(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動力が入力又は出力される回転軸と、前記回転軸に対して径方向に可動に支持された複数のピニオンスプロケット及び複数のガイドロッドと、前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら前記径方向に同期させて移動させる移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの何れもを囲み且つ前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの何れにも接する円の半径である接円半径の変更によって変速比を変更する無段変速機構であって、
前記移動機構は、
前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの各支持軸が内挿される固定放射状溝が複数形成され、前記回転軸と一体回転する固定ディスクと、
前記支持軸がそれぞれ内挿される可動放射状溝が複数形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、を備え、
前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して相対回転させることにより、前記固定放射状溝と前記可動放射状溝とが交差し前記支持軸が位置する第一交差箇所を前記径方向に移動させるように構成され、
前記第一交差箇所を単位長さ前記径方向に移動させるための、前記可動ディスクの前記固定ディスクに対する相対回転角度が、前記複合スプロケットの接円半径が小さくなるに連れて大きくなるように設定されている
ことを特徴とする、無段変速機構。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の無段変速機構にかかる実施の形態を説明する。本実施形態の無段変速機構は、車両用変速機に用いて好適である。なお、本実施形態では、無段変速機構における回転軸の軸心に近い側(公転軸側)を内側とし、その反対側を外側として説明する。
【0018】
〔一実施形態〕
以下、一実施形態にかかる無段変速機構について説明する。
〔1.構成〕
無段変速機構は、
図1に示すように、二組の複合スプロケット5,5と、これらの複合スプロケット5,5に巻き掛けられたチェーン6とを備えている。なお、複合スプロケット5とは、詳細を後述する複数のピニオンスプロケット20及び複数のガイドロッド29が多角形(ここでは十八角形)の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットを意味する。
【0019】
二組の複合スプロケット5,5のうち、一方は、入力側の回転軸1(入力軸)と同心に一体回転する一組の複合スプロケット5(
図1では左方に示す)であり、他方は、出力側の回転軸1(出力軸)と同心に一体回転する複合スプロケット5(
図1では右方に示す)である。これらの複合スプロケット5,5はそれぞれ同様に構成されているため、下記の説明では、入力側の複合スプロケット5に着目し、その構成を説明する。
【0020】
複合スプロケット5は、回転軸1と、この回転軸1に対して径方向に可動に支持された複数(ここでは三個)のピニオンスプロケット20及び複数(ここでは十五本)のガイドロッド(第一ガイドロッド)29とを有している。三個のピニオンスプロケット20は、回転軸1の軸心C
1を中心にした円周上において周方向に沿って等間隔に配置され、ピニオンスプロケット20の相互間にはそれぞれ五本のガイドロッド29が配置されている。
【0021】
図1には示さないが、複合スプロケット5は、複数のピニオンスプロケット20を移動させるスプロケット移動機構40Aと、スプロケット移動機構40Aに連動してピニオンスプロケット20に含まれる自転ピニオンスプロケット22,23を自転駆動する機械式自転駆動機構50と、複数のガイドロッド29を移動させるロッド移動機構40Bとを備えている(
図2,
図5〜
図7参照)。これらについては、詳細を後述する。
【0022】
この無段変速機構は、ピニオンスプロケット20及びガイドロッド29が多角形の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットの外径、即ち、複合スプロケット5の外径を変更(拡縮径)することによって変速比を変更するものである。
【0023】
複合スプロケット5の外径とは、複数のピニオンスプロケット20の何れもを囲み、且つ、複数のピニオンスプロケット20の何れにも接する円(接円)の半径(以下、「接円半径」という)に対応するものである。また、複合スプロケット5にはチェーン6が巻き掛けられるため、複合スプロケット5の外径は、複数のピニオンスプロケット20とチェーン6との接触半径、即ち、複合スプロケット5のピッチ円の半径に対応するものともいえる。
なお、
図1には、入力側の接円半径が最小径であり、出力側の接円半径が最大径のものを示している。
【0024】
このように、無段変速機構は、接円半径の変更によって変速比を変更するものである。例えば、複合スプロケット5,5の接円半径が等しければ、無段変速機構は変速比が1(一方の複合スプロケット5と他方の複合スプロケット5との動力伝達比が1:1)をなす。
以下、無段変速機構の構成を、複合スプロケット5及びこれに巻き掛けられるチェーン6の順に説明する。
【0025】
〔1−1.複合スプロケット〕
以下の複合スプロケット5にかかる構成の説明では、ピニオンスプロケット20,ガイドロッド29,スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50の順に説明する。
【0026】
〔1−1−1.ピニオンスプロケット〕
三個のピニオンスプロケット20は、それぞれチェーン6と噛合って動力伝達する歯車として構成され、回転軸1の軸心C
1周りに公転する。ここでいう「公転」とは、各ピニオンスプロケット20が、回転軸1の軸心C
1を中心に回転することを意味する。回転軸1が回転すると、この回転に連動して各ピニオンスプロケット20が公転する。つまり、回転軸1の回転数とピニオンスプロケット20が公転する回転数とは等しい。なお、
図1には、白抜きの矢印で反時計回りの公転方向を示している。
【0027】
これらのピニオンスプロケット20は、自転しない一つのピニオンスプロケット(以下、「固定ピニオンスプロケット」という)21と、この固定ピニオンスプロケット21を基準に公転の回転位相が進角側及び遅角側のそれぞれに配置され自転可能な二つの自転ピニオンスプロケット22,23とから構成されている。なお、以下の説明では、固定ピニオンスプロケット21を基準に進角側に設けられたピニオンスプロケット(進角側自転ピニオンスプロケット)を第一自転ピニオンスプロケット22と呼び、遅角側に設けられたピニオンスプロケット(遅角側自転ピニオンスプロケット)を第二自転ピニオンスプロケット23と呼んで区別する。
【0028】
各ピニオンスプロケット21,22,23は、何れも、その中心に設けられた支持軸(ピニオンスプロケット軸)21a,22a,23aに対して結合されている。ここでいう「自転」とは、各自転ピニオンスプロケット22,23がその支持軸22a,23aの軸心C
3,C
4周りに回転することを意味する。なお、各支持軸21a,22a,23aの軸心C
2,C
3,C
4及び回転軸1の軸心C
1は、何れも相互に平行である。
【0029】
固定ピニオンスプロケット21は、本体部21bとこの本体部21bの外周部全周に形成された歯21cとを有する。同様に、自転ピニオンスプロケット22,23は、何れも本体部22b,23bとこの本体部22b,23bの外周部全周に突出形成された歯22c,23cとを有する。
当然ながら、各ピニオンスプロケット21,22,23に形成される歯の形状寸法及びピッチは同一規格のものとなっている。
【0030】
詳細は後述するが、第一自転ピニオンスプロケット22は、接円半径の拡径時に時計回りに自転し、接円半径の縮径時に反時計回りに自転する。一方、第二自転ピニオンスプロケット23は、接円半径の拡径時に反時計回りに自転し、接円半径の縮径時に時計回りに自転する。
なお、第一自転ピニオンスプロケット22と第二ピニオンスプロケット23とは、配設箇所及び自転方向が異なるのを除いて同様に構成されるため、ここでは、第一自転ピニオンスプロケット22に着目して説明する。
【0031】
本実施形態では、
図2に示すように、第一自転ピニオンスプロケット22は、軸方向に三列の歯車を備え、図示省略するが、固定ピニオンスプロケット21,第二自転ピニオンスプロケット23もそれぞれ軸方向に三列の歯車を備え、これらの各列の歯車に対応してチェーン6も三本巻き掛けられている。このように、各ピニオンスプロケット21,22,23は、軸方向に三列の歯車を有する。ここでは、各ピニオンスプロケット20の三列の歯車は、スペーサを介し互いに間隔をあけて設けられている。
【0032】
各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数は、無段変速機構の伝達トルクの大きさによるが、二列又は四列以上であってもよいし一列であってもよい。また、
図2には、理解容易のため模式的に示しており、同断面に第一自転ピニオンスプロケット22及び後述する相対回転駆動機構30を示している。
【0033】
なお、図示省略するが、各ピニオンスプロケット21,22,23において、各支持軸21a,22a,23aに対して自転を規制しつつ微小回転(一定範囲内での回転)を許容して動力伝達を実現する位相ズレ許容動力伝達機構が装備されていてもよい。かかる位相ズレ許容動力伝達機構としては、ピニオンスプロケット21,22,23の内周側に一体回転するように装備されたキー部材と、ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aの外周側に形成されてキー部材が回転方向に遊びをもって係合するキー溝と、キー部材がキー溝の回転方向の中立位置に位置するように、キー部材を回転方向の正転と逆転方向との双方から付勢する付勢部材とを備え、回転方向の中立位置に付勢し回転を弾性的に規制するものを用いることができる。この場合、ピニオンスプロケット21,22,23の本体部21b,22b,23bは、支持軸21a,22a,23aに対して微小な回転が許容されつつ動力伝達することができる。
【0034】
〔1−1−2.ガイドロッド〕
図1に示すように、複数のガイドロッド29は、チェーン6と回転軸1の軸心C
1との距離の変動を小さくするように、つまり、回転軸1周りのチェーン6の軌道を可能な限り円軌道に近づけるように、チェーン6をガイドするものである。これらのガイドロッド29は、その径方向外側の周面に当接するチェーン6の軌道をガイドする。ピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29は多角形(略正多角形)の形状をなすので、チェーン6は、その径方向内側のピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29に当接しガイドされながら多角形の形状に沿って転動する。
【0035】
図1及び
図2に示すように、ガイドロッド29は、ロッド支持軸29a(
図1では破線で示す)の外周に円筒状のガイド部材29bが外挿されたものであり、ロッド支持軸29aによって支持され、ガイド部材29bの外周面でチェーン6(
図1及び
図2参照)をガイドする。
【0036】
なお、ガイドロッド29の本数は、十五本に限らず、これよりも多くてもよいし少なくてもよい。この場合、ガイドロッド29の本数は、ピニオンスプロケット20の相互間の数(ここでは三つ)の倍数であることが好ましい。また、ガイドロッド29を多く設けるほど複合スプロケット5を真円に近づけ、チェーン6と回転軸1の軸心C
1との距離の変動を小さくすることができるが、パーツの増加による製造コストや重量の増加を招くため、これらを考慮してガイドロッド29の本数を設定することが好ましい。
【0037】
〔1−1−3.スプロケット移動機構,ロッド移動機構及び機械式自転駆動機構〕
次に、スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50をそれぞれ説明する。
スプロケット移動機構40Aは、複数のピニオンスプロケット20を移動対象とし、また、ロッド移動機構40Bは、複数のガイドロッド29を移動対象としている。
【0038】
これらの移動機構40A,40Bは、各移動対象(複数のピニオンスプロケット20,複数のガイドロッド29)を回転軸1の軸心C
1から等距離を維持させながら径方向に同期して移動させるものである。
【0039】
機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aによる複数のピニオンスプロケット20の径方向移動に伴って、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して自転駆動するものである。
【0040】
〔1−1−3−1.前提構成〕
まず、
図2を参照して、上記の機構40A,40B,50の前提構成を説明する。ここでは、かかる前提構成として、回転軸1と一体に回転する固定ディスク10(径方向移動用固定ディスク,自転用固定ディスク)と、この固定ディスク10に対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスク19と、固定ディスク10と一体に回転する第一回転部15と、可動ディスク19と一体に回転する第二回転部16と、可動ディスク19を固定ディスク10に対して相対回転駆動する相対回転駆動機構30との順にそれぞれを説明する。
【0041】
固定ディスク10,可動ディスク19,第一回転部15,第二回転部16は、回転軸1の軸心C
1と同心に配設されており、ディスク10,19における径方向は回転軸1の径方向と一致する。
なお、固定ディスク10及び可動ディスク19は、複数のピニオンスプロケット20の両側(回転軸1の軸心C
1に沿う方向の一側及び他側)にそれぞれ設けられているが、ここでは一側(
図2の上方側)に設けられた固定ディスク10,可動ディスク19に着目し、その構成を説明する。
【0042】
〔1−1−3−1−1.固定ディスク〕
固定ディスク10は、回転軸1と一体に形成されるか、或いは、何れも回転軸1と一体回転するように結合されている。なお、
図2では、複数のピニオンスプロケット20側から軸方向外側に向けて可動ディスク19,固定ディスク10の順に配置されたもの例示する。
【0043】
図3に示すように、固定ディスク10には、各ピニオンスプロケット21,22,23に対応して設けられたスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cと各ガイドロッド29に対応して設けられたロッド用固定放射状溝12(一箇所のみに符号を付す)との二種の放射状溝が形成されている。なお、
図3には、白抜きの矢印で反時計回りの公転方向を示している。
以下、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11c,ロッド用固定放射状溝12の順に説明する。
【0044】
〔1−1−3−1−1−1.スプロケット用固定放射状溝〕
スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cには、ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aが内挿されている。固定ピニオンスプロケット21に対応するスプロケット用固定放射状溝11aは、固定ピニオンスプロケット21の径方向移動を案内する溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)といえ、同様に、第一自転ピニオンスプロケット22に対応するスプロケット用固定放射状溝11bは、第一自転ピニオンスプロケット22の径方向移動を案内する溝といえ、第二自転ピニオンスプロケット23に対応するスプロケット用固定放射状溝11cは、第二自転ピニオンスプロケット23の径方向移動を案内する溝といえる。このため、これらのスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cは、対応するピニオンスプロケット21,22,23の径方向移動経路に沿っている。
【0045】
ここで、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cの配設箇所を説明するために、ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aの径方向位置について述べる。
ピニオンスプロケット21,22,23における支持軸21a,22a,23aの軸心C
2,C
3,C
4と回転軸1の軸心C
1との距離は、接円半径が最小径であるときに最小距離(以下、「最小径」という)r
1となり、接円半径が最大径であるときに最大距離(以下、「最大径」という)r
3となり、各複合スプロケット5(
図1及び
図2参照)の接円半径が互いに等しくなるときに最小径r
1と最大径r
3との中間距離(以下、「中間径」という)r
2となる。
【0046】
固定ディスク10におけるスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cの径方向位置は、ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aの移動範囲に応じて、最小径r
1,中間径r
2及び最大径r
3に跨って配設されている。
これらのスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cは、配設箇所を除いて同様に構成されているため、以下の説明では、スプロケット用固定放射状溝11aに着目して説明する。また、スプロケット用固定放射状溝11aにかかる説明では、固定ピニオンスプロケット21を単にピニオンスプロケット21と呼ぶ。
【0047】
まず、スプロケット用固定放射状溝11aにおける接円半径に対応するピニオンスプロケット21の支持軸21aの位置を説明する。
スプロケット用固定放射状溝11aにおいて、内周側端部111には、接円半径が最小径であるときピニオンスプロケット21の支持軸21aが位置し、外周側端部113には、接円半径が最大径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置し、径方向中間部112には、各複合スプロケット5の接円半径が互いに等しくなるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置する。
【0048】
このスプロケット用固定放射状溝11aは、径方向中間部112よりも内周側端部111側の内周部11iと、径方向中間部112よりも外周側端部113側の外周部11oとに大別することができる。
次に、スプロケット用固定放射状溝11aの形態について説明する。
スプロケット用固定放射状溝11aは、固定ディスク10の径方向θ
sに沿う直線状に形成されている。
【0049】
〔1−1−3−1−1−2.ロッド用固定放射状溝〕
ロッド用固定放射状溝12(一箇所のみに符号を付す)には、対応するガイドロッド29のロッド支持軸29a(一箇所のみに符号を付す)が内挿されている。なお、ロッド用固定放射状溝12は、それぞれ配設箇所が異なる点を除いては同様に構成されている。
ロッド用固定放射状溝12は、上記のスプロケット用固定放射状溝11aと同様に、固定ディスク10の径方向に沿う直線状に形成されている。
【0050】
なお、ロッド用固定放射状溝12は、ピニオンスプロケット20(
図1参照)が何れの径方向位置にあるときでもピニオンスプロケット20間にガイドロッド29が等間隔に位置するように、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cに合わせて配設される。
【0051】
〔1−1−3−1−2.可動ディスク〕
図2に示すように、可動ディスク19は、ピニオンスプロケット20を挟んで一側及び他側のそれぞれに設けられる。これらの可動ディスク19は、連結シャフト19Aで互いに連結されている。ここでは、
図1に示すように、各ピニオンスプロケット21,22,23の相互間にそれぞれ連結シャフト19A(一箇所にのみ符号を付す)が設けられている。これにより、一側の可動ディスク19と他側の可動ディスク19とが一体に回転する。
【0052】
図4及び
図5に示すように、可動ディスク19(
図5には破線で示す)には、スプロケット用可動放射状溝19aとロッド用可動放射状溝19b(何れも一箇所のみに符号を付し、
図5には破線で示す)との二種の可動放射状溝が形成されている。なお、可動ディスク19の外形は円形であり、円形である固定ディスク10の外形と一致して重合するが、
図5では便宜上の可動ディスク19の外形円を縮小して示している。
【0053】
〔1−1−3−1−2−1.スプロケット用可動放射状溝〕
スプロケット用可動放射状溝19aのそれぞれは、上記のスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cのそれぞれに交差して設けられる。スプロケット用可動放射状溝19aとスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cとが交差する第一交差箇所CP
1(
図5のそれぞれに一箇所のみ符号を付す)には、ピニオンスプロケット21,22,23の各支持軸21a,22a,23aが位置する。
【0054】
詳細は後述するが、第一交差箇所CP
1を単位長さ径方向に移動させるための、可動ディスク19の固定ディスク10に対する相対回転角度が、複合スプロケット5の接円半径が小さくなるに連れて大きくなるように設定されている。
各スプロケット用可動放射状溝19aは、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cのそれぞれに対応する形状に設けられている。特に、本実施形態では、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11c及びロッド用固定放射状溝12がそれぞれ径方向に直線状に延びているので、相対回転角度の特性は、スプロケット用可動放射状溝19a及び後述するロッド用可動放射状溝19bの形状設定により実現される。
【0055】
スプロケット用可動放射状溝19aは、配設箇所を除いてそれぞれ同様に構成されているため、以下の説明では、固定ピニオンスプロケット21に対応するスプロケット用可動放射状溝19aに着目して説明する。また、スプロケット用可動放射状溝19a及びロッド用可動放射状溝19bにかかる説明では、固定ピニオンスプロケット21を単にピニオンスプロケット21と呼ぶ。
図4に示すように、スプロケット用可動放射状溝19aは、上記のスプロケット用固定放射状溝11aと同様に、最小径r
1,中間径r
2及び最大径r
3に跨って配設されている。
【0056】
まず、スプロケット用可動放射状溝19aにおける接円半径に対応するピニオンスプロケット21の支持軸21aの位置を説明する。
スプロケット用可動放射状溝19aにおいて、内周側端部191には、接円半径が最小径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21aが位置し、外周側端部193には、接円半径が最大径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置し、径方向中間部192には、各複合スプロケット5の接円半径が互いに等しくなるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置する。
このスプロケット用可動放射状溝19aは、径方向中間部192よりも内周側端部191側の内周部19iと、径方向中間部192よりも外周側端部193側の外周部19oとに大別することができる。
【0057】
次に、スプロケット用可動放射状溝19aの形態について説明する。
スプロケット用可動放射状溝19aは、外周に向かうに連れて径方向に対して周方向(ここでは公転方向に対して反対方向)に向けて傾斜して設けられている。例えば、スプロケット用可動放射状溝19aの内周側端部191は、この位相に対応する径方向θ
cに対して傾斜している。ここでいう径方向θ
cは、内周側端部191の位相における軸中心を通過する径方向線の方向に対応している。
【0058】
このスプロケット用可動放射状溝19aは、複合スプロケット5(
図1及び
図2参照)の接円半径が大きくなるに連れて、固定ディスク10に対する可動ディスク19の相対回転角度が小さくなるように形成されている。
すなわち、支持軸21aが外周に向かうに連れて、単位あたりの相対回転角度(以下、「単位相対回転角度」という)に対応する支持軸21aにかかる径方向位置の変位量が小さくなるように、スプロケット用可動放射状溝19aの形状が設定されている。
言い換えれば、支持軸21aが内周に向かうに連れて、支持軸21aにかかる単位あたりの径方向位置の変位量(以下、「単位径方向位置変位量」という)に対応する可動ディスク19の相対回転角度が大きくなるように、スプロケット用可動放射状溝19aの形状が設定されている。
【0059】
従来の単位径方向位置変位量とこれに対応する相対回転角度の比率が一定に設定されたスプロケット用可動放射状溝と本スプロケット用可動放射状溝19aを比較すれば、スプロケット用可動放射状溝19aにおいて、単位径方向位置変位量に対応する相対回転角度が従来よりも大きく設定された位相に対応する内周部19iが、従来のスプロケット用可動放射状溝よりも径方向に対して大きく傾斜する形状をなしている。
【0060】
このため、スプロケット用可動放射状溝19aは、複合スプロケット5の接円半径が縮径側のときの相対回転角度を割り増しした形状といえる。
なお、単位径方向位置変位量に対応する相対回転角度が従来よりも小さく設定された位相に対応するスプロケット用可動放射状溝19aの外周部19oは、従来のスプロケット用可動放射状溝よりも径方向に対して小さく傾斜する形状となっている。
このスプロケット用可動放射状溝19aの形状にかかる曲線は、内周から外周に向かうに連れて、径方向に対する傾斜角度が大きくなるように定まる。
具体的なスプロケット用可動放射状溝19aの形状は、径方向に対して傾斜した曲線である。かかる曲線は、回転軸1の軸心C
1に対する距離(半径r,径方向位置)と、可動ディスク19の基準位相に対する角度(θ)とで表せば、単位径方向位置変位量(単位変位量Δr)に対する相対回転角度(Δθ)が、径方向位置(半径r)が小さくなるに連れて大きくなるように設定されている。
【0061】
例えば、スプロケット用可動放射状溝19aにおいて、内周側端部191と径方向中間部192との間の径方向距離Δr
12(外周側端部193と径方向中間部192との間の径方向距離Δr
23と等しい)を単位径方向位置変位量としたときに、内周側端部191に対応する位相θ
Cと径方向中間部192に対応する位相θ
1との位相差Δθ
01は、外周側端部193に対応する位相θ
2と径方向中間部192に対応する位相θ
1との位相差Δθ
12よりも大きくなるように設定されている。これは、スプロケット用可動放射状溝19aは、内周部11iに対応する位相差Δθ
01よりも外周部11oに対応する位相差Δθ
12の方が小さく設定されているとも言える。
【0062】
〔1−1−3−1−2−2.ロッド用可動放射状溝〕
図5に示すように、ロッド用可動放射状溝19bは、上記のロッド用固定放射状溝12と交差して設けられ、これらの交差箇所に各ロッド支持軸29aが配設される。なお、ロッド用可動放射状溝19bは、それぞれ配設箇所が異なる点を除いては同様に構成されている。
各ロッド用可動放射状溝19bは、スプロケット用固体放射状溝11aに対してスプロケット用可動放射状溝19aの形状が設定されるのと同様に、ロッド用固定放射状溝12のそれぞれに対応する形状に設けられている。
【0063】
図4に示すように、各ロッド用可動放射状溝19bは、上記のスプロケット用可動放射状溝19aと同様に、外周に向かうに連れて径方向に対して周方向(公転方向に対して反対方向)に向けて大きく傾斜する曲線状に設けられており、複合スプロケット5(
図1及び
図2参照)の接円半径が大きくなるに連れて、固定ディスク10に対する可動ディスクの相対回転角度が小さくなるように形成されている。
【0064】
このように、ロッド用可動放射状溝19bについても、複合スプロケット5の接円半径が縮径側のときに相対回転角度を割り増しした形状に形成されている。
図4では、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cの相互間に五本のロッド用可動放射状溝19bが設けられ、同径方向位置で比較したときに、各ロッド用可動放射状溝19bの径方向に対する傾斜角度が公転方向に向かうに連れて小さくなるものを例示している。
【0065】
なお、ロッド用可動放射状溝19bは、何れも径方向に対する傾斜角度が等しく設定されていてもよい。
ここでは、ロッド用可動放射状溝19bは、ピニオンスプロケット20(
図1参照)が何れの径方向位置にあるときでもピニオンスプロケット20間にガイドロッド29が等間隔に位置するように、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cに合わせて配設されている。
【0066】
〔1−1−3−1−3.第一回転部〕
図2に示すように、第一回転部15は、固定ディスク10と一体回転する部分、即ち、回転軸1と一体回転する部分である。ここでは、第一回転部15が回転軸1の一部に設けられている。この第一回転部15は、固定ディスク10及び可動ディスク19よりも軸方向外側に配設されている。
【0067】
図2,
図7及び
図8に示すように、第一回転部15には、第一カム溝15aが設けられている。この第一カム溝15aは、回転軸1の軸方向に沿って凹設して設けられている。ここでは、第一カム溝15aが回転軸1の軸心C
1と平行に形成されている。
図7には、第一カム溝15a(一箇所のみに符号を付す)が周方向に間隔をおいて三箇所に設けられたものを例示するが、第一カム溝15aの形成箇所や形成個数は、周囲の構成や要求仕様等に応じて設定すればよく、種々の形状や個数のものを採用することができる。
【0068】
〔1−1−3−1−4.第二回転部〕
図2,
図6及び
図7に示すように、第二回転部16は、可動ディスク19と接続部17を介して接続されている。なお、
図6及び
図7には、白抜きの矢印で反時計回りの公転方向を示している。
【0069】
まず、接続部17について説明する。
接続部17は、可動ディスク19及び第二回転部16と一体に回転し、固定ディスク10を覆うように配設されている。この接続部17は、固定ディスク10の外周(径方向外側)を覆う軸方向接続部17aと、固定ディスク10の軸方向外側を覆う径方向接続部17bとを有する。
【0070】
接続部17においては、可動ディスク19と第二回転部16との接続のうち、軸方向成分の離隔分を接続しているのが軸方向接続部17aであり、径方向の離隔分を接続しているのが径方向接続部17bである。
軸方向接続部17aは、回転軸1の軸心C
1と同心に設けられるとともに軸方向に延びる円筒形状をなしている。この軸方向接続部17aは、
図2に示すように、軸方向内側が可動ディスク19の外周端部(外周部)19tに結合され、軸方向外側が次に説明する径方向接続部17bに接続されている。
【0071】
図2,
図6及び
図7に示すように、径方向接続部17bは、径方向外側が軸方向接続部17aに接続され、径方向内側が第二回転部16に接続されている。この径方向接続部17bは、回転軸1の軸心C
1と同心に設けられるとともに径方向に延在する円盤から次に説明する肉抜き部17cによって肉抜きされた形状をなしている。
図6及び
図7に示すように、径方向接続部17bには、肉抜き部17cが設けられている。この肉抜き部17cは、詳細を後述する機械式自転駆動機構50のラック53,54及びピニオン51,52に対応する箇所に形成されている。
図6には、三箇所に設けられた扇形の肉抜き部17cが、相互間に径方向接続部17bを挟んで等間隔に設けられたものを例示している。ただし、肉抜き部17cの形状や形成個数は、周囲の構成や要求仕様等に応じて設定すればよく、種々の形状や個数のものを採用することができる。
【0072】
次に、第二回転部16について説明する。
図2,
図6及び
図7に示すように、第二回転部16は、第一回転部15の外周(径方向外側)を覆うように設けられ、回転軸1の軸心C
1と同心の円筒形状に形成されている。ここでは、
図2に示すように、第二回転部16が、可動ディスク19の外周端部19tから内周側にシフトされて軸方向に沿って設けられている。
【0073】
図2及び
図8に示すように、第二回転部16には、第二カム溝16aが設けられている。この第二カム溝16aは、第一カム溝15aの外周に隣接して設けられ、また、第一カム溝15aと交差するとともに回転軸1に沿って設けられている。なお、第二カム溝16aは、回転軸1の軸方向に交差するように設けられている。
【0074】
この第二カム溝16aは、第一カム溝15aに対する交差角度が、複合スプロケット5の接円半径(ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aに対応)が大きくなるに連れて小さくなる形状に設定されている。具体的に言えば、第二カム溝16aは、最小径の接円半径に対応する一端部161から最大径の接円半径に対応する他端部162に向かうに連れて、軸方向C
1に対する傾斜角度が小さくなる曲線状に形成されている。
このように、第二カム溝16aは、可動放射状溝19a,19bに対応する形状に形成されている。
【0075】
なお、他方の複合スプロケット5の第二カム溝16a(二点差線で示す)も同様に、複合スプロケット5の接円半径が小さくなるに連れて単位径方向位置変位量に対応する相対回転角度が大きくなるような形状に設定されている。
図7には、第二カム溝16a(一箇所にのみ符号を付す)が周方向に間隔をおいて三箇所に設けられたものを例示するが、第二カム溝15aの形成箇所や形成個数は、第一カム溝15aの形成箇所や形成個数に応じて設定される。
【0076】
〔1−1−3−1−5.相対回転駆動機構〕
相対回転駆動機構30は、上述した第一回転部15に設けられた第一カム溝15aと第二回転部16に設けられた第二カム溝16aとに加えて、第一カム溝15aと第二カム溝16aとが交差する第二交差箇所CP
2に配設されたカムローラ90と、このカムローラ90に対して軸方向の力を伝達するメガネフォーク(軸方向力伝達部材)35と、このメガネフォーク35を軸方向に移動させる軸方向移動機構31とを備えている。
【0077】
以下、カムローラ90,メガネフォーク35,軸方向移動機構31の順に説明する。
図2及び
図7に示すように、カムローラ90は、円柱状に形成されている。このカムローラ90は、回転軸1の軸心C
1に直交する方向に沿った軸心を有し、第一カム溝15aと第二カム溝16aとが交差する第二交差箇所CP
2(何れも一箇所にのみ符号を付す)に挿通されている。このため、カムローラ90は、回転軸1の回転に連動して回転軸1の軸心C
1を中心に回転する。なお、カムローラ90の外周には、第一カム溝15a及び第二カム溝16aのそれぞれに対応する箇所にベアリングが外嵌されている。
【0078】
カムローラ90の一端部90aは、第二交差箇所CP
2から径方向外側に突出されて設けられている。
なお、図示省略するが、カムローラ90は、カム溝15a,16aから脱落しないように、適宜の抜け止め加工が施されている。かかる抜け止め加工としては、例えばカムローラ90の他端部に頭部を設けることや抜け止めピンを追加し、カムローラ90が軸方向に移動可能であって径方向に移動しないようにすることが挙げられる。
【0079】
メガネフォーク35は、二つの複合スプロケット5,5に跨って設けられている。このメガネフォーク35は、各複合スプロケット5,5に対応して設けられた円環状のカムローラ支持部35a(一側にのみ符号を付す)と、各カムローラ支持部35aを連結するブリッジ部35bとを有する。カムローラ支持部35aの内周側には、上記の第一回転部15及び第二回転部16が配設されている。
なお、メガネフォーク35は、ディスク10,19に対して平行であって、チェーン6を基準としたときのディスク10,19に対して軸方向外側にプレート状に並設されている。
【0080】
カムローラ支持部35aには、内周側の全周にわたって溝部35cが凹設されている。
溝部35cは、カムローラ90の突出長さに対応する深さを有し、カムローラ90の一端部90aを収容している。すなわち、溝部35cは、径方向長さがカムローラ90の突出長さの円環状空間を有するものといえる。
この溝部35cには、カムローラ90と転がり接触しうる転動体35d(一箇所にのみ符号を付す)が設けられている。この転動体35dは、回転軸1の軸心C
1を中心に回転するカムローラ90が溝部35cの側壁に接触したときにカムローラ90が軸心周りに回転することを抑制するために設けられている。すなわち、溝部35cの側壁を形成するカムローラ支持部35aに、転動体35dが配設されている。ここでは、複数の転動体35dが溝部35cの全周にわたって配設されている。なお、
図2及び
図7には、転動体35dとしてニードルベアリングを例示するが、これに替えて、ボールベアリングを用いてもよい。
【0081】
軸方向移動機構31は、メガネフォーク35を軸方向に移動するために、モータ32と、モータ32の出力軸32aの回転運動を直線運動に切り替える運動変換機構33と、メガネフォーク35を支持するとともに運動変換機構33によって直線運動されるフォーク支持部34とを備えている。なお、モータ32としては、ステッピングモータを用いることができる。
【0082】
以下、
図2及び
図7を参照して、軸方向移動機構31について、フォーク支持部34,運動変換機構33の順に説明する。
フォーク支持部34は、モータ32の出力軸32aと同心の筒軸を有する円筒状に形成されている。このフォーク支持部34には、モータ32の出力軸32aが内挿されている。
また、フォーク支持部34は、内周にモータ32の出力軸32aに形成された雄ネジ部32bに螺合する雌ネジ部34aが螺設され、外周にメガネフォーク35のブリッジ部35bと係合するフォーク溝34bが凹設されている。
【0083】
フォーク溝34bは、メガネフォーク35のブリッジ部35bの厚み(軸方向長さ)に対応する幅(軸方向長さ)に形成されている。このフォーク溝34bには、ブリッジ部35bの中間部(二つの複合スプロケット5,5の間)が係合される。
運動変換機構33は、出力軸32aの雄ネジ部32bと、フォーク支持部34の雌ネジ部34aとを有する。出力軸32aが回転すると、雄ネジ部32bと雌ネジ部34aとの螺合によって、雌ネジ部34aが形成されたフォーク支持部34が軸方向に移動される。すなわち、軸方向移動機構31は、モータ31の回転運動を運動変換機構33によって直線運動に変換し、この直線運動でフォーク支持部34を軸方向に直線運動させる。
上記のメガネフォーク35,軸方向移動機構31を含む相対回転駆動機構30は、ピニオンスプロケット21,22,23から軸方向にシフトして設けられている。
【0084】
以下、相対回転駆動機構30による可動ディスク19の固定ディスク10に対する相対回転駆動について説明する。
軸方向移動機構31によってフォーク支持部34が軸方向に直線運動されると、フォーク支持部34に係合するメガネフォーク35を介して軸方向の力がカムローラ90に伝達され、カムローラ90も軸方向に移動される。
【0085】
第一カム溝15aと第二カム溝16aとが交差する第二交差箇所CP
2に配設されるカムローラ90が軸方向に移動されると、第二交差箇所CP
2も軸方向に移動する。第一カム溝15aが設けられた第一回転部15は回転軸1及び固定ディスク10と一体回転するため、第二交差箇所CP
2が軸方向に移動すると、第一回転部15に対して第二カム溝16aが設けられた第二回転部16が相対的に回転させられる。
【0086】
第二カム溝16aは、最小径の接円半径に対応する一端部161から最大径の接円半径に対応する他端部162に向かうに連れて、軸方向C
1に対する傾斜角度が小さくなる曲線状に形成されているため、カムローラ90の軸方向変位量に対する第二回転部16の相対回転角度が小さくなる。
【0087】
第二回転部16は可動ディスク19と一体回転し、第一回転部10は固定ディスク10と一体回転するので、第一回転部15に対して第二回転部16が相対回転されると、固定ディスク10に対して可動ディスク19が相対的に回転される。
固定ディスク10に対して可動ディスク19が相対回転駆動されると、移動機構40A及び40Bにかかる説明で後述するように、固定ディスク10に設けられたスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cと可動ディスク19に設けられたスプロケット用可動放射状溝19aとが交差する第一交差箇所CP
1が径方向に移動される。
【0088】
このように、相対回転駆動機構30は、軸方向移動機構31によって可動ディスク19を固定ディスク10に対して相対回転駆動して、第一交差箇所CP
1を径方向に移動させる。
このとき、相対回転駆動機構30は、複合スプロケット5の接円半径が大きくなるに連れて、固定ディスク10に対して可動ディスクを小さく回転する。また、相対回転駆動機構30は、一方の複合スプロケット5の接円半径と他方の複合スプロケット5の接円半径を同時に変更する。
【0089】
〔1−1−3−2.スプロケット移動機構及びロッド移動機構〕
次に、
図2及び
図5を参照して、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bを説明する。
スプロケット移動機構40Aは、ピニオンスプロケット21,22,23のそれぞれに設けられた支持軸21a,22a,23aが内挿されるスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cが形成された固定ディスク10と、スプロケット用可動放射状溝19aが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30(
図2及び
図7参照)とから構成されている。
【0090】
また、ロッド移動機構40Bは、ロッド支持軸29aが内挿されるロッド用固定放射状溝12が形成された固定ディスク10と、ロッド用可動放射状溝19bが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30とから構成されている。
このように、それぞれの移動機構40A,40Bの構成は、各移動対象の支持軸が異なるだけで、その他の構成は同様である。
【0091】
次に、
図5(a)〜
図5(c)を参照して、移動機構40A及び40Bによる移動を説明する。
図5(a)は、放射状溝11a,11b,11c,19aにおけるピニオンスプロケット21,22,23(
図1及び
図2等参照)の支持軸21a,22a,23aと放射状溝12,19bにおけるロッド支持軸29aとが回転軸1の軸心C
1から最も近い位置に位置するものを示す。この場合、相対回転駆動機構30(
図2参照)により可動ディスク19の回転位相を固定ディスク10に対して変更すると、
図5(b),
図5(c)の順に、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cとスプロケット用可動放射状溝19aとが交差する第一交差箇所CP
1と、ロッド用固定放射状溝12とロッド用可動放射状溝19bとの交差箇所とが、回転軸1の軸心C
1から遠ざかる。すなわち、これらの交差箇所に支持軸21a,22a,23a,29aを支持されたピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は、回転軸1の軸心C
1から等距離を維持しながら径方向に同期して移動される。
【0092】
一方、相対回転駆動機構30によって可動ディスク19の回転位相の変更方向を上記の方向と反対にすれば、ピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は回転軸1の軸心C
1に近づく。
なお、入力側の移動機構40A,40Bが接円半径を拡径させるときには、チェーン6の弛緩や緊張が生じないように出力側の移動機構40A,40Bが接円半径を縮径させる。
【0093】
スプロケット移動機構40Aによりピニオンスプロケット20が移動されると、ピニオンスプロケット20の相互間の距離が変わることにより、チェーン6に対してピニオンスプロケット20の位相ズレが発生してしまう。そこで、かかる位相ズレを解消するために、機械式自転駆動機構50が装備されている。
【0094】
〔1−1−3−3.機械式自転駆動機構〕
次に、
図2及び
図6を参照して、機械式自転駆動機構50を説明する。ここでは、機械式自転駆動機構50がピニオンスプロケット20を挟んで対称に構成されるため、一側(
図2の上方側)の構成に着目して説明する。
【0095】
機械式自転駆動機構50は、上記したように、自転ピニオンスプロケット22,23を回転させ、チェーン6に対するピニオンスプロケット20間の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して機械的に自転駆動するものである。
ただし、機械式自転駆動機構50は、径方向移動時の固定ピニオンスプロケット21を自転させない構成も有している。
【0096】
まず、機械式自転駆動機構50について、固定ピニオンスプロケット21(
図1参照)を自転させないための構成を説明する。
図6に示すように、固定ピニオンスプロケット21の支持軸21aは、固定ディスク10のスプロケット用固定放射状溝11aに挿通されている。この支持軸21aには、案内部材59が一体的に結合されている。
【0097】
案内部材59は、スプロケット用固定放射状溝11aに内挿されて径方向に案内される。この案内部材59は、径方向の所定長さにわたってスプロケット用固定放射状溝11aに接触するように対応する形状に形成されている。このため、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力が作用したときには、案内部材59は、スプロケット用固定放射状溝11aに対して回転力を伝達するとともに、この回転力の反作用(抗力)で固定ピニオンスプロケット21を固定するものといえる。すなわち、案内部材59は、スプロケット用固定放射状溝11aにおいて径方向に摺動可能であって回り止め機能を有する形状に形成されている。なお、ここでいう所定長さとは、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力の抗力が確保可能な長さである。
【0098】
図6では、スプロケット用固定放射状溝11aが径方向に長手方向を有する矩形状に形成されており、この矩形状よりも小さい矩形状に形成された案内部材59を例示している。
また、スプロケット用固定放射状溝11aの内壁に接する案内部材59の側壁、特に案内部材59の四隅に、ベアリングを装着すれば、案内部材59のよりスムーズな摺動を確保することができる。
【0099】
次に、機械式自転駆動機構50について、自転ピニオンスプロケット22,23を自転駆動するための構成について説明する。
機械式自転駆動機構50は、自転ピニオンスプロケット22,23の支持軸22a,23aのそれぞれと一体回転するように固設されたピニオン51,52と、ピニオン51,52のそれぞれに対応して噛合するように設けられたラック53,54と、を有する。
【0100】
ピニオン51,52は、自転ピニオンスプロケット22,23の各支持軸22a,23aにおける軸方向端部にそれぞれ設けられている。かかるピニオン51,52にそれぞれ対応するラック53,54は、スプロケット用固定放射状溝11b,11cの延在方向に沿って固設されている。
なお、以下の説明では、第一自転ピニオンスプロケット22のピニオン(進角側ピニオン)51を第一ピニオン51と呼び、この第一ピニオン51と噛合するラック(進角側ラック)53を第一ラック53と呼んで区別する。同様に、第二ピニオンスプロケット23のピニオン(遅角側ピニオン)52を第二ピニオン52と呼び、この第二ピニオン52と噛合するラック(遅角側ラック)54を第二ラック54と呼ぶ。
【0101】
図6に示すように、第一ラック53は、第一ピニオン51に対して公転方向基準で遅角側に配置される。逆に、第二ラック54は、第二ピニオン52に対して公転方向基準で進角側に配置される。このため、ピニオン51,52及びラック53,54は、ピニオン51,52が拡径方向又は縮径方向に移動されると、ピニオン51,52はこれに噛合するラック53,54によって互いに逆方向に回転されるように配設されている。
【0102】
すなわち、機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aにより移動されたピニオンスプロケット20の径方向位置に応じて、自転ピニオンスプロケット22,23の自転にかかる回転位相を設定するものである。つまり、機械式自転駆動機構50によって、ピニオンスプロケット20の径方向位置と自転ピニオンスプロケット22,23の自転にかかる回転位相は一対一の対応関係となる。
【0103】
このように、機械式自転駆動機構50は、固定ピニオンスプロケット21が自転しないように案内し、自転ピニオンスプロケット22,23が自転するように案内する。
なお、ピニオン51,52に対するラック53,54の位置関係が異なる点を除いては、第一ピニオン51と第二ピニオン52とは同様に構成され、また、第一ラック53と第二ラック54とは同様に構成されている。
【0104】
なお、第一自転ピニオンスプロケット22には、前述の位相ズレ許容動力伝達機構に代えて、その支持軸22aと第一ピニオン51との間に皿ばねが介装されていてもよい。この皿ばねによれば、支持軸22aと第一ピニオン51との微小な回転を許容しつつ相対回転を規制することで、変速比の変更中に発生しうる第一自転ピニオンスプロケット22とチェーン6との噛合時のショック(衝撃)を吸収する。この皿ばねは、固定ピニオンスプロケット21及び第二自転ピニオンスプロケット23のそれぞれにも同様に適用可能である。
【0105】
〔1−2.チェーン〕
次に、チェーン6について説明する。
図9に示すように、ガイドロッド29にガイドされるチェーン6は、各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数(ここでは三列)に対応する本数が設けられている。ここでは、第一チェーン6A,第二チェーン6B及び第三チェーン6Cの三本が設けられている。
【0106】
これらのチェーン6A,6B,6Cは、動力伝達方向に位相をずらすように互いにピッチをずらしてピニオンスプロケット20に巻き掛けられている。ここでは、1/3ピッチだけ互いのピッチをずらしている。これに対応して、各チェーン6A,6B,6Cに噛合するピニオンスプロケット20の各歯21c,22c,23c(以下、これらを区別せずに示すときには「歯20c」という)の位相もずらして配置されている。
なお、チェーン6A,6B,6Cは、配設ピッチ以外は同様に構成される。
【0107】
また、無段変速機構の伝達トルクによっては二本又は四本以上のチェーン6が用いられるが、この場合には「1/チェーンの本数」ピッチだけ各チェーンのピッチをずらして設けられるのが好ましい。
【0108】
〔2.作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかる無段変速機構は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
単位径方向位置変位量に対応する相対回転角度が、複合スプロケット5の接円半径が小さくなるに連れて大きくなるように設定されることにより、従来のように径方向に沿って直線状に形成された固定放射状溝に交差するとともに単位径方向位置変位量とこれに対応する相対回転角度とが一定の比率を有する可動放射状溝に比較して、スプロケット用可動放射状溝19aの内周部19iとロッド用可動放射状溝19bの内周部とを径方向に対して大きく傾斜する形状とすることができ、固定放射状溝11a,11b,11c,12に対する交差角度を確保することができる。
【0109】
具体的には、スプロケット用可動放射状溝19aの形状は、径方向に対して傾斜した曲線であり、かかる曲線は、回転軸1の軸心C
1に対する距離(半径r,径方向位置)と、可動ディスク19の基準位相に対する角度(θ)とで表せば、単位径方向位置変位量(単位変位量Δr)に対する相対回転角度(Δθ)が、径方向位置(半径r)が小さくなるに連れて大きくなるように設定されているため、スプロケット用可動放射状溝19aの内周部19iとロッド用可動放射状溝19bの内周部とを径方向に対して大きく傾斜する形状とすることができ、固定放射状溝11a,11b,11c,12に対する交差角度を確保することができる。
【0110】
これらより、特に交差角度が困難な内周部において、固定放射状溝11a,11b,11c,12と可動放射状溝19a,19bとの交差角度を確保することができる。これにより、相対回転駆動機構30による固定ディスク10に対する可動ディスク19の回転トルクを低減させることができる。また、固定放射状溝11a,11b,11c,12及び可動放射状溝19a,19bにおけるピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,21b,21c及びガイドロッド29の支持軸29bのひっかかり(スティック)を抑制することができる。
【0111】
スプロケット用可動放射状溝19aは、内周から外周に向かうに連れて径方向に対する傾斜角度が大きくなるため、外周部19iにおけるスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cに対する交差角度は確保されている。同様に、ロッド用可動放射状溝19bの外周部とロッド用固定放射状溝との交差角度も確保されている。これらより、可動放射状溝19a,19bと固定放射状溝11a,11b,11c,12との交差角度を全領域に亘って確保することができる。
【0112】
固定放射状溝11a,11b,11c,12が径方向に沿う直線状に形成されるため、複合スプロケット5によってトルク伝達されるときに回転軸1と回転動力を入出力する固定ディスク10において各ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aを通して作用する反力(トルク反力)を、周方向に沿って作用させることができる。これにより、トルク反力によるピニオンスプロケット21,22,23の径方向への移動を抑制することができ、変速制御性を向上させることができる。また、形成が容易となり、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0113】
相対回転駆動機構30において、第二カム溝16は、第一カム溝15に対する交差角度が複合スプロケット5の接円半径が大きくなるに連れて小さくなるように設けられているため、複合スプロケット5の接円半径が大きくなるに連れて、固定ディスク10に対して可動ディスク19を小さく回転することができる。このように可動ディスク19を相対回転することができるため、上述した形状の可動放射状溝19a,19bを用いることができる。
【0114】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の一実施形態では、径方向に直線状に延びる固定放射状溝11a,11b,11c,12を前提にして、可動放射状溝19a,19bの形状を設定するものを示したが、固定放射状溝の形状にかかわらず、少なくとも、単位径方向位置変位量に対応する相対回転角度が、複合スプロケット5の接円半径が小さくなるに連れて大きくなるように設定されていればよい。この場合、可動放射状溝の内周部は、従来の単位相対回転角度とこれに対応する径方向位置変位量との比率が一定に設定されたものよりも、径方向に対して傾斜する形状に設定され、固定放射状溝との交差角度を確保することができる。
【0115】
また、一方の複合スプロケット5における接円半径と他方の複合スプロケット5における接円半径とを相対回転駆動機構30により同時に変更するものを示したが、各複合スプロケット5にカムローラ90を軸方向移動させる機構を設け、この軸方向移動機構をそれぞれ独立して制御してもよい。
また、複数のピニオンスプロケット20側から可動ディスク19,固定ディスク10の順に配置されたもの例示したが、ディスクの配置や枚数はこれに限られず、種々の配置や枚数を採用することができる。例えば、固定ディスク10に対応するディスクとして、可動ディスク19の軸方向内側及び外側に第一固定ディスク及び第二固定ディスクを配設してもよい。この場合、第一固定ディスクにスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11c及びロッド用固定放射状溝12を形成することができ、第二固定ディスクにスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cに対応する溝を形成するとともにラック53,54を固設することができる。このように、ピニオンスプロケットを径方向に移動させる第一固定ディスク(径方向移動用固定ディスク)とピニオンスプロケットを自転させる第二固定ディスク(自転用固定ディスク)とをそれぞれ備えてもよい。なお、上述の一実施形態では、固定ディスク10が、前述した第一固定ディスクと第二固定ディスクとを兼用するものといえる。