【文献】
Int. J. Hematol.,2004年,Vol.80,p.281-286
【文献】
Int. J. Oncol.,2002年 9月,Vol.21, No.3,p.509-514
【文献】
Int. J. Oncol.,2007年 6月,Vol.30, No.6,p.1461-1468
【文献】
J. Immunol. Methods,2002年 3月 1日,Vol.261, No.1-2,p.49-63
【文献】
J. Immunol. Methods,2001年 7月 1日,Vol.253, No.1-2,p.45-55
【文献】
Hematol. Cell Ther.,1997年10月,Vol.39, No.5,p.237-244
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、樹状細胞前駆細胞を複数のサイトカインの存在下で培養する工程を含む、樹状細胞を製造する方法に関する。より具体的には本発明は、以下(1)及び(2)に記載の工程を含む、樹状細胞を製造する方法に関する。
(1)樹状細胞前駆細胞を以下(i)から(v)からなる群より選択されるサイトカイン及び幹細胞因子(SCF)の存在下で培養する工程、及び
(2)(1)の工程で培養した細胞を、GM-CSF及びIL-4の存在下で培養する工程。
尚、(i)から(v)とは、以下をいう。
(i) 顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
(ii) IL-3
(iii) TPO
(iv) Flt-3L
(v) Flt-3L、TPO、およびIL-6
上記工程により、DC前駆細胞を効率的に増幅および/または分化させることができる。またIL-12産生量の高いDCを効率的に作製することが出来る。ここであるサイトカインの存在下とは、そのサイトカインが少なくとも含まれることを言い、他のサイトカインがさらに含まれていてもよい。好ましくは、そのサイトカインをもっぱら含むものであり、例えば他のサイトカインを含まないものである。培養期間は制限はないが、好ましくは約3週間から約5週間、好ましくは約3週間から約4週間、例えば15日以上、16日以上、18日以上、19日以上、20日以上、21日以上、22日以上、23日以上、24日以上、25日以上、38日以下、35日以下、30日以下、29日以下、28日以下、27日以下、26日以下、25日以下、24日以下、22日以下、21日以下、20日以下であってよい。
【0012】
本発明において樹状細胞(Dendritic cell; DC)とは、成熟状態において樹枝状形態をとり、抗原を提示してT細胞を活性化する能力を持つ細胞をいう。また本発明において樹状細胞前駆細胞とは、適当なサイトカイン(例えばG-CSF、GM-CSF、TNF-α、IL-4、IL-13、SCF (c-kitリガンド)、Flt-3リガンド、またはそれらの組み合わせ)の存在下でDCに分化する細胞を言い、好ましくは4週間以内、より好ましくは20日以内、より好ましくは18日以内、より好ましくは16日以内に樹状細胞に分化できる細胞である。このような細胞には、CD34
+幹細胞、造血始原細胞、骨髄単核球等が挙げられる。これらの細胞は、例えば細胞画分として調製することができる。細胞画分とは、細胞の分離(または分画)により得られた細胞集団である。細胞画分は、細胞および薬学的に許容される担体を含む組成物であってよい。担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培養液、血清など、生細胞を懸濁することができる所望の溶液が挙げられる。
【0013】
樹状細胞には、生体内各種組織器官に分布する骨髄細胞由来の樹枝状形態をとる細胞群、および骨髄または血液由来の幹細胞から、in vitroでサイトカイン等を利用して分化誘導をかけた生体内組織器官に分布する樹枝状形態をとる細胞、およびそれと同等の細胞群が含まれる。具体的には、樹状細胞には、例えばリンパ球系樹状細胞(Th2への誘導または免疫寛容を誘導するものであってもよい)、骨髄球系樹状細胞(一般的に用いられる樹状細胞。未熟樹状細胞および成熟樹状細胞を含む)、ランゲルハンス細胞(皮膚の抗原提示細胞で重要な樹状細胞)、相互連結細胞(リンパ節、脾臓のT細胞領域にあり、T細胞への抗原提示に働いていると考えられている細胞)、ろ胞樹状細胞(B細胞への抗原提示細胞として重要、抗原と抗体複合体、抗原と補体複合体を抗体レセプター、補体レセプターにより、樹状細胞上に提示することで、B細胞に抗原提示している。)などを含むものであり、好ましくは、MHCクラスIおよびクラスIIを高発現しており、さらに好ましくはCD11cを発現している細胞である。本発明においては、より好ましくは、骨髄、臍帯血、または末梢血から回収された細胞からDCまたはDC前駆細胞が用いられる。DC前駆細胞としては、例えばCD34陽性細胞が挙げられる。またDCの由来する生物種は特に限定されず、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類、ウサギ、ウシ、ヤギなどの哺乳類のDCであってよい。
【0014】
また、樹状細胞は、樹枝状形態を有し、CD11c、HLA-class II (HLA-DR、-DP、または -DQ)、CD40、およびCD1aからなる群より選択される表面マーカーの2つ以上が陽性の細胞であってよい。本発明において樹状細胞は、より好ましくは、HLA-class II
+およびCD11c
+の細胞、より好ましくはCD1a
+、HLA-class II
+、およびCD11c
+の細胞で、かつ系統マーカーが陰性(Lin-)、すなわちT細胞マーカー(CD3)、B細胞マーカー(CD19、CD20)、NK細胞マーカー(CD56)、好中球マーカー(CD15)、単球マーカー(CD14)を発現してない細胞である。骨髄球系樹状細胞(Myeloid DC)の場合、CD11bをさらに発現していることが好ましい。例えば、CD11b
+ CD11c
+細胞は、本発明においてDCに含まれる。リンパ球系樹状細胞(Lymphoid DC)においては、CD8をさらに発現していてよい。
【0015】
また、本発明において樹状細胞には成熟樹状細胞および未成熟樹状細胞が含まれる。未成熟樹状細胞とは、成熟状態に比べT細胞活性化能力が有意に低い樹状細胞を言う。具体的には、未成熟樹状細胞は、LPS (1μg/ml) を添加し2日間培養して成熟を誘導した樹状細胞に比べ、抗原提示能が1/2未満、好ましくは1/4未満のものであってよい。抗原提示能は、例えばアロT細胞活性化能(混合リンパ球試験;アロT細胞と樹状細胞の混合培養で、T細胞対樹状細胞の割合は1:10で培養、好ましくはその比率を変化させて培養したもので、培養終了8時間前に3H-thymidineを添加し、そのT細胞のDNA内の取込み量によって、T細胞増殖能力を定量したもの;文献 Gene Therapy 2000; 7; 249-254)、あるいはペプチドを用いた特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導能試験(樹状細胞に、ある抗原のあるClass I 拘束性の既知のペプチドを添加して、樹状細胞を採取したのと同じ健常人末梢血のT細胞を共培養(3日目以降はIL-2を25U/ml、好ましくは100U/ml)(好ましくは21日間3回の樹状細胞による刺激、更に好ましくは14日間2回の樹状細胞の刺激)し、得られたエフェクター細胞と51Crでラベルされたターゲット細胞(ペプチドの拘束性のClass I陽性の腫瘍細胞)を100:1〜2.5:1(100:1、50:1、25:1、20:1、12.5:1、10:1、5:1、または 2.5:1)、好ましくは10:1 で4時間混合培養してターゲット細胞の51Cr遊出量で定量したもの(文献 Arch Dermatol Res 2000; 292; 325-332))により定量することができる。また未成熟樹状細胞は、好ましくは抗原貪食能を持ち、更に好ましくはT細胞活性化のための副刺激を誘導する受容体の発現が低発現(例えば上記のようにLPS誘導した成熟DCに比べ有意に)あるいは陰性である。一方で、成熟樹状細胞とはT細胞活性化などの為の抗原提示能力が未成熟状態に比べて有意に高い樹状細胞を言う。具体的には、成熟樹状細胞は、LPS (1μg/ml) を添加し2日間培養して成熟を誘導した樹状細胞の抗原提示能の1/2以上、好ましくは同等以上の抗原提示能を持つ細胞であってよい。また成熟樹状細胞は、好ましくは抗原貪食能が低いか、または持たず、更に好ましくはT細胞活性化のための副刺激を誘導する受容体の発現が陽性のものをいう。また、樹状細胞の活性化とは、未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への移行を言い、活性化樹状細胞には、成熟樹状細胞、および、活性化刺激により副刺激を誘導するCD80、CD86の発現を上昇させている途中経過の樹状細胞が、その範疇に含まれる。
【0016】
成熟ヒト樹状細胞は、CD40、CD80、CD86およびHLA-class IIの発現が陽性の細胞である。例えば、CD80、およびCD86からなる群より選択されるマーカーを基に、未成熟樹状細胞と成熟樹状細胞を見分けることができる。未成熟樹状細胞ではこれらのマーカーは弱いか、好ましくは陰性であるが、成熟樹状細胞では陽性である。
【0017】
上記のように、未成熟樹状細胞は、通常、高い貪食能を保持している。樹状細胞にLPS (1μg/ml) を添加し2日間培養すると、樹状細胞は活性化され貪食能は低下する。貪食能は、樹状細胞内への小分子の取り込み量または取り込み細胞の割合を測定して知ることができる。好ましくは、貪食能は、樹状細胞内への小分子の取り込み量で決定される。例えば、直径 1μm程度の着色ビーズを用いて、樹状細胞内へのビーズの取り込みを測定することができる。4℃で陽性となるバックグランドを差し引いて定量する。高い貪食能とは、樹状細胞内への小分子の取り込み量が、樹状細胞を上記のようにLPS (1μg/ml) で2日間刺激した樹状細胞の4倍以上、より好ましくは5倍以上、より好ましくは6倍以上の貪食能を言う。あるいは、小分子の取り込み細胞の割合が2倍以上、より好ましくは3倍以上である。低い貪食能とは、樹状細胞内への小分子の取り込み量が、LPS (1μg/ml) で2日間刺激した樹状細胞の4倍未満、より好ましくは2倍未満、より好ましくは1.5倍未満である。あるいは、小分子の取り込み細胞の割合で測定した場合に、2倍未満、より好ましくは1.5倍未満である。
【0018】
成熟樹状細胞の判別は当業者が通常行っており、上記の各マーカーおよびその発現の測定方法も当業者に周知である。例えばCD11cは約150 kDの接着糖蛋白 (p150, インテグリンα鎖) である。CD11cはCD18と結合してCD11c/CD18複合体を形成し、フィブリノーゲンへの結合力を有し、また、iC3bおよびICAM-1の受容体となることが報告されている。また、CD11c/CD18は刺激を受けた上皮の受容体に結合する接着分子として働きうることが報告されている(Knapp, W. et al., eds., 1989, Leucocyte Typing IV: White Cell Differentiation Antigens, Oxford University Press, New York; Barclay, N.A. et al., eds., 1993, The Leucocyte Antigen FactsBook, CD11 Section, Academic Press Inc., San Diego, California, p. 124; Stacker, S.A. and T.A. Springer, 1991, J. Immunol. 146:648)。
【0019】
CD1aは約49 kDのポリペプチドでβ 2ミクログロブリンと結合する。CD1aはMHC class I抗原と構造的に類似しており、抗原提示に機能するとみなされる(Knapp, W. et al., eds., 1989, Leucocyte Typing IV: White Cell Differentiation Antigens, Oxford University Press, New York; Schlossman, S. et al., eds., 1995, Leucocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens. Oxford University Press, New York; Hanau, D. et al., 1990, J. Investigative Dermatol. 95: 503; Calabi, F. and A. Bradbury., 1991., Tissue Antigens 37: 1)。
【0020】
CD11bは、インテグリンαM鎖、Mac-1、CR3、iC3bR(complement receptor type 3)、Mo1とも呼ばれる、分子量が約165〜約170のI型膜貫通糖蛋白質である。補体 (iC3b)、フィブリノーゲン、凝固因子X のレセプターとして機能し、食細胞運動に関与する(Todd R.F. et al. J. Immunol.,126,1435-1442 (1981); Leong A.S.Y. Appl. Immunohistochem. Surg. Pathol.,120-128 (1993); Todd R.F. et al. Hybridoma, 1, 329-337 (1982); Cobbold S. et al. Leucocyte Typing III, 788-803 (1987); Keizer G. et al. Eur. J. Immunol., 15,1142-1148. (1985); Laffon A. et al. J.Clin. Invest., 88, 546-552 (1991); Acevedo A. et al. J. Invest. Dermatol., 97, 659-666 (1991))。
【0021】
CD11c(インテグリンαXサブユニット、もしくはp150白血球表面抗原)は、インテグリンファミリーの分子であり、他の白血球インテグリン(CD11a、CD11b、CD11d)と同様に、インテグリンβ2サブユニット(CD18)と非共有結合的に結合している。CD11cは、分子量145-150kDaの膜貫通糖タンパクで、樹状細胞のマーカーとしてよく知られている(Molica S. et al. Blood, 81, 2466 (1993); Van der Vieren M. et al. Immunity, 3, 683-690 (1995); Hogg N. et al. Leucocyte Typing III, 576-602 (1987))。
【0022】
CD14は53-55 kDのグリコシルホスファチジルイノシトール (GPI) アンカー型単鎖糖蛋白で、細網樹状細胞およびある種のランゲルハンス細胞で発現する。CD14はLPSと血清LPS結合蛋白質 (LPB) の複合体に対する高親和性の表面受容体として同定された(McMichael, A.J. et al., eds., 1987, Leucocyte Typing III: White Cell Differentiation Antigens, Oxford University Press, New York; Knapp, W. et al., eds., 1989, Leucocyte Typing IV: White Cell Differentiation Antigens, Oxford University Press, New York; Schlossman, S. et al., eds., 1995, Leucocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens. Oxford University Press, New York; Wright , S.D. et al., 1990, Science 249:1434)。
【0023】
CD40は45-48 kDのI型膜嵌入型蛋白質(type I integral membrane glycoprotein)であり、抗CD40抗体は細胞マーカーとしてよく使用されている(Schlossman, S. et al., eds., 1995, Leucocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens. Oxford University Press, New York; Galy, A.H.M.; and H. Spits, 1992, J. Immunol. 149: 775; Clark, E.A. and J.A. Ledbetter, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. 83: 4494; Itoh, H. et al., 1991, Cell 66: 233; Barclay, N.A. et al., 1993, The Leucocyte Antigen Facts Book., Academic Press)。
【0024】
CD80は約60 kDの膜貫通型糖蛋白であり Ig supergene familyの一員である。CD80はT細胞で発現するCD28およびCD152 (CTLA-4) のリガンドである(Schlossman, S. et al., eds., 1995, Leucocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens. Oxford University Press, New York; Schwarts, R.H., 1992, Cell 71: 1065; Azuma, M. et al., 1993, J. Exp. Med. 177: 845; Koulova, L. et al., 1991, J. Exp. Med. 173: 759; Freeman, G.J. et al., 1998, J. Immunol. 161: 2708; Behrens, L. et al., 1998, J. Immunol., 161(11):5943; Guesdon, J.-L. et al., 1979, J. Histochem. Cytochem. 27: 1131-1139)。
【0025】
CD83は約45 kDの膜貫通蛋白質でIg superfamilyの一員である。CD83は短鎖のV型Igの細胞外ドメインとC末の細胞質tailを持つ。CD83は主にろ胞樹状細胞、循環樹状細胞、リンパ組織の相互連結 (interdigitating) 樹状細胞、in vitroで生成させた樹状細胞、および胸腺樹状細胞に発現する(Zhou, L-J., and T.F. Tedder, 1995, J. Immunol. 154. 3821; Zhou, L-J. et al., 1992, J. Immunol. 149: 735; Summers, K.L. et al., 1995, Clin Exp. Immunol. 100:81; Weissman, D. et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci USA. 92: 826; Hart, D.N.J., 1997, Blood 90: 3245)。
【0026】
CD86 (B70/B7-2) は約75 kDの細胞表面蛋白質でCD28およびCTLA-4の第2のリガンドであり初期免疫応答におけるT細胞の副刺激に重要な役割を持つ(Azuma M. et al., 1993, Nature 366: 76; Nozawa Y. et al., 1993, J. Pathology 169: 309; Engle, P. et al. 1994., Blood 84: 1402; Engel, P. et al., CD86 Workshop Report. In: Leukocyte Typing V. Schlossman, S.F. et al. eds., 1994, Oxford University Press; Yang, X.F. et al., 1994, Upregulation of CD86 antigen on TPAstimulated U937 cells, 1994, (abstract). American Society of Hematology, Nashville, TN; Guesdon, J.-L.et al., 1979, J. Histochem. Cytochem. 27: 1131-1139)。
【0027】
CCR7はBLR-2、EBI-1、およびCMKBR7とも呼ばれる7回膜貫通型G蛋白質結合受容体であり、CCケモカインである MIP-3β/Exodus 3/ELC/CCL19 および 6Ckine/Exodus 2/SLC/TCA4/CCL21 の受容体である(Sallusto, F. et al., 1999, Nature 401:708-12; Lipp, M. et al., 2000, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 251:173-9; Birkenbach, M.et al., 1993, J. Virol. 67:2209-20; Schweickart, V. L. et al., 1994, Genomics 23:643-50; Burgstahler, R. et al., 1995, Biochem. Biophys. Res. Commun. 215:737-43; Yoshida, R. et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:13803-9; Yoshida, R. et al., 1998, J. Biol. Chem. 273:7118-22; Yoshida, R. et al., 1998, Int. Immunol. 10:901-10; Kim, C. H. et al., 1998, J. Immunol. 161:2580-5; Yanagihara, S. et al., 1998, J. Immunol. 161:3096-102)。
【0028】
HLA-class IIはDR, DP, およびDQがあり、その全てに結合する抗体により網羅的に検出することができる(Pawelec, G. et al., 1985, Human Immunology 12:165; Ziegler, A. et al., 1986, Immunobiol. 171:77)。HLA-DRはMHCのヒトclass II抗原の1つでα鎖 (36 kDa) とβサブユニット (27 kDa) からなる膜貫通糖蛋白質である。表皮のランゲルハンス細胞ではCD1a抗原と共発現する。CD1aは抗原提示において細胞の相互作用に主要な役割を果たす(Barclay, N.A. et al., 1993, The Leucocyte Antigen Facts Book. p. 376. Academic Press)。
【0029】
上記のマーカー遺伝子およびそれらの相同遺伝子産物を指標に、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物に関して樹状細胞を特定することができる。これらのマーカーに対する抗体は、例えばBD Biosciences社(BD PharMingen)より入手することができ、その詳細は同社または販売代理店のウェブサイトで知ることができる。
【0030】
また、樹状細胞マーカーに関しては、以下のKiertscherらおよびOehlerらの文献も参照のこと(Kiertscher SM, Roth MD, Human CD14
+ leukocytes acquire the phenotype and function of antigen-presenting dendritic cells when cultured in GM-CSF and IL-4, J. Leukoc. Biol., 1996, 59(2):208-18; Oehler, L. et al., Neutrophil granulocyte-committed cells can be driven to acquire dendritic cell characteristics., J. Exp. Med., 1998, 187(7):1019-28)。また、フローサイトメトリーに関しては、Okanoら、およびStitesらの文献を参照することができる(Okano, S. et al., Recombinant Sendai virus vectors for activated T lymphocytes., Gene Ther., 2003, 10(16):1381-91; Stites, D. et al., Flow cytometric analysis of lymphocyte phenotypes in AIDS using monoclonal antibodies and simultaneous dual immunofluorescence., Clin. Immunol. Immunopathol., 1986, 38:161-177)。各マーカーの発現については、例えば、isotype control antibodyで染色した時に、陽性率が1%以下の蛍光強度を境界として、それ以上は陽性、それ未満は陰性と判断される。
【0031】
樹状細胞またはその前駆細胞の調製は、公知の方法に従ってまたは準じて行うことができる。例えば、血液(例えば末梢血または臍帯血)、骨髄、リンパ節、他のリンパ器官、脾臓、皮膚などから分離することができる(Bishop et al., Blood 83: 610-616, 1994; Bontkes, H. J. et al. (2002) J. Leukoc. Biol. 72, 321-329; Katsuaki, S. et al. (1998) CRYOBIOLOGY 37, 362-371; Ladan, K. et al. (2006) Stem Cells 24, 2150-2157; Ueda, T. et al. (2000) J. Clin. Invest. 105: 1013-1021)。好ましくは、樹状細胞は、本発明に使用するために血液または骨髄から得られる。また、本発明で用いられる樹状細胞は、皮膚のランゲルハンス細胞、輸入リンパ管のベール細胞、ろ胞樹状細胞、脾臓の樹状細胞、およびリンパ器官の指状突起細胞などであってもよい。また本発明で用いられる樹状細胞は、CD34
+由来樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球由来樹状細胞、脾細胞由来樹状細胞、皮膚由来樹状細胞、濾胞樹状細胞、および胚中心樹状細胞からなる群から選択される樹状細胞が含まれる。DC前駆細胞としては、特に骨髄、臍帯血、または末梢血から得られた造血幹細胞または造血始原細胞等が好ましい。造血幹細胞または造血始原細胞は、市販のキットなどを用いたネガティブセレクションや、CD34
+ などのポジティブセレクションにより単離することができる(米国特許出願 08/539,142参照)。例えば、磁気ビーズ、蛍光ラベルによるソーティング、ビオチンまたはアビジン結合担体等により、表面抗原を利用した細胞の単離方法が知られている(Berenson et al., J. Immunol. Meth., 91:11, 1986; WO 93/08268)。
【0032】
DCやDC前駆細胞とそれ以外の細胞とを含む組成物からDCやDC前駆細胞を選択(または濃縮)する場合は、DCおよびDC前駆細胞以外の細胞を取り除くいわゆるネガティブ選択を実施することが好ましい。ネガティブ選択を用いることにより、DC-granulocytesのprecursor(J. Exp. Med., 1998, 187: 1019-1028; Blood, 1996, 87: 4520-4530) が除去されずに残り、接着性のCD14細胞から分化したDCだけでなく、それらのprecursorから分化したDCをあわせて回収することが可能と考えられる。これにより、DCにベクターを導入する際などにおける細胞障害性を軽減することが期待できる。
【0033】
例えば、T細胞、NK細胞、B細胞などに特異的な抗体を用いて、これらの細胞を取り除くことにより、DCを濃縮することが可能である。具体的には、例えば、CD2、CD3、CD8、CD19、CD56、CD66bから選択される表面マーカーまたはその任意の組み合わせの発現がlowまたはnegativeの細胞を得ることが好ましい。より好ましくは、CD2、CD3、CD8、CD19、CD56、およびCD66bの全てがlowまたはnegativeの細胞である。そのために、これらのマーカーに対する抗体を用いて、これらのマーカーを発現する細胞を除去するとよい(Hsu et al. (1996) Nature Med. 2: 52)。なお、ネガティブ選択においては多価抗体を用いて行うことができるし、あるいは磁気細胞分離 (MACS) のためにビーズ等を用いても、同様のセレクションを実施することが可能である。血球分離等を用いて単核球を採取するなど、細胞を大量に調製する場合は、ビーズを用いることが好ましい。例えば生体から得た細胞溶液から単球をエンリッチし、これに対してネガティブ選択を行って調製したDC前駆細胞を本発明において好適に用いることができる。
【0034】
樹状細胞の具体的な単離方法は、例えば Cameron et al., 1992, Science 257: 383、Langhoff et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7998、Chehimi et al., 1993,J. Gen. Viol. 74: 1277、Cameron et al., 1992, Clin.Exp.Immunol. 88: 226、Thomas et al., 1993, J. Immunol. 150: 821、Karhumaki et al., 1993, Clin.Exp.Immunol. 91: 482 などに記載されている。また、フローサイトメトリーによる樹状細胞の単離については、例えば、Thomas et al., 1994, J.Immunol. 153: 4016、Ferbas et al., 1994, J.Immunol. 152: 4649、および O'Dohelrty et al., 1994, Immunology 82: 487 に記載されている。また、磁気細胞選別については、例えば Miltenyi et al., 1990, Cytometry 11: 231-238 に記述されている。
【0035】
また、例えばヒト樹状細胞の単離および増殖に関しては、Macatonia et al., 1991, Immunol. 74: 399-406、O'Doherty et al., 1993, J. Exp. Med. 178: 1067-1078、Markowicz et al., 1990, J. Clin. Invest. 85: 955-961、Romani et al., 1994, J. Exp. Med. 180: 83-93、Sallusto et al., 1994, J. Exp. Med. 179: 1109-1118、Berhard et al., 1995, J. Exp. Med. 55: 1099-1104 などに記載の方法を用いてもよい。また、骨髄、臍帯血、または末梢血等から得られるCD34
+細胞および末梢血由来の単核細胞からの樹状細胞形成については Van Tendeloo et al., 1998, Gene Ther. 5: 700-707 に記載の方法を用いて実施してもよい。
【0036】
DC前駆細胞は、1または複数のサイトカインを含む培地中で増幅される。例えば、IL-3単独でも約10日にわたりDC前駆細胞を増幅することが可能である。しかし、より長期に渡る増幅は、IL-3単独では見られない。本発明者らは、SCFおよびIL-3を含む培地でDC前駆細胞を培養することにより、極めて高い効率でDCへの分化能を持つ細胞を増幅できることを見出した。従って、2週以上の増幅にはIL-3とSCFの組合せることが好ましい。特に、FLT-3L、SCF、IL-3、およびIL-6の4種のサイトカインを含む培地でDC前駆細胞を培養することにより、DCへの高い分化能を持つDC前駆細胞を大量に得ることができる。本発明は、IL-3およびSCFを含みFLT-3LおよびIL-6を含まない培地、FLT-3L、SCF、およびIL-3を含みIL-6を含まない培地、あるいはSCF、IL-3、およびIL-6を含みFLT-3Lを含まない培地でDC前駆細胞を増幅する工程を含む、DCの製造方法に関する。また本発明は、FLT-3L、SCF、IL-3、およびIL-6を含む培地、例えばそれらを含み、G-CSF、GM-CSF、IL-4、およびTNF-αから選択される1つ以上(またはそれらの任意の組み合わせ)のサイトカインを有意に含まない培地でDC前駆細胞を増幅する工程を含む、DCの製造方法にも関する。
【0037】
また本明細書に記載したサイトカインの組み合わせの存在下による培養においては、それ以外のサイトカインをさらに含んでいてもよいし(すなわちそれ以外のサイトカインの更なる存在下で培養する)、含まなくてもよい。また、該それ以外のサイトカインの存在下で培養する工程をさらに含んでもよいし、該それ以外のサイトカインの存在下で培養する工程を含まなくてもよい。例えば、本明細書に記載したサイトカインの組み合わせの存在下による培養においては、GM-CSF、SCF、IL-4、IL-3、TPO、Flt-3L、およびIL-6からなる群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせの存在下であってもよいし、この群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせを含まない場合も開示する。この群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせの存在下で培養する工程をさらに含んでもよいし、この群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせの存在下で培養する工程を含まない場合も開示する。例えば、GM-CSFおよびSCFを含むと言った場合、上記の群からそれらを除いたサイトカインからなる群、すなわちIL-4、IL-3、TPO、Flt-3L、およびIL-6からなる群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせのさらなる存在下であってもよいし、この群から任意に選択される1つまたはそれ以上の組み合わせを含まない場合であってもよい。該1つまたはそれ以上の組み合わせの存在下で培養する工程をさらに含んでもよいし、該工程を含まない場合でもよい。例えば、TPOを含まない場合、Flt-3Lを含まない場合、IL-6を含まない場合、TPOおよびFlt-3Lを含まない場合、TPOおよびIL-6を含まない場合、Flt-3LおよびIL-6を含まない場合、Flt-3L、TPO、およびIL-6を含まない場合、であってもよい。他のサイトカインの組み合わせの存在下の場合も同様であって、すべての組み合わせがここに教示されるものとする。
【0038】
例えば、本発明の培養において、GM-CSF(例えばヒトGM-CSF)は、100 ng/ml以下、50 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくてよい。SCF(例えばヒトSCF)は、50 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。IL-4(例えばヒトIL-4)は、50 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。IL-3(例えばヒトIL-3)は、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。TPO(例えばヒトTPO)は、50 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。Flt3-L(例えばヒトFlt3-L)は、100 ng/ml以下、50 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。IL-6(例えばヒトIL-6)は、25 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。G-CSF(例えばヒトG-CSF)は、100 ng/ml以下、50ng/ml以下、25 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。TNF-α(例えばヒトTNF-α)は、100 ng/ml以下、50ng/ml以下、25 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。c-kitリガンド(例えばヒトc-kitリガンド)は、100 ng/ml以下、50ng/ml以下、25 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。IL-13(例えばヒトIL-13)は、100 ng/ml以下、50ng/ml以下、25 ng/ml以下、10 ng/ml以下、5 ng/ml以下、1 ng/ml以下、0.5 ng/ml以下、0.1 ng/ml以下、0.05 ng/ml以下、0.01 ng/ml以下、0.005 ng/ml以下、0.001 ng/ml以下、0.0005 ng/ml以下、0.0001 ng/ml以下、0.00005 ng/ml以下、0.00001 ng/ml以下、または含まなくよい。これらは任意の組み合わせで組み合わせることができる。その組み合わせはここに教示される。
【0039】
FLT-3L (Fms様チロシンキナーゼ3リガンド)は、Flt-3のリガンドであり、造血系前駆細胞の分化、増殖を促す (Namikawa R. et al., BLOOD 87: 1881-1890, 1996)。EP 0627487 A2およびWO 94/2839に記載されている一群のポリペプチドは、本発明においてFlt-3Lに含まれる。ヒトFLT-3L cDNAは、accession number ATCC 69382 としてAmerican Type Culture Collection (ATCC) より入手できる。SCFは、c-kitリガンド、マスト細胞増殖因子(MGF)、またはスチール因子とも呼ばれる(Zsebo et al., Cell 63: 195-201, 1990; Huan, E. Cell 63: 225-233; Williams, D.E., Cell 63: 167-174, 1990; Toksoz. D et al, PNAS 89: 7350-7354, 1992)。SCFとしては、EP 423,980 に記載されているポリペプチドが含まれる。
【0040】
IL(インターロイキン)-3は、活性化T細胞、肥満細胞、好酸球によって産生される造血因子である。本発明においてIL-3には、米国特許第5,108,910号に記載されているIL-3ポリペプチドが含まれる。ヒトIL-3蛋白質をコードするDNA配列は、accession number ATCC 67747として入手可能である。IL-6はB細胞の分化誘導因子として発見され、抗体産生系のみならず、肝における急性期蛋白の生合成誘導やIL-3との相乗作用に基づく造血幹細胞の増殖促進など多彩な生理活性を有する (Paul SR et al., Blood, 1991, 77: 1723-1733)。IL-4は主にヘルパーT細胞より産生され、T細胞、B細胞および他の血球細胞に広汎な生理活性を有する (Mosley et al., Cell 59: 335 (1989); Idzerda et al., J. Exp. Med. 171: 861 (1990); Galizzi et al., Intl. Immunol. 2: 669 (1990))。GM-CSFは、マクロファージまたは顆粒球を含有するコロニーの成長を刺激した因子として単離されたサイトカインである(米国特許第5,108,910号および5,229,496号)。GM-CSFは、顆粒球およびマクロファージの前駆細胞の成長および発生に必須の因子であり、骨髄芽球および単芽球を刺激し分化を誘導する。
【0041】
TPO(thrombopoietin;トロンボポイエチンまたはトロンボポエチンとも言う)は、造血系サイトカインの一種であり、造血幹細胞から巨核球が作られる過程に特異的に作用し、巨核球の産生を促進するという機能を有するものである(特許第3058353号)。
【0042】
各サイトカインの濃度は適宜調整してよいが、FLT-3Lであれば例えば 5ng/ml以上、10ng/ml以上、20ng/ml以上、または 30ng/ml以上、800ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、または 100ng/ml以下、例えば 5〜35 ng/ml程度、好ましくは 10〜30 ng/ml程度、より好ましくは 15〜25 ng/ml程度、より好ましくは約20 ng/ml 程度である。GM-CSFであれば例えば 0.5ng/ml以上、1ng/ml以上、5ng/ml以上、10ng/ml以上、20ng/ml以上、または 30ng/ml以上、800ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、または 100ng/ml以下にすることができる。SCFであれば例えば 0.25ng/ml以上、0.5ng/ml以上、1ng/ml以上、5ng/ml以上、10ng/ml以上、20ng/ml以上、または 30ng/ml以上、800ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、または 50ng/ml以下にすることができる。IL-4、例えば 0.5ng/ml以上、1ng/ml以上、5ng/ml以上、10ng/ml以上、20ng/ml以上、または 30ng/ml以上、800ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、または 50ng/ml以下にすることができる。IL-6、TPO、その他のサイトカインについては例えば 1ng/ml以上、2ng/ml以上、5ng/ml以上、10ng/ml以上、20ng/ml以上、または 30ng/ml以上、800ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、50ng/ml以下、25ng/ml以下、または 10ng/ml以下にすることができる。
SCF、IL-3、IL-6については、例えばFS36などのGM-CSF不含の培地を用いる場合は、3〜20 ng/ml程度、好ましくは 5〜15 ng/ml程度、より好ましくは 7〜12 ng/ml程度、より好ましくは約10 ng/ml 程度であるが、これらに限定されない。これらは任意に組み合わせることができ、そのすべての組み合わせはここに教示される。培地としては、例えばRPMI1640またはIMDMを用いることができる。培地には、5〜20%、好ましくは約10%の血清、好ましくはウシ胎児血清 (FBS) を適宜添加する。DC前駆細胞は、1×10
5 〜 5×10
5細胞/ml程度、例えば約2.5×10
5細胞/mlから培養を開始することができる。好ましくは3日〜4日ごとに継代する。継代時には、2×10
6 /ml 以下の濃度となるように細胞数を調整することが好ましい。ヒトCD34
+細胞、ヒトCD14
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をGM-CSFとSCFを組み合わせて培養する場合は、GM-CSFは例えば 1〜500 ng/ml程度(1〜200 ng/ml程度 または 1〜100 ng/ml程度)、より好ましくは 2〜300 ng/ml程度、例えば 5〜200 ng/ml程度、好ましくは 10〜150 ng/ml程度、より好ましくは 20〜120 ng/ml程度、より好ましくは 30〜100 ng/ml程度 で用いるとよい。SCFは例えば 0.5〜500 ng/ml程度(0.5〜100 ng/ml程度 または 0.5〜50 ng/ml程度)、より好ましくは 1〜300 ng/ml程度、より好ましくは 2〜200 ng/ml程度、より好ましくは 5〜100 ng/ml程度、例えば 10〜70 ng/ml程度、より好ましくは 例えば 20〜60 ng/ml程度、より好ましくは 25〜50 ng/ml 程度で用いるとよい。
ヒトCD34
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をIL-3とSCFを組み合わせて培養する場合は、IL-3は例えば 0.1〜10 ng/ml程度、好ましくは 1〜10 ng/ml程度、より好ましくは10 ng/ml程度で用いるとよい。SCFは例えば 0.5〜500 ng/ml程度(0.5〜100 ng/ml程度 または 0.5〜50 ng/ml程度)、より好ましくは 1〜300 ng/ml程度、より好ましくは 2〜200 ng/ml程度、より好ましくは 5〜100 ng/ml程度、例えば 10〜70 ng/ml程度、より好ましくは 例えば 20〜60 ng/ml程度、より好ましくは 25〜50 ng/ml 程度で用いるとよい。
ヒトCD34
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をTPOとSCFを組み合わせて培養する場合は、TPOは例えば 0.5〜50 ng/ml程度、好ましくは 5〜50 ng/ml程度、より好ましくは 50 ng/ml程度で用いるとよい。SCFは例えば 0.5〜500 ng/ml程度(0.5〜100 ng/ml程度 または 0.5〜50 ng/ml程度)、より好ましくは 1〜300 ng/ml程度、より好ましくは 2〜200 ng/ml程度、より好ましくは 5〜100 ng/ml程度、例えば 10〜70 ng/ml程度、より好ましくは 例えば 20〜60 ng/ml程度、より好ましくは 25〜50 ng/ml 程度で用いるとよい。
ヒトCD34
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をFlt-3LとSCFを組み合わせて培養する場合は、Flt-3Lは例えば 1〜100 ng/ml程度、好ましくは 10〜100 ng/ml程度、より好ましくは 100 ng/ml程度 で用いるとよい。SCFは例えば 0.5〜500 ng/ml程度(0.5〜100 ng/ml程度 または 0.5〜50 ng/ml程度)、より好ましくは 1〜300 ng/ml程度、より好ましくは 2〜200 ng/ml程度、より好ましくは 5〜100 ng/ml程度、例えば 10〜70 ng/ml程度、より好ましくは 例えば 20〜60 ng/ml程度、より好ましくは 25〜50 ng/ml 程度で用いるとよい。
ヒトCD34
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をFlt-3LとSCFとTPOとIL-6を組み合わせて培養する場合は、Flt-3Lは例えば 1〜100 ng/ml程度、好ましくは 10〜100 ng/ml程度、より好ましくは 100 ng/ml程度 で用いるとよい。SCFは例えば 0.5〜500 ng/ml程度(0.5〜100 ng/ml程度 または 0.5〜50 ng/ml程度)、より好ましくは 1〜300 ng/ml程度、より好ましくは 2〜200 ng/ml程度、より好ましくは 5〜100 ng/ml程度、例えば 10〜70 ng/ml程度、より好ましくは 例えば 20〜60 ng/ml程度、より好ましくは 25〜50 ng/ml 程度で用いるとよい。TPOは例えば 0.5〜50 ng/ml程度、好ましくは 5〜50 ng/ml程度、より好ましくは 50 ng/ml程度で用いるとよい。IL-6は例えば 0.25〜25 ng/ml程度、好ましくは 2.5〜25 ng/ml程度、より好ましくは 25 ng/ml程度で用いるとよい。
ヒトCD34
+細胞などの霊長類DC前駆細胞をGM-CSFとIL-4を組み合わせて培養する場合は、GM-CSFは例えば 1〜500 ng/ml程度(1〜200 ng/ml程度 または 1〜100 ng/ml程度)、より好ましくは 2〜300 ng/ml程度、例えば 5〜200 ng/ml程度、好ましくは 10〜150 ng/ml程度、より好ましくは 20〜120 ng/ml程度、より好ましくは 30〜100 ng/ml程度 で用いるとよい。IL-4は例えば 0.5〜50 ng/ml程度、好ましくは 5〜50 ng/ml程度、より好ましくは 50 ng/ml程度で用いるとよい。
【0043】
本発明者らは、DC前駆細胞の増幅期間を約3〜4週間とすることで、その後のDCへの分化効率を顕著に高められることを見出した。これより長い期間培養すれば、より多くの細胞を得ることができるが、DCへの分化効率は低下する。特にFS36培地において5週間増幅させたDC前駆細胞は、DCへの分化効率が顕著に低下する。従って、例えばFS36などのGM-CSF不含の培地を用いる場合は、DC前駆細胞の培養期間は約3週間から約4週間、好ましくは約3週間にすることが好ましく、例えば 18〜24日間、より好ましくは20〜22日間培養し、その期間を超えて同じサイトカインの組み合わせを含む培地でDC前駆細胞を増幅させることは避けることが好ましい。その期間培養した後、以下に記載するようにDC分化培地で培養し、DCを分化させる。例えば、FLT-3L、SCF、IL-3、およびIL-6を含む培地でDC前駆細胞を培養する場合は、上記の期間培養後、FLT-3L、SCF、IL-3、およびIL-6の全て含む培地以外の培地で培養される。
また本発明は、1または複数のサイトカインを含む培地中で増幅された細胞をGM-CSF及びIL-4の存在下で培養する工程を含む。GM-CSF及びIL-4の存在下での培養期間は約3日から約14日間、好ましくは約7日間(例えば5日間以上、好ましくは6日間以上。9日間以下、好ましくは8日間以下)にすることが好ましい。
【0044】
本発明の方法は、好ましい態様において、高いIL-12産生能を有する樹状細胞を生産することができる。IL-12の産生能は、例えば次のようにして決定することができる。例えばヒト臍帯血由来CD34
+ 細胞を本発明の方法の第一の工程、すなわち下記(i)から(v)からなる群より選択されるサイトカイン及び幹細胞因子(SCF)の存在下で4週間培養する。培地には、10%FBS添加IMDMを用いることができる。
(i) GM-CSF、(ii) IL-3、(iii) TPO、(iv) Flt-3L、(v) Flt-3L、TPO、およびIL-6
次に第二の工程、すなわち、上記の細胞を、GM-CSF及びIL-4の存在下で1週間培養する。その後、その細胞をOK432処理、すなわち、OK432(0.5KE/ml)(中外製薬 日本標準商品分類番号874299)を含む10%FBS添加IMDMで2日(48h)間培養し、その2日間に培養上清中に放出されたIL-12をELISA等により定量する。
本発明の方法は、上記のOK432処理下において、例えば50以上、好ましくは、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、400以上、500以上、1000以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、または 8000以上(単位は
図3の説明と同じ)で、IL-12を産生させることができる方法である。特に上記第一の工程で(i) GM-CSFを用いた場合は、例えば50以上、100以上、好ましくは200以上で、上記第一の工程で(ii) IL-3を用いた場合は、例えば20以上、30以上、40以上、好ましくは50以上で、上記第一の工程で(iii) TPOを用いた場合は、例えば100以上、200以上、500以上、1000以上、3000以上、4000以上、好ましくは5000以上で、上記第一の工程で(iv) Flt-3Lを用いた場合は、例えば100以上、200以上、500以上、1000以上、3000以上、4000以上、好ましくは5000以上で、上記第一の工程で(v) Flt-3L、TPO、およびIL-6を用いた場合は、例えば100以上、200以上、500以上、1000以上、3000以上、4000以上、好ましくは5000以上で、IL-12を産生させることができる方法であってよい。
【0045】
霊長類CD34
+ 細胞としては、例えば臍帯血由来CD34
+ 細胞、骨髄由来CD34
+ 細胞、および末梢血由来CD34
+ 細胞等を用いることができる。
【0046】
培養液としては、適宜所望の培地を用いることができるが、例えば DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)、MEM(Minimum Essential Medium)、RPMI-1640、X-VIVOTM(Lonza)、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)等が挙げられる。最も好ましくは IMDM が用いられる。適宜血清を添加することが好ましく、例えば 1〜20%(v/v)、より好ましくは 2〜20%、より好ましくは 5〜15%、より好ましくは 5〜10%(例えば 約10%)を添加する。血清は、ウシ由来の血清が好ましく、最も好ましくはウシ胎児血清(FCS)である。培養温度は制限はないが、例えば32〜39℃、35〜38℃、約37℃とすることができる。CO
2 は制限はないが、例えば約5%(4〜6%)とすることができる。
【0047】
本発明は、以下(i)から(v)のうちいずれか一つの群に記載のサイトカインおよびSCFを含む、樹状細胞増幅用組成物、樹状細胞調製用組成物、樹状細胞製造用組成物、樹状細胞増幅用培地、樹状細胞調製用培地、および樹状細胞製造用培地を提供する。
(i)顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
(ii)IL-3
(iii)TPO
(iv)Flt-3L
(v)Flt-3L、TPO、およびIL-6
なお本発明の樹状細胞増幅用組成物、樹状細胞調製用組成物、樹状細胞製造用組成物、樹状細胞増幅用培地、樹状細胞調製用培地、および樹状細胞製造用培地は、以上(i)から(v)のうちいずれか一つの群に記載のサイトカインおよびSCFに加え、GM-CSF及びIL-4を含んでもよい。
さらに本発明の組成物は、適宜滅菌水、緩衝液、塩等を含んでもよい。また培地としては、上記に記載した培養液などが挙げられるが、それらに限定されない。培地は、血清を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、抗生物質を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0048】
また本発明は、これらの組成物または培地の製造における、以下(i)から(v)のうちいずれか一つの群に記載のサイトカインおよびSCFの使用にも関する。
(i)顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
(ii)IL-3
(iii)TPO
(iv)Flt-3L
(v)Flt-3L、TPO、およびIL-6
また本発明は、組成物または培地の製造における、上記(i)から(v)のうちいずれか一つの群に記載のサイトカインおよびSCF、並びに、GM-CSF及びIL-4の使用に関する。
また本発明は、上記(i)〜(v)およびSCFをキットの要素として含む、樹状細胞増幅用キット、樹状細胞調製用キット、樹状細胞製造用キットにも関する。当該キットは、培養液(例えば血清を含まない)または培養液を調製するための粉末(アミノ酸や塩等を含み、血清や抗生物質等が含まれていないもの)をさらに含んでもよい。これらの組成物、培地、およびキットは、好ましくはヒトを含む霊長類樹状細胞を増幅、調製、および製造するためのものであり、より好ましくはヒトを含む霊長類CD34
+細胞からIL-12産生能の高い樹状細胞を増幅、調製、および製造するためのものである。これらは、TNF-αおよび/またはIL-4を含まないことが好ましい。例えば組成物および培地中のTNF-αおよびIL-4濃度は、血清を含む場合は血清中に含まれる各濃度と比較して、それを著しく超えない範囲、例えば血清(例えば正常FCS)中の各サイトカイン濃度の3、2、または1倍以下であることが好ましく、好ましくは 1/2以下、より好ましくは1/3以下、または1/5以下、具体的には 50 ng/ml以下、好ましくは 40、30、20、10、5、3、または 1 ng/ml 以下である。血清を含まない場合は、好ましくはサイトカインとしてはGM-CSFおよびSCFのみを含む。
【0049】
本発明の方法に従えば、CD34
+ 細胞からDCを例えば 10
2倍、好ましくは 0.5×10
3倍、より好ましくは 1×10
3倍、より好ましくは 0.5×10
4倍、より好ましくは 1×10
4倍、より好ましくは 0.5×10
5倍、より好ましくは 1×10
5倍、より好ましくは 0.5×10
6倍以上に増幅して得ることができる。細胞は、例えば1週間の培養で5倍、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、または13倍以上の速度で増加させることができる。増幅された細胞は、高純度でDC(iDC)を含む。増幅された細胞のCD11c陽性率(全細胞中のCD11c
+細胞の割合)は、例えば30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、または85%以上である。また、iDCをLPSまたはPoly(I:C)、あるいはセンダイウイルス、OK432等で処理することにより、成熟DCを得ることができる。
【0050】
本発明の方法により得られるIL-12産生能の高い樹状細胞は、感染症、癌、その他、免疫誘導により有益な効果を期待できる所望の疾患の免疫治療に有用なDCワクチンとして有用である。例えば、腫瘍免疫治療に関しては、樹状細胞に腫瘍抗原を提示させるために、腫瘍細胞のcell lysate (細胞溶解物) と混合、ペプチドでパルス、または樹状細胞に腫瘍抗原遺伝子を導入する方法などにより抗原を提示させ、腫瘍に対するDC治療に用いることができる。
【0051】
例えば樹状細胞に腫瘍抗原を遺伝子導入すれば、腫瘍ライセートおよびペプチドパルスよりもin vivoでの腫瘍抗原提示時間の延長が期待でき、さらにHLAの制限(ペプチドの場合; ペプチドは抗原由来のあるペプチドを使用するが、HLAとの結合の関係上、HLAの種類が変われば、その抗原の中の使用するペプチドの部位が変化する)などを受けなくなる利点を有する。
【0052】
例えば本発明の方法により増幅したDC前駆細胞を、GM-CSFおよびSCFの存在下で培養し、さらにGM-CSF及びIL-4の存在下で培養してDCに分化させた後に、OK432またはRNAウイルス等の存在下で培養することにより、DCを活性化させる。培養期間は適宜調整してよいが、例えば2〜7日間である。例えばマイナス鎖RNAウイルスなどのRNAウイルスは、免疫賦活(腫瘍免疫など)に使用するにあたって遺伝子導入に利用できることに加え、RNAウイルスの感染自体が樹状細胞の活性化を惹起するため、導入後のサイトカインなどでの活性化処理の工程が省略可能で、細胞のviabilityの維持やコスト削減、さらなるex vivoでの操作時間の削減に寄与するものと考えられる。また、RNAウイルスベクターで遺伝子導入された樹状細胞を用いて、T細胞移入療法に必要な活性化T細胞、特に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞などをex vivoで効率良く、短期間、簡単に誘導できる(WO2005/042737;WO2006/001122)。
【0053】
DCは、適宜薬学的に許容される担体と組み合わせて組成物とすることができる。担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培養液、血清など、生細胞を懸濁することができる所望の溶液が挙げられる。また組成物は、樹状細胞に提示させる抗原ペプチドが含まれていてもよい。また、DCをワクチンとして使用する場合、ワクチン組成物には、免疫原性を高めるために、サイトカイン、コレラ毒素、サルモネラ毒素等の免疫促進剤を添加することもできる。またワクチンには、ミョウバン、不完全Freund'sアジュバント、MF59 (オイルエマルジョン)、MTP-PE (マイコバクテリア細胞壁由来の muramyl tripeptide)、および QS-21 (soapbark tree Quilaja saponaria 由来)などのアジュバントを組み合わせることもできる。
【0054】
抗原は、抗原とする細胞ライセートとの混合、ペプチドパルス、またはベクターにコードさせた抗原遺伝子をDCに導入することによりDCに提示させることができる。抗原としては、感染微生物、ウイルス、寄生虫、病原体、および癌などに関連する所望の抗原が挙げられる。これらは、構造タンパク質または非構造タンパク質であってよい。このような抗原(またはそのプロセスされたペプチド)は、樹状細胞表面のMHC分子に結合して細胞表面に提示され、免疫応答が誘導される。
【0055】
ワクチンとして用いる場合、例えば腫瘍、感染症、およびその他の一般的な疾患に対して適用することができる。感染症の治療としては、例えば感染性微生物の抗原蛋白のエピトープを解析し、これを樹状細胞で発現または提示させることができる。
例えば病原体由来の抗原としては、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デルタ型肝炎ウイルス、乳頭腫ウイルス抗原、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、HIV、およびマラリアなどが有する蛋白質またはその部分ペプチドが挙げられる(G.L. Mandell et al. (Ed.) Hinman et al., Principles and Practice of Infectious Diseases,3rd Ed., Churchill Livingstone Inc., NY, pp. 2320-2333)。これらの抗原を提示するDCを、感染症に対して予防的および治療的に用いることができる。具体的には、例えばインフルエンザにおいては、強毒株H5N1型等のエンベロープ、日本脳炎においては、例えば日本脳炎ウイルスのエンベロープ蛋白質(Vaccine, vol. 17, No. 15-16, 1869-1882 (1999))、エイズにおいては、例えばHIV gagまたは SIV gag 蛋白質(J. Immunology (2000) vol. 164, 4968-4978)、HIVエンベロープ蛋白質、Nef蛋白質、その他のウイルス蛋白質などが挙げられる。コレラにおいては、例えばコレラ毒素のBサブユニット(CTB)(Arakawa T, et al., Nature Biotechnology (1998) 16(10): 934-8、Arakawa T, et al., Nature Biotechnology (1998) 16(3): 292-7)、狂犬病においては、例えば狂犬病ウイルスの糖タンパク(Lodmell DL et al., 1998, Nature Medicine 4(8):949-52)、子宮頚癌においては、ヒトパピローマウイルス6型のカプシドタンパクL1(J. Med. Virol, 60, 200-204 (2000))などが挙げられる。また、日本脳炎のJE-E抗原タンパク質(特開昭64-74982、特開平1-285498)、ヒト単純ヘルペスウイルスの gD2タンパク質(特開平5-252965)、C型肝炎ウイルス由来ポリペプチド(特開平5-192160)、仮性偽狂犬病ウイルス由来ポリペプチド(特表平7-502173)などを用いることもできる。例えば、これらの病原性微生物に感染した患者由来の細胞を解析して、抗原提示細胞(APC)において提示された抗原蛋白のエピトープを同定し、これを用いてもよい。HLA型を適宜選択することにより、所望のHLA型に対するエピトープを同定して用いることも好ましい。
【0056】
腫瘍に対する免疫応答を特異的に促進させるには、1以上の腫瘍抗原を樹状細胞に提示させる。腫瘍関連抗原は、例えば腫瘍細胞の粗抽出液を調製したり、または抗原を部分的に精製することにより得ることができる(Cohen et al., Cancer Res. 54: 1055 (1994); Cohen et al., Eur. J. Immunol. 24: 315 (1994); Itoh et al., J. Immunol. 153: 1202 (1994))。得られた腫瘍抗原はさらに精製してもよく、また、組み換えペプチドとして合成または発現させてもよい。
【0057】
精製した樹状細胞に抗原をパルス(暴露)しDCに抗原を取り込ませると、抗原はDCにより処理され、細胞表面に提示される(Germain, R.N., Cell 76: 287 (1994))。樹状細胞を抗原でパルスする多数の方法が知られており、当業者であれば、提示させる抗原に応じて適用な方法を選択することは日常行われている。本発明は、本発明の方法により製造したDCに抗原を提示させたものを含む組成物およびその免疫治療への使用を提供する。本発明の組成物は、免疫応答を刺激するために、インジェクション、連続点滴、インプラントからの持続的放出、もしくは他の適当な技術によって投与され得る。典型的には、生理学的に受容可能な担体、賦形剤もしくは希釈剤とともに、樹状細胞を含む組成物を投与する。担体としては、使用される薬量および濃度において投与個体に有意な毒性が無いものであり、例えば生理食塩水が挙げられる。
【0058】
腫瘍抗原は腫瘍細胞に特異的なもの(すなわち、腫瘍細胞に存在するが、非腫瘍細胞には存在しないもの)であっても、同じタイプの非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞に高レベルで存在するものであってもよい。この樹状細胞を投与することにより免疫系が刺激される。CTLが主なエフェクターとして働く場合は、抗原としては細胞内外に発現する所望の腫瘍抗原を用いることができる。樹状細胞を用いて、CD4 T細胞の活性化から引き続くB細胞の活性化による抗体産生を惹起し、抗体をエフェクターとして作用させる場合には、抗原としては細胞表面に表出するものが好ましく、例えば、細胞表面受容体または細胞接着蛋白質を用いることができる。腫瘍抗原の例としては、卵巣癌等にするMuc-1 または Muc-1様ムチンタンデムリピートペプチド(米国特許第 5,744,144号)、子宮頸癌を引き起こすヒト乳頭腫ウイルス蛋白質E6およびE7、メラノーマ抗原MART-1、MAGE-1、-2、-3、gp100およびチロシナーゼ、前立腺癌抗原PSA、その他にも、CEA(Kim, C. et al., Cancer Immunol. Immunother. 47 (1998) 90-96)、およびHer2neu(HER2p63-71、p780-788; Eur. J. Immunol. 2000; 30: 3338-3346)などが挙げられる。
【0059】
本発明によって調製される樹状細胞は、癌および感染症に対する有効な免疫療法において有用であり、腫瘍抗原もしくは感染症関連抗原の遺伝子が導入された樹状細胞またはその樹状細胞で刺激されたT細胞による免疫感作は、患者において抗腫瘍または抗感染症免疫を誘導する有効な方法となる。本発明は、本発明の方法により得られた樹状細胞の免疫反応の誘導における使用にも関する。すなわち本発明は、本発明の方法により得られた樹状細胞の、免疫療法における使用、具体的には、例えば腫瘍または感染症の治療における使用に関する。また本発明は、本発明の方法により得られた樹状細胞の、免疫活性化剤の製造における使用に関する。すなわち本発明は、本発明の方法により得られた樹状細胞の、免疫治療剤の製造における使用、具体的には、例えば抗腫瘍剤(腫瘍増殖抑制剤)または感染症治療薬の製造における使用に関する。
【0060】
また、一般病への適用も考えられる。糖尿病においては、例えばI型糖尿病患者またはそのモデル動物において、インシュリン断片のペプチドをエピトープとして利用することが考えられる(Coon, B. et al., J. Clin. Invest., 1999, 104(2):189-94)。
【0061】
DC組成物には、可溶性サイトカイン受容体もしくはサイトカインまたは他の免疫制御分子をさらに含んでもよい(Schrader, J.W. Mol. Immunol. 28: 295 (1991))。これらのサイトカインは、DC組成物とは別の組成物として調製し、DCと同時に、別々に、または逐次的に投与することもできる。また、樹状細胞からサイトカイン類を発現させれば、免疫系を刺激して、感染微生物または癌に対する免疫応答を高めることから、サイトカインをコードする遺伝子を導入した樹状細胞も、癌やその他のサイトカイン治療が有効と考えられる疾患の治療において有用である。免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子を搭載するベクターが導入された樹状細胞は効果的な免疫誘導剤となる。例えば、免疫刺激性サイトカインとして、インターロイキン(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-27)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、GM-CSF、IL-3とGM-CSFを含む融合蛋白質、インスリン様増殖因子 (IGF)-I、IGF-2、Flt-3リガンド、Fasリガンド、およびc-kitリガンド、CD40リガンド (CD40L)、ならびに他の免疫調節タンパク質(ケモカインおよびコスティミュラトリー分子など)が含まれる。これらは単独もしくは組み合わせて用いられ得る。
【0062】
これらのサイトカインのアミノ酸配列は当業者には周知であり、IL-4については、例えば、Araiら (1989)、J. Immunol. 142(1) 274-282、IL-6については、例えば、Yasukawaら (1987)、EMBO J.、6(10): 2939-2945、IL-12は、例えば、Wolfら (1991)、J. Immunol. 146(9): 3074-3081、IFN-αは、例えば、Grenら (1984) J. Interferon Res. 4(4): 609-617、およびWeismannら (1982) Princess Takamatsu Symp. 12: 1-22、TNFは、例えば、Pennicaら (1984) Nature 312: 724-729、G-CSFは、例えば、Hiranoら (1986) Nature 324:73-76、GM-CSFは、例えば、Cantrellら (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82(18): 6250-6254 を参照することができる。より具体的には、GM-CSFをコードする核酸配列としては Accession number NM_000758の84〜461番目の配列(アミノ酸配列はNP_000749の18〜144番目)を含む配列が挙げられる。IL-4をコードする核酸配列としては、Accession number NM_000589の443〜829番目の配列(アミノ酸配列はNP_000580の25〜153番目)を含む配列が挙げられる。これらのサイトカインをコードする天然の遺伝子または遺伝子暗号の縮重を利用して、機能的サイトカインをなおコードする変異遺伝子を含むベクターを設計し、樹状細胞に導入することができる。
【0063】
また、これらのサイトカインの改変体を発現するように遺伝子改変してもよい。例えば、前駆体および成熟体の2つの形態を持つサイトカイン(例えば、シグナルペプチドの切断により活性フラグメントを生成するもの、または蛋白質の限定分解により活性フラグメントを生成するものなど)について、前駆体または成熟体のいずれかを発現するように遺伝子改変してもよい。その他の改変体(例えば、サイトカインの活性フラグメントと異種配列(例えば、異種シグナルペプチド)との間の融合タンパク質)を用いてもよい。
【0064】
樹状細胞は、患者自身のT細胞をin vivoで刺激するのに有用であり、あるいは樹状細胞はT細胞をin vitroで刺激するのにも有用である。感作したT細胞を患者に投与し、エクスビボ免疫療法を介して患者の免疫系を刺激することもできる。例えば、抗原を提示させた成熟樹状細胞をT細胞に接触させることで、樹状細胞により刺激されたT細胞を作り出すことができる。樹状細胞で提示させる抗原は、ベクターから発現させた蛋白質(またはそのプロセスされた産物)であってもよいし、外から樹状細胞にパルスしてもよい。活性化されたT細胞によりCTLが誘導される。
【0065】
また本発明は、本発明の方法により製造した樹状細胞を用いて、免疫系を刺激する方法に関する。例えば感染症または癌などに罹患した患者において免疫系を刺激する治療を行うことができる。この方法は、樹状細胞またはT細胞を投与する工程を含む方法である。この方法は、具体的には本発明により製造されたDCまたは該DCにより刺激されたT細胞の治療上有効量を患者に投与する工程を含む方法である。樹状細胞に、抗原ペプチドをパルスして、所望の抗原を提示させることで、所望の抗原に対する免疫を誘導することができる。インビトロでT細胞と樹状細胞を接触させる場合、患者からT細胞を採取して、エクスビボ投与を行うことが好ましい。
【0066】
DCまたはT細胞を含む組成物の個体への投与量は、疾患、患者の体重、年齢、性別、症状、投与目的、投与組成物の形態、投与方法等により異なるが、当業者であれば適宜決定することが可能である。投与経路は適宜選択することができ、例えば罹患部位に投与されることが好ましい。一般的には、筋肉内、腹腔内、皮下もしくは静脈内注射、あるいは、リンパ節への直接注入によって注入することができる。好ましくは皮下、腹腔内注射またはリンパ節への直接注入により、患者に投与する。樹状細胞は、一般的には10
5〜10
9細胞、好ましくは10
6〜10
8細胞、より好ましくは約10
7細胞を患者に投与することができる。投与回数は、1回または臨床上容認可能な副作用の範囲で複数回可能である。投与対象としては特に制限はないが、例えば、ニワトリ、ウズラ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ネコ、ウシ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、サル、およびヒトなどを含む鳥類、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物)、およびその他の脊椎動物が挙げられる。
【0067】
樹状細胞は、抗腫瘍剤として有用である。例えば腫瘍抗原を提示させた樹状細胞を腫瘍部位に投与することによって、腫瘍の増殖を抑制することができる。腫瘍部位とは、腫瘍またはその周囲(例えば腫瘍から5 mm以内、好ましくは3 mm以内)の領域を言う。樹状細胞を腫瘍に投与する前に、樹状細胞に腫瘍抗原を接触させるとより高い効果を得ることができる。樹状細胞への腫瘍抗原の接触は、樹状細胞と腫瘍細胞のcell lysate (細胞溶解物) とを混合する方法、腫瘍抗原ペプチドを樹状細胞にパルスする方法、あるいは樹状細胞に腫瘍抗原遺伝子を導入して発現させる方法などを用いることができる。
【0068】
樹状細胞により活性化したT細胞を投与する場合は、例えばT細胞は、1 m
2の体表面積あたり約10
5〜10
9細胞、好ましくは10
6〜10
9細胞、より好ましくは10
8〜10
9細胞の用量で、静脈内注入によって投与され得る(Ridellら、1992、Science 257: 238-241 を参照)。注入は、所望の間隔(例えば、毎月)で繰り返され得る。投与後のレシピエントは、必要に応じて任意の副作用について、T細胞注入の間または注入後にモニターされてよい。このとき、T細胞は樹状細胞を得た患者と同じ患者から得ることが好ましい。あるいは、T細胞を患者から採取し、T細胞を刺激するために用いる樹状細胞は、HLA適合性の健常なドナーに由来してもよい。または逆に、樹状細胞を患者から採取し、T細胞はHLA適合性の健常なドナーに由来してもよい。
【0069】
本発明により製造されるワクチンの有効成分である樹状細胞を含む細胞は、ヒト体内に治療用のワクチンとして接種することから、安全性を高めるために細胞増殖性を無くしておくこともできる。例えば、臍帯血由来の単球は分化誘導することにより増殖能が極度に低下することが知られているが、細胞ワクチンとしてより安全に利用するため、加熱処理、放射線処理、あるいはマイトマイシンC(MMC)処理などで処理し、ワクチンとしての機能を残したまま、増殖性をなくすことができる。例えば、X線照射を利用する場合、総放射線量1000〜3300 Radで照射することができる。マイトマイシンC処理法は、例えば、樹状細胞に25〜50μg/mlのマイトマイシン Cを添加し、37℃、30〜60分間保温処理することができる。熱による細胞処理方法は、例えば、50〜65℃で20分間加熱処理を行うことができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。また、本明細書中に引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
【0071】
以下、実施例及び実施例に係る図面において、所定の投与群とは、以下の組成をいう。
GMSCF投与群:組換えヒトGM-CSF(100 ng/ml)(Peprotech)、組換えヒトSCF(Stem cell factor;SCF)(50 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
0.1 GMSCF投与群:組換えヒトGM-CSF(10 ng/ml)(Peprotech)、組換えヒトSCF(Stem cell factor;SCF)(5 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
0.01 GMSCF投与群:組換えヒトGM-CSF(1 ng/ml)(Peprotech)、組換えヒトSCF(Stem cell factor;SCF)(0.5 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
GMIL-4投与群:組換えヒトGM-CSF(100 ng/ml)(Peprotech)、組換えヒトIL-4(50 ng/ml)(Wako,Japan)を含む10%FBS添加IMDM
IL-3投与群:IL-3(10 ng/ml)(R&D Systems, Inc.)を含む10%FBS添加IMDM
IL-3SCF投与群:IL-3(10 ng/ml)(R&D Systems, Inc.)、組換えヒトSCF(50 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
TPOSCF投与群:組換えヒトTPO(50 ng/ml)(Wako, Japan)、組換えヒトSCF(50 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
FS投与群:組換えヒトFlt3-L(100 ng/ml)(Richter-HELM BioLogics GmbH & Co.KG)、組換えヒトSCF(50 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
FST6投与群:組換えヒトFlt3-L(100 ng/ml)(Richter-HELM BioLogics GmbH & Co.KG)、組換えヒトSCF(50 ng/ml)(Peprotech)、組換えヒトTPO(50 ng/ml)(Wako, Japan)、組換えヒトIL-6(25 ng/ml)を含む10%FBS添加IMDM
SCF投与群:組換えヒトSCF(50 ng/ml)(Peprotech)を含む10%FBS添加IMDM
【0072】
以下、実施例に係る図面において、(1)iDC処理、(2)OK432処理とは以下の処理をいう。
(1)iDC処理:下記濃度の培地で2日間インキュベーションすることである。
10%FBS添加IMDM
(2)OK432処理:下記濃度の培地で2日間インキュベーションすることである。
OK432(0.5KE/ml)(中外製薬 日本標準商品分類番号874299)を含む10%FBS添加IMDM
なお、特に断らない限り、培地は10%FBS添加IMDMを使用し、37℃、5% CO
2 で培養を行った。
【0073】
〔実施例1〕所定のサイトカインを用いることによるヒト由来樹状細胞前駆細胞からの樹状細胞の生産
ヒト臍帯血由来CD34
+ 細胞 (Lonza社より購入)を、所定のサイトカインを含む培地で、35日間培養し、増幅と分化を行った。
図1に示した結果より、ヒト臍帯血由来CD34
+ 細胞 をGMSCF投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法により、大量に細胞を得ることができた(
図1(図の標記では「GMSCF⇒GMIL-4」))。その細胞の形態を観察したが、OK432処理という樹状細胞を活性化する処理を行った細胞において、樹状突起が確認できた(
図2)。上記方法から得られた大量の細胞は、樹状細胞と考えられる。
また、
図1に示すように、IL-3SCF投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法、TPOSCF投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法、FS投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法、またはFST6投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法においても、GMSCF投与群で所定の期間培養後GMIL-4投与群で培養する方法と比べ、得られる細胞数は減る方法はあるものの、大量に細胞を得ることができた(
図1(図の標記では「SCFIL-3⇒GMIL-4」、「TPO/SCF⇒GMIL-4」、「Flt3-L/SCF⇒GMIL-4」、「FST6⇒GMIL-4」))。
尚、
図1には示していないが、上記ヒト臍帯血由来CD34
+ 細胞をSCF投与群で培養した実験も行った。培養開始から1週間目までは、細胞の増幅が見られた(培養開始時の細胞数は1.0×10
5(個)で、培養開始から1週間目の細胞数は約2.25×10
5(個)であった)。しかし、1週間目以降は、細胞の増幅がみられず、細胞数が減少した。
【0074】
〔実施例2〕所定のサイトカインを用いることにより生産した樹状細胞のIL-12産生量の測定
ヒト臍帯血由来CD34
+ 細胞から、所定のサイトカインを用いて生産した樹状細胞について、IL-12産生能を調べた。実験においては、ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー(BD)社のHuman Inflammation Kit(カタログ番号:551811)を用いた(
図3)。
【0075】
OK432の刺激により、全投与群においてIL-12の産生能が高まった。しかし、
図3(A)(B)に示している結果より、
図3記載の(3)〜(7)のサンプルは、他のサンプル(
図3記載の(8)のコントロールサンプルは除く)と比べ、より高いIL-12の産生能を有することが明らかとなった。
【0076】
〔実施例3〕所定のサイトカインを用いることによるヒト末梢血中のCD14
+前駆体(単球)からの樹状細胞の生産
ヒト末梢血中のCD14
+前駆体(単球)を、所定のサイトカインを含む培地で、28日間培養し、増幅と分化を行った。
図6に示した結果より、従来から知られているGM-CSF及びIL-4を含む培地で培養する方法と比べ、 GM-CSF及びSCFを含む培地で培養する方法が、単球から樹状細胞を多く生産する方法として適していることが示唆される。