【実施例1】
【0027】
図1〜
図7に示す本実施例1の動弁機構1は、排気用のバルブ6に対して設置されている。なお、そのバルブ6に対しては、バルブ6を閉じる方向に付勢するバルブスプリング(図示略)が設けられている。
【0028】
この動弁機構1は、カム9に駆動されて、バルブ6をリフトする側のリフト方向とその反対の戻り方向とに揺動する揺動部材10を備えている。そして、更に、内燃機関の始動時や減速時等を含む所定時には、揺動部材10の揺動を、リフト方向に揺動した後の戻り方向に揺動する途中で邪魔することで、バルブ6のリフト量Lを所定量Lp未満には減少しないようにしてバルブ6の開放を維持する開放維持装置30を備えている。詳しくは、この動弁機構1は、次に示す、カム9と、揺動部材10と、ラッシュアジャスタ20と、開放維持装置30とを含み構成されている。
【0029】
[カム9]
カム9は、内燃機関の回転に従い回転するカムシャフト8に設けられており、カムシャフト8と共に回転する。このカム9は、断面形状が円形のベース円9aと、ベース円9aから突出したノーズ9bとから構成されている。そして、このカム9の外周面に、揺動部材10を駆動してバルブ6を駆動するためのプロフィールP(カムプロフィール)が設けられている。
【0030】
[揺動部材10]
揺動部材10は、カム9に駆動されて揺動する揺動部材本体13と、揺動部材本体13と共にリフト方向に揺動することでバルブ6をリフトし、かつ、前記所定時には開放維持装置30に揺動を前記途中で邪魔されるパッド部材18とを含み構成されている。そして、揺動部材本体13とパッド部材18とは、前記所定時に揺動部材本体13が常にカム9のプロフィールP通りに揺動できる範囲で相対移動可能に連結されている。
【0031】
詳しくは、揺動部材本体13は、ラッシュアジャスタ20に揺動可能に支持されいる。また、この揺動部材本体13は、支持軸12を介してローラ状のカムフォロア11を回動可能に支持しており、そのカムフォロア11の外周面がカム9のプロフィールPに当接している。そして、揺動部材本体13とパッド部材18とは、連結軸17を介して相対回動可能に連結されている。
【0032】
そして、揺動部材本体13は、パッド部材18よりも戻り方向側にストッパ14を備え、このストッパ14がパッド部材18に戻り方向側から当接することで、揺動部材本体13に対してパッド部材18が所定角度以上戻り方向側に相対回動するのを防止している。そして、揺動部材本体13に対しては、揺動部材本体13を戻り方向に付勢するロストモーションスプリング(図示略)が設けられている。そのロストモーションスプリング(図示略)は、前記所定時に、揺動部材本体13をカム9のプロフィールPに追従させて戻り方向に揺動させる。
【0033】
[ラッシュアジャスタ20]
ラッシュアジャスタ20は、有底筒状のボディ21と、下部がボディ21に挿入されて上端部で揺動部材本体13を支持したプランジャ25とを備えている。そして、カムフォロア11とカム9との間にクリアランスが発生すると、ボディ21からプランジャ25が繰り出すことでクリアランスを埋める。また、揺動部材本体13からプランジャ25に下方に負荷が加わるとボディ21にプランジャ25が退入する。
【0034】
詳しくは、プランジャ25の退入時には、ボディ21の内部にある高圧油室22内の油がプランジャ25の内部にある低圧油室26にリーク路23からリークすることで流動抵抗が生じる。そのため、ボディ21にプランジャ25が徐々にゆっくりと退入する。また、プランジャ25の繰出し時には、ボディ21の内部にあるバネ(図示略)の復元力でボディ21からプランジャ25が繰り出される。このとき、低圧油室26の油は高圧油室22にリーク路23よりも広くて逆止弁28のついた流路27から流れ込む。そのため、プランジャ25の退入時ほどの流動抵抗は生じず、ボディ21からプランジャ25が速やかに繰り出す。
【0035】
[開放維持装置30]
開放維持装置30は、次に示す可動部材31と、アクチュエータ35とを含み構成されている。
【0036】
可動部材31は、揺動部材10の揺動を前記途中で邪魔しない非作用位置と、邪魔する作用位置とに移動可能に設けられている。詳しくは、その可動部材31は、直線方向に移動可能に設けられており、その直線方向の一方側が非作用位置であり、他方側が作用位置である。そして、所定時には、作用位置に配された可動部材31が揺動部材10に戻り方向側から当接することで、揺動部材10の揺動を邪魔する。
【0037】
アクチュエータ35は、電磁ソレノイドを有し、その電磁ソレノイドで可動部材31を直線方向に移動させる。
【0038】
すなわち、このアクチュエータ35は、前記通常時には、
図4に示すように、可動部材31を非作用位置に配することで、バルブ6の駆動状態を通常状態にする。その通常状態では、
図4(a)に示すように、ノーズ区間(カム9のノーズ9bがカムフォロア11に当接する区間)ではバルブ6をリフトし、
図4(b)に示すように、ベース円区間(カム9のベース円9aがカムフォロア11に当接する区間)ではバルブ6を開放しない。
【0039】
その一方、このアクチュエータ35は、前記所定時には、
図5に示すように、可動部材31を作用位置に配することで、バルブ6の駆動状態を開放維持状態にする。その開放維持状態では、
図5(a)に示すように、ノーズ区間でバルブ6をリフトし、
図5(b)に示すように、ベース円区間でもバルブ6の開放を維持する。
【0040】
詳しくは、可動部材31の非作用位置から作用位置への移動(行き)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp以上のタイミングで行い、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp未満のタイミングでは行わない。具体的には、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp以上のタイミングに、
図6(a)に示すように、アクチュエータ35で可動部材31を非作用位置から作用位置に移動させる。よって、
図6(b)に示すように、揺動部材10が戻り方向に揺動したときには、そのパッド部材18が可動部材31に当接する。そして、当接した後には、揺動部材本体13がロストモーションスプリング(図示略)に付勢されることで、
図6(c)に示すように、揺動部材本体13がカム9のプロフィールPに追従して戻り方向に揺動する。
【0041】
また、可動部材31の作用位置から非作用位置への移動(帰り)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpよりも大きいタイミング、すなわち、パッド部材18が可動部材31に当接していないタイミングで行い、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpのタイミング、すなわち、パッド部材18が可動部材31に当接しているタイミングでは行わない。具体的には、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpよりも大きいタイミングに、アクチュエータ35で可動部材31を作用位置から非作用位置に移動させる。それにより、揺動部材10が戻り方向に揺動したときには、そのパッド部材18が可動部材31に当接しなくなり、バルブ6が閉じるようになる。
【0042】
本実施例1によれば、次の[A]〜[E]の効果を得ることができる。
【0043】
[A]前記所定時には、開放維持装置30で揺動部材10の揺動を前記途中で邪魔することで、バルブ6のリフト量をノーズ区間では増加させることなくベース円区間で増加させるのみで(すなわち、ノーズ区間でのリフト負荷を増加させることなく)、バルブ6の開放を維持する(すなわち、気筒内での圧縮抵抗や膨張抵抗を低減する)ことができる。そのため、前記所定時には、負荷を効率良く低減することができる。
【0044】
[B]前記所定時にも、揺動部材本体13は常にカム9のプロフィール通りに揺動するため、カム9とカムフォロア11との間に隙間ができる心配はない。そのため、その隙間により衝撃や摩耗が生じるといった心配や、その隙間により、ラッシュアジャスタ20のボディ21からプランジャ25が繰り出されるといった心配はない。
【0045】
[C]本実施例1の動弁機構1は、量産品の動弁機構の揺動部材(ロッカアーム)を上記の揺動部材10に置き換えるとともに、上記の開放維持装置30を付け加えるだけで実施可能なので、実施し易い。
【0046】
[D]可動部材31の非作用位置から作用位置への移動(行き)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp以上のタイミングで行い、前記所定量Lp未満のタイミングでは行わないので、可動部材31のその移動(行き)が、揺動部材10によって邪魔されることがない。そのため、次に示す実施例2とは違い、非作用位置を、作用位置の戻り方向側に限らず、任意の位置に設定することができる。
【0047】
[E]可動部材31の作用位置から非作用位置への移動(帰り)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpよりも大きいタイミング、すならち、パッド部材18が可動部材31に当接していないタイミングで行い、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpのタイミング、すなわち、パッド部材18が可動部材31に当接しているタイミングでは行わないので、可動部材31とパッド部材18との間に摩擦が生じて抵抗や摩耗が大きくなるといった心配や、可動部材31が移動してパッド部材18から離れた瞬間にパッド部材18がバルブスプリング(図示略)の付勢力で戻り方向に勢いよく跳ね上がり、衝撃や摩耗等が生じるといった心配がない。
【実施例2】
【0048】
図8〜
図11に示す本実施例2の動弁機構2は、実施例1で示した開放維持装置30の代わりに、次に示す開放維持装置40を備えている点で相違し、その他の点で同様である。
【0049】
[開放維持装置40]
その開放維持装置40は、実施例1で示した可動部材31及びアクチュエータ35の代わりに、次に示す可動部材41及びアクチュエータ(図示略)を備えている点で相違し、その他の点で同様である。
【0050】
可動部材41は、回動方向に移動可能に設けられており、その回動方向の一方側(戻り方向側)が非作用位置であり、他方側(リフト方向側)が作用位置である。
【0051】
アクチュエータ(図示略)は、電磁ソレノイドを有し、その電磁ソレノイドで可動部材41を回動方向に移動させる。すなわち、このアクチュエータ(図示略)は、前記通常時には、
図9に示すように、可動部材41を非作用位置に配することで、バルブ6の駆動状態を通常状態にする。その一方、前記所定時には、
図10に示すように、可動部材41を作用位置に配することで、バルブ6の駆動状態を開放維持状態にする。
【0052】
詳しくは、可動部材41の非作用位置から作用位置への移動(行き)は、次のように任意のタイミングで行う。すなわち、可動部材41のその移動(行き)のタイミングに、
図11(a)に示すように、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp未満の場合(図はリフト量が零の場合)には、可動部材41のその移動(行き)は、
図11(b)に示すように、可動部材41で揺動部材10をリフト方向に押し込みつつ行う。これにより、バルブ6が強制的に開放される。その一方、可動部材41のその移動(行き)のタイミングに、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp以上の場合には、可動部材41のその移動(行き)は、可動部材41で揺動部材10をリフト方向に押し込むことなく行う。
【0053】
また、可動部材41の作用位置から非作用位置への移動(帰り)は、次のように任意のタイミングで行う。すなわち、可動部材41のその移動(帰り)のタイミングに、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpの場合、すなわち、パッド部材18が可動部材41に当接している場合には、可動部材41のその移動(帰り)に追従して、揺動部材10も戻り方向側にバルブスプリング(図示略)の付勢力で移動する。これにより、バルブ6が閉じる。その一方、可動部材41のその移動(帰り)のタイミングに、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpよりも大きい場合、すなわち、パッド部材18が可動部材41に当接していない場合には、可動部材41のその移動(帰り)は、揺動部材10とは別に単独で行われる。
【0054】
本実施例2によれば、次の実施例1で記載した[A]〜[C]の効果に加え、次の[F][G]の効果を得ることができる。
【0055】
[F]非作用位置よりもリフト方向側に作用位置があるので、可動部材31の非作用位置から作用位置への移動(行き)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lp未満のタイミングで行っても、上記の通り、可動部材41が揺動部材10をリフト方向に押し込むだけで、その移動(行き)が揺動部材10によって邪魔されることはない。よって、可動部材41のその移動(行き)は、実施例1とは違い、任意のタイミングで行うことができる。
【0056】
[G]作用位置よりも戻り方向側に非作用位置があるので、可動部材31の作用位置から非作用位置への移動(帰り)は、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpのタイミング、すなわち、パッド部材18が可動部材41に当接しているタイミングで行っても、上記の通り、可動部材41のその移動(帰り)に追従して揺動部材10が戻り方向に移動するだけで、摩擦や衝撃等は生じない。よって、可動部材41のその移動(帰り)も、実施例1とは違い、任意のタイミングで行うことができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもでき、例えば、次の変更例1〜4のように変更していもよい。
[変更例1]実施例1,2の動弁機構1,2を、吸気用のバルブに対して設置してもよい。
[変更例2]実施例1,2の揺動部材10に対して、バルブ6のリフト量を変更する可変装置を設けてもよい。
[変更例3]実施例2の可動部材41の非作用位置から作用位置への移動(行き)を、ベース円区間のタイミングでのみ行うようにしてもよい。
[変更例4]実施例2の可動部材41の作用位置から非作用位置への移動(帰り)を、バルブ6のリフト量が前記所定量Lpよりも大きいタイミングでのみ、すなわち、パッド部材18が可動部材41に当接していないタイミングでのみ行うようにしてもよい。
【0058】
1 可変動弁機構(実施例1)
2 可変動弁機構(実施例2)
6 バルブ
9 カム
10 揺動部材
13 揺動部材本体
18 リフト部材
30 開放維持装置(実施例1)
31 可動部材
35 アクチュエータ
40 開放維持装置(実施例2)
41 可動部材
L リフト量
Lp 所定量
P カムのプロフィール