【0018】
[立面材用接着剤の使用法]
本発明の立面材用接着剤は、立面材を起立下地面に貼り付ける際に主として使用される。
起立下地面1は、
図1に示すように、例えば、建築物の床面2(水平面)に対して略直交する方向に立ち上がった壁下地面である。
立面材は、特に限定されず、腰壁材、化粧樹脂シートなどが挙げられる。前記樹脂シートは、ロール状に巻くことができる柔軟な樹脂シートである。前記腰壁材の市販品としては、例えば、東リ(株)製のウッドデコ(商品名)、デコパネル(商品名)などが挙げられる。前記化粧樹脂シートの市販品としては、東リ(株)製の東リ防汚消臭腰壁シート(商品名)などが挙げられる。
図1に示すように、櫛目ゴテ5などの塗布具を用いて、起立下地面1に所望量の立面材用接着剤3を付ける。起立下地面1から盛り上がった接着剤3の塊を、
図2に示すように、櫛目ゴテ5などの塗布具を用いて、起立下地面1に沿って伸ばすように、塗布具を起立下地面1に平行に動かして接着剤3を拡げる(
図2の矢印方向)。起立下地面1に接着剤3を拡げた後、立面材を押し当てることにより、接着剤3を介して起立下地面1に立面材を貼り付けることができる。
櫛目ゴテ5は、
図3に示すように、平板状のヘラ本体51と、ヘラ本体51の基端側に設けられた把持部52と、を有する。ヘラ本体51は、平面視略台形状に形成されており、その先端側は、凹凸状に形成されている。例えば、図示のように、ヘラ本体51の先端側には、複数の切欠き部53(図示例では8カ所)が所定間隔を開けて凹設されている。この切欠き部53は、例えば、内側凹み頂部である先端が尖っている。また、前記把持部52は、例えば、厚手の樹脂成形品からなり、ヘラ本体51の基端側に取り付けられている。もっとも、立面材用接着剤の塗布具は、前記櫛目ゴテに限られず、他の形状の櫛目ゴテ、切欠き部を有さず且つ先端側が直線状のヘラなどを用いることもできる。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
[使用材料]
(1)高分子材料
高分子材料としてアクリル樹脂系エマルション(高圧ガス工業株式会社製の商品名「ペガール」)を使用した。
このアクリル樹脂系エマルションは、固形分50質量部と、水50質量部とからなる。
このアクリル樹脂系エマルションの23℃での粘度は、2400mPa・sで、pHは7.0であった。
【0022】
(2)充填剤
充填剤として炭酸カルシウム(清水工業株式会社製の商品名「LW350」)を使用した。この炭酸カルシウムの平均粒子径は6.0μm、真比重は2.72、比表面積は10,480cm
2/gであった。
(3)粘着付与剤
粘着付与剤としてロジンエステル(荒川化学工業株式会社製、商品名「スーパーエステルA75」)を使用した。これは、軟化点70〜80℃、酸価10以下であった。
(4)溶剤
溶剤としてアルキルベンゼン及びグリコールエーテル類を使用した。
(5)増粘剤
(A)ウレタン会合型増粘剤A
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。(株)ADEKA製、商品名「アデカノール UH−420」。
(B)ウレタン会合型増粘剤B
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。(株)ADEKA製、商品名「アデカノール UH−450VF」。
(C)ウレタン会合型増粘剤C
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。サンノプコ(株)製、商品名「SNシックナー602」。
(D)ウレタン会合型増粘剤D
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。サンノプコ(株)製、商品名「SNシックナー603」。
(E)ウレタン会合型増粘剤E
チキソ性のウレタン会合型増粘剤。(株)ADEKA製、商品名「アデカノール UH−756VF」。
(F)ウレタン会合型増粘剤F
チキソ性のウレタン会合型増粘剤。(株)ADEKA製、商品名「アデカノール UH−752」。
(G)ウレタン会合型増粘剤G
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。サンノプコ(株)製、商品名「SNシックナー612」。
(H)ウレタン会合型増粘剤H
ニュートニアン性のウレタン会合型増粘剤。サンノプコ(株)製、商品名「SNシックナー601」。
(I)アクリル酸系増粘剤
高圧ガス工業(株)製、商品名「Y1000」。
(J)セルロース系増粘剤
三昌(株)製、商品名「SANHEC」。
(6)その他の添加剤
凍結防止剤、乳化剤。
【0023】
[実施例1乃至5及び比較例1乃至8]
表1乃至表3に示す配合割合で、上記(1)乃至(6)の材料を所定量の水に混合し、実施例1乃至5及び比較例1乃至8の立面材用接着剤をそれぞれ調製した。
なお、表1乃至表3において、実施例及び比較例の組成における各材料は、質量部で表している。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
[比較例9乃至13]
比較例9は、市販の床材用接着剤(株式会社タジマ製、商品名「セメントKG」)をそのまま使用した。
比較例10は、市販の床材用接着剤(株式会社サンゲツ製、商品名「ベンリダインAR」)をそのまま使用した。
比較例11は、市販の床材用接着剤(株式会社サンゲツ製、商品名「ベンリダインPC−1」)をそのまま使用した。
比較例12は、市販の床材用接着剤(ロンシール工業株式会社製、商品名「ロンセメントエコスーパー」)をそのまま使用した。
比較例13は、市販の巾木用接着剤(ロンシール工業株式会社製、商品名「ロンセメント巾木用」)をそのまま使用した。
【0028】
[粘度の測定方法]
実施例及び比較例の接着剤の粘度を、JIS K 6833−1に準じて、BH型粘度計及びローターNo.6を用い、23℃、10rpmの条件下で測定した。
【0029】
[TI値の測定方法]
実施例及び比較例の接着剤のTI値を、JIS K 5400に準じて測定し、その値を下記式に代入し、有効数字2桁になるように四捨五入した。
式:TI=η1/η2
前記η1は、JIS K 6833−1に準じてBH型粘度計及びローターNo.6を用いて23℃測定された、2rpmのときの粘度(mPa・s)であり、前記η2は、20rpmのときの粘度(mPa・s)である。
実施例及び比較例の接着剤の粘度及びTI値を表4に示す。
【0030】
[垂れ性の評価]
水平面に対して略垂直に立ち上げたフレキシブル板(JIS A 5430に規定される、厚み5mm、900mm×900mmのフレキシブル板)に、実施例1の接着剤を、23℃±2℃、湿度50±10%下にて約30g塊状にして付着させた。その略垂直なフレキシブル板(以下、垂直面という)に付着させた時、及び、付着後、その接着剤の塊を塗布具を用いて拡げた時の状態を目視で観察し、接着剤の垂れ性を評価した。その他の実施例及び比較例の接着剤についても同様にして垂れ性を評価した。その結果を表4に示す。
【0031】
(垂れ性の評価基準)
○:接着剤が垂れなかった。
△:垂直面に付着させた時には接着剤の落下は観察されなかったが、拡げていく段階で接着剤のタレや落下があった。
×:垂直面に付着させた時に、接着剤の一部が落下した。
【0032】
[伸び性及び負荷の評価]
前記垂れ性の評価を行った直後に、櫛目ゴテを用いて、接着剤の塊を垂直面に沿って押し拡げた。櫛目ゴテは、
図3に示すようなものを用いた。この櫛目ゴテは、切欠き部の深さaが2.0±0.2mm、切欠き部の基部の幅bが2.0±0.2mm、切欠き部の形成間隔cが5.0±0.5mmであり、8カ所の切欠き部が均等な間隔で凹設されているものである。
接着剤の拡がり程度により、伸び性を評価し、接着剤を伸ばす際に手に加わる感じにより、接着剤を伸ばす際の負荷を評価した。それらの結果を表4に示す。
【0033】
(伸び性の評価基準)
○:接着剤の塊が、45cm以上90cm以下の範囲に拡がった。
△:接着剤の塊が、20cm以上45cm未満の範囲に拡がった。
×:接着剤の塊が、5cm以上20cm未満の範囲に拡がった。
【0034】
(伸展性の評価基準)
○:特に違和感なく比較的小さな力で接着剤を伸ばすことができた。
△:接着剤を伸ばす際、少し重たく感じられた。
×:重たく、接着剤を伸ばし難かった。
【0035】
【表4】
【0036】
実施例及び比較例の結果から、実施例のように粘度が40,000〜60,000mPa・sの接着剤は、垂れ難く且つ塗布時に大きな負荷がかからなかった。
また、実施例のようにTI値が1.2以上3.0以下の接着剤は、比較的小さな力で良好に伸び、塗布性が良好であった。このことから、TI値が1を超え3.5未満の接着剤は、良好な塗布性を有していると考えられる。
他方、比較例のうちTI値が3.8以上の接着剤は、伸び性が悪かった。一般に、TI値が高いほど、高せん断力下における粘度が低くなり、接着剤の塗布性は良くなると考えられているところ、比較例の結果は、驚くべきものであった。実施例のようにTI値が3.5未満の接着剤が、TI値が3.8以上の接着剤に比して伸び性に優れている理由は、明確には判らないが、本発明者らは次のように推測する。起立下地面に付着させた接着剤塊を伸ばす際、櫛目ゴテのヘラ本体が起立下地面に略直交又は直交に近い鋭角を成すようにして、櫛目ゴテを起立下地面に沿って動かして接着剤を伸ばしていく。この起立下地面は水平面に対して略直交状に立ち上がっているので、
図2に示すように、ヘラ本体の一方面(図
2において、ヘラ本体の2つの平面のうち、上向きの面)に、多くの接着剤が載り上がる。櫛目ゴテを動かした際には、櫛目ゴテの先端側と起立下地面の間の接着剤に大きなせん断力が加わるが、ヘラ本体の一方面に載り上がった接着剤には、小さなせん断力が加わるか又は殆どせん断力が加わらない。比較例の接着剤は、TI値が比較的高いため、ヘラ本体に載り上がった接着剤塊が余り流動せず、接着剤の伸ばし工程を行った後も櫛目ゴテに残ったままになった量が多いと推定される。他方、実施例の接着剤は、TI値が比較的低いため、粘度が比較的高くてもヘラ本体に載り上がった接着剤塊も流動し易く、ヘラ本体に残る量が相対的に少なくなった結果、伸び性が良好となったと推定される。