特許第6182020号(P6182020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182020
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】管路内微生物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20170807BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01M8/16
   H01M8/02 E
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-171353(P2013-171353)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-41471(P2015-41471A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 善治
(72)【発明者】
【氏名】松坂 勝雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一哉
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073284(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0070696(US,A1)
【文献】 特開2010−218690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0064416(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103395891(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性物質を含む液と、
前記有機性物質を含む液が流れる流路を有する管路と、
前記有機性物質を含む液内に配置されたアノードと、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側に第2の表面を有し、前記第1の表面が、前記有機性物質を含む液と接し、かつ前記第2の表面が、空気と接するように、前記有機性物質を含む液の液面上に配置されたカソードと、
前記アノードと前記カソードとを接続している導線とを備え、
前記アノードと前記カソードとの間隔が変動可能である、管路内微生物燃料電池。
【請求項2】
前記有機性物質を含む液の液面の位置の変動に追随して、前記アノードと前記カソードとの間隔が変動可能である、請求項1に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項3】
前記有機性物質を含む液の液面の位置の変動に追随して、前記アノードと前記カソードとの間隔を変動させるための間隔変動部材をさらに備える、請求項1又は2に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項4】
前記間隔変動部材は、前記カソードを前記有機性物質を含む液の液面上に浮かばせるための浮遊性部材である、請求項3に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項5】
前記浮遊性部材が、発泡部材である、請求項4に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項6】
前記発泡部材の材料が、発泡スチロールである、請求項5に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項7】
前記カソードが移動するのを規制するための移動規制部材を備え、
前記移動規制部材と前記カソードとが接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項8】
前記移動規制部材が、伸縮可能である、請求項7に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項9】
前記移動規制部材が、バネ部材である、請求項7又は8に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項10】
前記移動規制部材が、耐腐食性を有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項11】
記流路における前記アノードよりも下流側に、堰を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の管路内微生物燃料電池。
【請求項12】
前記管路が、下水管路である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の管路内微生物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水及び廃棄物等に含まれる有機性物質から、微生物の作用によって電気エネルギーを回収することができる微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電極に触媒として機能する嫌気性微生物を担持させた燃料電池が、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として注目されている。この燃料電池は、微生物燃料電池と呼ばれている。微生物燃料電池では、排水及び廃棄物等に含まれる有機性物質を分解することによって、直接的に電気エネルギーを回収することが可能である。
【0003】
上記微生物燃料電池の一例が、下記の特許文献1,2に開示されている。具体的には、特許文献1,2では、アノード(負電極)と、イオン透過性膜と、カソード(正電極)とがこの順で並べられており、かつアノードとカソードとが導線により接続されている微生物燃料電池が開示されている。
【0004】
上記微生物燃料電池を使用する際には、アノードの表面上の空隙の流路に、嫌気性下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む液を流す。また、カソードの表面上の流路に空気を流し、カソードに空気を接触させる。アノードでは、微生物により有機性物質から水素イオン(H)及び電子(e)が生成される。水素イオンは、イオン透過性膜を透過して、カソード側に移動して、アノードとカソードとの間に電位差が生じる。この状態で、アノードとカソードとが導線によって接続され、閉回路が形成されていると、電位差電流が流れる。この結果、導線に流れる電気エネルギーを回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−9772号公報
【特許文献2】WO2010/049936A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のような従来の微生物燃料電池では、アノードとカソードとが一定の間隔を保持するように配置されている。このため、従来の微生物燃料電池を排水等が流れる流路等に設置した場合に、カソード等が水没したりして、電気エネルギーを回収できなくなることがある。
【0007】
本発明の目的は、電気エネルギーの回収効率を高めることができる微生物燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、有機性物質を含む液と、前記有機性物質を含む液内に配置されたアノードと、第1の表面及び前記第1の表面とは反対側に第2の表面を有し、前記第1の表面が、前記有機性物質を含む液と接し、かつ前記第2の表面が、空気と接するように、前記有機性物質を含む液の液面上に配置されたカソードと、前記アノードと前記カソードとを接続している導線とを備え、前記アノードと前記カソードとの間隔が変動可能である、微生物燃料電池が提供される。
【0009】
本発明に係る微生物燃料電池のある特定の局面では、前記有機性物質を含む液の液面の位置の変動に追随して、前記アノードと前記カソードとの間隔が変動可能である。
【0010】
本発明に係る微生物燃料電池のある特定の局面では、前記微生物燃料電池は、前記有機性物質を含む液の液面の位置の変動に追随して、前記アノードと前記カソードとの間隔を変動させるための間隔変動部材をさらに備える。
【0011】
本発明に係る微生物燃料電池のある特定の局面では、前記間隔変動部材は、前記カソードを前記有機性物質を含む液の液面上に浮かばせるための浮遊性部材である。
【0012】
本発明に係る微生物燃料電池のある特定の局面では、前記微生物燃料電池は、前記有機性物質を含む液が流れる流路を有し、前記流路における前記アノードよりも下流側に、堰を備える。
【0013】
本発明に係る微生物燃料電池のある特定の局面では、前記微生物燃料電池は、下水管路に設置して用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る微生物燃料電池は、有機性物質を含む液と、上記有機性物質を含む液内に配置されたアノードと、第1の表面及び上記第1の表面とは反対側に第2の表面を有し、上記第1の表面が、上記有機性物質を含む液と接し、かつ上記第2の表面が、空気と接するように、上記有機性物質を含む液の液面上に配置されたカソードと、上記アノードと上記カソードとを接続している導線とを備えており、更に上記アノードと上記カソードとの間隔が変動可能であるので、電気エネルギーの回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る微生物燃料電池を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る微生物燃料電池を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係る微生物燃料電池を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る微生物燃料電池は、有機性物質を含む液と、アノードと、カソードと、導線とを備える。上記アノードは、上記有機性物質を含む液内に配置されている。上記カソードは、第1の表面と、上記第1の表面とは反対側に第2の表面とを有する。上記第1の表面が、上記有機性物質を含む液と接し、かつ上記第2の表面が、空気と接するように、上記カソードは、上記有機性物質を含む液の液面上に配置されている。上記導線は、上記アノードと上記カソードとを接続している。
【0018】
本発明に係る微生物燃料電池では、上記アノードと上記カソードとの間隔が変動可能である。
【0019】
本発明に係る微生物燃料電池における上述した構成の採用によって、電気エネルギーの回収効率を高めることができる。特に、上記有機性物質を含む液の液面の位置が変動したとしても、電気エネルギーの回収効率を高く維持できる。
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図1,2は、本発明の第1の実施形態に係る微生物燃料電池1を模式的に示す断面図である。図1,2では、微生物燃料電池1は、管51内に配置されている。図1は、管51の長さ方向と直交する方向における断面図であり、径部分の断面図である。図2は、管51の長さ方向における断面図である。図1では、管51内における流れ方向については、手前が上流側、奥が下流側である。図2では、管51内における流れ方向については、右が上流側、左が下流側である。
【0022】
微生物燃料電池1は、有機性物質を含む液11と、アノード12と、カソード13と、導線14とを備える。
【0023】
管51内には、有機性物質を含む液11が配置されている。有機性物質を含む液11は、管51の底部に配置されている。管51は、内部空間を有し、外壁部材である。有機性物質を含む液11は、管51の底部を流れることが好ましい。管51の底部において、有機性物質を含む液11は、堆積物11Aを含有する。堆積物11Aは液中に存在しており、堆積物11Aは、有機性物質を含む液11の一部である。堆積物11Aでは、有機性物質の濃度が高くなる。
【0024】
上記有機性物質を含む液としては特に限定されないが、排水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物及び汚泥等が挙げられる。上記微生物燃料電池は、エネルギーを回収可能な廃液処理装置として好適に用いられる。
【0025】
上記微生物としては、嫌気性微生物及び好気性微生物が挙げられる。微生物は、嫌気性微生物であることが好ましい。嫌気性微生物は、嫌気性下で生育可能である。微生物は、好気性微生物であってもよい。
【0026】
上記微生物としては、微生物の細胞膜内で電子伝達系を終結しない微生物が望ましく、細胞膜外で電子をアノードで捕捉しやすく、アノードへの電子伝達を触媒する微生物を利用することが望ましい。上記微生物として、硫黄S(0)還元菌、三価鉄Fe(III)還元菌、二酸化マンガンMnO還元菌、脱塩素菌などが好ましく用いられる。上記微生物として、例えばDesulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Thermoterrabacterium ferrireducens sp.、Geothrix sp.、Geobacter sp.、Geoglobus sp.、Shewanella putrefaciens sp.などが特に好ましく用いられる。これらの微生物は、有機性物質中において主要な微生物ではないこともある。このため、アノードにこれらの微生物を植菌し、アノードにこれらの微生物を担持させてもよい。
【0027】
管51内には、アノード12が配置されている。アノード12は、有機性物質を含む液11内に配置されている。アノード12は、有機性物質を含む液11及び堆積物11Aに浸漬されている。アノード12は全体が、有機性物質を含む液11内及び堆積物11A内に配置されている。アノード12はシート状である。
【0028】
管51内には、カソード13が配置されている。カソード13は、第1の表面13aと、第1の表面13aとは反対側に第2の表面13bとを有する。第1の表面13aが、有機性物質を含む液11と接している。第2の表面13bが、空気と接している。このような状態となるように、カソード13が、有機性物質を含む液11の液面11a上に配置されている。カソード13は、有機性物質を含む液11の液面11a上に浮かんでいることが好ましい。カソード13はシート状である。
【0029】
上記アノードは、例えば、微生物を担持可能であるとともに、有機性物質を含む液を通過可能である。上記アノードには、微生物が担持されてもよく、担持されていなくてもよい。上記アノードに微生物が担持されていない場合には、使用前又は使用時に、上記アノードに微生物が担持される。上記アノードに微生物が付着していることで、微生物により有機性物質から水素イオン(H)及び電子(e)が生成可能になる。また、必要に応じて、上記アノードにメディエータ(電子伝達体)が担持されていてもよく、微生物にメディエータ(電子伝達体)を加えてもよい。
【0030】
微生物を効果的に担持可能であるように、また上記有機性物質を含む液を通過可能であるように、上記アノードは、孔を有することが好ましく、多孔質体であることが好ましい。上記アノードの材料は、微生物を担持可能で導電性材料であれば特に限定されない。上記アノードの形態としては、網状体、織布、不織布、クロス及びフェルト等が挙げられる。上記アノードは、比表面積を高めるために表面処理されていてもよい。
【0031】
また、上記アノードは、高い導電性を有することが好ましい。上記アノードの材料としては、カーボンペーパー、カーボンフェルト、ポーラスカーボン、カーボンクロス(炭素織布)、金属メッシュ、及び金属メッシュにカーボンブラック又は炭素繊維をコーティングしたコーティング物等が挙げられる。上記金属メッシュとしては、ステンレス及びチタン等が挙げられる。
【0032】
上記アノードの厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは2mm以上、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下である。上記アノードの厚みが上記下限以上であると、微生物をより一層効果的に担持可能である。上記アノードの厚みが上記上限以下であると、微生物による目詰まりがより一層生じ難くなる。
【0033】
上記カソードの上記アノード側の表面と、上記アノードの上記カソード側の表面との間の間隔は、好ましくは500mm以下、より好ましくは200mm以下である。上記間隔が上記上限以下であると、水素イオン(H)がより一層効率的に移動する。
【0034】
上記カソードは、導電性基材を有することが好ましい。上記導電性基材としては、カーボンペーパー、カーボンフェルト、ポーラスカーボン、カーボンクロス(炭素織布)、金属メッシュ、及び金属メッシュにカーボンブラック又は炭素繊維をコーティングしたコーティング物等が挙げられる。上記金属メッシュとしては、ステンレス及びチタン等が挙げられる。電極の導電性をより一層良好にする観点からは、上記導電性基材は、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス、ステンレス、チタン又はカーボン被覆金属であることが好ましい。上記導電性基材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記カソードに用いられる上記導電性基材には、酸化還元触媒が坦持又は塗布されていることが好ましい。上記酸化還元触媒としては、白金等の貴金属触媒、鉄系触媒及びマンガン系触媒等が挙げられる。上記白金等の貴金属触媒を用いる場合には、酸化還元性能がより一層高くなる。上記鉄系触媒及び上記マンガン系触媒を用いる場合には、コストがより一層低くなる。上記酸化還元触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記カソードに用いられる上記導電性基材の厚みは、好ましくは50μm以上、好ましくは5mm以下である。上記導電性基材の厚みが上記下限以上であると、有機性物質を含む液が流れたり、有機性物質を含む液の液面の位置が変動したりしても、破損等がより一層生じ難くなる。上記導電性基材の厚みが上記上限以下であると、酸素透過性がより一層高くなる。
【0037】
上記カソードにおいて、上記有機性物質を含む液の液面との接触面(第1の表面)には、イオン透過性膜が設けられていることが好ましい。上記イオン透過性膜としては、不織布やカチオン交換膜等が挙げられる。上記カソードにおいて、空気との接触面(第2の表面)には、撥水層が設けられていることが好ましい。上記撥水層は、上記導電性基材に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を塗布することにより形成されていてもよい。
【0038】
微生物燃料電池1は、アノード12とカソード13とを接続している導線14を備える。導線14は、外部回路21に接続されている。アノード12とカソード13とが導線14により接続されていることによって、閉回路が形成されているため、電位差電流が流れる。この結果、導線14に流れる電気エネルギーを回収できる。
【0039】
微生物燃料電池1は、アノード12とカソード13との対向した配置状態を維持するための移動規制部材15をさらに備える。移動規制部材15は、例えば、有機性物質を含む液11の流れ等によって、その流れ方向にカソード13が移動するのを規制する。カソード13のアノード12側の表面と、アノード12とカソードとの対向した配置状態を維持するように、カソード13の位置が、アノード12の位置に対して、水平方向に移動するのを抑えることが好ましい。カソード13を水平方向等に移動するのを抑えるための移動規制部材の構造は特に限定されない。上記移動規制部材は、上記カソードに接する堰き止め部材であってもよい。
【0040】
伸縮可能な移動規制部材を用いて、カソードは吊り下げによって配置されていることが好ましい。また、伸縮可能な移動規制部材を用いて、カソードが吊り下げ配置されていることで、上記アノードの表面と上記カソードの表面との鉛直方向と直交する方向(水平方向)における移動を防ぐことができる。この結果、上記微生物燃料電池における電気エネルギーの回収効率がより一層高くなる。
【0041】
上記移動規制部材は伸縮可能であることが好ましい。上記移動規制部材としては、バネ部材等が挙げられる。耐腐食性を高めることなどを目的として、バネ本体の表面が樹脂により被覆されたバネ部材を用いてもよい。上記移動規制部材は、上記管の内面に接続されていてもよく、上記管の内面と上記カソード又は上記カソードに接続された移動規制部材とに接続されていてもよい。上記移動規制部材によって、上記カソードが、上記管等の固定部材の内面に吊り下げられていてもよい。上記移動規制部材は、耐腐食性を有することが好ましい。
【0042】
微生物燃料電池1では、有機性物質を含む液11の液面11aの位置の変動(上下移動など)に追随して、アノード12とカソード13との間隔が変動可能(上下移動が可能など)であることが好ましい。微生物燃料電池1では、有機性物質を含む液11の液面11aの位置の変動に追随して、アノード12とカソード13との間隔が変動するように、カソード13が移動可能であることが好ましい。
【0043】
微生物燃料電池1は、間隔変動部材16をさらに備える。間隔変動部材16は、有機性物質を含む液11の液面11aの位置の変動に追随して、アノード12とカソード13との間隔を変動させるための部材である。間隔変動部材16は、アノード12とカソード13との間隔が変動するように、カソード13を移動させるための部材であることが好ましい。間隔変動部材16は、アノード12とカソード13との鉛直方向における間隔を変動させるための部材であることが好ましく、カソード13を鉛直方向に移動させるための部材であることが好ましい。
【0044】
上記移動規制部材としては、位置が固定されたシャフト部材と、シャフト部材上に備えられシャフトの軸方向に移動可能な可動子部材とから構成されていてもよい。上記シャフト部材は上記管の内面に接続され、上記カソードは上記可動子部材に接続される。上記アノードと上記カソードの距離を最短に保つために、上記シャフト部材の軸が略鉛直方向に設置されていることが好ましい。
【0045】
このように、上記微生物燃料電池は、上記有機性物質を含む液の液面の位置の変動に追随して、上記アノードと上記カソードとの間隔を変動させるための間隔変動部材をさらに備えることが好ましい。上記間隔変動部材の使用により、上記有機性物質を含む液の液面が変動しても、上記カソードが上記有機性物質を含む液中に浸漬して空気に接しなくなったり、上記カソードが上記有機性物質を含む液に接しなくなったりするのを防ぐことができ、発電を継続して行うことができる。
【0046】
間隔変動部材16は、浮遊性部材であることが好ましい。上記浮遊性部材は、カソード13を、有機性物質を含む液11の液面11a上に浮かばせるための部材である。
【0047】
このように、上記微生物燃料電池は、上記カソードを、上記有機性物質を含む液の液面上に浮かばせるための浮遊性部材を備えることが好ましい。上記浮遊性部材の使用により、上記カソードが上記有機性物質を含む液中に浸漬されるのを防ぐことができ、上記カソードの上記第2の表面に、空気をより一層確実に接触させることができる。
【0048】
上記浮遊性部材は、上記有機物質を含む液に浮遊可能である。上記浮遊性部材は、耐水性を有することが好ましく、水に溶解しないことが好ましい。上記浮遊性部材としては、発泡部材等が挙げられる。上記発泡部材の材料としては、発泡スチロール等が挙げられる。上記カソードは、上記有機性物質を含む液の液面の位置が変動した場合でも、上記第1の表面が上記液面に接し、上記第2の表面が空気に接するように配置されていることが好ましい。この観点から、上記浮遊性部材を用いることが好ましい。
【0049】
上記カソードと上記浮遊性部材とは接続されていることが好ましい。上記カソードと浮遊性部材との接続方法としては、接着剤を用いる方法、及びボルト、ナット又はねじを用いる方法等が挙げられる。
【0050】
微生物燃料電池1は、有機性物質を含む液11が流れる流路Pを有する。流路Pにおけるアノード12よりも下流側(図1では、奥側、図2では左側)に、堰17をさらに備える。
【0051】
このように、上記微生物燃料電池は、上記流路における上記アノードよりも下流側に、堰をさらに備えることが好ましい。上記堰は、上記有機性物質を含む液中の上記堆積物を堰き止める作用を有する。また、上記堰は、例えば、上記アノードの流出を防ぐ作用を有する。上記堆積物(有機性物質)を堰き止めることで、上記アノードに上記有機性物質を効果的に接触させることが可能である。この結果、上記微生物燃料電池における電気エネルギーの回収効率がより一層高くなる。
【0052】
上記アノードの単位面積当たりの発電量は、上記有機性物質の濃度が高いほど大きくなる。上記堰の配置によって、有機性物質の濃度を高めることができる。上記堰は、耐水性、耐腐食性を有することが好ましい。上記堰は、上記有機性物質を含む液が流れる際に、変形及び破壊されないように、高い強度を有することが好ましい。上記堰の材料としては、塩化ビニル樹脂、繊維強化プラスチック樹脂、ステンレスなどの金属、及び木材等が挙げられる。
【0053】
上記アノードに有機性物質をより一層効果的に浸漬させる観点からは、上記堰の高さは、アノードの厚みよりも厚いことが好ましく、上記堰の上面は、上記アノードの最上端よりも、鉛直方向において上方に位置していることが好ましい。上記アノードの目詰まりをより一層抑える観点からは、上記堰の高さは低い方がよい。従って、上記堰の高さは、好ましくは上記アノードの厚み(mm)+10mm以上、好ましくは上記アノードの厚み(mm)+50mm以下である。また、上記堰の上面の高さは、上記アノードの最上端よりも、鉛直方向において、10mm以上で上方に位置していることが好ましく、50mm以下で上方に位置していることが好ましい。
【0054】
図3に、第2の実施形態に係る微生物燃料電池1Aを模式的に断面図で示す。
【0055】
図3に示す微生物燃料電池1Aと、微生物燃料電池1とでは同様の部材が用いられている。微生物燃料電池1と微生物燃料電池1Aとで、部材等の配置箇所のみが異なる場合には、同一の符号を付して、その部材等の説明を省略する。
【0056】
微生物燃料電池1Aは、マンホール61内に配置されている。移動規制部材15の一端は、マンホール61(固定部材)の内面に接続されている。
【0057】
微生物燃料電池1Aはマンホール61内に配置することで、アノード12及びカソード13のメンテナンス及び交換が必要な場合に、簡単に交換を実施することができる。また、微生物燃料電池1Aをマンホール61内に配置することで、外部回路21の設置も容易である。
【0058】
上記微生物燃料電池は、電気エネルギーの回収効率が高いので、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として有効利用することができる。また、上記微生物燃料電池は、環境負荷の低減に大きく寄与する。
【0059】
発電効率を高める観点からは、上記アノードと上記有機性物質を含む液との接触面積は大きいほどよい。また、水素イオンを効率的に移動させる観点からは、上記アノードと上記カソードとの間隔は、短いほどよい。
【0060】
一般に、従来、微生物燃料電池は、アノード及びカソードの面方向が鉛直方向となるように設置されることが多い。一方で、アノード及びカソードの面方向が鉛直方向と直交する方向となるように、微生物燃料電池を排水等が流れる流路にした場合には、アノードが排水等に接する面積が小さくなり、電気エネルギーの回収効率が低くなりやすい。
【0061】
従来、アノード及びカソードの面方向が水平方向となるように、微生物燃料電池を排水等が流れる流路にした場合には、流路内の有機性物質を含む液の液面の位置が変動するため、液面が高くなったときには、カソードが有機性物質を含む液に浸漬し、カソードが空気に接触しなくなって、発電が停止することがある。また、カソードが有機性物質を含む液に浸漬されないように、アノードとカソードとの間隔を充分に大きくした場合には、発電効率が低下するという問題がある。
【0062】
これに対して、本発明では、有機性物質を含む液の液面の位置が変動したとしても、上記アノードと上記カソードとの間隔が変動可能であるために、発電効率を高く維持することができる。
【0063】
また、排水路には、汚水が流れ、底部には、し尿、食品残渣及び微生物の死骸等が堆積して、嫌気性のヘドロ状堆積物層が形成されていることがある。特に流速が遅い底部には、ヘドロ状堆積物層が形成されやすい。この堆積物における有機性物質濃度は高い。この有機性物質が流出すると、水質汚濁及び悪臭の原因となる。また、これらの高濃度の有機性物質は、従来有効利用されていなかった。
【0064】
さらに、排水路では、環境保全及び防災の観点から、水位、流量、汚濁物質濃度等を常時測定、記録、監視、通信したいという要望がある。しかしながら、一般的には常時電源を確保することが困難であるため、そのような常時測定等は実施されていない。
【0065】
本発明では、上記微生物燃料電池を排水等が流れる流路に配置することで、汚水及び底部に堆積した有機性物質から効率的にエネルギーを取り出すことにより、堆積物などの汚濁物質濃度を低くすることができるのと同時に、微生物燃料電池から発生される電気エネルギーを排水等が流れる流路における各種のデータの常時測定、記録、監視、通信などのための電源として利用することが可能になる。
【0066】
上記のような効果が得られることから、上記微生物燃料電池は、下水管路に設置して用いられることが好ましく、マスやマンホールを含む下水管路に設置して用いられることがより好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A…微生物燃料電池
11…有機性物質を含む液
11A…堆積物
11a…液面
12…アノード
13…カソード
13a…第1の表面
13b…第2の表面
14…導線
15…移動規制部材
16…間隔変動部材
17…堰
21…外部回路
51…管
61…マンホール
P…流路
図1
図2
図3