(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182139
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】寛骨臼結合用固定ねじ、及び、当該寛骨臼結合用固定ねじと、人工股関節の寛骨臼カップとの複合構造
(51)【国際特許分類】
A61F 2/34 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
A61F2/34
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-526032(P2014-526032)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公表番号】特表2014-531919(P2014-531919A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】US2012047518
(87)【国際公開番号】WO2013025308
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】61/574,984
(32)【優先日】2011年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512232872
【氏名又は名称】ヒップ・イノベーション・テクノロジー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】テルマニーニ・ザッファー
【審査官】
伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00341199(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0193175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨臼の凹部に固着するための表面と、凹面から延在する中心ステムを有するこの凹面とを備える人工股関節の寛骨臼カップであって、前記寛骨臼カップ及び前記ステムは、共通の第1中心軸を有し、前記寛骨臼カップは、第2中心軸と前記凹面上の円周縁部とを有する少なくとも1つのねじ山付きねじ穴を備える当該人工股関節の寛骨臼カップにおいて、
前記円周縁部から延在し、且つ前記第2中心軸に平行に延在する複数の線が、前記中心ステムと交差しない当該人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項2】
寛骨臼の凹部に固着するための表面と、凹面から延在する中心ステムを有するこの凹面とを備える人工股関節の寛骨臼カップであって、前記寛骨臼カップ及び前記ステムは、共通の第1中心軸を有し、前記寛骨臼カップは、第2中心軸と前記凹面上の円周縁部とを有する、前記寛骨臼カップを貫通する少なくとも1つのねじ山付きねじ穴を備える当該人工股関節の寛骨臼カップにおいて、
前記円周縁部から延在し、且つ前記第2中心軸に平行に延在する複数の線が、前記中心ステムと交差しなく、
i)前記中心ステムが、固体であり、及び/又は
ii)前記円周縁部から延在し、且つ前記第2中心軸に平行に延在する複数の線が、前記寛骨臼カップの平面と交差する前に前記第1中心軸と交差しない当該人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項3】
前記人工股関節の寛骨臼カップは、前記少なくとも1つのねじ山付きねじ穴内に螺入される寛骨臼結合用固定ねじをさらに有する請求項1又は2に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項4】
前記ねじ山付きねじ穴は、前記第2中心軸に対して10〜15°の角度を成してテーパー加工されていて、且つ凸面上の円周より大きい前記凹面上の円周を有する請求項3に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項5】
前記寛骨臼結合用固定ねじは、その外面をねじ山加工された頭部を有し、且つ前記ねじ山付きねじ穴と同じ角度でテーパー加工されていて、前記ねじ山加工された頭部は、前記ねじ山付きねじ穴と螺合するように寸法決めされている請求項4に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項6】
前記ねじは、10〜15°の角度でテーパー加工された頭部を有し、21〜31mmの全長と4〜5mmのシャンク径とを有する請求項3に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項7】
前記ねじは、6〜7mmの海綿骨ねじの径を有する請求項6に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項8】
前記ねじは、16〜26mmの海綿骨ねじのねじ部の長さを有する請求項7に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項9】
細目ねじ部の長さは、4〜5mmである請求項8に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項10】
前記中心ステムは、固体である請求項1又は2に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項11】
前記円周縁部から延在し、且つ前記第2中心軸に平行に延在する複数の線が、前記寛骨臼カップの平面と交差する前に前記第1中心軸と交差しない請求項1又は2に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【請求項12】
前記中心ステムは、前記寛骨臼カップから延在する単一の突出部である請求項1又は2に記載の人工股関節の寛骨臼カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の分野
本発明は、主に寛骨臼結合用固定ねじに関し、特に人工股関節全置換術中に骨盤に提供された寛骨臼の凹部内に寛骨臼カップを固着させるための寛骨臼結合用固定ねじに関する。さらに特別な観点では、本発明は、新規の人工股関節の寛骨臼カップ(reverse hip acetabular cup)の凹部内に確実に取り付けられたステムを有する当該寛骨臼カップと、当該寛骨臼カップを寛骨臼の凹部内に確実に取り付けるために使用される当該寛骨臼結合用固定ねじとの複合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
寛骨臼カップを通常のねじで固定することが、従来の技術において公知である。例えば、寛骨臼カップが、通常のスクリュードライバーを用いて締め付けて緩めるための締付駆動部を有する従来の海綿骨用の皿頭ねじを使用して固定される。
【0003】
その他の固定手段は、寛骨臼カップの凸面にわたって施された隆起多孔質構造を含む。当該構造は、骨内殖を可能にする。
【0004】
従来の海綿骨用ねじによる主な問題は、当該ねじの直近にある骨の骨吸収によって、当該ねじが、緩みやすくなるという事実にある。
【0005】
従来の海綿骨用ねじによる別の問題は、動的荷重の下での寛骨臼カップの運動によって引き起こされる微小動揺(マイクロモーション)である。この微小動揺は、ねじの緩みを起こさせ、その後に骨変形のきっかけになりうる。その結果、骨吸収が起こり、当該インプラントが緩む。
【0006】
また、従来の寛骨臼用の海綿骨ねじは、動的荷重の下での寛骨臼カップに対するねじ固定の剛性が不足し、寛骨臼カップと海綿骨ねじとの間の接点での微小動揺をもたらす。その結果、当該微小動揺は、擦過摩擦及び局部的摩擦をもたらす。さらに、金属の破片及び摩耗粒子が、その後に生成され、当該インプラントの周囲に局部肉芽腫が出来うる。
【0007】
骨固定ねじは、従来の扁平骨プレートと、発行された欧州特許出願公開第1800626号明細書に記載されているような寛骨臼カップと一緒に使用される。しかしながら、当該ねじの適切な寸法決めは、当該ねじの実現性における要素として従来は認識されていなかった。何故なら、当該ねじは、上記の新規の人工股関節の寛骨臼カップと一緒に使用されていなかったからである。
【0008】
したがって、従来の海綿骨ねじは、人工股関節全置換術中に骨盤に提供された寛骨臼の凹部内に信頼性のある寛骨臼固定手段を設けるにあたって上記問題に適切に対処することができなかった。
【0009】
この点で、本発明の寛骨臼結合用固定ねじは、従来の技術のねじの従来の寸法決めと大きく異なり、特に、本発明の、人工股関節の寛骨臼カップを固定することに関して、人工股関節全置換術中に骨盤に提供された寛骨臼の凹部内に信頼性のある寛骨臼固定手段を設ける目的のために主に開発された器具を提供する。
【0010】
当該従来の技術において存在する寛骨臼用の海綿骨ねじの従来の方式及びサイズに固有の上記の欠点を考慮して、本発明は、人工股関節全置換術中に骨盤に提供された寛骨臼の凹部内への螺入の際に、人工股関節の寛骨臼カップに確実に固定され得る海綿骨ねじを提供するために、新規の寛骨臼結合用固定ねじの構造及びサイズを提供する。特に、本発明の寛骨臼結合用固定ねじは、2011年9月15日付けで且つ発明の名称が「Interlocking Reverse Hip and Revision Prosthesis」である国際公開第2011−112353号パンフレットに記載された新規の人工股関節の寛骨臼カップと組み合わせて使用するために設計されている。この場合、適切に寸法決めされたねじを使用すると、従来の技術のねじより優れた利点が奏される。当該新規の人工股関節の寛骨臼カップは、
図3では斜視図で示されていて、
図4では断面図で示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1800626号明細書
【特許文献2】国際公開第2011−112353号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以下でさらに詳しく説明する本発明の課題は、適切に寸法決めされた寛骨臼結合用固定ねじを提供することと、及び、当該寛骨臼結合用固定ねじと、上記の新規の人工股関節の寛骨臼カップとの複合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するため、一般に、本発明は、寛骨臼カップのねじ穴内に確実に螺着される、特別に設計された海綿骨ねじから具現化される。当該ねじ穴の数は、通常は3つから7つの間で増減する。外科医が、当該カップを寛骨臼に固着するために1つ又は2つ以上のねじを使用すること選択できる。特に、当該寛骨臼結合用固定ねじは、上記の国際公開第2011−112353号パンフレットに記載された新規の人工股関節プロテーゼの寛骨臼カップのねじ山付きねじ穴内への螺入のために設計されている。骨盤の海綿骨内への最適な螺着を提供するため、当該ねじは、ねじ先端部から頭部までの当該ねじのシャンクの長さにわたって延在したコーススレッドを有する。当該ねじの端部に近接したねじ頭部が、テーパー加工されていて、且つ固着用の細目ねじ部を有する。当該ねじ頭部は、好ましくは12°のテーパー勾配を有し、そのテーパー角度は、10°から15°まで変更され得る。当該頭部は、海綿骨用のコーススレッドから当該ねじの端部の近くにかけて外側に向かってテーパー加工されている。その結果、当該頭部の端部の近くは、当該海綿骨用のコーススレッドに近い端部より大きい直径を有する。さらに、当該寛骨臼結合用固定ねじの端部に近接した頭部が、六角スクリュードライバーを用いて螺入するための六角溝を提供する。
【0014】
寛骨臼結合用固定ねじの頭部の細目ねじ部に螺合させるため、寛骨臼カップ内のねじ穴も、テーパー状にねじ山加工されている。人工股関節の寛骨臼カップの中心ステムが、穴あけ工具、ねじ及びスクリュードライバーの邪魔にならないように、当該寛骨臼カップのねじ穴も、特定の傾斜角度で穴あけ加工されている。また、本発明のこの特徴は、骨の穴あけ並びに当該ねじの螺入及び螺着を容易にする。
【0015】
以上により、本発明の詳細な説明が、より良好に理解され得るように、且つ、先行技術に対する現在の貢献が、より良好に認識され得るように、本発明の最も重要な特徴の要点を説明した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】人工股関節の寛骨臼カップの断面の一部を、当該カップに固着された寛骨臼結合用固定ねじの側面と一緒に示す。
【
図3】ねじ穴を有する、人工股関節の寛骨臼カップの斜視図である。
【
図4】2つの寛骨臼結合用固定ねじを有する寛骨臼カップの断面図である。一方のねじは、断面図で示されていて、他方のねじは、斜視図で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の添付図面は、寛骨臼結合用固定ねじ10を示す。当該ねじ10は、特別に設計され且つ所定のサイズの結合用の海綿骨ねじから成る。当該海綿骨ねじは、寛骨臼カップ9の、ねじ山付きで且つテーパー加工された寛骨臼用ねじ孔又は開口部1内に螺入されて固着される。当該ねじは、骨盤の海綿骨内に最適に螺着させるために、ねじ胴部の区間にわたってコーススレッド2を有し、且つ当該ねじ首下部に細目ねじ部3を有する。当該ねじ首下部は、好ましくは12°のテーパー勾配を成して切削加工されている。しかし、当該テーパー角度は、10°から15°まで変更され得る。また、寛骨臼結合用固定ねじ10の頭部8が、六角スクリュードライバー用の六角溝4を提供する。
【0018】
図4によれば、寛骨臼カップ9の中心ステム7が、穴あけ工具(つまり、ドリルガイド及び/又はドリルビット)の邪魔にならないように、寛骨臼カップ内の上記ねじ孔又は開口部が、特定の傾斜角度で穴あけ加工されている。
図4から分かるように、斜視図で示されているねじ10は、断面図で示されているねじ10と比べて、中心線A−Aに対して異なる角度を成す。さらに、これらのねじの中心軸に平行に、且つこれらのねじの頭部から離れるように延在する複数の破線から分かるように、ドリルガイド、ドリルビット、ねじ及びスクリュードライバーが、中心ステム7に触れず、当該ステムが、これらのねじの設置を邪魔しないように、当該複数のねじ孔の角度及び位置が選択されてある。したがって、穴が、ねじを収容するために寛骨臼の凹部内に穴あけ加工されるときに、ステム7が、ドリルガイド及び/又はドリルビットの邪魔にならない。そして、ねじ10が、その穴内に設置されるときに、ステム7が、当該ねじの設置を邪魔しない、又は当該ねじを締めるために使用されるスクリュードライバーの邪魔にならない。
【0019】
図3及び
図4によれば、及び、本明細書で引用された国際特許出願の国際公開第2011−112353号パンフレットで説明されているように、人工股関節の寛骨臼カップ9が、寛骨臼の凹部に対して確実に連結させるための凸状の外面を有する。また、当該カップ9は、凹面を有する。この凹面は、その一部として中心ステム7を有するか又はこの凹部に確実に取り付けられた中心ステム7を有する。この中心ステム7は、(本出願では、第1中心軸とも呼ばれる)中心軸A−Aを有し、当該ステム7の中心軸は、当該カップ9の中心軸に等しい。当該カップ9は、内面にねじ山付けされた少なくとも1つのねじ穴を有する。当該ねじ穴は、(本出願では、第2中心軸とも呼ばれる)中心軸と円周縁部とを伴う。この円周縁部から延在し、且つ当該ねじ穴の中心軸に平行に延在する複数の線が、当該中心ステムと交差しないように、当該ねじ山付きねじ穴は、或る角度を成して穴あけ加工されている。当該寛骨臼結合用固定ねじのテーパー加工された首下部と螺合するように、当該ねじ穴1は、そのテーパー勾配に沿ってスレッド5によってねじ山加工されている。さらに、患者の骨内への容易な螺入のため、寛骨臼結合用固定ねじの先端部が、部分6でセルフタップ加工されている。
【0020】
寛骨臼の凹部が、外科医によって提供された後に、寛骨臼カップ9が、適切な工具を使用して所定の位置で押し込められる。角度を正確にするためのドリルガイドを使用することで、ねじ穴が、適切な深さまで穴あけ加工される。次いで、従来の六角スクリュードライバーを使用することで、寛骨臼結合用固定ねじの細目ねじ部3が、当該ねじ用の、テーパー加工されたねじ開口部1と螺合されて固着されるまで、当該寛骨臼結合用固定ねじは螺入される。こうして、あたかも一体化しているかのように、当該寛骨臼結合用固定ねじは、寛骨臼カップ9に確実に固着される。その結果、当該ねじ10と当該カップ9との間のあらゆる移動が排除される。当該移動の排除は、当該ねじの微小動揺を排除し、ひいては骨変形を減少させる上で極めて重要な要素である。
【0021】
したがって、当該寛骨臼結合用固定ねじは、寛骨臼カップを確実に固定し、ねじ首下部の、寛骨臼カップ内へのあらゆる戻り回転を阻止する。当該ねじ首下部の戻り回転は、このねじ首下部と、本明細書で引用された上記国際特許出願に記載の、動いている大腿骨カップとの衝突を引き起こしうる。
【0022】
本発明の好適な実施の形態では、当該寛骨臼結合用固定ねじは、人工股関節の寛骨臼カップを用いる特定の用途のために所定のサイズに形成される。
図2によれば、当該ねじは、21〜31mmの全長aと、16〜26mmの海綿骨ねじのねじ部の長さbと、4〜5mmの細目ねじ部の長さcとを有する。当該海綿骨ねじの径dは、6〜7mmの直径であり、シャンク径eは、4〜5mmである。
【符号の説明】
【0023】
1 ねじ穴又は開口部
2 コーススレッド(並目ねじ部)
3 細目ねじ部
4 六角溝
5 スレッド
6 セルフタップ部
7 中心ステム
8 頭部
9 寛骨臼カップ
10 寛骨臼結合用固定ねじ