【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係るコネクタ1と、このコネクタ1に嵌合する相手コネクタ100とを互いに嵌合させる側を対向して配置した斜視図である。
図2は、嵌合検知部材50が待機位置にある状態のコネクタ1の上面図である。
図3は、
図2に示したコネクタ1のA―A線断面図である。
なお、
図3は、治具Tを仮想線で示している。
図4は、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にある状態のコネクタ1の斜視図である。
図5は、
図4に示したコネクタ1の上面図である。
図6は、
図5に示したコネクタ1のB−B線断面図である。
図7は、コネクタハウジング10の斜視図である。
図8は、コネクタハウジング10の上面図である。
図9は、
図8に示したコネクタハウジング10のC−C線断面図である。
図10は、(a)が嵌合検知部材50の斜視図であり、(b)が(a)に示した嵌合検知部材50のD−D線断面図である。
なお、本発明の実施例では説明の便宜上、図中に示すように前後、及び上下方向を定義する。
本発明の実施例に係るコネクタ1は、相手コネクタ100との嵌合状態をロックする部分であり、かつ、押圧操作することによってロックを解除する押圧操作面33aを含む嵌合ロック部30を有するコネクタハウジング10と、コネクタハウジング10に装着して嵌合状態を検知する前の待機位置と嵌合状態を検知するための嵌合検知位置との間を可動させることによって相手コネクタ100との嵌合状態を検知する嵌合検知部材50と、を有する。
【0016】
まず、コネクタハウジング10について説明する。
コネクタハウジング10は、合成樹脂等の絶縁材からなり、コネクタ1の本体を構成する部分である。このコネクタハウジング10は、全体を略筒状に形成し、内部に相手コネクタ100の不図示の相手端子に接続する端子Cを収容する端子収容室11と、嵌合検知部材50を装着する検知部材装着部20と、を有する。
【0017】
また、コネクタハウジング10の前端部側には、相手コネクタ100のコネクタハウジング110(以下「相手コネクタハウジング」という。)を嵌入可能に後端部側に比して筒内空間を拡大して形成した嵌合部12を形成している。
【0018】
端子収容室11は、コネクタハウジング10内に保持する複数の端子Cが互いに絶縁状態で保持されるように、各端子Cの間を壁で隔離した状態で各端子Cを保持するようになっている。この端子収容室11は、後端側に端子Cの挿入口となる端子挿入口11aを形成し、前端側に相手端子を接続するために挿入する相手端子挿入口11bを形成している。
【0019】
検知部材装着部20は、嵌合検知部材50の可動方向に直交する方向の幅に対応した幅でコネクタハウジング10の筒内空間を上方に向けて突出するように形成した部材ガイド壁部21を有する。
【0020】
部材ガイド壁部21は、コネクタハウジング10の嵌合部12を形成する壁から上方に突出するように形成した一対の側壁21a、21aと、天井壁21bと、有し、これら一対の側壁21a、21aと、天井壁21bによって囲う空間の中に嵌合検知部材50をコネクタ1の嵌合方向(
図1中、矢印D方向)と同じ方向に沿って可動可能に保持する。
この部材ガイド壁部21は、両側壁21a、21aの内面に嵌合検知部材50の両側部を嵌合検知部材50がスライド移動できるようにガイドする不図示のガイド溝を形成している。
なお、両側壁21a、21aの内面には、嵌合検知部材50の後述する待機位置係止用突起52と係合することによって、嵌合検知部材50を待機位置に係止する不図示の係止突起部を有する。
【0021】
また、部材ガイド壁部21の両側壁21a、21aの後端縁面には、後述する一対の待機位置移動操作用突起54、54が嵌合検知部材50を嵌合検知位置にした状態で、両側壁21a、21aの後端縁面よりも内側になるように嵌め込まれる一対の突起嵌め込み用切り込み部21cを形成している。
【0022】
また、コネクタハウジング10は、部材ガイド壁部21内に嵌合ロック部30を設けている。
嵌合ロック部30は、
図9に示すように、端子収容室11の上壁に支点31を設け、この支点31から相手コネクタハウジング110の嵌入側に向けて延在した係合片部32と、支点31から係合片部32とは逆方向に延在するように上面に押圧操作面33aを形成した操作片部33と、を設けている。
係合片部32には、相手コネクタハウジング110に設けた係合突起111に係止する係合孔32aを形成している。
【0023】
この嵌合ロック部30は、コネクタハウジング10の嵌合部12に相手コネクタハウジング110を嵌入することによって、係合片部32が係合突起111をのり越えるようにして支点31を中心として弾性的に傾き、嵌合完了状態で、係合孔32aと係合突起111とが係合することによって相手コネクタハウジング110とコネクタハウジング10との嵌合状態をロックするようになっている。
このような嵌合ロック部30によるロックを解除する場合、押圧操作面33aを押圧操作することによって、支点31を中心として係合孔32aと係合突起111との係合を解除する。
【0024】
また、コネクタハウジング10は、押圧操作面33aに対して所定の間隔を空けて押圧操作面33aを覆うカバー壁41と、嵌合ロック部30のロックを解除するための治具Tによってカバー壁41の外側から押圧操作面33aを押圧操作可能にカバー壁41の一部を治具Tが挿通できる寸法で開口した治具挿通部41aと、を含むカバー部40を有する。
【0025】
カバー部40は、部材ガイド壁部21の天井壁21bの後端部周辺領域を形成する部分である。
なお、この実施例では、カバー部40を部材ガイド壁部21と一体的に形成するものを例示したが、これに限らず、カバー壁41が押圧操作面に対して所定の間隔を空けて押圧操作面33aを覆うようになっていればよい。
【0026】
治具挿通部41aは、カバー壁41の嵌合検知部材50の待機位置寄りの端部から嵌合検知部材50の可動方向に沿って切り込んだスリット形状をなす。
【0027】
このようなカバー部40は、治具挿通部41aのスリット幅W(
図7参照)を治具Tが挿通できる幅であり、かつ、作業者の指が挿通できない程度の幅に調整することによって、カバー壁41の外側から治具挿通部41aに治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作できないようにしている。
【0028】
次に、嵌合検知部材50について説明する。
嵌合検知部材50は、
図10に示すように、全体略矩形状の板状部材であり、移動壁部51と、移動壁部51の両側縁面から突起した一対の待機位置係止用突起52、52と、一対の嵌合検知用係合部53、53と、移動壁部51の後端部両縁から突起した一対の待機位置移動操作用突起54、54と、を有する。
【0029】
移動壁部51は、嵌合検知部材50の本体部分を形成する矩形状の板状部分であり、治具貫通孔51aを形成している。
【0030】
治具貫通孔51aは、嵌合検知部材50が待機位置にある場合、治具Tを治具挿通部41aから押圧操作面33aまでカバー壁41と押圧操作面33aとの間を通して挿通可能に位置し、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にある場合、治具挿通部41aをカバー壁41と押圧操作面33aとの間で塞ぐように位置するように移動壁部51を貫通する孔である。
【0031】
この治具貫通孔51aは、治具挿通部41aのスリット幅Wと同一方向の幅をスリット幅Wと略等しい寸法に調整する。
これにより、嵌合検知部材50が傾いて正規の姿勢で待機位置に配置されない場合、治具貫通孔51aが治具挿通部41aに対してズレてしまい、治具Tを治具貫通孔51aおよび治具挿通部41aを通して押圧操作面33aまで挿通することができないようになっている。
【0032】
一対の待機位置係止用突起52は、部材ガイド壁部21の不図示の係止突起部と係合することによって嵌合検知部材50を待機位置に係止するものである。
【0033】
一対の嵌合検知用係合部53、53は、移動壁部51の前端側両側部から下方に向けて鉤状に突起した部分であり、コネクタハウジング10と嵌合完了した状態にある相手コネクタハウジング110の一対の嵌合検知用突起部112、112に係合する。
すなわち、一対の嵌合検知用係合部53、53は、コネクタハウジング10と相手コネクタハウジング110とが嵌合完了した状態になっていないと、一対の嵌合検知用突起部112、112に係合しないようになっている。
【0034】
一対の待機位置移動操作用突起54は、嵌合検知部材50を嵌合検知位置から待機位置に移動する際に、作業者が指を引っ掛けて操作する部分である。
【0035】
次に、相手コネクタ100について説明する。
相手コネクタハウジング110は、
図1に示すように、嵌合ロック部30の係合孔32aと係合する係合突起111と、嵌合検知部材50の一対の嵌合検知用係合部53、53に係合する一対の嵌合検知用突起部112、112と、を有する。
【0036】
このような、コネクタ1と相手コネクタ100とは、コネクタハウジング10と相手コネクタハウジング110とを嵌合する場合、嵌合検知部材50を待機位置にした状態で相手コネクタハウジング110をコネクタハウジング10の嵌合部12内に嵌入する。すると、コネクタハウジング10の係合孔32aと相手コネクタハウジング110の係合突起111とが係合し、コネクタハウジング10と相手コネクタハウジング110とが嵌合完了する。
このように、コネクタハウジング10と相手コネクタハウジング110とが嵌合完了し、嵌合検知部材50が待機位置にある状態では、嵌合検知部材50の一対の嵌合検知用係合部53、53が相手コネクタハウジング110の嵌合検知用突起部112、112に乗り上げた状態となり、嵌合検知部材50を嵌合検知位置に移動できるようになっている。
そこで、嵌合検知部材50を待機位置から嵌合検知位置に移動することによって、嵌合が正しく行われたことが確認される。
【0037】
次に、コネクタ1の嵌合を解除する手順についてコネクタ1の各部の動作を示しながら説明する。
まず、作業者は、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にあることによって移動壁部51が治具挿通部41aをカバー壁41と押圧操作面33aとの間で塞ぐように位置しているため、治具Tを押圧操作面33aまで挿通できるように、嵌合検知部材50を嵌合検知位置から待機位置に移動する(
図2および
図3参照)。
このとき作業者は、一対の待機位置移動操作用突起54、54を指に引っ掛けて嵌合検知部材50を嵌合検知位置から待機位置まで容易に引っ張り出すことができる。
【0038】
ここで、嵌合検知部材50が傾いた状態で待機位置に移動した場合、治具挿通部41aに対して治具貫通孔51aが幅方向にズレた状態になるため、治具挿通部41aの一部が治具貫通孔51aの孔周辺の壁によって一部塞がれた状態となり、治具Tを押圧操作面33aまで挿通することができなくなる。
この場合、作業者は、再度、嵌合検知部材50を正しい姿勢で待機位置に移動し直す。
このようにして治具挿通部41aに挿通した治具Tが治具貫通孔51aをさらに貫通して押圧操作面33aまで到達することができる。
この状態であっても、治具挿通部41aがカバー壁の外側から押圧操作面33aまで作業者の指を入れることができない寸法に調整してあるため、治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作して嵌合ロック部30のロックを解除できない。
【0039】
その後、作業者は、治具Tをカバー壁41の外側から治具挿通部41aおよび治具貫通孔51aを貫通して(
図3参照)、押圧操作面33aを治具Tを用いて押圧操作することによって、嵌合ロック部30のロックを解除する。
【0040】
その後、作業者は、嵌合ロック部30のロックを解除した状態でコネクタハウジング10と相手コネクタハウジング110との嵌合を解除する。
【0041】
本発明の実施例に係るコネクタ1は、治具挿通部41aの寸法を治具Tが挿通できる寸法であり、かつ、作業者の指が挿通できない程度の寸法に調整することによって、カバー壁41の外側から治具挿通部41aに治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作して嵌合ロック部30のロックを解除することをできないようにすることができ、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にない場合、あるいは、嵌合検知部材50をコネクタハウジング10に装着し忘れた場合であっても、コネクタ1の嵌合が不用意に解除されることを防止することができる。
【0042】
また、本発明の実施例に係るコネクタ1は、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にある場合には、移動壁部51が治具挿通部41aをカバー壁41と押圧操作面33aとの間で塞ぐように位置することによって、治具Tによっても嵌合ロック部30のロックを解除することをできないため、嵌合検知部材50を嵌合検知位置から待機位置に移動した後、嵌合ロック部30のロックを解除するという正規の手順でないとロックを解除できないようにすることができる。
【0043】
また、本発明の実施例に係るコネクタ1は、嵌合検知部材50が傾いた状態で待機位置に移動した場合、治具挿通部41aに対して治具貫通孔51aが幅方向にズレた状態になるため、治具挿通部41aの一部が治具貫通孔51aの孔周辺の壁によって一部塞がれた状態となり、治具Tを押圧操作面33aまで挿通することができなくなるので、嵌合検知部材50を正規の姿勢で待機位置に移動しなければ嵌合ロック部30のロックを解除することをできなくすることができる。
(変形例1)
【0044】
次に、
図11および
図12を用いて本発明の実施例に係るコネクタ1の変形例1のコネクタ2ついて説明する。
図11は、本発明の実施例に係るコネクタ1の変形例1のコネクタ2を説明する為の図であり、(a)が嵌合検知部材60が待機位置にあるコネクタの断面図であり、(b)が嵌合検知部材60が嵌合検知位置にあるコネクタ2の断面図である。
図12は、(a)が嵌合検知部材60の斜視図であり、(b)が(a)に示し嵌合検知部材60のE−E線断面図である。
この変形例1に係るコネクタ2は、嵌合検知部材60の移動壁部61に治具貫通孔51aを形成していない点で、実施例のコネクタ1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0045】
嵌合検知部材60は、
図12に示すように、移動壁部61の可動方向での幅を調整することによって、移動壁部61を、待機位置では治具Tを治具挿通部41aから押圧操作面33aまでカバー壁41と押圧操作面33aとの間を通して挿通可能に位置し(
図11(a)参照)、嵌合検知位置では治具挿通部41aをカバー壁41と押圧操作面33aとの間で塞ぐように位置するようにしている(
図11(b)参照)。
【0046】
この変形例1のコネクタ2は、治具挿通部41aの寸法を治具Tが挿通できる寸法であり、かつ、作業者の指が挿通できない程度の寸法に調整することによって、カバー壁41の外側から治具挿通部41aに治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作して嵌合ロック部30のロックを解除することをできないようにすることができ、嵌合検知部材60が嵌合検知位置にない場合、あるいは、嵌合検知部材60をコネクタハウジング10に装着し忘れた場合であっても、実施例のコネクタ1と同様に、コネクタ2の嵌合が不用意に解除されることを防止することができる。
(変形例2)
【0047】
次に、
図13を用いて本発明の実施例に係るコネクタ1の変形例2のコネクタ3ついて説明する。
図13は、変形例2に係るコネクタ3と、このコネクタ3に嵌合する相手コネクタ100とを互いに嵌合させる側を対向して配置した斜視図である。
この変形例2に係るコネクタ3は、治具挿通部81aがスリット形状でない点で、実施例のコネクタ1と異なる。
なお、その他の構成は実施例1と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0048】
コネクタ3は、治具挿通部81aが治具Tの断面外形形状に対応した開口部になっている。より具体的には、治具挿通部81aの開口寸法を治具Tが挿通できる寸法であり、かつ、作業者の指が挿通できない程度の寸法に調整することによって、カバー壁81の外側から治具挿通部81aに治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作できないようにしている。
【0049】
この変形例2のコネクタ3は治具挿通部81aの寸法を治具Tが挿通できる寸法であり、かつ、作業者の指が挿通できない程度の寸法に調整することによって、カバー壁81の外側から治具挿通部81aに治具Tを挿通させなければ押圧操作面33aを押圧操作して嵌合ロック部30のロックを解除することをできないようにすることができ、嵌合検知部材50が嵌合検知位置にない場合、あるいは、嵌合検知部材50をコネクタハウジング70に装着し忘れた場合であっても、実施例のコネクタ1と同様に、コネクタ3の嵌合が不用意に解除されることを防止することができる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。