特許第6182025号(P6182025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182025バッテリの健全度推定装置および健全度推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182025
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】バッテリの健全度推定装置および健全度推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20170807BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H02J7/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-184479(P2013-184479)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-52482(P2015-52482A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】馬場 厚志
(72)【発明者】
【氏名】足立 修一
【審査官】 越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/051241(WO,A1)
【文献】 特開2013−104697(JP,A)
【文献】 特開2012−058028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0148424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充放電電流値を検出する充放電電流検出部と、
前記バッテリの端子電圧値を検出する端子電圧検出部と、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて開放電圧値と内部抵抗値とを推定するパラメータ推定部と、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定する第1の充電率推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの開放電圧値を用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定する第2の充電率推定部と、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定する第1の健全度推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定する第2の健全度推定部と、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出する第1の修正値算出部と、を備え、
前記第1の充電率推定部は、前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正する、
バッテリの健全度推定装置。
【請求項2】
前記第1の充電率又は前記第2の充電率を修正するための第2の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の充電率と前記第2の充電率との差に基づいて算出する第2の修正値算出部を更に備える、請求項1に記載の健全度推定装置。
【請求項3】
バッテリの充放電電流値を検出する充放電電流検出部と、
前記バッテリの端子電圧値を検出する端子電圧検出部と、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて内部抵抗値を推定するパラメータ推定部と、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定する第1の充電率推定部と、
前記端子電圧値を前記ッテリの開放電圧値として用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定する第2の充電率推定部と、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定する第1の健全度推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定する第2の健全度推定部と、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出する第1の修正値算出部と、を備え、
前記第1の充電率推定部は、前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正する、健全度推定装置。
【請求項4】
バッテリの充放電電流値を検出するステップと、
前記バッテリの端子電圧値を検出するステップと、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて開放電圧値と内部抵抗値とを推定するステップと、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定するステップと、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの開放電圧値を用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定するステップと、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定するステップと、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定するステップと、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出するステップと、
前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正するステップと、
を含む、バッテリの健全度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に用いるバッテリの健全度を推定するバッテリの健全度推定装置および健全度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリのうち充放電が可能な二次電池が、電気自動車等に採用されている。電池によって電気自動車が走行可能な距離や、電池が充放電可能な電流値などを把握するためには、電池の内部状態量である電池の充電率(SOC:State of Charge)や健全度(SOH:State of Health)等を検出する必要がある。
【0003】
これらの内部状態量は直接検出できないため、電流積算法(クーロン・カウント法)や開放電圧推定法(逐次パラメータ法)が用いられる。電流積算法は、電池の充放電電流を時系列で検出し電流を積算することで充電率(ASOC:Absolute State of Charge)を推定する。また、開放電圧推定法は、電池の等価回路モデルを用いて電池の開放電圧を推定することで充電率(RSOC:Relative State of Charge)を推定する。また、SOHは、ASOCの変化量とRSOC変化量との比をとることによって推定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−58028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流積算法により算出するASOCは、例えば電流センサ誤差が蓄積する等の問題があった。このため、ASOCの変化量を用いて算出する健全度も同様に誤差が蓄積してしまい、健全度の推定精度が悪化する原因となっていた。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、バッテリの健全度の推定精度を向上するバッテリの健全度推定装置および健全度推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る健全度推定装置は、
バッテリの充放電電流値を検出する充放電電流検出部と、
前記バッテリの端子電圧値を検出する端子電圧検出部と、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて開放電圧値と内部抵抗値とを推定するパラメータ推定部と、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定する第1の充電率推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの開放電圧値を用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定する第2の充電率推定部と、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定する第1の健全度推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定する第2の健全度推定部と、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出する第1の修正値算出部と、を備え、
前記第1の充電率推定部は、前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る健全度推定装置は、
前記第1の充電率又は前記第2の充電率を修正するための第2の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の充電率と前記第2の充電率との差に基づいて算出する第2の修正値算出部を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る健全度推定装置は、
バッテリの充放電電流値を検出する充放電電流検出部と、
前記バッテリの端子電圧値を検出する端子電圧検出部と、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて内部抵抗値を推定するパラメータ推定部と、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定する第1の充電率推定部と、
前記端子電圧値を前記ッテリの開放電圧値として用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定する第2の充電率推定部と、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定する第1の健全度推定部と、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定する第2の健全度推定部と、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出する第1の修正値算出部と、を備え、
前記第1の充電率推定部は、前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正することを特徴とする
【0011】
また、本発明に係る健全度推定方法は、
バッテリの充放電電流値を検出するステップと、
前記バッテリの端子電圧値を検出するステップと、
前記バッテリの充放電電流値と端子電圧値に基づいて、前記バッテリの等価回路モデルを用いて開放電圧値と内部抵抗値とを推定するステップと、
前記充放電電流値を積算して第1の充電率を推定するステップと、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの開放電圧値を用いて、予め記憶した前記バッテリの開放電圧値と第2の充電率との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の充電率を推定するステップと、
前記バッテリの測定開始時点からの前記第1の充電率の変化量と前記第2の充電率の変化量との比に基づき第1の健全度を推定するステップと、
前記パラメータ推定部により推定した前記バッテリの内部抵抗値を用いて、予め記憶した前記バッテリの内部抵抗値と第2の健全度との関係を表すルックアップテーブルに基づき前記第2の健全度を推定するステップと、
前記第1の充電率を修正するための第1の修正値を、状態量を推定する適応フィルタを用い、前記第1の健全度と前記第2の健全度との差に基づいて算出するステップと、
前記第1の修正値を用いて前記第1の充電率を修正するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の健全度推定装置によれば、電流積算法充電率(第1の充電率)の変化量と開放電圧法充電率(第2の充電率)の変化量との比により推定する第1の健全度と、バッテリの内部抵抗値と健全度の関係に基づいて推定する第2の健全度と、の差に基づいて、電流積算法充電率を修正する。このため、電流積算法充電率の推定精度を向上することができ、この結果、バッテリの健全度の推定精度を向上することができる。
【0013】
請求項2に記載の健全度推定装置によれば、電流積算法充電率と開放電圧法充電率との差に基づいて、電流積算法充電率又は開放電圧法充電率を修正する。このため、電流積算法充電率又は開放電圧法充電率の推定精度を向上することができ、この結果、バッテリの健全度の推定精度を更に向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の健全度推定装置によれば、バッテリの等価回路モデルを用いてバッテリの開放電圧値を推定し、推定した開放電圧値を用いて開放電圧法充電率を推定する。このため、開放電圧法充電率の推定精度を向上することができ、この結果、バッテリの健全度の推定精度を更に向上することができる。
【0015】
請求項4に記載の健全度推定装置によれば、バッテリの端子電圧値を検出し、検出した端子電圧値を開放電圧値とみなして開放電圧法充電率を推定する。このため、バッテリの開放電圧値を推定する必要がなく、処理負担を低減して健全度を推定することができる。
【0016】
請求項5に記載の健全度推定方法によれば、電流積算法充電率の変化量と開放電圧法充電率の変化量との比により推定する第1の健全度と、バッテリの内部抵抗と健全度の関係に基づいて推定する第2の健全度と、の差に基づいて、電流積算法充電率を修正する。このため、電流積算法充電率の推定精度を向上することができ、この結果、バッテリの健全度の推定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の健全度推定装置から一部の構成要素を取り除いた健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る健全度推定装置による健全度推定結果を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明の変形例1に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図6】本発明の変形例2に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るバッテリの健全度推定装置のブロック図である。実施の形態1に係るバッテリの健全度推定装置は、充放電電流検出部1と、端子電圧検出部2と、パラメータ推定部3と、電流積算法充電率推定部(第1の充電率推定部)4と、開放電圧法充電率推定部(第2の充電率推定部)5と、第1の健全度推定部6と、第2の健全度推定部7と、第1の減算部8と、第1の修正値算出部9と、を備える。また、健全度推定装置には、バッテリBが接続されている。概略として、実施の形態1に係るバッテリの健全度推定装置は、第1の修正値算出部9が、電流積算法充電率を修正するための第1の修正値を、第1の健全度推定部6及び第2の健全度推定部7がそれぞれ推定する第1の健全度SOHと第2の健全度SOHとの差に基づいて算出し、電流積算法充電率推定部4が、算出された第1の修正値によって電流積算法充電率を修正する。
【0020】
バッテリBは、リチャージャブル・バッテリであり、以下の説明にあっては、リチウム・イオン・バッテリを用いるものとして説明する。なお、バッテリBがリチウム・イオン・バッテリであることに限られることはなく、ニッケル・水素バッテリ等、他の種類のバッテリを用いてもよいことは言うまでもない。
【0021】
充放電電流検出部1は、バッテリBから図示しない電気モータ等へ電力を供給する場合の放電電流の値を検出する。また、充放電電流検出部1は、制動時に電気モータを発電機として機能させて制動エネルギの一部を回収したり、あるいは地上の電源設備から充電したりする場合の充電電流の値を検出する。充放電電流検出部1は、たとえば、シャント抵抗等を使ってバッテリBに流れる充放電電流値iを検出する。検出した充放電電流値iは、入力信号としてパラメータ推定部3と電流積算法充電率推定部4との双方へ入力される。なお、充放電電流検出部1は、上記構成に限られず種々の構造・形式を有するものを適宜採用できる。
【0022】
端子電圧検出部2は、バッテリBの端子間の電圧の値を検出するものであり、ここで検出した端子電圧値vは、パラメータ推定部3へ入力される。なお、端子電圧検出部2は、種々の構造・形式を有するものを適宜採用できる。
【0023】
パラメータ推定部3は、充電電流検出部1及び端子電圧検出部2からそれぞれ入力される充放電電流値i及び端子電圧値vに基づいて、バッテリBの等価回路モデルにおける各パラメータを推定する。具体的には、パラメータ推定部3は、コンデンサ及び内部抵抗を備えるバッテリBの等価回路モデルを用いて、例えば最小二乗法等に基づきコンデンサの静電容量C、内部抵抗R、及び開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)OCVestを推定する。なお、バッテリBの等価回路モデルは、バッテリの内部を表す数学モデルであれば任意のものを採用することができる。
【0024】
電流積算法充電率推定部4は、電流積算法充電率(第1の充電率)SOCを推定する。具体的には、電流積算法充電率推定部4は、充放電電流検出部1から入力される充放電電流値iを積算して、状態変数としてSOCを推定する。また、電流積算法充電率推定部4は、第1の修正値算出部9から入力される第1の修正値に基づいてSOCを修正する。なお、SOCを修正する処理の詳細については後述する。
【0025】
開放電圧法充電率推定部5は、開放電圧法充電率(第2の充電率)SOCを推定する。具体的には、開放電圧法充電率推定部5は、予め実験で求めた開放電圧と充電率との関係をOCV−SOCルックアップテーブルとして記憶しておき、当該ルックアップテーブルにおいて、パラメータ推定部3から入力される推定開放電圧OCVestの値に対応する充電率をSOCとして推定する。
【0026】
第1の健全度推定部6は、電流積算法充電率推定部4で推定したSOC及び開放電圧法充電率推定部5で推定したSOCに基づいて、第1の健全度SOHを推定する。具体的には、第1の健全度推定部6は、式(1)に示すように、バッテリBの測定開始時点からの電流積算法充電率の変化量ΔSOCと開放電圧法充電率の変化量ΔSOCとの比によりSOHを推定する。
SOH=ΔSOC/ΔSOC
=(SOC−SOC)/(SOC−SOC) (1)
【0027】
ここで、SOCは、バッテリBの測定開始時における充電率である。例えば、SOCは、バッテリBの測定開始時にバッテリBの端子電圧値vを測定し、測定した端子電圧値vをOCV−SOCルックアップテーブルと照合して決定する等、任意の方法により決定することができる。
【0028】
第2の健全度推定部7は、バッテリBの内部抵抗値と健全度との関係に基づき第2の健全度SOHを推定する。具体的には、第2の健全度推定部7は、予め実験で求めたバッテリBの内部抵抗と健全度との関係をR−SOHルックアップテーブルとして記憶しておき、当該ルックアップテーブルにおいて、パラメータ推定部3で推定したバッテリBの内部抵抗値Rに対応する健全度をSOHとして推定する。
【0029】
第1の減算部8は、第2の健全度推定部7で推定したSOHから第1の健全度推定部6で推定したSOHを減算する。
【0030】
第1の修正値算出部9は、第1の減算部8から入力された健全度の差分(SOH−SOH)にカルマンゲインを乗じて第1の修正値を算出する。そして、第1の修正値算出部9は、算出した第1の修正値を電流積算法充電率推定部4に入力する。
【0031】
ここで、第1の修正値を算出する処理及びSOCを修正する処理について説明する。当該処理は、例えばカルマンフィルタを用いて行う。カルマンフィルタは、対象となるシステムのモデルを設計し、このモデルと実システムに同一の入力信号が入力された場合の両者の出力を比較する。そして、カルマンフィルタは、それらに差があれば、この差にカルマンゲインを乗算してモデルへフィードバックすることで、両者の差が最小になるようにモデルを修正する。カルマンフィルタは、これを繰り返すことで、真の内部状態量を推定する。
【0032】
なお、カルマンフィルタにあっては、観測雑音が正規性白色雑音であるとの仮定を置く。したがって、この場合、システムのパラメータが確率変数となるため、真のシステムは確率システムとなる。そこで、観測値が線形回帰モデルで記述され、逐次パラメータ推定問題は状態空間表現を用いて定式化でき、逐次状態を記録せずとも、時変パラメータを推定することができる。このようにして、対象とする動的システムの入出力データの測定値から、所定の目的のもとで、対象と同一であるということを説明できるような数学モデルが作成可能、すなわち、システム同定が可能となる。
【0033】
カルマンフィルタでは、以下のような離散システムを考える。
k+1=f(x)+b(u)+bυ (2)
=h(x,u)+ω (3)
【0034】
ここで、xは状態変数、yは観測値、uは入力を示し、kは離散時間の時刻である。また、υとωは、それぞれN(0,συ)、N(0,σω)である互いに独立なシステムノイズと観測ノイズである。
【0035】
上記システムに対して、カルマンフィルタは、以下のアルゴリズムにより状態変数xを推定する。
【数1】
【0036】
ここで、式(2),(3)において以下の式を用いる電流積算モデルを考え、カルマンフィルタによりSOCを推定する。
【数2】
【0037】
ここで、τはサンプリング周期、FCCは満充電容量(Full Charge Capacity)である。FCCの値は、設計容量DC(Design Capacity)、即ちバッテリBの新品時のFCCの公称値を用いてもよく、或いはその劣化度を考慮した値を用いてもよい。
【0038】
【0039】
次に、図2及び図3を参照して、実施の形態1に係る健全度推定装置を用いて行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0040】
図2は、実施の形態1に係る健全度推定装置から、第2の健全度推定部7と、第1の減算部8と、第1の修正値算出部9と、を取り除いた健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。図2に示す健全度推定装置の電流積算法充電率推定部4aは、第1の修正値算出部9から第1の修正値が入力されないため、電流積算法充電率SOCの値を修正することなく、充放電電流iを積算してSOCを推定する。したがって、電流積算法充電率推定部4aが推定するSOCには、図1に示す電流積算法充電率推定部4により推定されるSOCと異なり、充放電電流検出部の測定誤差等が蓄積している。なお、図2に示す健全度推定装置から出力される第1の健全度をSOHとする。
【0041】
図3(a)は、図2に示す健全度推定装置により推定されるSOHのシミュレーション結果を示す図であり、時間の経過とともに誤差が累積され、次第に増加している。図3(b)は、実施の形態1に係る健全度推定装置により推定されるSOHのシミュレーション結果を示す図であり、ノイズの影響により不安定な値となっている。図3(c)は、実施の形態1に係る健全度推定装置により推定されるSOHのシミュレーション結果を示す図であり、SOHよりも値が安定しており健全度SOHを精度良く推定できていることを示している。
【0042】
このように、本発明の実施の形態1によれば、電流積算法充電率推定部4が、電流積算法充電率SOCを推定し、開放電圧法充電率推定部5が、開放電圧法充電率SOCを推定する。また、第1の健全度推定部6が、SOC及びSOCに基づいて、即ちOCの変化量とSOCの変化量との比により第1の健全度SOHを推定する。また、第2の健全度推定部7が、パラメータ推定部3により推定されるバッテリBの内部抵抗値を用いて、バッテリBの内部抵抗値と健全度との関係に基づき第2の健全度SOHを推定する。そして、第1の修正値算出部9が、SOHとSOHとの差にカルマンゲインKを乗算して第1の修正値を算出し、電流積算法充電率推定部4が、SOCに第1の修正値を加算して修正する。このようにして、電流積算法充電率推定部4により推定されるSOCを修正することによりSOCの推定精度を向上し、SOCを用いて推定するSOHの推定精度を向上することができる。
【0043】
また、実施の形態1によれば、パラメータ推定部3が、充放電電流検出部1及び端子電圧検出部2からそれぞれ入力された充放電電流値i及び端子電圧値vを用いて、バッテリBの等価回路モデルによりバッテリの開放電圧値OCVestを推定し、開放電圧法充電率推定部5が、パラメータ推定部3が推定したOCVestを用いて、開放電圧値と充電率との関係に基づき開放電圧法充電率SOCを推定する。このように、バッテリの開放電圧値を推定し、推定した開放電圧値を用いてSOCを推定するため、SOCの推定精度を向上し、SOCを用いて推定するSOHの推定精度を向上することができる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る健全度推定装置について説明する。
【0045】
図4は、実施の形態2に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。以下、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。実施の形態2に係る健全度推定装置は、実施の形態1と比較して、第2の減算部10と、第2の修正値算出部11と、第3の減算部12と、を更に備える点が異なる。概略として、実施の形態2に係る健全度推定装置は、第2の修正値算出部11が、電流積算法充電率SOCと開放電圧法充電率SOCとの差に基づいてSOCを修正するための第2の修正値を算出し、第3の減算部12が、第2の修正値を用いてSOCを修正する。
【0046】
第2の減算部10は、開放電圧法充電率推定部5で得たSOCから、電流積算法充電率推定部4で得たSOCを減算する。ここで、電流積算法充電率推定部4が推定するSOCは、真の充電率SOCtrueに推定誤差(ノイズ)nが重畳された値になっている。また、開放電圧法充電率推定部5が推定するSOCは、真の充電率SOCtrueに推定誤差(ノイズ)nが重畳された値になっている。したがって、第2の減算部10による減算結果は、SOC−SOC=n−nとなり、推定誤差成分のみが残る。
【0047】
第2の修正値算出部11は、第2の減算部10から入力された充電率の差分(SOC−SOC=n−n)にカルマンゲインを乗じて第2の修正値を算出する。第2の修正値を算出する処理の詳細については後述する。
【0048】
第3の減算部12は、開放電圧法充電率推定部5が推定したSOCから第2の修正値を減算することでSOCを修正し、修正したSOCを第1の健全度推定部6に入力する。
【0049】
ここで、第2の修正値を算出する処理及びSOCを修正する処理について説明する。当該処理は、例えばカルマンフィルタを用いて行う。具体的には、式(2),(3)において以下の式を用いる誤差モデルを考え、カルマンフィルタによりnを推定することができる。
【0050】
【数3】
【0051】
【0052】
このように、本発明の実施の形態2によれば、第2の修正値算出部11が、開放電圧法充電率SOCを修正するための第2の修正値を、電流積算法充電率SOCと開放電圧法充電率SOCとの差に基づいて算出する。そして、第3の減算部12が、SOCから第2の修正値を減算して修正する。このようにして、開放電圧法充電率推定部5により推定されるSOCの推定精度を向上することにより、SOCを用いて推定するSOHの推定精度を更に向上することができる。
【0053】
(変形例1)
次に、本発明の実施の形態の変形例1について説明する。
【0054】
図5は、変形例1に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。以下、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。変形例1に係る健全度推定装置は、実施の形態1及び2と比較して、端子電圧検出部2が検出した端子電圧値vを開放電圧法充電率推定部5に入力する点が異なる。
【0055】
このように、本発明の実施の形態の変形例1によれば、開放電圧法充電率推定部5が、端子電圧検出部2から入力される端子電圧値vを開放電圧値OCVとみなして開放電圧法充電率SOCを推定する。このようにして、パラメータ推定部3が開放電圧値OCVestを推定する必要がなく、処理負担を低減して健全度を推定することができる。
【0056】
(変形例2)
次に、本発明の実施の形態の変形例2について説明する。
【0057】
図6は、変形例2に係る健全度推定装置の概略構成を示すブロック図である。以下、実施の形態2と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。変形例2に係る健全度推定装置は、実施の形態2と比較して、第2の修正値算出部11aが、電流積算法充電率推定部4が推定するSOCを修正するための第2の修正値としてnを算出し、第3の減算部12aが、第2の修正値を用いてSOCを修正する点が異なる。
【0058】
変形例2における第2の修正値の算出は、実施の形態2と同様の処理により行うことができる。具体的には、式(2),(3)において以下の式を用いる誤差モデルを考え、カルマンフィルタによりnを推定することができる。
【0059】
【数4】
【0060】
このように、本発明の実施の形態の変形例2によれば、第2の修正値算出部11aが、電流積算法充電率SOCを修正するための第2の修正値を、電流積算法充電率SOCと開放電圧法充電率SOCとの差に基づいて算出する。そして、第3の減算部12aが、SOCから第2の修正値を減算して修正する。このようにして、電流積算法充電率推定部4により推定されるSOCの推定精度を向上することにより、SOCを用いて推定するSOHの推定精度を更に向上することができる。
【0061】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0062】
例えば、上述の実施の形態においては、状態量の推定にカルマンフィルタを用いたが、他の適応フィルタを用いて状態量を推定するようにしてもよい。
【0063】
また、バッテリの温度を検出する温度検出部を更に備え、検出したバッテリの温度をパラメータ推定部3に入力するようにしてもよい。この場合、パラメータ推定部3は、充放電電流値iと、端子電圧値vと、バッテリ温度とに基づいてバッテリ等価回路モデルにおける各パラメータを推定する。
【符号の説明】
【0064】
B バッテリ
1 充放電電流検出部
2 端子電圧検出部
3 パラメータ推定部
4,4a 電流積算法充電率推定部(第1の充電率推定部)
5 開放電圧法充電率推定部(第2の充電率推定部)
6 第1の健全度推定部
7 第2の健全度推定部
8 第1の減算部
9 第1の修正値算出部
10,10a 第2の減算部
11,11a 第2の修正値算出部
12,12a 第3の減算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6