(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、第1の実施形態の代表例の閉鎖部材3を備えた粉末注射器1を示している。粉末注射器1は、近位端5及び遠位端7を有している。遠位端7には遠位口9が設けられている。近位端5には近位口11が設けられている。近位口
11の領域には、図示されていないピストンロッドのための通路を有する指掛け部13が配置されている。
【0017】
図示の実施形態では、粉末注射器1が二重チャンバシステムとして構成されている。この注射器を製造する際、中央プラグ15は、近位口11を介して粉末注射器1の内部に挿入され、近位チャンバ17を遠位チャンバ19から分離する。遠位チャンバ19は、好ましくは遠位口9を介して充填される。例えば、ここでは溶解した有効成分又は溶解した有効成分の組合せ、すなわち、後に凍結乾燥される溶液を充填することができる。続いて、遠位チャンバ19又は遠位口9が閉鎖部材3を用いることによって、それぞれ閉じられる。遠位チャンバ19内に配置された凍結乾燥固形物は、典型的には粉末注射器1の壁21に付着し、したがって凍結乾燥固形物は遠位チャンバ19内で自由に移動できない。
【0018】
代わりに、粉末状の可溶性物質を遠位チャンバ19に充填する場合、該物質は遠位チャンバ内で自由に分散し得る。遠位チャンバ19は閉鎖部材3を用いて閉じられる。すると、粉末は閉鎖部材3の流路の領域に達することが可能になり、そこに不溶性の集塊を形成する虞がある。この集塊は流路を詰まらせ、粉末注射器1の機能性を低下させる。
【0019】
溶剤は、近位口11を介して近位チャンバ17に充填することができ、その後、この近位口はエンドプラグ23を用いて閉じられる。エンドプラグ23は、好ましくは、図示されていないピストンロッドとの連結のための連結手段25を有する。図示の実施形態では、連結手段25は、図示されていないピストンロッドに設けられた雄ネジと噛合可能な雌ネジである。
【0020】
それに応じて、好ましくは、粉末27は、ここでは二重チャンバシステムとして形成されている粉末注射器1の遠位チャンバ19内に存在する。近位チャンバ17は、好ましくは、溶剤29を収容している。粉末27は溶剤29に溶解可能であることが好ましい。
【0021】
遠位チャンバ19の所定の領域内で、壁21は、径方向の突出部を有し、該突出部は、周方向から見て比較的小さな角度範囲にしか延びておらず、バイパス31として構成されている。二重チャンバシステムを作動させるには、不図示のピストンロッドを用いてエンドプラグ23を遠位端7の方向に移動させる。このとき、近位チャンバ17内に生じた圧力によって、中央プラグ15も同方向に移動する。
【0022】
ここでは、通常、粉末注射器1の縦の延びに対応する長手方向を説明に用いる。これに対応して、径方向は、前記長手方向との関係において垂直な方向として説明に用いる。前記長手方向は、軸方向としても説明に用いられる。周方向は、粉末注射器1の長手軸の周りの円周線に沿って延びている。
【0023】
バイパス31は、長手方向に見て中央プラグ15の軸方向の長さより大きな延びを有している。これが、中央プラグ15がバイパス31の領域に移動すると、近位チャンバ17と遠位チャンバ19の間の流体連通がバイパス31によって確立される理由である。このとき、特にエンドプラグ23がさらに近位チャンバ17から遠位チャンバ19内に移動することにより、溶剤29が近位チャンバ17から遠位チャンバ19に導入され、そこで粉末27を溶解させる。最終的には中央プラグ15とエンドプラグ23が互いに接した状態になる。これら二つのプラグが遠位端7に向けて移動することにより、遠位チャンバ19内に存在している溶液を粉末注射器1から放出することができるようになり、好適には患者に注射することができる。このような二重チャンバシステムの構成及び機能性は従来技術から知られているので、これ以上の詳細は説明しない。
【0024】
遠位チャンバに粉末を収容する二重チャンバシステムでは、好ましくは、凍結乾燥物用に規定された二重チャンバシステムに比べて遠位口9が広げられている。このようにすることで、粉末を比較的容易に充填し得るからであり、これに対し溶液にはより小さい直径で十分である。
【0025】
本発明は、二重チャンバシステムとして構成された粉末注射器に限定されない。基本的には、どのような粉末注射器でも、注射器のチャンバ内に存在する粉末が閉鎖部材の流路内で凝集し得るという問題を抱えている。これに対応して、ここで提案される解決策はどのような粉末注射器についても適用可能である。二重チャンバシステムの遠位チャンバ内に存在する凍結乾燥物が、保管期間の少なくとも一部で粉末状になり、それによって、閉鎖部材の流路を詰まらせる可能性が生じることも実証されている。したがって、ここで提案される閉鎖部材は、好ましくは、遠位チャンバ内に凍結乾燥物を備える二重チャンバシステムにおいても使用できることが理解される。
【0026】
図2は、
図1の閉鎖部材3の実施形態を表す詳細図を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には、同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。閉鎖部材3は本体33を備えている。この本体上には、閉鎖部材3が図示の閉位置にあるときに、粉末注射器1の遠位口9に対してシール態様で接するように封止要素35が配置されている。
【0027】
封止要素35は弾性材料から作られ、外見上、粉末注射器1の壁21と閉鎖部材3の本体33の間で締め付けられ、そこで封止効果が得られるようになっている。図示の実施形態では、閉鎖部材3が閉位置にあるときに、粉末注射器1の吐出口領域37の内側の輪郭に封止要素35の外側の輪郭が適合し、封止要素は吐出口領域37の全体に沿って接している。
【0028】
図2では、封止要素35の縁と、本体33及び壁21の縁とが部分的に重なり合って示されている。これは単に図面の組み合わせ上の作為であり、この図では封止要素35がその圧縮されていない状態で、本体33と壁21の間に示されている。実際には、封止要素は圧縮されており、さらに本体33及び壁21に密接している。この状態をここで写実的に図示すれば、対応する縁は互いに隣接し、したがって重なり合いは生じない。
【0029】
本体33は、遠位チャンバ19を向く端部に、径方向の内側を向く突出部39、39'を有している。前記突出部により、本体は粉末注射器1のフランジ41の後方に達し、該フランジは、外見上、吐出口領域37において壁21に切込み又は溝43が形成されるように設けられている。閉鎖部材3の閉位置では、この後部切込み又は溝に突出部39、39'が、外見上、外れ止めの突起の形態で噛み合っている。これにより、封止要素35に力を作用させることができ、この力は、封止要素を圧縮し、遠位口9の領域及び/又は吐出口領域37における緊密な接触位置を助長する。同時に、突出部39、39'は、壁21によって構成された粉末注射器1の本体上に、閉鎖部材3を安全に保持する。
【0030】
閉鎖部材3が、遠位チャンバ19内に備えられた凍結乾燥物に関連して使用される場合、フランジ41は、周方向に見てフランジを取り囲む環状溝を備えることが好ましい。ここでは図示されていないこの溝にも、突出部39、39'は、外れ止めの態様で係合することができる。
図2に示されるように、外見上、閉鎖部材3の図示した係合位置の上方にさらなる係合位置が形成されており、この係合位置では、封止要素35が圧縮されないだけでなく、遠位口9の領域に隙間が残され、これにより、遠位チャンバ19から粉末注射器1の外部環境への流体連通がある。閉鎖部材3が上側の固定位置に配置されている間は、遠位チャンバ19内に備えた溶液を凍結乾燥することができる。凍結乾燥工程の完了後は、閉鎖部材3を
図2に示した係合位置に移動させ、この係合位置では閉鎖部材が遠位チャンバ19をシール態様で閉塞する。
【0031】
閉鎖部材3は、本体33及び封止要素35を貫通する流路45を有している。流路45は近位端47及び遠位端49を有している。
【0032】
既知の閉鎖部材では、粉末状材料が遠位チャンバ19から近位端47を経て流路45に侵入する可能性がある。そこでは凝集が生じる可能性があり、その集塊は不溶性である場合があり、これにより、粉末注射器1の機能性が損なわれる。
【0033】
このようなことが起こるのを避けるために、閉鎖部材3は留置要素51を有し、該留置要素は、閉鎖部材3が
図2に示した閉位置で粉末注射器上に配置されているときに、いずれにしても、粉末注射器の作動前に、粉末が遠位チャンバ19から流路45に一切侵入できないように構成され、及び/又は配置することができる。
【0034】
図示の実施形態では、閉鎖部材3は、流路45の遠位端49を閉じる閉鎖部材キャップ53を備えている。
【0035】
閉鎖部材キャップ53は、好適には棒状の突出部55を備えている。前記突出部は流路を貫通している。留置要素51は、この突出部55に設けられている。
【0036】
例えば、好適には棒状の突出部55を、封止要素35を貫通する流路45の断面の直径より大きな直径を有するように構成することができる。この突出部55が対応する流路区間に挿入されると、封止要素35が圧縮され、封止要素はシール態様で突出部に対して密接する。このとき突出部55が長手方向に見て近位端47にまで達する延びを有していれば、流路45は緊密に封止され、一切の粉末は流路に侵入することができない。
【0037】
しかしながら、棒状の突出部55がその長手の全長に沿って同様の直径を有する実施形態では、突出部55と封止要素35の間の摩擦により、閉鎖部材キャップ53を取り外すのに大きな力を要する点が不利である。
【0038】
したがって、留置要素51が、棒状の突出部の肥大部57として構成された実施形態が好ましい。図示の好ましい実施形態では、肥大部57は、突出部55の遠位チャンバ19に向く端部に設けられている。好ましくは、突出部55は、封止要素35全体を貫き、肥大部57を流路45の近位端47から少なくとも部分的に延出させている。封止要素35内に設けられた流路45の断面の内径よりも大きい直径、好適には最大の直径を有する肥大部57の領域では、封止要素35がシール態様で密着し、これにより、近位端47は緊密に封止されている。したがって、粉末は、流路45に一切侵入することができない。
【0039】
留置要素が肥大部57の形態で突出部55に設けられ、突出部の一部である場合、肥大部57以外の突出部の直径は、封止要素35内の流路45の断面の内径よりも小さく構成することができる。これにより、閉鎖部材キャップ53を取り外す際に生じる摩擦力が軽減される。
【0040】
突出部55は、該突出部が近位端47とは反対側で封止要素35から出る領域において、比較的大きい直径を有することで、封止要素35を通って延びる流路45の当該部分をも緊密に封止するように構成することができる。この場合、流路45のうち封止要素35に入る入口及び封止要素から出る出口が、それぞれ突出部55によって緊密に閉じられる。
【0041】
図2に基づいてさらに以下のことが分かる。すなわち本体33は、好ましくは、カニューレ又は注射針との連結に用いられる連結管59を備えている。特に、連結管59をテーパー状に構成することができる。連結管は、ルアーテーパーとして構成することが特に好ましい。これに対応して本体33は、連結管59を取り囲むルアーネジ61も備えることができ、有効成分又は溶液を放出するための放出手段との連結に用いられる。ルアーテーパー及びルアーネジは当技術において知られているので、さらに詳しくは説明しない。好ましくは、閉鎖部材キャップ53は、連結管59を取り囲む壁部63をさらに有する。この壁部の遠位チャンバ19に向く端部には、周方向に見て径方向に延びる突出部65が設けられている。この突出部は、閉鎖部材キャップ53をルアーネジにねじ込むことができ、又はルアーネジから回して取り外すことができるように、ルアーネジ61と噛み合うことが好ましい。
【0042】
図3は、閉鎖部材3の第2の実施形態の代表例を示している。同一の要素及び機能的に同一要素には同じ符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。見易くするため、図には常にすべての符号を表示しているのではなく、説明の中で直接的に言及もされている符号だけを表示している。
図3に示した実施形態では、留置要素が膜67として構成されている。この膜は、原則的に、貫通又は引き裂き可能にされ、特に圧力により押し破り可能にされ、又は別のやり方で破壊可能に構成することができる。破壊可能な膜、特に貫通又は押し破り可能な膜は、膜の開口時に小さな粒子が剥がれて患者に注入される虞がある。したがって図示した例示的実施形態では、膜67はスロット付きの膜として形成されるのが好ましい。つまり膜は少なくとも一つのスロット69を有しており、このスロットの領域で膜を圧力により拡張することができる。スロットは、好適には射出成形された膜に最初から成形されていることができ、すなわち射出成形の際に作ることができる。好ましくは、製造後に例えば切断、好ましくはレーザ切断により膜にスロットを形成することもできる。好ましくは、閉じた状態のスロットは、粉末が通り抜けられないほど幅が狭い。しかし、流路45内での凝集が生じない程度に少量の粉末がスロットを通り抜け得ることも可能である。このような実施形態も本発明の保護対象の範囲に含まれている。
【0043】
図示した実施形態の代表例では、軸方向に見て封止要素35が
図2に基づく実施形態の場合より短く形成されている。特にここでは、封止要素が、吐出口領域37内へと延びて吐出口領域の輪郭に沿う輪郭を有していない。同様に、
図2のように構成された封止要素でも、好適にはスロット付きの膜を設けることができる。
【0044】
しかし、図示の実施形態では、封止要素35が本体33の連結管59全体を通って延びている。それどころかこの封止要素は軸方向に見て連結管59の上に覆いかぶさっており、その遠位端に環状の支持領域71を形成している。
【0045】
ここでは閉鎖部材キャップ53は、壁区間63と共に連結管59に対してシール態様で接している。閉鎖部材キャップは短い中心の突出部73のみを備え、この突出部は、比較的短い距離にわたって流路45内に突き出ており、封止要素35に対して密着している。
【0046】
本体33、及び、したがって連結管59が含む材料、及び/又はこれらを成す材料は、典型的には一次接触に適していない。これは、薬剤が特にその貯蔵中に本体33に接触してはいけないことを意味する。これが、閉鎖部材キャップ53が、典型的には、軸方向に見て、少なくとも封止要素35に対してシール態様で接する程度に延びる突出部73を備えている理由である。これにより、遠位チャンバ19内に供された物質が本体33の材料に接触することが回避される。しかし、封止要素35が、
図3に示す実施形態の代表例のように、連結管59全体を通り抜けて延び、それどころか連結管を越えたところでリング状の支持領域71を形成している場合には、閉鎖部材キャップ53に長い突出部73を設ける必要はない。その代わりに、突出部73は、なおも支持領域71とシール態様で係合するように構成されていれば十分である。これにより、遠位チャンバ19内に備えられた物質が本体33の材料と接触しないことが保証されている。
【0047】
さらに以下のことも分かる。閉鎖部材3の閉位置では、突出部39、39'は、安全キャップ79によって溝43内の係合位置に押し込まれている。安全リング75は、剥ぎ取り帯77を介して安全キャップ79と連結され、この安全キャップは、閉鎖部材キャップ53の上を覆い、且つ周りを取り囲むように延在している。閉鎖部材
3を適用する際は、最初に本体33をその閉位置に移動させ、続いて安全キャップ79によって安全リング75を本体の表面上に押し被せ、これにより本体33が最終的に安全にその係合位置で保持される。閉鎖部材3を開けるには、安全キャップ79を剥ぎ取り帯77の領域で安全リング75から分離して取り外す。次いで、粉末注射器1の外部環境と流路45を流体連通させるため、閉鎖部材キャップ53を取り除くことができる。
【0048】
図4は、
図3に基づく実施形態の線A-Aに沿う断面図である。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。外側の領域に、本体33を取り囲んでいる安全リング75が示されている。本体33は、この断面の領域で、及び特に突出部39、39'の領域でも、周方向に見て複数のスロット又は凹所を有していることが図示され、このスロット又は凹所は、軸方向に見て所定の範囲にわたって延びている。単なる例として、ここでは二つのスロットが符号81、81'で示されている。全体では、
図4では本体の周面に沿って八つのスロット又は凹所が設けられている。前記凹所は、一方では本体33が突出部39、39'の領域で、突出部39、39'が溝43に係合する前にフランジ41の表面上に押し被せるのに十分な弾性を有するようにしている。他方、この空隙は、閉鎖部材3が、遠位チャンバ19内に凍結乾燥物が供される二重チャンバシステムと共に使用される場合に重要である。既に説明したように、凍結乾燥中は閉鎖部材3がその上側の係合位置に配置されることが好適であり、この上側の固定位置では、閉鎖部材は二重チャンバシステムの遠位口9を密封しない。凍結乾燥工程の際に蒸発した溶剤を遠位チャンバ19及び遠位口9から二重チャンバシステムの外部環境に到達させることができる流体路が、このような凹所に沿って、特にここで例として符号をつけたスロット81、81'も通っている。
【0049】
図4の代表例の中心には膜67が配置されている。この膜は互いに垂直な二つのスロット83、83'を有しており、全体としては十字形の配置のスロットが設けられている。膜67は一つのスロットだけを有することができる。二つより多いスロットも可能である。二つのスロットが設けられている場合、スロットが互いに垂直である必要はない。原則的に任意の数及び幾何的配置のスロットが可能である。
【0050】
重要なのは、スロットの幅及び/又はここでは十字形に配置されたスロットの中心に配
置されたスロット83、83'を含む開口部が、遠位チャンバ19内に備えられている粉末の平均粒径より小さいことである。好ましくは、スロットの幅又は開口部は、それぞれこの粉末の最小粒径より小さい。これにより、膜67が留置
要素51として機能し、流路45へのいかなる粉末の侵入も効果的に防止することが保証される。粉末注射器が作動されると、すなわち、遠位チャンバ19内に存在している溶液が注入される際、膜67は、遠位チャンバ19内に生じた圧力により拡張され、少なくともスロット83、83'の領域では流路45への流体路を開放する。膜67は、圧力の影響下で、好適にはスロット83、83'に沿って開裂することも可能であり、これによりさらに直径の大きな流体路が開放される。
【0051】
図示の実施形態では、膜67は封止要素35と一体的に構成されている。膜を別個の要素として設けることも可能である。この場合は、好ましくは膜を適切な方法で封止要素35と接続させる。膜67は、流路45の近位端47に配置されるのが特に好ましい。
【0052】
図5は、閉鎖部材3の第3の実施形態の代表例を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。留置要素51は、ここでは流路45に沿って移動可能な要素として形成されている。図示の実施形態では、移動可能な要素は球85である。この球は、封止要素35内に配されている流路45の断面の直径より大きな直径を有している。これにより、球85によって近位端47を封止することができる。球85は、摩擦によってその閉鎖位置で保持される。
【0053】
別の実施形態では、移動可能な要素が異なる幾何形状を有することができる。例えば、球85上に、近位端47を越えて遠位チャンバ19内に延びる少なくとも一つの突出部を設けることができる。これによっても、流路45をその近位端47において閉鎖することができる。球85の代わりに、例えば円筒形の要素を設けてもよい。円筒形の要素も対応する突出部を有することができる。任意のその他の幾何形状が可能である。
【0054】
移動可能な要素は、好ましくはガラスを含むか又はガラスによって作られる。ガラスは必要な硬度を有し、封止要素35はシール態様でガラスに接することができる。加えて、ガラスは一次接触に適した材料である。
【0055】
図示の実施形態の代表例では、近位端47に、移動可能な要素のための保持手段87が設けられている。この保持手段は、移動可能な要素が遠位チャンバ19に入り込むことを防止する。図示の実施形態の代表例では、保持手段87は、流路45の壁の径方向の突出部として構成され、この突出部に球85が接している。移動可能な要素が突出部を有する場合、この突出部は保持手段87の領域を通り抜けて延びることができ、これにより、この領域は、確実に遠位チャンバ19からの粉末の侵入に対して保護されている。このようにすることで、まだ凝集が起こり得る流路45の残部の体積が最小限になるだけでなく、残部は実質的に防止され又は完全になくなる。
【0056】
粉末注射器1を作動するために遠位チャンバ19に圧力が導入されると、移動可能な要素は、流路45内を移動して遠位チャンバ19から遠ざかる。最終的に、移動可能な要素は遠位端49において流路45から排出される。
【0057】
ここで不都合なのは、移動可能な要素が粉末注射器1から流出し、その際、最悪の場合には、移動可能な要素が、患者に注射され、又はカニューレ若しくは注射針を詰まらせ、及び/又はその入口を閉鎖することである。したがって、移動可能な要素を留置すると同時に粉末注射器1の外部環境への流体路を開放する留置手段が設けられるのが好ましい。このような留置手段は、特別に作製されたカニューレアタッチメントにおいて設けることができる。ただし、これは、閉鎖部材3又は粉末注射器1を従来のカニューレ又は注射針と共に使用できないので、相対的に言えば、複雑で費用のかかる解決策である。
【0058】
図6は、
図5に示す閉鎖部材3の実施形態を僅かに変形した作動状態の実施形態の代表例を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。ここでは、流路45の遠位端49の領域に、移動可能な要素のための留置手段89が設けられている。連結管59上には、カニューレ91が配置されている。このカニューレは、好適には内側円錐を備え、この内側円錐は、好適には円錐形に形成された連結管59と、粉末注射器1のカニューレ91に対する緊密な連結が保証されるように協働することができる。留置手段
89は、外見上、移動可能な要素を受け止める。しかし、同時に、流路45からカニューレ91への流体路は維持される。特に、注入溶液は、ここでは球85として形成された移動可能な要素の周りを流れることができる。
【0059】
図7に示す、
図6の線A-Aに沿う断面図に基づいて、留置手段89の機能をより詳しく説明する。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。
図7の外側の領域では、ルアーネジ61が示されている。径方向に見て、その内側に、カニューレ91の壁区間が配されている。さらにその径方向の内側には、最終的に連結管59が示されている。ここでもまた、重なって見えるところがあり、これは、分解された各要素の構成に基づいて、これらの組み立て状態を図示したことに起因している。様々な要素を組み立てる際に生じる材料の拡張又は圧縮がここでは考慮されておらず、これにより、重なって見える領域が生じている。
【0060】
連結管59は、遠位端49の領域に径方向の突出部93、93'、93''を有しており、この突出部は、それぞれ、移動可能な要素又は球85を留置するのに十分な深さで流路45内へ突出している。図示の実施形態の代表例では、周方向に見て三つの径方向の突出部93、93'、93''が設けられている。球85を留置するのに十分なだけ径方向に内側に延びていれば、最終的には単一の径方向の突出部で十分である。二つの突出部又は三つより多い突出部も可能である。重要なのは、周方向に見て自由空間95、95'、95''が保持されることであり、この自由空間が、それぞれ、流路45と粉末注射器1の外部環境又はカニューレ91との間の流体連通を可能にする。すなわち注入溶液は、球85、つまり移動可能な要素の周りを流れることができ、自由空間95、95'、95''をそれぞれ通って流路45から出て、粉末注射器1の外部環境又はカニューレに入ることができる。
【0061】
図8は、閉鎖部材3の第4の実施形態の代表例を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。留置要素は、ここでは可溶性の物質97によって構成されている。この物質は、遠位チャンバ19内に存在する溶解すべき粉末あるいは凍結乾燥物を溶かすのと同じ溶媒に溶けるように選択されている。可溶性の物質97は、凍結乾燥された物質であることが特に好ましい。流路45を閉塞する凍結乾燥固形物を形成するため、ここでは図示されていない装置を用いて溶液を封止要素35内に入れることができ、その中で凍結乾燥することができる。
【0062】
図示の好ましい実施形態では、近位端47の領域に、物質97を収容するための拡張部99が設けられている。この拡張部は、外見上、流路45を閉塞し、遠位チャンバ19内に存在している粉末が流路に侵入できないようにする、プラグを形成している。
【0063】
この実施形態の作用を
図9に基づいてより詳細に説明する。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。粉末注射器1が作動されると、溶剤29が遠位チャンバ19に達する。遠位チャンバ内では、粉末27が溶剤29に溶ける。その後、この溶液は、近位端47を経て、物質97が存在する拡張部99に達する。物質97も溶剤29に溶けるので、物質97は
図9に示したように溶解する。これは、流路45を閉鎖しているプラグが徐々に溶けることを意味しており、したがって最終的には、遠位チャンバ19から流路45への流体連通が開放される。最後には、注入溶液は、カニューレ91に送られてそこからさらに患者へと送られ得る。
【0064】
物質97は、例えばビタミンCのような賦形剤を含むことができる。さらに、留置要素51として供された物質97によって、遠位チャンバ19内に存在している有効成分に対して、補助物質をある程度、供給することができる。
【0065】
好ましくは、物質97は、封止要素35、好適には、拡張部99にペレットとして入れることもできる。この場合、物質97のためのさらなる凍結乾燥ステップを省略することができる。
【0066】
図9ではさらに以下のことが分かる。一例として、フランジ41の領域にリング溝101が示されており、遠位チャンバ19内の物質を凍結乾燥する際には、本体33の突出部39、39'が、本体の上側の固定位置でこのリング溝に係合する。
【0067】
図10は、閉鎖部材3の第5の実施形態の代表例を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。留置要素51は、ここでは閉鎖部材ディスク103を含んでいる。閉鎖部材ディスク103は、遠位チャンバ19を閉鎖するように配置することができ、したがって、粉末は、一切、流路45に入ることができない。
【0068】
粉末注射器1は、好適には吐出口領域37に狭窄部105を備える。この領域では壁21が急激に径方向の内側へ急峻に変形し、これにより狭窄部105が形成されている。好ましくは、閉鎖部材ディスク103は、狭窄部105にシール態様で接するように形成されるのが好ましい。このために閉鎖部材ディスクは、周方向に見て延びている径方向の突出部107を有することが好適である。軸方向に見て突出部107に続く領域109では、閉鎖部材ディスク103が狭窄部105の内径に対応する外径を有することが好ましい。これにより、閉鎖部材ディスク103の外郭は、外見上、狭窄部105又は吐出口領域37の内郭に沿っており、したがって、閉鎖部材ディスクは、突出部107によって領域109において壁21にシール態様で接する。
【0069】
図示の実施形態でも、閉鎖部材キャップ53が棒状の突出部を備えることが好適であり、この棒状の突出部は、ここでは安全ピン111として形成されており、流路45を貫通している。閉鎖部材キャップ53が適用されると、この安全ピンは、閉鎖部材3の閉位置で閉鎖部材ディスク103に接し、この閉鎖部材ディスクを、狭窄部105に密着しながら接している状態で保持する。
【0070】
狭窄部105は、粉末注射器1の遠位
口9の領域に設けられているのが好ましい。
【0071】
閉鎖部材ディスク103は、好ましくはゴム又はTPEによって構成され、特に好ましくはこれらの材料の少なくとも一種から作られる。この場合、閉鎖部材ディスクは非常に良好な封止特性を有しており、加えて、前述の材料は一次接触に適している。
【0072】
図11は、
図10に基づく実施形態の代表例の作動状態を示している。同一の要素及び機能的に同一の要素には同一の符号を付しているので、前述の説明を参照されたい。粉末注射器1を作動させるには、最初に閉鎖部材キャップ53を、したがって安全ピン111も取り外す。続いて遠位チャンバ19内に圧力を発生させ、この圧力が閉鎖部材ディスク103を封止要素35に押しつける。閉鎖部材ディスクは、封止要素35の側の面113に少なくとも一つの突出部、ここでは三つの突出部115、115'、115''を有している。この突出部により、閉鎖部材ディスクはそれ自体を封止要素35の対向面117に対向させて支持する。これにより、突出部115によって、面113及び対向面117が互いに間隔をあけて保持され、これらの面と突出部115、115'、115''の間に流体路が形成される。遠位チャンバ19から出てくる溶液は、閉鎖部材ディスク103の周りを流れることができ、流路45に入ることができる。そこから、溶液をカニューレ91へと放出することができる。
【0073】
以上、ここで提案した閉鎖部材及びここで提案した粉末注射器は、留置要素51により、流路45内での集塊形成の虞を回避していることが分かる。これは、特に二重チャンバシステムとして形成された粉末注射器の長期保管性を改善することに大いに貢献し、粉末注射器の機能性を長期貯蔵の場合も確実に保証する。