(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力電圧と前記第二入力電圧とを印加しない第一状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧の一方を印加し他方を印加しない第二状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧とを印加する第三状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧の前記一方を印加せず前記他方を印加する第四状態、の順に切り替えて、
前記計測器は、前記第二状態、前記第三状態または前記第四状態における前記計測対象の静電容量の他端側の電位に基づいて、前記計測対象の静電容量相当値を取得する、
請求項2の静電容量計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、静電容量の計測は、静電容量の一方に交流電圧を印加した場合に、静電容量の他方に流れる電流を計測することにより行われることが一般的であった。しかしながら、電流値に基づいて静電容量を計測した場合には、電流値が小さな値となってしまうため、ノイズの影響を受けることにより高精度な静電容量を計測することができない。
【0008】
また、計測対象の静電容量に対して別の既定の静電容量を直列に接続し、定電圧を印加した場合において、静電容量間の電位を計測することにより、計測対象の静電容量を算出することが可能である。つまり、この場合の計測対象は、電流値ではなく電圧値である。しかし、2つの静電容量間の電位は不定であるため、当該静電容量間の電位を用いて計測された静電容量は高精度ではない。また、上述した従来の技術では、非常に複雑な計測装置である。
また、特許文献5に記載の装置では、コンデンサC1に蓄電されるまでの時間を要するため、計測対象の静電容量を高速に計測することが容易ではない。
【0009】
本発明は、計測対象となる静電容量と直列接続された別の既定の静電容量との間の電位を計測する方法を採用することにより計測の高速化および耐ノイズ性の向上を図ると共に、静電容量間の電位を計測した場合であっても計測対象の静電容量を高精度に計測できる静電容量計測装置を提供することを目的とする。
また、当該計測装置を用いた静電容量型面状センサ装置および静電容量型液位検出装置を提供することを目的とする。すなわち、高速かつ高精度に計測対象の静電容量を計測することができる静電容量型面状センサ装置および静電容量型液位検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<
第一の静電容量計測装置>
そこで、本発明者らは、2つの静電容量間の電位をグランド電位に放電した状態を基準状態とすることで、2つの静電容量間の電位の計測により計測対象の静電容量を計測することが可能であることを発見した。
すなわち、
第一の静電容量計測装置は、計測対象の静電容量の一端側に対して、定電圧である入力電圧を印加する入力電圧印加手段と、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続され、前記計測対象の静電容量の他端側とグランド電位との間に接続されるブリッジ用キャパシタと、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続されると共に、前記ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測対象の静電容量の他端側の電荷をグランド電位に放電する充放電用スイッチング素子と、前記入力電圧を印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測対象の静電容量の電荷をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を印加する状態にすることで、前記計測対象の静電容量に充電する工程とを実行するコントローラと、前記コントローラによる前記充電する工程において、前記計測対象の静電容量と前記ブリッジ用キャパシタとの間の電位に基づいて、前記計測対象の静電容量相当値を取得する計測器と、を備える。
【0011】
ブリッジ用キャパシタが計測対象の静電容量に対して直列接続されており、計測器が、計測対象の静電容量とブリッジ用キャパシタとの間の電位(中間電位)、すなわち計測対象の静電容量の他端側の電位に基づいて静電容量相当値を取得している。ここで、2つのキャパシタの中間電位は不定であるため、当該中間電位を用いて計測された静電容量は高精度ではない。
【0012】
しかし、充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、計測対象の静電容量の電荷が放電される。すなわち、上記中間電位がグランド電位になる。そして、この状態を基準状態とする。つまり、基準状態における中間電位は、グランド電位に等しい。換言すると、充放電用スイッチング素子を閉状態にすることによって、中間電位のキャリブレーションを行うことができる。
【0013】
そして、計測器は、放電された後に、充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ入力電圧を印加した状態にされた時に、計測対象の静電容量の他端側の電位を計測する。つまり、計測器が計測する電位は、計測対象の静電容量に応じた電位となる。従っ
て、第一の静電容量計測装置は、計測対象の静電容量を高精度に計測できる。
【0014】
さらに、上記手段は、中間電位を用いて静電容量を計測する手法であるため、電流計測の場合に比べて、ノイズの影響を受けにくくなり、高精度な静電容量の計測が可能となる。さらに、中間電位を用いた計測であることは、高速な計測を可能とするものである。また、充放電用スイッチング素子を閉状態にするキャリブレーションは、短時間で行うことができる。このことからも、全体として、高速な静電容量の計測が可能となる。
【0015】
さらに、第一の静電容量計測装置において、前記入力電圧印加手段は、前記入力電圧を印加可能な定電圧電源と、一端側を前記計測対象の静電容量の一端側に接続し、他端側を前記定電圧電源とグランド電位との一方に接続し、前記定電圧電源により前記入力電圧を前記計測対象の静電容量に印加する状態と、前記計測対象の静電容量に前記入力電圧を印加しない状態とを切り替える入力用スイッチング素子と、を備える。これにより、中間電位を基準状態の電位に確実にできると共に、計測対象の静電容量に入力電圧を印加する状態を確実に形成できる。その結果、高精度な静電容量相当値が取得される。
【0016】
また、好ましくは、前記静電容量計測装置は、一端側に定電圧としての第二入力電圧を印加され、他端側を前記計測対象の静電容量の他端側に接続される第二キャパシタをさらに備える。これにより、高精度な計測対象の静電容量相当値が取得される。
【0017】
また、好ましくは、前記入力電圧と前記第二入力電圧とを印加しない第一状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧の一方を印加し他方を印加しない第二状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧とを印加する第三状態、前記入力電圧と前記第二入力電圧の前記一方を印加せず前記他方を印加する第四状態、の順に切り替えて、前記計測器は、前記第二状態、前記第三状態または前記第四状態における前記計測対象の静電容量の他端側の電位に基づいて、前記計測対象の静電容量相当値を取得する。
これにより、確実に、高精度な計測対象の静電容量相当値が得られる。
【0018】
また、好ましくは、前記ブリッジ用キャパシタの静電容量は、前記計測対象の静電容量の他端側とグランド電位との間における静電容量に対して、大きな静電容量とする。これにより、計測対象の静電容量の他端側とグランド電位との間に存在する静電容量の影響度が確実に小さくなる。従って、高精度な計測対象の静電容量相当値が得られる。
【0019】
また、好ましくは、前記静電容量計測装置は、センサ本体における複数の計測対象の静電容量相当値のそれぞれを取得し、前記センサ本体の等価回路は、複数行の第一電極と、前記複数行の第一電極に対してマトリックス状となるように配置される複数列の第二電極と、前記複数行の第一電極と前記複数列の第二電極とがそれぞれ立体交差する複数位置に設けられる複数の誘電層とを備え、前記センサ本体における複数の計測対象の静電容量相当値は、前記複数の誘電層のそれぞれの位置に対応する前記第一電極と前記第二電極との間の静電容量相当値である。
【0020】
つまり、等価回路において、複数の計測対象の静電容量が、マトリックス状に配置される。そして、上述した静電容量計測装置を用いて、マトリックス状の計測対象の静電容量相当値のそれぞれが高精度に得られる。
【0021】
また、好ましくは、前記計測器は、前記複数行の第一電極のうち一つの第一電極に前記入力電圧を印加し、残りの第一電極をグランド電位に接続した場合に、選択された第二電極におけるそれぞれの電圧と、未知数としての、前記選択された第二電極と前記複数行の第一電極のそれぞれと立体交差する複数位置の静電容量と、により表される連立方程式を解くことにより、未知数としてのそれぞれの静電容量相当値を取得する。
【0022】
ある計測対象の静電容量の他端側の電位を計測する場合に、他の静電容量の影響を受ける場合がある。そこで、上記のように、計測装置は、複数の計測対象の静電容量を未知数として、それぞれの計測対象の静電容量と、当該計測対象の静電容量影響を及ぼす静電容量とにより表される連立方程式を解く。従って、未知数としてのそれぞれの静電容量相当値が高精度に得られる。
<第二の静電容量計測装置>
また、第二の静電容量計測装置は、計測対象の静電容量の一端側に対して、定電圧である入力電圧を印加する入力電圧印加手段と、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続され、前記計測対象の静電容量の他端側とグランド電位との間に接続されるブリッジ用キャパシタと、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続されると共に、前記ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測対象の静電容量の他端側の電荷をグランド電位に放電する充放電用スイッチング素子と、前記入力電圧を印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測対象の静電容量の電荷をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を印加する状態にすることで、前記計測対象の静電容量に充電する工程とを実行するコントローラと、前記コントローラによる前記充電する工程において、前記計測対象の静電容量と前記ブリッジ用キャパシタとの間の電位に基づいて、前記計測対象の静電容量相当値を取得する計測器と、を備える静電容量計測装置であって、一端側に定電圧としての第二入力電圧を印加され、他端側を前記計測対象の静電容量の他端側に接続される第二キャパシタをさらに備える。
<第三の静電容量計測装置>
また、第三の静電容量計測装置は、計測対象の静電容量の一端側に対して、定電圧である入力電圧を印加する入力電圧印加手段と、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続され、前記計測対象の静電容量の他端側とグランド電位との間に接続されるブリッジ用キャパシタと、前記計測対象の静電容量の他端側に対して直列接続されると共に、前記ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測対象の静電容量の他端側の電荷をグランド電位に放電する充放電用スイッチング素子と、前記入力電圧を印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測対象の静電容量の電荷をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を印加する状態にすることで、前記計測対象の静電容量に充電する工程とを実行するコントローラと、前記コントローラによる前記充電する工程において、前記計測対象の静電容量と前記ブリッジ用キャパシタとの間の電位に基づいて、前記計測対象の静電容量相当値を取得する計測器と、を備える静電容量計測装置である。
そして、前記静電容量計測装置は、センサ本体における複数の計測対象の静電容量相当値のそれぞれを取得し、前記センサ本体の等価回路は、複数行の第一電極と、前記複数行の第一電極に対してマトリックス状となるように配置される複数列の第二電極と、前記複数行の第一電極と前記複数列の第二電極とがそれぞれ立体交差する複数位置に設けられる複数の誘電層とを備える。
さらに、前記センサ本体における複数の計測対象の静電容量相当値は、前記複数の誘電層のそれぞれの位置に対応する前記第一電極と前記第二電極との間の静電容量相当値であり、前記計測器は、前記複数行の第一電極のうち一つの第一電極に前記入力電圧を印加し、残りの第一電極をグランド電位に接続した場合に、選択された第二電極におけるそれぞれの電圧と、未知数としての、前記選択された第二電極と前記複数行の第一電極のそれぞれと立体交差する複数位置の静電容量と、により表される連立方程式を解くことにより、未知数としてのそれぞれの静電容量相当値を取得する。
【0023】
<静電容量型面状センサ装置>
次に、上述した静電容量計測装置を用いた静電容量型面状センサ装置について説明する。
本手段に係る静電容量型面状センサ装置は、帯状に形成され相互に平行に配置された複数行の第一電極と、帯状に形成され相互に平行に配置される複数列の第二電極であり、前記複数行の第一電極との対向位置がマトリックス状となるように前記第一電極に対向して設けられた前記複数列の第二電極と、前記複数行の第一電極のそれぞれの第一電極と前記複数列の第二電極のそれぞれの第二電極との間に設けられた誘電層と、それぞれの前記第一電極とそれぞれの前記第二電極との対向位置に対応するマトリックス状位置のそれぞれにおける静電容量相当値を取得する上述した前記静電容量計測装置と、を備え、前記計測対象の静電容量の一端側は、前記第一電極であり、前記計測対象の静電容量の他端側は、前記第二電極である。
【0024】
当該面状センサ装置は、マトリックス状に配置される複数の計測対象の静電容量を有することになる。この場合に、上述した静電容量計測装置を用いることで、マトリックス状の計測対象の静電容量相当値のそれぞれが高精度に得られる。
【0025】
<静電容量型面状センサ装置の実施態様>
以下に、本手段に係る静電容量型面状センサ装置の好適な実施態様について説明する。
好ましくは、前記静電容量型面状センサ装置は、前記第二電極に対して前記第一電極とは反対側に対向するように設けられ、グランド電位に接続された第三電極をさらに備え、前記第二電極と前記第三電極とにより形成されるキャパシタが、前記ブリッジ用キャパシタである。
第三電極がブリッジ用キャパシタの一方の電極として適用されることになる。従って、構造が容易となる。
【0026】
好ましくは、前記静電容量型面状センサ装置は、前記第二電極に対して前記第一電極とは反対側に対向するように設けられる第三電極をさらに備え、前記静電容量計測装置は、一端側に定電圧としての第二入力電圧を印加され、他端側を前記計測対象の静電容量の他端側に接続される第二キャパシタをさらに備え、前記第二電極と前記第三電極とにより形成されるキャパシタが、前記第二キャパシタを構成する。
第二電極と第三電極とにより形成されるキャパシタが第二キャパシタを構成するため、専用の第二キャパシタが不要となる。
【0027】
<静電容量型液位検出装置>
次に、上述した静電容量計測装置を用いた静電容量型液位検出装置について説明する。
本手段に係る静電容量型液位検出装置は、液体を貯留するタンク内に、高さ方向にずらして配置される複数の電極と、前記複数の電極のうち選択された2個の電極の間の静電容量相当値を前記計測対象の静電容量相当値として取得する上述した前記静電容量計測装置と、前記計測対象の静電容量相当値に基づいて前記タンク内の液位を判定する判定部と、を備える。
上述した静電容量計測装置を用いることで、計測対象の静電容量相当値のそれぞれが高精度に得られる。従って、高精度な液位が得られる。
【0028】
<静電容量型液位検出装置の実施態様>
以下に、本手段に係る静電容量型液位検出装置の好適な実施態様について説明する。
好ましくは、前記判定部は、前記計測対象の静電容量相当値に基づいて液質を判定する。静電容量は、液質に応じた値となる。従って、タンク内の液体の液質が、高精度に得られる。
【0029】
好ましくは、前記静電容量計測装置は、一端側に定電圧としての第二入力電圧を印加され、他端側を前記計測対象の静電容量の他端側に接続される第二キャパシタをさらに備え、前記計測対象の2個の電極のうち下側に位置する電極とさらに下側に位置する電極とにより形成されるキャパシタが、前記第二キャパシタを構成し、前記判定部は、前記計測対象の静電容量相当値に基づいて異なる種類の液体の境界を判定する。
高さ方向で隣り合う電極間の静電容量を比べることにより、一致すれば、同種の液体が存在することが分かり、異なれば、異なる液体が存在することが分かる。従って、異なる種類の液体が存在する場合に、その境界が高精度に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第一実施形態の静電容量計測装置>
第一実施形態における静電容量計測装置10は、
図1に示すように、計測対象の静電容量Cnの相当値を計測する装置である。静電容量計測装置10は、定電圧電源11、第一入力用スイッチング素子SW11、ブリッジ用キャパシタ12、充放電用スイッチング素子SW10、コントローラ13、計測器14を備える。
【0032】
定電圧電源11(入力電圧印加手段)は、定電圧である入力電圧Vinを印加可能な電源である。第一入力用スイッチング素子SW11(入力電圧印加手段)は、一端側を計測対象の静電容量Cnの一端側に接続し、他端側を定電圧電源11とグランド電位との一方に切り替え可能に接続する。つまり、第一入力用スイッチング素子SW11が定電圧電源11側に接続されている場合には、計測対象の静電容量Cnの一端側に入力電圧Vinが印加される状態となる。一方、第一入力用スイッチング素子SW11がグランド電位側に接続されている場合には、計測対象の静電容量Cnの一端側には入力電圧Vinが印加されない状態となる。
【0033】
ブリッジ用キャパシタ12は、計測対象の静電容量Cnの他端側(定電圧電源11とは異なる側)に対して直列接続され、計測対象の静電容量Cnの他端側とグランド電位との間に接続される。つまり、計測対象の静電容量Cnとブリッジ用キャパシタ12とが、ブリッジ回路を構成する。ここで、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量は、Cbである。
【0034】
充放電用スイッチング素子SW10は、計測対象の静電容量Cnの他端側に対して直列接続されると共に、ブリッジ用キャパシタ12に対して並列接続される。さらに、充放電用スイッチング素子SW10は、閉状態時に計測対象の静電容量Cnの他端側の電荷をグランド電位に放電する。
【0035】
コントローラ13は、以下に示す放電工程と充電工程とを交互に実行する。すなわち、コントローラ13は、第一入力用スイッチング素子SW11をグランド電位側に接続した状態にし、且つ、充放電用スイッチング素子SW10を閉状態にすることで、計測対象の静電容量Cnの電荷をグランド電位に放電する(放電工程)。ここで、第一入力用スイッチング素子SW11をグランド電位側に接続した状態とは、計測対象の静電容量Cnに対して入力電圧Vinを印加していない状態に相当する。上記放電工程により、計測対象の静電容量Cnの電荷を基準状態としてのグランド電位に設定することで、キャリブレーションを行うことができる。
【0036】
また、コントローラ13は、上記放電工程の後に、第一入力用スイッチング素子SW11を定電圧電源11側に接続した状態にし、且つ、充放電用スイッチング素子SW10を開状態にすることで、計測対象の静電容量Cnに充電する(充電工程)。ここで、第一入力用スイッチング素子SW11を定電圧電源11側に接続した状態とは、計測対象の静電容量Cnに対して入力電圧Vinを印加する状態に相当する。
【0037】
計測器14は、コントローラ13が充電工程を実行する場合において、計測対象の静電容量Cnとブリッジ用キャパシタ12との間の電位Vout(以下、「出力電圧」とも称する)に基づいて、計測対象の静電容量相当値を取得する。なお、出力電圧Voutは、計測対象の静電容量Cnの他端側の電位に相当する。
【0038】
ここで、計測対象の静電容量Cn、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cb、入力電圧Vinおよび出力電圧Voutは、式(1)の関係を有する。
【0040】
また、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbおよび入力電圧Vinは、既知である。従って、式(1)より、計測器14は、出力電圧Voutに基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得できる。
【0041】
次に、コントローラ13が実行する充放電用スイッチング素子SW10の開閉のタイミングと、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1および出力電圧Voutの関係について、
図2を参照して説明する。t1〜t2において、充放電用スイッチング素子SW10がON(閉状態)とされる。また、第一入力用スイッチング素子SW11がグランド電位側に接続される。従って、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1が、グランド電位となる。
【0042】
上記動作によって、計測対象の静電容量Cnの電荷が、充放電用スイッチング素子SW10を介して、放電される。その結果、計測対象の静電容量Cnとブリッジ用キャパシタ12との間の電位(出力電圧)Voutが基準状態としてのグランド電位となる。つまり、上記動作前においては、出力電圧Voutが不定であったが、上記動作によって、出力電圧Voutがグランド電位に設定される。
【0043】
続いて、t2〜t4において、充放電用スイッチング素子SW10がOFF(開状態)とされ、第一入力用スイッチング素子SW11が定電圧電源11側に接続される。従って、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1が、入力電圧Vinとなる。上記動作によって、計測対象の静電容量Cnに電荷が充電される。充電に要する時間を経過した後に、計測器14が、出力電圧Voutを計測する。
図2においては、t3〜t4において、計測器14が出力電圧Voutを計測する。
【0044】
続いて、t4〜t5において、充放電用スイッチング素子SW10はON(閉状態)とされ、第一入力用スイッチング素子SW11がグランド電位側に接続される。この動作によって、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1はグランド電位となり、計測対象の静電容量Cnの電荷が放電される。すなわち、上記出力電圧Voutがグランド電位になる。続いて、t5〜t9は、上述したt1〜t5と同様の動作を繰り返す。
【0045】
上記のとおり、ブリッジ用キャパシタ12が計測対象の静電容量Cnに対して直列接続されており、計測器14が、計測対象の静電容量Cnの他端側の電位、すなわち計測対象とブリッジ用キャパシタ12との間の電位(出力電圧)Voutに基づいて静電容量相当値を取得している。ここで、単なる2つのキャパシタの中間電位は不定であるため、当該中間電位を用いて計測された静電容量は高精度ではない。
【0046】
しかし、上記の通り、充放電用スイッチング素子SW10を閉状態にすることで、計測対象の静電容量Cnの電荷が放電される。すなわち、上記出力電圧(中間電位)Voutが基準状態としてのグランド電位になる。つまり、充放電用スイッチング素子SW10を閉状態にすることによって、出力電圧Voutのキャリブレーションを行うことができる。
【0047】
そして、計測器14は、放電された後に、充放電用スイッチング素子SW10を開状態にし、且つ、計測対象の静電容量Cnの一端側に入力電圧Vinを印加した状態にされた時に、計測対象の静電容量Cnの他端側の電位を計測する。つまり、計測器14が計測する電位は、計測対象の静電容量Cnに応じた電位となる。従って、静電容量計測装置10は、計測対象の静電容量Cnを高精度に計測できる。
【0048】
<第二実施形態の静電容量計測装置>
第二実施形態の静電容量計測装置20は、
図3に示すように、電源11、ブリッジ用キャパシタ12、充放電用スイッチング素子SW10、コントローラ13、計測器14を備える。
【0049】
第二実施形態の静電容量計測装置20は、第一実施形態の静電容量計測装置10に対して、静電容量Cyを追加している。静電容量Cyは、計測対象の静電容量Cnの他端側とグランド電位との間に存在する静電容量である。例えば、静電容量Cyは、計測対象の静電容量Cnの他端側の電極と、近くに存在する電極との間に形成される。
【0050】
つまり、ブリッジ用キャパシタ12は、当該静電容量Cyに対して並列接続される。ここで、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbは、静電容量Cyより大きくなるように設定される。静電容量Cyは、ある程度、予め推定することができる。そこで、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbを設定する。特に、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbは、静電容量Cyの100倍以上に設定するとよい。
【0051】
ここで、計測対象の静電容量Cn、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cb、入力電圧Vin、出力電圧Voutおよび静電容量Cyは、式(2)の関係を有する。
【0053】
式(2)から明らかなように、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbが静電容量Cyに対して十分に大きい場合には、(Cb+Cy)は、Cbに近似した値となる。従って、計測対象の静電容量Cnは、式(1)と同様の関係から導き出される。このように、計測対象の静電容量Cnの他端側とグランド電位との間の静電容量Cyの影響度が確実に小さくなる。従って、高精度な計測対象の静電容量Cnの相当値が得られる。
【0054】
<第三実施形態の静電容量計測装置>
第三実施形態の静電容量計測装置30は、
図4に示すように、定電圧電源11、ブリッジ用キャパシタ12、充放電用スイッチング素子SW10、コントローラ13、計測器14、第一入力用スイッチング素子SW11、第二キャパシタ31、第二入力用スイッチング素子SW12を備える。
【0055】
第三実施形態の静電容量計測装置30は、第二実施形態の静電容量計測装置20に対して、第二キャパシタ31および第二入力用スイッチング素子SW12を追加している。第二キャパシタ31は、一端側に定電圧としての第二入力電圧Vin(本実施形態においては入力電圧Vinと同一)を印加され、他端側を計測対象の静電容量Cnの他端側に接続される。
【0056】
第二入力用スイッチング素子SW12は、一端側を第二キャパシタ31の一端側に接続し、他端側を定電圧電源11とグランド電位との一方に切り替え可能に接続する。つまり、第二入力用スイッチング素子SW12が定電圧電源11側に接続されている場合には、第二キャパシタ31の一端側に第二入力電圧Vinが印加される状態となる。一方、第二入力用スイッチング素子SW12がグランド電位側に接続されている場合には、第二キャパシタ31の一端側には第二入力電圧Vinが印加されない状態となる。
【0057】
ここで、コントローラ13が実行する各スイッチング素子SW10,SW11,SW12の切替タイミングと、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1、第二キャパシタ31の一端側の電位Vin2および出力電圧Voutの関係は、
図5に示すとおりである。
【0058】
図5に示すように、充放電用スイッチング素子SW10は、t1〜t2、t5〜t6は、ON(閉状態)にされ、t2〜t5、t6〜t9は、OFF(開状態)にされる。第一入力用スイッチング素子SW11は、t1〜t3、t5〜t7は、グランド電位に接続され、t3〜t5、t7〜t9は、定電圧電源11に接続される。第二入力用スイッチング素子SW12は、t1〜t2、t4〜t6、t8〜t9は、グランド電位に接続され、t2〜t4、t6〜t8は、定電圧電源11に接続される。
【0059】
ここで、入力電圧Vinを計測対象の静電容量Cnの一端側に印加せず、かつ、第二入力電圧Vinを第二キャパシタ31の一端側に印加しない状態を、第一状態とする。入力電圧Vinを計測対象の静電容量Cnの一端側に印加せず、かつ、第二入力電圧Vinを第二キャパシタ31の一端側に印加する状態を、第二状態とする。入力電圧Vinを計測対象の静電容量Cnの一端側に印加し、かつ、第二入力電圧Vinを第二キャパシタ31の一端側に印加する状態を、第三状態とする。入力電圧Vinを計測対象の静電容量Cnの一端側に印加し、かつ、第二入力電圧Vinを第二キャパシタ31の一端側に印加しない状態を、第四状態とする。
【0060】
そして、
図5に示すように、第一状態、第二状態、第三状態、第四状態の順に切り替える。このとき、出力電圧Voutは、
図5の最下欄に示すようになる。そして、計測器14は、第二状態(t2〜t3)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo2と、第三状態における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo3との差(Vo2−Vo3)に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得する。または、計測器14は、第四状態(t4〜t5)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo4に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得する。
【0061】
ここで、第一状態から第四状態までのそれぞれにおける等価回路の構成および出力電圧Voutについて、
図6〜
図9を参照して説明する。
第一状態(
図5のt1〜t2)では、充放電用スイッチング素子SW10は閉状態であり、第一,第二入力用スイッチング素子SW11,SW12は、グランド電位に接続される。従って、この状態の回路は、
図6に示すようになる。
図6に示すように、静電容量Ca,Cn,Cy,Cbの一方の全てがグランド電位に接続され、これら静電容量Ca,Cn,Cy,Cbの他方が計測器14に接続される。さらに、充放電用スイッチング素子SW10が閉状態であるため、静電容量Ca,Cn,Cy,Cbの他方の電位はグランド電位(ここでは、0(ゼロ))となる。このときの計測器14により計測される電位Vo1(出力電圧Vout)は、式(3)に表される。つまり、電位Vo1は、基準状態の電位として0となる。
【0063】
第二状態(
図5のt2〜t3)では、充放電用スイッチング素子SW10は開状態であり、第一入力用スイッチング素子SW11がグランド電位に接続され、第二入力用スイッチング素子SW12が定電圧電源11に接続される。このとき、
図7に示すように、静電容量Caの一方が定電圧電源11に接続され、他の静電容量Cn,Cy,Cbの一方がグランド電位に接続される。つまり、計測器14により計測される電位Vo2は、静電容量Caと静電容量Cn,Cy,Cbの合計値との中間電位となる。このときの計測器14により計測される電位Vo2は、式(4)に表される。つまり、電位Vo2は、第二キャパシタ31の静電容量Caに相当する電位となる。
【0065】
第三状態(
図5のt3〜t4)では、充放電用スイッチング素子SW10は開状態であり、第一、第二入力用スイッチング素子SW11,SW12共に定電圧電源11に接続されている。このとき、
図8に示すように、静電容量Ca,Cnの一方が定電圧電源11に接続され、他の静電容量Cy,
Cbの一方がグランド電位に接続され、これら静電容量Ca,Cn,Cy,Cbの他方が計測器14に接続される。つまり、計測器14により計測される電位Vo3は、静電容量Ca,Cnの合計値と静電容量Cy,Cbの合計値との中間電位となる。このときの計測器14により計測される電位Vo3は、式(5)に表される。つまり、電位Vo3は、静電容量Ca,Cnの合計値に相当する電位となる。
【0067】
第四状態(
図5のt4〜t5)では、充放電用スイッチング素子SW10は開状態であり、第一入力用スイッチング素子SW11は定電圧電源11に接続され、第二入力用スイッチング素子SW12はグランド電位に接続されている。このとき、
図9に示すように、静電容量Cnの一方が定電圧電源11に接続され、他の静電容量Ca,Cy,Cbの一方がグランド電位に接続され、これら静電容量Ca,Cn,Cy,Cbの他方が計測器14に接続される。つまり、計測器14により計測される電位Vo4は、静電容量Cnと静電容量Ca,Cy,Cbの合計値との中間電位となる。このときの計測器14により計測される電位Vo4は、式(6)に表される。つまり、電位Vo4は、計測対象の静電容量Cnに相当する電位となる。
【0069】
ここで、上述したように、計測器14は、第四状態(t4〜t5)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo4に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得することができる。電位Vo4を用いる計測の場合には、第一状態と第四状態との切替で足りる。しかし、電位Vo4は、グランド電位に近い値であるため、ノイズの影響を受ける可能性がある。
【0070】
そこで、計測器14は、第二状態(t2〜t3)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo2と、第三状態における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo3との差(Vo2−Vo3)に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得することで、より高精度な静電容量相当値を得ることができる。つまり、第一入力用スイッチング素子SW11と第二入力用スイッチング素子SW12のタイミングを、
図5に示すように、第一状態→第二状態→第三状態→第四状態の順に切り替えることにより、第二状態の出力電圧Vo2と第三状態の出力電圧Vo3との差を利用することができる。
【0071】
<第四実施形態の静電容量計測装置>
次に、第四実施形態の静電容量計測装置は、第三実施形態の静電容量計測装置30に対して、充放電用スイッチング素子SW10の切替動作のみ相違する。
図10に示すように、充放電用スイッチング素子SW10は、t1〜t2、t3〜t6、t7〜t9は、OFF(開状態)とされ、t2〜t3、t6〜t7は、ON(閉状態)とされる。第一、第二入力用スイッチング素子SW11,SW12、計測対象の静電容量Cnの一端側の電位Vin1、第二キャパシタ31の一端側の電位Vin2は、第三実施形態と同様である。
【0072】
充放電用スイッチング素子SW10が閉状態とされる第二状態のときを基準状態として、キャリブレーションが行われる。つまり、出力電圧Voutは、第二状態(t2〜t3、t6〜t7)のときの出力電圧Vo2をゼロとした値を示す。従って、計測器14は、第三状態の出力電圧Vo3を計測するのみで、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得することができる。
【0073】
<第一実施形態の静電容量型面状センサ装置>
次に、上述した静電容量計測装置を用いた静電容量型面状センサ装置について説明する。
(静電容量型センサ装置の全体構造)
図11および
図12に示すように、静電容量型面状センサ装置100は、シート状(面状)に形成されたセンサ本体110を備えており、当該センサ本体110における電極間の静電容量(計測対象の静電容量)を計測する。
【0074】
ここで、センサ本体110は、外力が付与された位置および大きさを検出する感圧センサとして適用することができ、人間の指などの導電体が接触または接近した位置を検出するタッチパネルとして適用することもできる。そして、
図11および
図12に示すように、静電容量型面状センサ装置100は、センサ本体110と、静電容量計測装置160とを備える。
【0075】
(センサ本体110の詳細構成)
本実施形態においては、センサ本体110は、シート状に形成されており、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。このセンサ本体110は、平面形状のみならず、曲面形状とすることもできる。ただし、以下において、
図11および
図12を参照して、平面形状のセンサ本体110を例に挙げる。なお、上述したように、センサ本体110をタッチパネルとして適用する場合には、可撓性および伸縮性は必ずしも必要ではない。
【0076】
センサ本体110は、複数行の第一電極120(121〜128)と、複数列の第二電極130(131〜138)と、誘電層141と、絶縁層142,143(
図12に示す)とを備える。複数行の第一電極120のそれぞれの第一電極121〜128は、帯状に形成され、
図11の上下方向に延びるように、かつ相互に平行に配置されている。
【0077】
複数列の第二電極130のそれぞれの第二電極131〜138は、帯状に形成され、
図11の左右方向に延びるように、かつ相互に平行に配置されている。なお、
図11には、複数行の第一電極120および複数列の第二電極130は、8行、8列で図示するが、これに限られるものではない。
【0078】
複数行の第一電極120と複数列の第二電極130とは、面法線方向(
図11の紙面前後方向、
図12の上下方向)に距離を隔てて対向して設けられている。そして、複数行の第一電極120と複数列の第二電極130との対向位置がマトリックス状となるように、両者が配置されている。つまり、それぞれの第一電極121〜128は、それぞれの第二電極131〜138に対して対向しており、両者の対向位置が、8行×8列のマトリックス状となる。8行×8列のマトリックス状位置のそれぞれが、静電容量の計測対象位置となり得る。
【0079】
また、それぞれの第一電極121〜128およびそれぞれの第二電極131〜138は、エラストマーまたは樹脂中に導電性フィラーを配合させることにより成形している。そして、第一,第二電極120,130は、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有するようにしている。
【0080】
第一,第二電極120,130を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、第一,第二電極120,130に配合される導電性フィラーは、導電性を有する粒子であればよく、例えば、炭素材料や金属等の微粒子を適用できる。また、第一,第二電極120,130を構成する樹脂には、例えば、ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類などが適用できる。
【0081】
誘電層141は、それぞれの第一電極121〜128とそれぞれの第二電極131〜138との間に設けられている。センサ本体110を感圧センサとして適用する場合には、誘電層141は、外力によって厚みを異ならせるように圧縮変形可能とされている。
【0082】
誘電層141は、エラストマーまたは樹脂により成形され、第一,第二電極120,130と同様に、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。この誘電層141を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、誘電層141を構成する樹脂には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂(架橋発泡ポリスチレン樹脂を含む)、ポリ塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸共重合体などが適用できる。
【0083】
絶縁層142,143は、第一電極120側の表面および第二電極130側の裏面をそれぞれ被覆するように設けられる。絶縁層142,143は、第一,第二電極120,130と同様に、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。この絶縁層142,143を構成するエラストマーまたは樹脂は、例えば、誘電層141を構成するエラストマーまたは樹脂として記載した材料が適用される。
【0084】
図12に示すように、上記のように構成されるセンサ本体110がセンサ本体110の面法線方向(
図12の上下方向)に圧縮する外力Fを受けた場合には、誘電層141が面法線方向に圧縮変形する。その結果、外力Fが付与された部位に位置する第一,第二電極120,130間の離間距離が小さくなる。この場合、当該部位における第一,第二電極120,130間の静電容量が大きくなるように変化する。そこで、それぞれの第一電極121〜128およびそれぞれの第二電極131〜138が対向するマトリックス状位置のそれぞれについて、静電容量の変化を計測することにより、外力Fを受けた位置を計測できる。さらに、マトリックス状位置のそれぞれの静電容量の絶対値を計測することにより、外力Fの大きさを計測することができる。
【0085】
(センサ本体の回路)
ここで、
図11に示すように、センサ本体110は、例えば8行の第一電極120と8列の第二電極130とにより構成される。ただし、以下において、静電容量計測装置の説明の容易化のため、3行の第一電極120(121〜123)と3列の第二電極130(131〜133)について説明する。
【0086】
この場合のセンサ本体110の回路図は、
図13のように表される。つまり、それぞれの第一電極121〜123とそれぞれの第二電極131〜133との間に、静電容量C1〜C9が形成される。例えば、第一電極121と第二電極131との間の静電容量がC1であり、第一電極122と第二電極132との間の静電容量がC5である。ここで、それぞれの第一電極121〜123の端子は、Pi1〜Pi3とし、それぞれの第二電極131〜133の端子は、Po1〜Po3とする。
【0087】
(静電容量計測装置の構成)
次に、静電容量計測装置160の構成について、
図14および
図15を参照して説明する。ここで、本実施形態の静電容量計測装置160は、
図4を参照して説明した第三実施形態の静電容量計測装置30の回路構成を採用する。
【0088】
図13において、センサ本体110におけるそれぞれの第一電極121〜123の端子Pi1〜Pi3は、接続を順に切り替えられ、さらに、それぞれの第二電極131〜133の端子Po1〜Po3は、接続を順に切り替えられる。ただし、説明の容易化のために、まず、第一電極121と第二電極131との対向位置を計測対象位置とし、静電容量C1を計測する場合について
図14を参照して説明する。
【0089】
図14に示すように、静電容量計測装置160は、定電圧電源11、ブリッジ用キャパシタ12、充放電用スイッチング素子SW10、コントローラ13、計測器14、第一入力用スイッチング素子SW11、第二キャパシタ31、第二入力用スイッチング素子SW12、計測対象変更スイッチSW121〜SW123,SW131〜SW133を備える。ここで、本実施形態の静電容量計測装置160のうち第三実施形態の静電容量計測装置30と同一構成は、同一符号を付す。
【0090】
計測対象変更スイッチSW121〜SW123は、第一電極121〜123の端子Pi1〜Pi3のうち一つを定電圧電源11に接続し、残りの二つをグランド電位に接続する。そして、計測対象変更スイッチSW121〜SW123は、定電圧電源11に接続する端子を切り替えることができる。計測対象変更スイッチSW131〜SW133は、第二電極131〜133の端子Po1〜Po3のうち一つを計測器14に接続し、残りの二つをグランド電位に接続する。そして、計測対象変更スイッチSW131〜SW133は、計測器14に接続する端子を切り替えることができる。ここでは、計測対象変更スイッチSW121を定電圧電源11に接続し、スイッチSW131を計測器14に接続し、他のスイッチSW122,SW123,SW132,SW133をグランド電位に接続する。
【0091】
ブリッジ用キャパシタ12は、設定された一定の静電容量Cbを有する。ブリッジ用キャパシタ12の一方は、計測対象変更スイッチSW131〜SW133を介して、それぞれの第二電極131〜133に接続される。ブリッジ用キャパシタ12の他方は、グランド電位に接続される。ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbは、計測対象位置の第二電極131とグランド電位との間に位置するマトリックス状位置の中の他の位置の静電容量に対して大きな静電容量の一定値に設定される。ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbは、上記他の位置の静電容量に対して例えば100倍以上の静電容量の一定値とする。計測対象位置の静電容量がC1の場合には、マトリックス状位置の中の他の位置の静電容量は、C2,C3の合計値となる。つまり、ブリッジ用キャパシタ12の静電容量Cbは、C2,C3の合計値の100倍以上とする。
【0092】
ここで、静電容量C1を計測する場合において、第一電極121とグランド電位との間の静電容量C4,C7は、計測器14により計測される電位Voutにほとんど影響を及ぼさない。さらに、グランド電位に接続されている他の第一電極122、123とグランド電位に接続されている他の第二電極132、133との間の静電容量C5,C6,C8,C9も、電位Voutにほとんど影響を及ぼさない。従って、
図14におけるセンサ本体110の電気回路は、
図15のように置換して表すことができる。
図15において、一般化するために、静電容量C1を計測対象の静電容量を表すCnとし、静電容量C2,C3の合計をCyとして表す。各記号は、上記第三実施形態の静電容量計測装置30における記号と同様である。
【0093】
従って、
図15に示す回路は、
図4に示す回路に相当する。従って、
図4にて説明したように、各スイッチング素子SW10、SW11、SW12を動作させることにより、計測器14は、計測対象位置の静電容量C1を高精度に取得することができる。
【0094】
<第二実施形態の静電容量型面状センサ装置>
第二実施形態の静電容量型面状センサ装置200について、
図16および
図17を参照して説明する。
図16に示すように、静電容量型面状センサ装置200のセンサ本体210は、
図12に示すセンサ本体110に対して、第三電極220を追加されている。第三電極220は、第二電極130に対して第一電極120とは反対側に対向するように設けられ、グランド電位に接続される。つまり、第三電極220は、第二電極130の裏面側(
図16の下側)に、絶縁層230を介して設けられる。第三電極220は、絶縁層143とほぼ同程度の大きさである。そして、第三電極220の裏面側は、絶縁層143により被覆される。
【0095】
この場合の回路図は、
図17に示す。第二電極130と第三電極220とにより形成されるキャパシタが、
図15におけるブリッジ用キャパシタ12として機能する。つまり、第二電極130と第三電極220との間の静電容量がCbとなる。このように、ブリッジ用キャパシタ12が、第三電極220を用いて構成されるため、専用のキャパシタを設ける必要がない。従って、構造が容易となる。さらに、静電容量Cn,Cbが一体的な部材として形成されているため、例えば温度変化に対して、両者が追従する。従って、温度が変化したとしても、計測対象の静電容量Cnを高精度に計測できる。
【0096】
<第三実施形態の静電容量型面状センサ装置>
第三実施形態の静電容量型面状センサ装置300について、
図18を参照して説明する。
図18に示すように、静電容量型面状センサ装置300のセンサ本体は、
図16にて示したセンサ本体210と同様に構成される。ただし、第三電極220は、グランド電位に接続されるのではなく、第二入力用スイッチング素子SW12に接続される。
【0097】
つまり、
図18に示すように、第二電極130と第三電極220とにより形成されるキャパシタが第二キャパシタ31を構成する。つまり、第二電極130と第三電極220との間の静電容量がCaとなる。従って、専用の第二キャパシタが不要となる。さらに、静電容量Cn,Caが一体的な部材として形成されているため、例えば温度変化に対して、両者が追従する。従って、温度が変化したとしても、計測対象の静電容量Cnを高精度に計測できる。
【0098】
<第四実施形態の静電容量型面状センサ装置>
第四実施形態の静電容量型面状センサ装置について、
図19および
図20を参照して説明する。上記実施形態において、計測器14は、第二状態(t2〜t3)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo2と、第三状態における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo3との差(Vo2−Vo3)に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得することとした。または、計測器14は、第四状態(t4〜t5)における計測対象の静電容量Cnの他端側の電位Vo4に基づいて、計測対象の静電容量Cnの相当値を取得することとした。
【0099】
本実施形態においては、計測器14は、当該算出方法とは異なり、連立方程式を解くことにより、計測対象の静電容量Cnを取得する。未知数を静電容量Cn1,Cn2,Cn3とした場合の連立方程式は、式(7)により表される。つまり、式(7)の連立方程式は、入力電圧Vin、選択された第二電極131におけるそれぞれの電圧Vout1,Vout2,Vout3と、未知数としての、選択された第二電極131と複数行の第一電極121,122,123のそれぞれと立体交差する複数位置の静電容量Cn1,Cn2,Cn3と、により表される。
【0101】
式(7)の連立方程式を解くことで、静電容量Cn1,Cn2,Cn3が得られる。他の静電容量Cn4〜Cn9についても、同様に、連立方程式を解くことにより得られる。
【0102】
ここで、C1〜C9の静電容量を、1pF〜9pFとした場合に、本実施形態の連立方程式を解く手法と、上記実施形態における手法とを比べる。結果は、
図20に示すとおりである。
図20において、白丸は、設定容量であり、白四角は、本実施形態の連立方程式を解く手法の結果であり、黒丸は、上記実施形態における非連立方程式による手法の結果である。
【0103】
図20に示すように、連立方程式を解く手法は、非連立方程式による手法に比べて、静電容量が高精度となる。ここで、非連立方程式による手法では、ある計測対象の静電容量の他端側の電位を計測する場合に、他の静電容量の影響を受けるためであると考えられる。そこで、連立方程式を解く手法は、他の静電容量を考慮した演算であるため、高精度な静電容量を得ることができる。
【0104】
<静電容量型面状センサ装置のその他>
上記第二、第三実施形態のセンサ装置においては、静電容量Cn,Cb、または、静電容量Cn,Caを一体的な部材として形成した。この他に、静電容量Cn,Ca,Cbを一体的な部材として形成してもよい。これにより、温度が変化したとしても、計測対象の静電容量Cnをより高精度に計測できる。なお、全ての電極を重ね合わせる必要はなく、同一の基板上にそれぞれの電極を形成したとしても、上記効果を奏する。
【0105】
<第一実施形態の静電容量型液位検出装置>
次に、上述した静電容量計測装置を用いた静電容量型液位検出装置について説明する。
(静電容量型液位検出装置の全体構造)
図21を参照して、静電容量型液位検出装置(以下、液位検出装置と称する)の構造について説明する。液位検出装置は、車両の燃料タンク610内の液位および液質を検出する。
図21に示すように、燃料タンク610は、車両に搭載され、燃料としてのガソリンを貯留する。
【0106】
ここで、供給される液体には、ガソリンの他に、水やメタノールが混在している場合がある。液位検出装置は、燃料タンク610内の液体の液質、すなわち当該液体がガソリンであるか、水かあるか、それともメタノールなどであるかを判定する。さらに、液位検出装置は、液体の液位、すなわちガソリンの液位、水の液位およびメタノールの液位を判定する。なお、例えば、その他の液体が存在する場合や、浮遊物が存在する場合にも、これらを判定することにも適用できる。
【0107】
燃料タンク610は、車両の左右方向の中央の底部に凹所611を有し、凹所611に対応する天面に凹所612を有する。つまり、底部の凹所611と天面の凹所612が上下方向に対向している。また、燃料タンク610のうち上面には、開口穴613が形成されている。当該開口穴613には、着脱可能なコネクタが連結される。
【0108】
燃料タンク610には、静電容量型液位検出装置600を構成する電極ユニット620が設けられている。電極ユニット620は、燃料タンク610において車両の左右方向の中央に位置し、燃料タンク610における底部の凹所611と天面の凹所612との上下間に固定される。
【0109】
電極ユニット620は、棒状に形成されるセンサ本体621と、センサ本体621の上端に設けられセンサ本体621の上端面から伸張可能に設けられた付勢部材622とを備える。センサ本体621は、下端を燃料タンク610の底部の凹所611に配置される。付勢部材622は、伸張されている状態において、燃料タンク610の天面の凹所612に対して(伸張方向に対して)付勢する。このようにすることで、電極ユニット620が、燃料タンク610の底部の凹所611と天面の凹所612との間に固定される。
【0110】
さらに、センサ本体621は、燃料タンク610内において、上下方向(高さ方向)にずらして配置される複数の電極対626a〜626iを備える。複数の電極対626a〜626iのそれぞれの電極対の間の静電容量は、存在する流体の種類に応じて異なる。
【0111】
液位検出装置600は、電極ユニット620の複数の電極対626a〜626iに電気的に接続される静電容量計測装置630と判定部640とを備える。
【0112】
静電容量計測装置630は、燃料タンク610の外に配置されており、上述した静電容量計測装置を実質的に適用される。判定部640は、静電容量計測装置630により得られた静電容量C1〜C9に基づいて、燃料タンク610内の液体の液位および液質を判定する。
【0113】
(電極ユニットのセンサ本体)
次に、
図22を参照して、電極ユニット620のセンサ本体621について詳細に説明する。センサ本体621の基材表面に、複数の電極対626a〜626iが、高さ方向にずれて配置されている。それぞれの電極対626a〜626iの静電容量は、下方から順に、C1〜C9とする。
【0114】
複数の電極対626a〜626iのそれぞれの電極対の一方の電極に、電気的に接続される配線627a〜627c(以下、印加側配線と称する)が形成されている。また、それぞれの電極対の他方の電極に、電気的に接続される配線628a〜628c(以下、出力側配線と称する)が形成されている。
【0115】
第一の印加側配線627aは、電極対626a,626d,626gに接続され、第二の印加側配線627bは、電極対626b,626e,626hに接続され、第三の印加側配線627cは、電極対626c,626f,626iに接続される。第一の出力側配線628aは、電極対626a,626b,626cに接続され、第二の出力側配線628bは、電極対626d,626e,626fに接続され、第三の出力側配線628cは、電極対626g,626h,626iに接続される。
【0116】
ここで、印加側配線627a,627b,627cに接続されている端子は、それぞれPi1,Pi2,Pi3とし、出力側配線628a,628b,628cに接続されている端子は、それぞれPo1,Po2,Po3とする。
【0117】
上述したセンサ本体621の等価回路は、
図23のように表される。従って、液位検出装置600の回路は、
図24のように表される。つまり、液位検出装置600は、静電容量型面状センサ装置
100と同様に、マトリックス状の回路と等価である。そうすると、液位検出装置600は、上述した静電容量型面状センサ装置
100を同様に適用できる。
【0118】
そして、判定部640は、計測器14が取得したそれぞれの高さにおける静電容量C1〜C9に基づいて、それぞれの高さにおける液位を判定する。同時に、判定部640は、それぞれの高さにおける静電容量C1〜C9に基づいて、それぞれの高さにおける液体の液質を判定できる。
【0119】
<第二実施形態の静電容量型液位検出装置>
第一実施形態の液位検出装置600においては、各電極対を構成する電極が、同一高さに位置するようにした。本実施形態の液位検出装置700は、
図25に示すように、各電極726a〜726tを高さ方向にずらして配置する。そして、印加側配線727a〜727cに接続される電極と、出力側配線728a〜728cに接続される電極とが、高さ方向に交互に配置される。
【0120】
この場合の等価回路は、
図26に示すようになる。
図26は、計測対象の静電容量をCn1とし、第二キャパシタ31(
図24の符号31に相当)の静電容量をCa1とする。このように、計測対象の2個の電極726b,726cのうち下側に位置する電極726bとさらに下側に位置する電極726aとにより形成されるキャパシタが、上述した第二キャパシタ31を構成する。
【0121】
判定部740は、計測対象の静電容量Cn1〜Cn8の相当値に基づいて異なる種類の液体の境界を判定する。例えば、高さ方向に隣り合う電極間726b〜726c、726a〜726bの位置に同種の液体が存在していれば、Cn1とCa1が同一となる。そうすると、Cn1に相当する電位とCa1に相当する電位との差がゼロとなる。
【0122】
一方、高さ方向に隣り合う電極間726b〜726c、726a〜726bの位置に異なる種類の液体が存在していれば、Cn1とCa1が異なる値となる。そうすると、Cn1に相当する電位とCa1に相当する電位との差がゼロではなくなる。判定部740は、この差に基づいて、液体の境界を判定する。
【0123】
<第三実施形態の静電容量型液位検出装置>
次に、第三実施形態の液位検出装置800について、
図27および
図28を参照して説明する。本実施形態の液位検出装置800は、第二実施形態の液位検出装置700に対して、ブリッジ用キャパシタ12として出力側配線828a〜828cを利用する点が相違する。
【0124】
つまり、出力側配線828a、828b、828cを電極ユニット620の高さ方向に十分に長く形成する。このようにすることで、
図28に示すように、出力側配線828a、828b、828cが、ブリッジ用キャパシタ12の電極を構成する。従って、本実施形態の液位検出装置800は、専用のブリッジ用キャパシタ12を設ける必要がない。