(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181915
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】コードの解析モデルの作成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20170807BHJP
G06F 17/50 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
G06F17/50 612J
G06F17/50 680Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-177469(P2012-177469)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34332(P2014-34332A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504211429
【氏名又は名称】栃木住友電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正登
(72)【発明者】
【氏名】徳山 高司
【審査官】
田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−308801(JP,A)
【文献】
特開2004−042791(JP,A)
【文献】
特開2011−028335(JP,A)
【文献】
特開2006−123644(JP,A)
【文献】
特開2009−196598(JP,A)
【文献】
特開2007−011474(JP,A)
【文献】
特開平07−049968(JP,A)
【文献】
特開2001−121540(JP,A)
【文献】
特開2008−230375(JP,A)
【文献】
特開2010−229558(JP,A)
【文献】
特開2007−179194(JP,A)
【文献】
特開2007−205802(JP,A)
【文献】
特開平06−317506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントが撚り合わされかつゴムで被覆されたコードの数値解析用の解析モデルを、コンピュータを用いて作成する方法であって、
前記コードの断面画像を予め定めた軸方向のピッチで取得するステップと、
前記断面画像の中から選ばれた第1の断面画像に基づいて、該第1の断面画像を有限個の要素で分割するとともに、各要素を、前記フィラメントを構成するフィラメントモデル又は前記ゴムを構成するゴムモデルのいずれかに定義して二次元の第1のコード断面モデルを設定するステップと、
前記第1の断面画像と軸方向で隣り合う第2の断面画像について、前記第1の断面画像からのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量を計算するステップと、
前記移動量に基づいて前記第1のコード断面モデルの節点を移動させて第2のコード断面モデルを設定する第2のコード断面モデル新設ステップと、
前記第1のコード断面モデルの各節点と、該節点に対応する前記第2のコード断面モデルとの節点とを軸方向で接続することにより、前記ピッチ長さの三次元のコードモデルを設定する接続ステップとを含むことを特徴とするコードの解析モデルの作成方法。
【請求項2】
前記コードは、前記フィラメントの少なくとも1本が予め二次元又は三次元のくせ付けが施されたくせ付けフィラメントである請求項1記載のコードの解析モデルの作成方法。
【請求項3】
前記第2のコード断面モデル新設ステップは、
前記第1のコード断面モデルを前記コード回転角で回転させるステップと、
前記第1のコード断面モデルの各フィラメントモデルの中心を、前記ずれ量に基づいて各々移動させるステップとを含む請求項1又は2記載のコードの解析モデルの作成方法。
【請求項4】
前記設定された第2のコード断面モデルの要素につぶれがないか否かを判定する判定ステップと、
前記第2のコード断面モデルに要素のつぶれがあった場合、前記要素のつぶれが無くなる大きさに前記移動量を細分化し、この細分化された移動量に基づいて設定された少なくとも一つの中間コード断面モデルを介して第2のコード断面モデルを設定する細分化ステップとをさらに含む請求項1乃至3のいずれかに記載のコードの解析モデルの作成方法。
【請求項5】
複数のフィラメントが撚り合わされかつゴムで被覆されたコードの数値解析用の解析モデルを作成する装置であって、
予め定めた軸方向のピッチで取得された前記コードの断面画像が入力される断面画像入力部、
前記断面画像の中から選ばれた第1の断面画像に基づいて、該第1の断面画像を有限個の要素で分割するとともに、各要素を、前記フィラメントを構成するフィラメントモデル又は前記ゴムを構成するゴムモデルのいずれかに定義して二次元の第1のコード断面モデルを設定する第1のコード断面モデル設定部、
前記第1の断面画像と軸方向で隣り合う第2の断面画像について、前記第1の断面画像からのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量を計算する移動量計算部、
前記移動量に基づいて前記第1のコード断面モデルの節点を移動させて第2のコード断面モデルを設定する第2のコード断面モデル設定部、及び、
前記第1のコード断面モデルの各節点と、該節点に対応する前記第2のコード断面モデルとの節点とを軸方向で接続することにより、前記ピッチ長さの三次元のコードモデルを設定する三次元コードモデル設定部とを含むことを特徴とするコードの解析モデルの作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タイヤや各種のゴム製品の補強等に用いられるコードの解析モデルの作成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータを用いた有限要素法等による数値解析法が種々提案されている。このような数値解析法では、実際に製品を作る前の段階でその性能を検証することができる。また、既に製造された試作品等について、実際に試験を行うことなく、その性能を検証することができる。従って、数値解析法を利用することにより、製品の開発コストや開発期間の短縮が可能になる。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、タイヤの内部補強に用いられるタイヤコードの解析モデルの作成方法が提案されている。この方法では、タイヤコードの二次元断面形状からコード断面の解析モデルを作成し、これを軸方向にねじりながら展開することにより、三次元形状のタイヤコードの解析モデルを作成することを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−196598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、予め波付け等が施されたフィラメントを撚り合わせたコードのように、コード断面でのフィラメントの配置が不規則なものである場合、上記特許文献1の方法では、コードの解析モデルを作成することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、コード断面におけるフィラメントの配置が不規則なものであっても、精度良く解析モデルを作成することができるコードの解析モデルの作成方法及び装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、複数のフィラメントが撚り合わされかつゴムで被覆されたコードの数値解析用の解析モデルを、コンピュータを用いて作成する方法であって、前記コードの断面画像を予め定めた軸方向のピッチで取得するステップと、前記断面画像の中から選ばれた第1の断面画像に基づいて、該第1の断面画像を有限個の要素で分割するとともに、各要素を、前記フィラメントを構成するフィラメントモデル又は前記ゴムを構成するゴムモデルのいずれかに定義して二次元の第1のコード断面モデルを設定するステップと、前記第1の断面画像と軸方向で隣り合う第2の断面画像について、前記第1の断面画像からのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量を計算するステップと、前記移動量に基づいて前記第1のコード断面モデルの節点を移動させて第2のコード断面モデルを設定する第2のコード断面モデル新設ステップと、前記第1のコード断面モデルの各節点と、該節点に対応する前記第2のコード断面モデルとの節点とを軸方向で接続することにより、前記ピッチ長さの三次元のコードモデルを設定する接続ステップとを含むことを特徴とするコードの解析モデルの作成方法である。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記コードは、前記フィラメントの少なくとも1本が予め二次元又は三次元のくせ付けが施されたくせ付けフィラメントである請求項1記載のコードの解析モデルの作成方法である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記第2のコード断面モデル新設ステップは、前記第1のコード断面モデルを前記コード回転角で回転させるステップと、前記第1のコード断面モデルの各フィラメントモデルの中心を、前記ずれ量に基づいて各々移動させるステップとを含む請求項1又は2記載のコードの解析モデルの作成方法である。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記設定された第2のコード断面モデルの要素につぶれがないか否かを判定する判定ステップと、前記第2のコード断面モデルに要素のつぶれがあった場合、前記要素のつぶれが無くなる大きさに前記移動量を細分化し、この細分化された移動量に基づいて設定された少なくとも一つの中間コード断面モデルを介して第2のコード断面モデルを設定する細分化ステップとをさらに含む請求項1乃至3のいずれかに記載のコードの解析モデルの作成方法である。
【0011】
また請求項5記載の発明は、複数のフィラメントが撚り合わされかつゴムで被覆されたコードの数値解析用の解析モデルを作成する装置であって、予め定めた軸方向のピッチで取得された前記コードの断面画像が入力される断面画像入力部、前記断面画像の中から選ばれた第1の断面画像に基づいて、該第1の断面画像を有限個の要素で分割するとともに、各要素を、前記フィラメントを構成するフィラメントモデル又は前記ゴムを構成するゴムモデルのいずれかに定義して二次元の第1のコード断面モデルを設定する第1のコード断面モデル設定部、前記第1の断面画像と軸方向で隣り合う第2の断面画像について、前記第1の断面画像からのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量を計算する移動量計算部、前記移動量に基づいて前記第1のコード断面モデルの節点を移動させて第2のコード断面モデルを設定する第2のコード断面モデル設定部、及び、前記第1のコード断面モデルの各節点と、該節点に対応する前記第2のコード断面モデルとの節点とを軸方向で接続することにより、前記ピッチ長さの三次元のコードモデルを設定する三次元コードモデル設定部とを含むことを特徴とするコードの解析モデルの作成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコードの解析モデルの作成方法では、前記コードの断面画像を予め定めた軸方向のピッチで取得するステップと、前記断面画像の中から選ばれた第1の断面画像に基づいて、該第1の断面画像を有限個の要素で分割するとともに、各要素を、前記フィラメントを構成するフィラメントモデル又は前記ゴムを構成するゴムモデルのいずれかに定義して二次元の第1のコード断面モデルを設定するステップと、前記第1の断面画像と軸方向で隣り合う第2の断面画像について、少なくとも前記第1の断面画像からのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量を計算するステップと、前記移動量に基づいて前記第1のコード断面モデルの節点を移動させて第2のコード断面モデルを設定する第2のコード断面モデル新設ステップと、前記第1のコード断面モデルの各節点と、該節点に対応する前記第2のコード断面モデルとの節点とを軸方向で接続することにより、前記ピッチ長さの三次元のコードモデルを設定する接続ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
このようなコードの解析モデルの作成方法では、コードの各断面について、隣接する断面とのコード回転角及び各フィラメントの中心位置のずれ量を含む移動量が計算される。従って、コード断面において、フィラメントの配置に規則性がなくても、精度良くコードの解析モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のコードの解析モデルの作成方法を実施するためのコンピュータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)はコードの全体斜視図、(b)はそのフィラメントの撚り合わせを示す線図である。
【
図4】(a)はコードの断面画像を示す図、(b)はそのコード断面モデルを視覚化して示す線図である。
【
図5】(a)は第1の断面画像、(b)は第2の断面画像を示す。
【
図6】(a)は第1のコード断面モデル、(b)は第2のコード断面モデルをそれぞれ視覚化して示す線図である。
【
図7】1ピッチ長さの三次元のコードモデルを視覚化して示す線図である。
【
図8】三次元のコードモデルを視覚化して示す線図である。
【
図9】三次元のコードモデルを視覚化して示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明は、複数のフィラメントが撚り合わされかつゴム(加硫又は未加硫の別を問わない)で被覆されたコードの解析モデルを、コンピュータを用いて作成する方法である。該解析モデルは、コンピュータを用いた有限要素法等の数値解析に用いられる。
【0016】
本実施形態のコードの解析モデルの作成方法は、
図1に示されるようなコンピュータ装置1を用いて行われる。該コンピュータ装置1は、本体1aと、入力手段としてのキーボード1b、マウス1cと、出力手段としてのディスプレイ装置1dとを含んで構成されている。本体1aには、演算処理装置(CPU)、メモリー及び磁気ディスク等の記憶手段の他、CD−ROMやフレキシブルディスクのドライブ1a1、1a2などを適宜具えている。そして、前記記憶手段には本発明に係る作成方法を実行するためのプログラムが記憶されている。これにより、コンピュータ装置1は、コードの解析モデルの作成装置として機能する。
【0017】
図2には、本実施形態の処理手順を示すフローチャートが示されている。本実施形態では、前記コードの断面画像を予め定めた軸方向のピッチで取得するステップが行われる(ステップS1)。
【0018】
図3(a)には、解析対象となるコード2の斜視図が示されている。本実施形態のコード2は、金属製の4本のフィラメント3A…を撚り合わせた撚り合わせ体3と、該撚り合わせ体3を被覆するゴム4とから構成される。該コード2は、例えば、タイヤ等の各種ゴム製品の補強などに好適に用いられる。
図3(b)には、ゴム4を取り除いたフィラメント3Aの撚り合わせ体3の斜視図が示されている。また、前記フィラメント3Aの少なくとも1本には、撚り合わせ前の状態において、予め二次元の波又は三次元の螺旋といったくせ付けが施されたくせ付けフィラメントが用いられる。このようなくせ付けフィラメントは、撚り合わされた後において、コードの長手方向(軸方向)に螺旋の軌跡で移動しつつコードの半径の方向等にも不規則に変化する。
【0019】
図4(a)には、コード2の断面画像Gの一例が示されている。該断面画像Gは、例えばCTスキャン等を用いることによって、コード2について予め定めた一定の軸方向のピッチLaで複数撮像される。各断面画像Gは、例えば、撮像開始位置から撮像終了位置まで順番に画像番号n(n=1以上の整数)とともにコンピュータ装置1の前記記憶手段に記憶される。本実施形態では、この記憶手段がコードの断面画像入力部を構成する。なお、上記撮像のピッチLaは、特に限定されるものではないが、タイヤ用のコードの場合、好ましくは0.5〜4.0mm程度が好適である。
【0020】
次に、コンピュータ装置1は、コードの断面画像Gを特定するためのパラメータである画像番号nを初期化する。本実施形態では、画像番号nに初期値1が代入される(ステップS2)。
【0021】
次に、コンピュータ装置1は、前記断面画像の中から第nの断面画像(本実施形態ではn=1より、第1の断面画像である。)を記憶手段から取り出してメモりに記憶させる(ステップS3)。この第1の断面画像G1が
図4(a)に示されている。
【0022】
次に、コンピュータ装置1の第1のコード断面モデル設定部は、前記第1の断面画像G1に基づいて、
図4(b)に示されるように、二次元の第1のコード断面モデルM1を設定する(ステップS4)。該第1のコード断面モデルM1は、有限要素法等の数値解析法を行う際に用いられるメッシュモデルであり、連続体であるコード2の断面が有限個の要素に分割(離散化)されたものである。
【0023】
本実施形態の第1のコード断面モデルM1は、前記各フィラメント3Aを定義する要素emからなるフィラメントモデル部5と、前記ゴム4を定義する要素erからなるゴムモデル部6とから構成される。
図4(b)では、理解しやすいように、ゴムモデル部6が薄く着色されている。
【0024】
上述のような要素分割は、例えば、第1の断面画像G1に対して、フィラメント3Aとゴム4との色相差や明度差を利用した画像処理を行うことにより、フィラメント3Aの領域、及び、ゴム4の領域をそれぞれ認識するとともに、各領域を複数個の要素で分割することによって得られる。また、本実施形態において、第1のコード断面モデルM1の各要素em、erは、いずれも四辺形要素のみを用いて行われる。設定された各要素em、erは、各々の節点の座標や要素の番号などがコンピュータ装置1の記憶手段に記憶される。
【0025】
次に、コンピュータ装置1は、第1の断面画像G1と軸方向で隣り合う第2の断面画像G2(フローチャートでは、これが第n+1の断面画像と記載されている。)を記憶手段から取り出してメモリに読み込む(ステップS5)。
【0026】
次に、コンピュータ装置1は、第2の断面画像G2について、前記第1の断面画像G1からの移動量を計算する(ステップS6)。この移動量には、2つの断面画像G1、G2間のコード回転角及び各フィラメント3Aの中心位置のずれ量が含まれる。
【0027】
図5(a)及び(b)には、第1の断面画像G1及び第2の断面画像G2が模式的に示されている。本実施形態において、コンピュータ装置1が上記移動量を計算する具体的なステップは、次の通りである。
[処理1]
画像処理によって、第1の断面画像G1の各フィラメント3Aの断面中心(図心)P1乃至P4の座標が計算される。
[処理2]
第1の断面画像G1の前記断面中心P1乃至P4を頂点とする四辺形から、第1の断面画像G1の4本のフィラメント3Aの中心座標P0を計算する。この中心座標P0は、実質的に、第1の断面画像G1のコード中心として扱うことができる。
[処理3]
第1の断面画像G1のコード中心P0と、一のフィラメント3A1の断面中心P1とを用い、断面中心P0から断面中心P1に向かうベクトルA1が計算される。
[処理4]
処理1と同様、画像処理によって、第2の断面画像G2のフィラメント3Aの断面中心(図心)P1乃至P4の座標が計算される。
[処理5]
第2の断面画像G2の前記断面中心P1乃至P4を頂点とする四辺形から、第2の断面画像G2の4本のフィラメント3Aの中心座標P0を計算する。この中心座標P0は、実質的に、第2の断面画像G2のコード中心として扱うことができる。
[処理6]
第2の断面画像G2のコード中心P0と、前記一のフィラメント3A1の断面中心P1とを用い、コード中心P0から断面中心P1に向かうベクトルA2が計算される。
[処理7]
コンピュータ装置1の移動量計算部は、ベクトルA1とベクトルA2とがなす角度θを計算する。この角度θは、第1の断面画像G1に対する第2の断面画像G2のコード回転角とされる。また、コンピュータ装置1の移動量計算部は、両断面画像のコード中心を揃えるとともに、第1の断面画像を前記コード中心P0の周りで前記コード回転角θで回転移動させたときの各フィラメント3Aの中心座標P1乃至P4と、第2の断面画像の各フィラメント3Aの中心座標P1乃至P4との差を計算する。この差は、各フィラメントの中心位置のずれ量とされる。
[処理8]
コンピュータ装置1の第2のコード断面モデル設定部は、第1のコード断面モデルM1を、そのコード中心P0を中心として、前記コード回転角θで回転させるとともに、その断面中心が、第2の断面画像G2のコード中心の座標と一致するようにオフセット(平行移動)し、第1の修正コード断面モデルM1aを得る(図示省略)。このオフセット量は、第1の断面画像のコード中心P0と、第2の断面画像のコード中心P0との座標から求まる。
[処理9]
コンピュータ装置1の第2のコード断面モデル設定部は、処理8で得られた第1の修正コード断面モデルM1aの各フィラメントモデル部5の節点を、前記処理7で計算されたずれ量で平行移動させ、第2のコード断面モデルM2を設定する(第2のコード断面モデル新設ステップ)。
【0028】
図6(a)及び
図6(b)には、上記手順にて得られた第nのコード断面モデルMnと、第n+1のコード断面モデルM(n+1)との一例が示される。
【0029】
次に、コンピュータ装置1の三次元コードモデル設定部は、
図7に示されるように、第1のコード断面モデルM1の各節点M1eと、該節点に対応する第2のコード断面モデルM2の各節点M2eとを軸方向で接続する(関連づける)ことにより、前記ピッチLaの長さの三次元のコードモデルMaを設定する(ステップS8)。このような接続ステップが行われることにより、これまで、四辺形であった二次元の要素em、erが、六面体の三次元の要素etへと変更され、その情報がコンピュータ装置1の記憶手段に記憶される。そして、二次元のフィラメントモデル部5は、軸方向の長さを有する三次元のフィラメントモデル7へ、また二次元のゴムモデル部6は、軸方向に厚さを有する三次元のゴムモデル8に変更される。
【0030】
次に、コンピュータ装置1は、全ての断面画像を処理したか否かを判断し(ステップS9)、全てが処理されていないと判断された場合には、画像番号nに1を加算し、次の断面画像(この例では第3の断面画像)に対して、ステップS5以降の処理が同様に行われる。即ち、第2のコード断面モデルM2を利用して、これを回転及び移動等させて第3のコード断面モデルM3が順次設定される。他方、全ての断面画像が処理されていると判断された場合には、処理を終える。
【0031】
図8には、本実施形態によって得られた三次元のコードモデルMbが視覚化して示されている。このような三次元のコードモデルMbには、フィラメントモデル7及びゴムモデル8に、それぞれ物性値が定義され、有限要素法等による数値解析に用いられる。
【0032】
本発明の変形例として、例えば、新たに設定された第n+1のコード断面モデルの要素に対して、つぶれやねじれがないか否かを判定する判定ステップを行うことができる。要素のつぶれやねじれがあった場合、前記要素のつぶれが無くなる長さに前記移動量を細分化する。即ち、
図9に示されるように、第nのコード断面モデルMnから第n+1のコード断面モデルMnを設定する際、本来1回で与えられる移動量(コード回転角及びずれ量)を、複数回に分けて与え、第n+1のコード断面モデルを得る前に少なくとも一つの中間モデルMsを介在させて行うことができる。中間モデルMsは、第nのコード断面モデルMnと、第n+1のコード断面モデルM(n+1)との間のコード回転角θ、及びフィラメントのずれ量に、S/Laを乗じて、そのコード回転角θ、及びフィラメントのずれ量が計算される。このような処理を含ませることにより、要素のつぶれ等による処理の中断や計算エラーをなくし、連続して安定したモデル作成処理をコンピュータ装置1に行わせることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施しうるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 コンピュータ装置
2 コード
3A フィラメント
3 フィラメントの撚り合わせ体
4 ゴム
M1 第1のコード断面モデル
M2 第1のコード断面モデル
Ma、Mb 三次元のコードモデル