特許第6182001号(P6182001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182001
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】容積形圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20170807BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20170807BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F04C29/12 A
   F04C18/02 311U
   F04C29/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-144111(P2013-144111)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-17521(P2015-17521A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 和行
(72)【発明者】
【氏名】田所 哲也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 遼太
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−005485(JP,A)
【文献】 特開2000−097179(JP,A)
【文献】 特開2006−152933(JP,A)
【文献】 特開平05−195967(JP,A)
【文献】 特開平04−279788(JP,A)
【文献】 特開平03−249392(JP,A)
【文献】 実公平08−000547(JP,Y2)
【文献】 特開2009−097399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が吐出圧力空間となる密閉容器と、
外部から吸込口に冷媒を導く吸込管と、
前記吸込口に導いた冷媒が流れる吸込室と、
前記吸込管と前記吸込室との間に位置し、前記吸込室から前記吸込管への冷媒の逆流を防止する逆止弁と、
前記吸込室から導いた冷媒を圧縮する圧縮室と、
前記圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出口と、
前記圧縮室で冷媒を圧縮する駆動源である電動機部と、を備え、
前記吸込管は内部に冷媒が流れる吸込内管と前記吸込内管の外側に位置する吸込外管とによる二重管構造で構成されるとともに、前記吸込内管と前記吸込外管との間に形成された断熱空間部を有し、
前記断熱空間部は、前記吸込管のうち前記吐出圧力空間と前記圧縮室に導かれる吸込み冷媒を仕切る位置における前記吸込内管と前記吸込外管との間に設けられ
前記吸込口において、前記吸込口の内壁に前記吸込外管の外壁が接触し、前記吸込外管の内壁に前記吸込内管の外壁が接触するように圧入締結して接続されており、
前記逆止弁は弁体が前記吸込内管を封止することにより前記吸込室から前記吸込管への冷媒の逆流を防止する
ことを特徴とする容積形圧縮機。
【請求項2】
前記吸込内管は前記吸込内管の内側から外側に貫通する孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の容積形圧縮機。
【請求項3】
前記吸込内管は鉄系の材質で形成され、
前記吸込外管は銅系の材質で形成され、
前記吸込管の一端側は、冷凍サイクルと繋がる吸接管と前記吸込外管とが溶接されて接続される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容積形圧縮機。
【請求項4】
鏡板に立設する渦巻状のラップを有する旋回スクロールと、
鏡板に立設する渦巻状のラップを有する固定スクロールと、を有し、
前記旋回スクロール及び前記固定スクロールを互いに噛合わせて前記圧縮室を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の容積形圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機や給湯機、空調機器等の冷凍サイクル装置用の圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、スクロール圧縮機における吸込加熱の抑制を目的に吸込管を二重管としてガス断熱空間部を設けることにより、断熱材の被覆を伴わない簡易的な構造の吸込管を開示する。また、特許文献2では、管の接続強度不足を抑えた二重管構造の構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−169816号公報
【特許文献2】特開2012−36751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、圧縮機の停止時に圧縮流体(冷媒)の逆流を防止する逆止弁を吸込部に設置した場合の強度確保等について開示していない。
【0005】
本発明は、圧縮機の停止時に圧縮流体の逆流を防止する逆止弁を吸込部に設置した場合であっても強度確保等することができる容積形圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容積形圧縮機は、内部が吐出圧力空間となる密閉容器と、外部から吸込口に冷媒を導く吸込管と、吸込口に導いた冷媒が流れる吸込室と、吸込管と吸込室との間に位置し、吸込室から吸込管への冷媒の逆流を防止する逆止弁と、吸込室から導いた冷媒を圧縮する圧縮室と、圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出口と、圧縮室で冷媒を圧縮する駆動源である電動機部と、を備え、吸込管は内部に冷媒が流れる吸込内管と吸込内管の外側に位置する吸込外管とによる二重管構造で構成されるとともに、吸込内管と吸込外管との間に形成された断熱空間部を有し、断熱空間部は、吸込管のうち吐出圧力空間と圧縮室に導かれる吸込み冷媒を仕切る位置における吸込内管と吸込外管との間に設けられ、吸込口において、吸込口の内壁に吸込外管の外壁が接触し、吸込外管の内壁に吸込内管の外壁が接触するように圧入締結して接続されており、逆止弁は弁体が吸込内管を封止することにより吸込室から吸込管への冷媒の逆流を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機の停止時に圧縮流体の逆流を防止する逆止弁を吸込部に設置した場合であっても強度を確保等する容積形圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スクロール圧縮機の縦断面図
図2】吸込逆止弁が閉じた状態図(停止中)
図3】吸込逆止弁が開いた状態図(運転中)
図4】吸込逆止弁が開いた状態から閉じるまでの過渡状態図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施例の容積形圧縮機は、内部が吐出圧力空間となる密閉容器と、外部から吸込口に冷媒を導く吸込管と、吸込口に導いた冷媒を一時的に蓄える吸込室と、吸込管と吸込室との間に位置し、吸込室から吸込管への冷媒の逆流を防止する逆止弁と、吸込室から導いた冷媒を圧縮する圧縮室と、圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出口と、圧縮室で冷媒を圧縮する駆動源である電動機部と、を備え、吸込管は内部に冷媒が流れる吸込内管と吸込内管の外側に位置する吸込外管とによる二重管構造で構成されるとともに、吸込内管と吸込外管との間に形成された断熱空間部を有し、吸込外管は銅系材質で形成され、吸込内管は鉄系の材質で形成され、吸込管の一端側は冷凍サイクルと繋がる吸接管と吸込外管とが溶接されて接続され、吸込管の他端側は二重管構造で吸込口に圧入締結して接続され、逆止弁は弁体が吸込内管を封止することにより吸込室から吸込管への冷媒の逆流を防止する。
【0010】
本実施例の容積形圧縮機によれば、圧縮機の停止時に圧縮流体の逆流を防止する逆止弁を吸込部に設置した場合であっても強度確保等することができる。具体的には、まず、吸込内管と吸込外管とによる二重管構造により断熱空間部を形成したので、吸込加熱を抑制した高効率の容積形圧縮機を提供することができる。また、吸込管と吸込室との間に位置し吸込室から吸込管への冷媒の逆流を防止する逆止弁を備えるので、圧縮機の停止時に冷媒が逆流することを防止することができる。さらに、二重管構造の吸込外管を銅系材質で形成し吸込内管を鉄系の材質で形成するとともに、弁体が吸込内管(鉄材)を封止することにより冷媒の逆流を防止するよう構成したので、弁体が吸込外管(銅材)を封止する場合に比べて、弁体の衝突に耐えうる強度を確保することができる。また、二重管構造の吸込外管を銅系材質で形成し吸込内管を鉄系の材質で形成するとともに、吸込管の一端側で冷凍サイクルと繋がる吸接管と吸込外管とを溶接して接続したので、吸接管に接続する吸込外管が銅材であるため、溶接が容易となる。また、二重管構造の吸込外管を銅系材質で形成し吸込内管を鉄系の材質で形成するとともに、吸込管の他端側を二重管構造で吸込口に圧入締結して接続したので、吸込内管の鉄材で締結強度を確保し、吸込外管の銅材でシール性を確保して、吸込管を吸込口に接続することができる。
【0011】
さらに、本実施例の容積形圧縮機では、吸込内管の内側から外側に貫通する孔を吸込内管に形成する。吸込内管と吸込外管とによる二重管構造により断熱空間部を形成するが、吸込冷媒には潤滑油が混入しており、断熱空間部に油が溜まると断熱効果を十分に得ることができない。そこで、吸込内管に油抜き孔を設けることにより、吸込冷媒に潤滑油を多く含んだ状態で運転した場合でも、吸込外管と吸込内管との間に設けた断熱空間部に油が溜まることなく、吸込冷媒でガス断熱空間部を満たすことができる。従って、運転条件によらず、吸込加熱を抑制した高効率の容積形圧縮機を提供することができる。特に、加熱による冷媒の体積変化が大きいCO2冷媒を用いる場合や、吐出ガス温度が高温となるR32冷媒を用いる場合に有効である。
【0012】
以下、本発明の実施例について、スクロール圧縮機を例にして、図1−4を用いて説明する。図1は本実施例のスクロール圧縮機の縦断面図、図2は吸込逆止弁が閉じた状態図(停止中)、図3は吸込逆止弁が開いた状態図(運転中)、図4は吸込逆止弁が開いた状態から閉じるまでの過渡状態図である。
【0013】
図1において、符号の1は密閉容器、2は圧縮機構部、3は旋回スクロール、3aは旋回スクロールの渦巻状のラップ、4は固定スクロール、4aは固定スクロールの渦巻状のラップ、5はクランク軸、6は固定スクロール4とクランク軸5を回転させる軸受を具備するフレーム、7は電動機部、8は旋回スクロールの自転を阻止し旋回運動させるための自転阻止部材に係るオルダムリング、11は密閉容器の蓋体、12はターミナル、13はターミナルカバー取付け用ピンである。
【0014】
図1に示すスクロール圧縮機は、密閉容器1内に、圧縮機構部2と電動機部7とがクランク軸5を介して連結して収納される。圧縮機構部2は、鏡板に立設する渦巻状ラップ3a,4aをそれぞれ有する旋回スクロール3及び固定スクロール4を互いに噛み合せて圧縮室9を形成する。さらに、旋回スクロール3の自転阻止部材であるオルダムリング8、固定スクロール4に結合されたフレーム6を備える。
【0015】
次に、スクロール圧縮機の圧縮作用について説明する。ロータ15はステータ16が発生する回転磁界により回転力を与えられる。ロータ15に固定されたクランク軸5はロータ16の回転に伴い回転動作を行い、旋回スクロール3はオルダムリング8の作用により自転することなく偏心回動(公転)する。旋回スクロール3の偏心回動により、冷凍サイクルの吸接管21とろう付け溶接された吸込外管14を介して吸込まれた圧縮流体(冷媒)が吸込室10から圧縮室9で徐々に圧縮され、吐出口4cから密閉容器1の中に放出される。密閉容器1の中は吐出圧力空間24で満たされる。放出された圧縮流体は電動機部7を冷却して吐出管17から外部の冷凍サイクルへ供給される。このとき、潤滑油が微小に吐出冷媒に混入する。混入した潤滑油は冷媒と共に冷凍サイクルを循環し、吸込冷媒に混入して圧縮機へ戻る。
【0016】
図2−4を用いて吸込逆止弁18を備えた吸込二重管の機能と構成について説明する。図2に圧縮機停止時に吸込逆止弁が閉じた状態を、図3に圧縮機運転中で吸込逆止弁が開いた状態を、図4に吸込逆止弁が開いた状態から閉じる状態になるまでの過渡状態をそれぞれ示す。
【0017】
圧縮機運転時から停止状態に入る際、圧縮機構部2から固定スクロール吸込口4bを介して圧縮流体が冷凍サイクル側に逆流する。圧縮機構部2内の圧縮室9は中心ほど圧力が高いため、圧縮室9内の圧縮流体が圧力の低い吸込側に戻ろうとして、クランク軸5及びロータ15を逆回転させる。この逆回転を防止するため、吸込逆止弁18を固定スクロール吸込口4b(吸込管と吸込室との間)に設置し、吸込内管22端面と弁体20が接触し、図2の如く、吸込逆止弁18が閉じる(弁体が吸込内管22を封止することにより吸込逆止弁18が閉じる)。
【0018】
圧縮室9内に残る圧縮過程の圧縮流体だけでなく、密閉容器1内の吐出圧力空間24の圧縮流体が一斉に逆流し始めると、大きな負荷が吸込逆止弁18に掛かるため、スプリング19の付勢を利用して、吸込内管22端面と弁体20の衝突力を緩和させる。
【0019】
しかしながら、このような衝突力の緩和策だけでは信頼性の確保が難しいため、本実施例においては、弁体20の衝突力に耐え得る強度を確保できるよう、吸込内管22の材質を鉄系とする。
【0020】
また、吸込外管14の内部に吸込内管22を設け、吸込外管14と吸込内管22との間にガス断熱空間部を形成する吸込二重管(吸込管)23を構成し、高温となる吐出圧力空間24による吸込外管を介しての冷媒の加熱を抑制し、体積効率向上を図る。更に吸込内管22に管の内側から外側へ貫通する油抜き穴22aを付加することにより、吸込冷媒に混入した油がガス断熱空間部に溜まることを防止する。
【0021】
一方、吸込外管14は材質を銅系とし、冷凍サイクルに繋がる吸接管21との溶接を容易にする。更に、吸込外管14の材質が銅系であることにより、固定スクロール吸込口4b部の壁面に沿う形で密着シールでき、吐出圧力空間24から吸込室10への高圧冷媒の流入を防止する。吸込外管14の圧入相手となる固定スクロール4等のポンプ部品は高い圧縮荷重が加わるため、高強度の鉄系の材質を用いるのが一般的であるが、鉄系の材質である吸込内管22で銅系の材質である吸込外管14を挟み込んで圧入し、固定スクロール吸込口4b部の壁面に沿って吸込外管14を塑性変形させる(鉄系の吸込内管と銅系の吸込外管の二重管構造で吸込口に圧入締結して接続する)。
【0022】
以上、本実施例によれば、逆止弁を吸込部に設置した場合であっても強度を確保等する容積形圧縮機を提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…密閉容器、2…圧縮機構部、3…旋回スクロール、3a…旋回スクロールの渦巻状ラップ、3b…旋回スクロール鏡板、4…固定スクロール、4a…固定スクロールの渦巻状ラップ、4b…固定スクロール吸込口、4c…固定スクロール吐出口、5…クランク軸、6…固定スクロール4とクランク軸5を回転させる軸受を具備するフレーム、7…電動機部、8…旋回スクロールの自転阻止部材に係るオルダムリング、9…圧縮室、10…吸込室、11…密閉容器の蓋体、12…ターミナル、13…ターミナルカバー取付け用ピン、14…吸込外管、15…ロータ、16…ステータ、17…吐出管、18…吸込逆止弁、19…スプリング、20…弁体、21…吸接管、22…吸込内管、22a…吸込内管油抜き孔、23…吸込二重管(吸込管)、24…吐出圧力空間
図1
図2
図3
図4