特許第6182078号(P6182078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182078
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】インストルメントパネル構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B60K37/00 Z
   B60K37/00 D
   B60K37/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-6409(P2014-6409)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134542(P2015-134542A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】大野 宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 則昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝年
(72)【発明者】
【氏名】小川 正人
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254084(JP,A)
【文献】 実開平01−116739(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01559639(EP,A2)
【文献】 実開平02−060030(JP,U)
【文献】 米国特許第03276813(US,A)
【文献】 特開2004−042745(JP,A)
【文献】 実開昭63−154324(JP,U)
【文献】 特開2005−239097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B62D 25/14
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルと、該インストルメントパネルに設けられると共に、メータユニットの上方を覆う上面部を有するメータフードとを備えているインストルメントパネル構造であって、
上記メータフードの上面部の少なくとも一部の、車体前方への延長線は、断面視で上記インストルメントパネルの上面部よりも上方においてフロントウィンドウガラスと交差しており、
上記メータフードの上面部の前端部は、上記インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられた上方部を有しており、
上記メータユニットの車体前方で且つ上記上方部の下方において車幅方向に延びるように設けられ、上記インストルメントパネルの上面部と上記上方部との間の隙間を覆う縦壁部材をさらに備えており、
上記インストルメントパネルの前端部は、車体前方に突出するように湾曲しており、
上記フロントウィンドウガラスは、上記インストルメントパネルの前端部に沿うように湾曲しており、
上記上方部の車幅方向中央部には、車体前方に突出する凸部が形成される一方、該凸部の車幅方向両側には、車体後方に窪む凹部がそれぞれ形成されていることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項2】
請求項記載のインストルメントパネル構造において、
上記インストルメントパネルの上面部の前部には、デフロスターエア吹出口が形成されており、
上記デフロスターエア吹出口の少なくとも一部は、断面視で上記メータフードの上面部の車体前方への延長線よりも下方に設けられると共に、上記上方部の車体前方に配置されていることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項3】
請求項記載のインストルメントパネル構造において、
上記デフロスターエア吹出口の車幅方向外方端部は、上記凸部の頂点部よりも車幅方向内方に配置されていることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項4】
請求項記載のインストルメントパネル構造において、
上記インストルメントパネルの前部には、デフロスターエアダクトが設けられており、
上記デフロスターエアダクトは、車幅方向外方に行くに従って上方に傾斜する傾斜部を有していることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項5】
請求項記載のインストルメントパネル構造において、
上記凹部のうち車幅方向外方側の凹部は、平面視で上記デフロスターエア吹出口の車幅方向外方への延長上に配置されると共に、車体正面視で上記傾斜部の車幅方向外方への延長線よりも下方に配置されていることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルと、該インストルメントパネルに設けられると共に、メータユニットの上方を覆う上面部を有するメータフードとを備えているインストルメントパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルと、このインストルメントパネルに設けられると共に、メータユニットの上方を覆う上面部を有するメータフードとを備えているインストルメントパネル構造が従来技術として知られている。
【0003】
このインストルメントパネル構造では、フロントウィンドウガラスがインストルメントパネルの車体前方に設けられている。また、メータフードは、インストルメントパネルと一体又は別体に設けられている。
【0004】
ここで、メータフードがインストルメントパネルと別体に設けられている場合、見栄えの点で、メータユニットの背面を覆う必要がある。そこで、例えば、特許文献1に示すものでは、メータフードの前端部がインストルメントパネルと係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−46314号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乗員の前方視界を車体側方に拡大することについて検討すると、この視界拡大という目的を達成するために、フロントピラーを従来よりも車体後方に配置することが考えられる。この場合、ダッシュカウル及びフロントウィンドウガラスは、フロントピラーの後方配置に伴って後方配置される。特に、フロントウィンドウガラスの車幅方向外方側は、フロントピラーに追従して後方配置する必要があり、そのため、フロントウィンドウガラスは、車幅方向外方に行く程、より大きく後方化する。
【0007】
一方で、ステアリング装置の位置は、乗員の着座位置に基づいて決定される。そして、メータユニット及びメータフードの位置は、乗員の上下方向の前方視界やメータユニットの視認性(この視認性は、ステアリング装置の位置の影響を受ける)、メータユニットに対するメータフードの遮光性など、車室側の様々な要因によって制約を受け、このため、メータフードは、大きく後方化することができない。
【0008】
したがって、フロントウィンドウガラスが大きく後方化した場合であって、インストルメントパネルの車体前後方向長が比較的短いときに、従来のように、メータフードの前端部をインストルメントパネルと係合すると、メータフードの配設に必要な前後スペースが不足して、メータフードがフロントウィンドウガラスと干渉したりする虞がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、見栄えを損なうことなく、メータフードを車体前後方向長が比較的短いインストルメントパネルに設けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、メータユニットの車体前方で且つメータフードにおける上面部の前端部の下方において車幅方向に延びるように縦壁部材が設けられ、この縦壁部材がインストルメントパネルの上面部とメータフードの上面部との間の隙間を覆うことを特徴とする。
【0011】
具体的には、本発明は、インストルメントパネルと、該インストルメントパネルに設けられると共に、メータユニットの上方を覆う上面部を有するメータフードとを備えているインストルメントパネル構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明は、上記メータフードの上面部の少なくとも一部の、車体前方への延長線は、断面視で上記インストルメントパネルの上面部よりも上方においてフロントウィンドウガラスと交差しており、上記メータフードの上面部の前端部は、上記インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられた上方部を有しており、上記メータユニットの車体前方で且つ上記上方部の下方において車幅方向に延びるように設けられ、上記インストルメントパネルの上面部と上記上方部との間の隙間を覆う縦壁部材をさらに備えており、上記インストルメントパネルの前端部は、車体前方に突出するように湾曲しており、上記フロントウィンドウガラスは、上記インストルメントパネルの前端部に沿うように湾曲しており、上記上方部の車幅方向中央部には、車体前方に突出する凸部が形成される一方、該凸部の車幅方向両側には、車体後方に窪む凹部がそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、メータフードの上面部の前端部が、インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられた上方部を有しており、縦壁部材が、メータユニットの車体前方で且つ上方部の下方において車幅方向に延びるように設けられ、インストルメントパネルの上面部と上方部との間の隙間を覆うので、メータフードの上面部をインストルメントパネルの上面部まで延長することなく、メータユニットの背面が露出するのを抑制することができる。このため、見栄えを損なうことなく、メータフードを車体前後方向長が比較的短いインストルメントパネルに設けることができる
【0014】
また、車体後方に窪む凹部が、上方部における車幅方向中央部の凸部の車幅方向両側にそれぞれ形成されているので、メータフードの上面部をフロントウィンドウガラスよりも車幅方向の湾曲を急にしても、フロントウィンドウガラスに沿って下方に見たときにおける上方部とフロントウィンドウガラスとの間の間隔を狭くすることができる。
【0015】
また、車体前方に突出する凸部が、上方部の車幅方向中央部に形成されている。そして、フロントウィンドウガラスに沿って下方に見たときにおける上方部とフロントウィンドウガラスとの間の間隔を略一定となる状態を維持することができる範囲(すなわち、見栄えを確保することができる範囲)において、凸部を車体前方に且つ下方に延長することができる。このため、インストルメントパネルの上面部と上方部との間の隙間を小さくすることができ、見栄えを良くすることができる。
【0016】
の発明は、上記第の発明において、上記インストルメントパネルの上面部の前部には、デフロスターエア吹出口が形成されており、上記デフロスターエア吹出口の少なくとも一部は、断面視で上記メータフードの上面部の車体前方への延長線よりも下方に設けられると共に、上記上方部の車体前方に配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、本発明によれば、メータフードの上面部の前端部が、インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられており、デフロスターエア吹出口の少なくとも一部が、断面視でメータフードの上面部の車体前方への延長線よりも下方に設けられている。つまり、デフロスターエア吹出口が、インストルメントパネルの上面部におけるフロントウィンドウガラスの下方の前後スペースに設けられている。このように、フロントウィンドウガラスの下方の前後スペースを利用して、デフロスターエア吹出口の配設スペースを確保することができる。
【0018】
また、本発明によれば、デフロスターエア吹出口の少なくとも一部が、上方部の車体前方に配置されているが、縦壁部材が、メータユニットの車体前方で且つ上方部の下方において車幅方向に延びるように設けられ、インストルメントパネルの上面部と上方部との間の隙間を覆うので、縦壁部材によってデフロスターエア吹出口から吹き出したデフロスターエアがメータフード内に侵入するのを抑制することができる。このため、乱流が発生するのを抑制することができると共に、デフロスターエア吹出口から吹き出したデフロスターエアをフロントウィンドウガラスに確実に当てることができる。
【0019】
の発明は、上記第の発明において、上記デフロスターエア吹出口の車幅方向外方端部は、上記凸部の頂点部よりも車幅方向内方に配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
ところで、従来、デフロスターエア吹出口は、メータフードの前端部とインストルメントパネルとの係合位置よりも車体前方に設けられ、そのため、デフロスト性能は、メータフードの影響を受けなかった。
【0021】
しかしながら、本発明のように、インストルメントパネルの車体前後方向長が比較的短い場合であって、メータフードの上面部の前端部が、インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられているときに、デフロスト性能の点で、デフロスターエア吹出口の配設スペース確保を考慮する必要がある。
【0022】
ここで、本発明によれば、デフロスターエア吹出口の車幅方向外方端部が、凸部の頂点部よりも車幅方向内方に配置されている。つまり、デフロスターエア吹出口の車幅方向外方端部は、凹部のうち車幅方向内方側の凹部に対応する位置に配置されている。このように、車体後方に窪む車幅方向内方側の凹部と、前端部が車体前方に突出するように湾曲するインストルメントパネルとを利用して、デフロスターエア吹出口の配設スペースを確保することができる。
【0023】
の発明は、上記第の発明において、上記インストルメントパネルの前部には、デフロスターエアダクトが設けられており、上記デフロスターエアダクトは、車幅方向外方に行くに従って上方に傾斜する傾斜部を有していることを特徴とするものである。
【0024】
これによれば、デフロスターエア吹出口の車幅方向外方端部が、凸部の頂点部よりも車幅方向内方に配置されているが、デフロスターエアダクトが、車幅方向外方に行くに従って上方に傾斜する傾斜部を有しているので、フロントウィンドウガラスにおけるデフロスターエア吹出口よりも車幅方向外方側の部分(例えば、凸部の頂点部よりも車幅方向外方側の部分)の曇りを晴らすことができる。
【0025】
の発明は、上記第の発明において、上記凹部のうち車幅方向外方側の凹部は、平面視で上記デフロスターエア吹出口の車幅方向外方への延長上に配置されると共に、車体正面視で上記傾斜部の車幅方向外方への延長線よりも下方に配置されていることを特徴とするものである。
【0026】
これによれば、車幅方向外方側の凹部が、平面視でデフロスターエア吹出口の車幅方向外方への延長上に配置されると共に、車体正面視でデフロスターエアダクトの傾斜部の車幅方向外方への延長線よりも下方に配置されているので、デフロスターエア吹出口から吹き出したデフロスターエアが車幅方向外方側の凹部に当たるのを抑制することができる。このため、乱流が発生するのを抑制することができると共に、デフロスターエア吹出口から吹き出したデフロスターエアをフロントウィンドウガラスに確実に当てることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、メータフードの上面部の前端部が、インストルメントパネルの上面部から上方に間隔をあけて設けられた上方部を有しており、縦壁部材が、メータユニットの車体前方で且つ上方部の下方において車幅方向に延びるように設けられ、インストルメントパネルの上面部と上方部との間の隙間を覆うので、メータフードの上面部をインストルメントパネルの上面部まで延長することなく、メータユニットの背面が露出するのを抑制することができ、このため、見栄えを損なうことなく、メータフードを車体前後方向長が比較的短いインストルメントパネルに設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造を示す平面図である。
図2】インストルメントパネル構造の要部を車体前方側から見た斜視図である。
図3】インストルメントパネル構造の要部を示す平面図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
図5図3のV-V線矢視断面図である。
図6】インストルメントパネル構造の要部を車体後方側から見た正面図である。
図7】インストルメントパネル構造の要部を車体前方側から見た背面図である。
図8】インストルメントパネル構造の要部を示す側面図である。
図9】メータフードを車体後方側からから見た正面図である。
図10】メータフードを車体前方側からから見た背面図である。
図11】インストルメントパネル構造の要部を図9の矢印の方向から見た部分断面図である。
図12】一体化したメータユニット及び縦壁部材を車体後方側からから見た斜視図である。
図13】一体化したメータユニット及び縦壁部材を車体前方側から見た背面図である。
図14】インストルメントパネル、一体化したメータユニット及び縦壁部材、並びにメータフードを車体後方側から見た分解斜視図である。
図15】その他の実施形態に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造を示す平面図であり、このインストルメントパネル構造は、車両用インストルメントパネル1(以下、単にインストルメントパネル1という)を備えている。このインストルメントパネル1は樹脂製であって、その前端部は、車体前方に突出するように車幅方向に湾曲状に延びている。
【0031】
図1図3に示すように、インストルメントパネル1の略水平な上面部10の車体前方端側には、図示しない空調ユニットからのデフロスターエアをフロントウィンドウガラス2に吹き出すフロントデフロスターエア吹出口10aが形成されている。このフロントデフロスターエア吹出口10aは、インストルメントパネル1の車幅方向中央部においてインストルメントパネル1の前端部に沿って車体前方に突出するように車幅方向に湾曲状に延びている。図3及び図4に示すように、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部(本発明の「少なくとも一部」に対応)は、車幅方向の断面視でメータフード5の上面部50の車体前方への延長線(図4に示す二点鎖線を参照)よりも下方に設けられると共に、後述する上方部52の車体前方に配置されている。さらに、図3に示すように、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部(車幅方向外方端部)は、後述する凸部52aの頂点部よりも車幅方向内方に配置されている。図5に示すように、インストルメントパネル1の略垂直な縦壁部11の上端部には、後述する縦壁部材7をインストルメントパネル1に固定するための係合孔11aが3つ(図5では1つのみ図示)形成されている。縦壁部11は、インストルメントパネル1の上面部10の後端部から下方に延びている。
【0032】
図1及び図4図8に示すように、インストルメントパネル1の上面部10の車体前方には、フロントウィンドウガラス2が設けられており、このフロントウィンドウガラス2は、インストルメントパネル1の前端部に沿って車体前方に突出するように車幅方向に湾曲状に延びている。さらに、フロントウィンドウガラス2は、車体後方に行くに従って上方に傾斜するように略直線状に延びている。
【0033】
図7に示すように、インストルメントパネル1の前部には、空調ユニットからのデフロスターエアを通すデフロスターエアダクト3が設けられており、このデフロスターエアダクト3は、インストルメントパネル1の上面部10の下方で且つインストルメントパネル1の縦壁部11の車体前方において車幅方向に延びてフロントデフロスターエア吹出口10aと連通するように配置されている。デフロスターエアダクト3は、車体正面視で略盃状をなしている。さらに、デフロスターエアダクト3の側部は、車幅方向外方に行くに従って上方に略直線状に傾斜する傾斜部30を有している。
【0034】
図4図5及び図7に示すように、インストルメントパネル1の縦壁部11の車体前方には、車体を補強するインストルメントパネルメンバ4が設けられており、このインストルメントパネルメンバ4は車幅方向に延びている。
【0035】
図1図8に示すように、インストルメントパネル1の上部の左半分には、樹脂製のメータフード5が取り付けられており、このメータフード5にスピードメータ等のメータユニット(計器)6が配設される。メータフード5は、上下に2分割されていて、メータユニット6の上方を覆う上面部50と、メータユニット6が配設される計器開口部51aが形成された下側分割体51とを備えている。
【0036】
図9及び図10にも示すように、メータフード5の上面部50は、上方に突出するように車幅方向に湾曲状に延びる板状部材からなり、車体前方に行くに従って車幅方向に広がっている。メータフード5の上面部50は、フロントウィンドウガラス2よりも車幅方向の湾曲が急である。さらに、メータフード5の上面部50は、車幅方向の断面視で車体前方に行くに従って下方に傾斜するように略直線状に延びている。メータフード5の上面部50の車幅方向中央部(本発明の「少なくとも一部」に対応)の、車体前方への延長線(図5に示す二点鎖線を参照)は、車幅方向の断面視でインストルメントパネル1の上面部10よりも上方においてフロントウィンドウガラス2と交差しており、これは、インストルメントパネル1の上面部10の、車体前後方向長が比較的短いことを意味する。メータフード5の上面部50の前端部は、インストルメントパネル1の上面部10から上方に間隔をあけて設けられた上方部52を有している。つまり、この上方部52は、インストルメントパネル1の上面部10から上方に浮いている。上方部52は、平面視でインストルメントパネル1の上面部10と重なっている。上方部52の車幅方向中央部には、車体前方に突出するように車幅方向に湾曲状に延びる凸部52aが形成される一方、この凸部52aの車幅方向両側には、車体後方に窪むように車幅方向に湾曲状に延びる凹部52bがそれぞれ形成されている。これにより、上方部52の左半分とフロントウィンドウガラス2との間の間隔は、フロントウィンドウガラス2に沿って下方に見たときにおいて略一定となる(図11を参照)。凸部52aは、上方部52の車幅方向両端部よりも車体前方に突出している。凹部52b,52bのうち車幅方向外方側の凹部52bは、平面視でフロントデフロスターエア吹出口10aをインストルメントパネル1の前端部に沿うように車幅方向外方へ延長した延長上(図3に示す二点鎖線を参照)に配置されると共に、車体正面視で傾斜部30の車幅方向外方への延長線(図7に示す二点鎖線を参照)よりも下方に配置されている。さらに、車幅方向外方側の凹部52bは、フロントデフロスターエア吹出口10aとの間の間隔が比較的広い。メータフード5の上面部50の前端部における上方部52の車幅方向両側は、インストルメントパネル1の上面部10と係合している。メータフード5の上面部50の前端部における裏面の車幅方向中央部には、メータフード5を縦壁部材7に固定する際においてメータフード5を縦壁部材7にガイドするためのガイド孔50aが形成される一方、このガイド孔50aの車幅方向両側には、メータフード5を縦壁部材7に固定するための係合孔50bがそれぞれ形成されている(図5及び図10を参照)。
【0037】
上記下側分割体51は、上方に盛り上がるアーチ状をなす板状部材からなり、その中央部には、車幅方向に延びる上記計器開口部51aが車体前後方向に貫通形成されている。下側分割体51の車幅方向両端部には、空調ユニットからの空調空気を車室に吹き出すエアコン吹出口51bがそれぞれ設けられている。下側分割体51の車幅方向外方端部の上面側には、空調ユニットからのデフロスターエアを図示しないドアウィンドウガラスに吹き出すサイドデフロスターエア吹出口51cが形成されている。下側分割体51の車体前方側面の車幅方向両端部には、メータフード5をインストルメントパネル1に固定するための係合爪51dがそれぞれ複数ずつ形成されている。
【0038】
図12及び図13に示すように、上記メータユニット6の下端部の車幅方向両端部には、メータユニット6をインストルメントパネル1に固定するための固定部60がそれぞれ設けられており、この固定部60は、インストルメントパネル1の縦壁部11にねじ等の締結部材で止められている。
【0039】
図2図4図5図7図8図12及び図13に示すように、メータユニット6の上部の車体前方で且つメータフード5の上方部52の下方には、メータユニット6の車幅方向略全体に亘って車幅方向に延びるように略垂直な板状の縦壁部材7が設けられており、この縦壁部材7は樹脂製であって、インストルメントパネル1の上面部10と上方部52との間の隙間を覆っている。さらに、縦壁部材7は、その上端部がメータユニット6よりも上方に突出するように該縦壁部材7の下部がメータユニット6の背面にねじ等の締結部材で止められている。縦壁部材7の車体前方側面の下端部における車幅方向中央部及び車幅方向両端部には、縦壁部材7をインストルメントパネル1に固定するための係合爪70がそれぞれ形成されている。縦壁部材7の車体後方側面の上端部における車幅方向中央部には、メータフード5を縦壁部材7に固定する際においてメータフード5を縦壁部材7にガイドするためのガイド爪71が形成される一方、その車幅方向両端部には、メータフード5を縦壁部材7に固定するための係合爪72がそれぞれ形成されている。
【0040】
図1図6及び図11に示すように、メータユニット6の車体後方には、ステアリング装置8のステアリングホイール80が設けられている。
【0041】
次に、メータフード5、メータユニット6及び縦壁部材7をインストルメントパネル1に取り付ける要領を図14等を参照して説明すると、先ず、縦壁部材7の下部をメータユニット6の背面に締結部材で止める。次に、メータユニット6の固定部60をインストルメントパネル1の縦壁部11に締結部材で止めると共に、縦壁部材7の車体前方側面に設けられた係合爪70を、インストルメントパネル1の縦壁部11の係合孔11aに差し込む。これにより、メータユニット6及び縦壁部材7がインストルメントパネル1の縦壁部11に固定される。次に、メータフード5をインストルメントパネル1及び縦壁部材7に押し付け、この過程で、メータフード5の車体前方側面に設けられた係合爪51dをインストルメントパネル1の図示しない係合孔に挿入係合させると共に、縦壁部材7の車体後方側面に設けられたガイド爪71を、メータフード5のガイド孔50aに挿入案内させながら、縦壁部材7の車体後方側面に設けられた係合爪72を、メータフード5の係合孔50bに挿入係合させる。これにより、メータフード5がインストルメントパネル1及び縦壁部材7に固定される。以上の要領により、メータフード5、メータユニット6及び縦壁部材7がインストルメントパネル1に取り付けられる。
【0042】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、メータフード5の上面部50の前端部が、インストルメントパネル1の上面部10から上方に間隔をあけて設けられた上方部52を有しており、縦壁部材7が、メータユニット6の車体前方で且つ上方部52の下方において車幅方向に延びるように設けられ、インストルメントパネル1の上面部10と上方部52との間の隙間を覆うので、メータフード5の上面部50をインストルメントパネル1の上面部10まで延長することなく、メータユニット6の背面が露出するのを抑制することができる。このため、見栄えを損なうことなく、メータフード5を車体前後方向長が比較的短いインストルメントパネル1に設けることができる。
【0043】
また、車体後方に窪む凹部52bが、上方部52における車幅方向中央部の凸部52aの車幅方向両側にそれぞれ形成されているので、メータフード5の上面部50をフロントウィンドウガラス2よりも車幅方向の湾曲を急にしても、フロントウィンドウガラス2に沿って下方に見たときにおける上方部52の左半分とフロントウィンドウガラス2との間の間隔を狭くすることができる。
【0044】
また、車体前方に突出する凸部52aが、上方部52の車幅方向中央部に形成されている。そして、フロントウィンドウガラス2に沿って下方に見たときにおける上方部52の左半分とフロントウィンドウガラス2との間の間隔を略一定となる状態を維持することができる範囲(すなわち、見栄えを確保することができる範囲)において、凸部52aを車体前方に且つ下方に延長することができる。このため、インストルメントパネル1の上面部10と上方部52との間の隙間を小さくすることができ、見栄えを良くすることができる。
【0045】
また、メータフード5の上面部50の前端部が、インストルメントパネル1の上面部10から上方に間隔をあけて設けられており、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部が、車幅方向の断面視でメータフード5の上面部50の車体前方への延長線よりも下方に設けられている。つまり、フロントデフロスターエア吹出口10aが、インストルメントパネル1の上面部10におけるフロントウィンドウガラス2の下方の前後スペースに設けられている。このように、フロントウィンドウガラス2の下方の前後スペースを利用して、フロントデフロスターエア吹出口10aの配設スペースを確保することができる。
【0046】
また、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部が、上方部52の車体前方に配置されているが、縦壁部材7が、メータユニット6の車体前方で且つ上方部52の下方において車幅方向に延びるように設けられ、インストルメントパネル1の上面部10と上方部52との間の隙間を覆うので、縦壁部材7によってフロントデフロスターエア吹出口10aから吹き出したデフロスターエアがメータフード5内に侵入するのを抑制することができる。このため、乱流が発生するのを抑制することができると共に、フロントデフロスターエア吹出口10aから吹き出したデフロスターエアをフロントウィンドウガラス2に確実に当てることができる。
【0047】
また、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部が、凸部52aの頂点部よりも車幅方向内方に配置されている。つまり、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部は、凹部52b,52bのうち車幅方向内方側の凹部52bに対応する位置に配置されている。このように、車体後方に窪む車幅方向内方側の凹部52bと、前端部が車体前方に突出するように湾曲するインストルメントパネル1とを利用して、フロントデフロスターエア吹出口10aの配設スペースを確保することができる。
【0048】
また、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部が、凸部52aの頂点部よりも車幅方向内方に配置されているが、デフロスターエアダクト3の側部が、車幅方向外方に行くに従って上方に傾斜する傾斜部30を有しているので、フロントウィンドウガラス2におけるフロントデフロスターエア吹出口10aよりも車幅方向外方側の部分(具体的に、凸部52aの頂点部よりも車幅方向外方側の部分)の曇りを晴らすことができる。
【0049】
また、車幅方向外方側の凹部52bが、平面視でフロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向外方への延長上に配置されると共に、車体正面視でデフロスターエアダクト3の傾斜部30の車幅方向外方への延長線よりも下方に配置されているので、フロントデフロスターエア吹出口10aから吹き出したデフロスターエアが車幅方向外方側の凹部52bに当たるのを抑制することができる。このため、乱流が発生するのを抑制することができると共に、フロントデフロスターエア吹出口10aから吹き出したデフロスターエアをフロントウィンドウガラス2に確実に当てることができる。
【0050】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、メータフード5を上面部50及び下側分割体51で構成したが、これに限らず、例えば、上面部50のみで構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、メータフード5の上面部50の車幅方向中央部の、車体前方への延長線を、車幅方向の断面視でインストルメントパネル1の上面部10よりも上方においてフロントウィンドウガラス2と交差させたが、これに限らず、例えば、メータフード5の上面部50の車幅方向全体の、車体前方への延長線を、車幅方向の断面視でインストルメントパネル1の上面部10よりも上方においてフロントウィンドウガラス2と交差させても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部を、車幅方向の断面視でメータフード5の上面部50の車体前方への延長線よりも下方に設けると共に、上方部52の車体前方に配置したが、これに限らず、例えば、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向全体を、車幅方向の断面視でメータフード5の上面部50の車体前方への延長線よりも下方に設けると共に、上方部52の車体前方に配置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、縦壁部材7をメータユニット6と一体化したが、これらを一体化しなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、メータフード5をインストルメントパネル1の左半分に設けたが、これに限らず、例えば、インストルメントパネル1の右半分に設けてもよいし、車幅方向中央部に設けてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、フロントデフロスターエア吹出口10aをインストルメントパネル1の上面部10の車幅方向中央部に形成したが、これに限らず、例えば、図15に示すように、インストルメントパネル1の上面部10の車幅方向両端近傍まで延びるように形成してもよい。この場合、フロントデフロスターエア吹出口10aの車幅方向左方端部は、メータフード5の上方部52よりも車幅方向外方に配置される。この構成は、例えば、特開昭62−166145号公報に示すように、空調装置が、デフロスターエアダクトに静圧チャンバを設けた所謂「静圧タイプ」のものの場合に適用される。なお、上記実施形態の空調装置は、所謂「動圧タイプ」のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明に係るインストルメントパネル構造は、見栄えを損なうことなく、メータフードを車体前後方向長が比較的短いインストルメントパネルに設けることが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 インストルメントパネル
10 上面部
10a フロントデフロスターエア吹出口
2 フロントウィンドウガラス
3 デフロスターエアダクト
30 傾斜部
5 メータフード
50 上面部
52 上方部
52a 凸部
52b 凹部
6 メータユニット
7 縦壁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15