特許第6182033号(P6182033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182033耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182033
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/16 20060101AFI20170807BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20170807BHJP
   C04B 33/36 20060101ALI20170807BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C03B35/16
   C04B41/85 A
   C04B33/36
   F16C13/00 A
   F16C13/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-194326(P2013-194326)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-59066(P2015-59066A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和久
(72)【発明者】
【氏名】三原 徹也
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095437(JP,A)
【文献】 特開2001−287823(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−35/26
C03B 40/00−40/04
C04B 33/00−33/36
C04B 41/00−41/91
F16C 13/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部を作製するロール部作製工程と、
前記ロール部のロール表面を研削する研削工程と、
研削された前記ロール表面を湿らせた状態でならす表面処理を行う表面処理工程と、
前記表面処理されたロール表面の80%以上を覆う粘土系鉱物の被膜を形成する粘土被膜工程と、
を含む
耐熱ロールの製造方法。
【請求項2】
前記表面を被覆する粘土系鉱物の膨潤力が、15ml/2g以上である請求項1に記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項3】
前記表面を被覆する粘土系鉱物が、ベントナイト、木節粘土、カオリンから選択される1以上である請求項1又は2に記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項4】
前記粘土被膜工程において、前記表面処理されたロール表面に、粘土系鉱物含有液を付着し、乾燥させて粘土系鉱物の被膜を形成する請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項5】
粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部を作製するロール部作製工程と、
前記ロール部のロール表面を研削する研削工程と、
研削された前記ロール表面を、粘土系鉱物含有液によって湿らせた状態でならす表面処理を行って、ロール表面の80%以上を覆う粘土系鉱物の被覆を形成する表面処理工程と、
を含む、耐熱ロールの製造方法。
【請求項6】
前記表面処理工程において、研削された前記ロール表面を湿らせる第一工程と、次いで、湿った前記ロール表面をならす第二工程と、を実施することにより、前記表面処理を行う
請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項7】
前記第二工程において、湿った前記ロール表面に基材を押し付けつつ前記ロール部を回転させることにより、前記ロール表面をならす
請求項6に記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項8】
前記表面処理工程において、回転する前記ロール部の前記ロール表面に、湿らせた基材を押し付けることにより、前記表面処理を行う
請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項9】
前記粘土系鉱物の被膜する量が平均表面積1m当たり固形分量で0.1g以上である請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
【請求項10】
粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部を有し、前記ロール部の表面の80%以上が、粘土系鉱物で被覆されている、耐熱ロール。
【請求項11】
前記ロール部の表面部分が、前記ロール部の内部に比べて緻密化されている
請求項10に記載の耐熱ロール。
【請求項12】
前記粘土系鉱物の被膜する量が平均表面積1m当たり固形分量で0.1g以上である請求項10又は11に記載の耐熱ロール。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の耐熱ロールを搬送用ロールとして使用する
板ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法に関し、特に、低発塵性等の耐熱ロール特性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
板ガラスの製造においては、溶融状態のガラスリボンを搬送するために、ロール部を備えた耐熱ロールが用いられる。液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに適した高品質の板ガラスを製造するためには、この耐熱ロールがガラスリボンに与える好ましくない影響を可能な限り低減する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1〜3には、耐熱ロールの仕上げにロール部の表面を研削することが提案されている。さらに、特許文献4では、表面を研削した後、水でならすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−299980号公報
【特許文献2】特開2007−269604号公報
【特許文献3】特表2005−520774号公報
【特許文献4】特開2010−095437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等に使用される高品質で薄い板ガラスを製造する場合には、ロール表面には高度なクリーン性が要求される。従って、耐熱ロールにおいて、さらなる発塵性の低下が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、ロール部の表面からの発塵性が低減された耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ロール部の表面に粘土系鉱物の被膜を形成することにより、耐熱ロールの特性を実質的に変えることなく、発塵性を低減できることを独自に見出した。
本発明によれば、以下の耐熱ロールの製造方法等が提供される。
1.粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部を作製するロール部作製工程と、
前記ロール部のロール表面を研削する研削工程と、
研削された前記ロール表面を湿らせた状態でならす表面処理を行う表面処理工程と、
前記表面処理されたロール表面に粘土系鉱物の被膜を形成する粘土被膜工程と、
を含む
耐熱ロールの製造方法。
2.前記表面を被覆する粘土系鉱物の膨潤力が、15ml/2g以上である1に記載の耐熱ロールの製造方法。
3.前記表面を被覆する粘土系鉱物が、ベントナイト、木節粘土、カオリンから選択される1以上である1又は2に記載の耐熱ロールの製造方法。
4.前記粘土被膜工程において、前記表面処理されたロール表面に、粘土系鉱物含有液を付着し、乾燥させて粘土系鉱物の被膜を形成する1〜3のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
5.粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部を作製するロール部作製工程と、
前記ロール部のロール表面を研削する研削工程と、
研削された前記ロール表面を、粘土系鉱物含有液によって湿らせた状態でならす表面処理を行う表面処理工程と、
を含む、耐熱ロールの製造方法。
6.前記表面処理工程において、研削された前記ロール表面を湿らせる第一工程と、次いで、湿った前記ロール表面をならす第二工程と、を実施することにより、前記表面処理を行う
1〜5のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
7.前記第二工程において、湿った前記ロール表面に基材を押し付けつつ前記ロール部を回転させることにより、前記ロール表面をならす
6に記載の耐熱ロールの製造方法。
8.前記表面処理工程において、回転する前記ロール部の前記ロール表面に、湿らせた基材を押し付けることにより、前記表面処理を行う
1〜7のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
9.前記粘土系鉱物の被膜する量が平均表面積1m当たり固形分量で0.1g以上である1〜8のいずれかに記載の耐熱ロールの製造方法。
10.粘土系鉱物を5重量%以上含有するロール部の表面部分が、粘土系鉱物で被覆されている、耐熱ロール。
11.前記ロール部の表面部分が、前記ロール部の内部に比べて緻密化されている
10に記載の耐熱ロール。
12.1〜9のいずれかに記載の方法で製造された耐熱ロール。
13.前記粘土系鉱物の被膜する量が平均表面積1m当たり固形分量で0.1g以上である10〜12のいずれかに記載の耐熱ロール。
14.10〜13のいずれかに記載の耐熱ロールを搬送用ロールとして使用する
板ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロール部の表面からの発塵性が低減された耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る耐熱ロールの一例を示す説明図である。
図2図1に示す耐熱ロールを使用した板ガラスの製造の一例を示す説明図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る耐熱ロールの製造方法に含まれる主な工程を示す概略図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る耐熱ロールの製造方法における基材を使用した表面処理の一例を示す説明図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る耐熱ロールの製造方法に含まれる主な工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の例示の実施形態に係る耐熱ロール、その製造方法及びこれを使用した板ガラスの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、本発明に係る耐熱ロールが、積層された複数のディスク材を有するディスクロールとして実現される例について主に説明するが、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0011】
まず、本実施形態に係るディスクロールの概要と、当該ディスクロールを使用した板ガラスの製造方法について説明する。図1には、ディスクロール1の一例を示す。図1に示すように、ディスクロール1は、その長手方向に延びる円柱状のロール部10を備えている。
【0012】
ロール部10は、粘土系鉱物(以下、単に粘土ともいう)を5重量%以上含有する複数のディスク材11が、当該ロール部10の長手方向に積層されることにより構成されている。即ち、ロール部10を構成する複数のディスク材11は、ディスクロール1の回転軸となる軸部20に嵌挿されている。
本発明において、ロール部10は、さらに表面が粘土系鉱物で被覆されている。ロール部10全体を均一に分散して構成する粘土系鉱物と、表面を被覆する粘土系鉱物は同一でも異なってもよい。
【0013】
そして、積層された複数のディスク材11は、軸部20の両端部分にそれぞれ設けられたフランジ21及びナット22によって、当該軸部20の長手方向に圧縮された状態で固定されている。従って、ロール部10の表面(以下、「ロール表面12」という。)は、圧縮状態で積層された複数のディスク材11の外周面が連なることにより構成されている。
【0014】
尚、ディスクロールの構造は、図1に示すようにシャフト全体がディスク材で覆われているものに限定されず、例えば、ガラスの接触する部分のみシャフトがディスク材で覆われているもの、単一の軸を有する仕様のもの、ディスク部が取り外し可能なもの等がある。
【0015】
このディスクロール1は、板ガラスの製造において、搬送用ロールとして使用できる。図2には、板ガラスの製造において搬送用ロールとして使用されるディスクロール1の一例を示す。図2に示すように、板ガラスの製造装置(不図示)においては、並列に配置された一対のディスクロール1が、その軸部20を中心に回転可能に設置される。尚、ディスクロール1は動力発生装置(不図示)に接続されていてもよい。この場合、ディスクロール1は、動力発生装置が発生させた動力に基づき回転することができる。
【0016】
そして、搬送路の上流側から溶融された状態で送られてきたガラスリボン30は、回転する一対のロール部10によって挟持されながら下流側に搬送される。即ち、図2に示す例において、ガラスリボン30は鉛直方向下方(図2に示す矢印Dの指す方向)に搬送される。平板形状ガラスは、上記のダウンドロー法の他に、フロート法、ロールアウト法、コルバーン法等により製造することができる。
【0017】
ディスクロール1によって搬送されることにより、ガラスリボン30は徐冷される。尚、図2には、一対のディスクロール1のみを示しているが、搬送路に沿って、二対以上のディスクロール1を設置することもできる。
【0018】
また、ディスクロール1は、製造される板ガラスの公称板厚を調整するためにガラスリボン30に張力を加える牽引ロールとしても使用できる。牽引ロールによるガラスリボン30の牽引速度によって、製造される板ガラスの公称板厚を調整することができる。
【0019】
このように、板ガラスの製造において、ガラスリボン30と接触するロール表面12は、ガラスの溶融温度以上の高温に耐える耐熱性、ライントラブル等の際直ぐにロールを取り出すための耐スポーリング性、接触するガラスリボン30を傷つけない柔軟性、長時間高温に耐える耐久性、ガラスリボン30を汚染しない低発塵性といった特性を兼ね備えていることが望まれる。
【0020】
ここで、本発明の耐熱ロールは、実施例に記載の方法で測定した加熱収縮率が、1%以下のロールをいう。
【0021】
次に、このような優れた特性を備えたディスクロール1及びその製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、まず、複数のディスク材11を用いてディスクロール1を組み立てる。ディスク材11の製造においては、まず、水性スラリーを調製し、当該水性スラリーから所定厚さの板状体(いわゆるミルボード)を製造する。
【0023】
水性スラリーは、最終的に製造されるディスク材11が備えるべき組成に応じた組成で調製する。即ち、例えば、この水性スラリーは、ディスクロール1に装着されたディスク材11において5重量%以上という含有量を達成するために必要な量の粘土系鉱物を含有する。
【0024】
粘土系鉱物としては、加熱により焼結する特性を有するものを好ましく使用できる。1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。具体的に、例えば、木節粘土や蛙目粘土等の耐火性粘土や、ベントナイト、カオリンを使用でき、当該耐火性粘土を好ましく使用できる。中でも、木節粘土は、焼結によるバインダー効果が高く、不純物も少ないため好ましい。
【0025】
また、水性スラリーは、さらに無機繊維や充填材を含有することもできる。無機繊維としては、ディスク材11の強度を高める補強材となるものであれば特に限られず任意の種類のものを適宜選択して用いることができ、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
即ち、例えば、セラミック繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維等の人造無機繊維を好ましく用いることができる。より具体的に、例えば、耐熱性に優れたアルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維を特に好ましく使用できる。
【0027】
充填材としては、ディスク材11の耐熱性や強度等の特性の向上に寄与するものであれば特に限られず任意の種類のものを適宜選択して用いることができ、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。即ち、例えば、マイカ、ワラストナイト、セピオライト、シリカ、アルミナ、コージェライト、焼成カオリン等の無機充填材を使用でき、中でも高弾性、滑り性、耐摩耗性、耐熱性等の優れた特性を示すマイカを好ましく使用できる。また、鱗片状シリカや鱗片状アルミナを用いることができ、特に鱗片状シリカは摩耗性が高く好ましい。鱗片状シリカは、好ましくは、鱗片状シリカが平行的に重なって形成される2次凝集体、又は前記2次凝集体が複数集まって形成される3次凝集体である。具体的には、鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成される葉状シリカ2次粒子である。葉状シリカ2次粒子が、さらに3次元的に凝集して3次粒子を形成してもよい。葉状シリカ2次粒子及び3次粒子については、特開2006−143666,特許公報3795671等に記載されている。
【0028】
また、水性スラリーは、成形性等の特性を向上させるための助剤をさらに含有することができる。この助剤としては、例えば、ディスク材11を焼成することにより、当該ディスク材11から消失させることのできる有機材料や無機材料を使用できる。有機材料としては、パルプ、澱粉、合成樹脂の繊維や粒子等の有機バインダーを使用できる。
【0029】
このような原料の混合物として調製された水性スラリーを板状に成形し、乾燥させることによりミルボードを製造することができる。ミルボードの成形は、抄造機を用いた抄造法により好ましく行うことができる。ミルボードの厚さは、ディスク材11の厚さに相当する所望の値に設定でき、例えば、2〜30mmの範囲とすることができる。
【0030】
そして、ミルボードの一部を円盤状に打ち抜き、打ち抜かれた円盤体をディスク材11として得る。尚、ディスク材11の中央には、組み立ての際に軸部20を挿通するための貫通穴が形成される。
【0031】
また、ディスク材11は、ミルボードから打ち抜かれた円盤を焼成したものとすることができ、また、焼成することなくミルボードを打ち抜いて得られる円盤そのものとすることもできる。複数のディスク材11を有するディスクロール1を組み立てた後、当該複数のディスク材11を含むロール部10を焼成することもできる。また、ロール部10に対して後述する表面処理工程S20における表面処理を施した後に、当該ロール部10を焼成することもできる。尚、焼成条件は特に制限されず、焼成炉の仕様、ディスク材11のかさ密度や大きさ等の条件に応じて適宜変更することができる。即ち、焼成温度は特に制限されないが、例えば300〜1000℃の範囲とすることができ、好ましくは400〜900℃の範囲とすることができ、より好ましくは500〜800℃の範囲とすることができる。焼成時間は特に制限されないが、例えば1〜24時間の範囲とすることができる。
【0032】
焼成したディスク材11を製造する場合、当該焼成により、ミルボードに含有されていた有機材料等の助剤を消失させることができる。この結果、焼結した無機材料からなるディスク材11が得られる。また、焼成後のディスク材11には、当該焼成に伴う一部の材料の焼失に由来する空隙が形成される。
【0033】
また、ディスク材11は、モールド成形により製造することもできる。即ち、ディスク材11は、例えば、上述のような原料の混合物として調製されたスラリーを、当該ディスク材11の形状に対応する所定形状のモールド型に流し込み、吸引脱水成形することにより製造することができる。また、モールド成形された円盤の表面に粘土スラリーを含浸させ、乾燥させることにより、当該粘土系鉱物を含有するディスク材11を製造することもできる。
【0034】
モールド成形されたディスク材11もまた、焼成することができる。焼成方法、焼成時期、焼成温度、焼成時間等の焼成条件は、前記と同じである。
【0035】
こうして得られたディスク材11(焼成が行われる場合には焼成後のディスク材11)は、5重量%以上の粘土系鉱物を含有する。この粘土系鉱物の含有量は、さらに10重量%以上とすることが好ましく、15重量%以上とすることがより好ましい。
【0036】
一方、粘土系鉱物の含有量の上限は、ディスクロール1に要求される特性に応じて適宜設定することができる。即ち、粘土系鉱物の含有量は、例えば、50重量%以下とすることが好ましく、45重量%以下とすることがより好ましい。粘土系鉱物の含有量が多いと、ロール部10において、割れの発生、クラックの形成、複数のディスク材11の分離といった問題が発生しやすくなり、ディスクロール1がその性能を十分に発揮できないことがある。
【0037】
従って、ディスク材11における粘土系鉱物の含有量は、例えば、5〜50重量%の範囲とすることができ、10〜30重量%の範囲とすることが好ましく、10〜43重量%の範囲とすることがより好ましい。
粘土系鉱物として、木節粘土とベントナイトを含むことが好ましい。これらの含有量はそれぞれ好ましくは5〜30重量%、より好ましくは7〜25重量%、さらに好ましくは8〜23重量%である。
【0038】
また、ディスク材11に含有される無機繊維や充填材の量は、これらの材料の種類やディスクロール1に要求される特性に応じて適宜設定することができる。即ち、無機繊維の含有量は、例えば、20〜50重量%が好ましく、25〜45重量%がさらに好ましく、30〜43重量%がさらに好ましい。
また、充填材の含有量は、たとえば、5〜50重量%の範囲とすることが好ましく、7〜40重量%の範囲とすることがより好ましく、10〜35重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0039】
粘土系鉱物、無機繊維、充填材及び有機バインダーで、ディスクロールの90%以上、95%以上、98%以上、又は100%を占めることができる。
【0040】
こうして製造された複数のディスク材11を順次、軸部20に嵌め入れる。さらに、軸部20に沿って積層された複数のディスク材11を、油圧プレス等により、当該軸部20の長手方向に締め付ける。そして、圧縮された状態の複数のディスク材11を、軸部20の両端部分に設けられた一対のフランジ21により挟み込み、さらに一対のナット22により固定する。尚、複数のディスク材11を軸部20に嵌め入れた後、圧縮することなく、これらをフランジ21及びナット22で固定することもできる。
【0041】
こうして、積層された複数のディスク材11からなるロール部10を備えたディスクロール1を組み立てることができる。ロール部10を構成する複数のディスク材11を圧縮して固定することにより、当該ロール部10を、組み立て前の各ディスク材11に比べて硬化させ、また緻密化することができる。
【0042】
尚、ロール部10は、上述の積層された複数のディスク材11を有するものに限られない。即ち、ロール部10は、例えば、5重量%以上の粘土系鉱物を含有する1つの円筒状成形体とすることもできる。また、ロール部10は、5重量%以上の粘土系鉱物を含有する複数の円筒状成形体が軸部20に沿って積層されてなるものとすることができる。
【0043】
このような円筒状成形体は、例えば、上述のような無機材料を主成分とする原料を使用したモールド成形により製造することができる。この場合、ロール部10は、上述のような原料の混合物として調製されたスラリーを、当該ロール部10の形状に対応する所定形状のモールド型に流し込み、吸引脱水成形することにより、円筒状成形体として製造される。この場合、モールド成形前のスラリーに予め粘土系鉱物を含有させておくこととしてもよい。また、モールド成形された円筒状成形体の表面に粘土スラリーを含浸させ、乾燥させることにより、当該粘土系鉱物を含有するロール部10を製造することもできる。
【0044】
また、ロール部10は、繊維間に粘土系鉱物を含有する無機繊維成形体とすることもできる。即ち、ロール部10は、例えば、繊維間に粘土系鉱物を含有するシート状の無機繊維成形体が軸部20に1回又は複数回巻き付けられてなるものとすることができる。
【0045】
この場合、ロール部10は、例えば、無機繊維成形体に粘土スラリーを含浸させることにより製造することができる。具体的に、例えば、無機繊維ペーパーに粘土スラリーを含浸させ、次いで、当該無機繊維ペーパーを軸部20に巻き付けることによりロール部10を製造することができる。また、例えば、粘土系鉱物を含有するスラリーを抄造することにより当該粘土系鉱物を含有する無機繊維ペーパーを製造し、次いで、当該無機繊維ペーパーを使用してロール部10を製造することもできる。また、例えば、無機繊維ブランケットを軸部20に巻き付け、次いで、当該無機繊維ブランケットに粘土スラリーを含浸させ、乾燥させることによりロール部10を製造することもできる。
【0046】
これら円筒状成形体や無機繊維成形体もまた、焼成することができる。また、上述のような複数のディスク材11、円筒状成形体又は無機繊維成形体を有するロール部10を備えた耐熱ロールを組み立てた後に、当該ロール部10を焼成することもできる。また、ロール部10に対して後述する表面処理工程S20における表面処理を施した後に、当該ロール部10を焼成することもできる。これらの場合も、焼成条件は特に制限されず、焼成炉の仕様、円筒状成形体や無機繊維成形体のかさ密度や大きさ等の条件に応じて適宜変更することができる。焼成温度と焼成時間は、前記と同じである。
【0047】
以下、このように製造されたロールの表面仕上げについて、図面を用いて説明する。図3は、本製造方法の第1の実施形態に含まれる主な工程を示す。右端には表面の様子の概略を示す。
【0048】
はじめに、研削工程S10において、組立工程で組み立てられたディスクロール1のロール表面12を研削する。即ち、乾燥状態のロール表面12の一部を削り取ることにより、当該ロール表面12を平滑化するとともに、ロール部10の径を調節する。例えば、図1に示すように、ロール部10の長手方向における径を一定に調節することができる。
【0049】
本実施形態では、研削工程S10は切削工程S12及び研磨工程S14を含む。
まず、ロール表面12を旋盤等の切削装置によって切削することにより、ロール表面12上の比較的大きな凹凸を解消する(切削工程S12)。しかしながら、図の右欄に示すように、表面には依然として微小な凹凸は残っている。
次に、サンドペーパー等の研磨具によってロール表面12をさらに研磨して平坦化する(研磨工程S14)。このとき、図の右欄に示すように、研磨により生じた微粒子が凹に入り込む。
また、研削工程S10を、切削工程S12及び研磨工程S14と分けずに、切削及び研磨を一工程で行ってもよく、または、表面状態によっては、どちらかを省略してもよい。
【0050】
次に、表面処理工程S20において、研削工程S10で研削されたロール表面12を湿らせた状態でならす表面処理を行う。この実施形態では、表面処理工程S20においては、まず、研削後の乾燥したロール表面12に水を塗布する(水塗布工程S22)。
【0051】
尚、本実施形態では水を使用したが、ロール表面12に含浸させることができる、溶質を含まない液体であれば特に限られず任意の種類のものを適宜選択して用いることができ、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。即ち、例えば、水、エタノール、アセトンといった極性溶媒を好ましく使用でき、中でも取り扱いが容易で、粘土系鉱物を効果的に可塑化できることから、水を特に好ましく使用できる。
また、塗布に限られず、霧吹き等の噴霧器具を用いてもよい。
【0052】
ロール表面12は、湿らせることによって可塑化できる。即ち、ロール表面12を構成する微粒子は、乾燥状態では硬化し強く拘束されているが、湿潤状態においては軟化し、変形や移動が比較的容易となる。
【0053】
そこで、この表面処理工程S20においては、さらに湿ったロール表面12に外力を加えて、当該ロール表面12をならす(ならし工程S24)。即ち、例えば、湿らせたロール表面12を擦って、当該ロール表面12に沿った方向にせん断力をかける。
【0054】
これによって、ロール表面12を構成する微粒子の一部を、当該ロール表面12に沿って移動させることができる。この結果、ロール表面12の凹凸を低減することができる。
【0055】
即ち、例えば、図の右欄に示すように、ロール表面12の凸部を構成する微粒子を、当該ロール表面12に沿って移動させて、当該ロール表面12の凹部に埋め込むことにより、当該ロール表面12を平滑化することができる。
【0056】
また、ロール表面12を押さえる力を加えることによって、当該ロール表面12を構成する微粒子をより密に充填することもできる。即ち、湿ったロール表面12において、微粒子は互いにずれながら移動できるため、適度な押圧力の負荷によって、微粒子をより均一な分散状態となるように再配置し充填し直すことができる。この結果、ロール表面12を緻密化することができる。
【0057】
また、水塗布工程S22とならし工程S24は、ロール部10を回転させながら行ってもよい。
【0058】
表面処理工程S20は、水塗布工程S22及びならし工程S24と分けずに、水で湿らすと同時にならす一工程で行ってもよい。
【0059】
上記の表面処理工程S20は、図4に示すように基材を用いて実施することができる。
図4は、上述の表面処理を実現する上で好ましい態様の一例を示す。図4には、図1に示すディスクロール1のうち、IV−IV線で切断したロール部10の断面と、当該ロール部10に対する表面処理に使用される基材40の断面を示している。
図4に示すように、この例では、回転するロール表面12に基材40を押し付けることにより、上述の表面処理を行う。即ち、まず軸部20を中心にして、ロール部10を図4に示す矢印Rの指す方向に回転させる。
【0060】
そして、回転するロール表面12に対して基材40を押し付け、その状態を維持する。このとき、図4に示すように、基材40をロール表面12に沿って配置することが好ましい。尚、図4には、ロール表面12の周方向に沿って基材40が配置されている様子のみを示されているが、当該基材40は、当該ロール表面12の長手方向にも沿うよう配置することができる。こうして、ロール表面12を、基材40に接触させながら回転させることになる。
【0061】
基材40としては、例えば、シート状の基材40を好ましく使用できる。
水塗布工程S22においては、予め液体を保持した基材40をロール表面12に接触させる方法を使用できる。
ならし工程S24においては、湿ったロール表面12にシート状の基材40を押し付けることにより当該基材40を当該ロール表面12の周方向に沿って配置しつつロール部10を回転させることにより、当該ロール表面12をならす。
【0062】
基材40としては、例えば、サンドペーパー等、ロール表面12と接触する表面に研磨用の凹凸が形成されたシート状の基材40を好ましく使用できる。このような研磨能を有する基材40を使用することにより、上述のように、ロール表面12を構成する微粒子の移動及び再充填を実現することができる。
【0063】
また、図4に示すように、ロール表面12に沿って配置できる柔軟性を有する基材40を好ましく使用できる。具体的に、例えば、織布や不織布等のシート状繊維基材や、可とう性を有する合成高分子製のシート状多孔質基材(例えば、発泡成形体)を好ましく使用できる。また、上述のように表面に研磨用の凹凸が形成されたシート状の基材40(例えば、サンドペーパー)も好ましく使用できる。
【0064】
表面処理工程S20においては、周方向の一方に回転するロール部10のロール表面12に上述の表面処理を施し、さらに、当該ロール部10の回転方向を反対方向に切り換えて上述の表面処理を行う繰り返し処理を1回以上実施することもできる。
【0065】
即ち、この場合、まず、ロール部10を周方向の一方(例えば、図4に示す矢印Rの指す方向)に回転させながら、ロール表面12を湿らせた状態でならす表面処理を行う。この表面処理は、上述のように、まず湿らせ、その後にならすという2段階で実施してもよい。
【0066】
次いで、表面処理後のロール表面12を乾燥させることなく、ロール部10の回転方向を反対方向に切り換えて、繰り返し処理を行う。即ち、繰り返し処理においては、ロール部10を周方向の他方(例えば、図4に示す矢印Rの指す方向と反対の方向)に回転させながら、ロール表面12を湿らせた状態でならす表面処理を行う。
【0067】
さらに、2回目の繰り返し処理を行う場合には、上述の第一の繰り返し処理後のロール表面12を乾燥させることなく、ロール部10の回転方向を再び反対方向に切り換えて、第二の繰り返し処理を行う。即ち、この第二の繰り返し処理においては、ロール部10を再び周方向の一方に回転させながら、ロール表面12を湿らせた状態でならす表面処理を行う。
【0068】
そして、3回以上の繰り返し処理を実施する場合には、同様に、ロール部10の回転方向を切り換えて、切り換えられた後の方向に回転するロール部10のロール表面12に表面処理を施す。尚、繰り返し処理における表面処理もまた、上述のように2段階で実施してもよい。
【0069】
表面処理工程S20において、ロール表面12をならすために当該ロール表面12に負荷する押圧力は特に限られず、上述のような当該ロール表面12の平滑化及び緻密化を達成できる範囲で任意に設定することができる。
【0070】
即ち、上述のようにロール表面12に基材40(例えば、サンドペーパー等の研磨能を有するシート状の基材40)を押し付けて当該ロール表面12をならす場合には、当該ロール表面12に対して、例えば、当該基材40の幅方向(軸部20の長手方向)の単位長さ(1mm)あたり100〜2000Nの範囲の押圧力(即ち、100〜2000N/mmの範囲の押圧力)を負荷することができる。
【0071】
また、表面処理工程S20において、ロール表面12をならす際に当該ロール表面12を回転させる速度は特に限られず、上述のような当該ロール表面12の平滑化及び緻密化を達成できる範囲で任意に設定することができる。
【0072】
即ち、ロール部10の回転速度は、例えば、10〜1500rpmの範囲とすることができる。また、ロール表面12の周速度は、例えば、1〜1000m/分の範囲とすることができる。
【0073】
また、表面処理工程S20を1段階で行うときは、予め湿らせた基材を用いてロール表面12をならし、表面処理を行う。
【0074】
基材40に水を含ませて使用するときは、例えば、水等の液体を保持できる繊維基材や多孔質基材を使用できる。具体的に、例えば、水を用いて表面処理を行う場合には、親水性の材料から構成された、含水性の繊維基材や多孔質基材を好ましく使用できる。
【0075】
湿らせた基材40をロール表面12に沿って配置した状態で、当該ロール表面12を回転させると、湿った基材40がロール表面12の一部を覆っているため、当該基材40からの液体(水分)の徐放により当該ロール表面12を効率よく湿らせることができるとともに、いったん湿ったロール表面12が再び乾燥することを効果的に防止できている。
【0076】
次に、粘土被膜工程S30において、上記表面処理を施したロール表面12に粘土水を塗布する(粘土水塗布工程S32)。その後、乾燥する(乾燥工程S34)。乾燥は自然乾燥でよいが、乾燥機を使用することもできる。このようにすることで、粘土系鉱物の被膜が形成され、表面処理工程S20だけでは十分に平坦化できなかった凹凸も、平坦化できるようになる。その結果、発塵が抑制される。
【0077】
粘土系鉱物としては、膨潤力15ml/2g以上のものを使用することができ、好ましくは20ml/2g以上のもの、さらに好ましくは30ml/2g以上のものが好ましい。例えば木節粘土や蛙目粘土等の耐火性粘土や、ベントナイト、カオリンを使用できる。
膨潤力は日本ベントナイト工業会標準試験方法(JBAS−104−77)に準じて測定すればよい。具体的には以下のように測定すればよい。試料2gを正確に量り、精製水100mlを入れた100mlの共栓付きメスシリンダーに加える。このとき、加えた試料が内壁に付着しないように注意する。また、試料が十分吸水及び分散するように試料を数回に分けて加えるようにするとともに、前に加えた試料のほとんどが沈降してから次の試料を加える。すべての試料を加えたら栓をし、24時間静置後、メスシリンダーの下部に堆積した容積A(ml)を読み取る。読み取った値が膨潤力(ml/2g)となる。
【0078】
塗布に用いる粘土水としては、例えば、水10Lに粘土系鉱物を1〜1000g溶解又は分散させたものを用いることができる。
尚、本実施形態では水を使用したが、粘土系鉱物を適当に溶解又は分散できるものであれば、特に限られず任意の種類のものを適宜選択して用いることができ、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。取り扱い易さ等の点から、水が好ましい。
【0079】
被覆する量は、好ましくは、平均膜厚0.01mm〜5mm程度であり、さらに厚くすることもできる。または、例えば、平均表面積1m当たり固形分量で0.1g〜1000g程度であり、好ましくは0.1g〜100g、より好ましくは0.3〜50gである。
尚、被覆は表面の全てを被覆していなくてもよい。好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。
【0080】
粘土系鉱物液を、例えば噴霧する方法、浸漬、はけ塗り、又は滴下等により、ロール表面12上に付着する。
【0081】
図5に、本発明の第2の実施形態に含まれる主な工程を示す。右端には表面の様子の概略を示す。
この実施形態では、研削工程S10の後、水を塗布する代わりに、第1の実施形態において使用した粘土含有水を塗布する(表面処理工程S40)。尚、研削工程S10は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
この実施形態では、粘土含有水を塗布し(粘土水塗布工程S42)、ならして乾燥した後(ならし工程S44、乾燥工程S46)、第1の実施形態と同様に粘土系鉱物の被膜を形成する。この工程では、図の右欄に示すように、湿らせたロール表面12に、表面12に沿った方向にせん断力をかけ、ロール表面12を構成する微粒子の一部を、当該ロール表面12に沿って移動させて、ロール表面12の凹凸を低減させる。これと共に、粘土水に含まれる粘土系鉱物も表面12の凹部に入り込みこれを埋め、さらに、表面の上に粘土被膜を形成する。従って、第1の実施形態のような水だけの表面処理工程S20だけでは十分に平坦化できなかった凹凸も、平坦化できるようになる。その結果、発塵が抑制される。
【0082】
こうして得られるディスクロール1においては、ロール表面12が、ロール部10の内部13に比べて緻密化されている。即ち、ロール部10においては、当該ロール部10の外表面及びその近傍部分を含む所定厚みの表面部分が局所的に緻密化されている。
【0083】
尚、第2の実施形態では、第1の実施形態で実施したように、再度粘土水を付着させて乾燥させる工程(粘土被膜工程S30)は必要ない。しかし、第1の実施形態のようにさらに粘土系鉱物の被膜を形成して(粘土被膜工程S30を実施して)、厚みを増してもよい。
【0084】
本発明の耐熱ロールの表面12は発塵が抑制され、平滑化されている。また、粘土系鉱物の被膜が有るため強度も高くなっている。
【0085】
JIS B 0601−1994で規定された方法で測定されるロール表面12の算術平均粗さRaは、5.0μm以下とすることができ、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0086】
また、JIS B 0601−1994で規定された方法で測定されるロール表面12の最大高さRyは、25.0μm以下とすることができ、15.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以下であることが特に好ましい。
【0087】
また、JIS B 0601−1994で規定された方法で測定されるロール表面12の十点平均粗さRzは、25.0μm以下とすることができ、15.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以下であることが特に好ましい。
【0088】
ロール表面12は、その算術平均粗さRa、最大高さRy及び十点平均粗さRzのうち少なくとも一つが上記の範囲であることが好ましく、これら3つの全てについて上記の範囲であることが特に好ましい。
【0089】
また、本発明で得られる耐熱ロールのロール部10は、上記の表面仕上げの前後で、同等の耐熱性等の特性を維持することができる。
【実施例】
【0090】
実施例1、比較例1
ディスクロール用基材から外径60mm内径20mmのディスク材を打ち抜き、直径20mmのステンレス製シャフトに長さ100mm、充填密度が1.35g/cmになるようにロールビルドし、図1に示すようなディスクロール1を作製した。
【0091】
このディスク材11は、粘土系鉱物として10重量%の木節粘土、10重量%のベントナイト、無機繊維として40重量%のムライト繊維、充填材として32重量%のマイカを含有していた。尚、ディスクロール用基材は助剤として6重量%のパルプと2重量%の有機バインダーを含有していた。
【0092】
この組み立てられたディスクロール1を焼成した。ディスク材11に含有されていたパルプ及び有機バインダーは、この焼成により焼失させた。
【0093】
次いで、このディスクロール1のロール表面12を研削した。研削は、ディスクロール1を所定の駆動装置に設置して軸部20を中心に回転させ、回転するロール表面12にサンドペーパーを接触させることにより行った。
【0094】
そして、研削時と同様に、回転するロール表面12に、予め水を含浸させて湿らせた無塵ペーパー(キムワイプ、日本製紙クレシア株式会社)を押し当てて所定時間保持することにより、当該ロール表面12を湿らせた状態でならす表面処理を行った。
表面処理後のロール表面12を加熱して乾燥させた。
【0095】
上記表面処理を行ったロール表面12に、ベントナイト水溶液を霧吹きと刷毛で塗布して被膜処理を行った。ベントナイト水溶液は、水10Lにベントナイト50gを溶解して調製した。その後、ロール表面12を自然乾燥してディスクロール1を製造した。
【0096】
比較例1として、上記表面処理は行ったが、上記被膜処理を行っていないディスクロールを準備した。
ディスクロール1及び被膜処理を行っていないディスクロールそれぞれについて、以下の特性を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(1)加熱収縮率(耐熱性)
ディスクロールを900℃で3時間加熱した後、ロールの長さ方向の長さを測定し、下記式に基づいて加熱収縮率を評価した。
[(加熱前の測定値−加熱後の測定値)/加熱前の測定値]×100
【0098】
(2)耐スポーリング性(耐熱性)
ディスクロールを、900℃に保持した電気炉に投入し、15時間後に取り出して室温25℃まで急冷した。そして、この加熱及び急冷のサイクルをディスクロールのクラック又はディスクセパレーションが発生するまで繰り返し、クラック又はディスクセパレーションが発生したサイクル数をカウントした。
【0099】
(3)柔軟性(荷重変形量)
ディスクロールをシャフトの両端を架台で支持し、ディスク材からなるロール面に圧縮子により8.82N/mmで加圧し、そのときの荷重変形量を測定した。
【0100】
(4)耐久性(熱間磨耗試験)
セラミック繊維含有ディスクロール用基材から外径80mm内径30mmのディスク材
を打ち抜き、直径30mmのステンレス製シャフトに、長さ100mm、充填密度が1.
25g/cm3になるようにロールビルドし、ディスクロールを作製した。
このディスクロールのロール面に2mm間隔で幅2mmの溝加工を5本施した直径30
mmのステンレス製の軸を接触させた状態で、900℃で5時間回転させた後、室温25
℃まで冷却し、ディスクロールのロール表面にできた溝の深さを測定した。
【0101】
(5)発塵性
発塵性は、ロール表面を黒色の画用紙に擦り付け、これにより当該画用紙に付着した粉の重量を測定するとともに、当該画用紙の明度を色差計で測定することにより評価した。
上記のディスクロールを用いて、実際に板ガラスを製造したところ、発塵性に有意な差があった。
【0102】
(6)表面粗さ
触針式表面粗さ測定機(JIS B 0651)を使用して、JIS B 0601−1994で規定された方法により測定し、算術平均粗さRa、最大高さRy及び十点平均粗さRzを測定した。
【0103】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の製造方法によって得られたディスクロールは、板ガラス、特に液晶用ガラスやプラズマディスプレイ用ガラスの製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 ディスクロール
10 ロール部
11 ディスク材
12 ロール表面
13 ロール部の内部
20 軸部
21 フランジ
22 ナット
30 ガラスリボン
40 基材
41 基材表面
図1
図2
図3
図4
図5