特許第6181901号(P6181901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6181901
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動車オーディオシステム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20170807BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20170807BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20170807BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H04S7/00 320
   H04R3/12 A
   H04R3/00 310
   H04R1/02 102B
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-509679(P2017-509679)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(86)【国際出願番号】US2015045822
(87)【国際公開番号】WO2016028853
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】14/463,956
(32)【優先日】2014年8月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーブ・ゼテルモ・バークスデイル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジェイ・ホルミ
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−198712(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0069000(US,A1)
【文献】 特表2010−529758(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/012499(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/184792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00− 7/00
B60R 9/00−11/06
H04R 3/00− 3/14
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカを有するとともに、前記遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカも有する、自動車オーディオシステムを動作させる方法であって、
前記近距離場スピーカがオンのままである間に前記後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出するステップと、それに応じて、
前記近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、前記後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように前記近距離場スピーカを動作させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後部遠距離場スピーカが止められたときに失われた前記オーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように前記近距離場スピーカを動作させるステップは、前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように前記近距離場スピーカを動作させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所に配送するように前記近距離場スピーカを動作させるステップは、前記近距離場スピーカの等化を調整するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの伝達関数は、既知であり、前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの前記伝達関数を近似するように前記近距離場スピーカを動作させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記自動車の前記前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備え、前記自動車オーディオシステムは、各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記自動車オーディオシステムは、複数の後部遠距離場スピーカを備え、前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所において失われた前記オーディオエネルギーをほぼ置き換えるようにヘッドレスト内の前記一対の近距離場スピーカを動作させるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記自動車オーディオシステムは、オーディオヘッドユニットの一部であり前記遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
自動車の前部座席の後ろに位置する複数の後部遠距離場スピーカを有する自動車オーディオシステムを動作させる方法であって、前記自動車の前記前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備え、前記自動車オーディオシステムは、それらの各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備え、前記方法は、
少なくとも1つの近距離場スピーカがオンのままである間に前記後部遠距離場スピーカの1つまたは複数が止められるとそのことを検出するステップと、それに応じて、
前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するようにヘッドレスト内の前記一対の近距離場スピーカを自動的に動作させるステップとを含む、自動車オーディオシステムを動作させる方法。
【請求項10】
前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所に配送するように前記近距離場スピーカを動作させるステップは、前記近距離場スピーカの等化を調整するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの伝達関数は、既知であり、前記一対の近距離場スピーカを動作させるステップは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの前記伝達関数を近似するように前記一対の近距離場スピーカを動作させるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記自動車オーディオシステムは、オーディオヘッドユニットの一部であり1つまたは複数の遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカと、
前記遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカと、
前記近距離場スピーカがオンのままである間に前記後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出し、それに応じて、前記近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるように構成されたオーディオ信号プロセッサとを備える、自動車オーディオシステム。
【請求項14】
前記オーディオ信号プロセッサは、前記後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように前記近距離場スピーカを動作させることによって前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記後部遠距離場スピーカが止められたときに失われた前記オーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように前記近距離場スピーカを動作させることは、前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように前記近距離場スピーカを動作させることを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所に配送するように前記近距離場スピーカを動作させることは、前記近距離場スピーカの等化を調整することを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの伝達関数は、既知であり、前記オーディオ信号プロセッサは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所までの前記伝達関数を近似するように前記近距離場スピーカを動作させることによって前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記自動車の前記前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備え、前記少なくとも1つの近距離場スピーカは、各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの遠距離場スピーカは、複数の後部遠距離場スピーカを備え、前記オーディオ信号プロセッサは、前部座席聴取者の位置の各耳の前記予想場所において失われた前記オーディオエネルギーをほぼ置き換えるようにヘッドレスト内の前記一対の近距離場スピーカを動作させることによって前記近距離場スピーカの前記出力エネルギーを自動的に増加させる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
オーディオヘッドユニットの一部であり、前記遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチをさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車のためのオーディオシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のオーディオシステムはしばしば、前部および後部に位置するスピーカを有する。スピーカは、多くの場所に見られることもある。多くの場合、スピーカは、ドアならびに前部および後部のデッキに位置する。場合によっては、しばしば後部に位置する、別個の低音源がある。
【0003】
時に、スピーカのすべてではないがいくつかをオフにすることが望ましいことがある。例えば、座席の第2または第3列を静かにするように後部スピーカが止められることがある。しかしながら、前部座席の後ろのいずれかのスピーカを止めることは、前部座席乗客によって受け取られる音声を変化させ、それが乗客の聴取体験を悪化させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第13/888,927号
【特許文献2】米国特許出願第13/906,997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の前部座席の後ろに位置するスピーカが止められると、前部座席乗客によって知覚される音声が変化することになる。これは、オーディオエネルギーが、動作が停止されたスピーカの場所から受け取られないことになるという事実に起因している。その影響は、今では動作が停止したスピーカから前部座席乗客の各耳によって受け取られていた音声を模倣するように、他のスピーカの出力を変化させることによって改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、自動車オーディオシステムは、前部座席の後方(前部座席の後ろ)に位置する1つまたは複数のスピーカが止められると、前部座席乗客の1人または複数により近い1つまたは複数の他のスピーカの出力が自動的に増加されるように動作させる。本システムの目標は、スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを部分的にまたは完全に置き換えることである。本システムはまた、オプションとして、この置換エネルギーが、動作が停止したスピーカの場所から来ていると聴取者によって知覚されるように動作させることもできる。限定されない一例では、本システムは、聴取者の耳の予想場所の近くに、前部座席ヘッドレストの各々内に取り付けられた一対のスピーカを含む。これらのスピーカは、止められた各スピーカから前部座席占有者の各耳までの伝達関数を近似するように動作させることができる。
【0007】
本明細書で言及されるすべての例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で組み合わされてもよい。
【0008】
一態様では、自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカを有するとともに、遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカも有する、自動車オーディオシステムを動作させる方法は、近距離場スピーカがオンのままである間に後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出するステップと、それに応じて、近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップとを含む。
【0009】
実施形態は、次の特徴の1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように近距離場スピーカを動作させるステップを含んでもよい。後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように近距離場スピーカを動作させるステップは、遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させるステップを含んでもよい。遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させるステップは、近距離場スピーカの等化を調整するステップを含んでもよい。
【0010】
実施形態は、次の特徴の1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数は、既知であってもよく、近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数を近似するように近距離場スピーカを動作させるステップを含んでもよい。自動車の前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備えてもよく、自動車オーディオシステムは、各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備えてもよい。自動車オーディオシステムは、複数の後部遠距離場スピーカを備えてもよく、近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所において失われたオーディオエネルギーをほぼ置き換えるようにヘッドレスト内の一対の近距離場スピーカを動作させるステップを含んでもよい。自動車オーディオシステムは、オーディオヘッドユニットの一部であり遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチを備えてもよい。
【0011】
別の態様では、自動車の前部座席の後ろに位置する複数の後部遠距離場スピーカを有する自動車オーディオシステムを動作させる方法であって、自動車の前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備え、自動車オーディオシステムは、それらの各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備え、方法は、少なくとも1つの近距離場スピーカがオンのままである間に後部遠距離場スピーカの1つまたは複数が止められるとそのことを検出するステップと、それに応じて、遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するようにヘッドレスト内のその一対の近距離場スピーカを自動的に動作させるステップとを含む。
【0012】
実施形態は、次の特徴の1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させるステップは、近距離場スピーカの等化を調整するステップを含んでもよい。止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数は、既知であってもよく、一対の近距離場スピーカを動作させるステップは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数を近似するように一対の近距離場スピーカを動作させるステップを含んでもよい。自動車オーディオシステムは、オーディオヘッドユニットの一部であり1つまたは複数の遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチを備えてもよい。
【0013】
別の態様では、自動車オーディオシステムは、自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカと、遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカと、近距離場スピーカがオンのままである間に後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出し、それに応じて、近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるように構成されたオーディオ信号プロセッサとを含む。
【0014】
実施形態は、次の特徴の1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。オーディオ信号プロセッサは、後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように近距離場スピーカを動作させることによって近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させてもよい。後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように近距離場スピーカを動作させることは、遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させることを含んでもよい。遠距離場スピーカが止められる前に配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させることは、近距離場スピーカの等化を調整することを含んでもよい。
【0015】
実施形態は、次の特徴の1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数は、既知であってもよく、オーディオ信号プロセッサは、止められた各遠距離場スピーカから、前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数を近似するように近距離場スピーカを動作させることによって近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させてもよい。自動車の前部座席は、運転者ヘッドレストおよび乗客ヘッドレストを備えてもよく、少なくとも1つの近距離場スピーカは、各前部座席ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカを備えてもよい。少なくとも1つの遠距離場スピーカは、複数の後部遠距離場スピーカを備えてもよく、オーディオ信号プロセッサは、前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所において失われたオーディオエネルギーをほぼ置き換えるようにヘッドレスト内の一対の近距離場スピーカを動作させることによって近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させてもよい。本システムはさらに、オーディオヘッドユニットの一部であり遠距離場スピーカを止めるように操作可能であるユーザ操作スイッチを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】自動車オーディオシステムの概略図である。
図2】オーディオシステムの結果を概略的に例示する図である。
図3】自動車オーディオシステムのためのヘッドユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
自動車オーディオシステムは、車両の前部および後部に位置するスピーカを有することができる。自動車オーディオシステムは、前部座席の後方(前部座席の後ろ)に位置する1つまたは複数のスピーカが止められると、前部座席乗客により近い1つまたは複数の他のスピーカの出力が自動的に増加されるように、本開示に従って動作させられる。1つの目標は、スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを部分的にまたは完全に置き換えることである。本システムはまた、この置換エネルギーが、動作が停止したスピーカの場所から来ていると聴取者によって知覚されるように動作させることもできる。限定されない一例では、本システムは、聴取者の耳の予想場所の近くに、前部座席ヘッドレストの各々の中に取り付けられた一対のスピーカを含む。これらのスピーカは、止められた各スピーカから前部座席占有者の各耳までの伝達関数を近似するように動作することができる。このように、知覚される音声は、後部スピーカが止められるときに変化しない。
【0018】
図1の自動車オーディオシステム100はヘッドユニット102を含み、これは、必ずしもそうとは限らないが、典型的には前部ダッシュボード内に取り付けられる。ヘッドユニット102は、オーディオ信号をスピーカに送る。前部座席エリアの後ろに位置する1つまたは複数の遠距離場スピーカと、遠距離場スピーカの前にかつ前部座席聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに(すなわち、遠距離場スピーカよりも聴取者の耳により近く)位置する1つまたは複数の近距離場スピーカとがある。この限定されない例では、左前部ドア取り付け近距離場スピーカセット104は、ツイータ108および低/中音域スピーカ112を含む。同様に、右前部ドア取り付け近距離場スピーカセット106は、ツイータ110および低/中音域スピーカ114を含む。座席103に結合される運転者のヘッドレスト120は、左および右近距離場スピーカ122および124をそれぞれ含む。同様に、座席105に結合される乗客ヘッドレスト126は、左および右近距離場スピーカ128および130をそれぞれ含む。左および右後部ドア遠距離場スピーカ142および144も図示され、これらは中央座席140の近くに位置する。後部遠距離場低音ボックス152がまた含まれてもよく、第3列(後部)座席150の近くに位置する。スピーカ(図示されない)は、前部デッキ111および/または後部デッキ(もし存在するならば)内に取り付けられてもよい。本開示は、図1に示される特定の配置に限定されない。むしろ、本開示は、自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカを有し、また遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカも有する、自動車オーディオシステムを企図する。
【0019】
オーディオシステム100は、近距離場スピーカの1つまたは複数がオンのままである間に1つまたは複数の後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出し、それに応じてシステム100が近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるような方法で動作するように適合される。限定されない一例では、各前部ヘッドレスト内に一対の近距離場スピーカがある。しかしながら、近距離場スピーカは、前部ドア内のスピーカおよび/または前部デッキ内のスピーカなどの他のまたは追加のスピーカとすることができる。ヘッドユニットは、以下で述べられるように、遠距離場スピーカをオフにするために操作可能であるユーザ操作可能なスイッチを含むことができ、または動作は自動的とすることができる。
【0020】
近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるステップは、後部遠距離場スピーカが止められたときに失われたオーディオエネルギーを少なくとも部分的に置き換えるように近距離場スピーカ(例えば、ヘッドレストスピーカ)を動作させることによって成し遂げられてもよい。これは、遠距離場スピーカが止められる前にそれらによって配送されたのとほぼ同じオーディオエネルギーを前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所に配送するように近距離場スピーカを動作させることによって成し遂げられてもよく、それは、一例として近距離場スピーカの等化を調整することによってなされてもよい。
【0021】
本開示の限定されない一態様では、止められた各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数は既知である。近距離場スピーカは、そのような各遠距離場スピーカから前部座席聴取者の位置の各耳の予想場所までの伝達関数を近似するように動作させることができる。
【0022】
前部座席の後ろに位置する遠距離場スピーカが止められると、前部座席乗客によって感知される音声が変化することになる。これは、オーディオエネルギーが、動作が停止した遠距離場スピーカの場所から受け取られないことになるという事実に起因している。その影響は、今では動作が停止したスピーカから前部座席乗客の各耳によって受け取られていた音声を模倣するように1つまたは複数の近距離場スピーカの出力を変化させることによって改善することができる。限定されない例では、ヘッドレストスピーカは、遠距離場スピーカが止められるときに失われるエネルギーのいくらかまたはすべてを置き換える近距離場スピーカとして使用される。
【0023】
一例では、遠距離場スピーカから前部座席聴取者の各耳までの伝達関数は既知である。これらの遠距離場スピーカが止められると、オーディオシステム100は、ヘッドレストスピーカが遠距離場スピーカを効果的に置き換えるように動作するように、動作させることができる。この概念は図2によって説明することができ、同図は、運転者の頭部202の上部、ならびに左および右の耳204および206を描写する。ヘッドレストスピーカ122および124は、各耳によって受け取られる音声を出力する(破線によって示される)。乗客は同様に、乗客側のヘッドレストスピーカによって生成される音声を聴く。音源の方向および距離の人間の知覚は、耳の間の到達時間差、耳の間の信号レベル差、および異なる方向から耳に入る音波に対して聴取者の生体構造が有する特定の効果の組み合わせに基づいており、それらはすべて周波数に依存する。所与の場所にある音源について、両方の耳におけるこれらの要因の組み合わせは、その場所についての両耳応答として知られている。両耳信号フィルタは、1つの場所にあるスピーカで再生されることになる音声を、別の場所において生じる音声に似た音声に成形するためにオーディオシステムによって使用される。
【0024】
両耳信号フィルタは、破線の矢印によって示されるようにオーディオエネルギーを両方の耳に配送する「仮想」音源222および226を効果的に作成するために、ヘッドユニット102によって開発されてもよい。両耳信号フィルタは、聴取者が、あたかもこれらの仮想音源から来ているかのように音声を知覚するように、ヘッドレスト近距離場スピーカ122および124によって再生される音声を変更する。動作が停止された遠距離場スピーカの場所にそのような「仮想」スピーカを置く両耳信号フィルタが開発されてもよい。このようにすると、聴取者の知覚は、遠距離場スピーカが止められたときに変化しない。
【0025】
「仮想」スピーカを作成するような自動車オーディオシステムの制御はさらに、2013年5月7日に出願され、「Signal Processing for a Headrest-Based Audio System」と題する、米国特許出願第13/888,927号、および2013年5月31日に出願され、「Sound Stage Controller for a Near-Field Speaker-Based Audio System」と題する、米国特許出願第13/906,997号において述べられる。これらの先行出願の両方の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0026】
図3のヘッドユニット300は、主題のシステムおよび方法において使用されてもよい。ヘッドユニット300は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)304を有する電力増幅器モジュール302を含む。DSP304は、増幅器段306によって増幅され、出力308によって示されるように、左および右ヘッドレスト近距離場スピーカに出力されるオーディオ信号を出力する。スイッチ310(必ずしもそうとは限らないが、好ましくはユーザ操作される)は、1つまたは複数の遠距離場スピーカを止めるために使用される。スイッチ状態は、モジュール302に入力される。DSP304は、遠距離場スピーカが止められたことを示す信号を受け取ると、遠距離場スピーカが止められたときに各耳において失われたエネルギーを完全にまたは部分的に補償するエネルギーをスピーカが出力するという結果をもたらすヘッドレストオーディオ信号を出力するようにプログラムされる。DSP304は、遠距離場スピーカから各耳までの伝達関数がヘッドレストスピーカによって近似されるように、ヘッドレストスピーカの出力を変更することができる両耳信号フィルタを成し遂げるようにプログラムされてもよい。
【0027】
限定されない一例では、本システムおよび方法は、一部分において次の通りに成し遂げられてもよい。各スピーカから各耳にかつ異なる周波数で到達するエネルギーは、ダミーを使用して、特定の着座場所において先験的に測定されてもよい。各遠距離場スピーカについての(または遠距離場スピーカの群についての)エネルギー利得対周波数が、測定されてもよい。各耳における平均エネルギーがまた計算されてもよい。本システムは、その結果、後部スピーカが止められたときに前部ヘッドレストスピーカが使用されて同じ(または非常に近い)エネルギー(または、同じ平均エネルギー)を配送するように動作することができる。
【0028】
スイッチ310は、手動または自動とすることができる。自動スイッチは、問題になっている座席の占有者がいるかどうかを感知することに基づくことができる。例えば、本オーディオシステムは、後部座席の、またはおそらくは前部座席の後ろの任意の座席(自動車が3列以上の着座を含む場合)の占有者がいるときはいつでも、後部スピーカが止められるように設計されてもよい。
【0029】
遠距離場スピーカから各耳までの伝達関数を近似するために近距離場スピーカを使用することに対する代替案として、近距離場スピーカは、遠距離場スピーカが止められたときに各耳において失われたエネルギーのいくらかまたはすべてを置き換えるために使用されてもよい。これを成し遂げることが可能な1つの方法は、ユーザが、遠距離場スピーカが止められる前にユーザが受け取ったのとほぼ同じエネルギー量を各耳で受け取るように、ヘッドレストスピーカの等化を調整することによる。
【0030】
上で述べられたシステムおよび方法の実施形態は、当業者には明らかであろうコンピュータコンポーネントおよびコンピュータ実施ステップを含む。例えば、コンピュータ実施ステップは、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュROM、不揮発性ROM、およびRAMなどのコンピュータ可読媒体上にコンピュータ実行可能命令として記憶されてもよいことが、当業者によって理解されるはずである。さらに、コンピュータ実行可能命令は、例えばマイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、ゲートアレイ、その他などの、さまざまなプロセッサ上で実行されてもよいことが、当業者によって理解されるはずである。説明を簡単にするために、上で述べられたシステムおよび方法のあらゆるステップまたは要素が、コンピュータシステムの一部として本明細書で述べられるとは限らないが、当業者は、各ステップまたは要素が、対応するコンピュータシステムまたはソフトウェアコンポーネントを有してもよいことを認識するであろう。したがって、そのようなコンピュータシステムおよび/またはソフトウェアコンポーネントは、それらの対応するステップまたは要素(すなわち、それらの機能性)を述べることによって可能にされ、本開示の範囲内にある。
【0031】
いくつかの実施が述べられた。それにもかかわらず、追加の変更が、本明細書で述べられた発明概念の範囲から逸脱することなくなされてもよく、それに応じて他の実施形態が、次のクレームの範囲内であることは理解されよう。
【符号の説明】
【0032】
100 自動車オーディオシステム
102 ヘッドユニット
103 座席
104 左前部ドア取り付け近距離場スピーカセット
105 座席
106 右前部ドア取り付け近距離場スピーカセット
108 ツイータ
110 ツイータ
111 前部デッキ
112 低/中音域スピーカ
114 低/中音域スピーカ
120 運転者のヘッドレスト
122 左近距離場スピーカ、ヘッドレストスピーカ
124 右近距離場スピーカ、ヘッドレストスピーカ
126 乗客ヘッドレスト
128 左近距離場スピーカ
130 右近距離場スピーカ
140 中央座席
142 左後部ドア遠距離場スピーカ
144 右後部ドア遠距離場スピーカ
150 第3列(後部)座席
152 後部遠距離場低音ボックス
202 運転者の頭部
204 運転者の左耳
206 運転者の右耳
222 仮想音源
226 仮想音源
300 ヘッドユニット
302 電力増幅器モジュール
304 デジタルシグナルプロセッサ、DSP
306 増幅器段
308 出力
310 スイッチ
【要約】
自動車オーディオシステム、およびそのようなシステムを動作させる方法。自動車の前部座席の後ろに位置する少なくとも1つの後部遠距離場スピーカ、および遠距離場スピーカの前にかつ聴取者の頭部が来ることが意図される位置の近くに位置する少なくとも1つの近距離場スピーカがある。近距離場スピーカがオンのままである間に後部遠距離場スピーカが止められるとそのことを検出し、それに応じて、近距離場スピーカの出力エネルギーを自動的に増加させるように構成されるオーディオ信号プロセッサがある。
図1
図2
図3