特許第6182002号(P6182002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182002
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】真空二重容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 41/02 20060101AFI20170807BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20170807BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A47J41/02 102D
   H05B6/12 335
   H05B6/12 314
   A47J27/00 107
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-145116(P2013-145116)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16134(P2015-16134A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥平 有三
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹
(72)【発明者】
【氏名】森 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】内海 光司
(72)【発明者】
【氏名】武居 正史
(72)【発明者】
【氏名】外村 卓也
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−018926(JP,A)
【文献】 特開平02−135689(JP,A)
【文献】 特開平10−328044(JP,A)
【文献】 特開2002−051914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 41/02
A47J 27/00
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器となる内容器構成部材と、封止口を備える外容器構成部材とを容器入り口側部分で一体化した封止口を有する二重容器本体を、真空加熱炉中に入れ、ロウ材を溶融し、ロウ材で直接前記封止口を封止する、あるいは、封止板の周囲をロウ材で封止口の周囲を封止する封止工程を実施する前に、予め前記ロウ材の溶融温度以下の焼成温度を有する金属ペーストを前記内容器構成部材の外壁面に塗布しておき、前記真空加熱炉内を前記ロウ材溶融温度以上にして封止工程を実施すると同時に前記金属ペーストを焼成して電磁誘導発熱層を形成する真空二重容器の製造方法であって、
前記内容器構成部材が、非磁性の金属材料からなり、
前記外容器構成部材が、前記内容器構成部材の金属材料と易溶接性の非磁性の金属材料からなるとともに、
前記金属ペーストが、粒径の大きい金属粒子を含む金属ペーストと、粒径の小さい金属粒子を含む金属ペーストとを混合して焼成温度をロウ材の溶融温度以下に調整した混合金属ペーストであることを特徴とする真空二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空二重容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用魔法瓶やスープマグ等と称される真空二重容器に暖かいスープやコーヒーを入れて職場、学校、行楽地等まで持って行き、昼食時等に飲食する人が多数存在する。
また、駅中や、駅周辺には、スープやコーヒーなどを客が持参した真空二重容器に入れて持ち帰ることができる店舗が増えてきており、通勤の途中、通学の途中、行楽地へ向かう途中等にこれらの店舗に立ち寄って購入したスープやコーヒーなどを持参した魔法瓶に入れて職場、学校、行楽地等に向かう人もいる。
【0003】
昨今の携帯用魔法瓶等の真空二重容器においては、例えば、室温で、95±1℃の熱水を入れた場合の保温効力が6時間で80℃前後と、長時間高い温度に保たれるという高性能のものも市販されている。したがって、朝の通勤前や通勤途中に95℃前後に加温したスープやコーヒーなどを魔法瓶に入れて職場、学校、行楽地等に持って行けば、昼食時には80℃以上のスープやコーヒーを飲食することができる。
【0004】
しかし、スープやコーヒーなどは、飲んだり食したりするのに適した最適飲食温度域があり、特に、コーヒーでは70℃前後が最適飲食温度であるといわれている。
そのため、上記のような店舗では、すぐに飲食する場合も考慮して、通常、95℃よりかなり低い最適飲食温度域の上限附近の温度にして飲食物を販売しているため、真空二重容器に入れた直後に真空二重容器の内容器に温度が奪われて温度が下がり、3,4時間後の例えば、昼食時に飲もうとした場合には、70℃の飲み頃よりも低い温度になってしまうおそれがある。一方、上記のように95℃程度の高温のコーヒーを入れたのでは、出勤直後に飲もうとした場合、熱すぎて飲めないという問題が発生する。
【0005】
そこで、内容器の底に電熱コイルを加熱手段として備え、蓄電池から電熱コイルに給電して電熱コイルを発熱させて内容器を加熱できるようにした携帯用魔法瓶(特許文献1)、ガラス製の内容器と外容器とからなり、両容器間を真空構造とするとともに、内容器の外壁面に電磁誘導発熱層を設け、IH調理器等の電磁誘導装置によって電磁誘導発熱層に渦電流を発生させて電磁誘導発熱層を発熱させて内容器を加熱できるようにした電磁調理器具(特許文献2)、弱磁性体で形成した外容器と、強磁性体で形成した内容器とからなり、IH調理器等によって内容器を構成する強磁性体に渦電流を発生させて発熱させて内容器を加熱するようにした真空二重容器(特許文献3)等が提案されている。
すなわち、上記のような構造の真空二重容器は、電熱コイルに通電して電熱コイルを発熱させる、あるいは、電磁誘導によって内容器自体を加熱することによって内容物を容器から取り出すことなく温め直すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−21549号公報
【特許文献2】実公平1−25506号公報
【特許文献3】実開平6−52719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のような真空二重容器には、それぞれ以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1の携帯用魔法瓶においては、蓄電池などを搭載した場合、魔法瓶自体が大型化するとともに、重量も重くなり、持ち運びに不便になるという問題があるとともに、電熱コイルに給電するケーブルを内容器側から外容器を貫通して外側に出さなければならず、内容器と外容器との間の真空度を確保するための工夫が必要で製造が難しいという問題がある。
一方、特許文献2の電磁調理器用調理器具は、内容器および外容器がガラスで形成されているため、携帯用魔法瓶のように持ち運ぶ場合、破損しやすい、また、電磁誘導層と内容器のガラスとの熱収縮差によって内容器が破損するおそれがある。
他方、特許文献3の真空二重容器は、内容器が強磁性体で形成され、外容器が弱磁性体で形成されているが、強磁性体と弱磁性体とを接合することは技術的に難しく、量産に適さないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、容器内に内容物を容れた状態で、内容物を容易に加熱できるとともに、製造が容易で強度的に優れた真空二重容器の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる真空二重容器の製造方法は、内容器となる内容器構成部材と、封止口を備える外容器構成部材とを容器入り口側部分で一体化した封止口を有する二重容器本体を、真空加熱炉中に入れ、ロウ材を溶融し、ロウ材で直接前記封止口を封止する、あるいは、封止板の周囲をロウ材で封止口の周囲を封止する封止工程を実施する前に、予め前記ロウ材の溶融温度以下の焼成温度を有する金属ペーストを前記内容器構成部材の外壁面に塗布しておき、前記真空加熱炉内を前記ロウ材溶融温度以上にして封止工程を実施すると同時に前記金属ペーストを焼成して電磁誘導発熱層を形成する真空二重容器の製造方法であって、前記内容器構成部材が、非磁性の金属材料からなり、前記外容器構成部材が、前記内容器構成部材の金属材料と易溶接性の非磁性の金属材料からなるとともに、前記金属ペーストが、粒径の大きい金属粒子を含む金属ペーストと、粒径の小さい金属粒子を含む金属ペーストとを混合して焼成温度をロウ材の溶融温度以下に調整した混合金属ペーストであることを特徴としている。
【0010】
本発明において、非磁性の金属材料としては、非磁性であり、内容器を構成する金属材料と、外容器を構成する金属材料とが易溶接性であれば、特に限定されないが、内容器と外容器とを同種の金属材料で形成することが好ましく、例えば、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることができる。
上記オーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316等が挙げられ、中でもSUS304が好ましい。
なお、本発明において、易溶接性とは、ほぼ同種の金属材料同士を溶接する一般的な溶接手法で溶接することができることを意味する。
【0011】
また、電磁誘導発熱層は、特に限定されないが、例えば、電磁誘導により渦電流が発生する金属粒子からなる金属ペーストを内容器となる内容器形成体の外壁面に塗布し焼成して得る方法、電磁誘導によって渦電流が発生し発熱可能な金属材料を溶射する方法、電磁誘導によって渦電流が発生し発熱可能な金属材料からなる筒状体を内容器となる内容器形成体の底に嵌合一体化する方法等によって得ることができる。
【0012】
上記のように、電磁誘導発熱層として金属ペーストの焼成体を用いる場合、金属ペーストは、まず、内容器となる内容器構成部材の外壁面の所望位置に塗布されるが、塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディッピング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ロールコート、スプレーコート、スピンコート、アプリケーター法、バーコータ法、凸版印刷、凹版印刷、刷毛塗布等が挙げられる。または、離型性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材に金属ペーストを前記塗布方法により塗布したのち、内容器構成部材の外壁面に貼り合せ転写することで形成しても良い。
上記電磁誘導発熱層は、少なくとも電磁誘導加熱装置で誘導加熱できれば、内容器の外壁面の全周面に設けられていても、内容器の底面部等の一部に設けられていて構わない。
【0013】
なお、電磁誘導発熱層と外容器との隙間は、真空二重容器の断熱効果を阻害しない限り、電磁誘導加熱装置と電磁誘導発熱層との距離を近づけるために、できるだけ小さくすることが好ましい。
また、電磁誘導発熱層は、IH調理器等の電磁誘導加熱装置からの磁力線によって渦電流が効率よく発生するように、電磁誘導加熱装置に対面する面は、平坦で平滑になっていることが好ましい。
【0015】
本発明において、粒径の小さい金属粒子としては、粒径が100nm以下のものが好ましい。
【0016】
なお、上記金属ペーストを構成する金属粒子としては、金粒子、銀粒子、パラジウム粒子、銅粒子、ニッケル粒子等やこれらの混合粒子が挙げられ、銀粒子が好適である。
銀粒子を含む銀ペーストとしては、市販のものを用いることができ、たとえば、100nm以下のナノオーダーの銀粒子を含む銀ペーストとしては、特開2012-52225号公報(出願人バンドー化学株式会社)に記載の方法で得られるものが使用でき、市販のものとしては、バンドー化学株式会社製の、SW1000、SW2000、SW3000、SW4000、SR4000、SR5000が使用できる。
【0017】
電磁誘導加熱装置としては、市販のIH調理器や、本発明の真空二重容器の電磁誘導加熱層を最も効率よく誘導加熱することができるように最適な構造とした電磁誘導加熱装置を製作するようにしても構わない。
ロウ材としては、特に限定されず、例えば、封止口を封止板とロウ材とを用いて封止する場合、銀ロウが挙げられ、固形ロウ材を直接封止材として用いる場合には、軟化点が200〜600℃の低温溶融ガラスが挙げられる。
低温溶融ガラスとしては、B23-PbO系、B23-ZnO系、PbO-B23-ZnO-SiO2系、PbO-B23-Al23-SiO2系、PbO-B23-SiO2系、PbO-B23-BaO-SiO2系のものなどが挙げられる。
【0018】
状飲食物は、本発明の真空二重容器の内容器の外壁面に設けられた電磁誘導発熱層を電磁誘導加熱装置によって発熱させて内容器を真空二重容器に入れられる液状飲食物の最適飲食温度域の下限温度以上の設定加熱温度に予め加熱した状態で前記最適飲食温度域にある前記液状飲食物を真空二重容器内に注ぎ込んだのち、前記発熱体を非発熱状態にして前記液状飲食物を真空二重容器内で保温することができる
【0019】
また、上記設定加熱温度は、真空二重容器に入れられる液状飲食物の最適飲食温度によって適宜決定される。なお、設定加熱温度の上限は特に限定されないが、あまり高すぎると飲食物を入れる際に危険が伴う。
【0020】
また、液状飲食物としては、特に限定されないが、例えば、スープ、コーヒー、おかゆなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の真空二重容器の製造方法は、内容器となる内容器構成部材と、封止口を備える外容器構成部材とを容器入り口側部分で一体化した封止口を有する二重容器本体を、真空加熱炉中に入れ、ロウ材を溶融し、ロウ材で直接前記封止口を封止する、あるいは、封止板の周囲をロウ材で封止口の周囲を封止する封止工程を実施する前に、予め前記ロウ材の溶融温度以下の焼成温度を有する金属ペーストを前記内容器構成部材の外壁面に塗布しておき、前記真空加熱炉内を前記ロウ材溶融温度以上にして封止工程を実施すると同時に前記金属ペーストを焼成して電磁誘導発熱層を形成する真空二重容器の製造方法であって、前記内容器構成部材が、非磁性の金属材料からなり、前記外容器構成部材が、前記内容器構成部材の金属材料と易溶接性の非磁性の金属材料からなるとともに、前記金属ペーストが、粒径の大きい金属粒子を含む金属ペーストと、粒径の小さい金属粒子を含む金属ペーストとを混合して焼成温度をロウ材の溶融温度以下に調整した混合金属ペーストであるので、高価な小さな粒子を含む金属ペーストの使用量を低減できるとともに、混合量によって電磁誘導発熱体層の電気抵抗等もコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の真空二重容器の1つの実施の形態を模式的にあらわす断面図である。
図2図1の真空二重容器の製造方法を説明する図であって、その内容器への銀ペースト塗布工程を模式的にあらわす断面図である。
図3図2の工程の後工程を模式的にあらわす断面図である。
図4図3の工程の後工程を模式的にあらわす断面図である。
図5図4の工程の後工程を模式的にあらわす断面図である。
図6図1の真空二重容器を用いた本発明の保温方法の1つの実施の形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の保温方法に用いられる真空二重容器の1つの実施の形態をあらわしている。
【0026】
図1に示すように、この真空二重容器1は、内容器2と、外容器3とを備え、内容器2の外側底面部および側面部の下方に電磁誘導発熱体層4が設けられ、外容器3と内容器2との間が真空になっている。
内容器2および外容器3は、例えば、非磁性ステンレス鋼であるSUS304で形成されている。
電磁誘導発熱体層4は、後述するように、混合銀ペースト40を焼成して形成されている。
なお、混合銀ペースト40の塗布面積および塗布厚みは、家庭用IH調理器で電磁誘導発熱体層4を誘導加熱したときに、内容器2の温度が真空二重容器1に注がれる液状飲食物の最適飲食温度の上限温度までしか上がらないように設定することが望ましく、塗布厚みとしては0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmである。0.1μm未満では十分な発熱効果が得られず、100μmを超えるとコスト高となり好ましくない。
【0027】
次に、この真空二重容器1の製造方法を図2図5を用いて工程順に説明する。
(1)図2に示すように、ミクロンオーダーの大きな銀粒子が分散された焼成温度が900℃前後の大径銀ペーストと、100nm以下の小さな銀粒子が分散された焼成温度が200℃前後の小径銀ペーストとを混合し、後述する封止板32の真空ロウ付け温度(例えば,500℃)以下の焼成温度に調整された混合銀ペースト40を、非磁性ステンレス鋼板をプレス成形して得られた内容器2となる底が平坦な内容器構成部材としての有底筒状部材21の底全面および底近傍の外側面に塗布する。
なお、混合銀ペースト40の塗布面積および塗布厚みは、家庭用IH調理器で電磁誘導発熱体層4を誘導加熱したときに、内容器2の十分な温度まで加熱できれば特に限定されないが、同一の液状飲食物のみに繰り返し用いられる場合には、内容器2の温度が真空二重容器1に注がれる液状飲食物の最適飲食温度の上限温度までしか上がらないような塗布面積および塗布厚みに設定することもできる。
(2)図3に示すように、底に封止口となる孔31aが穿設された非磁性ステンレス鋼板をプレス成形して得られた外容器構成体としての孔明き筒状部材31を有底筒状部材21に外嵌し、有底筒状部材21と孔明き筒状部材31の容器の入口側端縁同士を溶接一体化して二重容器本体11を得る。
(3)図4に示すように、封止板32を、ロウ材33を介して孔31aを塞ぐように二重容器本体11の底上に載置されたようにセットする。
(4)上記のように、封止板32がセットされた二重容器本体11を、図5に示すように、真空加熱炉5中にセットし、通常の携帯用魔法瓶の製造方法と同様に、孔31aから二重容器本体11の中空部11aの空気を排気して真空にしながらロウ材33を溶融して封止板32を二重容器本体11にロウ付けして、二重容器本体11の孔31aが封止板32で封止された図1に示す真空二重容器1を得る。
すなわち、混合銀ペースト40がロウ付け温度より低い焼成温度であるので、上記ロウ付けと同時に混合銀ペースト40が焼成されて銀の焼結体からなる電磁誘導発熱体層4が形成される。
【0028】
この真空二重容器1は、上記のように、内容器2および外容器3が同じ種類の非磁性ステンレス鋼板で形成されているので、溶接部の溶接を容易に行える。
また、内容器2および外容器3がステンレス鋼であるので、耐衝撃性にも優れている。勿論、内容器2の外壁面に電磁誘導発熱層4が設けられているので、IH調理器等の電磁誘導加熱装置を用いて内容器2を加熱することができる。
したがって、真空二重容器1内の飲食物を他の容器に移し替えることなく、IH調理器等の電磁誘導加熱装置を用いて温め直すことができるとともに、以下に説明するような液状飲食物の保温方法に好適に用いることができる。
【0029】
すなわち、この保温方法は、まず、図6に示すように、空の真空二重容器1を、底が家庭のIH調理器6に受けられるように載置し、IH調理器6をオンにして電磁誘導発熱体層4を発熱させて内容器2をコーヒーやスープなどの最適飲食温度の上限温度まで加熱する。なお、内容器2の温度がコーヒーやスープなどの最適飲食温度の上限温度になったか否かの判定は、例えば、使用する真空二重容器1とIH調理器6と組み合わせで、経験的に求めた時間に設定する方法や、赤外線温度計を用いて内容器内部の温度を測定して行う方法で行うことができる。
つぎに、加熱が完了したら、誘導加熱をやめ、調理したあるいは抽出した最適飲食温度になった液状飲食物を内容器2が加熱された真空二重容器1に注ぎ入れたのち、図示していない従来の携帯用魔法瓶の注ぎ口付きの内蓋をしたのち、外蓋をして液状飲食物を保温状態にする。
そして、所望のときに、真空二重容器1内の液状飲食物を外蓋に注ぎ込む、あるいは、カップ等の別の容器に入れて飲食する。
【0030】
この保温方法によれば、液状飲食物を真空二重容器1内に注ぎ込む際に、内容器2が予め液状飲食物の最適飲食温度の上限温度まで加熱されているので、最適飲食温度になった液状飲食物は、真空二重容器1に熱を奪われることがなく、最適飲食温度が保たれる。
そして、この状態で保温されるので、内容器が加熱されていない従来の真空二重容器に液状飲食物を入れた場合に比べ、長時間最適飲食温度に保持される。
【0031】
しかも、注ぎ込む液状飲食物も最適飲食温度であるので、真空二重容器1に入れた直後に飲食する場合も最もおいしい状態で飲食できる。
また、混合銀ペースト40の焼成温度がロウ付け温度より低く、ロウ付けと同時に焼成できるので、焼成工程を別途設ける場合に比べ、製造工程が簡略化できる。
さらに、大きな銀粒子を含む銀ペーストと、小さな銀粒子を含む銀ペーストを混合して用いるようにしたので、高価な小さな銀粒子を含む銀ペーストの使用量を低減できるとともに、混合量によって電磁誘導発熱体層の電気抵抗等もコントロールできる。
【0032】
なお、上記保温方法は、図示していないが、店舗に多数の真空二重容器1を並列してセットでき、各真空二重容器1の電磁誘導発熱体層4を同時に誘導加熱できる電磁誘導加熱装置を設置し、多数の真空二重容器1の内容器2を予め加熱しておき、テイクアウトの客が来店した場合、客のオーダーに応じた最適飲食温度に加熱された液状飲食物を加熱された真空二重容器1に入れて販売する温かいコーヒーやスープ等をテイクアウトできる店舗等の新しい販売システムとしても応用できる。
すなわち、客は、上記のようにして保温状態にされた真空二重容器1を受け取り、職場にもっていく、あるいは家に持ち帰るなどして、所望のときに上記と同様にして飲食できる。
【0033】
なお、上記販売システムにおいては、液状飲食物の販売に際し、液状飲食物の代金とともに、真空二重容器1、内蓋および外蓋の保証金を客から貰い、客が返却すれば保証金を返却する、あるいは、再度購入する場合、前の真空二重容器1、内蓋および外蓋を返却すれば、液状飲食物を予め上記のようにして内容器2を加熱した別の真空二重容器1に入れて客が液状飲食物の代金のみを支払うようにすることが考えられる。
【0034】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、混合銀ペースト40の塗布面積および塗布厚みを制御することによって家庭用のIH調理器6を用いて加熱したとき、電磁誘導発熱体層4が液状飲食物の最適飲食温度の上限温度までしか上がらないようになっていたが、電磁誘導加熱装置に温度センサやタイマーを設けるなどして、電磁誘導加熱装置で加熱設定温度を制御できるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、真空二重容器から蓋を取り除き、真空二重容器内の液状飲食物をカップに移して飲食するようにしていたが、例えば、蓋につけたノズル上の飲み口から直飲みできるようにしても構わないし、容器から蓋を取り外し、容器から直飲みできるようにしても構わない。
【0035】
また、上記の実施の形態では、本発明の真空二重容器を本発明の保温方法に用いるようにしていたが、本発明の真空二重容器は、熱していないペットボトルのお茶等を直接真空二重容器に容れた状態でIH調理器等で電磁誘導発熱体層を誘導加熱してお茶を温めるような方法に用いるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 真空二重容器
11 二重容器本体
2 内容器
21 有底筒状部材(内容器構成部材)
3 外容器
31 孔明き筒状部材(外容器構成部材)
31a 真空吸引用の孔
32 封止板
33 ロウ材
4 電磁誘導発熱体層
40 混合銀ペースト
5 真空加熱炉
6 IH調理器
図1
図2
図3
図4
図5
図6