(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体材料層(17)または、前記誘電体材料層(17)の少なくとも第1副層は、アノード(11)とカソード(8)との間で前記上部III族窒化物層(5)の表面を覆っている請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ダイオードに逆バイアスが印加された場合、高い漏れ電流の問題があり、その結果、高い電力損失が生ずる。米国公開第2011/0133251号は、GaN層とAlGaN層のスタックを備えたAlGaN/GaNベースのショットキーダイオード構造を開示し、金属アノードがAlGaN層の上に設けられショットキーコンタクトを形成し、金属カソードがAlGaN層に設けられオーミックコンタクトを形成する。フィールド(field)誘電体層がアノードとカソードを電気的に分離する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記不具合から悩まされない構造を提供することを目的とする。この目的は、添付の請求項に開示したデバイスおよび方法によって達成される。最初に、本発明は、下記構成を備えたショットキーダイオードデバイスに関する。
・少なくとも下部III族窒化物層および上部III族窒化物層。両者間にヘテロ接合を形成し、2DEG層が2つの層のうちの下部層に形成される。
・上部III族窒化物層とともにオーミックコンタクトを形成するカソード。
・上部III族窒化物層とともにショットキーバリアコンタクトを形成する第1部分および、誘電体材料からなる層によって上部III族窒化物層から分離した第2部分を含むアノード。第2部分は、アノードとカソードの間に設置される。誘電体材料は、2DEG層をダイオードの逆バイアス領域でピンチオフ(pinch off)にするように構成される。前記第1および第2部分は、直接に隣接している。
・アノードおよびカソードを互いに分離するパッシベーションエリア。
【0005】
本発明に係るデバイスにおいて、第2アノード部分を上部III族窒化物層から分離する前記誘電体材料層は、2〜30nmの厚さを有してもよい。
【0006】
ある実施形態によれば、下部III族窒化物層はGaN層であり、上部III族窒化物層はAlGaN層である。
【0007】
前記誘電体材料層は、誘電体層のスタックでもよい。前記誘電体材料層または、前記誘電体材料層の少なくとも第1副層は、アノードとカソードとの間で前記上部III族窒化物層の表面を覆ってもよい。
【0008】
ある実施形態によれば、本発明のデバイスは、上部III族窒化物層の上にこれと接触したパッシベーション層を備える。前記パッシベーション層は、アノードとカソードとの間で前記上部III族窒化物層の表面を覆う。前記誘電体材料層は、前記パッシベーション層の第1部分と、およびパッシベーション層の前記第1部分の上にこれと接触した高誘電率(high-K)誘電体層とからなる。前記パッシベーション層は、シリコン窒化物(Si
3N
4)から成り、またはこれを含んでもよく、前記高誘電率(high-K)誘電体層は、Al
2O
3から成り、またはこれを含んでもよい。
【0009】
前記アノードは、少なくとも1つのフィールドプレート終端(termination)をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明はまた、本発明に従ってショットキーダイオードを製造する方法に関するものであり、下記ステップを含む。
・少なくとも下部III族窒化物層および上部III族窒化物層のスタックを備え、両者間にヘテロ接合を形成している基板を用意または製作するステップ。
・誘電体層または誘電体層スタックを前記上部III族窒化物層の表面に製作するステップ。
・パッシベーション層を前記誘電体層(スタック)の上に製作するステップ。
・前記パッシベーション層に第1開口をエッチング形成し、前記誘電体層(スタック)の上で停止するステップ。
・任意であるが、1つ又はそれ以上の追加の誘電体層を、前記パッシベーション層の上および前記第1開口内にコンフォーマルに(conformally)堆積し、前記1つ又はそれ以上の追加の誘電体層が前記第1開口の底部および側壁を内張りするステップ。
・前記第1開口の境界内に、前記誘電体層(スタック)および任意の追加の誘電体層を貫通する第2開口をエッチング形成し、上部III族窒化物層の表面で停止し、前記第2開口が第1開口の片側に、第1開口の反対側と比べてより接近するように配置するステップ。
・前記第1および第2開口を金属で充填するステップ。
・前記金属をパターン化して、ダイオードのアノードを形成し、前記誘電体層(スタック)の一部および任意の追加の誘電体層が、アノードの第2部分と上部III族窒化物層の表面との間に前記誘電体材料層を形成するステップ。
・前記ヘテロ接合と電気的に接触したカソードを製作するステップ。
【0011】
本発明の方法のある実施形態によれば、誘電体層または誘電体層スタックを堆積する前記ステップは、第1単一誘電体層を堆積することであり、第1単一誘電体層は、ここではパッシベーション層の一部とも称しており、該方法は、第2単一誘電体層を、パッシベーション層の一部の上および第1開口内にコンフォーマルに堆積するステップを含む。
【0012】
ある実施形態によれば、前記第1単一誘電体層は、窒化シリコンからなる層またはこれを含む層であり、第2単一誘電体層は、Al
2O
3からなる層またはこれを含む層である。
【0013】
本発明の方法のステップは、前記基板上にHEMTデバイスを形成するステップと統合してもよく、前記誘電体層または前記誘電体層スタックの一部(任意には、1つ又はそれ以上の追加の誘電体層をさらに含む)がHEMTデバイスのゲート誘電体として使用され、前記金属層の一部がHEMTデバイスのゲート金属として使用される。
【0014】
本発明はまた、本発明に係るショットキーダイオードおよびHEMTデバイスを備えた半導体デバイスに関するものであり、
・アノードの第2部分と上部III族窒化物層との間にある誘電体材料層、および
・HEMTのゲート誘電体、
が厚さおよび組成に関して互いに同一である。
【0015】
異なる実施形態によれば、アノードの第2部分と上部III族窒化物層との間にある誘電体材料層およびHEMTのゲート誘電体の両方が、第1の単一誘電体層と、前記第1の単一誘電体層の上にこれと接触する第2の単一誘電体層とからなる。前記第1の単一誘電体層は、窒化シリコン(Si
3N
4)から成り、またはこれを含み、前記第2の単一誘電体層は、高誘電率(high-K)材料、特にAl
2O
3から成り、またはこれを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
評価基準として、以下、
図1aと
図1bに基づいて標準のショットキーバリアダイオードの動作を要約する。
図1aは、ダイオードを製造するのに適したAlGaN/GaN構造を示すものであり、下記の構成を備える。
・基板1。これは、エピタキシャル層が成長するキャリアである。それは、例えば、シリコンまたは炭化ケイ素でもよい。
・核形成(nucleation)層2。基板1とバッファ層3との間の不整合を軽減する。
・バッファ層3。好ましくは、この層は、異なるアルミニウム含量(x)を持つ複数のAl
1−xGa
xN層で構成される。それは、デバイスのバッファ絶縁破壊(breakdown)を改善し、基板1とGaN層4との間の不整合を最小化し、AlGaN/GaN界面での2DEGの閉じ込めを改善する。
・GaNチャネル層4。これは、ノンドープGaNの堆積によって実現される。この層において、デバイスの伝導用のチャネルが形成される。
・AlGaNバリア層5。
・2DEG(2次元電子ガス)6。この層は、GaNチャネル層4の上部におけるAlGaNバリア層5の成長の結果である。それは、AlGaN/GaN界面に閉じ込められた高密度の電子のガスである。デバイスが電流を伝導する場合、キャリアはこのチャネル層を通って流れる。
・パッシベーションエリア7。これは、デバイス表面に堆積した誘電体層のうちの1つまたはスタックでもよい。それは、その上部にある層との界面を改善し、不純物の活動および外部環境要因がデバイスにダメージを与えるのを防止する。
・カソード8。これは、好ましくは、AlGaNバリア層5との低抵抗オーミックコンタクトを形成するために選択された異なる金属のスタックである。
・アノード9。これは、AlGaN層5とのショットキーコンタクトを形成する金属電極である。
【0018】
図1bは、ショットキーバリア領域の詳細を示す。デバイス動作を
図2に示すI−V特性に基づいて説明する。充分に高い正電圧の領域20においてデバイスは順方向モードで動作する。これらの条件下では、ダイオードは電流を伝導し、即ち、電子が2DEGによって形成されるチャネルを通じてアノードからカソードに自由に流れる。2DEGでの高いキャリア移動度のため、特性は、理想デバイスでの理論的I−V特性の垂直部分に接近している。即ち、大きな電流がダイオードにおいて低い電圧降下で輸送可能である。順方向伝導モードがターンオン電圧V
Fの上方で生じ、これは、アノード−AlGaNショットキーコンタクト10のポテンシャルバリアの高さに依存する。
【0019】
閾値電圧V
THは、2DEG層がアノード下の領域で空乏になる電圧である。
図2に示したケースでは、V
TH<0である。こうした場合、デバイスは、一般に「ノーマリーオン」と称され、即ち、V
ACがゼロである場合、2DEGが存在し、電圧がチャネルでのショットキーバリアの電子による横断を促進するほどに充分に高くなるとすぐと、電流が流れることできる。
【0020】
逆バイアスモード、即ち、0より低い電圧では、理想的な特性100に可能な限り接近すべきである。実際のデバイスでは、負電圧が増加するほど(絶対値)、漏れ電流が現れる。即ち、特性の第1領域21において、ショットキーコンタクトエリア下の2DEGは完全には空乏にならず、たとえショットキーバリアが完全に逆バイアス状態であっても、小さな漏れ電流が現れ、これは主として、例えば、トンネル効果に起因して、バリアを横断する電子によって引き起こされる。
【0021】
閾値電圧V
THでは、2DEGは完全には空乏になるが、ショットキー領域のエッジで、
図1bで示すエリア25において電子が未だアノードへ漏れている。負電圧V
ACが絶対値で増加すると、この漏れ電流は直線的に増加し(
図2中の領域22)、その結果、電力損失が生ずる。電圧V
BDでは、デバイスは、最終的に逆方向ブレークダウンになる。
【0022】
V
TH>0(「ノーマリーオフ」デバイス)である場合、V
ACがゼロに等しいとき2DEGは空乏になり、V
ACがV
THおよびショットキー接合のポテンシャルバリアの高さの両方を超えない限り、電流は流れない。この場合、ターンオン電圧は、これら2つのパラメータ(V
THおよびショットキーバリアポテンシャル)のより大きい方によって決定される。V
THより低く、逆バイアスモード(V
AC<0)において、ノーマリーオン・デバイスの場合のように、ノーマリーオフ・デバイスは、直線的に増加する漏れ電流によって悩まされる。
【0023】
米国公開第2011/0133251号に記載されたデバイスは、漏れ電流の観点で改善を提供しているが、未だ数多くの不具合に悩まされている。このデバイスでのショットキーコンタクトエリアに関して横方向に、そして前記エリアとカソードとの間に、アノードは、絶縁層によってAlGaN層から分離された部分を備える。ショットキーコンタクトエリアと絶縁層との間に、更なるフィールド誘電体領域が存在する。このデバイスが逆方向ブレークダウンになると、カソードが絶縁材料のピンチ電圧に到達したとき、絶縁層は、空乏領域において2DEGをピンチオフ(pinch off)にするように機能する。これは、漏れ電流を効率的に減少させる。この構造の不具合は、ショットキーコンタクトと絶縁層との間の距離の幅に広がる必要があるアノードの大きなサイズにあり、前記距離は、ショットキーコンタクトと絶縁層との間にあるフィールド誘電体も含んでいる。 従って、このフィールド誘電体の存在は、順方向バイアスモードの抵抗、そしてデバイスの固有キャパシタンスを増加させる。
【0024】
図3aは、本発明のある実施形態に係るデバイスを示す。同じ参照番号1〜8を示しており、標準デバイスについて上述したものと同じ構成要素を参照している。本発明の特徴として、アノード11の形状は、アノードが、AlGaN層5と直接接触している第1部分15と、アノードとカソードとの間に位置決めされた誘電体材料の薄い層17によってAlGaN層5から分離した第2部分16とを含むようにしている。第2部分16は、カソードの方向に沿ったアノードの延長部(elongation)であり、誘電体層17によって下地のIII族窒化物層から分離している。
図3bは、
図3aの構造の詳細を示しており、2つの領域A,Bを示している。
・領域Aは、アノードの第1部分15とAlGaNバリア層5との間にあるコンタクト領域である。ショットキーダイオードが順方向バイアスモードにある場合、このエリアを通じて電流がアノードからカソードへ流れる。このコンタクトの表面積は、デバイスの中を通過する電流の総量を決定する要因の1つである。
・領域Bは、誘電体層17とAlGaN層5との間にあるコンタクト領域である。それは、アノードの延長部分16の下に位置決めされ、アノード−カソード間領域の上に延びている。アノードのこの部分16は、AlGaNバリア層5と接しておらず、薄い誘電体層17によって分離している。
【0025】
本発明の構造において、部分15,16(および領域A,Bも)は、直接隣接しており、換言すると、これらは上部III族窒化物層5の表面にある他の領域によって分離していない。この設計は、アノードサイズ、そして順方向バイアスモードの抵抗、および固有キャパシタンスの最小化を確保している。同時に、この設計は、薄い誘電体層17の下にある領域において逆方向バイアスモードでのピンチオフ効果を確保しており、その結果、漏れ電流が減少する。
【0026】
本発明に係るダイオード構造の特定の実施形態を
図3cに示す。この実施形態によれば、薄い誘電体層17は、2つの誘電体層27,28のスタックによって形成される。前記2つの層のうちの下部層27は、延長部分16の下方のエリアに存在するだけでなく、カソード8に至るまでバリア層5の表面を覆っている。上部誘電体層28はさらに垂直部分28’および水平部分28”を有する。パッシベーション層7’が第1誘電体層27と上部水平部分28”との間に存在する。こうして延長部分16から外側に延びる層27の一部は、部分28’,28”,7’とともに、
図3aの実施形態のパッシベーションエリア7を形成する。この特定の実施形態(
図3c)は、本明細書でさらに説明するように、HEMTトランジスタの製造との統合が容易である点で有用である。下部誘電体層27は、バリア層5の堆積後にその場(in-situ)で堆積したパッシベーション層、例えば、窒化シリコン層などでもよい。上部誘電体層は、高誘電率(high-K)誘電体、例えば、酸化アルミニウム層などでもよい。誘電体層17が層27,28の2層または、複数の副層からなる多層である何れの実施形態も本発明の範囲内であり、例えば、層28がカソード8に向かって水平に続いていてもよい(垂直部分および上部水平部分28’/28”に沿う代わりに)。
【0027】
本発明に係るダイオードのV
TH<0(「ノーマリーオン」デバイス」の場合のI−V特性を
図4に示している。先行技術デバイスのように、ターンオン電圧V
Fは、ショットキーコンタクトバリアポテンシャルと一致する。閾値電圧を参照すると、ショットキーコンタクト(領域A)に関連した閾値電圧V
THA<0と、延長領域Bに関連した閾値電圧V
THB<0とを区別することができる。デバイスに加わる電圧が負(逆方向ブロッキングモード)であるが、充分には負でなく2つの閾値電圧のうちの1つより低い場合、 チャネルは完全に空乏になっておらず、2DEGからのキャリアがアノードに引き寄せられ、デバイスの漏れ電流は、逆極性のショットキーバリア高さによって定められる。V
ACがV
THBより低い場合、領域Bの下方にあるチャネルエリアは完全に空乏になり、即ち、チャネルエリアはピンチオフになる。このことは、エッジエリア26とアノードとの間の距離が延長部分16の存在によって増加するにつれて、漏れ電流がほとんど現れなくなることを確保している。この動作領域では、アノード延長の効果によって漏れ電流は最小化される。V
THB<V
THA<0の場合、V
THB<V
AC<V
THAのとき、小さな漏れ電流が未だに現れることがある。ゲート漏れを阻止する実際の効果は、V
AC<V
THBのときにのみ現れることになる。
【0028】
本発明に係るダイオードの逆バイアス領域は、電圧(アノードとカソードの間)の範囲として定義され、前記範囲は、V
BD(逆方向ブレークダウン)と、アノードが上部III族窒化物層(図中の層5)と直接接触している領域Aの閾値電圧V
THAとの間になる。本発明のダイオードでは、逆バイアス領域において(即ち、その少なくとも一部において)、領域Bにおける2DEGの空乏によって2DEGはピンチオフになる。V
THAとV
THBとの差は、好ましくは、逆バイアス領域のかなりの部分(例えば、少なくとも50%)において2DEGがピンチオフになるようにする。
【0029】
前記かなりの部分は、可能な限り大きいことが好ましく、主として薄い誘電体層17の厚さおよび材料に依存する。好ましい実施形態によれば、前記かなりの部分は、逆バイアス領域の少なくとも90%であり、より好ましくは少なくとも95%である。好ましい実施形態によれば、誘電体材料層17は可能な限り薄く、このことは下記を意味する。
・それは、アノードと上部III族窒化物層の完全な分離を確保するのに充分に厚くする必要があり、その結果、ショットキーコンタクトが領域B(即ち、アノードの延長部分16と上部III族窒化物層5との間の領域)に存在しない。
・それは、閾値電圧V
THBが、領域Aにおけるショットキーコンタクトの閾値電圧V
THAに可能な限り接近するように充分に薄くする必要がある。
【0030】
図3a〜
図3cは、本発明に係るデバイスの概略的な表現を示している。基本概念は、アノードがカソードに面する側で、アノード電極が上方延長部分および下方にある薄い誘電体層17で終端する必要がある。デバイスの最終形状は、
図5aと
図5bに示すように、円形または多指形状にできる。符号8,11は、それぞれカソードとアノードを示し、符号16は、アノード構造の延長部分の場所を示す。
【0031】
誘電体材料層17の厚さ(または層27,28の組合せ厚さ)は、パッシベーション層7の厚さと比べて小さい。好ましくは、層17は、2nm〜30nmの厚さである。これによりアノードの延長部分16は、当該技術で知られているアノードの横方向エクステンションである、アノードのいわゆるフィールドプレート終端(termination)とは区別される。こうしたフィールドプレートは、カソード電極に面するアノードのエッジでの電界ピークを低下させるように構成され、これによりデバイスの絶縁破壊(breakdown)を改善する。
【0032】
こうしたエクステンションは、ショットキーバリアコンタクト界面10からかなり大きな距離に付与される。換言すると、フィールドプレート終端とショットキーバリア界面との間にある誘電体層の厚さは、本発明のデバイスでの誘電体層17の厚さより著しく大きい。従って、逆バイアス領域の範囲内にある電圧V
ACでは2DEGの著しいピンチオフが生じないため、フィールドプレートは延長部分16を置換できない。換言すると、2DEGのピンチオフが、逆方向ブレークダウン電圧V
BDとほぼ等しいか、これより高い(絶対値で)負の電圧で得られるだけである。本発明の実施形態によれば、
図6に示すように、アノードには、当該技術で知られているような少なくとも1つのフィールドプレート30が追加的に設置される。
【0033】
本発明に係るダイオードが、ベース基板、好ましくはシリコン基板の上に設けられたIII族窒化物層のスタック(例えば、GaN/AlGaN)上での堆積およびパターニングを含む任意の適切なプロセスによって製造できる。好ましい実施形態については以下に説明しており、これによりHEMTデバイスと共に統合したプロセスにおいてダイオードが製造される。1つ又はそれ以上の誘電体層を基板上に堆積し、前記層を1つのパターニングステップでパターン化することによって、誘電体17およびHEMTのゲート誘電体を同時に形成することによって、誘電体層または層スタック17が製造可能である場合、本発明のダイオードにおけるアノード11の構造は、こうした統合化プロセスに適しておいる。
【0034】
本発明に係るダイオードおよびHEMTトランジスタを備えた半導体デバイスを形成するためのこうした統合化プロセスのステップを
図7a〜
図7gに示している。
図7aに示すように、シリコン基板(不図示)の上に、
図1と
図3に示したものと同様にエピタキシャル成長によって層スタックが設けられ、少なくともAlGaNバッファ層3と、GaNチャネル層4と、AlGaNバリア層5とを備える。これらの層は、例えば、有機金属化学気相成長法(MOCVD)または分子線エピタキシャル成長法(MBE)によって成長してもよい。そして、パッシベーション層27がAlGaNバリア層5の上にその場(in-situ)堆積によって堆積される。「その場(in-situ)」とは、パッシベーション層が層3,4,5と同じプロセスチャンバ内で、同じまたは等価のプロセス(例えば、MOCVDまたはMBE)によって堆積されることを意味する。パッシベーション層27は、好ましくは、窒化シリコン(Si
3Ni
4、以下「SiN」と称する)を含み、またはこれからなる。これに、第2パッシベーション層36の堆積が続き、450℃より高い温度で、例えば、LPCVD(低圧化学気相成長)によって堆積される。第2パッシベーション層も、窒化シリコンからなり、またはこれを含んでもよい。
【0035】
パターニングステップ(標準のリソグラフィを用いて)が行われ、第2パッシベーション層をパターン化して、前記層に開口40,41を形成する(
図7b)。これは、前記開口をエッチングし、第1パッシベーション層27の表面で停止することによって行われる。そして、誘電体層28がコンフォーマルに、即ち、開口40,41によって規定された立体形状の輪郭に追従して堆積される(
図7c)。これは、LPCVD SiN層36の上部ならびに開口40,41の側壁および底部にある、例えば10nmのAl
2O
3層でもよい。その場(in-situ)堆積したパッシベーション層27および誘電体層28は共に、HEMTデバイスのゲート誘電体として機能することになり、ショットキーダイオードの場所では、これら同じ層は、
図3cの実施形態に示すように、誘電体層17として機能することになる。誘電体層28は、Al
2O
3を含み、またはこれからなる層でもよく、約400℃の温度で、例えば、ALD(原子層堆積)によって堆積される。
【0036】
第2パターニングステップが行われ、第1開口40の境界内に第2開口を形成する。第2開口43は、パッシベーション層27および誘電体層28のスタックを貫通するエッチングを行って、バリア層5の表面で停止することによって形成される(
図7d)。第2開口43は、前記第1開口の反対エッジよりも、第1開口40の一方のエッジにより接近して配置される。そして(
図7e)、金属堆積ステップが行われ、開口43,40,41を金属44で充填し、基板の上部に平坦な金属表面を形成する。金属は、HEMTのゲート金属およびダイオードのショットキーバリア金属として機能するようになる。この金属層44は、さらにパターン化され(
図7f)、HEMTデバイスのゲート50および本発明に係るショットキーダイオードのアノード11を形成する。より大きい開口40の内側に開口43の横方向位置があるため、アノードは、上述した実施形態のような形状になり、ショットキーコンタクト部分15および延長部分16を有し、誘電体層17は延長部分の下にある。ここで、誘電体層17は、その場(in-situ)堆積したパッシベーション層27およびコンフォーマルに堆積した誘電体層28のスタック、即ち、好ましい実施形態によれば、SiN/Al
2O
3のスタックからなる。そして、HEMTデバイスのソースコンタクト52およびドレインコンタクト53が、適切な追加のパターニングおよび堆積ステップによって形成される(
図7g)。HEMTトランジスタのソース52は、ショットキーダイオードのカソード8として機能する。この構造により、
図8に示した回路を製造することが可能になり、HEMTおよびショットキーダイオードは、スイッチSおよびダイオードDとして示している。
【0037】
HEMTデバイスへの全ての言及を除外している場合、上記方法の説明は、HEMTを同時に製造することなく、
図3cに示したようなショットキーダイオードを製造する方法も開示している。
図7の実施形態の変形が当業者によって想定できる。例えば、コンフォーマル層28を堆積するステップは、任意のものとみなしても構わない(層27を異なる材料および厚さに製造するのが好ましい場合であるが)。この任意のステップを行わない場合、ショットキーダイオードの誘電体17は、単一誘電体層27で形成する。後者の実施形態では、単一誘電体層27の代わりに層スタックを堆積してもよい。
【0038】
本発明は図面および上記説明において詳細に図示し説明したが、こうした図示および説明は例示的であって非限定的なものと考える。開示した実施形態の他の変形は、請求項の発明を実施する際に、図面、本開示および添付した請求項の検討から当業者によって理解して実施可能である。請求項において、用語「備える、含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外しておらず、不定冠詞"a", "an"は、複数のものを除外していない。ある手段が互いに異なる従属請求項に記載されただけでは、これらの手段の組合せが都合よま使用できないことを示していない。請求項の中の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈すべきでない。
【0039】
上記説明は、本発明のある実施形態を詳述している。しかしながら、上記が文章中にどれほど詳細に記載されたかに関わらず、本発明は多くの方法で実施でき、開示した実施形態に限定されないことは理解されよう。本発明のある特徴または態様を記述する際、特定の用語の使用は、該用語が、その用語に関連した本発明の特徴または態様のいずれの特性を含むように限定されるとここで再定義されることを意味すると解釈すべきでないことに留意すべきである。
【0040】
特別に言及していない限り、ある層が他の層または基板の「上(on)」に堆積または製作されるという記載は、下記の選択肢を含む。
・前記層が、前記他の層または基板の上に直接、即ち、これと接触して製作または堆積されること、および
・前記層が、前記層と前記他の層または基板との間にある1つまたはスタックの中間層の上に製作されること。