(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る微粒子検知システム1について、図面を参照して説明する。本実施形態の微粒子検知システム1は、車両AMに搭載したエンジンENG(内燃機関)の排気管EPに装着して、排気管EP内を流れる排気ガスEG中の微粒子S(ススなど)の量を検知する(
図1参照)。このシステム1は、主として、検知部10と、回路部201と、圧縮空気AKを生成する圧縮空気源である圧送ポンプ300とからなる(
図2参照)。
検知部10は、排気管EP(通気管)のうち、取付開口EPOが穿孔された取付部EPTに装着されている。そして、その一部(
図2中、取付部EPTよりも右側(先端側))は取付開口EPOを通じて排気管EP内に配置されており、排気ガスEG(被測定ガス)に接触する。
回路部201は、排気管EP外で、複数の配線材からなるケーブル160を介して検知部10に接続されている。この回路部201は、検知部10を駆動するとともに、後述する信号電流Isを検知する回路を有している。
【0019】
先ず、本システム1のうち、回路部201の電気回路上の構成について説明する。回路部201は、信号電流検知回路230とヒータ通電回路226とを含む計測制御回路220と、イオン源電源回路210と、補助電極電源回路240とを有している。
このうち、イオン源電源回路210は、第1電位PV1とされる第1出力端211と、第2電位PV2とされる第2出力端212とを有している。第2電位PV2は、具体的には、第1電位PV1に対して、正の高電位とされている。さらに具体的には、第2出力端212からは、第1電位PV1に対し、100kHz程度の正弦波を半波整流した、1〜2kV0-pの正のパルス電圧が出力される。なお、イオン源電源回路210は、後述するマイクロプロセッサ202によって、出力電流がフィードバック制御され、その実効値が予め定めた電流値(例えば、5μA)を保つ定電流電源を構成している。また、マイクロプロセッサ202は、このイオン源電源回路210が流す出力電流(後述する放電電流Id)の大きさを、図示しないアイソレーションアンプ回路を通じて、検知可能になっている。
【0020】
一方、補助電極電源回路240は、第1出力端211に導通して第1電位PV1とされる補助第1出力端241と、第3電位PV3とされる補助第2出力端242とを有している。この第3電位PV3は、具体的には、第1電位PV1に対して、正の直流高電位であるが、第2電位PV2のピーク電位(1〜2kV)よりも低い、例えば、DC100〜200Vの電位にされている。
【0021】
さらに、計測制御回路220の一部をなす信号電流検知回路230は、イオン源電源回路210の第1出力端211に接続する信号入力端231と、接地電位PVEに接続する接地入力端232とを有している。この信号電流検知回路230は、信号入力端231と接地入力端232との間を流れる信号電流Isを検知する。
【0022】
また、ヒータ通電回路226は、PWM制御によりヒータ78(後述する)に通電してこれを発熱させる回路であり、ケーブル160の第1ヒータ接続配線169a及び第2ヒータ接続配線169bにそれぞれ接続される。
【0023】
加えて、イオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、及び、信号電流検知回路230の信号入力端231は、互いに接続している。
【0024】
絶縁トランス270の一次側鉄心271Aは、接地電位PVEに導通し、二次側鉄心271Bは、第1電位PV1(イオン源電源回路210の第1出力端211)に導通している。本実施形態では、この絶縁トランス270を介して、計測制御回路220と、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240とが、互いに絶縁されている。
【0025】
計測制御回路220は、レギュレータ電源PSを内蔵している。なお、このレギュレータ電源PSは、電源配線BCを通じて外部のバッテリBTで駆動される。
また、計測制御回路220は、マイクロプロセッサ202を含み、通信線CCを介して内燃機関を制御する制御ユニットECUと通信可能となっており、信号電流検知回路230で検知した信号電流Isの大きさに対応する微粒子Sの量の換算値などを、制御ユニットECUに送信可能となっている。
【0026】
圧送ポンプ300は、自身の周囲の大気(空気)を取り込んで、送気パイプ310を通じて、後述するイオン源11に向けて、清浄な圧縮空気AKを圧送する。
【0027】
次いで、ケーブル160について説明する(
図2参照)。このケーブル160の中心部分には、銅線からなる第2電位配線161、補助電位配線162、第1ヒータ接続配線169a及び第2ヒータ接続配線169bと、樹脂からなる中空のエアパイプ163が配置されている。そして、これらの径方向周囲を、図示しない絶縁体層を挟んで、銅細線を編んだ編組からなる第1電位配線165及び接地電位配線167が包囲している。
【0028】
前述したように、回路部201は、このケーブル160と接続している(
図2参照)。具体的には、イオン源電源回路210の第2出力端212は第2電位PV2とされ、第2電位配線161に接続、導通している。また、補助電極電源回路240の補助第2出力端242は第3電位PV3とされ、補助電位配線162に接続、導通している。さらに、イオン源電源回路210の第1出力端211は第1電位PV1とされ、第1電位配線165に接続、導通している。加えて、信号電流検知回路230の接地入力端232は、接地電位配線167に接続、導通して、接地電位PVEとされている。
ヒータ通電回路226は、第1ヒータ接続配線169a及び第2ヒータ接続配線169bに接続、導通している。
その他、送気パイプ310は、ケーブル160のエアパイプ163に連通されている。
【0029】
次いで、検知部10について説明する(
図2参照)。前述したように、検知部10は、エンジンENG(内燃機関)の排気管EP(通気管)のうち取付開口EPOを有する取付部EPTに装着され、排気ガスEG(被測定ガス)に接触する。この検知部10は、その電気的機能において、大別して、イオン源11、微粒子帯電部12、第1導通部材13、針状電極体20及び補助電極体50から構成されている。
【0030】
第1導通部材13は、金属製で円筒状をなし、ケーブル160の先端側で、第1電位配線165に接続され、これに導通している。
【0031】
ケーブル160の第2電位配線161の先端側は、第1導通部材13内で、針状電極体20に接続されている。この針状電極体20は、タングステン線からなり、その先端部分が針状に尖った形態とされた針状先端部22を有する。この針状先端部22は、後述するイオン源11の2つの電極のうちの一方をなす。
【0032】
また、ケーブル160の補助電位配線162の先端側は、第1導通部材13内で、補助電極体50の延出部51に接続されている。この補助電極体50は、ステンレス線からなり、その先端側は、U字状に曲げ返されており、さらにその先の先端部分に、後述する補助電極をなす補助電極部53を有する。また、補助電極体50の延出部51は、その周囲をヒータ付き補助電極絶縁パイプ79で被覆されている(
図4参照)。このヒータ付き補助電極絶縁パイプ79は、アルミナ等の絶縁セラミックからなる円筒状の補助電極絶縁パイプ77とこの表面上に形成されて一体化したヒータ78とこれらを被覆する絶縁セラミック層76とからなる。
【0033】
ヒータ付き補助電極絶縁パイプ79は、その基端側(
図4中、下方)に露出した、ヒータ78の2つのヒータ端子78a,78bを有する。ヒータ78は、タングステンからなり、ヒータ端子78a,78bから先端側(
図4中、上方)に向かって延びるヒータリード部78r1,78r2と、先端部分に位置する第1ヒータ部78h1及びこれより基端側に位置する第2ヒータ部78h2の2つの発熱部位とを有する。なお、第1ヒータ部78h1と第2ヒータ部78h2は、並列接続されており、このうち、第1ヒータ部78h1は、補助電極をなす補助電極体50の補助電極部53付近を加熱する。また、第2ヒータ部78h2は、イオン源11(後述するノズル部31及び針状電極体20の針状先端部22)付近を加熱する。すなわち、ヒータ78は、2つの第1,第2ヒータ部78h1,78h2により、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53(補助電極)をそれぞれ加熱する。
【0034】
第1導通部材13は、ケーブル160の第1電位配線165を通じて、イオン源電源回路210の第1出力端211に導通し、第1電位PV1とされている。また、第1導通部材13は、針状電極体20及び補助電極体50のうち、排気管EP外に位置する部位の径方向周囲を包囲している。
【0035】
さらに、第1導通部材13の径方向周囲は、排気管EPに装着されてこれに導通する外装部材14に絶縁された状態で包囲されている。この外装部材14は、ケーブル160に接続されて、ケーブル160の接地電位配線167に導通し、接地電位PVEとされている。
【0036】
ケーブル160の第1ヒータ接続配線169a及び第2ヒータ接続配線169bは、第1導通部材13内で、それぞれヒータ接続端子170a、170bに接続されている。そして、このヒータ接続端子170a、170bは、第1導通部材13内で、ヒータ78のヒータ端子78a、78bに接続されている。
【0037】
また、ケーブル160のエアパイプ163は、第1導通部材13内で、その先端が開放されている。そして、送気パイプ310及びケーブル160のエアパイプ163を通じて、圧送ポンプ300から供給された圧縮空気AKは、エアパイプ163から放出され、さらに先端側(
図2中、右側)の放電空間DS(後述する)に圧送される。
【0038】
第1導通部材13の先端側(
図2中、右側)には、ノズル部31が嵌め込まれている。このノズル部31は、その中央が先端側に向かう凹形状とされ、その中心には、微細な透孔が形成されて、ノズル31Nとなっている。ノズル部31は、第1導通部材13と電気的にも導通して、第1電位PV1とされている。
【0039】
第1導通部材13の先端側にノズル部31が嵌め込まれることで、これらの内部に、放電空間DSが形成される。この放電空間DSでは、針状電極体20の針状先端部22が突出しており、この針状先端部22は、ノズル部31の基端側の面であり凹形状をなす対向面31Tと向き合っている。従って、針状先端部22とノズル部31(対向面31T)との間に高電圧を印加すると、気中放電が生じ、大気中のN
2,O
2等が電離し、正イオン(例えば、N
3+,O
2+。以下、イオンCPともいう)が生成される。また、ケーブル160のエアパイプ163から放出された圧縮空気AKも、この放電空間DSに供給される。このため、ノズル部31のノズル31Nから、圧縮空気AKを起源とする空気ARが、これより先端側の混合領域MX(後述する)に向けて高速で噴射されると共に、圧縮空気AK(空気AR)に混じって、イオンCPも混合領域MXに噴射される。
【0040】
さらに、ノズル部31の先端側(
図2中、右側)には、微粒子帯電部12が構成されている。この微粒子帯電部12の側面には、(排気管EPの下流側に向けて開口する)取入口33Iと排出口43Oが穿孔されている。また、この微粒子帯電部12は、ノズル部31に電気的にも導通して、第1電位PV1とされている。
【0041】
この微粒子帯電部12は、内側に膨出した捕集極42により、内側の空間がスリット状に狭められた形態とされており、これよりも基端側(
図2中、左側)には、ノズル部31との間に円柱状の空間が形成されている。
微粒子帯電部12内の空間のうち、上述の円柱状の空間を、円柱状混合領域MX1とする。また、捕集極42で構成されるスリット状の内部空間を、スリット状混合領域MX2とする(
図3参照)。そして、これら円柱状混合領域MX1及びスリット状混合領域MX2を併せて、混合領域MXとする。さらに、捕集極42よりも先端側にも、円柱状の空間が形成されており、排出口43Oに連通する排出路EXをなしている。加えて、捕集極42の基端側には、取入口33Iから混合領域MX(円柱状混合領域MX1)に連通する引き込み路HKが形成されている。
【0042】
次いで、本実施形態の微粒子検知システム1の各部の電気的機能及び動作について、
図2のほか、
図3をも参照して説明する。なお、この
図3は、本システム1の検知部10の電気的機能及び動作を理解容易のため模式的に示したものである。
針状電極体20は、前述したように、第1電位PV1に対して、100kHz,1〜2kV0-pの正の半波整流パルス電圧である、第2電位PV2とされる。一方、補助電極体50は、前述したように、第1電位PV1に対して、100〜200Vの正の直流電位である、第3電位PV3とされる。また、第1導通部材13,ノズル部31,微粒子帯電部12は、第1電位PV1とされる。加えて、外装部材14は、信号電流検知回路230の接地入力端232及び排気管EPと同じ、接地電位PVEとされる。
【0043】
従って、前述したように、第1電位PV1とされるノズル部31(対向面31T)と、これよりも正の高電位である第2電位PV2とされる針状先端部22との間では、正極となる針状先端部22の周りにコロナが発生する正針コロナPCを生じる。これにより、その雰囲気をなす大気(空気)のN
2,O
2等が電離等して、正のイオンCPが発生する。発生したイオンCPの一部は、放電空間DSに供給された圧縮空気AKを起源とする空気ARと共に、ノズル31Nを通って、混合領域MXに向けて噴射される。本実施形態では、放電空間DSを囲む、ノズル部31と針状先端部22が、これらの間の気中放電(コロナ放電)でイオンCPを生成するイオン源11をなしている。
【0044】
ノズル部31のノズル31Nを通じて、空気ARが混合領域MX(円柱状混合領域MX1)に噴射されると、この円柱状混合領域MX1の気圧が低下するため、取入口33Iから排気ガスEGが引き込み路HKを通じて、混合領域MX(円柱状混合領域MX1、スリット状混合領域MX2)に取り入れられる。取入排気ガスEGIは、空気ARと混合され、空気ARと共に排出路EXを経由して排出口43Oから排出される。
その際、排気ガスEG中に、ススなどの微粒子Sが含まれていた場合、
図3に示すように、この微粒子Sも混合領域MX内に取り入れられる。ところで、噴射された空気ARには、イオンCPが含まれている。このため、取り入れられたススなどの微粒子Sは、イオンCPが付着して、正に帯電した帯電微粒子SCとなり、この状態で、混合領域MX及び排出路EXを通って、排出口43Oから、取入排気ガスEGI及び空気ARと共に排出される。
一方、混合領域MXに噴射されたイオンCPのうち、微粒子Sに付着しなかった浮遊イオンCPFは、補助電極体50の補助電極部53から斥力を受け、第1電位PV1とされた捕集極42をなす微粒子帯電部12に各部に付着し捕捉される。
【0045】
次いで、本システム1における微粒子Sの検知原理について説明する。
図2に示すように、イオン源11における気中放電に伴って、イオン源電源回路210の第2出力端212から、針状先端部22に、放電電流Idが供給される。一方、この放電電流Idの多くは、ノズル部31に流れ込む(受電電流Ij)。この受電電流Ijは、第1導通部材13を流れて、イオン源電源回路210の第1出力端211に流入する。
また、イオン源11で生成され、ここから噴射されたイオンCPの多くは捕集極42で捕集される。捕集極42で捕集された浮遊イオンCPFが有していた電荷に起因する捕集電流Ihも、捕集極42(微粒子帯電部12)に導通する第1導通部材13を通じて、第1出力端211に流れ込む。つまり、第1導通部材13には、これらの和である受電捕集電流Ijh(=Ij+Ih)が流れる。
【0046】
但し、この受電捕集電流Ijhは、放電電流Idよりも若干小さな値となる。というのも、イオン源11で生成されたイオンCPのうち、排出口43Oから排出された帯電微粒子SCに付着して排出イオンCPHも排出されてしまう。この排出された排出イオンCPHの電荷に対応する電流分は、受電捕集電流Ijhとして流れないからである。なお、帯電微粒子SCが流通している排気管EPは接地電位PVEとされている。
【0047】
ところでイオン源電源回路210から見ると、第2出力端212から流出した放電電流Idと、第1出力端211から流入する受電捕集電流Ijhとにアンバランスが生じることとなる。このため、この不足分(差分=放電電流−受電捕集電流)に相当する信号電流Isが、接地電位PVEから第1出力端211に向けて流れ込んでバランスする。
そこで、本システム1では、第1出力端211に導通する信号入力端231と、接地電位PVEに導通する接地入力端232とを有し、これらの間を流れる電流を検知する信号電流検知回路230を設けることで、接地電位PVEから外装部材14、ケーブル160の接地電位配線167を経由し、信号電流検知回路230を通じ、第1出力端211に流れる信号電流Isを検知する。
この差分(放電電流Id−受電捕集電流Ijh)に相当する信号電流Isの大きさは、排出された帯電微粒子SCに付着して排出された排出イオンCPHの電荷の量、したがって、取入排気ガスEGI中の微粒子Sの量、ひいては、排気管EPを流れる排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応して増減する。
従って、この信号電流Isを信号電流検知回路230で検知することにより、これに対応する排気ガスEG中の微粒子Sの量が検知できる。なお、本システム1では、予め定めた参照テーブルを用いた換算を行うことにより、検知した信号電流Isから微粒子Sの量の換算値を得ている。
【0048】
ところで、前述したように、イオン源電源回路210は、定電流電源を構成しており、イオン源電源回路210の第2出力端212から、針状先端部22に供給される放電電流Id(本発明における気中放電電流)は、その実効値が所定の電流値(例えば、5μA(=目標電流It))を保つように、マイクロプロセッサ202によってフィードバック制御されている。
信号電流Isを用いて微粒子Sの量を精度良く検知するためには、この定電流制御された放電電流Idが安定している必要がある。しかしながら、イオン源電源回路210でイオン源11の作動を開始させた直後は、この放電電流Idが安定していない場合が多い。また、イオン源11の周囲に凝縮水や煤が付着して、イオン源11の絶縁性が低下することなどにより、例えば、
図5に実線や破線で示すグラフのように、ハンチングを繰り返したり、当初の電流値が大きくなり過ぎたりして、放電電流Idが目標電流Itになかなか収束しない場合がある。そして、このような状態では、コロナ放電で発生するイオンCPの量にばらつきを生じるため、この放電電流Idが不安定な状態のまま、信号電流検知回路230で信号電流Isを検知しても、微粒子Sの量を精度良く検知することが難しい。
【0049】
そこで、本実施形態のシステム1では、イオン源電源回路210によるイオン源11の作動を開始した後、イオン源電源回路210が流す放電電流Id(気中放電電流)が、予め定めた許容範囲IR内に収束した後に、信号電流検知回路230で検知した信号電流Isを用いた微粒子Sの量の検知を開始させている。ここで許容範囲IRは、具体的には、放電電流Idの目標電流It(=5μA)に対して、例えば、Imin(=4.5μA)〜Imax(=5.5μA)の範囲に設定される(
図5参照)。
【0050】
しかも、本システム1では、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53を加熱するヒータ78と、このヒータ78に通電するヒータ通電回路226とを有している。そして、イオン源11が作動を開始した後、放電電流Idが許容範囲IR内に収束するまで、ヒータ通電回路226にPWM制御によるヒータ78への通電を行わせて、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53を加熱する。
【0051】
さらに、本システム1では、イオン源11の作動を開始した後の所定期間(本実施形態では10秒)内に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しない場合にのみ、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を開始させる。したがって、イオン源11の作動の開始当初に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束して、微粒子Sの量の検知を開始できるときは、ヒータ78への通電が開始されない。これにより、ヒータ78への通電による消費電力を低減することができる。
【0052】
次いで、本システム1のうち、微粒子検知ルーチンを実行するマイクロプロセッサ202の動作について、
図6〜
図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、
図6に示すステップS1では、必要な初期設定を行った後、イオン源電源回路210によりイオン源11の作動を開始する。なお、この際、マイクロプロセッサ202は、別途、放電電流Idの定電流制御を行う。これにより、コロナ放電が開始される。
【0053】
続くステップS2では、
図7に示す初期収束判定サブルーチンを実行して、イオン源電源回路210から、イオン源11の針状先端部22に供給される放電電流Idが、ステップS1でイオン源11の作動を開始してから所定時間(本実施形態では10秒)が経過するまでの間に、許容範囲IR(例えば、Imin(=4.5μA)〜Imax(=5.5μA))内に収束するか否かを判断する。
【0054】
次いで、この
図7の初期収束判定サブルーチンについて説明する。
図7に示すステップS21では、所定時間(=10秒)を計測するためのタイムアップカウンタの値を0にする。続くステップS22では、放電電流Idが、許容範囲IR内に収束したか否かの判定に用いる収束カウンタの値を0にする。
さらに、続くステップS23では、10msecを計時するタイマを用いて、10msecが経過したか否かを判断し、10msecが経過していない場合(No)は、このステップS23を繰り返す。そして、10msecが経過すると、ステップS23でYesとなって、ステップS24に進む。これにより、10msec毎に、ステップS24以下の処理が実行される。
【0055】
ステップS24では、放電電流Idの値を10msec毎に取得する。続くステップS25では、タイムアップカウンタの値を+1する。すなわち、10msec毎に、タイムアップカウンタの値が+1される。
さらに、続くステップS26では、タイムアップカウンタの値が、1000以上になったか否か、すなわち、この初期収束判定サブルーチンの開始から、所定時間の10秒が経過したか否かを判断する。未だ、10秒が経過していない場合には、ステップS26でNoとなって、ステップS27に進む。
【0056】
ステップS27では、ステップS24で取得した放電電流Idが許容範囲IR内に入っているか否かを判断する。許容範囲IR内に入っていない場合(No)には、ステップS22に戻り、収束カウンタの値を0にクリアした後、ステップS23で10msecの経過を待って、再度ステップS24の放電電流Idの取得に進む。一方、ステップS27で、放電電流Idが許容範囲IR内に入っている場合(Yes)は、ステップS28に進み、収束カウンタの値を+1した後、ステップS29に進む。ステップS29では、収束カウンタの値が、200以上になったか否かを判断する。収束カウンタの値が200以上でない場合(No)には、この収束カウンタの値を維持したまま、ステップS23に戻り、このステップS23で10msecの経過を待って、再度ステップS24の放電電流Idの取得に進む。
【0057】
そして、ステップS23〜S29を繰り返しながら、収束カウンタの値が200に到達した場合、すなわち、放電電流Idの値が連続して2秒間、許容範囲IR内に入っている場合は、ステップS29でYesとなって、ステップS2Aに進む。ステップS2Aでは、放電電流Idが許容範囲IR内に収束したとして、収束フラグを1にした後、この初期収束判定サブルーチンを終了する。
【0058】
一方、ステップS22〜S27を繰り返して、収束カウンタの値が200に到達することなく、タイムアップカウンタの値が1000になった場合は、ステップS26でYesとなって、ステップS2Bに進む。ステップS2Bでは、所定時間(=10秒)以内に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しなかったとして、収束フラグを0にした後、この初期収束判定サブルーチンを終了する。
【0059】
図7の初期収束判定サブルーチンを終了すると、
図6のステップS3に進む。
ステップS3では、収束フラグが1であるか否か、すなわち、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しているか否かを判断する。収束フラグが1で、放電電流Idが許容範囲IR内に収束している場合(Yes)、すなわち、イオン源11の作動の開始当初から、微粒子Sの量の検知を開始できる場合には、ステップS8に進み、信号電流Isを用いた微粒子Sの量の検知を開始させる。
一方、ステップS3で、収束フラグが0の場合(No)、すなわち、放電電流Idが許容範囲IR内に収束していない場合には、ステップS4に進む。
【0060】
ステップS4では、ヒータ通電回路226にPWM制御によるヒータ78への通電を開始させて、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53を加熱する。
続くステップS5では、
図8に示す収束判定サブルーチンを実行して、放電電流Idが、許容範囲IR内に収束したか否かを判断する。
【0061】
次いで、この
図8の収束判定サブルーチンについて説明する。
図8に示すステップS51では、この収束判定サブルーチンの判定を3分間で打ち切るためのタイムアップカウンタの値を0にする。続くステップS52では、放電電流Idが、許容範囲IR内に収束したか否かの判定に用いる収束カウンタの値を0にする。
さらに、続くステップS53では、10msecを計時するタイマを用いて、10msecが経過したか否かを判断し、10msecが経過していない場合(No)は、このステップS53を繰り返す。そして、10msecが経過すると、ステップS53でYesとなって、ステップS54に進む。これにより、10msec毎に、ステップS54以下の処理が実行される。
【0062】
ステップS54では、放電電流Idの値を10msec毎に取得する。続くステップS55では、タイムアップカウンタの値を+1する。すなわち、10msec毎に、タイムアップカウンタの値が+1される。
さらに、続くステップS56では、タイムアップカウンタの値が、18000以上になったか否か、すなわち、この収束判定サブルーチンの開始から、判定打ち切りのための3分間(180秒)が経過したか否かを判断する。未だ、3分間が経過していない場合には、ステップS56でNoとなって、ステップS57に進む。
【0063】
ステップS57では、ステップS54で取得した放電電流Idが許容範囲IR内に入っているか否かを判断する。許容範囲IR内に入っていない場合(No)には、ステップS52に戻り、収束カウンタの値を0にクリアした後、ステップS53で10msecの経過を待って、再度ステップS54の放電電流Idの取得に進む。一方、ステップS57で、放電電流Idが許容範囲IR内に入っている場合(Yes)は、ステップS58に進み、収束カウンタの値を+1した後、ステップS59に進む。ステップS59では、収束カウンタの値が、200以上になったか否かを判断する。収束カウンタの値が200以上でない場合(No)には、この収束カウンタの値を維持したまま、ステップS53に戻り、このステップS53で10msecの経過を待って、再度ステップS54の放電電流Idの取得に進む。
【0064】
そして、ステップS53〜S59を繰り返しながら、収束カウンタの値が200に到達した場合、すなわち、放電電流Idの値が連続して2秒間、許容範囲IR内に入っている場合は、ステップS59でYesとなって、ステップS5Aに進む。ステップS5Aでは、放電電流Idが許容範囲IR内に収束したとして、収束フラグを1にした後、この収束判定サブルーチンを終了する。
【0065】
一方、ステップS52〜S57を繰り返して、収束カウンタの値が200に到達することなく、タイムアップカウンタの値が18000になった場合は、ステップS56でYesとなって、ステップS5Bに進む。ステップS5Bでは、収束フラグを0にした後、この収束判定サブルーチンを終了する。この場合、3分以内に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しなかったことになる。
【0066】
図8の収束判定サブルーチンを終了すると、
図6のステップS6に進む。
ステップS6では、収束フラグが1であるか否か、すなわち、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しているか否かを判断する。収束フラグが1で、放電電流Idが許容範囲IR内に収束している場合(Yes)には、ステップS7に進む。ステップS7では、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を停止させる。その後、ステップS8に進み、信号電流Isを用いた微粒子Sの量の検知を開始させる。
【0067】
一方、ステップS6で、収束フラグが0の場合(No)、すなわち、収束判定サブルーチンで3分以内に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しなかった場合は、ステップS9に進む。ステップS9では、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を停止させる。そして、続くステップS10で、処理の打ち切りのための必要なエラー処理を行う。そして、この場合は、微粒子検知を行わないで、微粒子検知ルーチンの処理を終了する。
【0068】
以上で述べたように、本実施形態のシステム1では、イオン源11の作動を開始した後(ステップS1)、このイオン源11に供給する放電電流Id(気中放電電流)が、予め定めた許容範囲IR(例えば、Imin(=4.5μA)〜Imax(=5.5μA))内に収束した後に(ステップS3,S6でYes)、信号電流Isを用いた微粒子Sの量の検知を開始させている(ステップS8)。
これにより、放電電流Idが安定した状態で微粒子Sの量の検知を開始できるので、発生するイオンCPの量が安定し、微粒子Sの量を精度良く検知することができる。
【0069】
さらに、本実施形態のシステム1では、イオン源11を加熱するヒータ78と、このヒータ78に通電するヒータ通電回路226とを有している。そして、イオン源11が作動を開始した後、放電電流Idが許容範囲IR内に収束するまで、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を行わせて、イオン源11を加熱する(ステップS2〜S7)。
これにより、イオン源11の周囲に付着した凝縮水等の水滴や煤等の異物を除去して、イオン源11の絶縁性を回復させることができ、放電電流Idを早期に許容範囲IR内に収束させて、微粒子Sの量の検知を開始できるまでの時間を短縮することができる。
【0070】
さらに、本実施形態のシステム1では、イオン源11が作動を開始した後の所定期間内に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束しない場合に、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を開始させる(ステップS2〜S4)。
したがって、このシステム1では、イオン源11の作動の開始当初に、放電電流Idが許容範囲IR内に収束して、微粒子Sの量の検知を開始できるときは、ヒータ78に通電しないので、ヒータ78への通電による消費電力を低減することができる。
【0071】
さらに、本実施形態のシステム1では、先端部分の補助電極部53が補助電極をなす補助電極体50を有しており、ヒータ78は、イオン源11のほか、この補助電極体50の補助電極部53を加熱する。これにより、補助電極をなす補助電極部53に凝縮水や煤等の異物が付着することによる補助電極部53の絶縁性の低下をも回復させることができ、微粒子Sの量をより適切に検知することができる。
【0072】
本実施形態において、信号電流Isが、本発明における帯電微粒子SCの量に応じた信号に相当する。また、この信号電流Isを検知する計測制御回路220の信号電流検知回路230が、本発明の検知回路に相当すると共に、この信号電流検知回路230及びマイクロプロセッサ202が、制御部に相当する。また、イオン源電源回路210が、駆動回路及びイオン源駆動回路に相当し、補助電極電源回路240が、駆動回路及び補助電極駆動回路に相当する。
さらに、ステップS2〜S7を実行しているマイクロプロセッサ202が、ヒータ通電制御手段に相当し、このうち、ステップS2〜S4を実行しているマイクロプロセッサ202が、ヒータ通電開始手段に相当する。
また、ステップS2〜S3及びステップS5〜S6を実行しているマイクロプロセッサ202が、電流収束判断手段に相当し、ステップS8を実行しているマイクロプロセッサ202が、検知開始手段に相当する。
【0073】
以上において、本発明を実施形態のシステム1に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、補助電極体50の延出部51の周囲を被覆する補助電極絶縁パイプ77の表面上にヒータ78を一体に形成したヒータ付き補助電極絶縁パイプ79を設けて、このヒータ付き補助電極絶縁パイプ79のヒータ78で、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53を加熱した。しかし、ヒータの形態はこれに限られず、イオン源11のみを加熱するヒータを設けても良い。また、イオン源11及び補助電極体50の補助電極部53をそれぞれ別々に加熱する2つのヒータを設けても良い。
また、ヒータによるイオン源11等の加熱を行わずに、放電電流Idが許容範囲IR内に収束するのを待っても良い。さらに、イオン源11の作動の開始直後にヒータ78による通電を開始させた上で、最初の初期収束判定(ステップS2)を実行するようにしても良い。
【0074】
また、実施形態では、ステップS7で、ヒータ通電回路226にヒータ78への通電を停止させたが、例えば、このステップS7で、PWM制御のデューティ比を小さくして、ヒータ78へ小さな電力を供給して、わずかに発熱を継続するようにしても良い。
【0075】
また、実施形態では、予め定めた参照テーブルを用いて、信号電流Isから微粒子Sの量に換算したが、所定の換算式を用いて、信号電流Isから微粒子Sの量に換算しても良い。また、信号電流Isの大きさそのものを、微粒子Sの量に対応する物理量として用いても良い。さらに、実施形態では、針状電極体20を放電空間DSに配置させるようにしたが、針状電極体20の針状先端部22を混合領域MXに臨むように配置し、針状先端部22と混合領域MXを形成する微粒子帯電部12の内面との間で気中放電を生じさせるようにしても良い。