特許第6182046号(P6182046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182046光電変換用増感色素およびそれを用いた光電変換素子ならびに色素増感太陽電池
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  • 特許6182046-光電変換用増感色素およびそれを用いた光電変換素子ならびに色素増感太陽電池 図000095
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182046
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】光電変換用増感色素およびそれを用いた光電変換素子ならびに色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20170807BHJP
   C09B 23/00 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20170807BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01G9/20 113A
   C09B23/00 MCSP
   H01L31/04
   C09K3/00 T
   H01G9/20 105
   H01G9/20 115A
   H01G9/20 113D
   H01G9/20 111D
   H01G9/20 111A
   H01G9/20 107C
【請求項の数】11
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-214673(P2013-214673)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78259(P2015-78259A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】岡地 誠
(72)【発明者】
【氏名】村岡 泰斗
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−266633(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0073052(US,A1)
【文献】 特開2010−116561(JP,A)
【文献】 特開2008−226582(JP,A)
【文献】 特開2006−073375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
C09B 23/00
C09K 3/00
H01L 31/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される光電変換用増感色素。
【化1】
(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。RおよびRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、またはアリール基を表す。RおよびRは互いに結合して環を形成してもよい。RおよびRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。ここで、nが2〜4である場合、複数存在するRおよびRは、そのR同士、R同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。Aは、下記一般式(2)または(3)で示される1価基を表す。)
【化2】
(式中、Rは酸性基を表す。)
【化3】
(式中、Xは下記一般式(4)で示される1価基を表し、Yは下記一般式(5)で示される1価基を表す。pは0〜2の整数を表し、pが2である場合、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
【化4】
(式中、R10およびR11は同一でも異なっていてもよく、水素原子または酸性基を表す。qは0〜2の整数を表し、rは0〜3の整数を表す。ここで、前記一般式(3)においてpが2である場合、複数存在するR10、R11、q、rは、そのR10同士、R11同士、q同士、r同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化5】
(式中、R12およびR13は同一でも異なっていてもよく、水素原子または酸性基を表す。vは0〜2の整数を表し、wは0〜3の整数を表す。)
ただし、pが0である場合は、一般式(5)におけるR12またはR13の少なくとも一方は酸性基であるものとし、pが1または2である場合は、一般式(4)または一般式(5)におけるR10、R11、R12、またはR13のうち、少なくとも一つは酸性基であるものとする。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、RおよびRが、水素原子、炭素原子数1もしくは2のアルキル基、またはアリール基であることを特徴とする、請求項1に記載の光電変換用増感色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、少なくともRまたはRのいずれか一つが炭素原子数5〜12のアルキル基であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光電変換用増感色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Aが前記一般式(2)で示される1価基であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【請求項5】
前記一般式(1)において、RおよびRがアリール基であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【請求項6】
前記一般式(1)において、Rがアリール基であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【請求項7】
前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、かつRが水素原子または炭素原子数5〜12のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【請求項8】
前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、かつRが水素原子またはn−ヘキシル基であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【請求項9】
一対の対向する電極間に、少なくとも半導体層および電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素が前記半導体層に担持されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項10】
前記光電変換素子において、前記電解質層が4−tert−ブチルピリジンを含有することを特徴とする、請求項9記載の光電変換素子。
【請求項11】
光電変換素子を有する色素増感太陽電池であって、請求項9または請求項10に記載の光電変換素子をモジュール化し、所定の電気配線を設けることによって得られることを特徴とする色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色素増感型の光電変換素子に用いられる増感色素と、それを用いた光電変換素子ならびに色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料から生じる二酸化炭素が温室効果ガスとして地球温暖化や、地球温暖化による環境破壊を引き起こしており、人口増加に伴う世界的なエネルギー消費の増大により、地球規模での環境破壊がますます進行することが懸念されている。このような状況において、化石燃料とは異なり枯渇する恐れの少ない太陽エネルギーの利用が精力的に検討されている。太陽光発電の導入により、地球温暖化の防止、光熱費の節約等が期待できるため、太陽エネルギーの開発や利用は、欧州や日本を中心に年々急速に進んでいる。
【0003】
太陽光発電の手段としては、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子を用いた太陽電池が注目されるようになってきた。太陽電池としては、単結晶、多結晶、アモルファスのシリコン系、ガリウムヒ素、硫化カドミウム、セレン化インジウム銅等の化合物半導体系といった無機系太陽電池が主に研究され、それらのうちいくつかは住宅用等に実用化されている。しかし、これらの無機系太陽電池は製造コストが高いことや、原材料の確保が困難であること等の問題点を抱えている。
【0004】
その一方で、有機材料を用いた有機系太陽電池は、製造コスト、大面積化、原材料確保の点で有利と言われている。有機系太陽電池としては、有機半導体と金属との接触界面における起電力の発生を利用するショットキー接合型有機系太陽電池が知られていたが、光電変換効率の向上に限界があることが認識されるようになった。そのため、2種の有機半導体の接触界面、あるいは有機半導体と無機半導体の接触界面を利用したpnヘテロ接合型有機系太陽電池が期待されるようになった。しかし、これら有機系太陽電池の光電変換効率は無機系太陽電池と比べると格段に低く、耐久性も悪いという問題があった。
【0005】
こうした状況の中、スイスのローザンヌ工科大学のグレッツェル教授らにより、高い光電変換効率を示す色素増感太陽電池が報告された(例えば、非特許文献1)。提案された色素増感太陽電池は、酸化チタン多孔質薄膜電極、ルテニウム錯体色素、電解液からなる湿式太陽電池である。色素増感太陽電池は、他の太陽電池に比べて素子構造が簡単で、大型の製造設備がなくても製造できる可能性があり、また、既に実用化されているアモルファスシリコン太陽電池に匹敵する高い光電変換効率が期待されることから、近年になって次世代型太陽電池として注目を集めている。
【0006】
色素増感太陽電池に用いられる増感色素としては、光電変換効率の点からは、ルテニウム錯体が最も優位と考えられているが、ルテニウムは貴金属であるため製造コスト面で不利であり、かつ、実用化されて大量のルテニウム錯体が必要になった場合には、資源的な制約も問題となる。そのため、増感色素として、ルテニウム等の貴金属を含まない有機色素を用いた色素増感太陽電池の研究が盛んに行われるようになった。貴金属を含まない有機色素としては、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、キサンテン系色素等が報告されている(例えば、特許文献1、2)。
【0007】
近年は増感色素としてエナミン構造、フルオレン構造を有する化合物が報告されている(例えば、特許文献3〜6)。しかし、これらの有機色素は、安価で吸光係数が大きく、かつ構造の多様性により吸収特性の制御が可能といった長所を有するものの、光電変換効率および経時安定性の面で、要求される特性を充分に満足するものが得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−214730号公報
【特許文献2】特開平11−238905号公報
【特許文献3】特開2006−73375号公報
【特許文献4】特開2008−226582号公報
【特許文献5】特開2009−266633号公報
【特許文献6】特開2010−116561号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature(第353巻、737〜740頁、1991年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、効率よく電流を取り出すことのできる新規構造の増感色素を提供し、さらには該増感色素を用いた、光電変換が良好な光電変換素子ならびに色素増感太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、発明者らは増感色素の光電変換特性向上について鋭意検討した結果、特定の構造を有する増感色素を用いることにより、高効率かつ高耐久性の光電変換素子が得られることを見出した。すなわち本発明は、以下の内容で構成されている。
【0012】
1.下記一般式(1)で表される光電変換用増感色素。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。RおよびRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、またはアリール基を表す。RおよびRは互いに結合して環を形成してもよい。RおよびRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。ここで、nが2〜4である場合、複数存在するRおよびRは、そのR同士、R同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。Aは、下記一般式(2)または(3)で示される1価基を表す。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Rは酸性基を表す。)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、Xは下記一般式(4)で示される1価基を表し、Yは下記一般式(5)で示される1価基を表す。pは0〜2の整数を表し、pが2である場合、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、R10およびR11は同一でも異なっていてもよく、水素原子または酸性基を表す。qは0〜2の整数を表し、rは0〜3の整数を表す。ここで、前記一般式(3)においてpが2である場合、複数存在するR10、R11、q、rは、そのR10同士、R11同士、q同士、r同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、R12およびR13は同一でも異なっていてもよく、水素原子または酸性基を表す。vは0〜2の整数を表し、wは0〜3の整数を表す。)
ただし、pが0である場合は、一般式(5)におけるR12またはR13の少なくとも一方は酸性基であるものとし、pが1または2である場合は、一般式(4)または一般式(5)におけるR10、R11、R12、またはR13のうち、少なくとも一つは酸性基であるものとする。)
【0023】
2.前記一般式(1)において、RおよびRが、水素原子、炭素原子数1もしくは2のアルキル基、またはアリール基であることを特徴とする、前記1記載の光電変換用増感色素。
【0024】
3.前記一般式(1)において、少なくともRまたはRのいずれか一つが炭素原子数5〜12のアルキル基であることを特徴とする、前記1または2に記載の光電変換用増感色素。
【0025】
4.前記一般式(1)において、Aが前記一般式(2)で示される1価基であることを特徴とする、前記1〜3のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【0026】
5.前記一般式(1)において、RおよびRがアリール基であることを特徴とする、前記1〜4のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【0027】
6.前記一般式(1)において、Rがアリール基であることを特徴とする、前記1〜5のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【0028】
7.前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、かつRが水素原子または炭素原子数5〜12のアルキル基であることを特徴とする、前記1〜6のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【0029】
8.前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、かつRが水素原子またはn−ヘキシル基であることを特徴とする、前記1〜7のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素。
【0030】
9.一対の対向する電極間に、少なくとも半導体層および電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記1〜8のいずれか一項に記載の光電変換用増感色素が前記半導体層に担持されていることを特徴とする光電変換素子。
【0031】
10.前記光電変換素子において、前記電解質層が4−tert−ブチルピリジンを含有することを特徴とする、前記9記載の光電変換素子。
【0032】
11.光電変換素子を有する色素増感太陽電池であって、前記9または10に記載の光電変換素子をモジュール化し、所定の電気配線を設けることによって得られることを特徴とする色素増感太陽電池。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、効率よく電流を取り出すことが可能な光電変換用増感色素を得ることができる。また、該光電変換用増感色素を用いることにより、高効率かつ高耐久性の光電変換素子および色素増感太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明実施例1〜10および比較例1〜4において作製した光電変換素子の構成を表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の光電変換用増感色素は、色素増感型の光電変換素子において増感剤として用いられる。本発明の光電変換素子は、導電性支持体上の半導体層に色素を吸着させてなる光電極と対極とを、電解質層を介して対向配置させたものである。
【0036】
以下に、前記一般式(1)で表される光電変換用増感色素について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
一般式(1)においてR〜Rで表される、「炭素原子数1〜6のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基をあげることができる。これらの中でも、炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素原子数1もしくは2のアルキル基(メチル基もしくはエチル基)がより好ましい。
【0038】
一般式(1)においてR〜Rで表される「炭素原子数1〜6のアルキル基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基、から選択される置換基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよいが、R〜Rは、置換基を有さない基であるのが好ましい。
【0039】
一般式(1)においてR〜Rで表される、「アラルキル基」としては具体的に、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基などの炭素原子数7〜26のアラルキル基をあげることができる。これらの中でも、ベンジル基またはフェネチル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0040】
一般式(1)においてR〜Rで表される、「アラルキル基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基、から選択される置換基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基;フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基などのエテニル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよい。置換基としては、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシ基が特に好ましい。
【0041】
一般式(1)においてR〜Rで表される、「アリール基」としては具体的に、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基をあげることができる。ここで、本発明においてアリール基とは、芳香族炭化水素基および縮合多環芳香族基を表すものとする。これらの中でも、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0042】
一般式(1)においてR〜Rで表される「アリール基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される置換基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基;フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基などのエテニル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよい。置換基としては、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシ基が特に好ましい。
【0043】
一般式(1)においてR〜Rで表される、「炭素原子数1〜18のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基などの炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基をあげることができる。RおよびRは互いに結合して環を形成してもよく、そのような環としては、シクロペンチル環、シクロヘキサン環などをあげることができる。RまたはRで表される、「炭素原子数1〜18のアルキル基」としては、炭素原子数1〜18の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。また、RまたはRで表される、「炭素原子数1〜18のアルキル基」としては、炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素原子数5〜12の直鎖状アルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基が特に好ましい。
【0044】
一般式(1)においてRまたはRで表される、「炭素原子数1〜18のアルキル基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される置換基を有する二置換アミノ基;カルボキシル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよいが、RまたはRは、置換基を有さない基であるのが好ましい。
【0045】
一般式(1)においてRまたはRで表される、「炭素原子数1〜18のアルキル基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される置換基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよいが、RまたはRは、置換基を有さない基であるのが好ましい。
【0046】
一般式(1)においてRまたはRで表される、「アリール基」としては具体的に、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基をあげることができる。これらの中でも、フェニル基またはナフチル基が好ましい。
【0047】
一般式(1)においてRまたはRで表される「アリール基」は置換基を有していてもよく、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される置換基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基;フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基などのエテニル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよい。置換基としては、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基、または炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシ基が特に好ましい。
【0048】
一般式(2)、(4)または(5)において、R、R10もしくはR11、またはR12もしくはR13で表される「酸性基」としては具体的に、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホン酸基、ホウ酸基、ホスフィン酸基、シラノール基などをあげることができる。これらの中でも、カルボキシル基またはホスホン酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0049】
一般式(1)において、R、RおよびRは、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましく、置換基として炭素原子数1〜6のアルキル基もしくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有するフェニル基、または無置換のフェニル基が特に好ましい。また、RおよびRが、ともにアリール基であるのが好ましく、R、RおよびRが、ともにアリール基であるのがより好ましい。
は、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基が好ましく、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、置換基として炭素原子数1〜6のアルキル基もしくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有するフェニル基、または無置換のフェニル基がより好ましい。
およびRは、水素原子、メチル基もしくはエチル基、またはアリール基が好ましく、無置換のメチル基、または無置換のエチル基がより好ましく、無置換のメチル基が特に好ましい。
【0050】
は、水素原子または炭素原子数5〜12のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子またはn−ヘキシル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数5〜12のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基がさらに好ましく、n−ヘキシル基が特に好ましい。
また、少なくともRまたはRのいずれか一つが炭素原子数5〜12のアルキル基である(ただし、nが2〜4の整数である場合は、複数存在するRおよびRのうち、少なくともいずれか1つが炭素原子数5〜12のアルキル基であればよい)のが好ましく、少なくともRまたはRのいずれか一つが炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基である(ただし、nが2〜4の整数である場合は、複数存在するRおよびRのうち、少なくともいずれか1つが炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基であればよい)のがより好ましく、R(Rが複数存在する場合は当該すべてのR)が水素原子であり、かつR(Rが複数存在する場合は当該すべてのR)が水素原子または炭素原子数5〜12の直鎖状のアルキル基であるのがさらに好ましく、R(Rが複数存在する場合は当該すべてのR)が水素原子であり、かつR(Rが複数存在する場合は当該すべてのR)が水素原子またはn−ヘキシル基であるのが特に好ましい。
【0051】
一般式(1)において、nは1〜4の整数を表す。nが2〜4である場合、複数存在するRおよびRは、そのR同士、R同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。Aは、前記一般式(2)または(3)で示される1価基を表す。
【0052】
一般式(3)において、Xは前記一般式(4)で示される1価基を表し、Yは前記一般式(5)で示される1価基を表す。pは0〜2の整数を表し、pが2である場合、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。一般式(4)において、qは0〜2の整数を表し、rは0〜3の整数を表す。また、一般式(5)において、vは0〜2の整数を表し、wは0〜3の整数を表す。一般式(3)においてpが2である場合、複数存在するR10、R11、q、rは、そのR10同士、R11同士、q同士、r同士がそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0053】
一般式(3)において、pが0である場合は、R12またはR13の少なくとも一方は酸性基であるものとし、pが1または2である場合は、一般式(4)または一般式(5)におけるR10、R11、R12、またはR13のうち、少なくとも一つは酸性基であるものとする。すなわち、pが1である場合は、R10、R11、R12、またはR13のうち、少なくとも一つが酸性基であればよく、pが2である場合は、2つ存在するR10、2つ存在するR11、R12、またはR13のうち、少なくとも一つが酸性基であればよい。
【0054】
一般式(1)で表される本発明の光電変換用増感色素の中でも、R、RおよびRがフェニル基である光電変換用増感色素を用いた場合には、特に効率の高い光電変換素子が得られるため好ましい。また、一般式(1)で表される本発明の光電変換色素の中でも、Rが水素原子であり、Rがn−ヘキシル基(Rが複数存在する場合は、少なくとも1つのRがn−ヘキシル基)である光電変換用増感色素を用いた場合には、増感色素同士の会合や凝集を効率よく抑制することができ、さらに、カルボキシル基またはホスホン酸基を含むことにより、当該増感色素を半導体層の表面上に容易に吸着させることができ、光電変換特性の向上につながる。
【0055】
一般式(1)で表される本発明の光電変換用増感色素は、生じ得る全ての立体異性体を包含するものとする。いずれの異性体も本発明における光電変換用増感色素として好適に使用することができる。例えば前記一般式(1)において、Aが前記一般式(2)で示される1価基である本発明の光電変換用増感色素は、下記一般式(6)または(7)で表される化合物を包含するものとする。また、前記一般式(1)において、Aが前記一般式(3)で示される1価基であり、かつpが0である本発明の光電変換用増感色素は、下記一般式(8)または(9)で表される化合物を包含するものとする。なお、これらの立体異性体から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
一般式(1)で表される本発明の光電変換用増感色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例示化合物は、生じ得る立体異性体のうちの一例を示したものであり、その他全ての立体異性体を包含するものとする。また、それぞれ2種以上の立体異性体の混合物であってもよい。
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
【化25】
【0077】
【化26】
【0078】
【化27】
【0079】
【化28】
【0080】
【化29】
【0081】
【化30】
【0082】
【化31】
【0083】
【化32】
【0084】
【化33】
【0085】
【化34】
【0086】
【化35】
【0087】
【化36】
【0088】
【化37】
【0089】
【化38】
【0090】
【化39】
【0091】
【化40】
【0092】
【化41】
【0093】
【化42】
【0094】
【化43】
【0095】
【化44】
【0096】
【化45】
【0097】
【化46】
【0098】
【化47】
【0099】
【化48】
【0100】
【化49】
【0101】
【化50】
【0102】
【化51】
【0103】
【化52】
【0104】
【化53】
【0105】
【化54】
【0106】
一般式(1)で表される本発明の光電変換用増感色素は、公知の方法を用いて合成することができる。例えば、一般式(1)においてnが1の場合は、以下のようにして合成できる。ブロモ体(B−1)をホルミル化して得られるアルデヒド(B−2)を、エチレングリコールを用いてアセタール(B−3)として保護した後、ブチルリチウムおよびビス(ピナコラト)ジボロン等を用いた反応によりボロン酸エステル(B−4)を得ることができる。一方で、フルオレン系化合物(B−5)とアミド系化合物(B−6)とのUllmann反応により得られる(B−7)を脱アセチル化することによりブロモ体(B−8)を得ることができる。そして、得られたボロン酸エステル(B−4)およびブロモ体(B−8)を用いてSuzukiカップリング等のクロスカップリング反応を行うことにより、アミン(B−9)を得ることができる。続いて、アミン(B−9)とブロモ体(B−10)とのBuchwald-Hartwig反応を行うことにより(B−11)を得た後、アセタールを脱保護して得られるアルデヒド(B−12)と、シアノ酢酸またはロダニン−3−酢酸等との縮合反応を行うことにより、本発明の光電変換用増感色素を合成できる。
また、一般式(1)においてnが2〜4の場合は、以下のようにして合成できる。ブロモ体(B−1)とアルデヒド基を有するボロン酸(B−13)を用いてSuzukiカップリング等のクロスカップリング反応を行うことによりアルデヒド(B−14)を得た後に、上記ボロン酸エステル(B−4)の合成法と同様にして、アセタール(B−15)、ボロン酸エステル(B−16)を順次合成し、ブロモ体(B−8)とのSuzukiカップリング等のクロスカップリング反応を行うことにより、アミン(B−17)を得ることができる。続いて、アミン(B−17)と、上記ブロモ体(B−10)とのBuchwald-Hartwig反応を行うことにより(B−18)を得た後、アセタールを脱保護して得られるアルデヒド(B−19)とシアノ酢酸、ロダニン−3−酢酸等との縮合反応を行うことにより、本発明の光電変換用増感色素を合成できる。
【0107】
【化55】
【0108】
【化56】
【0109】
【化57】
【0110】
【化58】
【0111】
【化59】
【0112】
【化60】
【0113】
【化61】
【0114】
【化62】
【0115】
【化63】
【0116】
【化64】
【0117】
【化65】
【0118】
【化66】
【0119】
【化67】
【0120】
【化68】
【0121】
【化69】
【0122】
【化70】
【0123】
【化71】
【0124】
【化72】
【0125】
【化73】
【0126】
一般式(1)で表される本発明の光電変換用増感色素の化合物の精製は、カラムクロマトグラフィーによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などの公知の方法を用いて行うことができる。また、これらの化合物の同定は、NMR分析等により行うことができる。
【0127】
本発明の光電変換用増感色素は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の光電変換用増感色素は、本発明に属さない他の増感色素と併用することができる。他の増感色素の具体例としては、ルテニウム錯体、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、キサンテン系色素などの前記一般式(1)で表される光電変換用増感色素以外の増感色素をあげることができる。本発明の光電変換用増感色素と、これら他の増感色素とを組み合わせて用いる場合は、本発明の光電変換用増感色素に対する他の増感色素の使用量を10〜200質量%とするのが好ましく、20〜100質量%とするのがより好ましい。
【0128】
本発明において色素増感型の光電変換素子を作製する方法は特に限定されないが、導電性支持体(電極)上に半導体層を形成し、該半導体層に本発明の光電変換用増感色素を吸着させる方法が好ましい。色素を吸着させる方法としては、色素を溶媒に溶解して得られた溶液中に半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。本発明の光電変換用増感色素を2種以上併用する場合、あるいは本発明の光電変換用増感色素を他の増感色素と併用する場合は、使用する全ての色素の混合溶液を調製して半導体層を浸漬してもよく、また、それぞれの色素について別々の溶液を調製し、各溶液に半導体層を順に浸漬してもよい。
【0129】
本発明では、導電性支持体として金属板の他に、表面に導電性材料を有する導電層を設けたガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。導電性材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等の金属、フッ素ドープの酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の導電性透明酸化物半導体、炭素等をあげることができるが、フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板を用いるのが好ましい。
【0130】
本発明において半導体層を形成する半導体の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ニッケル、酸化イットリウム等の金属酸化物;硫化チタン、硫化亜鉛、硫化ジルコニウム、硫化銅、硫化スズ、硫化インジウム、硫化タングステン、硫化カドミウム、硫化銀等の金属硫化物;セレン化チタン、セレン化ジルコニウム、セレン化インジウム、セレン化タングステン等の金属セレン化物;シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体等をあげることができる。これらの半導体は単独で用いるだけでなく、2種類以上を混合して用いることもできる。本発明においては、半導体として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズを用いるのが好ましい。
【0131】
本発明における半導体層の態様は特に限定されないが、微粒子からなる多孔質構造を有する薄膜であることが好ましい。多孔質構造等により、半導体層の実質的な表面積が大きくなり、半導体層への色素吸着量が増大すると、高効率の光電変換素子を得ることができる。半導体粒子径は5〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。半導体層の膜厚は通常2〜100μmであるが、5〜20μmがより好ましい。半導体層を形成する方法としては、半導体微粒子を含むペーストをスピンコート法、ドクターブレード法、スキージ法、スクリーン印刷法等の湿式塗布法で導電性基板上に塗布した後、焼成により溶媒や添加物を除去して製膜する方法や、スパッタリング法、蒸着法、電着法、電析法、マイクロ波照射法等により製膜する方法をあげることができるが、これらに限定されない。
【0132】
本発明において、半導体微粒子を含むペーストは市販品を用いてもよく、市販の半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製したペースト等を用いてもよい。ペーストを調製する際に使用する溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒をあげることができるが、これらに限定されない。また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0133】
本発明において半導体微粉末を溶媒中に分散させる際は、乳鉢等ですりつぶしてもよく、ボールミル、ペイントコンディショナー、縦型ビーズミル、水平型ビーズミル、アトライター等の分散機を用いてもよい。ペーストを調製する際には、半導体微粒子の凝集を防ぐために界面活性剤等を添加するのが好ましく、増粘させるためにポリエチレングリコール等の増粘剤を添加するのが好ましい。
【0134】
本発明の光電変換用増感色素の半導体層表面上への吸着は、該色素溶液中に半導体層を浸し、室温で30分〜100時間放置、あるいは加熱条件下で10分〜24時間放置することにより行うが、室温で10〜20時間放置するのが好ましい。また、該色素溶液中の色素濃度は10〜2000μMが好ましく、50〜500μMがより好ましい。
【0135】
本発明の光電変換用増感色素を、半導体層表面上に吸着させる際に用いる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒をあげることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用される。これらの溶媒の中で、メタノール、エタノール、tert−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが好ましい。
【0136】
本発明の光電変換用増感色素を半導体層表面上に吸着する際には、コール酸またはデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リソコール酸、デヒドロコール酸等のコール酸誘導体を色素溶液中に溶解し、色素と共吸着させてもよい。コール酸またはコール酸誘導体を用いることにより色素同士の会合が抑制され、光電変換素子において色素から半導体層へ効率よく電子注入できるようになる。コール酸またはコール酸誘導体を用いる場合、色素溶液中におけるそれらの濃度は0.1〜100mMが好ましく、1〜10mMがより好ましい。
【0137】
本発明の光電変換素子に用いる対極(電極)としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、レドックスイオンの酸化還元反応を促進するために、触媒能を持った導電性材料を使用するのが好ましい。該導電性材料の具体例としては、白金、ロジウム、ルテニウム、炭素等をあげることができるが、これらに限定されない。本発明においては、導電性支持体上に白金の薄膜を形成したものを対極として用いるのが特に好ましい。また、導電性薄膜を形成する方法としては、導電性材料を含むペーストをスピンコート法、ドクターブレード法、スキージ法、スクリーン印刷法等の湿式塗布法により導電性基板上に塗布した後、焼成により溶媒や添加物を除去して製膜する方法や、スパッタリング法、蒸着法、電着法、電析法、マイクロ波照射法等により製膜する方法をあげることができるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明の光電変換素子においては、一対の対向する電極間に電解質が充填され、電解質層が形成されている。用いる電解質としてはレドックス電解質が好ましい。レドックス電解質としては、ヨウ素、臭素、スズ、鉄、クロム、アントラキノン等のレドックスイオン対をあげることができるが、これらに限定されない。これらの中ではヨウ素系電解質、臭素系電解質が好ましい。ヨウ素系電解質の場合は、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム等とヨウ素の混合物が用いられる。本発明では、これらの電解質を溶媒に溶解させて得られた電解液を用いるのが好ましい。電解液中の電解質の濃度は、0.05〜5Mが好ましく、0.2〜1Mがより好ましい。
【0139】
電解質を溶解させる溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒をあげることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用される。これらの溶媒の中で、ニトリル系溶媒が好ましい。
【0140】
本発明では、前記電解液中に4−tert−ブチルピリジン、4−メチルピリジン、2−ビニルピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルベンズイミダゾール等のアミン系化合物、特に4−tert−ブチルピリジンを含有させてもよい。電解液中のアミン系化合物の濃度は、0.05〜5Mが好ましく、0.2〜1Mがより好ましい。アミン系化合物を電解液中に含有させることにより、色素増感型光電変換素子の開放電圧、フィルファクターが高くなるため、特に好ましい。
【0141】
本発明では、前記電解液中にゲル化剤、ポリマー等を添加させて得られたゲル状電解質を用いてもよい。また、レドックス電解質を含む電解液の代わりに、ポリエチレンオキシド誘導体等のポリマーを用いた固体電解質を用いてもよい。ゲル状電解質、固体電解質を用いることにより、電解液の揮発を低減させることができる。
【0142】
本発明の光電変換素子においては、一対の対向する電極間に電解質の代わりに固体電荷輸送層を形成してもよい。固体電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質は、正孔輸送物質であることが好ましい。電荷輸送物質の具体例としては、ヨウ化銅、臭化銅、チオシアン化銅等の無機正孔輸送物質、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、ポリアニリン、オキサジアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ピラゾリン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物等の有機正孔輸送物質があげられるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明において有機正孔輸送物質を用いて固体電荷輸送層を形成する場合、フィルム形成性結着剤樹脂を併用することが好ましい。フィルム形成性結着剤樹脂の具体例としては、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂等があげられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、単独あるいは共重合体として1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの結着剤樹脂の有機正孔輸送物質に対する使用量は、20〜1000質量%が好ましく、50〜500質量%がより好ましい。
【0144】
本発明の光電変換素子においては、増感色素が吸着した半導体層が設けられた電極(光電極)が陰極となり、対極が陽極となる。太陽光等の光は光電極側、対極側のどちらから照射してもよいが、光電極側から照射する方が好ましい。太陽光等の照射により、色素が光を吸収して励起状態となって電子を放出する。この電子が半導体層を経由して外部に流れて対極へ移動する。一方、電子を放出して酸化状態になった色素は、対極から供給される電子を電解質中のイオンを経由して受け取ることにより、基底状態に戻る。このサイクルにより電流が流れ、光電変換素子として機能するようになる。
【0145】
本発明の光電変換素子の特性を評価する際には、短絡電流、開放電圧、フィルファクター、光電変換効率の測定を行う。短絡電流とは、出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる1cmあたりの電流を表し、開放電圧とは、出力端子を開放させたときの両端子間の電圧を表す。また、フィルファクターとは最大出力(電流と電圧の積)を、短絡電流と開放電圧の積で割った値であり、主に内部抵抗に左右される。光電変換効率とは、最大出力(W)を1cmあたりの光強度(W)で割った値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
【0146】
本発明の光電変換素子は、色素増感太陽電池や各種光センサー等に応用できる。本発明の色素増感太陽電池は、前記一般式(1)で表される増感色素を含有する光電変換素子がセルとなり、そのセルを必要枚数配列してモジュール化し、所定の電気配線を設けることによって得られる。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1]光電変換用増感色素(A−3)の合成
窒素置換した反応容器中に、ジエチルエーテル45ml、2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン4.50gを加え、ドライアイスで−74℃まで冷却し、そこにn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M)12mlを加えて1時間攪拌した。続いて、N,N−ジメチルホルムアミド2.1mlを加えて室温まで昇温し、クロロホルム90mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することによって、下記化合物(C−1)4.90gの橙色オイルを得た。
【0148】
【化74】
【0149】
次に、窒素置換した反応容器中に、トルエン76ml、得られた化合物(C−1)4.90g、エチレングリコール5.1ml、p−トルエンスルホン酸一水和物0.04gを加え、104℃で4時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、トルエン76mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することによって、粗製物を得た。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、減圧乾燥することによって、下記化合物(C−2)4.05g(収率93%)の橙色オイルを得た。
【0150】
【化75】
【0151】
窒素置換した反応容器中に、テトラヒドロフラン112ml、得られた化合物(C−2)3.50gを加え、ドライアイスで−75℃まで冷却し、そこにn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M)14mlを加えて5時間攪拌した。続いて、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2.98gをテトラヒドロフラン14mlに溶解させて得られた溶液を加え、室温まで昇温した後、飽和塩化アンモニウム水溶液56ml、酢酸エチル112mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することによって、下記化合物(C−3)5.21g(収率98%)の黄色オイルを得た。
【0152】
【化76】
【0153】
窒素置換した反応容器中に、2,7−ジブロモ−9,9-ジメチルフルオレン10.0g、パラアセトトルイジン6.35g、銅粉0.18g、1,10−フェナントロリン一水和物0.56g、炭酸カリウム7.85g、亜硫酸水素ナトリウム0.88g、ニトロベンゼン10mlを加えて加熱し、225℃で6時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、クロロホルム200mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗および飽和食塩水洗浄を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することによって粗製物を得た。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、減圧乾燥することによって、下記化合物(C−4)3.40g(収率28%)の黒茶色オイルを得た。
【0154】
【化77】
【0155】
窒素置換した反応容器中に、得られた化合物(C−4)3.40g、イソアミルアルコール6ml、トルエン3ml、精製水1.5ml、水酸化カリウム1.80gを加え、80℃で15時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、トルエン50ml、精製水25mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗を行った。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、溶媒を留去することによって粗製物を得た。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、減圧乾燥することによって、下記化合物(C−5)1.90g(収率62%)の白色固体を得た。
【0156】
【化78】
【0157】
窒素置換した反応容器中に、N,N−ジメチルホルムアミド37ml、精製水7.7mlを加え、そこに、化合物(C−3)1.61g、化合物(C−5)3.20g、トリフェニルホスフィン0.19g、炭酸セシウム2.42gを加えて攪拌した後、反応容器内の減圧、脱気および窒素置換を3回繰り返した。次に、酢酸パラジウム0.04gを加え、87℃で1.5時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、ヘキサン60ml、酢酸エチル60ml、水40mlを加え、有機層を抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することによって粗製物を得た。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、減圧乾燥することによって、下記化合物(C−6)0.99g(収率99%)の黄緑色固体を得た。
【0158】
【化79】
【0159】
窒素置換した反応容器中に、化合物(C−6)0.80g、2−ブロモ−1,1,2−トリフェニルエチレン0.55g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン0.18g、銅アセチルアセトネート0.06g、炭酸カリウム0.24g、トルエン2.5mlを加え、150℃で14時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、トルエン25mlを加えて攪拌した後、濾過を行った。得られた濾液を減圧下で濃縮し、クロロホルムに溶解して、さらに濃縮する工程を3回繰り返し行うことにより、褐色オイル状の粗製物を得た。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、減圧乾燥することによって、下記化合物(C−7)0.37g(収率20%)の黄色固体を得た。
【0160】
【化80】
【0161】
窒素置換した反応容器中に、化合物(C−7)0.10g、アセトン3ml、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム0.03gを加え、室温で1.5時間攪拌した。酢酸エチル30ml、精製水30mlを加えて攪拌し、有機層の抽出、水洗、炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水による洗浄を順次行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、溶媒を留去することによって下記化合物(C−8)0.09g(収率95%)の黄色オイルを得た。
【0162】
【化81】
【0163】
アルゴン雰囲気下、反応容器中に、トルエン15ml、化合物(C−8)0.10g、シアノ酢酸0.02g、ピペリジン0.03gを加え、80℃で15時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、1M塩酸50ml、酢酸エチル50mlを加え、有機層の抽出、水洗、および飽和食塩水による洗浄を順次行った。有機層を無水酢酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去することにより粗製物を得た。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール)で精製することによって、下記光電変換用増感色素(A−3)0.08g(収率70%)の赤褐色粉末を得た。
【0164】
【化82】
【0165】
得られた赤褐色粉末についてNMR分析により構造を同定した。
【0166】
1H−NMR(CDCl)で以下の49個の水素のシグナルを検出した(カルボキシル基の水素は観測されなかった)。δ(ppm)=0.87−0.95(3H)、1.22−1.44(12H)、1.63−1.73(2H)、2.16−2.24(3H)、2.78−2.88(2H)、6.85−7.16(20H)、7.29−7.38(3H)、7.50−7.55(1H)、7.60−7.66(2H)、8.43−8.52(1H).
【0167】
[合成例2]光電変換用増感色素(A−35)の合成
窒素雰囲気下、反応容器中に、トルエン5ml、化合物(C−8)0.25g、ロダニン−3−酢酸0.07g、ピペリジン0.01gを加え、90℃で2時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、1M塩酸10ml、トルエン10mlを加えて抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより粗製物を得た後、メタノールを用いた分散洗浄を行うことにより、下記光電変換用増感色素(A−35)0.25g(収率79%)の赤黒色固体を得た。
【0168】
【化83】
【0169】
得られた赤黒色粉末についてNMR分析により構造を同定した。
【0170】
1H−NMR(CDCl)で以下の51個の水素のシグナルを検出した(カルボキシル基の水素は観測されなかった)。δ(ppm)=0.87−0.94(3H)、1.21−1.43(12H)、1.63−1.73(2H)、2.15−2.24(3H)、2.76−2.87(2H)、4.91−4.97(2H)、6.85−7.19(20H)、7.29−7.39(3H)、7.50−7.60(3H)、7.98−8.04(1H).
【0171】
[実施例1]
フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板上に、酸化チタンペースト(日揮触媒化成製、PST−18NR)をスキージ法により塗布した。110℃で1時間乾燥後、450℃で30分間焼成し、膜厚7μmの酸化チタン薄膜を得た。次に、合成例1で得られた光電変換用増感色素(A−3)をアセトニトリル/tert−ブチルアルコール=1/1の混合溶媒に溶解して濃度100μMの溶液50mlを調製し、この溶液中に、酸化チタンを塗布焼結したガラス基板を、室温において15時間浸漬して色素を吸着させ、光電極とした。
【0172】
フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板上にオートファインコータ(日本電子(株)製JFC−1600)を用いてスパッタリング法により膜厚15nmの白金薄膜を形成し、対極とした。次に、光電極と対極との間に厚さ60μmのスペーサ(熱融着フィルム)を挟んで熱融着により貼り合わせ、対極に予め形成された孔から電解液を注入した後に孔を封止し、光電変換素子を作製した。電解液としては、ヨウ化リチウム0.1M、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.6M、ヨウ素0.05M、4−tert−ブチルピリジン0.5Mの3−メトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0173】
前記光電変換素子の光電極側から、擬似太陽光照射装置(分光計器(株)製OTENTO−SUN III型)で発生させた光を照射し、ソースメータ(KEITHLEY製、Model 2400 General−Purpose SourceMeter)を用いて電流−電圧特性を測定した。光の強度は100mW/cmに調整した。また、光を20時間照射した後についても光電変換効率の測定を行い、特性変化を評価した。測定結果を表1にまとめて示した。
【0174】
[実施例2〜10]
光電変換用増感色素として、(A−3)の代わりにそれぞれ表1に示す増感色素を用いた以外は、実施例1と同様に光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。また、光を20時間照射した後についても光電変換効率の測定を行い、特性変化を評価した。測定結果を表1にまとめて示した。
【0175】
[比較例1〜4]
光電変換用増感色素として、(A−3)の代わりに、本発明に属さない以下の(D−1)〜(D−4)に示す光電変換用増感色素を用いた以外は、実施例1と同様に光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。また、光を20時間照射した後についても光電変換効率の測定を行い、特性変化を評価した。測定結果を表1にまとめて示した。
【0176】
【化84】
【0177】
【化85】
【0178】
【化86】
【0179】
【化87】
【0180】
【表1】
【0181】
表1の結果から、本発明の光電変換用増感色素を用いることにより、光電変換効率が高く、かつ光照射を長時間続けても高い光電変換効率が維持される光電変換素子が得られることが判明した。実施例の中でも、実施例1〜3で得られた光電変換素子の光電変換効率は特に優れていた。一方で、比較例の光電変換用増感色素を用いた光電変換素子の光電変換効率は不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の光電変換用増感色素を用いた太陽電池は、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに効率よく変換できる色素増感太陽電池として有用であり、クリーンエネルギーを提供することができる。
【符号の説明】
【0183】
1 導電性支持体
2 色素担持半導体層
3 電解質層
4 対極
5 導電性支持体
図1