特許第6182026号(P6182026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182026
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】樹脂ホースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20170807BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F16L11/04
   B29D23/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-187230(P2013-187230)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-55261(P2015-55261A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】片山 和孝
(72)【発明者】
【氏名】福安 智之
(72)【発明者】
【氏名】下條 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴章
(72)【発明者】
【氏名】西山 高広
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292300(JP,A)
【文献】 特開2004−211873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0212768(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0210204(US,A1)
【文献】 実開昭63−008341(JP,U)
【文献】 特開平09−024559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00−11/26
B29D 1/00−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平部を有する樹脂ホースの製造方法であって、
扁平形状の内周面を有する金型内に溶融樹脂を入れた後に当該溶融樹脂を固化させることで、中間成形体の中間扁平部を成形する樹脂溶融成形工程と、
前記中間成形体の中間扁平部の短幅をさらに小さくするように前記中間成形体の中間扁平部に対してプレス成形を行うことにより、前記中間成形体の中間扁平部の流路断面積より小さな流路断面積を有する前記扁平部を成形するプレス成形工程と、
を備える、樹脂ホースの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂ホースは、さらに、真円の流路を有する真円部を備え
前記扁平部は、扁平の流路を有し、前記真円部における最小内径部位の流路断面積以上の流路断面積を有し、扁平流路の短幅が前記最小内径部位の内径より小さく、かつ、扁平流路の長幅が前記最小内径部位の内径より大きい、請求項1の樹脂ホースの製造方法。
【請求項3】
前記中間成形体の中間扁平部の扁平流路の短幅は、前記真円部の内径と同一または内径より大きく、
前記中間成形体の中間扁平部の扁平流路の長幅は、前記真円部の内径より大きい、
請求項2の樹脂ホースの製造方法
【請求項4】
前記プレス成形工程は、前記扁平部における扁平流路の短幅以下の直径を有するマンドレルを前記中間成形体の内部に挿入した状態で、前記中間成形体に対して前記プレス成形を行うことにより、前記扁平部を成形する、請求項2または3の樹脂ホースの製造方法
【請求項5】
前記樹脂ホースは、直管部と、前記中間扁平部の少なくとも一部を含む屈曲部と、を備え、
前記中間成形体は、直管状に成形され、
前記プレス成形工程は、直管状の前記中間成形体に対してプレス成形を行うことにより、前記樹脂ホースに前記扁平部を成形すると共に、前記中間扁平部の短幅方向の両側が屈曲外側と屈曲内側となるように前記屈曲部を成形する、
請求項4の樹脂ホースの製造方法
【請求項6】
前記樹脂ホースは、前記扁平部に対して両端側に、前記真円部における最小内径部位を備える、請求項〜5の何れか一項の樹脂ホースの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ホース製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車において、給油口から供給された燃料は、フィラーホースを通って燃料タンクに貯留される。フィラーホースはスムースに燃料を流通させることが求められる。そこで、例えば、特許文献1(特開2003−182385号公報)には、流通路の径方向断面積を縮小した部位により整流することで、スムースに燃料を流通することが記載されている。また、特許文献2(特開2010−137591号公報)には、帯状のガイド面を形成することが記載されている。
【0003】
また、非円形断面形状を有する樹脂製ホースが、特許文献3(特開2001−165383号公報)、特許文献4(特開2004−351658号公報)および特許文献5(特開平10−257634号公報)に記載されている。また、非円形断面形状を有する樹脂複合ホースが、特許文献6(特開2007−292300号公報)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−182385号公報
【特許文献2】特開2010−137591号公報
【特許文献3】特開2001−165383号公報
【特許文献4】特開2004−351658号公報
【特許文献5】特開平10−257634号公報
【特許文献6】特開2007−292300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、燃料などの液体を流通させるホースにおいて、径方向断面積が小さくなると、断面積が小さな部位を流通する流体の流量が他の部位に比べて少なくなるため、ホース全体として流通する流体の流量が少なくなる。
【0006】
また、特に自動車において、他部品の配置との関係上、円形断面形状の燃料ホースを配策することは容易ではない。そのため、配置する部位によって、燃料ホースの断面形状を例えば扁平形状などにすることが求められる。つまり、配策の自由度を確保しつつ、樹脂ホースを流通する流体の流量を十分に確保することが求められる。
【0007】
また、樹脂ホースにおいて、扁平形状に成形する場合において、例えば、円形断面形状の素材に対してプレス成形により成形する方法、溶融樹脂を成形する金型の内周面形状を予め扁平形状にしておく方法、樹脂ホースを挿入するマンドレルの形状を扁平形状にする方法などがある。しかし、これらのいずれの方法を用いたとしても、得られる扁平率には限界がある。より扁平率の高い形状を得ることで、配策の自由度が高くなる。そこで、扁平率の高い形状の樹脂ホースを得ることが求められる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、第一の課題は、配策の自由度を確保しつつ、樹脂ホースを流通する流体の流量を十分に確保することである。また、第二の課題は、扁平率の高い形状の樹脂ホースを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本手段に係る樹脂ホースの製造方法は、扁平部を有する樹脂ホースの製造方法であって、扁平形状の内周面を有する金型内に溶融樹脂を入れた後に当該溶融樹脂を固化させることで、中間成形体の中間扁平部を成形する樹脂溶融成形工程と、前記中間成形体の中間扁平部の短幅をさらに小さくするように前記中間成形体の中間扁平部に対してプレス成形を行うことにより、前記中間成形体の中間扁平部の流路断面積より小さな流路断面積を有する前記扁平部を成形するプレス成形工程とを備える。
【0012】
ここで、樹脂溶融成形工程にて、扁平形状の内周面を有する金型内に溶融樹脂を入れた後に当該溶融樹脂を固化させることを「樹脂溶融成形」という。つまり、本手段に係る製造方法は、樹脂溶融成形により中間成形体の中間扁平部を形成した後に、中間成形体の中間扁平部に対するプレス成形により最終形状としての扁平部を成形している。このように、1回の成形で扁平部を成形するのではなく、2回に分けて扁平部を成形している。これにより、扁平率の高い形状の樹脂ホースを成形できる。
【0013】
仮に、円筒形状の中間成形体に対してプレス成形を行うことにより扁平部を成形しようとすると、円筒形状の中間成形体の位置決めが容易ではなく、扁平部の位相が所望の位相からずれるおそれがある。これに対して、上記によれば、既に成形された中間成形体の中間扁平部に対してプレス成形を行うため、扁平方向が中間扁平部の短幅方向に容易に一致する。これにより、最終形状としての扁平部の位相を所望の位相に容易にできる。
【0014】
また、仮に、樹脂溶融成形のみにより短幅の小さな扁平部を成形しようとすると、金型の扁平形状の内周面を扁平部と同様に短幅の小さな形状にする必要がある。そうすると、金型に対して溶融樹脂を注入するノズルの大きさは金型の内周面の大きさに制約を受けるため、ノズルを小径にせざるを得なくなる。ノズルを小径にすると、ノズルから注入する溶融樹脂の圧力が高くなり、生産性が低下する。これに対して、上記手段における樹脂溶融成形工程では、中間成形体の中間扁平部の短幅は、最終形状としての扁平部の短幅より大きい。従って、生産性を高くすることができる。
【0015】
本手段に係る樹脂ホースの製造方法の好適な実施態様について以下に説明する。
好ましくは、前記樹脂ホースは、さらに、真円の流路を有する真円部を備え、前記扁平部は、扁平の流路を有し、前記真円部における最小内径部位の流路断面積以上の流路断面積を有し、扁平流路の短幅が前記最小内径部位の内径より小さく、かつ、扁平流路の長幅が前記最小内径部位の内径より大きくするとよい。
樹脂ホースは、扁平部を有することで、樹脂ホースの配策の自由度が高くなる。ここで、樹脂ホースが扁平部を有するとしても、扁平部における流路断面積が真円部の最小内径部位の流路断面積以上であるため、扁平部を流通する流体の流量が、最小の真円部と同等以上を確保することができる。その結果、樹脂ホース全体として流通する流体の流量が向上する。
また、好ましくは、前記中間成形体の中間扁平部の扁平流路の短幅は、前記真円部の内径と同一または内径より大きく、前記中間成形体の中間扁平部の扁平流路の長幅は、前記真円部の内径より大きい。
【0016】
これにより、樹脂溶融成形工程において、金型内に溶融樹脂を注入するノズルの大きさを十分に大きくできる。その結果、ノズルから金型内に注入される溶融樹脂の圧力を低くできる。従って、生産性を良好にすることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記プレス成形工程は、前記扁平部における扁平流路の短幅以下の直径を有するマンドレルを前記中間成形体の内部に挿入した状態で、前記中間成形体に対して前記プレス成形を行うことにより、前記扁平部を成形する。
【0018】
中間成形体の内部にマンドレルを挿入した状態でプレス成形を行うため、プレスによる変形量がマンドレルにより規制される。従って、容易に、所望形状の扁平部を成形できる。さらに、マンドレルの直径は、扁平部における扁平流路の短幅以下としている。つまり、プレス成形を行う際において、扁平部の長幅方向には隙間が形成されたままとなる。このように隙間が存在しているとしても、中間成形体の中間扁平部が予め成形されているため、所望の扁平部を成形できる。そして、マンドレルの直径を扁平部における扁平流路の短幅以下とすることで、マンドレルを中間成形体に容易に挿入できる。
【0019】
また、好ましくは、前記樹脂ホースは、直管部と、前記中間扁平部の少なくとも一部を含む屈曲部と、を備え、前記中間成形体は、直管状に成形され、前記プレス成形工程は、直管状の前記中間成形体に対してプレス成形を行うことにより、前記樹脂ホースに前記扁平部を成形すると共に、前記中間扁平部の短幅方向の両側が屈曲外側と屈曲内側となるように前記屈曲部を成形する。
プレス成形により屈曲部を成形する際に、屈曲部の少なくとも一部に予め成形された中間扁平部を含むようにしておき、短幅方向の両側が屈曲外側と屈曲内側となるようにすることで、屈曲部にしわが発生しにくくなる。
【0020】
また、好ましくは、前記樹脂ホースは、前記扁平部に対して両端側に、前記真円部における最小内径部位を備える。
扁平部の長幅は真円部の最小内径部位の内径より大きい。そのため、扁平部に対して両端側に最小内径の真円部を有する樹脂ホースは、マンドレルにより成形する場合にはマンドレルがアンダーカット形状となるため、マンドレルによる成形が困難である。しかし、当該形状の樹脂ホースであっても、上記手段を適用することにより、マンドレルの形状に依存することなく確実に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の樹脂ホース10をフィラーパイプに適用した場合の構成図である。
図2A図1の2A−2A断面図である。
図2B図1の2B−2B断面図である。
図2C図1の2C−2C断面図である。
図3】樹脂ホース10の製造方法を示すフローチャートである。
図4図3のS1の樹脂溶融成形工程を示す図である。
図5A図4の樹脂溶融成形工程により成形された中間成形体50の軸方向断面図である。
図5B図5Aに示す中間成形体50の5B−5B断面図である。
図6A図5Aに示す中間成形体50の6A−6A断面図である。
図6B図5Aに示す中間成形体50の6B−6B断面図である。
図6C図5Aに示す中間成形体50の6C−6C断面図である。
図7A図3のS4のプレス成形工程における初期状態を示す図である。
図7B図7Aにおける金型210,220によりプレス成形した状態を示す図である。
図8】第二実施形態における樹脂ホース10の製造方法を示すフローチャートである。
図9A図8のS15のプレス成形工程における初期状態を示す図である。
図9B図9Aにおける金型310,320によりプレス成形した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第一実施形態>
(1.樹脂ホース10の構成)
本実施形態の樹脂ホース10について、図1図2A図2Cを参照して説明する。樹脂ホース10は、例えば、自動車のフィラーホース(フィラーパイプともいう)として適用される。つまり、樹脂ホース10の一端には、給油キャップ20が装着され、樹脂ホース10の他端は燃料タンク30に取り付けられている。そして、給油口に給油ガン(図示せず)を挿入して、給油ガンから供給される燃料を通過させて、燃料タンク30へ流通させる。なお、図1において、ブリーザパイプなどが存在するが、図示しない。
【0025】
樹脂ホース10は、1種または複数種の樹脂層により形成される。フィラーホースに適用される樹脂ホース10を形成する樹脂材料の1つには、耐燃料油性に優れた高密度ポリエチレン(HDPE)などが好適である。
【0026】
ここで、樹脂ホース10は、給油口と燃料タンク30との間を配策されるが、その領域には自動車を構成する他部品が存在する。そのため、図1に示すように、樹脂ホース10は、他部品を回避するように、樹脂ホース10が配策される。この樹脂ホース10は、一端真円部11、屈曲部12、直管扁平部13、中央真円部14、蛇腹屈曲部15、他端真円部16を備える。ここで、真円部11,14,16および直管扁平部13は、本発明の直管部に相当する。
【0027】
樹脂ホース10の一端真円部11には、給油キャップ20が装着される。樹脂ホース10の他端真円部16は、燃料タンク30に取り付けられている。一端真円部11および中央真円部14は、図2Aおよび図2Cに示すように、真円の流路(真円の径方向断面の筒状)を有する。なお、他端真円部16は、図示しないが、同様に真円の流路を有する。
【0028】
樹脂ホース10の真円部11,14の最小内径部位の内径は、図2Aおよび図2Cに示すように、Da,Dcである。また、図示しないが、他端真円部16の最小内径部位の内径は、Dcとして説明する。ここで、最小内径部位としたのは、真円部11,16の端部が拡径される場合があるため、拡径部を含めた真円部11,14,16において最小内径部位を特定するためである。
【0029】
直管扁平部13は、図2Bに示すように、扁平の流路を有する。本実施形態において、直管扁平部13は、楕円形状に形成されているが、長円形状または長方形状などの扁平形状としてもよい。直管扁平部13の扁平流路の長幅(楕円の長径に相当)には、Db1であり、扁平流路の短幅(楕円の短径に相当)は、Db2である。直管扁平部13付近は、例えば、タイヤとボディ部材との間を通過する。つまり、隙間の狭い部位を通過させるために、樹脂ホース10の直管扁平部13は、扁平形状に形成されている。
【0030】
樹脂ホース10の屈曲部12は、非蛇腹筒状に形成され、屈曲部12における少なくとも直管扁平部13側の一部が、扁平の筒状とされる。従って、屈曲部12は、形状変形の自由度がない形状である。一方、樹脂ホース10の蛇腹屈曲部15は、蛇腹筒状に形成されている。従って、蛇腹屈曲部15は、形状変形の自由度がある形状である。
【0031】
ここで、真円部11,14,16の真円流路の最小内径部位の内径Da,Dcと、直管扁平部13の扁平流路の長幅Db1,短幅Db2との関係は、式(1)に示すとおりである。つまり、扁平流路の長幅Db1は、真円部11,14,16の最小内径部位の内径Da,Dcより大きく、扁平流路の短幅Db2は、最小内径部位の内径Da,Dcより小さい。
【0032】
[数1]
Db1 > Da = Dc > Db2 ・・・ (1)
【0033】
また、真円部11の最小内径部位の流路断面積をSaとし、直管扁平部13の扁平の流路断面積をSbとし、真円部14,16の最小内径部位の流路断面積をScとすると、式(2)の関係となる。つまり、直管扁平部13の流路断面積Sbは、真円部11,14,16の最小内径部位の流路断面積Sa,Sc以上である。
【0034】
[数2]
Sb ≧ Sa = Sc ・・・ (2)
【0035】
上記のように、樹脂ホース10は、直管扁平部13を有することで、樹脂ホース10の配策の自由度が高くなる。また、樹脂ホース10は、蛇腹屈曲部15を有することからも、樹脂ホース10の配策の自由度が高くなる。
【0036】
ここで、直管扁平部13における流路断面積Sbが真円部11,14,16の最小内径部位の流路断面積Sa,Scより大きい。そのため、直管扁平部13を流通する流体の流量が、真円部11,14,16における最小の真円部分と同等以上を確保することができる。その結果、樹脂ホース10全体として流通する流体の流量が向上する。
【0037】
(2.樹脂ホース10の製造方法)
(2.1.樹脂ホース10の製造方法全体の概要)
次に、上述した樹脂ホース10の製造方法について、図3図7Bを参照して説明する。ここで、直管扁平部13は、第一段階として樹脂溶融成形により扁平形状に形成した後に、第二段階としてプレス成形により扁平率を高めるように形成される。
【0038】
まずは、図3を参照して、樹脂ホース10の製造方法の概要について説明する。図3に示すように、作業者は、樹脂溶融成形により、直管状の中間成形体50を製造する(S1:樹脂溶融成形工程)。このとき、直管扁平部13および屈曲部12の扁平部位に相当する部位52(図5Aおよび図5Bに示す)が、第一段階として、予め扁平形状に成形される。ここで、樹脂溶融成形は、例えば、押出ブロー成形、押出成形、射出ブロー成形、射出成形などを含む。なお、樹脂ホース10の成形には、後述する押出ブロー成形が好適である。
【0039】
続いて、作業者が、中間成形体50の中に、円形の断面形状であって、柔軟性がある樹脂材料または金属スプリングなどにより成形されたマンドレル60を挿入する(S2)。つまり、マンドレル60は、屈曲自在であるが、径方向断面形状を維持するように成形されている。マンドレル60の外径は、樹脂ホース10の直管扁平部13の短幅Db2に一致する寸法とされている。なお、マンドレル60は、円形断面の他に、四角形断面などの角形断面形状としてもよい。例えば、四角形断面のマンドレル60の場合には、対向面幅が直管扁平部13の短幅Db2に一致する寸法にされる。
【0040】
続いて、中間成形体50を加熱して軟化させた後に(S3)、プレス成形により、直管扁平部13および屈曲部12を成形する(S4:プレス成形工程)。直管扁平部13は、中間成形体50の中間扁平部52(図5Aおよび図5Bに示す)の扁平率をさらに高めることにより成形される。このようにして、図1に示す樹脂ホース10が製造される。なお、蛇腹屈曲部15は、屈曲自在であるため、樹脂ホース10の単体を製造後において、例えば自動車などに取り付ける際に自由に屈曲度を調整する。
【0041】
(2.2.樹脂溶融成形工程の詳細)
次に、図3のS1における樹脂溶融成形工程の詳細について、図4図6Cを参照して説明する。本実施形態における樹脂溶融成形においては、押出機110による押出成形により円筒形状に成形すると共に、金型列121,122を用いて形状を付与する成形を行う。
【0042】
図4に示すように、溶融状態の樹脂材料が、押出機110のノズル111から円筒形状に押し出される。ノズル111の先端は、それぞれ循環可能に設けられた上側金型列121と下側金型列122の間に挿入されている。そして、ノズル111から押し出される円筒形状の溶融樹脂は、上側金型列121および下側金型列122の間に注入される。
【0043】
同時に、ノズル111の内部からガス圧が加えられる。これにより、溶融状態の樹脂材料は、金型列121,122の内周面に押し付けられることで、円筒形状の溶融樹脂は、それぞれの金型の内周面形状に応じた形状に成形される。
【0044】
そして、金型列121,122内に溶融樹脂が入れられた後に、金型列121,122内を通過することにより冷却されて、成形された溶融樹脂が固化する。このようにして、中間成形体50が成形される。
【0045】
中間成形体50は、図5A図5B図6A図6Cに示す形状である。つまり、中間成形体50は、直管状に形成されている。中間成形体50は、一端側(図5Aの左側)から、真円部51、中間扁平部52、真円部53、蛇腹部54、真円部55を備える。なお、図4に示す金型列121,122の内周面は、中間成形体50の外形に形成することができるような形状に形成されている。
【0046】
中間成形体50の真円部51,53,55は、真円の流路、すなわち真円の径方向断面形状を有する。真円部51,53,55の最小内径部位の内径は、図6Aおよび図6Cに示すように、Da,Dcである。ここで、真円部51,53,55の最小内径部位の内径Da,Dcは、図2Aおよび図2Cに示すDa,Dcに等しい。つまり、真円部51,53,55は、最終成形された樹脂ホース10の一端真円部11の一部、中央真円部14および他端真円部16そのものである。
【0047】
中間扁平部52は、図6Bに示すように、扁平の流路、すなわち扁平の径方向断面形状を有する。本実施形態において、中間成形体50の中間扁平部52は、楕円形状に形成されているが、長円形状または長方形状などの扁平形状としてもよい。中間扁平部52の流路の長幅(楕円の長径に相当)には、Db3であり、扁平流路の短幅(楕円の短径に相当)は、Db4である。
【0048】
ここで、中間成形体50において、真円部51,53,55の真円流路の内径Da,Dc(図2A図2CのDa,Dcに等しい)と、中間扁平部52の流路の長幅Db3,短幅Db4との関係は、式(3)に示すとおりである。つまり、中間成形体50の中間扁平部52の流路の長幅Db3は、真円部51,53,55の最小内径部位の内径Da,Dcより大きく、扁平流路の短幅Db4は、真円部51,53,55の最小内径部位の内径Da,Dcと同程度である。ただし、短幅Db4は、内径Da,Dcより大きくしてもよい。
【0049】
[数3]
Db3 > Da = Dc ≒ Db4 ・・・ (3)
【0050】
また、中間成形体50の中間扁平部52における長幅Db3および短幅Db4と、最終成形された樹脂ホース10の直管扁平部13における長幅Db1および短幅Db2との関係は、式(4)に示すとおりである。つまり、中間成形体50の中間扁平部52の扁平率は、最終成形された樹脂ホース10の直管扁平部13の扁平率より小さい。
【0051】
[数4]
Db1 > Db3 > Db4 > Db2 ・・・ (4)
【0052】
中間成形体50において、真円部51の最小内径部位の流路断面積をSa2とし、中間扁平部52の流路断面積をSb2とし、真円部53,55の最小内径部位の流路断面積をSc2とすると、式(3)の関係より、式(5)の関係が導き出される。つまり、中間扁平部52の流路断面積Sb2は、真円部51,53,55の最小内径部位の流路断面積Sa2,Sc2より大きな断面積を有する。
【0053】
[数5]
Sb2 > Sa2 = Sc2 ・・・ (5)
【0054】
さらに、式(6)に示すように、中間成形体50の中間扁平部52の流路断面積Sb2は、最終成形された樹脂ホース10の直管扁平部13の流路断面積Sbより大きくされている。
【0055】
[数6]
Sb2 > Sb ・・・ (6)
【0056】
(2.3.プレス成形工程の詳細)
次に、図3のS4におけるプレス成形工程の詳細について、図7Aおよび図7Bを参照して説明する。プレス成形工程は、中間成形体50における真円部51の一部分および中間扁平部52の一部分に対して曲げ成形することにより、樹脂ホース10における屈曲部12を成形する。
【0057】
さらに、プレス成形工程は、中間成形体50の中間扁平部52の扁平率を高めることにより、樹脂ホース10の直管扁平部13を成形する。つまり、中間成形体50の中間扁平部52の短幅Db4をさらに小さくし、かつ、長幅Db3を大きくされることにより、樹脂ホース10の直管扁平部13が成形される。
【0058】
具体的には、プレス成形工程は、金型210,220を用いる。金型210,220により形成されるキャビティは、図7Aに示すように、屈曲成形部211,221と、扁平成形部212,222とを備える。金型210,220の中に、マンドレル60が挿入された状態の中間成形体50を配置する。このとき、一方の金型220の扁平成形部222の位置に中間成形体50の中間扁平部52が位置するように、中間成形体50を配置する。つまり、中間扁平部52は扁平状であるため、金型220の扁平成形部222に配置する際に、位相の位置決めが容易にできる。
【0059】
そして、図7Bに示すように、金型210,220を移動させて、中間成形体50に対してプレス成形を行い、最終形状としての樹脂ホース10が成形される。そうすると、金型210,220の屈曲成形部211,221が、樹脂ホース10の屈曲部12を成形する。また、金型210,220の扁平成形部212,222が、樹脂ホース10の直管扁平部13を成形する。
【0060】
(3.まとめ)
樹脂ホース10の直管扁平部13の流路断面積Sbは、真円部11,14,16の最小の流路断面積Sa,Sc以上である。従って、直管扁平部13を流通する流体の流量が、真円部11,14,16の最小部位と同等以上を確保できる。その結果、樹脂ホース10全体として流通する流体の流量を確保できる。
【0061】
ここで、仮に、中間成形体50において、中間扁平部52が扁平形状ではなく、真円部11,14,16の最小内径部位と同径の真円形状とする。この真円形状部分に対してプレス成形を行うことにより、扁平部分を成形しようとすると、当該扁平部分の流路断面積は、真円部分の流路断面積より必ず小さくなる。つまり、プレス成形前の形状を真円部と同径の真円形状としたのでは、目的の流路断面積を有する扁平部分を得ることはできない。
【0062】
そこで、本実施形態では、上述したように、樹脂溶融成形にて、真円部51,53,55より流路断面積の大きな中間扁平部52を成形し、中間扁平部52に対するプレス成形により、最終形状としての所望の直管扁平部13を成形している。このように、樹脂溶融成形工程とプレス成形工程とを複合させることにより、所望の直管扁平部13を得ることができる。そして、1回の成形で直管扁平部13を成形するのではなく、2回に分けて直管扁平部13を成形しているため、扁平率の高い形状の樹脂ホース10を成形できる。
【0063】
また、仮に、円筒形状の中間成形体50に対してプレス成形を行うことにより直管扁平部13を成形しようとすると、円筒形状の中間成形体50の位置決めが容易ではなく、直管扁平部13の位相が所望の位相からずれるおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、既に成形された中間成形体50の中間扁平部52に対してプレス成形を行うため、扁平方向が中間扁平部52の短幅方向に容易に一致する。つまり、最終形状としての直管扁平部13の位相を所望の位相に容易にできる。
【0064】
また、仮に、樹脂溶融成形のみにより短幅の小さな直管扁平部13を成形しようとすると、金型列121,122の扁平形状の内周面を直管扁平部13と同様に短幅の小さな形状にする必要がある。そうすると、金型列121,122に対して溶融樹脂を注入するノズル111の大きさは金型列121,122の内周面の大きさに制約を受けるため、ノズル111を小径にせざるを得なくなる。ノズル111を小径にすると、ノズル111から注入する溶融樹脂の圧力が高くなり、生産性が低下する。これに対して、本実施形態における樹脂溶融成形工程では、中間成形体50の中間扁平部52の短幅は、最終形状としての直管扁平部13の短幅より大きい。従って、生産性を高くすることができる。
【0065】
特に、本実施形態においては、中間扁平部52の扁平流路の短幅Db4は、真円部11,14,16の内径Da,Dcと同一または当該内径Da,Dcより大きく、かつ、中間扁平部52の扁平流路の長幅Db3は、真円部11,14,16の内径Da,Dcより大きくしている。
【0066】
これにより、樹脂溶融成形工程において、金型列121,122内に溶融樹脂を注入するノズル111の大きさを十分に大きくできる。その結果、ノズル111から金型列121,122内に注入される溶融樹脂の圧力を十分に低くできる。従って、生産性を良好にすることができる。
【0067】
また、プレス成形工程では、直管扁平部13における扁平流路の短幅Db2以下の直径を有するマンドレル60を中間成形体50の内部に挿入した状態で、中間成形体50の中間扁平部52に対してプレス成形を行うことにより、直管扁平部13を成形している。このように、中間成形体50の内部にマンドレル60を挿入した状態でプレス成形を行うため、プレスによる変形量がマンドレル60により規制される。
【0068】
具体的には、円形断面のマンドレル60の場合には、中間扁平部52の短幅Db4がマンドレル60の外径に到達すると、中間扁平部52はそれ以上変形しない。従って、容易に、所望形状の直管扁平部13を成形できる。さらに、マンドレル60の直径は、直管扁平部13における扁平流路の短幅Db2以下としている。
【0069】
つまり、プレス成形を行う際において、直管扁平部13の長幅Db1方向には隙間が形成されたままとなる。このように隙間が存在しているとしても、中間成形体50の中間扁平部52が予め成形されているため、所望の直管扁平部13を成形できる。そして、マンドレル60の直径を直管扁平部13における扁平流路の短幅Db2以下とすることで、マンドレル60を中間成形体50に容易に挿入できる。
【0070】
また、樹脂ホース10は、屈曲部12に連続して直管扁平部13を有している。そして、樹脂ホース10の屈曲部12は、中間扁平部52の少なくとも一部を含むようにしている。そして、屈曲部12の屈曲外側と屈曲内側は、中間扁平部52の短幅方向の両側となるようにされている。そうすると、プレス成形により屈曲部12を成形する際において、屈曲部12の少なくとも一部に予め成形された中間扁平部52を含むようにしておき、短幅方向の両側が屈曲外側と屈曲内側となるようにすることで、屈曲部12にしわが発生しにくくなる。
【0071】
また、樹脂ホース10は、直管扁平部13に対して一端側には、最小内径部位を含む一端真円部11を備え、他端側には中央真円部14および他端真円部16を備える。つまり、直管扁平部13の長幅Db1は真円部11,14,16の最小内径部位の内径Da,Dcより大きい。そのため、直管扁平部13に対して両端側に最小内径の真円部11,14,16を有する樹脂ホース10は、マンドレルのみにより成形する場合にはマンドレルがアンダーカット形状となるため、マンドレルによる成形が困難である。しかし、このような形状の樹脂ホース10であっても、本実施形態による製造方法を適用することにより、マンドレル60の形状に依存することなく確実に成形できる。
【0072】
<第二実施形態>
本実施形態の樹脂ホース10の製造方法について、図8図9A図9Bを参照して説明する。以下の説明において、上記実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態の樹脂ホース10の製造方法は、図8に示すように、作業者は、樹脂溶融成形により、直管状の中間成形体50を製造する(S11:樹脂溶融成形工程)。続いて、公知のベンダー(図示せず)などにより、中間成形体50の真円部51の一部および中間扁平部52の一部を屈曲させて、樹脂ホース10の屈曲部12(図1に示す)を成形する。ただし、屈曲部12を成形する前には、中間成形体50を加熱して軟化させておく。以下、中間成形体50に屈曲部12が成形されたものを第二中間成形体350(図9Aに示す)と称する。
【0074】
続いて、図9Aに示すように、第二中間成形体350の中に、円形の断面形状であって、柔軟性がある樹脂材料または金属スプリングなどにより成形されたマンドレル60を挿入する(S13)。続いて、第二中間成形体350を加熱して軟化させた後に(S14)、プレス成形により、直管扁平部13を成形する(S15:プレス成形工程)。
【0075】
プレス成形工程において、図9Aおよび図9Bに示すように、金型310,320が用いられる。金型310,320に形成されるキャビティは、直管扁平部13に対応する扁平成形部311,321を備える。
【0076】
ここで、中間扁平部52の短幅方向に金型310,320が位置するように、金型310,320に第二中間成形体350が配置される。仮に、第二中間成形体350のうち金型310,320に配置する部位が円筒形状であるとすると、金型310,320に対する第二中間成形体350の位相の位置決めが容易ではない。しかし、第二中間成形体350には、既に中間扁平部52が成形されており、中間扁平部52の短幅方向に金型310,320が位置するようにするため、金型310,320に第二中間成形体350を容易にかつ安定して配置することができる。従って、所望の形状の樹脂ホース10を成形できる。
【0077】
なお、上記実施形態においては、樹脂ホース10を自動車のフィラーホースに適用する例を説明したが、これに限られず、流体を流通させる樹脂ホースであれば用途を問わず適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10:樹脂ホース、 11,14,16:真円部、 12:屈曲部、 13:直管扁平部、 50:中間成形体、 51,53,55:真円部、 52:中間扁平部、 60:マンドレル、 110:押出機、 111:ノズル、 121,122:樹脂溶融成形に用いる金型列、 210,220:プレス成形に用いる金型、 211,221:屈曲成形部、 212,222:扁平成形部、 310,320:プレス成形に用いる金型、 311,321:扁平成形部、 350:第二中間成形体、 Da,Dc:真円部11,14,16,51,53,55の内径、 Db1:直管扁平部13の長幅、 Db2:直管扁平部13の短幅、 Db3:中間成形体50の長幅、 Db4:中間成形体50の短幅、 Sa,Sc:真円部11,14,16の流路断面積、 Sa2,Sc2:真円部51,53,55の流路断面積、 Sb:直管扁平部13の流路断面積、 Sb2:中間扁平部52の流路断面積
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B