特許第6182083号(P6182083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182083
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】除湿機
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20170807BHJP
   F24F 1/02 20110101ALI20170807BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20170807BHJP
   D06F 58/28 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B01D53/26 100
   F24F1/02 451
   F24F11/02 102D
   F24F11/02 K
   D06F58/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-17099(P2014-17099)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-142889(P2015-142889A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】高野 清次郎
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 義一
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185597(JP,A)
【文献】 特開2006−150306(JP,A)
【文献】 特開2009−247469(JP,A)
【文献】 特開2009−089995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26 − 53/28
F24F 11/00 − 11/08
D06F 33/00 − 33/10
D06F 58/28
D06F 58/00 − 60/00
F24F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けた吸込口と吹出口の間に蒸発器と凝縮器、送風ファンを配置して送風経路を形成し、前記送風ファンの作動によって前記吸込口から吸入した空気を蒸発器にて冷却し結露させた後凝縮器にて加熱し乾燥空気を前記吹出口より排出し、吸込空気の温度を検知する室温センサと吸込空気の湿度を検知する湿度センサを備え、前記吹出口近傍の送風経路にヒータを設けた除湿機に於いて、衣類乾燥自動停止モードを設定可能とし、予め複数の室温範囲(T1・T2・T3…)を設定し、この室温範囲に対応する除湿量係数(A1・A2・A3…)を設定し、衣類乾燥自動停止モードでの運転開始からの時間を計時するタイマを設け、運転開始時から前記室温センサは一定時間毎に読込みを実施し、運転開始から除湿機の除湿作用によって室内の湿度が低下してきて所定湿度Xへ到達するまでの時間をY時間とし、前記室温範囲(T1・T2・T3…)における室温測定回数(K1・K2・K3…)とし、到達性能係数Kは、
K=(K1×A1+K2×A2+K3×A3…)÷(K1+K2+K3…)
にて演算し、所定湿度X到達から運転停止までの時間Z1を、Z1=Y×Kで求め、前記時間Z1満了時に運転を自動停止する衣類乾燥自動停止モード機能を備えた制御部を設けたことを特徴とする除湿機。
【請求項2】
前記送風ファンの回転数を目的に応じて変化する運転モードを設け、この運転モードにおける送風ファンの回転数が低回転の場合には運転停止までの時間を延長することを特徴とする請求項1記載の除湿機。
【請求項3】
前記圧縮機の回転数を目的に応じて変化する運転モードを設け、この運転モードにおける圧縮機の回転数が低回転の場合には運転停止までの時間を延長することを特徴とする請求項1記載の除湿機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内に吊り下げた衣類を乾燥する機能を備えた除湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、室内に吊り下げた衣類を乾燥させる場合に、除湿機に設けたタイマーの時限を使用者が設定することで、衣類乾燥運転を終了することが一般的であった。(例えば、特許文献1参照)
また、室温と湿度を常に検知して、室温や湿度の速度変化を求めて、この速度変化の情報から衣類の乾燥終了時間を、送風ファンの風量や加熱ヒーターの通電時間を制御して調整する除湿機も有った。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−251585号公報
【特許文献2】特開2010−94168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来の前者のものでは、室内の広さや衣類の量、及び室内の温度や湿度の条件により衣類の未乾燥(生乾き)や、過乾燥(乾き過ぎ)が発生するという問題があった。
また、後者は衣類乾燥運転中に衣類の乾燥度を判定する手段を備えて、この手段の判断により、必要であれば除湿機の除湿能力を高めたり、低めたりして調節を行い、衣類を所定時間に適正に乾燥することが出来るが、多くの温湿度データの解析とそれに伴う送風ファンや加熱ヒーターの制御には多量の計算処理が必要であり、これに伴って制御部品も高い能力を要するために大幅なコストアップをまねく問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はこの点に着目し上記欠点を解決する為、特にその構成を、筐体に設けた吸込口と吹出口の間に蒸発器と凝縮器、送風ファンを配置して送風経路を形成し、前記送風ファンの作動によって前記吸込口から吸入した空気を蒸発器にて冷却し結露させた後凝縮器にて加熱し乾燥空気を前記吹出口より排出し、吸込空気の温度を検知する室温センサと吸込空気の湿度を検知する湿度センサを備え、前記吹出口近傍の送風経路にヒータを設けた除湿機に於いて、衣類乾燥自動停止モードを設定可能とし、予め複数の室温範囲(T1・T2・T3…)を設定し、この室温範囲に対応する除湿量係数(A1・A2・A3…)を設定し、衣類乾燥自動停止モードでの運転開始からの時間を計時するタイマを設け、運転開始時から前記室温センサは一定時間毎に読込みを実施し、運転開始から除湿機の除湿作用によって室内の湿度が低下してきて所定湿度Xへ到達するまでの時間をY時間とし、前記室温範囲(T1・T2・T3…)における室温測定回数(K1・K2・K3…)とし、到達性能係数Kは、K=(K1×A1+K2×A2+K3×A3…)÷(K1+K2+K3…)にて演算し、所定湿度X到達から運転停止までの時間Z1を、Z1=Y×Kで求め、前記時間Z1満了時に運転を自動停止する衣類乾燥自動停止モード機能を備えた制御部を設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、衣類乾燥自動停止モードでの運転開始から除湿機の除湿作用によって室内の湿度が低下してきて予め設定された所定湿度に達するまでの時間と、室温範囲における室温測定回数から係数の平均値を計算する簡略化した計算で、衣類が乾燥する時間を算出して除湿機の運転を自動停止するので、部屋の大きさや室温・湿度、乾燥する衣類の量などが変化しても衣類が乾燥する適切な時間に自動停止でき、所定湿度を元に乾燥完了時間を算出する計算は1回のみなので少ない計算量で判定でき高価な制御部品を使用する必要もないので、製造コストを低く抑えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明一実施例の側面の断面図。
図2】同電気的な構成を示す略図。
図3】同室温と除湿量の関係を示す説明図。
図4】同湿度の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次にこの発明に係る除湿機を図面に示された一実施例で説明する。
1は除湿機の枠体で底板2上に前方の前ケース3と後方の後ケース4と上面を覆う天板5を設けて本体の外郭を構成している。
6は前記枠体1背面に形成された吸込口で、前記後ケース4に横長のスリットを多数備えた開口が設けられている。
【0009】
前記吸込口6の内側には樹脂製の網や不織布から成り吸入空気に混入するホコリを取り除くフィルタ7を備えている。このフィルタ7の内側にはフィンチューブ式の熱交換器からなる蒸発器8を備え、吸込空気を冷却することにより空気中の水分を結露させ除湿を行う。
【0010】
前記蒸発器8の更に下流には蒸発器8と同じくフィンチューブ式の熱交換器からなる凝縮器9を備え、蒸発器8にて冷却された空気の加熱を行う。
前記凝縮器9下流にはシロッコファン型の送風ファン10及びこのファン10を駆動するファンモータ11を設けている。
【0011】
前記送風ファン10の風下側の真上にはシーズヒータから成るヒーター12を設け、このヒーター12は衣類乾燥時や冬期間に室温が低くなり除湿の効率が低下する事を防止するものであり、消費電力は約400〜500W程である。
【0012】
前記前ケース3の内側でファンモータ11との間には送風ファン10を包囲して前記吹出口13側へ送風を導くファンケーシング14を備え、このファンケーシング14の中央からやや右側上部にはスタビライザ(図示せず)を設け、上方向の前記ヒーター12及び吹出口13へ向かって送風するものである。
【0013】
前記天板5は略平面の上面部15と、この上面部15の略中央から背面上部にわたって前記吹出口13を形成し、この吹出口13内で前記上面部15の略中央部分に水平ルーバー16を設けている、この水平ルーバー16は回転軸17を中心に回動自在であり、回動によって真上方から真後ろ側(背面側)水平方向の間(約90度)の風向を変化し、除湿機の運転停止時には自動で、後ろ側水平方向吹出位置にて上面部15に収納される。
【0014】
前記送風ファン10からの送風は前面側から上面中央の水平ルーバー16に向けて送風され、水平ルーバー16が開いた状態では、乾燥空気を真上方向に送風することで除湿機の上方に位置する室内に吊り下げた洗濯物の乾燥が効率よく行われる。また、水平ルーバー16が閉じた状態(上面部に収納された状態)では、乾燥空気を真後ろの背面側に送風することで押し入れ等の部分的な除湿運転に適するものである。
【0015】
17は前記吸込口6とフィルタ7との間に設けられた室温センサで、吸込口6から吸い込んだ空気の温度を検知する。18は前記吸込口6とフィルタ7との間に設けられた湿度センサで、吸込口6から吸い込んだ空気の湿度を検知する。19は取手で転倒時には前記天板5の吹出口13左右に形成された溝(図示せず)によって、中央から後ろ側にかけて収納され、起立時には天板5の略中央の溝に設けられた取手用軸(図示せず)を中心として回動して上面中央上方に位置するものであり、回動自在でコの字型に形成され、使用時には回動して吹出口13上方に位置し除湿機運搬に使用する。
【0016】
20は前記天板5の前側端部に設けられた操作部で、運転スイッチやタイマースイッチ、モード切換スイッチ等のスイッチ類21や運転ランプ等の表示部22を備え、この操作部20の裏面であり、下方にはスイッチやランプが固定され、回路構成を備えた操作部基盤23が設けられ、この操作部基板23の近傍にマイコン等の電子部品やタイマ24aで構成される制御部24を備えている。25は前記スイッチ類21内の衣類乾燥自動停止スイッチで、後述する衣類乾燥運転時に室温や湿度の変化の状況に応じて衣類乾燥の終了を予測して自動停止を行うスイッチである。
【0017】
前記蒸発器8の下方には結露水を受けるドレン皿26を設けている。27は一方をこのドレン皿26の底面に接続し、他方をドレンタンク28の上部に位置させた排水路で、前記ドレン皿26で集めた結露水を前記ドレンタンク28へ導くものである。
【0018】
使用者が運転スイッチを押圧すると共に、衣類乾燥自動停止スイッチ25を押圧すれば、除湿機が運転を開始し圧縮機29とファンモータ11が始動すると共に、吹出口13に備えた水平ルーバー16が上吹出しの方向に回動し、室温が低いときにはヒーター12も通電する。蒸発器8は低温に、凝縮器9は高温になる、そして吸込口6から吸い込まれた室内の空気は蒸発器8で冷却され結露し、ここで生じた結露水はドレン皿26で集められドレンタンク28に導かれる。蒸発器8を通過した空気は凝縮器9で加熱され送風ファン10を通過して吹出口13から乾燥空気が洗濯物の吊り下げられた上方向に吹き出され、洗濯物の乾燥を開始するものである。
【0019】
運転が開始されると吸込口6に備えた室温センサ17は10分間隔で、湿度センサは1分間隔で読み込まれる。除湿機を運転する部屋の大きさや室温、湿度によって洗濯物の乾燥速度は変化する。例えば、室温20℃、湿度60%、大きさ8畳の部屋で洗濯物の乾燥運転を開始すると、運転開始時は洗濯物から発生する水分で湿度が80%くらいまで上昇し、除湿乾燥の作用で徐々に湿度が下がってくる、当然のことではあるが室温が高い時ほど乾燥の速度は速いし、湿度が低いほど乾燥の速度は速い。部屋の大きさも小さい部屋程乾燥の速度は速い。
【0020】
図4は室内の湿度の変化を表すグラフで、衣類乾燥自動停止の運転を開始すると洗濯物が発散する湿気により室内の湿度が80%まで上昇し、その後除湿機の除湿作用によって徐々に湿度は低下する。そして、運転開始から所定湿度X(例えば50%)まで低下するまでの時間Yを計時する。そして、図3のように予め定めた室温範囲(T1・T2・T3…)、T1は室温15℃未満、T2は15℃以上20℃未満、T3は20℃以上25℃未満、T4は25℃以上で設定し、それぞれの除湿量係数を(A1・A2・A3…)0.5、0.7、0.9、1.0とし、時間Yの間で10分間隔で測定された室温を室温範囲(T1・T2・T3…)に割り振って、それぞれの発生数(K1・K2・K3…)をカウントする。
【0021】
これらの値から到達性能係数Kを、K=(K1×A1+K2×A2+K3×A3…)÷(K1+K2+K3…)にて演算し、所定湿度X(例えば50%)に到達した時間Yから洗濯物の乾燥が完了するまでの残り時間Z1を、Z1=Y×Kで簡易的に推測し、洗濯物が乾燥するまでの残りの時間Z1と設定し、衣類乾燥運転を継続し、洗濯物の乾燥が更に進んで時間Z1が満了すると除湿機の運転を自動的に停止するものである。このように、複雑な計算式を使用することなく、所定湿度Xまで到達する乾燥の進行状態を元に乾燥完了時間を算出する計算は1回のみなので少ない計算量で残りの乾燥時間を判定でき高価な制御部品を使用する必要もないので、製造コストを低く抑えることができるものである。
【0022】
また、夜中の就寝時の騒音を低減するために、送風機の風量を強制的に低下する夜干しモードや、圧縮機29の回転数を低く抑えるエコモードなど強制的に除湿機の能力を低下して運転する場合には時間Z1を1.2〜2.0倍まで延長することで、洗濯物の乾燥が完了せずに生乾きで停止することを防止するものである。
【0023】
このように、運転開始から予め設定された所定湿度Xに達するまでの時間Yと、室温範囲(T1・T2・T3…)における室温測定回数(K1・K2・K3…)から係数の平均値を計算する簡略化した計算で、衣類が乾燥する残り時間Z1を算出して除湿機の運転を自動停止するので、部屋の大きさや室温・湿度、乾燥する衣類の量などが変化しても衣類が乾燥する適切な時間に自動停止でき、所定湿度Xを元に乾燥完了時間を算出する計算は1回のみなので少ない計算量で判定でき高価な制御部品を使用する必要もないので、製造コストを低く抑えることができるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 枠体
6 吸込口
13 吹出口
17 室温センサ
18 湿度センサ
24 制御部
25 衣類乾燥自動停止スイッチ
図1
図2
図3
図4