(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
いかなる特定の理論にも束縛されないが、対象とする本発明の方法によって製造されるようなアリールアミンに添加された1つ以上のフルオロアシル基は、従来のアリールアミンのエレクトロニクス材料に、新しい電子的特性および構成を付与する。故に、1つ以上のフルオロアシル基を保持するアリールアミンは、異なるおよび/または改善された特性、例えば電荷輸送特性を有し、多数の異なるエレクトロニクス用途および他の産業用途に有用である。
【0008】
例えば、対象とするフルオロアシルアリールアミンは、感光体において電荷輸送分子として使用できる。1つ以上のフルオロアシル部分が、ベースアリールアミンとは異なる電子的特性、例えば電荷輸送特性を有するフルオロアシルアリールアミンを利用して親アリールアミンの電荷分布を変更する。
【0009】
フルオロアシルアリールアミンは、単独で、または好適なフィルム形成材料を用いて薄いコーティングに形成されることができ、例えば結果として電荷輸送層(CTL)をもたらす。フィルム形成材料は、光発生したホールまたは電子の注入を支持できる、およびCTLを通してホール/電子を輸送し、画像形成デバイス構成成分、例えば感光体の表面上の電荷を選択的に放電させることができる透明有機ポリマーまたは非ポリマー性材料であることができる。フルオロアシルアリールアミンを含有するCTLは、例えば写真複写デバイスに有用な光の波長、例えば約400nm〜約900nmに曝される場合に、わずかな光吸収および無視できる電荷発生を伴って実質的な光学的透明性を示す。
【0010】
故に、CTLは、フィルム形成材料;対象とするフルオロアシルアリールアミン;および任意の潤滑剤を含むことができる。潤滑剤、例えばフッ素化樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などは、合計に対して、層の約1重量%〜約15重量%;約3重量%〜約10重量%;約8重量%〜約9重量%の量で存在できる。フルオロアシル化アリールアミンは、合計に対して、CTLの約20重量%〜約50重量%;約25重量%〜約45重量%;約30重量%〜約40重量%の量で存在できる。残りは、フィルム形成材料および設計の選択としていずれかの任意の添加剤を含むことができる。(本明細書の至るところで示されるものを含んで上記の量およびパーセンテージは、材料に対して適宜、w/v、w/wまたはv/wを単位としており、これらに関連する。)
【0011】
いずれかの好適な従来技術が、混合するために使用でき、その後構築中の感光体にCTLコーティング混合物を適用する。典型的な適用技術としては、噴霧、浸漬コーティング、ロールコーティング、ワイア巻き取りロッドコーティングなどが挙げられる。析出されたコーティングの乾燥は、いずれかの好適な従来の技術、例えばオーブン乾燥、赤外乾燥、空気乾燥などによって得ることができる。
【0012】
CTLは、CTL上に配置された静電荷が、照明の非存在下では、静電潜像の形成および保持を防止するのに十分な速度で伝達されない程度に絶縁体であることができる。一般にCTLと電荷発生層との厚さの比は、約2:1〜200:1、例えば約400:1程度の大きさであることができる。
【0013】
CTLの厚さは、約5μm〜約200μm、約15μm〜約40μmであることができる。CTLは、二重層または複数層を含んでいてもよく、各層は、異なる濃度の電荷輸送構成成分を含有してもよく、または異なる電荷輸送構成成分を含有してもよい。
【0014】
CTLはまた、例えば保護コーティングとして作用する他の機能として作用し得る。
【0015】
用語「アリールアミン」は、例えばアリールおよびアミン基の両方を含有する部分を指す。アリールアミンは構造Ar−NRR’を有し、式中Arは、アリール基を表し、RおよびR’は、水素ならびに置換または非置換アルキル、アルケニル、アリール、および他の好適な炭化水素および/または官能基から独立に選択されてもよい基である。用語「トリアリールアミン」は、例えば一般構造NArAr’Ar’’を有するアリールアミン化合物を指し、式中Ar、Ar’およびA’’は、独立に選択されたアリール基を表し、これは置換されてもよく、官能化などが行われてもよい。
【0016】
フルオロアシルアリールアミンは、対称性分子であってもよい。対象とするフルオロアシルアリールアミンは、特にフルオロアシル部分から水素結合によってコアのアリールアミン構造に保持される場合に、平面分子であってもよい。
【0017】
対象とするアリールアミン基材は、以下の構造を含むことができる:
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、フェニル基のいずれかの部位に位置してもよく;1つ以上の水素原子;ハロゲン;1〜約8個の炭素原子を有する炭化水素であって、これは、飽和、置換であることができ、またはヘテロ原子、例えばN、O、Sなどを含有でき、例えばアルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシル、オキシアルキルなどの炭化水素;または反応性部分または部位を含む官能基であることができ;nは、0、1、2または3である。官能基は、設計選択として、ヒドロキシル基、カルボニル基、ハロゲン、アミノ基などを含むことができる。
【0018】
トリフルオロアシル供与試薬は、酸、それらの無水物などであることができる。無水物の例は、式:
【数1】
を有するものであり、
式中、RはCF
3、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであってもよく、ここで置換は、ハロゲン、ヒドロキシまたはニトロであってもよく、ここでアルキルまたはアリールは、1〜約8個の炭素原子を有していてもよい。
【0019】
合成反応は、トリフルオロアシル供与試薬、例えばトリフルオロ無水物、例えばトリフルオロ酢酸無水物、およびアリールアミン試薬の両方を溶解し、2つの基質または反応体間の反応に対して不活性である好適な溶液または溶媒において生じる。液体反応混合物は、1つの化合物または2つ以上の化合物の混合物を含み得る。反応溶液は、得られた生成物が相分離によって単離され得るように水に顕著に混和性でない。好適な液体または溶媒としては、炭化水素、エーテル、長鎖アルコール、ハロゲンによって誘導体化される炭化水素、エーテルまたは長鎖アルコール、およびこれらの混合物が挙げられる。高い沸点を有する相溶性液体は、より高温にて生じる反応を可能にするために使用されてもよい。例としては、ハロゲン化炭化水素、脂肪族ニトリル、アルカンなど、例えばジクロロメタン、ヘキサンおよびアセトニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
アリールアミンは、構造AまたはBであってもよい:
【化2】
式中、Yが、水素、C
1−C
5アルキル、C
3−C
7環状アルキル、C
1−C
4アルコキシ、ヒドロキシ、ω−ヒドロキシ置換C
2−C
8アルキル、ハロゲンまたは場合によりC
1−C
5アルキルで置換されたアリールであり;R
1R
2、およびR
3はそれぞれ、水素、C
1−C
5アルキル、C
3−C
7環状アルキル、C
1−C
4アルコキシ、ヒドロキシ、ω−ヒドロキシ置換C
2−C
8アルキル、ハロゲンまたは場合によりC
1−C
5アルキルで置換されたアリールであり;R
4は、水素、C
1−C
5アルキル、C
3−C
7環状アルキル、ヒドロキシ、ω−ヒドロキシ置換C
2−C
8アルキル、ハロゲンまたは場合によりC
1−C
5アルキルで置換されたアリールであり;nは0、1、2または3である。
【0021】
構造Aは、以下であってもよい:
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は上記で定義される通りである。
【0022】
構造Bは、以下の構造を有していてもよい:
【化4】
式中、R
1、R
2およびR
3は上記で定義される通りである。
【0023】
化合物Bは、以下の構造を有することができる:
【化5】
式中、Yは、メチルであり、n、R
1、R
2およびR
3は上記で定義される通りである。
【0024】
アリールアミンは:
【化6】
からなる群から選択できる。
【0025】
故に、対象とするフルオロアシルアリールアミンは、以下を含むことができる
【化7-1】
【化7-2】
式中、Xはフルオロアシル基または水素であり、フルオロアシル基の数は、1から4の範囲であり;
【化8】
式中、R
1R
2およびR
3は上記で定義される通りであり;少なくとも1つの環は少なくとも1つのフルオロアシル部分を含み;
【化9】
式中、n、Y、R
1R
2およびR
3は上記で定義される通りであり;少なくとも1つの環は、少なくとも1つのフルオロアシル部分を含み;
【化10】
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は上記で定義される通りであり、1つ以上の環は、少なくとも1つのフルオロアシル部分を含み;または
【化11】
式中、R
1、R
2およびR
3は上記で定義される通りであり、1つ以上の環は、少なくとも1つのフルオロアシル部分を含む。
【0026】
温度および圧力は、混合物が液体形態で留まり、化学反応体および生成物のすべてを溶解させ続けるようなものである。条件は、使用される試薬および/または液体試薬により変動し得る。
【0027】
反応は、室温またはわずかにより高く維持される反応器において生じ得る。実施形態において、反応温度は、約25℃〜約90℃、約30℃〜約80℃、約40℃〜約70℃であることができる。より高い温度は、こうした高温にて過度に揮発性とならない好適な試薬と共に使用されてもよい。より高温が、反応速度を増大させるために使用されてもよい。液体損失を低減し、反応速度を促進するために、反応は、還流下で生じ、例えば閉じた条件においてまたは圧力下で生じてもよい。
【0028】
反応時間は、温度および個々の出発材料に応じて変動してもよい。トリフルオロアシル供与化合物がより反応性であり、および/または温度がより高温になるにつれて、反応時間は短縮され得る。反応時間はまた、特定のアリールアミン基質、および生成物に組み込まれるフルオロアシル部分の数および位置に応じて変動してもよい。
【0029】
反応中、進行は、反応の色、反応の濁度などを観察することによってモニターされてもよく、これらのパラメータは、視覚的にまたは適切なセンサを用いることによってモニターできる。サンプルは、例えばHPLCまたは他の分析方法によって周期的に除去され、分析されてもよく、またはサンプルは、主要な反応容器からセンサまたは他のモニタリングデバイス、例えば分光光度計によってまたはそれらを通して流れてもよい。
【0030】
反応完了後、最終生成物は、アリールアミン基質に似ているが、1つ以上のフルオロアシル部分は、1つ以上のペンダントアリール部分に結合している。フルオロアシル部分はパラ位にて結合できるが、フルオロアシル残基は、アリール環の他の位置に位置できる。また、いずれかの1つのアリール基は、複数のフルオロアシル基を含有してもよい。
【0031】
最終的なフルオロアシルアリールアミン生成物は、無水物を用いる場合に、例えば中和によって、いずれかの試薬または副生成物、例えば酸副生成物の除去、沈澱および/または不活性化によって分離できる。溶液はまた、例えばエバポレーションおよび/または生成物の沈澱によって除去できる。無水物が使用される場合には酸副生成物、例えばトリフルオロ酢酸は、水溶液に溶解でき、フルオロアシルアリールアミン含有溶液から分離されるために水性またはイオン性液体で洗浄されてもよい。最終的なフルオロアシルアリールアミン生成物はまた、乾燥されて、残りの液体反応体および水を、例えば真空および/または熱によって除去してもよい。
【0032】
所望のフルオロアシル化アリールアミン生成物は、従来の有機洗浄工程に供されることができ、分離されることができ、(必要により)脱色されることができ、既知の吸収剤(必要により例えば、シリカ、アルミナ、炭素、粘土など)などで処理されることができる。最終生成物は、例えば好適な沈澱または結晶化手順によって単離できる。
【0033】
得られたフルオロアシル化アリールアミンは、いずれかの位置にある芳香族環のいずれかに結合する1、2またはそれ以上のフルオロアシル部分を有していてもよい。特定の結合位置は、反応の観点から設計選択として選択されてもよく、他は、反応条件およびトリフルオロアシル供与分子を調節することによって合成されてもよい。反応中のトリフルオロアシル供与分子のモル量は、アリールアミンコア構造に結合したフルオロアシル部分の数を決定し得る。
【0034】
フルオロアシル化アリールアミンは、最終生成物として使用でき、またはさらには同様のまたは異なる用途のために他の化合物を与えるために処理および/または反応させることができる。例えば、フルオロアシルアリールアミンは、例えば電子写真画像形成部材のCTLにおける電荷輸送分子として組成物に使用されてもよい。対象とする化合物は、1つ以上の反応性カルボニル基を含み、または他の官能基または反応性基を含むように合成できる。故に、対象とする化合物は、他の化合物、ポリマーなどを製造するため、当該技術分野において既知の材料および方法を設計選択として実施するための試薬として使用できる。フルオロアシルアリールアミン分子は、化学反応から得られるポリマーおよびコポリマーを製造するために使用でき、フルオロアシルアリールアミンコアに追加の反応性部分または官能基を加え、ここでこの官能基は、重合反応;フルオロアシルアリールアミン分子の重合;フルオロアシルアリールアミンのさらなる誘導体化;フルオロアシルアリールアミンを出発材料として用いる、基本的なフルオロアシルアリールアミン構造を保持する別の新規な化合物の合成などにおいて反応できる。
【0035】
ベンチトップの実験室実験において、約70%以上の収率は、慣用的に約90%を超える純度で得られる。
【0036】
対象とする合成反応は、後に除去される必要があり、またはフルオロアシルアリールアミン生成物の精製の妨害となり得るルイス酸または他の金属を必要としないまたは使用しない。
【0037】
典型的には、異なるアリールアミンを合成するために複数の化学反応が必要とされた。他方で対象とする反応は、コストが上昇し、生成物の純度を得るのがより困難になる複数の反応、複数の試薬導入、複雑な精製スキームなどを必要とせず、例えば単一容器にて、一工程反応として単純に、またはその両方で行うことができる。
【0038】
フルオロアシルアリールアミン生成物の最終化学構造は、例えばHPLC、LC/MS、
1H NMR、
19F NMR、FT−IR、元素分析、結晶学などによって決定できる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「光」は、人の目に対して視覚可能であるかどうかにかかわらず、いずれかの波長の電磁放射線を指す。例えば紫外光および赤外光が含まれる。また、「光」は、多重波長ならびに単波長光を包含する。用語「光」はまた、レーザーのような少なくとも部分的な一致波長を有するものを含む。
【0040】
多数の異なる有機電子デバイスは、構成成分としてのフルオロアシルアリールアミンを組み込んでもよい。フルオロアシルアリールアミンは、電気エネルギーを放射線に変換するデバイス、電子プロセスを通してシグナルを検出するデバイス、放射線を電気エネルギーに変換するデバイスにおいてホールおよび/または電子輸送層に使用でき、または1つ以上の有機半導体層が所望される他の使用に使用できる。有機電子デバイスは、2つの電極間に配置される伝導性層(例えば電気活性なまたは光活性層)を含むことができる。一部のデバイスにおいて、CTLは、伝導性層と電極との間で利用できる。例えば、ホール輸送層は、伝導性層とアノードとの間に配置でき、電子輸送層は、伝導性層とカソードとの間に配置できる。故に、新規な材料は、有機電子デバイスに使用されてもよい。
【0041】
用語「有機電子デバイス」は、例えば1つ以上の半導体層または材料を含む有機化合物含有デバイスまたは構成成分を含むデバイスを意味することを意図する。デバイスは、いずれかの活性電子構成成分またはパッシブ電子構成成分を有していてもよい。有機電子デバイスとしては
a.電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、発光電気化学セル、電気化学発光、ダイオードレーザー、赤外エミッタエレクトロルミネッセンスまたは照明パネル);
b.電子プロセスを通して電気または光シグナルを検出するデバイス、例えば光検出器、光伝導性セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランスデューサ、フォトトランジスタ、フォトチューブ、赤外検出器、またはバイオセンサ、光伝導性ダイオード、および他の光学的または電気的センサ;
c.放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば光起電性デバイスまたはソーラーセル、放射線検出器);
d.電気または磁気エネルギーに応答するデバイス、例えば液晶ディスプレイ、無線周波IDタグ;
e.化学的環境における変化に応答するデバイス、例えば化学的に特異なおよび非特異なセンサ、ガスセンサ,および
f.1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子構成成分を含むデバイス(例えば、トランジスタ、ダイオードまたは他の半導体)、金属−半導体接合(例えば、Schottkyバリアダイオード)、p−n接合ダイオード、p−n−p−n切替デバイス、双極性接合トランジスタ(BJT)、ヘテロ接合双極性トランジスタ、切替トランジスタ、電荷輸送デバイス、薄膜トランジスタ、変動出力波長のための調整可能な微小共振器、通信デバイスおよび用途、光学コンピュータ計算デバイス、光学メモリデバイス、および電界効果トランジスタ、
ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
用語「デバイス」はまた、記憶貯蔵デバイス、例えばエレクトロニクスのための電子メモリ(特にコンピュータメモリ)、帯電防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質キャパシタ、エネルギー貯蔵デバイス、例えば再充電可能なバッテリ、および電磁遮蔽用途を含む。
【0043】
こうしたすべてのデバイスは、回路、ディスプレイデバイス、高周波タグなどに組み立てられてもよい。こうしたデバイスは、薄膜にて対象とする組成物を有することができるが、ブロックで使用されてもよい。組成物はまた、材料間の機械的接触を改善することを目的としておよび/または一方の材料から他方の材料への電荷輸送を改善することを目的として、および/または良好な金属/有機電荷輸送界面を提供するために、他の材料構成成分の表面を改質するためにデバイスに使用できる。他の保護コーティング、バインダーおよび電荷伝導体が添加されてもよい。各層の厚さは、デバイスの用途および組成、ならびに他の層に依存し得る。
【0044】
さらなる実施形態は、デバイス中の構成成分のパターン形成、例えば整列された自己集合単層(SAM)によって形成されるパターンの形成である。
【0045】
フルオロアシルアリールアミンはまた、有機電子デバイス、例えば合成および分解化学反応を触媒する光触媒および電気触媒のために典型的には考慮されない用途に使用されてもよい。
【0046】
多くの電子および化学用途について、エネルギーバンドギャップは所望され、光学吸着スペクトル、例えばUV−可視範囲によって見積もられてもよい。電子およびホール輸送移動度は、例えば吸着に基づいて他の有機化合物と比較することによって見積もられることができる。
【0047】
光のより豊富な波長を利用するために、低エネルギーバンドギャップを有する材料が使用できる。これにより、UVの代わりにより一般的な可視光を使用できる。フルオロアシルアリールアミン誘導体は、非誘導体化親アリールアミンから変更されたHOMO−LUMOエネルギーレベルを有するので、対応して異なる用途を有する。本発明の材料は、種々広範な範囲のエレクトロニクス用途のためにホールおよび電子の両方を許容可能な程度に輸送する。
【0048】
フルオロアシル基は、非フルオロアシル親化合物に対して、吸着バンドの赤方偏移を生じる。これにより、より長波長の光を使用、例えばUVの代わりに青色レーザーの使用、さらに単層感光体設計を可能にする。
【0049】
例えば有機活性層が2つの電気接触層間に挟持されたディスプレイのための有機発光ダイオード(「OLED」)は、対象とするフルオロアシルアリールアミンを含むことができる。OLEDにおいて、有機光活性層は、電気接触層にわたって電圧の印加時に光透過電気接触層を通して光を発光する。
【0050】
本発明の組成物はp型半導体キャリア(ホールを運ぶもの)またはn型半導体キャリア(電子を運ぶもの)のいずれかとして使用されてもよいので、いずれかの層は対象とする組成物を使用してもよい。単層OLEDはまた、対象とする組成物を用いて製造されてもよい。混合物中に分散した重合および架橋されたバージョンのフルオロアシルアリールアミンは、こうした使用に好適であることができる。
【0051】
多層半導体は、その間にある好適な絶縁層と共に使用されてもよい。絶縁層は、多様な材料または層の1つの高度にドープされた領域であってもよい。パターンが回路において局所的にドープされた領域によって提供されるパターン多層半導体も提供される。
【0052】
1つ以上の半導体染料またはエレクトロルミネッセンス化合物もOLEDに添加されてもよい。
【0053】
OLEDは、少なくとも、アノード(電子ブロッキング層またはホール注入電極)、カソード(ホールブロッキング層または電子注入電極)およびエレクトロルミネッセンス層を含むことができる。OLEDは、場合により、他の層、例えばホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層、ドーパント、絶縁体、導体または相互接続を含む。
【0054】
電子ブロッキング層(ホール注入電極)は、不活性金属またはアロイで構成できる。より透明な電子ブロッキング層(ホール注入電極)材料、例えばインジウムドープされたスズオキシド(ITO)が使用できる。伝導性ポリマーはまた、透明なホール−注入電極に使用できる。電子ブロッキング層(ホール注入電極)は、約50〜約300nmの厚さであることができる。
【0055】
電子注入電極は、他の材料が使用されてもよいが、金属またはアロイ、またはアルミニウム、カルシウムまたはマグネシウムを有する積層体で構成できる。種々の無機化合物、特にレアアース金属および有機化合物はドーパントとして使用されてもよい。
【0056】
絶縁体は、無機、有機またはこれらの複合体であってもよい。絶縁体がパターニングされる場合、絶縁体は、OLED材料間のブロッキング層の機能を果たし得る。
【0057】
光活性材料は、単独で、またはポリマーなどと共に、例えばCTLの場合のように使用されてもよい。発光層も電子輸送層であることができる。一般に、使用されるポリマーは、光がほとんど干渉されずにそこを透過し得るものである。化合物、例えば蛍光染料、小分子有機蛍光化合物、蛍光およびりん光発光金属錯体、共役ポリマー、およびこれらの混合物は、発光される光の色およびコントラストを向上させるために添加されてもよい。
【0058】
発光電気化学セル(LEC)において、帯電された半導体分子は、移動性であり、アノードにて酸化され、カソードで還元される。LECにおいて、アノード(例えばITO)およびカソード(例えばアルミニウム)は、アニオンで還元された分子がホールを提供し、カチオンで酸化された分子が電子を生じる場所であり、それらが出会って光を生じる有機層によって分離できる。フルオロアシルアリールアミンは、電荷輸送機能のいずれかまたは両方のために使用されてもよい。
【0059】
混合物および共役ポリマーおよび無機材料のナノ粒子またはナノ結晶を含む光起電性材料は、対象とする組成物と共に使用されてもよい。
【0060】
有機光起電性物質において、光は、アノード(例えばITO)によっておよびアノードを通って通過し、有機電子ドナー(p−半導体)を含有する層にぶつかる。電子は、隣接する有機電子アクセプタ(n−半導体)を通過して、カソード(例えばアルミニウム)に至る。フルオロアシルアリールアミンは、いずれかまたは両方の層に使用されてもよい。
【0061】
区別可能な層の代わりに、2つの半導体が異なる相にブレンドされるヘテロ接合層に両方の有機物を分散させることができる。ヘテロ接合のモルホロジーは、電子およびホールがそれぞれの電極に移動して、単離した島に捕捉されることがないように構成される。しかし、フルオロアシルアリールアミンは、両方の電荷輸送機能を有するので、電子およびホールが捕捉される可能性は低く、デバイスのモルホロジーは重要ではない。
【0062】
さらに、日光および大抵の場合は人工光からのエネルギーバルクは、UVではなく、可視および長波長である。対象とする化合物は、赤方偏移した吸着最大値を有するので、周囲光または人工光からより多くのエネルギーを利用する。光からより多くのエネルギーを回収するために、フルオロアシルアリールアミンを含む光起電性デバイスは、従来の光起電性物質、無機または他の有機物のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。別々の層が、異なる波長の光を吸着するために使用されてもよい。追加の酸化された/還元された染料分子は、バンドギャップをさらに狭くし得るものが添加されてもよい。
【0063】
より長波長にて使用可能な光起電性物質の利益の例としては、UVの代わりに青色レーザーの検出が挙げられる。UV光は、多数の一般的な材料によって吸着されるが、青色レーザーは吸着されない。可視領域においてより強い感受性は、光に関してより感受性の感光体を提供する。
【0064】
光起電性活性は、シグナルを生じるために放射エネルギーに応答するセンサのような多数の使用に適用されてもよい。デバイスは、印加されたバイアス電圧ありまたはなしでシグナルを生じることができ、例えば光検出器に使用される。
【0065】
光検出器の感受性をさらに向上させるために、非反射性のアンチグレアな光捕捉コーティングが使用されてもよい。光捕捉コーティングは、厚さが変動してもよく、構造、例えば小さいドームまたはバブルを含むことができ、またはエンボス加工ポリマーを含んでいてもよく、これが間接角からの光を捉え、場合により屈折させる。
【0066】
他の有機電子デバイスは、光学的にまたは電子的に応答性であることが知られている。フルオロアシルアリールアミンは、他の有機電荷輸送組成物と同様の様式でそこに使用されてもよい。
【実施例】
【0067】
実施例1:
DFA−テトラフェニレンビフェニルジアミンの合成
30mlのDCM(ジクロロメタン)を含有する100mlのフラスコに、2.44g(5.0mmol,1.0当量)のテトラフェニレンビフェニルジアミン(TBD)を添加して、ベージュ色のスラリーを得た。次いで、5.6ml(40mmol,8.0当量)のTFAA(トリフルオロ酢酸無水物)を混合物および還流冷却器を備えたフラスコに注いだ。混合物を還流加熱し(40℃)、反応体を溶解させて暗褐色溶液を形成した。反応を還流温度で72時間撹拌した。
【化12】
【0068】
反応完了時(HPLCによって>99%転化率であると決定される)、混合物を室温に冷却し、次いで30mlのDCMで希釈した。次いで溶液を、25mlの撹拌H
2Oに注いだ。有機層を単離し、H
2O/飽和NaHCO
3の1:1混合物の2つの10ml部分、および塩化ナトリウム緩衝液、例えば飽和NaCl溶液の1つの10ml部分で洗浄した。酸副生成物を含有する水性洗浄液を除去した。この溶液のpHは中性付近である。次いでDCM溶液をNa
2SO4で乾燥させ、エバポレーションによって除去し、ジ(トリフルオロアシル)(DFA)−テトラフェニレンビフェニルジアミン(TBD)を1.2g(70%)の明黄色固体として得た。化学構造は、以下の核磁気共鳴によって確認された。
1H NMR(300MHz,CH
2Cl
2−d2)δ7.93(d,J=8.4Hz,4H),7.60(d,J=8.4Hz,4H),7.42(dd,J=7.3Hz,2H),7.27−7.24(12H),7.04(d,J=9.0Hz,4H);および
19F NMR(300MHz,CH
2Cl
2−d2)δ71.2(s,6F)。
【0069】
実施例2:
DFA−パラ−メチルテトラフェニレンビフェニルジアミンの合成
30mlのDCMを含有する100mlのフラスコに、2.58g(5.0mmol,1.0当量)のパラ−メチルテトラフェニレンビフェニルジアミン(pTBD)を添加して、ベージュ色のスラリーを得た。次いで、2.8ml(20mmol,8.0当量)のTFAAを混合物および還流冷却器を備えたフラスコに注いだ。混合物を還流加熱し(40℃)、試薬を溶解させて暗赤褐色溶液を形成した。反応を還流温度で48時間撹拌した。
【化13】
【0070】
反応完了時(HPLCによって>99%転化率であると決定される)、混合物を室温に冷却し、次いで30mlのDCMで希釈した。次いで溶液を、25mlの撹拌H
2Oに注いだ。有機層を単離し、H
2O/飽和NaHCO
3の1:1混合物の2つの10ml部分、およびNaCl緩衝剤の1つの10ml部分で洗浄した。酸副生成物を含有する中性pH水性洗浄液を除去した。次いでDCM溶液を、エバポレーションによって除去し、DFA生成物を3g(85%)の琥珀色固体として得た。化学構造は、以下の核磁気共鳴において確認された。
1H NMR(300MHz,CH
2Cl
2−d2)δ7.91(d,J=8.4Hz,4H),7.58(d,J=8.4Hz,4H),7.27−7.10(12H),7.01(d,J=9.3Hz,4H),2.40(s,6H);および
19F NMR(300MHz,CH
2Cl
2−d2)δ71.1(s,6F)。
【0071】
実施例3:
TBDおよびpTBDおよびそれらのフルオロアシル化誘導体の電子吸収特性
TBDおよびDFA−TBDのUVおよび可視範囲における電子吸収スペクトルを得て、比較した。
【0072】
TBDに比べてDFA−TBDにおいて吸収バンドのおおよそ40nmの赤方偏移が観察された。
【0073】
同様に、pTBDおよびDFA−pTBDのUVおよび可視範囲において電子吸収スペクトルは、pTBDに比べてDFA−pTBDにおいて吸収バンドのおおよそ40nmの赤方偏移を示した。
【0074】
故に、フルオロアシル基は、HOMO−LUMOエネルギーレベルを変更する。
【0075】
実施例4:
電荷輸送デバイスの製作
DFA−TBDおよびDFA−pTBDの自立フィルムは、1:1の比の電荷輸送分子とポリカーボネート(PCZ−800)を用いて製造された。DCM中の溶液は、金属化Mylar基材上にフィルムとしてキャストされた。フィルムは、120℃において40分間活性ベント型オーブンにおいて乾燥された。乾燥されたフィルムは、剥離によって離層され、さらなる試験のために使用された。
【0076】
実施例5:
電荷輸送特性
電子およびホール両方の飛行時間測定は、上記で記載されるようなポリカーボネート中のDFA−TBDについて、およびポリカーボネート中のDFA−pTBDについて行われた。
【0077】
測定中に使用された電界は、2.8E
−5(V/cm)であった。
【0078】
観察されたデータは、フルオロアシル化アリールアミンの電荷輸送特性を示し、これはホールおよび電子の両方を、既知の電荷輸送材料と比べて10
−6〜10
−5V
−1s
−1の範囲の移動度で輸送する。
【0079】
実施例6:感光体デバイスの製作および試験
ポリカーボネート(PCZ−800,Mitsubishi)および別にDFA−TBDまたはDFA−pTBDを1:1の比で混合し、DCM中に溶解させた。フィルムは、Tigris(AMAT)基材上に混合物からキャストした。フィルムは、120℃において40分間活性ベント型オーブンにおいて乾燥された。フィルムは、感光体に組み込まれた欠陥のない電荷輸送層をもたらした。
【0080】
市販の電荷輸送分子を含むコントロールと共に、感光体は、光誘導された放電サイクルを得るために設定されるUDSスキャナにおいて試験され、続いて1つの電荷−消去サイクルが続いて、1つの電荷−露光−消去サイクルが続き、ここで光の強度は、サイクリングに関して漸増させ、一連の光誘導放電特徴曲線(PIDC)を得て、そこから種々の露光強度における光感受性および表面電位を測定した。スキャナは、種々の表面電位において一定の電圧帯電に設定されたスコロトロンを備えていた。光伝導体は、700ボルトの表面電位にて試験され、露光光強度は、一連の減光フィルタを調節することによって漸増させた;露光光源は、780nmのキセノンランプであった。乾式電子写真の模擬試験を、乾燥条件(10%相対湿度および22℃)にて環境的に制御された光密室にて行った。デバイスは、780nmの露光および消去について、117msタイミングでV
highおよびV
lowについて試験した。
【0081】
上記デバイスにつていのPIDCデータは、対象とするフルオロアシル化アリールアミンが、既知の電荷輸送分子の場合と比べて好適な帯電を示した。