特許第6181946号(P6181946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181946
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/10 20060101AFI20170807BHJP
   H01R 13/405 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01R13/10 A
   H01R13/405
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-41090(P2013-41090)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-170647(P2014-170647A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】松原 邦憲
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅宏
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−149965(JP,A)
【文献】 実開昭63−015581(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0171314(US,A1)
【文献】 特開2012−038713(JP,A)
【文献】 特開2007−181855(JP,A)
【文献】 特開平03−209003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40−13/533
H01R 13/10
H01R 12/70−12/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から相手側雄端子が挿入されて電気的に接続される筒状端子接続部と、
前記筒状端子接続部の後端に連設されて導体と電気的に接続される導体接続部と、
ハウジングの端子収容室に圧入される前記筒状端子接続部の円筒外周面に周方向に沿って突設されて前記端子収容室の内壁を削りながら且つ変形させて圧入される3つ以上の圧入突起と、を備え、
前記筒状端子接続部が、中心軸に沿って先端から後端まで直線的に延びる1つの突き合わせスリット部を有する円筒形状に折り曲げ加工されており、
前記3つ以上の圧入突起が、前記筒状端子接続部の後端部における横断面上にて前記突き合わせスリット部と前記中心軸とを通る仮想線に対し線対称に配設されることを特徴とする雌端子。
【請求項2】
前記圧入突起が、前記外周面の周方向に沿って等間隔に形成されることを特徴とする請求項1に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに圧入固定される雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングの端子収容室に収容され、箱型や丸型の筒状端子接続部より後ろに設けられた保持フランジや圧入突起等の係合部を端子収容室の内壁に係合させることで、端子収容室内に保持される雌端子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図5に示すように、例えば電気自動車のインバータ内部に搭載される端子台500は、導電パターンを有する図示しないバスバー(導体)の端子接続部に接続される角筒雌端子509(雌端子)と、各角筒雌端子509を収容する絶縁樹脂製のハウジング501と、を備えている。ハウジング501には、複数(図示例では3つ)の端子収容室503が横並びに一体成形されている。端子収容室503は、相手側雄端子の雄端子挿入開口505をハウジング501のコネクタ結合面側に開口している。それぞれの端子収容室503は、雄端子挿入開口505の反対側が端子装着開口507となり、ハウジング501の後方で開口している。そして、端子装着開口507から角筒雌端子509が挿入される。
【0003】
角筒雌端子509は、図示しない相手側雄端子が挿入されて電気的に接続される筒状端子接続部である角筒状端子接続部511と、この角筒状端子接続部511に連設されてボルト・ナット等によりバスバーと電気的に接続される導体接続部513と、端子収容室503に圧入される圧入突起515とを有する(図6(a)参照)。
角筒状端子接続部511と導体接続部513との間には、端子接点部形成区間517が設けられる。端子接点部形成区間517は、平板状の導体接続部513から角筒状端子接続部511をプレス加工する際の応力集中を分散させる領域となる。
圧入突起515は、端子接点部形成区間517と導体接続部513との間の両側に突設されている。角筒雌端子509は、所定の押圧力で端子収容室503に挿入されることで、図6(b)に示すように、圧入突起515が端子収容室503の内壁519を削りながら且つ変形させてハウジング501に圧入固定されて離脱不能に装着される。
【0004】
端子台に用いられる雌端子には、上記角筒雌端子509の他、図7に示すような円筒雌端子521もある。円筒雌端子521は、先端に雄端子進入口524を有する筒状端子接続部である円筒状端子接続部523と、この円筒状端子接続部523に連設されて溶接によりバスバーと電気的に接続される導体接続部513と、圧入突起515とを有する。
円筒状端子接続部523と導体接続部513との間には、端子接点部形成区間517が設けられる。圧入突起515は、端子接点部形成区間517と導体接続部513との間の両側に突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−282200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の角筒雌端子509や円筒雌端子521は、圧入突起515が端子接点部形成区間517より後方に設けられているため、その間に専用の形成領域を確保しなければならず、端子全長が長くなり、ハウジング501が大型化するという問題がある。また、端子全長を短くするために、筒状端子接続部と導体接続部513との間の端子接点部形成区間517を短くすると、筒状端子接続部の加工時に無理が生じて端子母材に亀裂が入ったり、割れたりする可能性がある。更に、角筒雌端子509や円筒雌端子521は、複数の圧入突起515が端子接点部形成区間517と導体接続部513との間における筒状端子接続部の中心軸X1から偏心した平板部の両側に突設されているため、複数の圧入突起515の圧入位置の配置が筒状端子接続部の中心軸X1に対して同心とならず、圧入時に端子収容室503に高い中心位置精度で角筒雌端子509や円筒雌端子521を組付加工することは困難である。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、圧入固定されるハウジングの小型化と組付加工精度の向上を図ることができる雌端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 先端から相手側雄端子が挿入されて電気的に接続される筒状端子接続部と、前記筒状端子接続部の後端に連設されて導体と電気的に接続される導体接続部と、ハウジングの端子収容室に圧入される前記筒状端子接続部の円筒外周面に周方向に沿って突設されて前記端子収容室の内壁を削りながら且つ変形させて圧入される3つ以上の圧入突起と、を備え、前記筒状端子接続部が、中心軸に沿って先端から後端まで直線的に延びる1つの突き合わせスリット部を有する円筒形状に折り曲げ加工されており、前記3つ以上の圧入突起が、前記筒状端子接続部の後端部における横断面上にて前記突き合わせスリット部と前記中心軸とを通る仮想線に対し線対称に配設されることを特徴とする雌端子。
【0009】
上記(1)の構成の雌端子によれば、端子接点部形成区間と導体接続部との間に圧入突起を形成するための専用領域を確保する必要がなく、圧入突起が筒状端子接続部より後方に突設されていた従来の雌端子に比べて、端子全長を短くすることができる。これにより、雌端子が装着されるハウジングを小型化できる。また、圧入突起が筒状端子接続部の外周面に沿って突設されているので、筒状端子接続部の中心軸から偏心した平板部に圧入突起が設けられていた従来の雌端子に比べて、雌端子は筒状端子接続部を端子収容室内に圧入する際の中心位置精度が向上する。
【0010】
(2) 上記(1)の構成の雌端子であって、前記圧入突起が、前記外周面の周方向に沿って等間隔に形成されることを特徴とする雌端子。
【0011】
上記(2)の構成の雌端子によれば、圧入時に端子収容室の内壁から受ける反力が、筒状端子接続部の中心軸に対して外周面から均等に(周方向で等間隔に)作用し、圧入する際の中心位置精度が更に向上する。なお、圧入突起を周方向に等間隔に形成することで、端子収容室の中心に対して筒状端子接続部を位置規制可能とする圧入突起を最小数の3つとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る雌端子によれば、圧入固定されるハウジングの小型化と組付加工精度の向上を図ることができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る雌端子の平面図、(b)は(a)に示した雌端子の斜視図、(c)は(b)におけるC−C断図である。
図2図1に示した雌端子をハウジングの端子収容室に収容した状態を示す要部縦断面図である。
図3図2におけるIII−III断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る雌端子における筒状端子接続部の縦断面図である。
図5】従来の雌端子とハウジングにより構成される端子台の要部分解斜視図である。
図6】(a)は図5に示した端子台に雌端子が収容された状態の水平断面図、(b)は(a)におけるB部の拡大図である。
図7】(a)は従来の円筒雌端子の平面図、(b)は(a)に示した円筒雌端子の斜視図、(c)は(a)に示した円筒雌端子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る雌端子である円筒雌端子11は、筒状端子接続部である円筒状端子接続部13と、導体接続部15と、圧入突起17と、を備えて構成されている。円筒雌端子11は、良好な導電性を有する端子母材(銅、銅合金、アルミ、アルミ合金等)を、プレス加工、折り曲げ加工することにより、これら円筒状端子接続部13、導体接続部15及び圧入突起17が一体となって成形されている。
【0018】
本実施形態の円筒雌端子11は、図2及び図3に示すように、円筒状端子接続部13が絶縁樹脂製のハウジング3の端子収容室7に収容され、導電パターンを有する図示しないバスバー(導体)の端子接続部に接続されることで、例えば電気自動車のインバータ内部に搭載される端子台1を構成する。
ハウジング3には、複数の端子収容室7が横並びに一体成形されている。端子収容室7は、相手側雄端子の雄端子挿入開口2をハウジング3のコネクタ結合面側に開口している。それぞれの端子収容室7は、雄端子挿入開口2の反対側が端子装着開口6となり、ハウジング3の後方で開口している。そして、端子装着開口6から円筒状端子接続部13が挿入される。更に、ハウジング3は、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる金属製のシールドケース5に装着されている。
【0019】
円筒雌端子11の円筒状端子接続部13は、先端が雄端子進入口19となって開口する円筒状に形成される。この円筒状端子接続部13は、図示しない相手側雄端子のピン状端子接続部が雄端子進入口19から内方に挿入されて、相手側雄端子と電気的に接続される。円筒状端子接続部13の軸線方向の中央より後方側には、軸線に沿う方向の凹条部21(セレーション)が円周方向に複数凹設され、凹条部21は円筒状端子接続部13の内方で凸条部(不図示)となって相手側雄端子との接触性を向上させる。
【0020】
図1に示すように、円筒状端子接続部13の後方には端子接点部形成区間23を介して導体接続部15が連設され、導体接続部15は方形板状に形成されて溶接によりバスバーと電気的に接続される。円筒状端子接続部13と導体接続部15との間に設けられる端子接点部形成区間23は、円筒状端子接続部13の幅W1から導体接続部15の幅W2に徐々に拡幅する平面視台形状となる。この端子接点部形成区間23は、円筒状端子接続部13と導体接続部15との間に所定の長さL1で設けられる。
【0021】
本実施形態の円筒雌端子11は、全長Lが、端子接点部形成区間23の長さL1と、円筒状端子接続部13の長さL2と、導体接続部15の長さL3の合計となる(L=L1+L2+L3)。円筒雌端子11は、長手方向が長さL、幅方向が幅W2の短冊状の端子母材から、折り曲げ加工により長手方向の一端から長さL2で円筒状端子接続部13が成形される。この際、平板状の導体接続部15との間には長さL1の端子接点部形成区間23が確保される。円筒雌端子11は、導体接続部15と円筒状端子接続部13との間に端子接点部形成区間23が設けられることにより、平板状の導体接続部15から円筒状端子接続部13が折り曲げ加工される際に生じる応力集中が分散される。端子接点部形成区間23の長さL1は、応力集中割れ等が端子母材に生じない最小の値で設定される。
【0022】
本実施形態に係る円筒状端子接続部13には、後端と凹条部21との間に、圧入突起17が突設されている。円筒状端子接続部13の後端とは、端子接点部形成区間23が接続する部位である。即ち、本実施形態の圧入突起17は、図7に示した従来構造の円筒雌端子521における圧入突起515のように、端子接点部形成区間23と導体接続部15との間には設けられていない。従って、円筒雌端子11は、端子接点部形成区間23よりも後方の長さ(即ち、導体接続部15の長さL3)が、圧入突起専用の形成領域を確保しなくてよい分、全長Lが従来構造の円筒雌端子521の全長よりも短くなっている。
【0023】
圧入突起17は、筒状端子接続部の外周面25に周方向に沿って3つ以上が突設される。本実施形態では、図1図3に示すように、3つの圧入突起17が円筒状端子接続部13の外周面25に周方向に沿って配設される。圧入突起17は、円筒状端子接続部13が端子収容室7に挿入されることで、端子収容室7の内壁9に圧入される。即ち、円筒雌端子11は、円筒状端子接続部13の圧入突起17が端子収容室7の内壁9を削りながら且つ変形させてハウジング3に圧入固定されて離脱不能に装着される。
【0024】
本実施形態の円筒状端子接続部13では、3つの圧入突起17が外周面25の周方向に沿って等間隔に形成されるので、外周方向に配置される圧入突起17は、中心角が120°となる等間隔に配置されている。圧入突起17は、円筒状端子接続部13の内方から打ち出し加工により、四角錐状に形成される。なお、打ち出し加工は、円筒状端子接続部13を成形する前の平板状の端子母材の状態で行ってもよく、円筒状端子接続部13を成形した後に行ってもよい。
【0025】
次に、上記構成を有する円筒雌端子11の作用を説明する。
本実施形態に係る円筒雌端子11によれば、端子接点部形成区間23と導体接続部15との間に圧入突起17を形成するための専用領域を確保する必要がなく、圧入突起17が筒状端子接続部より後方に突設されていた従来の円筒雌端子521(図7参照)に比べて、端子全長Lを短くすることができる。これにより、円筒雌端子11が装着されるハウジング3を小型化できる。
また、圧入突起17が円筒状端子接続部13の外周面25に沿って突設されているので、円筒状端子接続部523の中心軸X1から偏心した平板部の両側に圧入突起515が設けられていた従来構造の円筒雌端子521に比べ、本実施形態の円筒雌端子11は円筒状端子接続部13を端子収容室内に圧入する際の中心位置精度が向上する。
【0026】
また、圧入突起17が周方向に等間隔で配置された円筒雌端子11では、圧入時に端子収容室7の内壁9から受ける反力が、円筒状端子接続部13の中心軸X2に対して外周面25から均等に(周方向で等間隔に)作用し、圧入する際の中心位置精度が更に向上する。なお、圧入突起17を周方向に等間隔に形成することで、端子収容室7の中心に対して円筒状端子接続部13を位置規制可能とする圧入突起17を最小数の3つとすることができる。
更に、円筒状端子接続部13が円筒状とされた円筒雌端子11では、円筒状端子接続部13が端子収容室7内に圧入される際の中心位置精度を向上させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、雌端子が円筒状端子接続部13を有する円筒雌端子11である場合を説明したが、本発明に係る雌端子は、筒状端子接続部が角筒状端子接続部となった角筒雌端子であっても同様の作用効果を奏する。
【0028】
また、上記実施形態では圧入突起17が円筒状端子接続部13の外周面25の周方向に沿って等間隔に形成される場合を説明したが、本発明に係る雌端子は、図4に示す他の実施形態に係る円筒雌端子31のように、圧入突起17が円筒状端子接続部13Aの外周面25の周方向に沿って等間隔に配設されなくともよい。
円筒雌端子(雌端子)31における圧入突起17の配置によっても、圧入時に端子収容室7の内壁9から受ける反力を端子収容室7の中心を挟んで複数方向から均等に円筒状端子接続部13Aに作用させることができ、円筒雌端子31を圧入する際の中心位置精度が向上する。この場合、複数(図示例では4つ)の圧入突起17は、円筒状端子接続部13Aの突き合わせスリット部29と中心軸X2とを通る仮想線Xに対し線対称に配設することが好ましい。
【0029】
従って、本実施形態に係る円筒雌端子11,31によれば、圧入固定されるハウジング3の小型化と組付加工精度の向上を図ることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0030】
3…ハウジング
7…端子収容室
9…内壁
11…円筒雌端子(雌端子)
13…円筒状端子接続部(筒状端子接続部)
15…導体接続部
17…圧入突起
23…端子接点部形成区間
25…外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7