特許第6181938号(P6181938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許6181938ゴムグラフト共重合体およびゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181938
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ゴムグラフト共重合体およびゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 279/02 20060101AFI20170807BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20170807BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170807BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20170807BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20170807BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C08F279/02
   C08L51/04
   C08L67/00
   C08L69/00
   C08L33/06
   G02B1/04
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-36370(P2013-36370)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162878(P2014-162878A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼御堂 成剛
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/037923(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0289198(US,A1)
【文献】 特開2011−063706(JP,A)
【文献】 特表2008−528756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 279/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状重合部とグラフト重合部とから構成されるゴムグラフト共重合体であって、下記の(1)〜():
(1)前記ゴムグラフト共重合体はアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含む
(2)前記ゴム状重合部が多段階層構造を有しており、最内層の屈折率が1.58以上である
(3)前記ゴム状重合部全体の屈折率が1.56以上である
(4)前記グラフト重合部がアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含む
を全て満たすゴムグラフト共重合体。
【請求項2】
前記グラフト重合部の屈折率が1.500以上であり、ゴムグラフト共重合体の屈折率が1.545以上である、請求項1に記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項3】
前記ゴムグラフト共重合体がゴム状重合部をコアとし、グラフト重合部をシェルとするコア−シェル構造である請求項1または2に記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項4】
前記ゴム状重合部の含有率が、ゴムグラフト共重合体100質量%中、60質量%以上、85質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項5】
前記グラフト重合部に、アリール(メタ)アクリレートを、単独で或いは下記モノマー群A〜Cの1種以上と共にグラフト重合させる請求項1〜4のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
(モノマー群A)シアン化ビニル単量体および芳香族ビニル単量体から選ばれる1種以上
(モノマー群B)アルキル(メタ)アクリレート単量体
(モノマー群C)他のビニル単量体
【請求項6】
前記アリール(メタ)アクリレートを、グラフト重合部100質量部に対して、40質量部以上、80質量部以下の範囲で含有する請求項1〜5のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項7】
モノマー群A、BまたはCの含有量が、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、それぞれ以下の通りである請求項5に記載のゴムグラフト共重合体。
モノマー群A:0質量部以上、30質量部以下
モノマー群B:10質量部以上、60質量部以下
モノマー群C:0質量部以上、30質量部以下
【請求項8】
前記ゴム状重合部がポリ(ブタジエン/スチレン)から構成される請求項1〜7のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項9】
前記ゴム状重合部がポリ(ブタジエン/スチレン/ジビニルベンゼン)から構成される最内層と、ポリブタジエンもしくはポリ(ブタジエン/スチレン)から構成される第2層とを少なくとも含む請求項1〜8のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項10】
前記最内層が、ゴム状重合部全体100質量部に対して、65質量部以上、99質量部以下である請求項1〜9のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項11】
前記ゴムグラフト共重合体の体積平均粒子径が50nm以上、500nm以下である請求項1〜10のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
【請求項12】
芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂と、請求項1〜11のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
ゴムグラフト共重合体を、前記樹脂100質量部に対して、1質量部以上、60質量部以下含む請求項12に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
全光線透過率が75%以上、ヘイズ率が15%以下である請求項12または13に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
カーボンブラックを、前記樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下含む請求項12〜14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
JIS K7105によるL値が7以下である請求項12〜15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項17】
温度−30℃でのアイゾット衝撃強度が20kJ/m2以上である請求項12〜16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂、特に芳香族環含有熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)の透明性を高度に維持しながら、耐衝撃性改良剤として機能するゴムグラフト共重合体およびそのゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリカーボネート樹脂、非晶質ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂は、透明性に優れ、様々な用途で使用されている。これらの樹脂からなる成型体に強い衝撃を加えると容易に破壊してしまうため、いわゆる耐衝撃性改良剤として、ジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、あるいはこれらの変性物等のエラストマー成分をこれらの樹脂中に微分散した状態で存在させることにより、耐衝撃性に優れた成型体を得ている。これら耐衝撃性改良剤に含まれるエラストマー成分のガラス転移温度(Tg)が低いほど、耐衝撃性改良効果に優れる傾向が多く見られることが知られている。
【0003】
一方で、透明性に優れる前記樹脂に耐衝撃性改良剤を適用するに際して、透明性を維持するためには、これらの樹脂と耐衝撃性改良剤の屈折率を近づける必要があった。しかしながらエラストマー成分として用いられる多くの材料においては、屈折率が高いものはTgも高くなる傾向にあり、すなわち高屈折率を有するエラストマー成分をベースとする耐衝撃性改良剤を用いた場合には、耐衝撃性改良効果が十分に得られないという問題があった。逆に、耐衝撃性を重視し、Tgが低いエラストマー成分をベースとする耐衝撃性改良剤を選択した場合には、透明性を犠牲にせねばならないという問題があった。高屈折率を有するポリカーボネート樹脂等を改質するに際しては、このような問題が深刻なものとなる場合があり、適用可能な耐衝撃性改良剤は実質的にはまだ存在しないと言える。
【0004】
従来の耐衝撃性改良剤として、スチレン−ブタジエン共重合体を用いる方法がよく知られている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの技術も前述の例外ではない。
【0005】
また、コア層にスチレン−ブタジエン共重合体を用い、シェル層にフェニルメタクリレートを用いて透明性と耐衝撃性を両立する試みがなされている(特許文献3)。しかしながら、この技術もヘイズ率が29%以上と高くなっていて光学特性が十分とはいえず、耐衝撃性と光学特性の両立は十分とはいえない。またコア層の詳細が不明である。
【0006】
エラストマー成分中に高屈折率重合体成分の微細領域を形成させ、あるいはエラストマー成分中に高屈折率重合体成分からなるコアを導入することで、エラストマー成分のTgを高めることなく屈折率平均値を高め、透明性と耐衝撃性を両立する試みがなされている(特許文献4、5)。しかしながら、高屈折率重合体成分を多く用いるとやはり耐衝撃性が発現しにくくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−65331号公報
【特許文献2】特開平4−335049号公報
【特許文献3】米国特許第20080161494号明細書
【特許文献4】特開2001−31852号公報
【特許文献5】特開平7−48496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂(例えば芳香族ポリカーボネートなどの芳香族環含有熱可塑性樹脂)の透明性を高度に維持しながら、耐衝撃性改良剤として機能するゴムグラフト共重合体の提供を目的とする。さらには、本発明は、透明性、耐衝撃性、着色時の発色性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のゴムグラフト共重合体を用いることによって、熱可塑性樹脂(例えば芳香族ポリカーボネート)の透明性を高度に維持しながら、耐衝撃性を付与できることを見出した。本発明のゴムグラフト共重合体およびそれを配合して得た熱可塑性樹脂組成物は、透明性が高度に維持され、耐衝撃性に優れ、また着色した場合には発色性にも優れる。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ゴム状重合部とグラフト重合部とから構成されるゴムグラフト共重合体であって、下記の(1)〜(3):
(1)前記ゴムグラフト共重合体はアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含む
(2)前記ゴム状重合部が多段階層構造を有しており、最内層の屈折率が1.58以上である
(3)前記ゴム状重合部全体の屈折率が1.56以上である
を全て満たすゴムグラフト共重合体。
[2] 前記グラフト重合部の屈折率が1.500以上であり、ゴムグラフト共重合体の屈折率が1.545以上である[1]に記載のゴムグラフト共重合体。
[3] 前記ゴムグラフト共重合体がゴム状重合部をコアとし、グラフト重合部をシェルとするコア−シェル構造である[1]または[2]に記載のゴムグラフト共重合体。
[4] 前記グラフト重合部がアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含む[1]〜[3]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[5] 前記グラフト重合部に、アリール(メタ)アクリレートを、単独で或いは下記モノマー群A〜Cの1種以上と共にグラフト重合させる[1]〜[4]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
(モノマー群A)シアン化ビニル単量体および芳香族ビニル単量体から選ばれる1種以上
(モノマー群B)アルキル(メタ)アクリレート単量体
(モノマー群C)他のビニル単量体
[6] 前記アリール(メタ)アクリレートを、グラフト重合部100質量部に対して、40質量部以上、80質量部以下の範囲で含有する[1]〜[5]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[7] モノマー群A、BまたはCの含有量が、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、それぞれ以下の通りである[5]に記載のゴムグラフト共重合体。
モノマー群A:0質量部以上、30質量部以下
モノマー群B:10質量部以上、60質量部以下
モノマー群C:0質量部以上、30質量部以下
[8] 前記ゴム状重合部がポリ(ブタジエン/スチレン)から構成される[1]〜[7]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[9] 前記ゴム状重合部がポリ(ブタジエン/スチレン/ジビニルベンゼン)から構成される最内層と、ポリブタジエンもしくはポリ(ブタジエン/スチレン)から構成される第2層とを少なくとも含む[1]〜[8]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[10] 前記最内層が、ゴム状重合部全体100質量部に対して、65質量部以上、99質量部以下である[1]〜[9]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[11] 前記ゴムグラフト共重合体の体積平均粒子径が50nm以上、500nm以下である[1]〜[10]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体。
[12] 芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂と、[1]〜[11]のいずれかに記載のゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
[13] ゴムグラフト共重合体を、前記樹脂100質量部に対して、1質量部以上、60質量部以下含む[12]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[14] 全光線透過率が75%以上であり、ヘイズ率が15%以下である[12]または[13]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[15] カーボンブラックを、前記樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下含む[12]〜[14]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[16] JIS K7105によるL値が7以下である[12]〜[15]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[17] 温度−30℃でのアイゾット衝撃強度が20kJ/m2以上である[12]〜[16]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴムグラフト共重合体を熱可塑性樹脂(例えば芳香族ポリカーボネートなどの芳香族環含有熱可塑性樹脂)に配合してなる熱可塑性樹脂組成物は、透明性が高度に維持され、耐衝撃性に優れ、また着色した場合には発色性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.ゴムグラフト共重合体
本発明のゴムグラフト共重合体は、ゴム状重合部とグラフト重合部とから構成されるゴムグラフト共重合体であり、前記ゴムグラフト共重合体はアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含み、前記ゴム状重合部の最内層および前記ゴム状重合部全体の屈折率が所定範囲であることを特徴とする。アリール(メタ)アクリレートを用い、かつゴム状重合部の全体及び最内層の屈折率を調整することで、従来のグラフト共重合体よりも耐衝撃性(例えば、23℃または−30℃でのアイゾット衝撃強度)および光学特性(例えば、全光線透過率、ヘイズ、黄色度)を向上することができる。
【0013】
本発明のゴムグラフト共重合体は、ゴム状重合部をコアとし、グラフト重合部をシェルとするコアシェル構造を有するものが好ましい。この様なゴムグラフト共重合体は、例えば、ゴム状重合部としてブタジエン単量体を主成分とする重合体とスチレン単量体を主成分とする重合体とを含有する重合体混合物の存在下に、グラフト重合部としてアリール(メタ)アクリレート単量体等を重合して得られてもよい。
【0014】
1−1.ゴム状重合部
本発明のゴムグラフト共重合体は多段階層構造を有しており、かついずれかの層に用いられるゴム状重合部としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル/ブタジエン)、ブタジエン/アクリル酸エステル共重合体等のジエン系重合体、ポリブチルアクリレート、ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等のアクリル系ゴム重合体、シリコーン、シリコーン/アクリル等のポリオルガノシロキサン系ゴム重合体等が挙げられる。ゴム状重合部のガラス転移温度(Tg)が低いほど、衝撃強度の改善効果が高いこと、および原料コストの観点から、ジエン系重合体をいずれかの層に含有することが好ましい。
【0015】
ジエン系重合体は、ビニル系単量体と共重合させるのが好ましい。ジエン系単量体と共重合されるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリレート、メタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル系単量体;等を挙げることができる。特に光学特性を改善する趣旨からすると、ジエン系単量体を芳香族ビニル系単量体と共重合させたものをいずれかの層に含有させることが好ましい。ビニル系単量体の量は、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン30〜50質量%とビニル系単量体50〜70質量%との(共)重合体であることが好ましい。また、ジエン系重合体の重合に際し、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート等の多官能性単量体を適宜使用することができる。多官能性単量体の量は、ゴム状重合部成分100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上、8質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上、6質量%以下である。
【0016】
前記ゴム状重合部は、透明性、屈折率を高める観点から、ゴム状重合部全体としては好ましくはポリ(ブタジエン/スチレン)から構成される。ポリ(ブタジエン/スチレン)は、ゴム状重合部成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。残部は前記多官能性単量体から構成されてもよい。スチレン単量体の量は、ゴム状重合部成分100質量%中、好ましくは50質量%以上、70質量%以下、より好ましくは53質量%以上、67質量%以下、さらに好ましくは55質量%以上、65質量%以下である。
【0017】
また上述したように前記ゴム状重合部は、多段階層構造を有する。多段階層構造にすることで耐衝撃性および光学特性の改善が容易になる。多段階層構造とは、最内層と、最内層の外側に存在する1つ以上の層(以下、第2層という場合もある)とから形成される構造であり、例えば、全光線透過率、ヘイズ等の光学特性、耐衝撃性の改善に貢献する。
【0018】
例えば、最内層は、ポリ(ブタジエン/スチレン/ジビニルベンゼン)から構成されることが好ましく、第2層は、ポリブタジエンもしくはポリ(ブタジエン/スチレン)から構成されることが好ましい。ゴム状重合部の多段階層構造は、例えば、後述のように、各層を構成する成分を順次転化重合させて、形成することができる。
【0019】
最内層は、屈折率を高める観点から、スチレン単量体などの芳香族ビニル系単量体を主成分として重合することが好ましい。芳香族ビニル系単量体の量は、最内層を構成する成分100質量%中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは91質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。芳香族ビニル系単量体の量を適切な範囲とすると、全光線透過率、ヘイズ等の光学特性、耐衝撃性のバランスの発現を改善することができる。
【0020】
最内層は、芳香族ビニル系単量体を主成分とする他に、ジエン系単量体(ブタジエン単量体など)、多官能単量体(ジビニルベンゼン単量体など)等を含んで構成されてもよい。ジエン系単量体の量は、最内層を構成する単量体成分100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは5質量%以上、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下、さらにより好ましくは12質量%以下である。ジエン系単量体の量を適切な範囲とすると、耐衝撃性、全光線透過率、ヘイズ等のバランスを改善することができる。
【0021】
最内層は、ゴム状重合部全体100質量部に対して、好ましくは65質量部以上、99質量部以下、より好ましくは65質量部以上、95質量部以下、さらに好ましくは65質量部以上、90質量部以下、さらにより好ましくは70質量部以上、80質量部以下である。
【0022】
最内層の屈折率は、1.58以上であり、好ましくは1.581以上、より好ましくは1.582以上、さらに好ましくは1.583以上であり、好ましくは1.591以下、より好ましくは1.590以下、さらに好ましくは1.589以下である。最内層の屈折率が1.58未満であると、全光線透過率およびヘイズが良好でない虞がある。
【0023】
第2層において、ブタジエン単量体の量は、第2層を構成する成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは87質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0024】
第2層の量は、ゴム状重合部全体100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、35質量部以下、より好ましくは5質量部以上、35質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上、35質量部以下、さらにより好ましくは20質量部以上、30質量部以下である。
【0025】
ゴム状重合部は、例えば、懸濁重合法、乳化重合法等を使用して、所定の単量体を含む第一成分(例えば、ゴム状重合部の内層を構成する成分)を反応系に添加して重合し、第一成分から構成される重合体を得て、次に所定の単量体を含む第二成分(例えば、ゴム状重合部の外層を構成する成分)を反応系に添加して重合し、第二成分から構成される重合体を第一成分から構成される重合体の存在下に生成させることで調製することができる。このほか、必要に応じて、所定の単量体を含む第三成分等を繰り返し重合させてもよい。
【0026】
前記ゴム状重合部全体の屈折率は、1.56以上であり、好ましくは1.561以上、より好ましくは1.562以上、さらに好ましくは1.563以上、さらにより好ましくは1.564以上であり、上限値は例えば1.58程度である。
【0027】
1−2.グラフト重合部
前記グラフト重合部は、グラフト成分が前記ゴム状重合部上に重合されてなるものであり、前記グラフト重合部は、アリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構成単位として含むものが好ましい。
【0028】
また、前記グラフト重合部に、アリール(メタ)アクリレートを、単独で或いは下記モノマー群A〜Cの1種以上と共にグラフト重合させてもよい。
(モノマー群A)シアン化ビニル単量体および芳香族ビニル単量体から選ばれる1種以上
(モノマー群B)アルキル(メタ)アクリレート単量体
(モノマー群C)他のビニル単量体
【0029】
アリール(メタ)アクリレートとしては、フェニルアクリレート、2−エチルフェニルアクリレート、ヘキシルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、ナフチルアクリレート等のアリールアクリレート;ビフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−エチルフェニルメタクリレート、ヘキシルフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、ビフェニルメタクリレート等のアリールメタクリレートが挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性および光学特性の観点から、フェニルメタクリレートが特に好ましい。これらは、置換基でさらに置換されていてもよい。
【0030】
上記置換基としては、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ビニルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、スルホニル基、カルボキシル基等が挙げられる。なお、着色した場合に発色性を良好にする観点から、アリール(メタ)アクリレートは、置換基で置換されていなくともよい。
【0031】
モノマー群Aとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、α−またはβ−ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
モノマー群Bとしては、アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有するアルキルアクリレート単量体;メタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単量体等が挙げられる。なかでも、重合性、経済性の観点から、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートを使用することが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。モノマー群Bは、成形体の耐衝撃性を発現するために使用されることが好適である。
【0033】
モノマー群Cとしては、グリシジル等のエポキシ基を有するアクリレート類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、ヒドロキシル基を有するアクリレート類;メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、アルコキシル基を有するアクリレート類等のビニル単量体;グリシジル等のエポキシ基を有するメタクリレート類;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類;メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、アルコキシル基を有するメタクリレート類等のビニル単量体が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。モノマー群Cは、ゴムグラフト共重合体の熱可塑性樹脂への分散を促進するなどの物性の改善に寄与する。
【0034】
また、これらの単量体を選択する際には、得られたゴムグラフト共重合体を配合して改質させる熱可塑性樹脂の種類を考慮してもよく、例えば熱可塑性樹脂との相溶性、配合後の熱可塑性樹脂組成物の屈折率等に鑑みて、任意の混合比で2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
さらに、グラフト重合部にエポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、イソシアナート基、酸無水物基、および酸塩化物基から選ばれる1種または2種以上の反応性基を有することが好ましい。これにより、反応性基を含まないゴムグラフト共重合体を用いた場合に比べ、耐衝撃性をさらに向上させることが可能となる。これら反応性基は、上記単量体に含まれるものであってもよい。
【0036】
前記アリール(メタ)アクリレートの量は、グラフト重合部100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、80質量部以下、より好ましくは45質量部以上、75質量部以下、さらに好ましくは50質量部以上、75質量部以下である。アリール(メタ)アクリレートの量を適切な範囲とすると、特に低温での耐衝撃性、全光線透過率、ヘイズ等の物性の改善に寄与する。
【0037】
前記モノマー群A、BまたはCの含有量は、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、それぞれ以下の通りであることが好ましい。
モノマー群Aは、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、30質量部以下、より好ましくは1質量部以上、20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上、10質量部以下である。モノマー群Aは必須ではなく、0質量部であってもよい。
モノマー群Bは、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、60質量部以下、より好ましくは25質量部以上、55質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上、55質量部以下、さらにより好ましくは35質量部以上、55質量部以下、特に好ましくは40質量部以上、55質量部以下である。
モノマー群Cは、アリール(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、30質量部以下、より好ましくは1質量部以上、20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上、10質量部以下である。モノマー群Cは必須ではなく、0質量部であってもよい。
【0038】
前記グラフト重合部の屈折率は、好ましくは1.500以上、より好ましくは1.501以上である。上限値は、例えば、1.510程度であればよい。
【0039】
1−3.ゴムグラフト共重合体
本発明のゴムグラフト共重合体は、ゴム状重合部をコアとし、グラフト重合部をシェルとするコア−シェル構造であることが好適である。前記ゴムグラフト共重合体は、熱可塑性樹脂と混合して成型体とすると、耐衝撃性、光学特性を両立させることができる。
【0040】
前記ゴムグラフト共重合体(耐衝撃性改良剤)において、ゴム状重合部の含有率は、ゴムグラフト共重合体100質量%中、好ましくは60質量%以上、85質量%以下であり、グラフト重合部の含有率は、ゴムグラフト共重合体100質量%中、好ましくは15質量%以上、40質量%以下である。ゴム状重合部の比率を高くすると、ゴムグラフト共重合体全体の屈折率を高めることができ、グラフト重合部の比率を低くすると、熱可塑性樹脂に良好に分散させることができる。
【0041】
前記ゴムグラフト共重合体の体積平均粒子径は、耐衝撃性および光学特性の両立の観点から、好ましくは50nm以上、500nm以下、より好ましくは100nm以上、450nm以下、さらに好ましくは150nm以上、400nm以下である。ゴムグラフト共重合体の体積平均粒子径が500nmより大きいと、得られる熱可塑性樹脂組成物の光学特性が十分でない虞がある。
【0042】
ゴム状重合部の屈折率と、グラフト重合部の屈折率との差は、好ましくは0.050以上、0.070以下、より好ましくは0.055以上、0.068以下である。屈折率の差をこの範囲にすることで、全光線透過率、ヘイズ、−30℃での耐衝撃性などをさらに改善できる。
【0043】
前記ゴムグラフト共重合体の屈折率は、好ましくは1.545以上、より好ましくは1.546以上、さらに好ましくは1.547以上であり、上限値は、例えば1.56程度であればよい。
【0044】
ゴムグラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれを採用してもよいが、乳化重合、すなわち、乳化グラフト重合が好ましい。具体的には、攪拌機を備えた反応容器に、ラテックスを加え、さらにビニル系単量体、重合開始剤、水を加え、必要に応じて連鎖移動剤や酸化還元剤を仕込み、加熱攪拌すればよい。
【0045】
ここで使用する重合開始剤、連鎖移動剤、酸化還元剤の種類には特に制限がなく、公知のものが使用できる。また、各原料の反応容器への添加方法についても特に制限がなく、重合開始前の一括添加の他、分割添加してもよい。また、グラフト重合は、一段または二段以上で行われ、各段の単量体組成が同一であっても異なっていてもよく、また、単量体を一括添加しても、連続的に添加しても、あるいはこれらを組み合わせてもよい。
【0046】
乳化重合法を採用する場合には、公知の重合開始剤、すなわち2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の熱分解型重合開始剤を用いることができる。また、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイド等の有機過酸化物、もしくは過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物といった過酸化物と、必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコース等の還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)等の遷移金属塩、更に必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウム等のリン系難燃剤等を併用したレドックス型重合開始剤として使用することもできる。
【0047】
レドックス型重合開始剤系を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができることから、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の芳香族環含有過酸化物をレドックス型重合開始剤として用いることが好ましい。前記重合開始剤の使用量、またレドックス型重合開始剤を用いる場合の前記還元剤・遷移金属塩・キレート剤等の使用量は、公知の範囲で用いることができる。
【0048】
乳化重合により本発明に用いるゴムグラフト共重合体を得た場合には、例えば、該グラフト共重合体のラテックスと塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、酢酸カルシウム等の二価以上の金属塩を混合することにより凝固した後に、公知の方法に従って、熱処理・脱水・洗浄・乾燥することにより、該グラフト共重合体を水性媒体から分離することができる(凝固法ともいう)。上記二価以上の金属塩としては、特に経済的に安価に入手でき、さらに取扱いやすい点から、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。環境への配慮から微量のハロゲンも含まないことが望まれる場合には、上記二価以上の金属塩として、硫酸マグネシウムが好適に用いられうる。または、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等の水溶性有機溶剤をラテックスに添加してゴムグラフト共重合体を析出させ、遠心または濾過等により溶剤と分離した後、乾燥させ、単離することもできる。別の方法として、本発明に用いるゴムグラフト共重合体を含むラテックスにメチルエチルケトン等の若干の水溶性を有する有機溶剤を加えてラテックス中のゴムグラフト共重合体成分を有機溶剤層に抽出し、有機溶剤層を分離した後、水等と混合してゴムグラフト共重合体成分を析出させる方法等を挙げることができる。
【0049】
また、ラテックスを噴霧乾燥法により直接粉体化することもできる。この場合、得られた粉体を前述の凝固法と同様に溶剤で洗浄することにより、同様の効果を得ることができる。または得られた粉体に塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム等を、好ましくは水溶液等の溶液で添加し、必要に応じて再乾燥することにより、同様の効果を得ることができる。
【0050】
ゴム状重合部、グラフト重合部およびゴムグラフト共重合体の屈折率は、例えば、ホモポリマーの質量比、ホモポリマーの屈折率(例えばブタジエン1.515、スチレン=1.595、ジビニルベンゼン=1.61、メチルメタクリレート=1.494、ブチルアクリレート=1.463、フェニルメタクリレート=1.512等)を用いて常法によって計算することができる。計算値は、例えば、下記式nポリマーAB=CAnポリマーA+CBnポリマーBを用いて算出することができる。式中、nポリマーABは、AモノマーとBモノマーを共重合してなるコポリマーの屈折率を示し、CA、CBは、モノマー組成物中の重量分率を示し、nポリマーA、nポリマーBは、対応するモノマーのホモポリマーの屈折率を示す。詳しくは、例えば、「POLYMER HANDBOOK,Fourth Edition,J.Brandrup and E.H.Immergut,E.A.Grulke Ed.,A JOHN WILEY & SONS,Inc Publication 1999」に記載されている。
【0051】
2.熱可塑性樹脂組成物
本発明のゴムグラフト共重合体は、耐衝撃性改良剤として、種々の熱可塑性樹脂に配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の硬質、半硬質、軟質の含塩素系樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル樹脂(ASA)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)等のスチレン系樹脂(St系樹脂);ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリ(メタ)アクリレート系樹脂(Ac系樹脂);ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂);ポリ乳酸樹脂、熱可塑性ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチレンサクシネート、その他生分解性を有する天然原料、石油原料由来の環境適応樹脂(一般に生分解性樹脂と称されるもの);(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックス;スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマー(TPE);PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、PVC/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイ等のポリマーアロイが挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これら熱可塑性樹脂の中でも、特にポリカーボネート樹脂、およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を用いた時、本発明のゴムグラフト共重合体の熱安定性の効果が発現することから好適である。最も好ましい熱可塑性樹脂には、芳香族ポリカーボネート樹脂、および該芳香族ポリカーボネート樹脂と屈折率が近い樹脂(すなわち芳香族環含有樹脂)が含まれる。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂と、前記ゴムグラフト共重合体を含むことが好ましく、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂または芳香族ポリエステル樹脂、および前記ゴムグラフト共重合体を含むことが好ましく、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、および前記ゴムグラフト共重合体を含むことが好ましい。
芳香族ポリカーボネート(系)樹脂を、ポリエステル(系)樹脂、ポリアクリレート(系)樹脂、またはスチレン(系)樹脂と併用する場合、(芳香族ポリカーボネート(系)樹脂)/(ポリエステル(系)樹脂、ポリアクリレート(系)樹脂、またはスチレン(系)樹脂)の質量比は、例えば50〜99/1〜50である。
【0053】
芳香族ポリカーボネート(系)樹脂は、2価フェノール化合物と、ホスゲン、または、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを反応させて得られるものであってもよく、出光興産株式会社製タフロンA2200(登録商標)、帝人化成株式会社製パンライトL1225WX(登録商標)、住友ダウ社製カリバー(登録商標)200−10等で市販されているものを使用することができる。前記2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシアリール)アルカンが好ましく、例えばビス(ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらの二価フェノール等は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。前記炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。
【0054】
芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族環を有するポリエステル樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリブチレンナフタラート等を適宜選択することができる。
【0055】
脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ゴムグラフト共重合体を、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、60質量部以下、より好ましくは1質量部以上、40質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上、20質量部以下含む。このような範囲であると、熱可塑性樹脂の熱的安定性を低下させる等の影響を与えることなく、耐衝撃性を付与することができる。
【0057】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤等を配合することができる。
【0058】
例えば、本発明の前記ゴムグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、顔料または染料を使用して着色した場合に発色性がよくなる。染料または顔料としては、公知の着色顔料または染料を用いることができる。染料としては、アカネ、アイ、ウコン、ベニバナ、ムラサキ等の天然染料、アリザリン、インディゴ等の合成染料、エスクリン、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光染料等が挙げられる。顔料としては、(1)亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉等の白色顔料、鉛丹、酸化鉄赤等の赤色顔料、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)等の黄色顔料、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等の無機顔料;(2)ベンジジンイエロー、ブリリアントカーミン等のアゾ顔料;イソインドリノン、キノフタロン、イソインドリン、アントラキノン、アントロン、キサンテン等の黄色顔料、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン、インジゴイド等の橙色顔料、アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、インジゴイド等の赤色顔料、ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン、キサンテン等の紫色顔料、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド等の青色顔料、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン等の緑色顔料等の多環顔料;等の有機顔料等が挙げられる。
なお、これらの顔料または染料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
例えば、カーボンブラックを、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、15質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上、10質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上、5質量部以下含む。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法には特に制限がなく、原料の混合には、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等が利用でき、溶融混練には、単軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ミキシングロール等の混練機を利用することができる。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形に使用される成形法、例えば射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、射出プレス成形法等を用いて成形することができる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、全光線透過率が好ましくは75%以上、より好ましくは76%以上である。全光線透過率は、JISK7105またはJISK7361に基づいてヘイズメーターで測定され、全ての透過光量の割合を表す。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、ヘイズ率が好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下である。ヘイズは、上記の全光線透過率と同様に、ヘイズメーターを使用して測定することができる。
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、JIS K7105によるL値が好ましくは7以下、より好ましくは6以下である。かかるL値は、カラーメーターを使用して測定することができる。
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、温度−30℃でのアイゾット衝撃強度が好ましくは20kJ/m2以上、より好ましくは21kJ/m2以上である。上限値は、例えば50kJ/m2程度であればよい。
【0066】
このようにして製造された本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と透明性を必要とする各種用途に適用でき、例えば、パソコン、液晶ディスプレイ、プロジェクター、PDA、プリンター、コピー機、ファックス、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話(スマートフォン)、携帯オーディオ機器、ゲーム機、DVDレコーダー、電子レンジ、炊飯器等の電気・電子用途;道路透光板、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明用カバー、建材用サイジング、ドア等の建築用途;ハンドル、シフトレバー、防振材等の自動車、電車の窓、表示、照明、運転席パネル等の車輌用途等に利用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0068】
実施例及び比較例における諸特性は、以下の様にして決定した。
[重合転化率]
得られたラテックスの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の質量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をラテックス中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の式1により重合転化率を算出した。
(式1)
重合転化率=(仕込み原料総質量×固形成分比率−単量体以外の原料総質量)/仕込み単量体質量×100(%)
【0069】
[流動性]
JIS K7210およびISO 7391−1に準じて、300℃で1.2kg荷重にて、東洋精機製作所製メルトインデクサー P−101を用いて測定した。
【0070】
[体積平均粒子径]
ゴム状重合体、およびグラフト共重合体の体積平均粒子径はラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA150を用いて体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0071】
[耐衝撃性]
ASTM D−256に準じて、1/8インチノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0072】
[色相]
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製の色差計(型式:SE−2000)を用いて、厚さ2mmのプレートの色相/L値、YI(黄色度)を測定した。
【0073】
[全光線透過率・ヘイズ率]
JIS K7105に準じて、日本電色工業社製のヘイズメーター(型式:NDH2000)を用いて、厚さ2mmのプレートの全光線透過率・ヘイズ率を測定した。
【0074】
[屈折率]
ゴム状重合部、グラフト重合部、またはゴムグラフト共重合体のそれぞれの屈折率は、ホモポリマーの屈折率およびホモポリマーの重量比から常法によって計算した。
以下の例および表中において、部は質量部を表す。
【0075】
[合成例1]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例1a)ゴム状重合部の製造
撹拌機付耐圧容器に純水、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩、硫酸第一鉄、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを仕込み、脱酸した後に、ブタジエン 7部、スチレン 63部、ジビニルベンゼン 3部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、パラメンタンハイドロパーオキサイドを添加し、それからポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを滴下した後、転化率67.9質量%に到達した時点で、ブタジエン 30部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、パラメンタンハイドロパーオキサイドを添加し、転化率98質量%で、体積平均粒子径150nmのスチレン−ブタジエン系ゴムラテックス(1a)を得た。
【0076】
(製造例1b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約75部)に、単量体としてフェニルメタクリレート 17部、メチルメタクリレート 7.5部、ブチルアクリレート 0.5部を添加した。
また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(1b)を得た。
このゴムグラフト共重合体ラテックスにフェノール系の抗酸化剤であるIRGANOX−1076〔n−オクタデシル−3−(3’,5’,ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を添加した後、塩化カルシウム水溶液で凝析を行い、水洗、脱水、乾燥して、粉体状ゴムグラフト共重合体(1c)を得た。
【0077】
[合成例2]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例2b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約70部)に、単量体としてフェニルメタクリレート 20.4部、メチルメタクリレート 9部、ブチルアクリレート 0.6部を添加した。
また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(2b)を得た。(2b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(2c)を得た。
【0078】
[合成例3]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例3b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約80部)に、単量体としてフェニルメタクリレート 13.6部、メチルメタクリレート 6部、ブチルアクリレート 0.4部を添加した。
また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(3b)を得た。(3b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(3c)を得た。
【0079】
[合成例4]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例4b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約75部)に、単量体としてフェニルメタクリレート 12.25部、メチルメタクリレート 12.25部、ブチルアクリレート 0.5部を添加した。
また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(4b)を得た。(4b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(4c)を得た。
【0080】
[合成例5]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例5b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約75部)に、単量体としてメチルメタクリレート 24.5部、ブチルアクリレート 0.5部を添加した。
また上記単量体の添加と同時にt−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(5b)を得た。(5b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(5c)を得た。
【0081】
[合成例6]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例6b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(1a)(固形分約75部)に、単量体としてスチレン 22.5部、メチルメタクリレート 2.5部を添加した。また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(6b)を得た。(6b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(6c)を得た。
【0082】
[合成例7]ゴムグラフト共重合体の合成
(製造例7a) ゴム状重合部の製造
純水、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩、硫酸第一鉄、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを仕込み、脱酸した後に、ブタジエン 100部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、パラメンタンハイドロパーオキサイドを添加し、それからポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを滴下した後、転化率98質量%で、体積平均粒子径150nmのブタジエン系ゴムラテックス(7a)を得た。
【0083】
(製造例7b)グラフト重合部の形成によるゴムグラフト共重合体の製造
上記で得られたゴムラテックス(7a)(固形分約75部)に、単量体としてメチルメタクリレート 18部、スチレン 7部を添加した。また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加を開始し、体積平均粒子径160nmのゴムグラフト共重合体ラテックス(7b)を得た。(7b)を、(1c)を得るのと同様の方法で粉体化し、粉体状ゴムグラフト共重合体(7c)を得た。
得られたゴムグラフト共重合体(1c)〜(7c)の組成、屈折率(計算値)についてまとめたものを表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
得られたゴムグラフト共重合体を用いて表2、表3に示す熱可塑性樹脂組成物を調製した。得られた評価結果を表2、表3に示す。
【0086】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
熱可塑性樹脂として芳香族ポリカーボネート(パンライトL1225WX:帝人化成(株)製)を用い、耐衝撃性改良剤としてゴムグラフト共重合体(1c)〜(7c)を用い、表2に示す比率で配合した。
該配合物を44mmφの2軸押出機に供給し、シリンダー温度260℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットを射出成形することで各種試験片を得た。得られた試験片について上記の評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2の結果から、比較例1、2、3では−30℃における耐衝撃性の点で十分でなく、比較例4においてはヘイズ率が高く不透明であるのに対して、実施例1では、ヘイズ率が9%であって透明であり、黄色度も低く、光学特性と耐衝撃性のバランスに優れており、シリコーン系・メタクリル系等のハードコートやメタクリル系樹脂フィルムとのインサーション成形を施したる後は、家電製品や車両の窓部等の透明部材、めがねやシールド等の保護具の透明部材に適していると考えられる。同様に実施例2、3、4ではヘイズ率が15%以下であって黄色度も低く、光学特性と耐衝撃性のバランスに優れることが分かる。
【0089】
[実施例5〜8、比較例5〜8]
熱可塑性樹脂として芳香族ポリカーボネート(パンライトL1225WX:帝人化成(株)製)を用い、耐衝撃性改良剤としてゴムグラフト共重合体(1c)〜(7c)を用い、表3に示す比率で配合した。
該配合物を44mmφの2軸押出機に供給し、シリンダー温度260℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットを射出成形することで各種試験片を得た。得られた試験片について上記の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3の結果から、比較例5はグラフト共重合体を含まないため、−30℃での耐衝撃性に劣る。比較例6、7は−30℃における耐衝撃性の点で十分でなく、さらにL値が実施例5〜8のものと比較して高い。比較例8において−30℃における耐衝撃性は十分であるが、L値が実施例5〜8のものと比較して高い。それに対して、実施例5は−30℃における耐衝撃性は十分であり、また、L値が良好であることから発色性と耐衝撃性のバランスに優れており、得られたプレートの外観には漆黒感があり、埃の吸着があまり発生せず、シリコーン系・メタクリル系等のハードコートやメタクリル系樹脂フィルムとのインサーション成形を施した後は、テレビ等の電気製品や自動車内装用の高い意匠性が必要とされる部位での部材として適した成型体が得られた。同様に実施例6、7、8では−30℃における耐衝撃性は十分であり、また、L値が良好であることから発色性と耐衝撃性のバランスに優れることが分かる。