【実施例】
【0051】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
<銅箔層/(接着層)/ポリイミド層の片面積層体の作製(実施例1〜10、比較例1)、
図2参照>
【0053】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、東レデュポン社製、「カプトン200EN」、厚さ50μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムに「A−TES」(いおう化学研究所社製、式(2)で表される化合物)の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルム1を得た。
また、10cm×12cmの圧延銅箔(ニラコ社製、「CU−113243」、厚さ30μm)を塩酸1%水溶液に10秒浸漬した後、水洗とアセトン洗浄を行い、ドライヤーを用いて銅箔表面を乾燥させて、圧延銅箔1を得た。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度0.1MPaの条件で、ポリイミドフィルム1と圧延銅箔1を熱圧着した。熱圧着した後、80℃に設定した乾燥機に60分保存した。その後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、片面銅張積層体1(銅箔層/(接着層)/ポリイミド層)を得た。
【0054】
(実施例2)
コロナ処理が施されたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、カネカ社製、「アピカル50NPI」、厚さ50μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムに「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルム2を得た。
また、10cm×12cmの圧延銅箔(JX日鉱社製、「GHSN」、厚さ12μm)を塩酸1%水溶液に10秒浸漬した後、水洗とアセトン洗浄を行い、ドライヤーを用いて銅箔表面を乾燥させて、圧延銅箔2を得た。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度0.1MPaの条件で、ポリイミドフィルム2と圧延銅箔2を熱圧着した。熱圧着した後、80℃に設定した乾燥機に60分保存した。その後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、片面銅張積層体2を得た。
【0055】
(実施例3)
プラズマ処理が施されたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、東レデュポン社製、「カプトン150EN」、厚さ38μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムに「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルム3を得た。
また、圧延銅箔として、実施例2で作製した圧延銅箔2を用いた。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度0.1MPaの条件で、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔2を熱圧着した。熱圧着した後、80℃に設定した乾燥機に60分保存した。その後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、片面銅張積層体3を得た。
【0056】
(実施例4)
ポリイミドフィルムとして、実施例3で作製したポリイミドフィルム3を用いた。
また、銅箔を30℃の過硫酸ナトリウム水溶液20質量%に1分浸漬し、水洗及び乾燥させて、ソフトエッチング(防錆処理除去)を行った点以外は、実施例3と同様にして、圧延銅箔4を得た。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔4から片面銅張積層体4を得た。
【0057】
(実施例5)
ポリイミドフィルムとして、実施例3で作製したポリイミドフィルム3を用いた。
また、10cm×12cmの圧延銅箔(JX日鉱社製、「BHY」、厚さ35μm、粗化処理有り)を塩酸1%水溶液に10秒浸漬した後、水洗とアセトン洗浄を行い、ドライヤーを用いて銅箔表面を乾燥させて、圧延銅箔5を得た。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔5から片面銅張積層体5を得た。
【0058】
(実施例6)
ポリイミドフィルムとして、実施例3で作製したポリイミドフィルム3を用いた。
また、銅箔を30℃の過硫酸ナトリウム水溶液20質量%に1分浸漬し、水洗及び乾燥させて、ソフトエッチング(銅箔の粗化処理除去及び防錆処理除去)を行った点以外は、実施例5と同様にして、圧延銅箔6を得た。この圧延銅箔6は、粗化処理と防錆処理が施された圧延銅箔から、ソフトエッチングにより粗化処理と防錆処理を除去した圧延銅箔といえる。
そして、実施例5と同様の手法によって、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔6から片面銅張積層体6を得た。
【0059】
(実施例7)
ポリイミドフィルムとして、実施例3で作製したポリイミドフィルム3を用いた。
また、10cm×12cmの防錆処理が施された電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、「CF−T9DA−SV」(SV)、厚さ18μm)を塩酸1%水溶液に10秒浸漬した後、水洗とアセトン洗浄を行い、ドライヤーを用いて銅箔表面を乾燥させて、電解銅箔7を得た。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔7から片面銅張積層体7を得た。
【0060】
(実施例8)
ポリイミドフィルムに「A−TES」の1%水溶液を1mL垂らした点以外は、実施例3と同様にして、ポリイミドフィルム8を得た。
また、電解銅箔として、電解銅箔7を用いた。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム8と電解銅箔7から片面銅張積層体8を得た。
【0061】
(実施例9)
ポリイミドフィルムに「A−TES」の0.5%水溶液を1mL垂らした点以外は、実施例3と同様にして、ポリイミドフィルム9を得た。
また、電解銅箔として、電解銅箔7を用いた。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム9と電解銅箔7から片面銅張積層体9を得た。
【0062】
(実施例10)
ポリイミドフィルムとして、実施例3で作製したポリイミドフィルム3を用いた。
また、微細粗化処理及び防錆処理が施された電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、「CF−T4X−SV」、厚さ18μm)を用いた点以外は、実施例7と同様にして、電解銅箔10を得た。
そして、実施例3と同様の手法によって、ポリイミドフィルム3と圧延銅箔10から片面銅張積層体10を得た。
【0063】
(比較例1)
プラズマ処理が施されたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、東レデュポン社製、「カプトン150EN」、厚さ38μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムに「KBM−403」(信越シリコーン社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルムaを得た。
また、圧延銅箔として、実施例2で作製した圧延銅箔2を用いた。
そして、実施例2と同様の手法によって、ポリイミドフィルムaと圧延銅箔2から片面銅張積層体aを得た。
【0064】
<銅箔層/(接着層)/ポリイミド層/(接着層)/銅箔層の両面積層体の作製(実施例11〜12)、
図4参照>
【0065】
(実施例11)
コロナ処理が施されたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、カネカ社製、「アピカル50NPI」、厚さ50μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムの片面に「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存した。乾燥機から取り出した後、ポリイミドフィルムのもう一方の表面にも「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルム11を得た。
また、電解銅箔として、実施例7で作製した電解銅箔7を用いた。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度0.1MPaの条件で、ポリイミドフィルム11の両面に電解銅箔7をそれぞれ熱圧着した。熱圧着した後、80℃に設定した乾燥機に60分保存した。その後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、両面銅張積層体11(銅箔層/(接着層)/ポリイミド層/(接着層)/銅箔層)を得た。
【0066】
(実施例12)
プラズマ処理が施されたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド、東レデュポン社製、「カプトン150EN」、厚さ38μm)を、アセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。このポリイミドフィルムの片面に「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存した。乾燥機から取り出した後、ポリイミドフィルムのもう一方の表面にも「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、これを60℃に設定した乾燥機に10分保存して、ポリイミドフィルム12を得た。
また、電解銅箔として、実施例7で作製した電解銅箔7を用いた。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度0.1MPaの条件で、ポリイミドフィルム11の両面に電解銅箔7をそれぞれ熱圧着した。熱圧着した後、80℃に設定した乾燥機に60分保存した。その後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、両面銅張積層体12(銅箔層/(接着層)/ポリイミド層/(接着層)/銅箔層)を得た。
【0067】
<銅箔ポリイミド積層体/(接着層)/銅箔ポリイミド積層体の両面積層体の作製(実施例13〜14)、
図5参照>
【0068】
(実施例13)
10cm×12cmのポリイミド層/銅箔層の片面積層体(有沢製作所社製、「PNS H1035RA」)を2枚用意し、これらをアセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。そのうちの1枚の片面積層体に「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。これらを60℃に設定した乾燥機に10分保存した。
プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度−0.1MPaの条件で、2枚の片面積層体のポリイミド層どうしを貼り合わせて熱圧着した。そして、80℃に設定した乾燥機に60分保存した後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、両面銅張積層体13を得た。
【0069】
(実施例14)
「A−TES」の2%水溶液1mLを「A−TES」の0.5%水溶液1mLに変更した点以外は、実施例13と同様にして、両面銅張積層体14を得た。
【0070】
<銅箔ポリイミド積層体/(接着層)/銅箔の両面積層体の作製(実施例15〜16)、
図6参照>
(実施例15)
10cm×12cmのポリイミド層/銅箔層の片面積層体(有沢製作所社製、「PNS H1035RA」)を1枚用意し、これらをアセトン溶剤に浸漬した後、80℃に設定した乾燥機にて乾燥させた。これに「A−TES」の2%水溶液を1mL垂らし、ガラス棒を用いてフィルム全体に均一に伸ばした。そして、60℃に設定した乾燥機に10分保存して、片面積層体15を得た。
また、圧延銅箔として、実施例2で作製した圧延銅箔2を用いた。
そして、プレス機を用いて、180℃×3MPa×10分(Hot−Hot)、真空度−0.1MPaの条件で、片面積層体15のポリイミド層と圧延銅箔2とが重なるように貼り合わせ、熱圧着した。そして、80℃に設定した乾燥機に60分保存した後、乾燥機から取り出して室温で放冷して、両面銅張積層体15を得た。
【0071】
(実施例16)
圧延銅箔2の替わりに、実施例7で作製した電解銅箔7を用いた点以外は、実施例15と同様にして、両面銅張積層体16を得た。
【0072】
(引き剥がし強さの評価)
各実施例及び比較例1で作製した積層体の引き剥がし強さの評価は、JIS C6471に準拠した。作製した積層体の銅箔表面に10mm幅のエッチングレジストRをパターニングした後、エッチングにより残余の銅箔を除去したものを、サンプルとした。
図7は、実施例の引き剥がし強さの評価で用いたサンプルの上面概略図を表す。このサンプルを、両面テープで補強板に固定し、サンプルを補強板から180°方向に引き剥がし、その際の接着強度を測定した。そして、以下の基準に基づき評価した。
5N以上であった場合:◎
5N未満〜3N以上であった場合:○
3N未満であった場合:△
接着せず測定不可であった場合:×
【0073】
(外観の評価)
各実施例及び比較例1で作製した積層体両面を目視で観察し、表面に気泡、異物、及び変色のいずれも確認されなかった場合を「○」と評価した。そして、その表面に気泡、異物、及び変色のいずれかが少なくとも確認された場合を「−」と評価した。
【0074】
(積層体の表面粗さ;Rz)
JIS B0601−1976に準拠して積層体の表面の十点平均粗さ(Rz)を測定し、その値を表面粗さとした。
【0075】
各実施例及び比較例1の製造条件及び評価結果を表1〜5に示す。
【0076】
【表1】
※1:「◎」5N以上、「○」5N未満〜3N以上、「△」3N未満、「×」接着せず測定不可
※2:「○」異常なし、「×」異常あり、「−」判断不可
【0077】
【表2】
※1:「◎」5N以上、「○」5N未満〜3N以上、「△」3N未満、「×」接着せず測定不可
※2:「○」異常なし、「×」異常あり、「−」判断不可
【0078】
【表3】
※1:引き剥がし強さは、(塗布1回目(表面))/(塗布2回目(裏面))の結果を表す。
「◎」5N以上、「○」5N未満〜3N以上、「△」3N未満、「×」接着せず測定不可
※2:「○」異常なし、「×」異常あり、「−」判断不可
【0079】
【表4】
※1:「◎」5N以上、「○」5N未満〜3N以上、「△」3N未満、「×」接着せず測定不可
※2:「○」異常なし、「×」異常あり、「−」判断不可
【0080】
【表5】
※1:「◎」5N以上、「○」5N未満〜3N以上、「△」3N未満、「×」接着せず測定不可
※2:「○」異常なし、「×」異常あり、「−」判断不可
【0081】
以上より、各実施例の積層体は、いずれも十分な接着強度を有し、接着後の表面外観にも優れ、かつ、接着対象の材料の制限を受けないことが少なくとも確認された。さらには、積層体とした際も構造上の制限を受けないことも確認された。