、各無線通信装置10−1〜10−4の可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。
【0043】
実施形態2.
図5は実施形態2にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図5において、実施形態2は、
図3の実施形態1に比較して、
図4と同一構成の無線通信装置10−5、10−6を追加して、1本の音声信号のループ回路を形成することで6者同時通話を実現することを特徴としている。
【0044】
実施形態2において、各無線通信装置10−1〜10−6のチャネル使用の動作例は以下の通りである。なお、使用するチャネルは一例であって、1本の音声信号のループ回路を形成できればよい。
【0045】
(1)無線通信装置10−1の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル1で送信する。ただし、無線通信装置10−1の受信復調部11は無線信号を454MHz帯のチャネル6で受信待受けする。
(2)無線通信装置10−2の受信復調部11は無線通信装置10−1からの無線信号を413MHz帯のチャネル1で受信することで無線通信装置10−1,10−2間で無線通信回線L1が形成された後、無線通信装置10−2の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル2で送信する。
(3)無線通信装置10−3の受信復調部11は無線通信装置10−2からの無線信号を454MHz帯のチャネル2で受信することで無線通信装置10−2,10−3間で無線通信回線L2が形成された後、無線通信装置10−3の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル3で送信する。
(4)無線通信装置10−4の受信復調部11は無線通信装置10−3からの無線信号を413MHz帯のチャネル3で受信することで無線通信装置10−3,10−4間で無線通信回線L3が形成された後、無線通信装置10−4の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル4で送信する。
(5)無線通信装置10−5の受信復調部11は無線通信装置10−4からの無線信号を454MHz帯のチャネル4で受信することで無線通信装置10−4,10−5間で無線通信回線L4が形成された後、無線通信装置10−5の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル5で送信する。
(6)無線通信装置10−6の受信復調部11は無線通信装置10−5からの無線信号を413MHz帯のチャネル5で受信することで無線通信装置10−5,10−6間で無線通信回線L5が形成された後、無線通信装置10−6の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル6で送信する。
(7)無線通信装置10−1は無線通信装置10−6からの無線信号を454MHz帯のチャネル6で受信することで無線通信装置10−6,10−1間で無線通信回線L6が形成される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、無線通信装置10−1〜10−6の動作により、6本の無線通信回線L1〜L6がループ形状で連結されて、1本の音声信号のループ回路が形成される。これにより、無線通信装置10−1〜10−6の間で1本の音声信号ループ回路を形成して6者で同時通話できる。なお、実施形態2において、上述のように、各無線通信装置10−1〜10−6の可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。また、本実施形態は、その他の作用効果についても実施形態1と同様である。
【0047】
以上の実施形態1では4者同時通話を実現し、実施形態2では6者同時通話を実現しているが、本発明はこれに限らず、8者以上の偶数者の同時通話を実現できる無線通信システムを同様に構成できる。すなわち、4個以上の偶数個の無線通信装置10を、1本の音声信号のループ回路を形成するように、4個以上の偶数個の無線通信装置10のうちの各1対の無線通信装置10を順次、一方向の無線通信回線を介して接続することで、4者以上の偶数者の同時通話を実現できる。
【0048】
実施形態3.
図6は実施形態3にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図6において、実施形態3は、
図3の実施形態1に比較して、以下の点が異なる。
(1)無線通信装置10A−1〜10A−4で4者同時通話中に、無線通信装置10A−5が割り込むことにより、5者同時通話を実現する。ここで、キャリアセンスを要しないため、無線通信装置10A−5の割り込みタイミングに制限はない。なお、無線通信装置10A−1〜10A−5を総称して符号10Aを付す。
(2)無線通信装置10Aの構成は、
図4の無線通信装置10に比較して、受信復調部11−1に加えて、サブ受信手段である受信復調部11−2と、音声混合部12をさらに備える。
以下、実施形態1との相違点について説明する。
【0049】
図6において、各無線通信装置10A−1〜10A−5の構成は以下の通りである。
(1)無線通信装置10A−1は、
図3の無線通信装置10−1に比較して、受信復調部11を受信復調部11−1とし、さらにサブ受信手段であり例えば454MHz帯のチャネル5で無線信号を受信する受信復調部11−2と、音声混合部12とを備える。
(2)無線通信装置10A−2は、
図3の無線通信装置10−2に比較して、受信復調部11を受信復調部11−1とし、さらにサブ受信手段であり例えば413MHz帯のチャネル6で無線信号を受信する受信復調部11−2と、音声混合部12とを備える。
(3)無線通信装置10A−3は、
図3の無線通信装置10−3に比較して、受信復調部11を受信復調部11−1とし、さらにサブ受信手段であり例えば454MHz帯のチャネル7で無線信号を受信する受信復調部11−2と、音声混合部12とを備える。
(4)無線通信装置10A−4は、
図3の無線通信装置10−4に比較して、受信復調部11を受信復調部11−1とし、さらにサブ受信手段であり例えば413MHz帯のチャネル8で無線信号を受信する受信復調部11−2と、音声混合部12とを備える。
(5)無線通信装置10A−5は、例えば413MHz帯のチャネル8で無線信号を送信する変調送信部13と、例えば454MHz帯のチャネル4で無線信号を受信する受信復調部11−1と、サブ受信手段であり例えば454MHz帯のチャネルX(他の無線通信装置10Aで使用していないチャネルをいう)で無線信号を受信する受信復調部11−2とを備える。なお、無線通信装置10A−5において、音声混合部12及び可変増幅器19を備える必要はないが、他の無線通信装置10Aと同一の構成とするためには、音声混合部12及び可変増幅器19を備え、制御部15が
図7のスイッチSW1,SW2をオフとすればよい。
【0050】
実施形態3において、各無線通信装置10A−1〜10A−5のチャネル使用の動作例は以下の通りである。なお、使用するチャネルは一例であって、無線通信回線L1〜L4による1本の音声信号のループ回路に加えて、全二重の無線通信回線L5を形成できればよい。
【0051】
(1)まず、実施形態1の
図3と同様の無線チャネルで無線通信装置10A−1〜10A−4が4者同時通話を実現する。
(2)無線通信装置10A−5の受信復調部11は無線通信装置10−4からの無線信号を454MHz帯のチャネル4で受信し、無線通信装置10A−5の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル8で送信することで、無線通信装置10A−4,10A−5間で全二重の無線通信回線L5を形成する。これにより、無線通信装置10A−5が音声信号のループ回路に割り込むことができる。
【0052】
以上説明したように無線通信回線L1〜L4による1本の音声信号のループ回路に加えて、全二重の無線通信回線L5を形成することで、5者同時通話を実現できる。なお、実施形態3において、各無線通信装置10A−1〜10A−4の可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。
【0053】
図7は
図6の無線通信装置10Aの構成例を示すブロック図である。
図7において、無線通信装置10Aは、受信アンテナ11Aと、受信復調部11−1,11−2と、変調送信部13と、送信アンテナ13Aと、スイッチSW1,SW2と、音声混合部12と、制御部15と、スピーカ16と、PTT(Push To Talk)キー18を有する操作部17とを備えて構成される。
【0054】
図7において、受信復調部11−1は受信アンテナ11Aで受信された無線信号を受信して音声信号を復調して音声混合部12に出力し、受信復調部11−2はサブ受信手段であって受信アンテナ11Aで受信された無線信号を受信して音声信号を復調してスイッチSW1を介して音声混合部12に出力する。音声混合部12は入力される複数の音声信号を加算混合した後、加算混合した音声信号を、例えば利得が半固定である可変増幅器19を介して変調送信部13及びスピーカ16に出力する。変調送信部13は可変増幅器19及びマイクロホン14から入力される各音声信号(マイクロホン14から入力される音声信号は自局で送信すべき音声信号である)を音声混合し、混合後の音声信号に従って無線信号を変調した後、変調された無線信号を送信アンテナ13Aから送信する。スピーカ16は入力される音声信号を音声に変換して出力する。なお、無線通信装置10Aの操作者が操作部17のPTTキー18をオンしたとき、制御部15は変調送信部13の動作をオンさせ、このとき、変調送信部13は、マイクロホン14に入力される音声から変換された音声信号及び音声混合部12からの音声信号の混合された音声信号に従って無線信号を変調した後、変調された無線信号を送信アンテナ13Aから送信する。制御部15は所定の通信制御処理を実行することにより、無線通信装置10Aの動作を制御する。ここで、制御部15は、受信復調部11−1,11−2の受信周波数を制御し、変調送信部13の送信周波数を制御する。
【0055】
なお、
図7の構成例において、受信アンテナ11A及び送信アンテナ13Aをデュプレクサ(図示せず)を介した1つのアンテナ装置で構成してもよい。
【0056】
また、変調送信部13の送信チャネルと、受信復調部11−1,11−2の受信チャネルとは好ましくは、例えば異なる周波数帯の無線チャネルである。なお、受信復調部11−1,11−2の各受信チャネルは例えば互いに同一の周波数帯の無線チャネルである。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、実施形態1と同様の4者同時通話中において無線通信装置10A−5が、無線通信装置10A−4の送信チャネルの無線信号を受信し、かつ無線通信装置10A−4のサブ受信手段である受信復調部11−2の受信チャネルで無線信号を送信するように割り込むことで、5者同時通話を実現できる。
【0058】
なお、実施形態3において、各無線通信装置10A−1〜10A−4の可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。
【0059】
以上の
図6の無線通信システムにおいて、各無線通信装置10Aはサブ受信手段である受信復調部11−2を備えているが、
図6の例では少なくとも無線通信装置10A−4のみがサブ受信手段である受信復調部11−2を備える必要があるが、他の無線通信装置10A−1〜10A−3,10A−5はサブ受信手段である受信復調部11−2を備えなくてもよい。このことは、後述する実施形態4においても同様である。
【0060】
実施形態4.
図8は実施形態4にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図8において、実施形態4は、
図3の実施形態1に比較して、以下の点が異なる。
(1)無線通信装置10A−1〜10A−4で4者同時通話中に、無線通信装置10A−5〜10A−8が割り込むことにより、8者同時通話を実現する。ここで、キャリアセンスを要しないため、無線通信装置10A−5〜10A−8の割り込みタイミングに制限はない。なお、無線通信装置10A−1〜10A−8を総称して符号10Aを付す。また、無線通信装置10Aの構成は
図7の構成を有する。
以下、実施形態1及び3との相違点について説明する。
【0061】
図8において、各無線通信装置10A−1〜10A−4の構成は
図6の実施形態3と同様である。各無線通信装置10A−5〜10A−8の構成は以下の通りである。
(1)無線通信装置10A−5は、例えば454MHz帯のチャネル5で無線信号を送信する変調送信部13と、例えば413MHz帯のチャネル1で無線信号を受信する受信復調部11−1と、サブ受信手段であり例えば413MHz帯のチャネルX(他の無線通信装置10Aで使用していないチャネルをいう)で無線信号を受信する受信復調部11−2とを備える。なお、無線通信装置10A−5において、音声混合部12及び可変増幅器19を備える必要はないが、他の無線通信装置10Aと同一の構成とするためには、音声混合部12及び可変増幅器19を備え、制御部15が
図7のスイッチSW1,SW2をオフとすればよい。これについては、無線通信装置10A−6〜10A−8において同様である。
(2)無線通信装置10A−6は、例えば413MHz帯のチャネル6で無線信号を送信する変調送信部13と、例えば454MHz帯のチャネル2で無線信号を受信する受信復調部11−1と、サブ受信手段であり例えば454MHz帯のチャネルX(他の無線通信装置10Aで使用していないチャネルをいう)で無線信号を受信する受信復調部11−2とを備える。
(3)無線通信装置10A−7は、例えば454MHz帯のチャネル7で無線信号を送信する変調送信部13と、例えば413MHz帯のチャネル3で無線信号を受信する受信復調部11−1と、サブ受信手段であり例えば413MHz帯のチャネルX(他の無線通信装置10Aで使用していないチャネルをいう)で無線信号を受信する受信復調部11−2とを備える。
(4)無線通信装置10A−8は、例えば413MHz帯のチャネル8で無線信号を送信する変調送信部13と、例えば454MHz帯のチャネル4で無線信号を受信する受信復調部11−1と、サブ受信手段であり例えば454MHz帯のチャネルX(他の無線通信装置10Aで使用していないチャネルをいう)で無線信号を受信する受信復調部11−2とを備える。
【0062】
(1)まず、実施形態1の
図3と同様の無線チャネルで無線通信装置10A−1〜10A−4が4者同時通話を実現する。
(2)無線通信装置10A−5の受信復調部11は無線通信装置10−1からの無線信号を413MHz帯のチャネル1で受信し、無線通信装置10A−5の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル5で送信することで、無線通信装置10A−1,10A−5間で全二重の無線通信回線L5を形成する。これにより、無線通信装置10A−5が音声信号のループ回路に割り込むことができる。
(3)無線通信装置10A−6の受信復調部11は無線通信装置10−2からの無線信号を454MHz帯のチャネル2で受信し、無線通信装置10A−6の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル6で送信することで、無線通信装置10A−2,10A−6間で全二重の無線通信回線L6を形成する。これにより、無線通信装置10A−6が音声信号のループ回路に割り込むことができる。
(4)無線通信装置10A−7の受信復調部11は無線通信装置10−3からの無線信号を413MHz帯のチャネル3で受信し、無線通信装置10A−7の変調送信部13は無線信号を454MHz帯のチャネル7で送信することで、無線通信装置10A−3,10A−7間で全二重の無線通信回線L7を形成する。これにより、無線通信装置10A−7が音声信号のループ回路に割り込むことができる。
(5)無線通信装置10A−8の受信復調部11は無線通信装置10−4からの無線信号を454MHz帯のチャネル4で受信し、無線通信装置10A−8の変調送信部13は無線信号を413MHz帯のチャネル8で送信することで、無線通信装置10A−4,10A−8間で全二重の無線通信回線L8を形成する。これにより、無線通信装置10A−8が音声信号のループ回路に割り込むことができる。
【0063】
なお、無線通信装置10A−5〜10A−8の割り込みタイミングは任意であってランダムに行ってもよい。また、割り込む無線通信装置10Aの個数は1以上4以下であり、5者〜8者の同時通話を実現できる。
【0064】
以上説明したように無線通信回線L1〜L4による1本の音声信号のループ回路に加えて、全二重の無線通信回線L5〜L8を形成することで、5者〜8者で最大8者同時通話を実現できる。なお、実施形態4において、各無線通信装置10A−1〜10A−4の可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。
実施形態5.
図9は実施形態5にかかる無線通信システムの構成例を示すブロック図である。実施形態5は、実施形態3にかかる5者同時通話の無線通信システムと、実施形態4にかかる8者同時通話の無線通信システムを拡張して構成された、いわゆるダイヤモンド型の最大20者の同時通話無線通信システムである。
【0065】
図9において、A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4,D1〜D4,E1〜E4はそれぞれ
図7の無線通信装置10Aである。ここで、
図9の無線通信システムは以下のグループを有する。
(1)Aグループ:
図3の無線通信システムであって、4個の無線通信装置A1〜A4を無線通信回線L1〜L4で接続することで1本の音声信号のループ回路を形成して、4者同時通話の無線通信システムを構成する。
(2)A’グループ:
図8の無線通信システムであって、Aグループの4個の無線通信装置10Aに対してそれぞれ各1個の拡張された無線通信装置B1,C1,D1,E1を全二重の無線通信回線L5〜L8を用いて接続することで、最大8者同時通話の無線通信システムを構成する。なお、拡張される無線通信装置B1,C1,D1,E1の個数は4個に限定されず、1個〜3個の無線通信装置10Aのみを拡張して接続してもよい。また、無線通信回線L5〜L8は全二重の無線通信回線である。
(3)Bグループ:
図3の無線通信システムに対応する無線通信システムであって、4個の無線通信装置B1〜B4を無線通信回線L11〜L14で接続することで1本の音声信号のループ回路を形成して、4者同時通話の無線通信システムを構成する。Bグループの無線通信システムを、全二重の無線通信回線L5を介して、Aグループの無線通信システムの無線通信装置A1に接続することで8者同時通話の無線通信システムを構成する。なお、無線通信回線L11〜L14で用いる無線チャネルは好ましくは無線通信回線L1〜L5とは異なるが、Bグループ内での無線チャネルは無線通信装置B1〜B4で無線通信回線L11〜L14を形成するように設定される。
(3)Cグループ:
図3の無線通信システムに対応する無線通信システムであって、4個の無線通信装置C1〜C4を無線通信回線L21〜L24で接続することで1本の音声信号のループ回路を形成して、4者同時通話の無線通信システムを構成する。Cグループの無線通信システムを、全二重の無線通信回線L6を介して、Bグループの無線通信システムが接続されたAグループの無線通信システムの無線通信装置A2に接続することで、12者同時通話の無線通信システムを構成する。なお、無線通信回線L21〜L24で用いる無線チャネルは好ましくは無線通信回線L1〜L5、L11〜L14とは異なるが、Cグループ内での無線チャネルは無線通信装置C1〜C4で無線通信回線L21〜L24を形成するように設定される。
(4)Dグループ:
図3の無線通信システムに対応する無線通信システムであって、4個の無線通信装置D1〜D4を、全二重の無線通信回線L7を介して、無線通信回線L31〜L34で接続することで1本の音声信号のループ回路を形成して、4者同時通話の無線通信システムを構成する。Dグループの無線通信システムを、Bグループ及びCグループの無線通信システムが接続されたAグループの無線通信システムの無線通信装置A3に接続することで、16者同時通話の無線通信システムを構成する。なお、無線通信回線L31〜L34で用いる無線チャネルは好ましくは無線通信回線L1〜L5、L11〜L14,L21〜L24とは異なるが、Dグループ内での無線チャネルは無線通信装置D1〜D4で無線通信回線L31〜L34を形成するように設定される。
(5)Eグループ:
図3の無線通信システムに対応する無線通信システムであって、4個の無線通信装置E1〜E4を、全二重の無線通信回線L8を介して、無線通信回線L41〜L44で接続することで1本の音声信号のループ回路を形成して、4者同時通話の無線通信システムを構成する。Eグループの無線通信システムを、Bグループ、Cグループ及びDグループの無線通信システムが接続されたAグループの無線通信システムの無線通信装置A4に接続することで、20者同時通話の無線通信システムを構成する。なお、無線通信回線L41〜L44で用いる無線チャネルは好ましくは無線通信回線L1〜L5、L11〜L14,L21〜L24,L31〜L34とは異なるが、Eグループ内での無線チャネルは無線通信装置E1〜E4で無線通信回線L41〜L44を形成するように設定される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、Aグループの無線通信システムに対して、Bグループ、Cグループ及びDグループの無線通信システムを、全二重の無線通信回線を介して接続することで、最大20者の同時通話の無線通信システムを実現できる。なお、実施形態5において、各グループの各音声信号のループ回路において、無線通信装置10Aの可変増幅器19の利得を調整することで、音声信号ループ回路によるハウリングを回避することは必要である。
【0067】
以上の実施形態5では、1つのグループで4個の無線通信装置10Aを備えているが、本発明はこれに限らず、実施形態2及びその変形例に示すように、1つのグループで6個以上の偶数個の無線通信装置10Aで構成してもよい。例えば1グループに対して6個の無線通信装置10Aで構成されるとき、無線チャネルの数に限定がないときは、全体で最大30者の同時通話の無線通信手段を実現できる。
【0068】
変形例.
以上の実施形態において、ハウリング防止手段として可変増幅器19を用いているが、本発明はこれに限らず、可変減衰器を用いてもよい。ここで、可変増幅器19又は可変減衰器は、音声信号の各ループ回路において少なくとも1つを挿入すればよい。また、実施形態では、音声混合部12の後段に可変増幅器19を挿入しているが、本発明はこれに限らず、音声混合部12の前段の両方又は一方に可変増幅器19を挿入してもよい。
【0069】
以上の実施形態において、スピーカ16を用いているが、本発明はこれに限らず、イヤホン、ヘッドホンなどの音声出力機器を用いてもよい。
【0070】
以上の実施形態において、無線通信装置10及び無線通信装置10Aは特定小電力無線局無線電話用無線設備であり、変調送信部13は空中線電力1mWで無線信号を送信するが、本発明はこれに限らず、空中線電力1mW未満又は1mWを超える無線信号を送信してもよい。
【解決手段】4個以上の偶数個の無線通信装置を含む同時通話無線通信システムであって、前記各無線通信装置は、無線信号を受信して音声信号に復調する受信手段と、前記復調された音声信号と、自局で送信すべき音声信号とを混合して、混合後の音声信号を出力する音声混合手段と、前記混合後の音声信号に従って変調することで変調された無線信号を送信する送信手段とを備える。前記4個以上の偶数個の無線通信装置を、1本の音声信号のループ回路を形成するように、前記4個以上の偶数個の無線通信装置のうちの各1対の無線通信装置を順次無線通信回線を介して接続し、前記4個以上の偶数個の無線通信装置のうちのいずれかは、前記音声信号のループ回路におけるハウリングを防止するハウリング防止手段を備える。