(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記製造方法は、前記フレア成形工程の後に、前記フィラーチューブが前記外周型及び前記内周型に挟まれた状態のまま全体加熱処理を行う全体加熱処理工程をさらに備える、請求項1−4の何れか一項に記載のフィラーチューブの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.燃料ライン1の構成)
燃料ライン1の構成について
図1を参照して説明する。燃料ライン1とは、自動車において、給油口から内燃機関(図示せず)までのラインである。ただし、本実施形態においては、給油口12から燃料タンク11までの間を説明する。
【0015】
燃料ライン1は、燃料タンク11、給油口12、フィラーチューブ13、ブリーザライン14を備える。燃料タンク11は、ガソリンなどの液体燃料を貯留する。燃料タンク11に貯留された液体燃料は、図示しない内燃機関へ供給され、内燃機関を駆動するために用いられる。給油口12は、給油ノズル(図示せず)を挿入可能な自動車の外表面付近に設けられる。給油口12には、図示しない給油キャップが装着される。
【0016】
フィラーチューブ13は、熱可塑性樹脂により成形され、給油口12から燃料タンク11までを接続する。給油口12に給油ノズルが挿入されて、給油ノズルから液体燃料が供給されることにより、液体燃料がフィラーチューブ13を通過して燃料タンク11に貯留される。ここで、燃料タンク11に液体燃料が満タンになると、フィラーチューブ13に液体燃料が貯留され、給油ノズルの先端に液体燃料が触れることにより、給油ノズルによる液体燃料の供給が自動的に停止される。なお、フィラーチューブ13は、全長に亘って一体に成形され、途中の曲がり部は蛇腹部を有するようにしてもよいし、非蛇腹筒状部を曲がり管成形方法によって成形されるようにしてもよい。
【0017】
ブリーザライン14は、燃料タンク11と給油口12とを接続する。ブリーザライン14は、液体燃料がフィラーチューブ13を介して燃料タンク11に供給される際に、燃料タンク11内の燃料の蒸気を燃料タンク11の外に排出するためのラインである。
【0018】
ブリーザライン14は、カットバルブ装置16と、コネクタ17と、ブリーザチューブ18とを備える。カットバルブ装置16は、燃料タンク11の上部に配置され、開放状態のときに燃料タンク11内の燃料の蒸気が給油口12側へ排出される。カットバルブ装置16は、金属製の接続パイプ16aを備える。コネクタ17は、接続パイプ16aに連結される。このコネクタ17は、例えば、特許第3775656号公報などに記載のコネクタから流量制御弁を除いた構成からなる。つまり、コネクタ17は、接続パイプ16aから着脱可能に設けられる。ブリーザチューブ18は、コネクタ17と給油口12とを接続する。
【0019】
(2.フィラーチューブ13の構成)
図1に示すフィラーチューブ13の燃料タンク11側の端部13aの詳細構成について、
図2A及び
図2Bを参照して説明する。フィラーチューブ13の端部13aは、筒状本体20と、フランジ30とを備える。
【0020】
筒状本体20は、円筒状の薄肉部21、テーパ筒部22、及び、円筒状の厚肉部23を備える。なお、図示しないが、筒状本体20は、薄肉部21のうちテーパ筒部22とは反対側に連続して蛇腹部を備えるようにしてもよい。
【0021】
厚肉部23は、薄肉部21より厚みが厚く形成される。さらに、厚肉部23の外径は薄肉部21の外径より大きく、厚肉部23の内径は薄肉部21の内径より大きい。テーパ筒部22は、薄肉部21の端と厚肉部23の端とを連続して接続する。すなわち、テーパ筒部22の内周面は、薄肉部21の内周端と厚肉部23の内周端とをテーパ状に接続し、テーパ筒部22の外周面は、薄肉部21の外周端と厚肉部23の外周端とをテーパ状に接続する。このように厚みが変化する筒状本体20は、コルゲート成形、すなわち、コルゲート金型を用いた押出しブロー成形により成形される。
【0022】
ここで、後述するフィラーチューブ13の製造方法において、フィラーチューブ13の素材50が外周型70に対して軸方向に位置決めされる必要があるが、筒状本体20のテーパ筒部22が、外周型70に係止される係止部として機能する。つまり、係止部としてのテーパ筒部22が、筒状本体20の外周側に設けられることになる。
【0023】
フランジ30は、筒状本体20に一体形成され、筒状本体20の端部から径方向外方に延在し、燃料タンク11に溶着される端面を有する。フランジ30は、後述するが、コルゲート成形ではなく、型によるフレア成形(拡開成形)によって成形される。フランジ30は、テーパ筒部31と円盤部32とを備える。テーパ筒部31は、筒状本体20の厚肉部23とほぼ同程度の厚みに形成され、端部に向かって厚肉部23よりさらに拡径される。円盤部32は、テーパ筒部31の大径端から径方向外方に面状に延在する。円盤部32の一方面が、燃料タンク11への溶着面となる。円盤部32は、テーパ筒部31とほぼ同程度の厚みに形成される。
【0024】
上述したフィラーチューブ13は、異種の熱可塑性樹脂による多層構造である。詳細には、
図2Bに示すように、フィラーチューブ13は、内層41、燃料透過を防止する燃料バリア層42、外層43、内層41と燃料バリア層42とを接着する内接着層44、及び、燃料バリア層42と外層43とを接着する外接着層45を備える。
【0025】
フランジ30の円盤部32における内層41は、燃料タンク11への溶着面となる。そのため、フランジ30の円盤部32における内層41は、燃料タンク11の溶着される部位の材質と同種の材質に成形される。また、円盤部32以外の部位における内層41は、流通する燃料が直接接触する面となる。
【0026】
各層は、例えば、以下の材質により形成される。内層41は、高密度ポリエチレン(HDPE)であり、燃料バリア層42は、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)であり、外層43は、ポリエチレン(PE)であり、内接着層44及び外接着層45は、変性ポリエチレン(変性PE)である。
【0027】
内層41及び外層43が、他の層42,44,45に比べて厚く形成される。特に、内層41は、溶着による保持力を確保するために、外層43よりも厚く形成される。さらに、内層41は、外層43より、弾性係数が高い。つまり、内層41は、外層43より、相対的に変形しにくい。
【0028】
ここでは詳細には図示しないが、筒状本体20も、フランジ30と同様に、多層構造とされる。ただし、フランジ30は、フレア成形されるため、筒状本体20とは各層の厚みがわずかに異なる。
【0029】
(3.フィラーチューブ13の素材50の構成)
フィラーチューブ13の素材50について、
図3A及び
図3Bを参照して説明する。
図3Aに示すように、素材50は、筒状本体20、フランジ30がフレア成形される前の部位としての筒状の被成形部51を備える。ここで、素材50の筒状本体20は、
図2Aに示すフィラーチューブ13の筒状本体20と同一である。つまり、素材50の筒状本体20は、薄肉部21、テーパ筒部22及び厚肉部23を備える。従って、素材50は、係止部としてのテーパ筒部22を備える。
【0030】
被成形部51は、筒状本体20の厚肉部23と同一厚みであって、同一形状の円筒状に形成される。被成形部51は、
図3Bに示すように、内層61、燃料バリア層62、外層63、内接着層64及び外接着層65を備える。各層61〜65は、フィラーチューブ13の各層41〜45に相当する。ただし、フランジ30は、素材50の被成形部51をフレア成形されることから、両者の厚みは相違する。特に、フランジ30の内層41は、素材50の被成形部51の内層61よりわずかに薄くなる。
【0031】
(4.フィラーチューブ13の製造方法)
次に、フィラーチューブ13の製造方法について、
図3のフローチャート、及び、製造過程の各状態を示す
図4〜
図7を参照して説明する。まず、コルゲート金型を用いて、押出しブロー成形を行うことにより、
図3Aに示す素材50が成形される(
図4のS1:「素材成形工程」)。上述したように、素材50は、最終形状としてのフィラーチューブ13に対して、フランジ30が形成されていない形状である。
【0032】
続いて、
図5に示すように、フランジ30をフレア成形するための外周型70と内周型80がプレス装置本体(図示せず)に取り付けられる(
図4のS2:「型設置工程」)。ここで、外周型70は、下型として用い、内周型80は、上型として用いる。さらに、外周型70と内周型80とは、上下方向に離間している。
【0033】
外周型70は、素材50の端部が挿通可能な筒状に形成される。外周型70の内周面は、円筒内周面71、円筒内周面71の下方(内周型80から遠ざかる側)に連続して形成され且つ下方に行くほど縮径される第一テーパ面72、及び、円筒内周面71の上方(内周型80に近づく側)に連続して形成され且つ上方に行くほど拡径される第二テーパ面73を備える。
【0034】
ここで、円筒内周面71は、素材50の筒状本体20の厚肉部23に対応し、厚肉部23の外周面に接触する。第一テーパ面72は、素材50の筒状本体20のテーパ筒部22に対応し、テーパ筒部22の外周面に接触する。つまり、第一テーパ面72は、素材50のテーパ筒部22に接触した状態において、素材50を
図5の下方に移動させることを規制する被係止部として機能する。従って、被係止部としての第一テーパ面72は、係止部としてのテーパ筒部22に対して、軸方向に係止する。
【0035】
第二テーパ面73は、素材50の被成形部51に対応する軸方向位置に位置しており、被成形部51の外周面からは離れている。第二テーパ面73は、フレア成形後におけるフランジ30のテーパ筒部31を成形するための部位である。
【0036】
外周型70の上端面(内周型80に対向する面)は、外周側に全周状に位置するストッパ平面74と、ストッパ平面74の内周側に全周に亘って円形の凹状に形成される反溶着面形成部75とを備える。反溶着面形成部75は、第二テーパ面73に連続して形成される。また、反溶着面形成部75の底面は、ストッパ平面74に平行な平面状に形成される。反溶着面形成部75は、フレア成形後におけるフランジ30の円盤部32の反溶着面(
図2Aの右側)を成形するための部位である。
【0037】
内周型80は、外周型70の外形に対応する本体部81、本体部81の中心から下方(外周型70側)に縮径して突出する第一テーパ面82、第一テーパ面82の先端から同軸状に延びて円筒状に形成される円筒面83、円筒面83の先端から同軸状に延びて縮径される第二テーパ面84を備える。
【0038】
ここで、本体部81は、外周型70のストッパ平面74及び反溶着面形成部75に対向する面であって、フランジ30の溶着面(
図2Aの左側)を形成する溶着面形成部81aを備える。溶着面形成部81aは、ストッパ平面74に接触することで、外周型70と内周型80との相対移動を規制する機能を有する。また、溶着面形成部81aは、ストッパ平面74に接触した状態で、反溶着面形成部75に対して上下方向に離間するように形成される。
【0039】
第一テーパ面82は、フレア成形後におけるフランジ30のテーパ筒部31を形成するための部位である。円筒面83は、素材50の厚肉部23に対応し、厚肉部23の内周面に接触し得る。第二テーパ面84は、素材50のテーパ筒部22に対応し、テーパ筒部22の内周面に接触し得る。
【0040】
続いて、
図5に示すように、型配置工程の後に、素材50が外周型70に設置される(
図4のS3:「素材配置工程」)。素材50の筒状本体20のテーパ筒部22(係止部)が、外周型70の第一テーパ面72(被係止部)に接触し、素材50は、外周型70に対して軸方向下方へ移動することを規制される。このとき、素材50の筒状本体20の厚肉部23は、外周型70の円筒内周面71に接触する。つまり、外周型70は、外周型70の被係止部としての第一テーパ面72を素材50の係止部としてのテーパ筒部22に軸方向に係止させると共に、素材50の筒状本体20の外周面を支持する。
【0041】
このとき、外周型70の第二テーパ面73及び反溶着面形成部75は、素材50の被成形部51に非接触となる。さらに、素材50が配置されるときには、外周型70は、所定温度とされる。本実施形態においては、所定温度は、常温(室温)、例えば25℃程度である。つまり、外周型70は、この時点において加温されない。
【0042】
続いて、
図6に示すように、素材配置工程の後に、内周型80を外周型70の所定温度より高温とする。内周型80の温度は、内周型80を素材50に接触させた状態において、素材50の少なくとも内層61をフレア成形することができる程度に柔らかくすることができる温度であると共に、素材50を構成する各層61〜65の多層構造が維持される温度である。本実施形態においては、内周型80の温度は、燃料バリア層62の軟化点より十分に低い温度である。
【0043】
そして、高温の内周型80を外周型70に近づけて、内周型80の第二テーパ面84を素材50の被成形部51の開口から挿入させる。さらに、内周型80を外周型70に近づけて、
図6に示すように、内周型80の円筒面83を、素材50の被成形部51の全長に亘って接触させる。この状態を所定時間維持することで、素材50の被成形部51が加温される(
図4のS4:「加温工程」)。このとき、被成形部51を構成する全ての層61〜65が軟化して混合されることはなく、多層構造を維持しつつも、特に内層61が柔らかくなる。
【0044】
このとき、外周型70は、被成形部51に接触していない位置に位置する。さらに、外周型70は、この時点においても常温のままである。そのため、素材50は、内周型80によって加温されるが、外周型70によっては加温されることはない。
【0045】
続いて、
図7に示すように、加温工程の後に、内周型80を外周型70にさらに近づけて、外周型70のストッパ平面74と内周型80の本体部81の溶着面形成部81aが接触する状態まで、内周型80を下方へ移動する。内周型80は、加温工程の位置から外周型70に接触する位置へ移動する。さらに、内周型80は、外周型70に接触した位置にて、所定時間維持する。
【0046】
つまり、素材50の被成形部51は、内周型80の第一テーパ面82及び溶着面形成部81aに沿って変形し、内周型80の第一テーパ面82及び溶着面形成部81aと外周型70の第二テーパ面73及び反溶着面形成部75によりフランジ30がフレア成形される(
図4のS5:「フレア成形工程」)。
【0047】
詳細には、まず、内周型80の第一テーパ面82が、素材50の被成形部51の内周面に接触しつつ、素材50の被成形部51を第一テーパ面72に沿って拡径変形させる。さらに、内周型80の溶着面形成部81aが素材50の被成形部51の端部に接触すると、内周型80の溶着面形成部81aが、素材50の被成形部51を溶着面形成部81aに沿ってさらに拡径変形させる。
【0048】
そうすると、素材50の被成形部51の一部は、外周型70の第二テーパ面73と内周型80の第一テーパ面82との間に径方向に挟まれることにより、フランジ30のテーパ筒部31を形成する。また、素材50の被成形部51の他の一部は、外周型70の反溶着面形成部75と内周型80の溶着面形成部81aとの間に軸方向に挟まれることにより、フランジ30の円盤部32を形成する。
【0049】
そして、加温工程にて、内周型80により素材50の内層61側が加温されるため、内層61側は柔らかくなり、外層63側は内層61に比べると柔らかくなりにくい。そのため、内層61は、流動しやすい状態であるが、外層63は、比較的流動しにくい状態となる。
【0050】
従って、素材50の被成形部51がフレア成形される際に、流動しやすい内層61は、重量方向下方へ流動しようとする。しかし、フランジ30の円盤部32に相当する部位がフレア成形される時には、素材50の内層61が重力方向上方に位置するため、例えば、外周型70の反溶着面形成部75の底面に向かって流動するほどまでならない。従って、フランジ30が確実に形成される。
【0051】
ここで、上記のように、外周型70と内周型80とによりフランジ30をフレア成形する際に、内周型80は、素材50の被成形部51を軸方向下方に押し付ける力を発生する。この力は、外周型70と素材50との間にも伝達される。仮に、素材50が外周型70に対して軸方向に位置ずれを生じてしますと、所望位置にフランジ30を形成することはできない。そのため、内周型80が素材50の被成形部51をフレア成形する際において、外周型70が素材50の軸方向位置を保持する必要がある。
【0052】
そこで、素材50の係止部としてのテーパ筒部22と、外周型70の被係止部としての第一テーパ面72とが係止し合うことによって、外周型70は、素材50の軸方向位置を保持する。ここで、外周型70と素材50との係止力は、両者の摩擦力に依存する。そのため、両者の温度が高いほど、摩擦力が低下する。
【0053】
しかし、フレア成形工程において、外周型70は、やはり積極的に加温されるものではない。内周型80が外周型70に近づくことによって、内周型80の熱が素材50を介して伝達される。しかし、外周型70に熱が伝達された状態であっても、外周型70は、内周型80の温度より十分に低温である。そのため、両者の間の摩擦力は、十分に高くなり、外周型70と素材50との軸方向の相対位置にずれが生じにくい。従って、所望の位置にフランジ30がフレア成形される。
【0054】
続いて、
図7に示すように、素材50が外周型70及び内周型80に挟まれた状態のままで、プレス装置本体(図示せず)から取り外す。取り外されたユニット50,70,80は、所定温度の槽に、所定時間入れることで、素材50の全体加熱処理を行う(
図4のS6:「全体加熱処理工程」)。この場合、上述した加温工程及びフレア成形工程のときとは異なり、素材50全体が加熱される。この全体加熱処理により、素材50の内部応力が除去される。
【0055】
続いて、素材50が外周型70及び内周型80に挟まれた状態のままで冷却し(
図4のS7:「冷却工程」)、外周型70及び内周型80を素材50から取り外す(
図4のS8:「離型工程」)。そうすると、フィラーチューブ13が完成する。
【0056】
(5.効果)
上述したように、燃料タンク11の開口部に溶着される熱可塑性樹脂製のフィラーチューブ13の製造方法についての効果を説明する。
対象のフィラーチューブ13は、筒状本体20と、筒状本体20の端部から径方向外方に延在し、燃料タンク11に溶着される端面を有するフランジ30と、筒状本体20の外周側に設けられる係止部(22)とを備える。フィラーチューブ13の素材50は、筒状本体20と、フランジ30がフレア成形される前の部位としての筒状の被成形部51と、係止部(22)とを備える。
【0057】
フィラーチューブ13の製造方法は、外周型70及び内周型80を用いる。外周型70は、素材50の筒状本体20の外周面を支持可能であり、フランジ30の反溶着面を形成可能な反溶着面形成部75を備え、且つ、係止部(22)に対して軸方向に係止する被係止部(72)を備える。内周型80は、素材50の少なくとも被成形部51に挿入可能であり、フランジ30の溶着面を形成可能な溶着面形成部81aを備える。
【0058】
そして、フィラーチューブ13の製造方法は、被係止部(72)を係止部(22)に対して軸方向に係止させると共に、所定温度とされた外周型70が素材50の筒状本体20の外周面を支持するように、素材50を外周型70に配置する素材配置工程(S3)と、素材配置工程(S3)の後に、外周型70の所定温度より高温とされた内周型80を被成形部51の内周側に挿入し、且つ、外周型70及び内周型80を軸方向に相対移動させて反溶着面形成部75及び溶着面形成部81aが被成形部51を軸方向に挟み込むことでフランジ30をフレア成形するフレア成形工程(S5)とを備える。
【0059】
上記製造方法によれば、素材50における筒状の被成形部51がフレア成形されることにより、フランジ30が成形される。このとき、フィラーチューブ13の素材50の外周側を支持する外周型70と、内周側を支持する内周型80とが用いられる。ここで、フレア成形工程において、内周型80は、外周型70より高温にされる。つまり、内周型80によって素材50の被成形部51は加温され、フレア成形しやすい状態となる。
【0060】
一方、外周型70は、フレア成形工程において、内周型80に比べて低温である。この外周型70は、フレア成形工程に先立って、素材50が配置される型である。このとき、素材50の係止部(22)が、外周型70の被係止部(72)に係止される状態とされる。つまり、フレア成形工程において、内周型80が相対的に高温にされたとしても、外周型70は低温であるため、外周型70に接触している素材50の部位が変形しやすい状態にはならず、高い摩擦力を発揮し、結果として外周型70と素材50との相対位置にずれが生じにくい。従って、フィラーチューブ13の素材50における所望の位置にフランジ30がフレア成形される。
【0061】
また、フィラーチューブ13の製造方法は、素材配置工程(S3)の後に、外周型70の所定温度より高温とされた内周型80を被成形部51の内周側に挿入した所定位置にて、被成形部51を所定時間加温する加温工程(S4)をさらに備える。そして、フレア成形工程(S5)は、加温工程(S4)の後に、外周型70及び内周型80を軸方向に相対移動させて反溶着面形成部75及び溶着面形成部81aが被成形部51を軸方向に挟み込むことでフランジ30をフレア成形する。
【0062】
素材50は、内周型80によって加温されており、外周型70によっては加温されていない。そのため、フレア成形を行う前に、内周型80により素材50を所定時間加温している。その結果、フレア成形の際に、確実にフランジ30が成形できる。
【0063】
また、加温工程(S4)は、
係止部(22)から端面側に離れた部位のみを加温する。従って、加温工程によって、
係止部(22)は、それほど加温されることはなく、確実に係止力を発揮する。なお、本実施形態においては、加温工程(S4)において加温される部位は、素材50の被成形部51であり、被成形部51は、係止部(22)から端面側に離れている。より詳細には、本実施形態において、加温工程(S4)において加温される部位には、筒状本体20が含まれていない。
【0064】
また、外周型70の所定温度は、常温である。従って、外周型70に接触している素材50は、外周型70によって加温されることはない。このようにすることで、確実に、外周型70が素材50に対する係止力を発揮する。
【0065】
また、フィラーチューブ13及びその素材50は、最内層の厚みを最も厚く形成した多層構造であり、フレア成形工程(S5)は、被成形部51の少なくとも最内層(41,61)を内周型80により加温しながら、フランジ30をフレア成形する。フィラーチューブ13は、多層構造である場合には、加温工程及びフレア成形工程においても多層構造を維持する必要がある。最内層41,61が最も厚く形成されることで、フランジ30をフレア成形する際に、多層構造を維持しやすくなる。また、フランジ30の最内層41,61が燃料タンク11への溶着面となるが、最内層41,61が最も厚いことで溶着体積を十分に確保することができ、結果として溶着力を確保できる。特に、フランジ30がフレア成形される際には、最内層41,61が最も伸張することになり、溶着体積を減少するように作用する。しかし、最内層41,61は厚いため、溶着体積の減少を考慮したとしても、十分な溶着体積を確保することができる。
【0066】
また、フィラーチューブ13の製造方法は、フレア成形工程(S5)の後に、フィラーチューブ13が外周型70及び内周型80に挟まれた状態のまま全体加熱処理を行う全体加熱処理工程(S6)をさらに備える。全体加熱処理が行われることで、内部応力が除去されることで、確実に所望形状のフィラーチューブ13が得られる。
【0067】
また、内周型80は、外周型70に対して上方に配置され、外周型70に対して重力方向に相対移動可能に配置される。ここで、加温工程(S4)にて、内周型80により素材50の内層61側が加温されるため、内層61側は柔らかくなり、外層63側は内層61に比べると柔らかくなりにくい。そのため、内層61は、流動しやすい状態であるが、外層63は、比較的流動しにくい状態となる。
【0068】
従って、素材50の被成形部51がフレア成形される際に、流動しやすい内層61は、重量方向下方へ流動しようとする。しかし、フランジ30がフレア成形される時には、素材50の内層61が重力方向上方に位置するため、例えば、外周型70の反溶着面形成部75の底面に向かって流動するほどまでならない。従って、フランジ30が確実に形成される。
【0069】
なお、上記実施形態において、素材50のテーパ筒部22を係止部とし、外周型70の第一テーパ面72を被係止部としたが、これに限られるものではない。例えば、素材50が蛇腹部を有する場合には、蛇腹部を係止部とし、蛇腹部に対応する外周型70の部位を被係止部とすることもできる。また、係止部は、素材50の筒状本体20の外周面から径方向外方に突出する突起であり、被係止部は、当該突起に係止される凹所とすることもできる。