(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
触媒およびバイオマス出発材料が、質量に基づいて1:1から100:1の比率で供給される、または反応が25バール(2.5MPa)までの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
反応が、直接的触媒脱酸素化ならびに触媒的水素生成およびインサイチュ水素化脱酸素による間接的脱酸素化の一方または両方を介する、バイオマス出発材料からの酸素の選択的な除去を含む、請求項1に記載の方法。
熱分解生成物ストリームを分離器に移送すること、蒸気およびガス画分を熱分解生成物固体および触媒を含む固体画分から分離すること、触媒が還元状態に戻る条件に触媒を置き、触媒を再生すること、ならびに熱分解反応器に再生した触媒の少なくとも一部をリサイクルすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
バイオマス準備ユニットが、固体バイオマスを25mm以下のサイズに粒子化するように適合されている、または反応器が触媒とバイオマスを質量に基づいて1:1から100:1の比率で組み合わせるように適合されている、請求項21に記載の接触バイオマス熱分解システム。
【背景技術】
【0002】
減少する石油供給に由来する従来の燃料を補うまたは置き換えるために、再生可能資源、特に生物学的供給源(すなわち、いわゆる「バイオ燃料」)から形成される燃料が求められており、開発されている。現在、エタノールなどのバイオ燃料は主に穀物から製造されるが、大規模な未開発資源である植物バイオマスは、リグノセルロース系材料の形態で存在している。この未開発資源は、年間10億トンより多く包含すると推定される(U.S.Department of Energy(2011年)U.S.Billion−Ton Update:Biomass Supply for a Bioenergy and Bioproducts Industry,Perlack and Stokes、ORNL/TM−2011/224、Oak Ridge National Laboratory、Oak Ridge、TN227頁(http://www1.eere.energy.gov/biomass/pdfs/billion_ton_update.pdfにてオンラインで入手可能)を参照。)。昔からある方法は、その後エタノールに変換することができる糖に穀物のデンプン質を変換するために利用可能であるが、リグノセルロースからバイオ燃料への変換は、はるかに困難である。
【0003】
熱分解は、バイオマスから液体輸送燃料を製造するための熱化学処理の選択肢である。伝統的なバイオマスのフラッシュ熱分解方法は、およそ70%の液体生成物の収率を示した。しかし、追加のアップグレーディングまたは精製なしでのこの熱分解油生成物の使用は限定されている。現在、商業用バイオマス熱分解方法は、主に食品業界向けの汎用化学品を製造するために用いられている。未処理の熱分解油の燃料用途は、ボイラー、ディーゼルエンジンおよび(限定的な成功ではあるが)タービンにおける電力生産について実証されている。
【0004】
バイオマス熱分解は、熱分解温度および滞留時間に応じて、固体、液体およびガス状生成物の混合物を生成するための、添加される酸素の非存在下、適度な温度でのバイオマスの熱解重合である。35%までの炭の収率が、低温、高圧および長い滞留時間での遅い熱分解で達成され得る。フラッシュ熱分解は、バイオ原油またはバイオオイルとして知られている油などの液体生成物を最適化するために使用される。高加熱速度および短い滞留時間は、重量基準で約70%までの効率で液体生成物の収率を最適化するために、蒸気クラッキングを最小限に抑えながら、急速なバイオマス熱分解を可能にする。
【0005】
バイオオイルは、フル生産に先立つ供給源の時点または液体生成物の形成後のいずれかでアップグレードすることができる。現在までのところ、生成後のアップグレーディングにおいて最も一般的な2つの方法は、伝統的な炭化水素処理を適合させたものである。これらの方法は、高圧水素および水素化脱硫(HDS)触媒の存在下での固体酸触媒上でのバイオオイルのクラッキングおよび水素化処理である。これらの方法の両方が、酸素含有量を望ましいレベルに減少させる可能性を有しているが、クラッキングと水素化処理の両方が、水素(H
2Oなど)および炭素(CO
2またはCOなど)の損失を伴うという点に留意すべきである。
【0006】
水素化脱酸素(HDO)は、高温(200から450℃)で、典型的なHDO触媒、最も一般的にCoMoまたはNiMo硫化物触媒の存在下で行われる。水素化処理中の水などの水素の損失は、バイオオイルの水素含有量を有意に低下させる。これを相殺するために、水素は、典型的には、高圧(例えば、3から12MPa)で工程中に外部から添加される。その結果、外的な水素需要は高く、例えば、バイオマス1トン当たり41kg程度であると計算できる。水素はコストをかけて工程に添加されるので、このような高い水素需要はHDOを不経済にする。HDOは、概念的に以下の通り特徴付けることができる。
C
6H
8O
4+6H
2 → 6CH
2+4H
2O
C
6H
8O
4+4.5H
2 → 6CH
1.5+4H
2O
【0007】
バイオオイルにおけるクラッキング反応は、酸触媒を用いて大気圧下で生じ得る。接触クラッキングにおいて、脱酸素化は、脱水、脱炭酸および脱カルボニル反応の1つ以上の結果として起こり得る。脱炭酸は、具体的には、水素対炭素(H/C)比の増加をもたらし、それによって発熱量またはエネルギー密度を増加させる。脱水および脱炭酸反応は、反応温度を変更することによって制御することができる。一般に、より低い温度は脱水反応に有利に働くのに対して、より高い温度は脱炭酸反応に有利に働く。
【0008】
ゼオライト(例えば、H−ZSM−5および超安定Y型ゼオライト)、MCM−41およびAl−MCM−41のようなメソポーラス材料、ならびにヘテロポリ酸(HPAs)を含む多くの触媒が、熱分解油の接触クラッキングのために利用されている。ヘテロポリ酸に関連した主な欠点は、極性溶媒にかなり可溶性であり、構造的完全性を失うことによって、より高い温度で活性を失うことである。バイオオイル(フェノール類、アルデヒド類およびカルボン酸類)の主要な成分は、ZSM−5上で低い反応性を有し、コークスを生成する熱分解を受ける。
【0009】
ゼオライト触媒はまた、バイオオイル中に存在する大きな有機分子の分解からのコークスの形成により迅速に失活する。これは、孔を塞ぎ、利用可能な触媒部位の数を減少させる。バイオオイル中の大量の水蒸気もまた、表面積の喪失および不可逆的失活を引き起こすゼオライト材料の脱アルミニウムにつながる。比較して、接触クラッキングは、酸素化原料をより軽い画分に変換するより安価な経路とみなされる。しかし、この方法は、より高いコークス形成(約8〜25重量%)をもたらす。石油原料のアップグレードとは異なり、伝統的な触媒を用いて、高酸素含有量(乾燥量基準で、すなわち、存在し得る任意の水由来の酸素を排除して、約35〜50重量%)のバイオ原油を好適な品質のバイオ燃料にアップグレードすることは、水素および炭素の有意な重量損失、従って変換効率の低下をもたらす。これらの工程の間に、未加工のバイオオイル中に存在する炭素のほんの一部だけがアップグレードされたバイオオイルになる。急速熱分解バイオオイルをアップグレードする場合、酸化炭素への損失、触媒上の炭素の堆積およびシステム汚損は最終生成物へのバイオマス炭素変換を顕著に減少させる。
【0010】
石油原料の方法と同様に、コークスの堆積および触媒安定性などの重要な問題は、従来の触媒上でのバイオマス処理またはバイオ原油アップグレーディングに依然として残っている。いくつかの場合において、従来の触媒は、バイオ原油またはバイオマス処理にもはや適していない場合がある。例えば、初期バイオマス原料中の低硫黄含有量に起因し、油精製において水素化処理のために広く使用される従来の硫化CoMo HDS触媒は、バイオ原油の水素化処理には適していない可能性がある。低硫黄環境は、硫化CoまたはNi触媒から金属状態への還元、続いて急速なコークスの堆積および触媒失活を引き起こすことがある。しかし、触媒活性を維持するために原料に硫黄供与化合物を添加する必要があることは、方法を複雑にし、潜在的に燃料生成物に硫黄を添加し得る。コーキングのために急速な失活を受ける傾向があるゼオライトおよび担持金属酸化物(Al
2O
3)のような酸性触媒の上でのクラッキングは、軽質炭化水素の比較的高い収率をもたらす。したがって、コークス形成に抵抗するための良好な安定性、およびバイオオイル形成に対するより高い選択性を有する改良されたまたは新規な触媒が、バイオマスからバイオオイルへの変換のために必要とされる。
【0011】
外部から水素が供給されなかった場合、酸素(HDOおよび酸触媒上でのクラッキングの主生成物)の除去を達成するために急速熱分解バイオオイルの脱水を用いることは、バイオオイル中の水素の80%超を必要とする。その結果、水としての水素の損失を補うために、したがってH/C比を1.9から2.4の範囲の値に高めるために、有意な量の水素の投入が必要とされる。例えば、バイオマス1トン当たり75から98ガロンのバイオ燃料という理論収量を得るために、バイオマス1トンに約20から45kgの水素が必要とされる。多くの分析は、水素化処理を介したバイオ原油のアップグレーディングは、水素需要が高いため経済的に魅力的でないことを明らかにしている。また、同様の問題が酸触媒上での従来のクラッキングを介したバイオ原油のアップグレーディングにも生じることが見られる。したがって、水素化処理およびクラッキングなどの従来の方法論では、バイオマスからアップグレードされたバイオオイルへの変換中に、より高い効率が達成されることはない。高い変換効率を達成するために、最小の水素および炭素の損失でバイオマスを選択的に脱酸素化する接触バイオマス熱分解方法は、有利であり得る。このように、バイオマスから高価値の商品および/またはそのための安定した中間体へ変換するための有用な方法に対する必要性が当該技術分野において依然として存在する。
【0012】
最近の研究は、凝縮されたバイオオイルをガソリン範囲の炭化水素に触媒的にアップグレードする可能性を詳述している。例えば、T.Markerらの米国特許出願公開第2009/7578927号は、未加工のバイオオイルをガソリンおよびディーゼルにアップグレードするために二段階の水素化処理プロセスを開発するためのNational Renewable Energy Laboratory(NREL)およびPacific Northwest National Laboratory(PNNL)との連携について記載している。この研究は、全バイオオイルの熱分解リグニン画分を分離すること、この画分を植物油および遊離脂肪酸とブレンドしてスラリーを形成すること、ならびにニッケル触媒とともに水素化処理反応器/プロセスにスラリーを注入することに焦点を当てた。
【0013】
プロセスの別の選択肢は、アップグレーディング工程の効率を改善するためにバイオ原油中間体の組成を触媒的に変更するための接触バイオマス熱分解である。例えば、P.O’Connerらの米国特許出願公開第2010/0105970号は、3ライザーFCC型プロセスにおける接触熱分解について記載している。該プロセスは、第1に、前処理工程において塩基触媒をバイオマスと混合すること、および200から350℃の温度で反応させることから構成された。第2工程は、第1工程からの生成物が固体酸触媒とともに反応器に添加された350から400℃での酸触媒クラッキングおよび脱酸素化から構成された。該プロセスはさらに、800℃までの温度で作動する再生器を使用して触媒上のコークス堆積物を燃焼し、プロセスに熱を提供した。
【0014】
G.Huberの米国特許出願公開第2009/0227823号は、金属で促進されていないまたは促進されたゼオライトを用いた接触熱分解について記載した。熱分解は、高度に芳香族の生成物を生成するために、500から600℃の温度および1から4気圧(約101から405キロパスカル)の圧力で行われた。
【0015】
F.Agblevorの国際公開第2009/018531号は、バイオマスのセルロースおよびヘミセルロース画分を軽ガスに選択的に変換し、熱分解リグニンを残すための接触熱分解の使用について記載した。方法は、流動床反応器内でH−ZSM−5および硫酸化ジルコニア触媒を用いて、18〜21%のバイオオイル全収率を得た。
【発明の概要】
【0018】
(開示の要旨)
本開示は、炭化水素に富むと同時に酸素含有量が低い液体バイオオイル熱分解生成物を形成するために有益な接触バイオマス熱分解方法を提供する。低酸素含有量は、それが公知の熱分解反応からのバイオオイル生成物よりも熱的に安定である点においてバイオオイルを特に有益にする。同様に、本開示に従って製造された低酸素含有量のバイオオイルは、穏やかな水素化処理による脱酸素化または安定化などの中間工程を必要とせずにバイオ燃料を製造するための精製にすぐに供されてもよい。さらに、本開示に従って製造されたバイオオイルは、石油ストリームとブレンドすることができるため、石油に共通する精製または他のプロセス、ならびに使用に供することができる。またさらに、接触熱分解方法はバイオ燃料製造のための公知の統合熱分解方法と比較して炭素変換効率を向上させるため、本発明の方法は有用である。特に、酸素を除去するための典型的な熱分解後の処理はまた、炭素の一部(すなわち、コークス堆積物、COまたはCO
2の形態で)を除去し、本開示の主題はこの問題を克服する。したがって、熱分解生成物は、精製の準備ができている安定した中間形であり、バイオマス出発材料中にもともと存在する高い割合の炭素を維持する。これは、熱分解反応において使用されるバイオマスの量に対して、より多くの含有量の有用なバイオオイルが生成される、より効率的な熱分解方法と相関がある。ある実施形態において、反応は、直接的接触脱酸素化と、触媒的水素生成およびインサイチュ水素化脱酸素による間接的脱酸素化の一方または両方を介して、バイオマス出発材料からの酸素の選択的な除去を可能にすることができる。
【0019】
一実施形態において、したがって、本開示は、触媒の存在下、熱分解条件下でバイオマス出発材料を反応させて熱分解生成物を含むストリームを形成することを含む接触バイオマス熱分解方法を提供する。ストリームは、固体成分または画分(すなわち、触媒および任意の熱分解生成物固体、例えばチャーを含む)と、蒸気(凝縮性)およびガス(非凝縮性)成分または画分に分割することができる。特定の実施形態において、熱分解生成物の蒸気およびガス画分は、(乾燥重量基準で)約20重量%以下の酸素含有量を有し、好ましくは約10重量%以下である。蒸気およびガス画分の少なくとも一部は、凝縮されてバイオオイルを形成することができるので、本方法から形成されたバイオオイルも同様に、乾燥重量基準で約20重量%以下の酸素含有量を有し、好ましくは約10重量%以下であることができる。
【0020】
開示された主題は、多種多様な出発材料を熱分解方法における原料として使用することができるという点で有益である。特に、任意の種類のバイオマスを使用することができる。特定の実施形態において、接触熱分解方法において使用されるバイオマス出発材料は、リグノセルロース系材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、バイオマス出発材料は、粒子化(particularize)されたものとして特徴付けることができ、約25mm以下の平均粒径を有することができる。特定の実施形態において、バイオマス出発材料は、約0.1mmから約25mmの平均粒径を有することができる。
【0021】
本発明の方法はまた、実際の熱分解工程における触媒の使用によって定義することができる。言い換えれば、使用される触媒材料は、熱分解反応器中でバイオマス出発材料と組み合わせられる。好ましくは、触媒は、反応生成物からの触媒の分離に先立って熱分解生成物の脱酸素化を促進する材料である。したがって、触媒は酸素除去剤として定義することができる。このような脱酸素化は特に、熱分解条件下の反応器中で行うことができる。特定の実施形態において、触媒は酸化鉄材料を含むことができる。さらに、触媒は二官能性触媒などの混合金属酸化物であることができる。好ましくは、二官能性触媒は、バイオマス熱分解中に形成された任意の水蒸気を水素に変換し、水素化脱酸素のための反応環境を提供するのに有用であり、また炭素を除去することなくバイオマス熱分解蒸気から酸素を除去するのに有用である材料であることができる。
【0022】
ある実施形態において、触媒は酸化鉄と酸化スズの混合物を含むことができる。触媒は、酸化鉄と金属酸化物促進剤の混合物を含むものとして定義することができる。例えば、促進剤は、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化モリブデンおよびそれらの組合せからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、触媒は二官能性触媒であると定義することができる。さらに、触媒は可変原子価状態の担持金属または還元金属酸化物触媒を含むことができる。好ましくは、触媒は再生可能であり、バイオマス中に存在するまたは熱分解方法において形成された灰分に対して非感受性である。
【0023】
本方法は、バイオマスが触媒の存在下で熱分解条件に供される反応器中に、バイオマス出発材料を供給することを含むことができる。バイオマス出発材料は、(熱伝達媒体の特性をもたらすことができる)触媒と予備混合されることなく反応器中に供給することができる。他の非触媒熱伝達媒体、例えば、アルミナ、シリカ、かんらん石および砂を使用することもできる。
【0024】
接触バイオマス熱分解反応は、様々な異なる種類の反応器において行うことができる。好ましくは、反応器は流動床または輸送反応器(transport reactor)などの流動式反応器である。一実施形態において、ライザー反応器を使用することができる。バイオマス出発材料は、規定速度、例えば、滞留時間が約5秒以下など規定時間未満であるような速度で反応器を介して輸送することができる。
【0025】
好ましくは、使用される反応器は、本明細書に記載されている有益な特性を有する反応生成物を形成するために必要な熱分解条件、例えば、低酸素含有量および高炭素変換効率を達成することができるものである。具体的には、上述したように、バイオマスおよび反応器中の触媒の比較的短い滞留時間に適合させた反応器を使用することが有益であり得る。考慮すべき別の熱分解条件は、反応温度である。特定の実施形態において、触媒の存在下でのバイオマスの反応は、約200℃から約700℃の温度または約550℃以下の温度で行うことができる。他の実施形態において、バイオマスの反応は、約25バール(2.5MPa)までの圧力で行うことができる。いくつかの実施形態において、反応は、周囲圧力から周囲圧力付近で行うことができる。またさらに、反応器中でバイオマスと触媒を特定の質量比で組み合わせることは有用であり得る。いくつかの実施形態において、触媒およびバイオマスは、約1:1から約100:1の質量比で供給することができる。
【0026】
上述したように、本開示の熱分解方法は、熱分解生成物を2つ以上の異なる画分に分離することを含むことができる。これは、熱分解生成物を含むストリームを分離器に移送することを含むことができる。いくつかの実施形態において、ストリームは、蒸気およびガス画分と、固体反応生成物および触媒を含む固体画分とに分離することができる。本発明の方法はまた、熱分解工程に触媒を再生およびリサイクルすることを含むことができる。いくつかの実施形態において、これはまた、反応器への再導入に先立って還元ゾーンを介して分離器から触媒を移送することを含むことができる。
【0027】
他の実施形態において、本開示はさらに、接触バイオマス熱分解システムを提供することができる。特定の実施形態において、このようなシステムは、以下を備えることができる:熱分解条件下でバイオマスを触媒と組み合わせて熱分解反応ストリームを形成するように適合させた反応器;反応器と流体接続し、熱分解反応ストリームからの固体画分を含む第1のストリームおよび熱分解反応ストリームからの蒸気画分を含む第2のストリームを形成するように適合させた分離ユニット;分離ユニットと流体接続し、第2のストリームのガス成分とは別の第2のストリーム中の蒸気からバイオ原油を凝縮するように適合させた凝縮器ユニット;場合によって、凝縮器ユニットと流体接続し、水などの液体をバイオ原油から分離するように適合させた液体分離器ユニット;分離ユニットと流体接続し、第1のストリーム中に存在する固体触媒から非触媒固体を除去するように適合させた触媒再生ユニット;触媒再生ユニットと流体接続し、触媒再生ユニットから受け取った酸化触媒を還元するように適合させた還元ユニット;および還元ユニットから反応器に還元触媒を送達するように適合させた触媒送達ストリーム。
【0028】
システムは、触媒再生ユニットと流体接続し、触媒再生ユニットに酸化剤を送達するように適合させた酸化剤ストリームを備えることができる。凝縮器ユニットは、ガス流ストリームを介して還元ユニットと流体接続し、第2のストリームのガス成分の一部を還元ユニットに送達するように適合させることができる。接触バイオマス熱分解システムは、凝縮器ユニットと還元ユニットの間に介在し、それらと流体接続している送風機ユニットを備えることができる。接触バイオマス熱分解システムは、反応器と流体接続し、反応器にバイオマスを移送するように適合させたバイオマス準備ユニットを備えることができる。バイオマス準備ユニットは、固体バイオマスを約25mm以下のサイズに粒子化するように適合させることができる。接触バイオマス熱分解システムの反応器は、質量に基づいて約1:1から約100:1の比率で触媒とバイオマスを組み合わせるように適合させることができる。反応器は、輸送反応器であってもよい。反応器は、反応器を通るバイオマスの流れが約5秒以下の滞留時間を有するように適合させることができる。反応器は、約200℃から約700℃の温度または約550℃以下の温度で機能するように適合させることができる。反応器は、約25バール(2.5MPa)までの圧力で機能するように適合させることができる。
【0029】
開示された主題についてこのように一般的に説明したが、次に一定の縮尺率で描かれていないが、添付図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
開示された主題は、様々な実施形態を参照することによって以下でより完全に説明する。これらの実施例は、この開示が詳細で完全であり、主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。実際、開示された主題は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に述べられた実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。本明細書で使用する単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0032】
本開示は、バイオマス出発材料からバイオオイル材料を生成する方法を提供する。ある実施形態において、前記の方法は、バイオマス出発材料からバイオオイルを含むことができる熱分解生成物へと変換するのに十分な熱分解条件下、触媒の存在下でバイオマス出発材料を反応させることを含むことができる。熱分解生成物は、具体的には、固体画分および凝縮性蒸気画分、ならびに周囲条件で凝縮しないガスの画分を含むことができる。
【0033】
本開示は、高活性で選択的な触媒は、バイオマスの熱解重合を操作するのに有効であり、液体バイオオイルの収率を最大化しながらチャーおよび軽ガスの生成を最小限に抑えるという認識から生じる。いくつかの実施形態において、開示された主題は、連続的な再生によって触媒活性を維持するためにプロセス統合を最適化しながら、液体バイオオイルの最大収量のための短い滞留時間(例えば、約0.5から約2秒)および高い熱伝達率を達成することができる強固で統合された方法を提供する。この組合せは、既存のインフラストラクチャーにおいて容易に燃料へアップグレードすることができる凝縮された炭化水素液体(バイオ原油)を生成することができる。
【0034】
開示された方法はまた、熱分解中に選択的に酸素を抽出し、部分的に金属酸化物などの固体中の酸素を固定する能力によって定義することができる。これは、H
2Oおよび炭素酸化物(CO、CO
2)などの従来の酸素除去とは対照的であり、したがって高炭素効率を維持する。方法はまた、熱クラッキングを最小限に抑える低温熱分解を促進するために、現在の触媒に比べて高い触媒活性を提供することができる。またさらに、方法は、炭化水素縮合反応を促進することができる多機能触媒を利用することができる。ある実施形態において、高速流動床または輸送反応器の設計を用いて、熱暴露を制限し、しかも蒸気/触媒の接触時間を最大にするために十分な滞留時間を提供することができる。
【0035】
用語「バイオオイル」および「バイオ原油」は、互換的に使用することができ、熱分解反応から得られた周囲条件で液体である反応生成物の画分を意味することが意図される。液相生成物は、親水性相化合物、疎水性相化合物または親水性相化合物と疎水性相化合物の混合物を含んでもよい。ある実施形態において、バイオオイルは、バイオオイルが既存の石油精製において伝統的な原油と共に処理するのに適するような化合物または化合物の混合物を含む。このように、バイオオイルは好ましくは、バイオオイルをバイオ燃料(バイオディーゼル、バイオガソリン、バイオジェット燃料など)に変換する蒸留および/または触媒処理などのさらなる反応を受けるのに適するような化合物または化合物の混合物を含む。
【0036】
バイオオイルは、多数の異なる化合物を含むものとして認識されている。表1は、約500℃の温度での2種類の木材の、典型的な非触媒急速熱分解から生じる組成物を提供する(Piskorz,J.ら、1988年、In Pyrolysis Oils from Biomass、Soltes,E.J.およびMilne,T.A.編、ACS Symposium Series 376より)。
【0037】
【表1】
当技術分野で認識された典型的な非触媒急速熱分解反応から誘導されたバイオオイルの約35〜40重量%は、酸素を含有する水溶性材料である。本明細書に開示されている主題は、酸素含有量が有意により低く、バイオ燃料を形成するための精製にはるかに適している熱分解反応生成物としてのバイオオイルを提供する能力のために、当技術分野に明らかな改善をもたらす。
【0038】
本明細書に開示されている主題において使用されるバイオマス出発材料は、多種多様な生物資源を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態において、用語バイオマスは、Energy Policy Act of 2005に記載された意味を持つことができる。したがって、用語「バイオマス」は、以下を意味することができる:他の廃棄物から分離され、Administrator of the Environmental Protection Agencyによって無害であると決定されている任意のリグニン廃棄物、ならびに以下に由来する任意の固体で無害のセルロース系材料−(A)任意の以下の森林関連資源:ミル残渣、市販前の間伐、切り枝およびそだ、もしくは市販できない材料;(B)廃物のパレット、クレート、ダンネージ、製造業および建設木材廃棄物(加圧処理された、化学処理されたもしくは塗装木材廃棄物以外)ならびに景観または道路用地伐採材を含むが、一般廃棄物(ごみ)、固形廃棄物の生分解から誘導されるガスもしくは一般にリサイクルされる紙を含まない固形木材廃棄物;(C)果樹園の木の作物、ブドウ園、穀物、豆類、糖および他の作物の副産物もしくは残渣、ならびに畜産廃棄物の栄養素を含む農業廃棄物;または(D)電気の生産のための燃料としてのみ成長させた植物。エネルギー生産のための燃料として有用な代表的な植物としては、スイッチグラス、ススキ、エネルギーケーン、モロコシ、ヤナギ、ポプラおよびユーカリが挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、バイオマス出発材料は、セルロース系および/またはリグノセルロース材料の少なくとも一部を含む任意の材料であることができる。セルロースは、1,4結合グルコース単位から形成される多糖類であり、植物において見出される主要な構造成分である。セルロースは地球上で最も豊富な有機化学物質であり、材料の生物圏での年間推定生産は約90×10
9メートルトンである。リグニンは、最も一般的に木に由来し、植物の細胞壁の一体部分である化合物である。それは、ヒドロキシル基およびメトキシル基で三または四置換されたフェニルプロパン単位を含む三次元非晶質天然ポリマーである。リグニンは、木材の乾燥質量の約4分の1から3分の1を占め、一般に、定義された一次構造を欠いている。リグノセルロースは、主にセルロース、リグニンおよびヘミセルロースの組合せである。
【0040】
バイオマス出発材料は、特に多種多様なセルロース系およびリグノセルロース系を含んでもよい。例えば、バイオマスは、草本源と木質源の両方に由来することができる。本発明による有用な草本バイオマス源の非限定的な例としては、木材(硬材および/または軟材)、タバコ、トウモロコシ、トウモロコシ残渣、トウモロコシの穂軸、トウモロコシの皮、サトウキビバガス、ヒマシ油植物、ナタネ植物、ダイズ植物、穀類のわら、穀物加工副産物、竹、竹パルプ、竹のおがくず、ならびにスイッチグラス、ススキおよびクサヨシなどのエネルギー草が挙げられる。またさらに、有用なバイオマスは、コーンストーバー、稲わら、製紙スラッジおよび古紙などの「廃棄物」材料を含んでもよい。バイオマスはまた、様々なグレードの紙およびパルプ(様々な量のリグニンを含む再生紙、再生パルプ、漂白紙またはパルプ、半漂白紙またはパルプ、および無漂白紙またはパルプを含む)を含むことができる。
【0041】
接触バイオマス熱分解方法において、バイオマスの準備はバイオマスの粉砕および乾燥を含むことができる。このように、バイオマスは、バイオマスの自然な状態であってもよく、またはバイオマス材料が粒子化された形態に変換される処理工程から生じてもよい、粒子化されたものとして特徴付けることができる。理想的には、反応器に導入されるバイオマスのサイズは、熱伝達率がバイオオイルの生成を最大にするために十分に高いものであるようにすることができる。粉砕とバイオオイル収率のコストは、好ましくはバランスが取れている。本方法のある実施形態において、バイオマス粒子は、約25mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約5mm以下、約2mm以下または約1mm以下の平均サイズを有することができる。特定の実施形態において、平均粒径は約0.1mmから約25mm、約0.1mmから約20mm、約0.1mmから約10mm、約0.1mmから約5mmまたは約0.1mmから約2mmとすることができる。
【0042】
バイオマスの水分含有量は、好ましくは0重量%にできるだけ近い。場合によっては、これは法外な費用がかかることがある。バイオマスの水分含有量は、投入バイオマスの水分含有量を約15重量%以下、約10重量%、約7重量%または約5重量%以下に維持するために熱源を統合することによって、プロセスの外部または内部で調整することができる。
【0043】
バイオマス熱分解は様々な段階において化合物のカクテルを形成することができ、熱分解生成物は300以上の化合物を含有することができる。バイオマスの熱分解のための従来の方法において、出発材料は、典型的には、添加される酸素の非存在下で加熱されて、熱分解温度および滞留時間に応じて固体、液体およびガス状生成物の混合物を生成する。バイオマスが低温で長時間加熱される場合(すなわち、「遅い熱分解」)、木炭が支配的な生成物である。バイオマスが約700℃を超える温度で加熱される場合、ガスは生成物の80重量%までである。「急速熱分解」または「フラッシュ熱分解」の公知の方法において、バイオマスは、短い滞留時間で400℃から650℃の範囲の温度に急速に加熱され、このような方法は一般に、ドライフィード基準で75重量%までの有機液体である生成物をもたらす。フラッシュ熱分解の公知の方法は、様々な原料からバイオオイルを生成することができるが、これらの油は典型的には、(表1で上記に示すように)酸性であり、化学的に不安定で、アップグレーディングを必要とする。
【0044】
本開示は、特定の触媒および特定の反応条件を利用して、伝統的な急速熱分解方法と比較してより低い酸素含有量を有する反応生成物を形成するバイオマス熱分解のための改良された方法を提供する。具体的には、公知の急速熱分解法における反応生成物は、典型的には、35重量%から50重量%の酸素(すなわち、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、糖類および他のオキシ化合物などの含酸素物質)を含む。公知の急速熱分解法からの反応生成物の高酸素含有量は、反応生成物の低い安定性の一因となる可能性があり、反応生成物から典型的には非酸素化の脂肪族化合物と芳香族化合物の混合物で形成される有用な燃料への変換を複雑にする可能性がある。したがって、(例えば、本発明による)酸素含有量が低減された反応生成物を生成する熱分解方法は、反応生成物からバイオ燃料へのより容易な変換を可能にする。
【0045】
本明細書に開示されている主題は、特に、低酸素含有量を有する反応生成物の形成をもたらす条件(本明細書に記載されているような触媒の存在、本明細書に記載されている範囲内の反応温度の使用および/または本明細書に記載されているような反応滞留時間の維持など)下で行われる反応によって定義することができる。特定の実施形態において、反応生成物の酸素含有量は、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下または約5重量%以下であることができる。さらなる実施形態において、反応生成物の酸素含有量は、約1重量%から約25重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、約1重量%から約10重量%、約2重量%から約10重量%または約5重量%から約10重量%であることができる。上記の値は、乾燥重量基準である。いくつかの実施形態において、酸素含有量に関連した反応生成物は、反応器を出る非固体画分全体を含むことができる。したがって、開示された主題は、上述のような酸素含有量を有する非固体反応生成物画分を提供することができる。開示された主題はまた、上述のような酸素含有量を有する反応生成物の蒸気およびガス画分を提供することができる。特定の実施形態において、酸素含有量に関連した反応生成物は、反応器を出る反応生成物全体から単離されるバイオオイルを含むことができる。開示された主題は、上述のような酸素含有量を有する反応生成物のバイオオイル画分を提供することができる。
【0046】
本明細書に開示されている主題はまた、熱分解生成物が、炭素変換効率を低下させる可能性がある追加の処理をそれほど必要としないため有益である。例えば、公知の熱分解法において反応生成物から酸素を除去する場合、典型的には、バイオ燃料に変換できるバイオオイルの全体的な炭素含有量を減少させる二酸化炭素または一酸化炭素の生成をもたらす触媒または非触媒法が用いられる。炭素変換効率は、以下の式によって定義されるように、バイオマス出発材料中の炭素の量と比較した単離されたバイオオイル中の炭素の量として記載することができる。
【0047】
【数1】
この計算は、本開示の潜在的なプロセス構成において電力、熱または水素を生成するための原料として使用され得る追加の供給源からの炭素を含まない。還元炭素含有量は、熱分解生成物から形成することができるバイオ燃料の総量の減少につながる。本開示の接触熱分解方法は、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上または約70%以上の炭素変換効率によって定義することができる。
【0048】
本明細書においてより完全に記載されているように、本開示の接触熱分解方法は、熱分解反応中の酸素除去を達成し、反応生成物は、全体的に減少した酸素含有量を有する。このような接触熱分解方法は、改良された特性(限定されるものではないが、より低い酸素含有量、より低い酸性度、改善された熱安定性およびより低い水分含有量を含む)によって定義される結果として生じるバイオオイルを依然として提供しながら、急速熱分解方法によって達成可能な炭素変換効率より低い炭素変換効率を示す場合がある。このような改良された特性は下流処理に良い影響を及ぼし、バイオオイルのアップグレーディングからの最終生成物の収率を有意に高めることができる。
【0049】
ある実施形態において、本開示の接触熱分解方法は、触媒の存在下、熱分解条件下でバイオマス出発材料を反応させて、熱分解生成物画分および触媒画分を含むストリームを形成することを含むことができる。特に、熱分解生成物画分(またはそれらのさらなる画分)は、上述したように、好ましくは一定量未満である酸素含有量を有することができる。これは反応の特に有益な態様である。なぜなら、生成物の低酸素含有量は、反応生成物のバイオオイルとしての有用性を増大させる、すなわち、より高い割合の反応生成物がバイオオイルとして有用である形態であるからである。
【0050】
図1は、本開示の一実施形態による接触バイオマス熱分解方法100のブロックフロー図を示す。ここに示すように、バイオマス準備ユニット110は、熱分解方法のために未加工のバイオマスを準備するために適合させることができ、本明細書において他に記載されている仕様に合わせて未加工のバイオマスを粉砕し乾燥することを含む。次いで、準備されたバイオマスは、熱分解反応を行うことができる接触バイオマス熱分解ユニット120にストリーム115として送達することができる。次に、熱分解生成物はストリーム125として固体/液体分離ユニット130に送達することができ、そこで、熱分解蒸気(もし存在する場合、液体画分を含む)はストリーム135として分離され、蒸気凝縮/液体収集ユニット140に送られ、固体(触媒および固形バイオマス画分を含む)はストリーム137として触媒再生ユニット150に送られる。触媒再生ユニットにおいて、バイオマス固体(例えば灰分)はストリーム155として回収することができ、触媒はストリーム157として還元ユニット160に送って、再生触媒ストリーム165として接触バイオマス熱分解ユニットに再導入するために触媒を調製することができる。排気ストリーム159も同様に回収することができ、主にCO
2を含むことができる。蒸気凝縮/液体収集ユニット140において、液体バイオオイルが形成され、ストリーム177としての水および他の液体成分からストリーム175としてバイオオイル生成物を分離するための液体分離器170にストリーム145として送られる。場合によって、水素に富むテールガスは、ストリーム147として蒸気凝縮/液体収集ユニット140から回収し、触媒還元剤および/またはキャリアガスとして使用することができる。このようなテールガスは、触媒還元ユニット160、または触媒還元ユニット160に入る還元ガスストリーム163に直接導入されてもよい。
【0051】
典型的な急速熱分解を行うために有用な任意の種類の反応器を本発明に従って使用することができる。優先的に、反応器は本明細書で論じた特性を有する触媒の使用に適合可能であるものである。本発明のいくつかの実施形態において使用することができる反応器の非限定的な例としては、気泡流動床反応器、循環流動床/輸送反応器、回転円錐熱分解器、アブレーション熱分解器、真空熱分解反応器およびオーガ反応器が挙げられる。
【0052】
図2は、本明細書に記載されている方法を実行するために使用することができる一実施形態による接触バイオマス熱分解輸送反応器システムの図を示す。図に示すように、準備されたバイオマスはストリーム115中で反応器に送達され、場合によってキャリアガスと混合される。具体的には、バイオマスは、反応器のライザーセクションを介して輸送され、そこからバイオマス熱分解ユニット120(例示された実施形態においてはライザー反応器)の混合ゾーンに入る。本発明によるキャリアガスとして有用な材料の一例は窒素ガスである。キャリアガスは、ライザーセクションにおいてバイオマスが約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下、約2秒以下または約1秒以下の滞留時間を有するように、反応器の直径に対して十分な速度で供給されてもよい。
【0053】
ライザー反応器に入るバイオマスは、所望の熱分解条件(温度、滞留時間およびバイオマスに対する触媒の比など)下で触媒と接触する。いくつかの実施形態において、熱分解温度は、約200℃から約900℃、約200℃から約700℃、約200℃から約600℃、約200℃から約550℃、約250℃から約500℃または約300℃から約500℃の範囲とすることができる。特定の実施形態において、より低い温度範囲は、クラッキングなどの望ましくない熱効果を最小限にするために有益であり得るし、特定の触媒の使用は、このような実施形態において有益であり得る。例えば、触媒の存在下でのバイオマスの反応は、約600℃以下、約550℃以下または約500℃以下の温度で行うことができる。反応器中の滞留時間は、上述のようにでき、具体的には、約0.5秒から約5秒、約0.5秒から約4秒、約0.5秒から約3秒または約0.5秒から約2秒とすることができる。
【0054】
特定の実施形態において、熱分解反応は、周囲圧力で行うことができる。他の実施形態において、反応は、約35バール(3.5MPa)までの圧力などの加圧下で行うことができる。他の実施形態において、反応圧力は、ほぼ周囲圧力から約25バール(2.5MPa)、ほぼ周囲圧力から約20バール(2MPa)またはほぼ周囲圧力から約10バール(1MPa)とすることができる。
【0055】
特定の触媒系の組合せおよび所望の熱分解条件は、連続的な再生によって触媒活性を維持するためにプロセス統合を最適化しながら、本明細書に記載されている短い滞留時間および液体バイオオイルの収率を最大にするために必要な高い熱伝達率を達成する強固で統合された方法を提供するように適合されている。本明細書で使用される触媒は、バイオマスの熱分解中に酸素を選択的に抽出するのに有用な任意の触媒であってもよい。例えば、触媒は、流動システムから酸素を除去し、金属酸化物などの酸素を固定するのに有用な金属元素または化合物を含んでもよい。これは、酸素除去のための従来の方法(すなわち、H
2O、COおよびCO
2などとしての除去)とは対照的であり、したがって、本発明は高炭素効率を維持することを可能にする。本発明の触媒はまた、好ましくは、反応生成物の熱クラッキングを最小限に抑えることができる低温熱分解を促進するために十分に高い活性を有する。多機能触媒は、炭化水素縮合反応を促進するのに有用である。使用される反応器の種類は、熱暴露を制限し、酸素を除去するための蒸気/触媒の接触時間を最大にするために十分な滞留時間を提供するために重要であり得る。
【0056】
図1および
図2に示すように、触媒は、触媒再生ユニットまたはセクション150において再生することができる。再生反応器は、例えば、気泡流動床とすることができる。空気、水蒸気または空気と水蒸気の組合せは、窒素および/または二酸化炭素などの不活性ガス成分ありとなし両方で、触媒床を流動化し、持ち越される任意のチャーを酸化し、表面炭素(例えばコークス)を酸化することにより触媒を再生するために再生反応器に注入することができる。触媒が混合ゾーンに再循環された際に、発熱性炭素酸化もまた、吸熱バイオマス熱分解反応を進行させるために触媒固体に熱を付与することができる。プロセスを進行させるために追加の燃料は必要とされない。接触バイオマス熱分解に必要とされるすべての熱は、必要に応じてチャーおよびコークスの酸化から得ることができる。
【0057】
本開示による接触熱分解は、より低い温度でのバイオマスのセルロース、ヘミセルロースおよびリグニン成分のより選択的な解重合および断片化を提供することができる。選択性およびより低い温度のこの組合せは、熱分解反応のバイオオイルの収率を増加させるために有用であり得る。
【0058】
既に上記で詳細に説明したように、バイオマスの熱分解蒸気から酸素を除去するための公知の方法は、酸性触媒上でのクラッキングおよび従来の水素化脱硫(HDS)触媒上での水素化処理を含んでいる。しかし、このような技術は、水および酸化炭素の形態で酸素を排除するために水素と炭素を犠牲にする。先に指摘したように、これは、炭素変換効率を低下させるため、形成されるバイオ燃料の全体量を減少させる。対照的に、本開示に従って使用される特定の触媒は、バイオマス熱分解中に酸素を選択的に除去し、チャーの形成を阻害するために、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの特定の結合の切断を標的とすることによりバイオマス熱分解を制御し、炭化水素縮合反応を促進するものである。
【0059】
本開示に従って使用される触媒は、同時に行われる2つの工程:1)可変原子価状態の担持金属または還元金属酸化物触媒上での直接的脱酸素化;および2)インサイチュ水素化脱酸素のための触媒的水素生成を利用する間接的脱酸素化、を介して選択的に酸素を除去することができる。生じると考えられる一般的な反応を
図3に模式的に示す(ここで、Mは本明細書に記載されているような金属種である。)。酸化鉄系触媒について特定の反応を表2に示す。同様の反応は、この開示に照らしてさらなる金属酸化物を用いて実現することができる。
【0060】
【表2】
特定の実施形態において、本開示で使用される触媒は、酸化鉄材料などの鉄含有触媒であってもよい。酸化鉄系材料は、熱分解サイクルの一部として連続的に再生される能力のために特に有用であり得る。例えば、FeOは、Fe
3O
4を形成するために熱分解中に酸素と反応することができる。この状態において、触媒は、さらなる反応のために反応器にリサイクルされるのに先立って、還元してFeOに戻してもよい。したがって、本発明は、酸化触媒が、反応器に戻して導入されるのに先立って反応器から回収され、再生され、還元される触媒再生サイクルを含むことができる。多くの触媒配合物は、繰り返される酸化/還元サイクルを介して水素生産性および持続的な寿命を提供することができる。これらの材料は、バイオマス熱分解中に形成された水蒸気を水素に変換して水素化脱酸素のための反応環境を提供するために二官能性触媒として作用することができ、また炭素を除去することなくバイオマス熱分解蒸気から酸素を除去することができると考えられている。
【0061】
本明細書に開示されている主題は、部分的に、本明細書に記載されているように、バイオマス出発材料を触媒の存在下で反応させながら正確な熱分解条件が提供される場合に達成することができる反応の特定の組合せを認識することから生じる。固体酸は、熱分解システムに組み込まれた場合に有益であることが見出されている。例えば、弱酸(シリカアルミナ材料など)は熱分解生成物の脱水および脱炭酸を触媒するために機能することができ、強酸(MFI型ゼオライトなど)はアルキル化、異性化およびコーキングを触媒するために機能することができる。また、
図3に示す、遷移金属および酸化物が連続的に循環される酸化還元ループは、バイオマス熱分解のための新規なアプローチであると考えられ、熱化学的に好ましい操作ウインドウを提供している。またさらに、プロセスに水素化分解/水素化成分を添加することは、脱酸素化の助けとなるインサイチュH
2消費を可能にすることが見出された。
【0062】
特定の実施形態において、触媒は、ゼオライトもしくは任意の同様に機能する材料などの耐摩耗性材料上に担持されている上述のような二官能性酸化鉄系材料であることができ、またはさらに多機能材料であってもよい。上述したように、支持体材料の選択は、熱分解中に生じる反応の種類に影響を与えることができる(すなわち、弱酸支持体材料にするか強酸担体材料にするかの選択)。したがって、本発明による有用な支持体であり得る材料の別の例は、単独でまたはシリカと組み合わせてアルミナを含む材料である。当然、本明細書で提供される説明に基づいて想定することができる他の触媒、支持体および触媒/支持体の組合せもまた使用することができ、明示的に本開示に包含される。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態に従って使用することができるさらなる金属酸化物材料の熱力学的分析は、
図4に示されており、それは具体的には、フェノールからベンゼンへの脱酸素化(すなわち、表2に示すROHからRHへの変換例)に用いられる様々な金属触媒の効果を示している。
図4の水平方向の破線は、それより上では直接的脱酸素化のみが生じ、それより下では直接的脱酸素化と間接的脱酸素化の両方が生じる条件のおおよその指標を与えている。グラフの図示温度は、熱分解が生じる温度範囲の代表的な一実施形態を提供する。
【0064】
図4のグラフは、反応温度とデルタG(ΔG)の関係、すなわちシステム内のギブスの自由エネルギーの変化を示している。いくつかの金属または金属酸化物種は、好ましい熱分解温度範囲にわたる直接反応(例えば、Co、Ni、CoOおよびMn)による脱酸素化に有用であることが示されている。分析された材料のうち、Fe、FeOおよびSnは、直接的脱酸素化(すなわち、金属との反応)と間接的脱酸素化(すなわち、金属とシステム内の水蒸気との反応から生成される水素との反応)の両方に有用であることが示された。これは、酸化還元サイクル(金属酸化と還元)の両方の工程について負のΔG(T)を有する金属触媒は、本開示による触媒材料として有用であり得ることを示している。好ましくは、有用な触媒は、直接的脱酸素と間接的脱酸素の両方を提供することができるように、熱分解温度範囲にわたって約−67KJ/モル未満のΔGを持つ。本開示による触媒において使用することができる金属の具体例としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、スズ、白金、それらの組合せ、それらの酸化物およびそれらの塩が挙げられる。好ましい実施形態において、有用な触媒は、酸化鉄またはバイメタルの酸化鉄−酸化スズを含むことができる。さらなる実施形態において、触媒は、酸化鉄と、さらなる金属酸化物促進剤(すなわち、反応速度を高めるまたは生成物選択性を改善する金属酸化物)の混合物を含んでもよい。有用な金属酸化物促進剤は、CrO
3、NiO、MnO、CoOおよびMoOを含むことができる。本発明に従って使用され得る特定の鉄系触媒の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,259,286号に提供されている。このような二官能性触媒の使用は有益である。なぜなら、それらはバイオマス熱分解中に形成された水蒸気を水素に変換し、水素化脱酸素のための反応環境を提供するように機能することができ、炭素を除去することなくバイオマス熱分解蒸気から酸素を除去することができるからである。さらに有用な触媒は、その開示がその全体に参照により本明細書に組み込まれる、米国特許仮出願第61/733,142号(2012年12月4日出願)に記載されている。
【0065】
接触バイオマス熱分解方法を通して循環される触媒材料の量は、システムのバイオマススループットに基づくことができる。本明細書に記載されているように、使用される固体触媒の量は、熱分解に必要な熱を提供し、蒸気−相化学を触媒的に制御するのに有用な量であり得る。いくつかの実施形態において、(任意の支持体とは別の金属元素または化合物の重量に基づいて)使用される固体触媒の量は、バイオマスに対する触媒の比率が、(質量に基づいて)約1:1から約100:1の範囲となるようにすることができる。他の実施形態において、バイオマススループットに対する触媒の比率は、約5:1から約75:1または約10:1から約50:1とすることができる。
【0066】
バイオマスと触媒が反応し、反応器を通って移動するとき、様々な反応機構が起こると考えられており、それらは鉄−蒸気反応、水性ガスシフト反応、バイオマス熱分解蒸気の接触脱酸素化、およびバイオマス熱分解蒸気の水素化脱酸素を含むが、これらに限定されない。触媒失活はまた、触媒表面上の炭素の堆積から生じる反応の間に起こり得る。再び
図2を参照すると、反応器120を出るストリーム125(すなわち、循環している固体、蒸気およびガスを含む)は、ストリーム137として出る固体(例えば、使用済み触媒およびチャー)をストリーム135として出る蒸気およびガスから分離するために使用される分離ユニット130(例示の実施形態ではサイクロン分離器)に移送される。
【0067】
好ましくは、本開示に従って使用される触媒は再生可能な触媒である。具体的には、触媒が少なくとも部分的に失活され得る実施形態では、本発明において使用される触媒は、(例えば、炭素などの堆積物の除去によって)活性状態に再生することができる。このために、触媒は、触媒の失活につながり得る灰分などの物質の存在に対して非感受性であるような材料から形成されることが好ましい。より具体的には、触媒の再生は、熱分解反応を触媒しながら酸化された触媒がさらに処理されて、熱分解反応での再使用のために材料を活性状態に還元する上述のプロセスに関連し得る。
【0068】
分離後、分離器130を出るストリーム137中の固体は、スタンドパイプ(
図2に図示せず)に収集し、再生器反応器150に流入する。空気、蒸気またはそれらの混合物は、触媒表面に堆積する任意のバイオマスチャーおよびコークスを酸化するためにストリーム151として再生器に投入される。主要な再生器生成物は、(排気ストリーム159とともに出る)CO
2およびストリーム157中で出る再生触媒に付与された熱である。CO
2は、他の使用または隔離のために収集し、除去することができる。
【0069】
図2に示されている実施形態において、再生器を出るストリーム157中の高温の触媒は、J形脚158を介して、ライザー反応器120の上流に位置する還元ゾーンまたはユニット160に移送される。他の実施形態において、再生器と還元ゾーンとの間での触媒の移送に適したさらなる構成または構成要素としては、Lバルブ、Y脚、シールポットなどが挙げられるが、これらに限定されない。還元ゾーンにおいて、触媒は、凝縮器システムまたはユニット140(後述する)を出るテールガスストリーム147の一部分を再循環することによって還元される。これらのガスは、強制的に送風機180を介して、還元ストリーム163としてストリーム161中の追加のキャリアガス(例えばCOおよびH
2)とともに還元ゾーン160に入り、そこで触媒はその酸素反応性状態に戻って循環される。好ましくは、反応器の長さに沿って固体を搬送するために十分に高いスループットで、所望の迅速な熱伝達および短い熱分解滞留時間を達成するために高速で、ガスと触媒の組合せは還元ゾーン160を介して移動し、ライザー反応器120に戻る。
【0070】
サイクロン分離器130に戻ると、反応器120のすぐ下流の固体画分から分離した(ガス相中の)熱分解蒸気とガスの混合物は、蒸気が、典型的には水相および有機相を含有する液体(ストリーム145)に凝縮される凝縮システムまたはユニット140に移送される。水相は、主に、酸(例えば酢酸)、フェノールおよび未変換の無水糖などの水溶性有機材料を含む水(例えば、約40%から約99%の水)であることができる。有機相は、典型的には、水に富む水相よりもはるかに低い酸素含有量、ならびに密度、極性および/または他の特性などの異なる物理的特性を有する。2つの相は、公知の分離プロセスなどにより物理的に分離され(
図1のユニット170参照)、炭化水素に富むバイオオイルが出口(
図1のストリーム175)で収集される。
【0071】
また、凝縮システムを出て、生成物収集は一酸化炭素などの永久還元ガス(すなわち、ストリーム147中のテールガス)の画分である。凝縮システム(
図1参照)を出る接触熱分解テールガスは、その発熱量に基づいて熱および電力生産のために使用することができるが、それはまた、再生された触媒を還元するために使用することもできる。水素および一酸化炭素は効果的な還元剤である。特定の触媒は、水素に富んだ接触熱分解テールガスをもたらす水性ガスシフト反応を促進することができる。これは触媒再生のためにも有利である。したがって、本明細書に開示されている主題は、混合ゾーンに再循環される前に金属酸化物触媒を還元するために、リサイクルテールガスまたは投入水素の使用を提供することによって、特に有益である。少なくともガスの一部は、システムからパージすることができる(
図2のストリーム149参照)。
【0072】
当然、
図1および
図2に関連して記載されているシステムは、単に、本発明に従って使用され得る接触バイオマス熱分解システムの一例として提供されると理解される。その他、同様のシステムを使用することができる。同様に、記載されているシステムの個々の構成要素は、同一または類似の機能を提供するための他の適切な手段に置き換えられてもよい。
【0073】
本開示は、バイオオイルを形成するために、触媒の存在下、熱分解条件下でバイオマス出発材料を反応させることを含む接触バイオマス熱分解方法を提供するものとして、特定の実施形態において理解することができる。具体的には、形成されたバイオオイルは、本明細書に記載されているのとは別の酸素含有量を有していてもよい。バイオオイルは、蒸気および/またはガス相中に存在してもよいし、熱分解反応後に液相に凝縮されてもよい。接触バイオマス熱分解方法は、反応生成物および触媒を含有するバイオオイルを含むストリームを形成することを含むものとして定義されてもよい。触媒はバイオオイル含有反応生成物から分離することができ、このような分離はさらに、バイオオイル含有反応生成物の任意の固体成分を分離することを含むことができる。したがって、バイオオイルの形成方法は、バイオオイル含有反応生成物から周囲条件で液体ではない任意の物質を分離することを含んでもよい。方法はまた、触媒を再生すること、および触媒を接触バイオマス熱分解反応にリサイクルさせることを含んでもよい。方法はまた、バイオオイル含有反応生成物から周囲条件でガスである任意の物質を分離することを含んでもよい。
【0074】
有益なことに、本発明の接触バイオマス熱分解方法により生成されたバイオオイルは精油原料として直接使用することができる。このように、バイオオイル生成物は、任意の比率で石油原料とブレンドされてもよいし、同様に精油原料として使用されてもよい。
【0075】
実験
本明細書に開示されている主題は以下の実施例によってより完全に説明するが、それらは本明細書に開示されている主題を説明し、完全な開示を提供するために記載されるものであり、それらは本明細書に開示されている主題を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
熱分解蒸気の脱酸素化
バイオマス熱分解蒸気の脱酸素のための金属酸化物系触媒の有効性を例示するために、還元酸化鉄触媒を充填した固定床ミクロ反応器にグアヤコール(2−メトキシフェノール)を導入した。試験に先立って、酸化鉄触媒を、50%水素中、500℃で1時間還元した。反応は、0.15時間
−1のLHSV、400〜500℃で行った。トレーサガスとしての10cc/分の流量のアルゴンとともに、窒素をキャリアガスとして90cc/分の流量で使用した。反応器生成物を質量分析計とオンラインの残留ガス分析器を用いて分析した。グアヤコール脱酸素から同定された主要な化学種を表3に報告する。
【0077】
【表3】
グアヤコールからメトキシ基を除去することは、最も容易な脱酸素化経路である。生成物中のアルキルフェノールの検出は、酸化鉄系触媒を用いて、炭素を失うことなく酸素をグアヤコールから除去することができる(酸素抽出)ことを示している。クレゾールの形成は、メトキシ基が除去されるときに生成されるメチルラジカルおよび他のアルキル基によるフェノールのアルキル化から生じた可能性がある。
【0078】
反応温度は、グアヤコール変換および脱酸素化生成物の分布に重要な影響を与えた。変換は、(400℃で)49%から(500℃で)98%に増加した。生成物の水分含有量もまた、温度の上昇とともに増加し、これは、触媒の脱水活性が温度とともに増加していることを示している。フェノールは、他の脱酸素化生成物とともに、すべての反応温度で主要な生成物である。
【0079】
[実施例2]
バイオマスから誘導された熱分解蒸気の接触脱酸素化
ベンチスケールの熱分解ユニットを使用し、様々な原料からのバイオマスから誘導された実際の熱分解蒸気を用いて接触脱酸素化を評価した。ユニットは、二軸スクリューバイオマスフィーダーによって計量された粉砕バイオマス(212〜500μm粒径)について、約500g/時の最大スループットを有した。第1のスクリューの速度を設定して、供給物を反応器の入口に移送する第2のスクリュー上で原料を計量した。
【0080】
バイオマス原料を1インチ径のステンレス管を介してエダクターに入れた。予熱した乾燥窒素ストリームは、3ゾーン炉内に配置された1,200℃の最大温度を有する同伴流熱分解セクション(高さ3フィートのコイルに巻かれた17フィート、3/8”径ステンレス鋼管)へと空気圧でバイオマス原料を搬送し、これを介してエダクターを通過した。ガス速度は、窒素キャリアガスの流量を変化させることによって5から40フィート/秒の間で調整可能であった。システムを通るバイオマスの滞留時間は、通常の動作条件で約0.5〜2秒であった。
【0081】
キャリアガス、バイオマス熱分解蒸気、ならびに未変換のバイオマスチャーおよび灰分は、加熱セクションの底部から微粒子除去のための加熱サイクロンに出た。サイクロンは、90%より高い効率で10μm以上の粒子を除去するように設計された2インチ径、長さ4インチのバレルを備えた8インチの長さであった。チャー粒子を冷却し、分析のために収集した。
【0082】
サイクロンの下流は、1インチ径の固定床触媒反応器および凝縮システムであった。凝縮器は、3インチ径のステンレス鋼円筒形シェルによって囲まれた2インチ径、長さ36インチのインナーチューブを備えた設計のシェルアンドチューブ熱交換器であった。凝縮されたバイオオイルは、凝縮器の出口でドライアイスで冷却したガラス瓶に収集した。未凝縮のエアロゾルおよび蒸気は凝縮器を出て、同様にドライアイスで冷却したインピンジャーに導入した。これら2つの容器に収集した凝縮生成物を混合し、分析した。オンラインマイクロGCを使用して、永久生成物ガスを測定した。ガス試料は、フィルターを通して吸引、乾燥させ、4つのGCカラム上に注入した。C
6炭化水素までの永久ガスを3分間のサイクルで測定した。アルゴンをキャリアガスに導入し、生成されたガス相生成物の量を決定するために内部標準として使用した。
【0083】
ベースライン(非触媒)バイオオイルを、熱分解反応器およびチャーのサイクロン除去において、0.75秒の滞留時間、500℃でのホワイトオーク熱分解から生成した。ホワイトオーク原料、ベースラインバイオオイルおよびベースラインチャーの物理的および化学的特性を以下の表4に示す。ベースラインチャーの高い固定炭素および低酸素含有量は、ほぼ完全な熱分解を示している。予想されたように、ベースラインバイオオイルおよびホワイトオーク原料の元素分析は類似している。
【0084】
【表4】
Fe系触媒もまたベンチスケールの熱分解反応器で試験を行い、実際の熱分解蒸気を脱酸素化する能力を決定した。熱分解試験に先立って、熱分解システム内のサイクロンの下流に位置する固定床反応器において、触媒を5%H
2/バランスN
2ストリーム中、500℃で2時間還元した。触媒を還元した後、固定床反応器中の温度を450℃に下げた。熱分解条件は、ホワイトオーク原料からベースラインバイオオイルを生成する際に用いたものと同一であった。バイオマス熱分解蒸気の接触熱分解を30分間行った。バイオマス39.4gを熱分解システムに供給し、10.0gのバイオ原油および4gのチャーを収集した。この試験の物質収支クロージャーは79.4重量%であった。接触熱分解中のガス発生量は、ベースラインバイオオイルの生成と比較して3倍よりも高かった。非接触熱分解と比較してほぼ16倍を超えるH
2を接触熱分解中に生成したが、CO濃度は変化しなかった。
【0085】
触媒的にアップグレードされたオイルの元素分析は表5に示す。Fe系触媒で改質された熱分解油について、標準的なバイオオイルと比較して酸素含有量の有意な減少が観察された。アップグレードされたオイルの灰分は、ベースラインバイオオイルと比較して異常に高かった。バイオ原油の高い固体負荷は、おそらく凝縮系列の上流に位置する固定床反応器からの触媒のキャリーオーバーの結果である。灰分は標準バイオオイルについて測定された灰分に等しいと仮定して、触媒的にアップグレードされたバイオオイルの元素分析を再標準化した。これらの結果は、酸化鉄系触媒を使用して、バイオオイルの酸素含有量は顕著に、およそ350%、減少できることを示唆している。
【0086】
【表5】
【0087】
[実施例3]
本開示によるバイオマスの接触急速熱分解に適した鉄系触媒を調製した。この実施形態において、触媒調製は、触媒前駆体の合成、触媒前駆体の噴霧乾燥および焼成によって行った。
【0088】
触媒前駆体は、所望のFe/Cu原子比でFe(NO
3)
3・9H
2OおよびCu(NO
3)
3・2.5H
2Oを含有する1.0Mの溶液を用いて、6.2の一定のpHで水酸化アンモニウム水溶液を添加することによって沈殿させる共沈により調製した。次いで、結果として生じる沈殿物をろ過し、脱イオン水で3回洗浄した。カリウム促進剤をKHCO
3水溶液として未乾燥再スラリー化Fe/Cu沈殿物に添加した。次いで、この触媒前駆体を、10重量%のSiO
2を有する最終触媒組成物を生成するのに有効な比率で、ポリケイ酸溶液でスラリーにした。スラリーのpHは6.4であった。硝酸をスラリーに添加してpHを1.5に下げた。直径3フィート、高さ6フィートのNiro Inc.の噴霧乾燥機を使用してスラリーを噴霧乾燥した。最後に、噴霧乾燥した触媒を酸素含有雰囲気中で300℃で5時間焼成した。
【0089】
本発明の多くの変更および他の実施例が、前述の説明および関連する図面に提示される教示の恩恵を受ける本発明が属する分野の当業者によって想起されよう。したがって、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更および他の実施形態は添付した特許請求の範囲内に含まれることが意図されていると理解すべきである。本明細書で特定の用語を用いたが、それらは、一般的および説明的な意味でのみ使用されたもので、制限を目的とするものではない。