(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に垂直多関節型といわれるロボットの多くは、基台に設置されたアームに6軸あるいは7軸の回転関節を有し、各関節よりも先端側のアームを回転あるいは旋回させるように構成されている。
かかるロボットにおいては、アームの長さを大きく設定することで、ロボットの手先の可動範囲をより遠くに設定することができる。その一方、アームを折り畳んで基台の近辺域にロボットの手先を位置させる場合、自身のアームとの干渉を回避する必要があるため、基台の近傍はロボットの手先の可動範囲から外れることとなる。
【0003】
近年、ロボットには、より複雑な動作や動作範囲が求められており、手先を基台から十分に遠くまで配置させながらも、基台のより近傍に手先を位置させて作業をすることが求められている。
この問題を解決するための技術として、特許文献1には、アームの半ばからアームの回転軸をオフセットさせる構成が開示されている。特許文献1の技術によれば、アームを折り畳んだ状態などでも自身のアーム同士の干渉を回避しながらも広い可動領域を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
(全体構成)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかるロボットシステム100は、7軸垂直多関節型のロボット1と、ロボットコントローラ2と、ロボット1とロボットコントローラ2とを連結するケーブル3とからなっている。
ロボットコントローラ2は、記憶装置,電子演算器及び入力装置(いずれも図示省略)を有するコンピュータにより構成されており、ロボット1の後述するアクチュエータとケーブル3により接続されている。ケーブル3は、ロボットコントローラ2とアクチュエータとの信号通信ラインと図示しない電源から各アクチュエータに電力を供給する給電ラインとが束ねられ被覆されている。
【0011】
ロボット1は、設置面(床や天井等)101に固定された基台10と、基台10からロボット1の先端にかけて順々にアーム構造材(第1構造材)11,アーム構造材(第2構造材)12,アーム構造材(第3構造材)13,アーム構造材(第4構造材)14,アーム構造材(第5構造材)15,アーム構造材(第6構造材)16,フランジ(第7構造材)17が回転関節(第1〜7関節)を介して連結されている。
【0012】
より詳細に説明すると、基台10とアーム構造材11とは、第1アクチュエータ(第1関節)11Aを介して連結されており、第1アクチュエータ11Aの駆動により、アーム構造材11が回転するようになっている。アーム構造材11とアーム構造材12とは、第2アクチュエータ(第2関節)12Aを介して連結されており、第2アクチュエータ12Aの駆動により、アーム構造材12が旋回するようになっている。
アーム構造材12とアーム構造材13とは、第3アクチュエータ(第3関節)13Aを介して連結されており、第3アクチュエータ13Aの駆動により、アーム構造材13が回転するようになっている。アーム構造材13とアーム構造材14とは、第4アクチュエータ(第4関節)14Aを介して連結されており、第4アクチュエータ14Aの駆動により、アーム構造材14が旋回するようになっている。
【0013】
アーム構造材14とアーム構造材15とは、第5アクチュエータ(第5関節)15Aを介して連結されており、第5アクチュエータ15Aの駆動により、アーム構造材15が回転するようになっている。アーム構造材15とアーム構造材16とは、第6アクチュエータ(第6関節)16Aを介して連結されており、第6アクチュエータ16Aの駆動により、アーム構造材16が旋回するようになっている。
アーム構造材16とフランジ17とは、第7アクチュエータ(第7関節)17Aを介して連結されており、第7アクチュエータ17Aの駆動により、フランジ17及びフランジ17に取り付けられるハンド等のエンドエフェクタ(図示しない)が旋回するようになっている。
【0014】
また、
図1に示すように、アーム構造材13は、第3アクチュエータ13Aを収納する収納部20Aと、収納部20Aから図中向かって右斜め上方に延びる連通部20Bと、第4アクチュエータ14Aを収納する収納部20Cとからなり、収納部20A,収納部20C及び連通部(オフセット箇所)20Bはそれぞれ連続した内部空間を形成している。
また、アーム構造材14は、第4アクチュエータ14Aを収納する収納部21Aと、収納部21Aから図中向かって左斜め上方に延びる連通部21Bと、第5アクチュエータ15Aを収納する収納部21Cとからなり、収納部21A,収納部21C及び連通部(オフセット箇所)21Bはそれぞれ連続した内部空間を形成している。
なお、第1〜7アクチュエータ11A〜17Aはそれぞれケーブル3を挿通可能な中空部を有する減速機一体型のサーボモータによって構成されており、それぞれケーブル3を介してロボットコントローラ2に接続されている。
【0015】
各回転軸A1,A3,A5(回転方向の回転軸という)がいずれも設置面101に対して垂直な方向となるロボット1の姿勢とした場合(
図1の状態)、各回転軸A2,A4,A6,A7(旋回方向の回転軸)はそれぞれ回転方向の回転軸に対して90度の角度をなすようになっている。また、回転軸A6と回転軸A7とはさらに互いに90度の角度をなるように構成されている。
第1アクチュエータ11Aの回転軸A1と第3アクチュエータ13Aの回転軸A3とは略同一となるようになっている。また、回転軸A1及び回転軸A3は第2アクチュエータ12Aの回転軸A2と直交するように配設されている。
【0016】
そして、回転軸A1及び回転軸A3と第4アクチュエータ14Aの回転軸A4とは、交わることがなく、設置面101と水平な方向(回転軸A3を基準にすると図中右方向)に長さd1だけオフセットしている。
また、回転軸A4と第5アクチュエータ15Aの回転軸A5とは交わることがなく、設置面101と水平な方向(回転軸A4を基準にすると図中左方向)に長さd2だけオフセットしている。
したがって、回転軸A3と回転軸A5とは設置面101と水平な方向(回転軸A3を基準にすると図中右方向)に長さ|d1−d2|だけオフセットすることとなる。
なお、本実施形態では長さd1は長さd2よりも大きく(即ち、d1>d2)設定されている。また、アーム構造材13の幅寸法はアーム構造材15の幅寸法よりも大きくなっている。
【0017】
また、基台10には図示省略のケーブル導入孔が設けられており、
図2に示すようにケーブル3は、基台10の内部から第1アクチュエータ11Aの中空孔,アーム構造材11,第2アクチュエータ12Aの中空孔,アーム構造材12,第3アクチュエータ13Aの中空孔,収納部20A,連結部20B,収納部20C,第4アクチュエータ14Aの中空孔,収納部21A,連結部21B,収納部21C,第5アクチュエータ15Aの中空孔,アーム構造材15,第6アクチュエータ16Aの中空孔,アーム構造材16,第7アクチュエータ17Aの中空孔を経てフランジ17に設けられた中空孔から図示しないエンドエフェクタに連結されるように配索されている。
【0018】
本実施形態にかかるロボットシステム100はこのように構成されているので、基台1あるいはアーム構造体11の近傍にフランジ17を位置させて作業する場合、
図2に示すように、第4アクチュータ14Aを大きく回転させた状態では、回転軸A3と回転軸A5とが長さd1に加えて長さd2分(即ち、d1+d2分)だけオフセットすることとなり、回転軸A3と回転軸A5とのオフセット量が大きくなる。このため、第4アクチュータ14Aを揺動させて回転軸A3と回転軸A5とが略平行となるような姿勢をとってもアーム構造材13とアーム構造材15とが接触あるいは干渉することを防止することができ、フランジ17をより下方且つアーム構造材11の近傍まで到達させることができる。
【0019】
一方、ロボットシステム100の待機時には、
図1に示すように、回転軸A1,回転軸A3及び回転軸A5がいずれも設置面101に対して垂直となるようにロボット1を動作させることで、ロボット1の設置面101と水平な方向への張り出しを最小にすることができる。この際、回転軸A1及び回転軸A3と回転軸A4とのオフセット量は長さd1に抑えられる。
【0020】
即ち、第4アクチュエータ14Aを屈曲させた状態では、d1+d2分のオフセット量を得ることができることに加えて、待機時にはオフセット量をd1(d1<d1+d2)とすることができ、オフセットによりフランジ17の可動領域を大きく確保しながらも省スペース化を図ることができる。
【0021】
また、ケーブル3が第3アクチュエータ13Aの中空孔から連結部20Bで緩やかに屈曲された後、第4アクチュエータ14Aの中空孔を経てさらに連結部21Bで緩やかに屈曲されてから第5アクチュエータ15Aの中空孔へと導かれているので、第4アクチュエータ14Aを大きく揺動させてアーム構造材13とアーム構造材14とのなす角度がより鋭角になった場合でも、ケーブル3の曲率は比較的緩やかに抑えられるので、ケーブル3の曲率が大きくなることに起因するケーブル3へのダメージを低減することができる。
【0022】
また、本実施形態では、第5アクチュエータ15Aがアーム構造材15を回転させるとともに、第6アクチュエータ16Aがアーム構造材16を旋回させ、さらに第7アクチュエータ17Aがフランジ17をアーム構造材16の揺動方向とは90度の角度をなして揺動させるように構成されているので、仮に、第7アクチュエータ17Aがフランジ17を回転させる構成としたときに、回転軸A5と回転軸A7とが重なることにより生じる制御不能点(特異点)の存在をなくすことができる。このため、第4アクチュエータ14Aを屈曲させた姿勢(
図2状態)にあって特異点を回避する動作を考慮する必要がなくなり、ロボット1の動作の自由度を向上させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図3に示すように、本実施形態にかかるロボットシステム200は、第7アクチュエータ27A及びフランジ27の取り付け方向のみが第1実施形態のものを異なっている。従って、以下では、説明の便宜上、重複説明を適宜省略し、同様のものについては同符号を用いて説明する。
本実施形態では、アーム構造材16とフランジ27とは、第7アクチュエータ(第7関節)27Aを介して連結されており、第7アクチュエータ17Aの駆動により、フランジ27及びフランジ27に取り付けられるハンド等のエンドエフェクタ(図示しない)が回転するようになっている。
【0024】
本実施形態にかかるロボットシステム200はこのように構成されているので、第1実施形態のものと比較して、第4アクチュエータ14Aを屈曲させた姿勢において生じる特異点を回避する必要はあるものの、第7アクチュエータ27Aを駆動させるだけでフランジ27に取り付けられたエンドエフェクタを容易に回転させることができるので、エンドエフェクタを回転させる用途に適している。
【0025】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
図4及び
図5に示すように、第1実施形態で説明したロボット1を共通の基台となる胴体に一対(2個)取り付けて構成されている点が第1実施形態のものを異なっている。従って、以下では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、同様のものについては同符号を用いて説明する。
本実施形態にかかるロボットシステム300は、設置面101に固定された胴体301に、ロボット1が2本取り付けられて構成されている。
胴体301は、設置面101に固設されたベース部301Aとアクチュエータ301Cを介してベース部301Aに対して旋回する旋回胴部(胴体本体)301Bとを有して構成されている。
【0026】
旋回胴部301Bは、アクチュエータ301Cから斜め上方(
図5中右上方向)に延び、ロボット1を一対取付け可能な開口部を有している。
アクチュエータ301Cの回転軸Abとロボット1の回転軸A1とは、設置面101と水平な方向(回転軸Abを基準にすると
図5中右方向)に長さd3だけオフセットしている。
【0027】
本実施形態ではロボット1がそれぞれの第1アクチュエータ11Aの回転軸A1が同一直線状に並ぶように旋回胴部301Bに配設されている(なお、ロボット1の配向は適宜変更可能である)。即ち、旋回胴部301Bが一対のロボット1それぞれの基台を兼ねている。また、ロボットコントローラ302と各ロボット1とはケーブル303を介して接続されており、ロボットコントローラ302からの指令によって各ロボット1のアクチュエータが動作するように構成されている。
【0028】
本実施形態にかかるロボットシステム300はこのように構成されているので、機械製品の組立て用途等、胴体の近傍において一対のロボット1を協業させる動作を行なう際の動作範囲を大きくすることができ、より省スペース化を図ることができる。
また、旋回胴部301Bが斜め上方に延び一対のロボット1が取り付けられているので、回転軸Abと回転軸A1とがオフセットしている分、アクチュエータ301Cを回転させることによって、各ロボット1のフランジ17をより遠くまで到達させることができる。
また、ベース部301Aの近傍で旋回胴部301Bの下部に生じるスペースにまで、各ロボット1の手先を到達させることができるので、旋回胴部301Bの下部のスペースを利用して作業を行なうことができ、より省スペース化を図ることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明にかかる搬送システムは上述の実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して適用可能である。
例えば、第3実施形態では、胴体に第1実施形態にかかるロボットを取り付けた例について説明したが、胴体に取り付けるロボットは第2実施形態のものとしてもよい。
また、上述の実施形態では、いずれも関節を7個有するロボットを例に説明したがロボットが備える関節は3個でもよい。例えば、第1実施形態の第3〜5アクチュエータ及び13〜15以外の構成を省略してロボットを構成してもよい。