特許第6181932号(P6181932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181932ゴマ風味増強、ゴマ風味付与、及びナッツ風味増強の少なくともいずれかのために用いられる組成物及び調味料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181932
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ゴマ風味増強、ゴマ風味付与、及びナッツ風味増強の少なくともいずれかのために用いられる組成物及び調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20170807BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20170807BHJP
【FI】
   A23L27/10 H
   A23L27/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-15313(P2013-15313)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-143966(P2014-143966A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年8月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社 食品化学新聞社、食品化学新聞、第1面、平成24年9月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 信隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵美子
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−101471(JP,A)
【文献】 特開2010−166886(JP,A)
【文献】 特開2012−161268(JP,A)
【文献】 特開2008−154474(JP,A)
【文献】 米国特許第04661363(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/60
CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマ風味増強、ゴマ風味付与、及びナッツ風味増強の少なくともいずれかのために用いられる組成物であって、
前記組成物は、焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を含ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
酵母が、Saccharomyces属の酵母である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
香気成分として、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−フランメタノール、2−メトキシ−4−ビニルフェノール、2−メトキシフェノール、2−アセチル−1−ピロリン、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、及び2−エチル−5−メチルピラジンを含む請求項1から2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
香気成分の量が、焙煎前よりも増加している請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
色差計で測定したL*値が、40〜60である請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ゴマ風味増強、ゴマ風味付与、及びナッツ風味増強の少なくともいずれかのために用いられる調味料であって、
請求項1から5のいずれかに記載のゴマ風味増強、ゴマ風味付与、及びナッツ風味増強の少なくともいずれかのために用いられる組成物を含有することを特徴とする調味料。
【請求項7】
粉体、液体、及びペーストのいずれかである請求項6に記載の調味料。
【請求項8】
更に、酵母エキスを含有する請求項6から7のいずれかに記載の調味料。
【請求項9】
前記組成物と、前記酵母エキスとの質量比が、1.0:0.5〜1.0:3.5である請求項8に記載の調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物及びその製造方法、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有する調味料、並びに前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記調味料の少なくともいずれかを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴマは優れた風味を有するため、様々な食品に使用されており、例えば、ゴマドレッシング、ゴマダレとして用いられている。一方、近年の健康志向から、低カロリーの食品が求められており、ゴマの使用量を減らした場合であっても、ゴマの風味を有する食品の開発が求められている。
【0003】
従来、酵母エキスは、調味料の1つとして用いられており、例えば、少なくともイソ酪酸及びイソ吉草酸を含む酵母エキスを、食品の香辛料香気の増強、乳香気の増強、バター香気の増強、ゴマ香気の増強、及び肉のグラス臭マスキングといった香気を改善するために用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、十分なゴマの風味を得ることができないという問題がある。
【0004】
また、食物アレルギーを有する場合には、当該食物含む食品を食することを望んでも食することができないという問題がある。そこで、食物アレルギーの原因となる食物を含む食品の風味を有しつつ、かつ、前記食物アレルギーの原因となる食物を使わない若しくは使用量を低減することができる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−166886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、香ばしい香り及びナッツのような香りを有し、ゴマの風味を付与又は増強することができ、また、ナッツの風味を増強することもできる焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物及びその製造方法、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有する調味料、並びに前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記調味料の少なくともいずれかを含有する飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を含有することを特徴とする焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物である。
<2> 酵母が、Saccharomyces属の酵母である前記<1>に記載の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有することを特徴とする調味料である。
<4> 粉体、液体、及びペーストのいずれかである前記<3>に記載の調味料である。
<5> ゴマ風味増強用及びゴマ風味付与用のいずれかである前記<3>から<4>のいずれかに記載の調味料である。
<6> ナッツ風味増強用である前記<3>から<4>のいずれかに記載の調味料である。
<7> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記<3>から<6>のいずれかに記載の調味料の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品である。
<8> 乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎する工程を含むことを特徴とする焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法である。
<9> 焙煎工程の温度が120℃から170℃であり、時間が5分間から2時間である前記<8>に記載の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、香ばしい香り及びナッツのような香りを有し、ゴマの風味を付与又は増強することができ、また、ナッツの風味を増強することもできる焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物及びその製造方法、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有する調味料、並びに前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記調味料の少なくともいずれかを含有する飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、試験例2における焙煎する前の乾燥酵母を撮影した写真である。
図2図2は、試験例2における焙煎後の乾燥酵母を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物及びその製造方法)
本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物は、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法が好ましい。
以下、本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法の説明と併せて本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物についても説明する。
【0011】
<焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法>
本発明の焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造方法は、焙煎工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0012】
<<焙煎工程>>
前記焙煎工程は、乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎する工程である。即ち、乾燥酵母細胞壁含有組成物を乾燥状態のまま、加熱する工程である。
前記焙煎に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)、過熱水蒸気を用いたオーブン、パドルドライヤーなどが挙げられる。
前記焙煎工程により、香ばしい香り及びナッツのような香りを有する焙煎乾燥酵母が得られる。
【0013】
−温度−
前記焙煎工程における乾燥酵母細胞壁含有組成物の温度(以下、「品温」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、120℃から170℃が好ましい。
【0014】
−時間−
前記焙煎工程の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5分間から2時間が好ましい。前記品温が高い場合には、前記焙煎工程の時間は短時間でよく、前記品温が低い場合には、前記焙煎工程の時間は、長時間を要する傾向にある。
【0015】
−攪拌−
前記焙煎工程では、前記乾燥酵母細胞壁含有組成物を攪拌しながら焙煎することが好ましい。前記攪拌の条件としては、特に制限はなく、焙煎に用いる装置に応じて適宜選択することができる。
【0016】
−焙煎度合い−
前記乾燥酵母細胞壁含有組成物の焙煎度合いは、色差計で測定した値を参考とすることもできる。
例えば、前記色差計で測定したL*値が40〜60となるように焙煎することにより、香ばしい香り(以下、「ロースト香」と称することもある)及びナッツのような香り(以下、「ナッツ香」と称することもある)を有する焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を得ることができる。
前記色差計としては、例えば、Color meter ZE6000(日本電色工業株式会社製)を用いることができる。
【0017】
−乾燥酵母細胞壁含有組成物−
前記乾燥酵母細胞壁含有組成物は、乾燥酵母細胞壁を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記乾燥酵母細胞壁含有組成物における乾燥酵母細胞壁の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記乾燥酵母細胞壁含有組成物としては、乾燥酵母細胞壁を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥酵母細胞壁のみからなるもの、乾燥酵母からなるものなどが挙げられる。
【0018】
−−乾燥酵母細胞壁−−
前記乾燥酵母細胞壁の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養乃至醸造した酵母菌を洗浄し、不純物を除去した後、エキス分を抽出し、残った残渣(酵母細胞壁)を乾燥させることにより調製することができる。
前記エキス分の抽出方法としては、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、自己消化、酵素分解、熱水抽出などが挙げられる。
前記酵母細胞壁の乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドラムドライにより乾燥する方法などが挙げられる。
前記乾燥酵母細胞壁とは、水分含量が10質量%以下のものをいう。
【0019】
−−乾燥酵母−−
前記乾燥酵母の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養乃至醸造した酵母菌を洗浄し、不純物を除去した後、そのまま乾燥させることにより調製することができる。
前記洗浄し、不純物を除去した後の酵母菌の乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライにより乾燥する方法などが挙げられる。
前記乾燥酵母とは、水分含量が10質量%以下の酵母をいう。
【0020】
前記乾燥酵母の市販品としては、例えば、Yeastock HG−DY(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))、乾燥酵母Y2A(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))などが挙げられる。
【0021】
前記酵母の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、総合的な味のバランスの点で、パン酵母が好ましい。
【0022】
前記酵母の属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属などが挙げられる。これらの中でも、サッカロミセス(Saccharomyces)属が好ましい。
前記サッカロミセス(Saccharomyces)属の酵母の具体例としては、Saccharomyces cerevisiaeなどが挙げられる。
前記キャンディダ(Candida)属の酵母の具体例としては、Candida utilisなどが挙げられる。
【0023】
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物における前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物は、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物そのものであってもよい。
【0024】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物と、前記その他の成分とを混合する混合工程が挙げられる。
前記混合の方法及び条件としては、特に制限はなく、公知の方法及び条件を適宜選択することができる。
【0025】
−その他の成分−
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するに際して通常用いられる補助的原料乃至添加物などが挙げられる。
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物が、香ばしい香り及びナッツのような香りを有しているか否かは、揮発成分にロースト香を構成する成分及びナッツ香を構成する成分が含まれているか否かを測定することにより、確認することができる。
前記ロースト香を構成する成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2,3−diethyl−5−methylpyrazine、2−ethyl−3,5−dimethylpyrazine、3−ethyl−2,5−dimethylpyrazine、2−furanmethanol、2−methoxy−4−vinylphenol、及び2−methoxyphenolを含むことが好ましい。
前記ナッツ香を構成する成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2−acetyl−1−pyrroline、2−isobutyl−3−methoxypyrazine、2−ethyl−6−methylpyrazine、及び2−ethyl−5−methylpyrazineを含むことが好ましい。
前記測定の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内部標準物質として、cis−3−heptenolを使用した内部標準法を用い、ガスクロマトグラフ質量(GC−MS)分析により測定することが好ましい。前記ガスクロマトグラフ質量分析の条件は、適宜選択することができる。
【0027】
−用途−
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物は、後述する調味料、飲食品などとして好適に用いることができる。また、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物は、ゴマ風味付与剤、ゴマ風味増強剤、ナッツ風味増強剤としても用いることができる。
【0028】
(調味料)
本発明の調味料は、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記調味料は、後述する試験例及び実施例で示すように、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有することにより、食品にゴマ様の風味を付与したり、食品のゴマ風味を増強したり、食品のナッツ風味を増強することができるので、これらの用途に好適に用いることができる。
前記調味料は、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物のみからなるものであってもよい。
【0029】
前記調味料の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粉体状、液体状、ペースト状が好ましい。
【0030】
<その他の成分>
前記調味料におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵母エキス、糖アルコール、植物油脂、食塩、澱粉、糖類(砂糖、液糖など)、デキストリン、アミノ酸(グルタミン酸など)、核酸、タンパク質加水分解物(HVP)などが挙げられる。これらの中でも、酵母エキスを含有することが好ましい。
前記調味料におけるその他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
−酵母エキス−
前記酵母エキスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記酵母エキスは、酵母から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、Yeastock HG−Ps(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))、Yeastock HG−Lq S13(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))、スーパーミーストAP−196(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、トルラ酵母(Candida utilis))、Yeastock S−Ps(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))が好適に挙げられる。これらの中でも、総合的な風味のバランスの点で、Yeastock HG−Ps(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))を用いることが好ましい。
前記調味料における前記酵母エキスの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜70質量%であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、ゴマ様の香気及び味に優れる点で、有利である。
前記調味料における前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物(A)と、前記酵母エキス(B)との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、A:Bが、1.0:0.5〜1.0:3.5が好ましく、1.0:1.5〜1.0:2.5がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、ゴマ様の香気及び味により優れる点で、有利である。
【0032】
−糖アルコール−
前記糖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、還元澱粉糖化物、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられる。
前記調味料における前記糖アルコールの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
−植物油脂−
前記植物油脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米油、コーン油、菜種油、大豆油、綿実油、紅花油、ひまわり油などが挙げられる。
前記調味料における前記植物油脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
−食塩−
前記食塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、海水塩、岩塩などが挙げられる。
前記調味料における前記食塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
−澱粉−
前記澱粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キャッサバ澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、米粉澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉などが挙げられる。
前記調味料における前記澱粉の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記調味料の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により適宜製造することができる。
【0037】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記調味料の少なくともいずれかを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0038】
前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の飲食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、美容食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
【0039】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、ビール類、ビールテイスト飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これら飲料の濃縮液及び調製用粉末を含む。);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、ピーナッツクリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食品は上記例示に限定されるものではない。
【0040】
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物、及び前記調味料の少なくともいずれかの前記飲食品に対する添加量としては、添加する飲食品に応じて異なり一概には規定できないが、0.05質量%〜5.0質量%が好ましい。
【0041】
前記その他の成分としては、飲食品を製造するに際して通常用いられる補助的原料乃至添加物などが挙げられる。
前記原料乃至添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に試験例、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例、実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(試験例1:焙煎条件の検討)
乾燥酵母細胞壁含有組成物として、乾燥酵母である「Yeastock HG−DY」(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))を35kg用い、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)を使用して、乾燥状態のまま、攪拌速度を20回転/分間、下記表1に記載の温度(品温)及び時間で焙煎した。
前記焙煎した焙煎乾燥酵母の焙煎状態について、パネラー10名により以下の基準で評価し、最も多かった評価結果を採用した。結果を表1に示す。
−焙煎状態の評価基準−
◎:粉末の色が茶褐色であり、非常に強いロースト香及びナッツ香を有する。
○:粉末の色が茶褐色であり、ロースト香及びナッツ香を有する。
△:粉末の色が濃い茶褐色又は薄い茶褐色であり、ロースト香及びナッツ香を有するが、それらの香りが弱い。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から、試験例1−1から1−24の焙煎乾燥酵母は、いずれも茶褐色の粉末であり、ロースト香及びナッツ香を有することが分かった。また、焙煎の条件は、150℃〜160℃で、10分間前後が好ましいことが分かった。
【0046】
(試験例2)
乾燥酵母細胞壁含有組成物として、乾燥酵母である「Yeastock HG−DY」(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))を35kg用い、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)を使用して、乾燥状態のまま、攪拌速度を20回転/分間、温度(品温)155℃で10分間加熱し、焙煎した。
焙煎前後の乾燥酵母について、色差計(Color meter ZE6000,日本電色工業株式会社製)で測定した結果を表2に示す。また、焙煎前後の乾燥酵母を撮影した結果を図1及び図2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2の結果からも焙煎後の乾燥酵母の色が茶褐色であることが示された。
【0049】
(実施例1−1)
乾燥酵母細胞壁含有組成物として、乾燥酵母である「Yeastock HG−DY」(Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))を35kg用い、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)を使用して、乾燥状態のまま、攪拌速度を20回転/分間、温度(品温)155℃で10分間加熱し、焙煎した。
得られた焙煎乾燥酵母の香りと味について、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表3に示す。
−香り−
+2:ゴマ様の香気がある。
+1:ゴマ様の香気がややある。
±0:ゴマ様の香気があるともないともいえない。
−1:どちらかといえばゴマ様の香気がない。
−2:ゴマ様の香気が全くない。
−味−
+2:ゴマ様の味がある。
+1:ゴマ様の味がややある。
±0:ゴマ様の味があるともないともいえない。
−1:どちらかといえばゴマ様の味がない。
−2:ゴマ様の味が全くない。
【0050】
(実施例1−2)
実施例1−1において、乾燥酵母を「乾燥酵母Y2A」(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、実施例1−1と同様にして焙煎乾燥酵母を得た。
得られた焙煎乾燥酵母の香りと味について、実施例1−1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0051】
(実施例1−3)
実施例1−1において、乾燥酵母をトルラ酵母(Candida utilis)に代えた以外は、実施例1−1と同様にして焙煎乾燥酵母を得た。
得られた焙煎乾燥酵母の香りと味について、実施例1−1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果から、実施例1−1から1−3の焙煎乾燥酵母は、ゴマ様の香り及び味を有していることが分かった。
また、実施例1−1の焙煎乾燥酵母は、実施例1−1から1−3の焙煎乾燥酵母の中で、最も香ばしい匂いを有しており、味は、少し酸味があるが、嫌味が無い味であり、クセもなかった。実施例1−2の焙煎乾燥酵母は、香ばしい匂いはあるが、発酵臭のような匂いもあり、味は、ホップの風味が残っているためか、苦味があった。実施例1−3の焙煎乾燥酵母は、香ばしい匂いとココナッツの様な甘い香りがあった。
したがって、総合的な風味のバランスを考慮すると、実施例1−1の焙煎乾燥酵母が最も好ましいことが分かった。
【0054】
(試験例3)
実施例1−1で製造した焙煎乾燥酵母と、ペースト状の酵母エキス(Yeastock HG−Ps、Alletech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))とを表4に記載の配合比率(質量比)で混合し、調味料を得た。
前記調味料について、パネラー10名により以下の基準で評価し、最も多かった評価結果を採用した。結果を表4に示す。
−調味料の評価基準−
◎:ゴマ様の香気及び味を強く有する。
○:ゴマ様の香気及び味を有するが、他の香気及び味も若干有する。
△:どちらかといえばゴマ様の香気及び味を有する。
【0055】
【表4】
【0056】
表4の結果から、焙煎乾燥酵母と、酵母エキスとを用いて調味料とすると、ゴマ様の香気が得られることが分かった。
【0057】
(試験例4−1−1)
実施例1−1で得られた焙煎乾燥酵母と、ペースト状の酵母エキス(Yeastock HG−Ps、Alletech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))とを質量比1:2で混合し、調味料を得た。
得られた調味料の風味について、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表5−1に示す。
−風味−
+2:ゴマ様の香気及び味がある。
+1:ゴマ様の香気及び味がややある。
±0:ゴマ様の香気及び味があるともないともいえない。
−1:どちらかといえばゴマ様の香気及び味がない。
−2:ゴマ様の香気及び味が全くない。
【0058】
(試験例4−1−2)
試験例4−1−1において、ペースト状の酵母エキスをミーストN(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、試験例4−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−1に示す。
【0059】
(試験例4−1−3)
試験例4−1−1において、ペースト状の酵母エキスをアロマイルドペースト(株式会社興人製、トルラ酵母(Candida utilis))に代えた以外は、試験例4−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−1に示す。
【0060】
(試験例4−1−4)
試験例4−1−1において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−1に示す。
【0061】
(試験例4−1−5)
試験例4−1−2において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−1−2と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−1に示す。
【0062】
(試験例4−1−6)
試験例4−1−3において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−1−3と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−1に示す。
【0063】
【表5-1】
【0064】
表5−1の結果から、乾燥酵母を焙煎した試験例4−1−1〜4−1−3の調味料は、ゴマ様の香気及び味を有していることが分かった。一方、乾燥酵母を焙煎していない試験例4−1−4〜4−1−6の調味料では、ゴマ様の香気及び味がないことが分かった。
また、試験例4−1−1の調味料は、少し酸味があるものの、クセがなく、香ばしい風味が阻害されていないように感じられ、また旨味があった。試験例4−1−2の調味料は、香ばしい風味はあるが、苦味、雑味があり、少しクセがあり、また、旨味が少し弱かった。試験例4−1−3の調味料は、旨味が強く、香ばしい風味があるが、エグ味が気になった。
【0065】
(試験例4−2−1)
試験例4−1−1において、焙煎乾燥酵母を実施例1−2で得られた焙煎乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0066】
(試験例4−2−2)
試験例4−2−1において、ペースト状の酵母エキスをミーストN(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、試験例4−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0067】
(試験例4−2−3)
試験例4−2−1において、ペースト状の酵母エキスをアロマイルドペースト(株式会社興人製、トルラ酵母(Candida utilis))に代えた以外は、試験例4−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0068】
(試験例4−2−4)
試験例4−2−1において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0069】
(試験例4−2−5)
試験例4−2−2において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−2−2と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0070】
(試験例4−2−6)
試験例4−2−3において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−2−3と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−2に示す。
【0071】
【表5-2】
【0072】
表5−2の結果から、乾燥酵母を焙煎した試験例4−2−1〜4−2−3の調味料は、ゴマ様の香気及び味を有していることが分かった。一方、乾燥酵母を焙煎していない試験例4−2−4〜4−2−6の調味料では、ゴマ様の香気及び味がないことが分かった。
また、試験例4−2−1の調味料は、香ばしい風味が少し弱く、少し苦味が感じられ、少し酸味があったが、旨味を有していた。試験例4−2−2の調味料は、苦味、雑味が少し気になり、旨味が弱く感じられ、香ばしい風味が弱く感じられた。試験例4−2−3の調味料は、旨味はあるが、苦味とエグ味があり、香ばしい風味が少し弱かった。
【0073】
(試験例4−3−1)
試験例4−1−1において、焙煎乾燥酵母を実施例1−3で得られた焙煎乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0074】
(試験例4−3−2)
試験例4−3−1において、ペースト状の酵母エキスをミーストN(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、試験例4−3−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0075】
(試験例4−3−3)
試験例4−3−1において、ペースト状の酵母エキスをアロマイルドペースト(株式会社興人製、トルラ酵母(Candida utilis))に代えた以外は、試験例4−3−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0076】
(試験例4−3−4)
試験例4−3−1において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−3−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0077】
(試験例4−3−5)
試験例4−3−2において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−3−2と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0078】
(試験例4−3−6)
試験例4−3−3において、焙煎乾燥酵母を焙煎前の乾燥酵母に代えた以外は、試験例4−3−3と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表5−3に示す。
【0079】
【表5-3】
【0080】
表5−3の結果から、乾燥酵母を焙煎した試験例4−3−1〜4−3−3の調味料は、ゴマ様の香気及び味を有していることが分かった。一方、乾燥酵母を焙煎していない試験例4−3−4〜4−3−6の調味料では、ゴマ様の香気及び味がないことが分かった。
また、試験例4−3−1の調味料は、少し苦味が感じられ、少し酸味があったが、香ばしい風味があり、旨味を有していた。試験例4−3−2の調味料は、香ばしい風味はあるが、苦味、雑味があり、少しクセがあり、旨味が少し弱かった。試験例4−3−3の調味料は、旨味は強く、香ばしい風味はあるが、苦味とエグ味が気になった。
【0081】
試験例4−1−1〜4−3−6の結果から、焙煎していない乾燥酵母を用いた調味料では、ゴマ様の香気及び味がなく、乾燥酵母は、焙煎することが必要であることが分かった。
また、ゴマ様の香気及び味を有することが分かった調味料の中でも、焙煎乾燥酵母としてYeastock HG−DYを用い、酵母エキスとしてYeastock HG−Psとを組み合わせた調味料が、総合的な風味のバランスの点で優れていることがわかった。
【0082】
(実施例2)
以下の各成分を混合し、調味料を製造した。本実施例で得られた調味料も良好なゴマ様の風味を有していた。
〔配合割合〕
・ 焙煎乾燥酵母(実施例1−1で得られた焙煎乾燥酵母) 35質量%
・ Yeastock HG−Ps 40質量%
(酵母エキス、Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))
・ スーパーミーストAP−196 15質量%
(酵母エキス、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、トルラ酵母(Candida utilis))
・ Yeastock S−Ps 10質量%
(酵母エキス、Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))
【0083】
(実施例3)
表6に示した各材料を混合したドレッシングに、実施例2で得られた調味料を0.3容量%添加し、焙煎乾燥酵母(焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物)を含有するドレッシングを得た。
また、比較対照として、焙煎乾燥酵母を含有する調味料を用いず、ねりごまの配合割合を10.0容量%とし、水の配合割合を21.0容量%とした焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングを得た。
前記焙煎乾燥酵母を含有するドレッシングについて、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表7に示す。
−ドレッシングの官能評価:香り−
+2:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが非常に良い。
+1:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りがやや良い。
±0:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが同等である。
−1:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りがやや悪い。
−2:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが非常に悪い。
−ドレッシングの官能評価:味−
+2:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が非常に良い。
+1:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味がやや良い。
±0:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が同等である。
−1:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味がやや悪い。
−2:焙煎乾燥酵母不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が非常に悪い。
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
表7の結果から、実施例2で得られた調味料は、ゴマの風味を増強できることも分かった。
【0087】
(実施例4)
ピーナッツクリーム(ピーナッツクリーム、ソントン食品工業株式会社製)に、実施例2で得られた調味料を0.3容量%添加し、焙煎乾燥酵母(焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物)を含有するピーナッツクリームを得た。
比較対照を実施例2で得られた調味料を添加する前のピーナッツクリームとし、前記焙煎乾燥酵母を含有するピーナッツクリームについて、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表8に示す。
−ピーナッツクリームの官能評価:香り−
+2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが非常に良い。
+1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りがやや良い。
±0:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが同等である。
−1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りがやや悪い。
−2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが非常に悪い。
−ピーナッツクリームの官能評価:味−
+2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が非常に良い。
+1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味がやや良い。
±0:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が同等である。
−1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味がやや悪い。
−2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が非常に悪い。
【0088】
【表8】
【0089】
表8の結果から、実施例2で得られた調味料は、ピーナッツの風味を増強できることも分かった。
【0090】
(試験例5−1)
実施例1−1で得られた焙煎乾燥酵母「Yeastock HG−DY」の香気成分と、焙煎する前の乾燥酵母「Yeastock HG−DY」の香気成分との比較試験を行った。
対象の香気成分は、下記表9−1に記載の香気成分とした。これらの香気成分は、ゴマに含まれている香気成分で、ゴマの特徴的な香ばしい香りを構成する、ロースト香及びナッツ香において、比較的重要とされている成分である。
【0091】
【表9-1】
【0092】
<香気成分の分析>
前記香気成分の分析は、検量線法の1つである内部標準法により行った。
前記内部標準法とは、予め一定濃度に決めておいた内部標準物質と、検量線作成に使用する標準物質とを共に添加して、前記内部標準物質と前記標準物質との信号強度比(標準物質の信号強度/内部標準物質の信号強度)と、濃度との関係から検量線を作成し、次に、前記内部標準物質と、測定試料とを共に添加して、前記内部標準物質と前記測定試料との信号強度比(測定試料の信号強度/内部標準物質の信号強度)を測定し、前記検量線より、前記測定試料における目的物質の定量を行う方法である。
前記信号強度比(標準物質の信号強度/内部標準物質の信号強度、及び測定試料の信号強度/内部標準物質の信号強度)を、内部標準比という。
【0093】
−揮発成分の抽出−
試料として、実施例1−1で得られた焙煎乾燥酵母「Yeastock HG−DY」、又は焙煎前の乾燥酵母300gを用い、前記試料に、内部標準物質として、cis−3−heptenolを100ppmの濃度で含有するエタノール(残留農薬試験用、5,000倍濃縮試験品)溶液(以下、「内部標準溶液」と称することもある)を100μL添加した。前記内部標準溶液を添加した試料の揮発性画分と、不揮発性画分とをSAFE(Solvent−assisted flavor evaporation)装置(SFE濃縮器、桐山製作所社製)を用い、定法に従い分離した。
【0094】
前記揮発性画分にジクロロメタン(残留農薬試験用(5,000倍濃縮試験品))を100mL添加し、室温で60分間、20rpm〜300rpmで振とう(振とう器SA−31、ヤマト科学社製)し、揮発成分を抽出した。
前記揮発成分について、分液ロートによりジクロロメタンを回収し、次いで、無水硫酸ナトリウム(残留農薬試験用)を適量添加して脱水した後、窒素ブロー式エバポレーター(東京理化器械社製)により窒素パージして、約200μLまで濃縮したものをガスクロマトグラフ(GC)用少量バイアル瓶に入れ、後述するガスクロマトグラフ質量(GC−MS)分析に供した。
【0095】
−ガスクロマトグラフ質量分析−
以下の機器、条件で、ガスクロマトグラフ質量分析を行った。なお、前記試料中の目的化合物の定性は、前記目的化合物特有の保持時間及びフラグメントの強度から行った。結果を表9−2に示す。
・ 測定機器 : Agilent6890NGC−5973MSD、アジレント・テクノロジー株式会社製
・ カラム : DB−WAX(60m×0.25mmID×0.25μmF.T)、アジレント・テクノロジー株式会社製
・ 温度プログラム : 38℃(10分間保持)→3℃/分間で昇温→230℃(20分間保持)→5℃/分間で昇温→245℃(5分間保持)
・ 注入口温度 : 230℃
・ 注入量 : 1μL
・ モード : パルスドスプリットレス(パルス圧250KPa、1.01mまで)
・ キャリアガス : He、1.0mL/分間
・ イオン源温度 : 230℃
・ 四重極温度 : 150℃
・ イオン化法 : EI、70eV
【0096】
【表9-2】
※ 表9−2中、焙煎前、及び焙煎後の数値は、内部標準比である。
【0097】
表9−2の結果から、乾燥酵母(乾燥酵母細胞壁含有組成物)を焙煎することで、ゴマに含まれる香気成分が増加し、ゴマ様の香気を発することが明らかとなった。そのため、上述の試験例及び実施例において、ゴマの風味付与及びゴマの風味増強効果が得られたと考えられる。
また、前記焙煎乾燥酵母は、ロースト香に加えて、ナッツ香も増加していた。そのため、上述の実施例4において、ナッツ風味増強効果が得られたと考えられる。
【0098】
(試験例5−2)
試料として、実施例1−1で得られた焙煎乾燥酵母と、実施例2で得られた調味料とを用い、前記試験例5−1と同様にして、香気成分の分析を行い、前記実施例2で得られた調味料の香気における焙煎乾燥酵母の影響を分析した。結果を表9−3に示す。
【0099】
【表9-3】
※ 表9−3中、実施例2の調味料中に含まれる実施例1−1の焙煎乾燥酵母、及び実施例2の調味料の数値は、内部標準比である。
※ 実施例2の調味料の測定は、実施例1−1の焙煎乾燥酵母の固形分を合わせて行った。
【0100】
表9−3の結果から、前記実施例2で得られた調味料の香気には、焙煎乾燥酵母(焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物)が大きく影響していることが明らかとなった。
【0101】
(試験例6:焙煎条件の検討)
<乾燥酵母細胞壁含有組成物1の製造>
培養したパン酵母(Alltech Serbia a.d. Senta社製)を
遠心分離機で洗浄し、不純物を除去した。次いで、熱水抽出により、エキス分を抽出し、残った残渣をスプレードライにより乾燥し(乾燥条件:180℃〜210℃の熱風)、水分含量が5質量%の乾燥酵母細胞壁含有組成物1(乾燥酵母細胞壁)を得た。
【0102】
<乾燥酵母細胞壁含有組成物2の製造>
醸造したビール酵母(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を遠心分離機で洗浄し、不純物を除去した。次いで、自己消化乃至酵素分解により、エキス分を抽出し、残った残渣をドラムドライにより乾燥し(乾燥条件:165℃の蒸気)、水分含量が5質量%の乾燥酵母細胞壁含有組成物2(乾燥酵母細胞壁)を得た。
【0103】
<焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物の製造>
乾燥酵母細胞壁含有組成物として、前記乾燥酵母細胞壁含有組成物1又は2を35kg用い、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)を使用して、乾燥状態のまま、攪拌速度を20回転/分間、下記表10に記載の温度(品温)及び時間で焙煎した。
前記焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物の焙煎状態について、パネラー10名により以下の基準で評価し、最も多かった評価結果を採用した。結果を表10に示す。
−焙煎状態の評価基準−
◎:粉末の色が茶褐色であり、非常に強いロースト香及びナッツ香を有する。
○:粉末の色が茶褐色であり、ロースト香及びナッツ香を有する。
△:粉末の色が濃い茶褐色又は薄い茶褐色であり、ロースト香及びナッツ香を有するが、それらの香りが弱い。
【0104】
【表10】
【0105】
表10の結果から、乾燥酵母細胞壁含有組成物1及び2のいずれを用いた場合でも、焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物は、いずれも茶褐色の粉末であり、ロースト香及びナッツ香を有することが分かった。また、焙煎の条件は、150℃〜160℃で、10分間前後が好ましいことが分かった。
なお、乾燥酵母細胞壁含有組成物2を用いた場合には、発酵臭のような香気と、苦味も感じられた。
【0106】
(実施例5−1)
乾燥酵母細胞壁含有組成物として、前記試験例6で製造した乾燥酵母細胞壁含有組成物1を35kg用い、IH釜(ハイブリッド加熱攪拌機、株式会社カジワラ製)を使用して、乾燥状態のまま、攪拌速度を20回転/分間、温度(品温)155℃で10分間加熱し、焙煎した。
得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物の香りと味について、パネラーを8名とした以外は実施例1−1と同様にして評価した。結果を表11に示す。
【0107】
(実施例5−2)
【0108】
実施例5−1において、乾燥酵母細胞壁含有組成物1を前記試験例6で製造した乾燥酵母細胞壁含有組成物2に代えた以外は、実施例5−1と同様にして焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を得た。
得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物の香りと味について、パネラーを8名とした以外は実施例1−1と同様にして評価した。結果を表11に示す。
【0109】
【表11】
【0110】
表11の結果から、実施例5−1及び5−2の焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物は、ゴマ様の香り及び味を有していることが分かった。
前記実施例5−1の焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物は、香ばしい匂いが出ており、また、旨みなどの味がなく、クセがないものであり、また、香ばしい味のみがした。
前記実施例5−2の焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物は、香ばしい匂いはあるが、発酵臭のような匂いがあり、また、ホップの風味が残っているためか、苦味も感じられた。
したがって、前記実施例5−2の焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物よりも、前記実施例5−1の焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物のほうが好ましいことが分かった。
【0111】
(試験例7)
実施例5−1で製造した焙煎乾燥酵母と、ペースト状の酵母エキス(Yeastock HG−Ps、Alletech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))とを表12に記載の配合比率(質量比)で混合し、調味料を得た。
前記調味料について、試験例3と同様にして評価した。結果を表12に示す。
【0112】
【表12】
【0113】
表12の結果から、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物と、酵母エキスとを用いて調味料とすると、ゴマ様の香気が得られることが分かった。
【0114】
(試験例8−1−1)
実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物と、ペースト状の酵母エキス(Yeastock HG−Ps、Alletech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))とを質量比1:2で混合し、調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0115】
(試験例8−1−2)
試験例8−1−1において、ペースト状の酵母エキスをミーストN(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、試験例8−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0116】
(試験例8−1−3)
試験例8−1−1において、ペースト状の酵母エキスをアロマイルドペースト(株式会社興人製、トルラ酵母(Candida utilis))に代えた以外は、試験例8−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0117】
(試験例8−1−4)
試験例8−1−1において、実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0118】
(試験例8−1−5)
試験例8−1−2において、実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−1−2と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0119】
(試験例8−1−6)
試験例8−1−3において、実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−1−3と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−1に示す。
【0120】
【表13-1】
【0121】
表13−1の結果から、乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎した試験例8−1−1〜8−1−3の調味料は、ゴマ様の香気及び味を有していることが分かった。一方、乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎していない試験例8−1−4〜8−1−6の調味料では、ゴマ様の香気及び味がないことが分かった。
また、試験例8−1−1の調味料は、クセがなく、香ばしい風味が阻害されていないように感じられ、また旨味があった。試験例8−1−2の調味料は、香ばしい風味はあるが、苦味、雑味があり、少しクセがあり、また、旨味が少し弱かった。試験例8−1−3の調味料は、旨味が強く、香ばしい風味があるが、エグ味が少し気になった。
【0122】
(試験例8−2−1)
試験例8−1−1において、焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を実施例5−2で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−1−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0123】
(試験例8−2−2)
試験例8−2−1において、ペースト状の酵母エキスをミーストN(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae))に代えた以外は、試験例8−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0124】
(試験例8−2−3)
試験例8−2−1において、ペースト状の酵母エキスをアロマイルドペースト(株式会社興人製、トルラ酵母(Candida utilis))に代えた以外は、試験例8−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0125】
(試験例8−2−4)
試験例8−2−1において、実施例5−2で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−2−1と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0126】
(試験例8−2−5)
試験例8−2−2において、実施例5−2で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−2−2と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0127】
(試験例8−2−6)
試験例8−2−3において、実施例5−2で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎前の乾燥酵母細胞壁含有組成物に代えた以外は、試験例8−2−3と同様にして調味料を得た。
得られた調味料の風味について、パネラーを9名とした以外は試験例4−1−1と同様にして評価した。結果を表13−2に示す。
【0128】
【表13-2】
【0129】
表13−2の結果から、乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎した試験例8−2−1〜8−2−3の調味料は、ゴマ様の香気及び味を有していることが分かった。一方、乾燥酵母細胞壁含有組成物を焙煎していない試験例8−2−4〜8−2−6の調味料では、ゴマ様の香気及び味がないことが分かった。
また、試験例8−2−1の調味料は、香ばしい風味が弱く、発酵臭及び苦味が感じられたが、旨みも感じられた。試験例8−2−2の調味料は、発酵臭、苦味、及び雑味が気になり、旨みが弱く、香ばしい風味も弱かった。試験例8−2−3の調味料は、旨みはあるが、発酵臭と、苦味、及びエグ味があり、香ばしい風味が弱かった。
【0130】
上記試験例8−1−1〜8−2−6の結果から、焙煎していない乾燥酵母細胞壁含有組成物を用いた調味料では、ゴマ様の香気及び味がなく、乾燥酵母細胞壁含有組成物は、焙煎することが必要であることが分かった。
また、総合的な風味のバランスを考慮すると、実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物と、ペースト状の酵母エキスであるYeastock HG−Psとの組合せが好ましいことがわかった。
【0131】
(実施例6)
以下の各成分を混合し、調味料を製造した。本実施例で得られた調味料も良好なゴマ様の風味を有していた。
〔配合割合〕
・ 焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物 35質量%
(実施例5−1で得られた焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物)
・ Yeastock HG−Ps 40質量%
(酵母エキス、Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))
・ スーパーミーストAP−196 15質量%
(酵母エキス、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、トルラ酵母(Candida utilis))
・ Yeastock S−Ps 10質量%
(酵母エキス、Alltech Serbia a.d. Senta社製、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae))
【0132】
(実施例7)
前記実施例3における表6に示した各材料を混合したドレッシングに、前記実施例6で得られた調味料を0.3容量%添加し、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有するドレッシングを得た。
また、比較対照として、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有する調味料を用いず、ねりごまの配合割合を10.0容量%とし、水の配合割合を21.0容量%とした焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングを得た。
前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有するドレッシングについて、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表14に示す。
−ドレッシングの官能評価:香り−
+2:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが非常に良い。
+1:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りがやや良い。
±0:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが同等である。
−1:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りがやや悪い。
−2:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの香りが非常に悪い。
−ドレッシングの官能評価:味−
+2:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が非常に良い。
+1:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味がやや良い。
±0:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が同等である。
−1:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味がやや悪い。
−2:焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物不含有のドレッシングに比べて、ゴマの味が非常に悪い。
【0133】
【表14】
【0134】
表14の結果から、実施例6で得られた調味料は、ゴマの風味を増強できることも分かった。
【0135】
(実施例8)
ピーナッツクリーム(ピーナッツクリーム、ソントン食品工業株式会社製)に、前記実施例6で得られた調味料を0.3容量%添加し、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有するピーナッツクリームを得た。
比較対照を実施例6で得られた調味料を添加する前のピーナッツクリームとし、前記焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を含有するピーナッツクリームについて、10名のパネラーによって、以下の基準により評価した。結果を表15に示す。
−ピーナッツクリームの官能評価:香り−
+2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが非常に良い。
+1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りがやや良い。
±0:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが同等である。
−1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りがやや悪い。
−2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの香りが非常に悪い。
−ピーナッツクリームの官能評価:味−
+2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が非常に良い。
+1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味がやや良い。
±0:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が同等である。
−1:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味がやや悪い。
−2:調味料未添加のピーナッツクリームに比べて、ピーナッツの味が非常に悪い。
【0136】
【表15】
【0137】
表15の結果から、実施例6で得られた調味料は、ピーナッツの風味を増強できることも分かった。
図1
図2