【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開事由1]第52回下水道研究発表会口頭セッションプログラムでの公開 掲載年月日 :平成27年6月25日 掲載アドレス:http://www.gesuikyou.jp/presenter2015/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開事由2]第52回下水道研究発表会講演集での公開 発行者名 :公益社団法人 日本下水道協会 刊行物名 :第52回下水道研究発表会講演集 掲載頁 :第749頁乃至第751頁 発行日 :平成27年7月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開事由3]第52回下水道研究発表会での公開 集会名 :第52回下水道研究発表会 開催日 :平成27年7月28日〜平成27年7月30日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜板は、前記一面に、前記一面上の被処理水の流れに沿った方向または直交する方向の1つまたは複数の溝を形成することにより前記汚泥の捕捉処理がなされている請求項1〜4のいずれか1項に記載の固液分離システム。
前記傾斜板は複数設けられるとともに、前記一面が重力方向に対して20度以上の角度をなし、かつ、前記他面が水平方向に対して10度以上の角度をなして配置される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固液分離システム。
前記傾斜板は複数設けられるとともに、前記傾斜板が設けられる領域内の被処理水の流入側において前記流入側と反対側よりも狭い間隔で配置され、前記被処理水の流速のばらつきを低減させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の固液分離システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の、下水処理場の最終沈殿池における固液分離システム、および固液分離システムで用いられる傾斜板について説明する。
【0023】
本発明の一実施形態の固液分離システム5の一例が
図1〜3に示されている。
図1〜3に示される例では、一実施形態の固液分離システム5は、本発明の一実施形態の傾斜板1を備えている。一実施形態の固液分離システム5は、
図3に示されるように下水処理場の最終沈殿池Pにおける被処理水Wの固液分離に適用される。
【0024】
図1および
図2には、一実施形態の傾斜板1が、傾斜板装置10を構成している状態で示されている。
図1に示される傾斜板装置10は、互いに平行に設けられた上側フレーム31a、31bおよび下側フレーム32a、32bと、上側フレーム31aおよび31b間ならびに下側フレーム32aおよび32b間それぞれに互いに平行に架設された複数の支持棒33とを有している。そして、複数の傾斜板1が、上側フレーム31a、31bおよび下側フレーム32a、32bに対して傾斜して、上下一対の支持棒33に取り付けられている。
図2に示されるように、傾斜板1は、下側フレーム32a、32b側の一面1aと、一面1a側と反対側の他面1bとを有し、上側フレーム31a、31bおよび下側フレーム32a、32bの長さ方向にそって、傾斜して複数個並置されている。傾斜板装置10は、下水処理場の最終沈殿池P(
図3参照)内に、下側フレーム32a、32bを最終沈殿池Pの底面側に向けて設置される。従って、傾斜板1の一面1aが最終沈殿池Pの底面側に向けられる。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態の傾斜板1の一面1aには、汚泥の捕捉処理2がなされている。なお、「汚泥の捕捉処理」とは、被処理水中の汚泥が最終沈殿池から流出しないように、傾斜板1の表面を汚泥の滞留し易い状態にする処理である。たとえば、傾斜板の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に表面に凹凸を設けることにより傾斜板の表面を汚泥が付着し易い状態にすることなどが例示されるが、これらに限定されない。
図1に示される例では、微細な複数の凹み2aが設けられ、一面1aに凹凸を形成することにより汚泥の捕捉処理がなされている。汚泥の捕捉処理の他の具体例については後述する。
【0026】
本実施形態の傾斜板1は、たとえば傾斜板装置10を構成し、
図3に示されるように、下水処理場の最終沈殿池Pに、被処理水Wの水面に対して傾斜して、かつ、一面1aを最終沈殿池Pの底面側に向けて設置される。傾斜板1を備える一実施形態の固液分離システム5は、たとえば、少なくとも500g/m
3の活性汚泥浮遊物質濃度(MLSS濃度)を有する被処理水が8m
3/(m
2・日)以上の水面積負荷で流入する最終沈殿池に適用される。換言すると、傾斜板1を備える固液分離システム5は、少なくとも500g/m
3のMLSS濃度を有し、8m
3/(m
2・日)以上の水面積負荷で流入する被処理水を所定の基準値(管理目標値)以下の汚泥濃度に低減できるように構成される。最終沈殿池の処理水の汚泥濃度の管理目標値とは、たとえば、10g/m
3以下、好ましくは、5g/m
3以下である。或いは、たとえば愛知県刈谷市における所定の管理目標値は、公害防止協定に基づき、25g/m
3以下であり、地域により異なり得る。最終沈殿池の水面積負荷は、8m
3/(m
2・日)以上であれば、上限について限定されるものではないが、傾斜板1を備える固液分離システム5は、たとえば、8m
3/(m
2・日)以上100m
3/(m
2・日)以下の水面積負荷で被処理水が流入する下水処理場の最終沈殿池に適用される。傾斜板が設置された下水処理場の最終沈殿池の処理能力の例については、後述の実施例で説明する。
【0027】
傾斜板装置10は、
図1に例示されるように、上側フレーム31a、31b、下側フレーム32a、32b、および、支持棒33によって支持される複数の傾斜板を備えている。
図1に示される例では、傾斜板装置10は、本発明の一実施形態の傾斜板1を複数個備えている。そして、傾斜板装置10は、
図3に示されるように、最終沈殿池Pの底面(下方)側から被処理水の水面(上方)側へと水流を生じさせる上向流式の沈殿システムに用いられる。なお、
図3では、傾斜板装置10の各フレームおよび支持棒は省略され、傾斜して並置された複数の傾斜板1だけが示されている。複数の傾斜板1は、沈殿池Pの底面側に向けられる一面1aと重力方向Gとのなす角A(
図2参照)が20度以上の角度をなし、かつ、他面1bと、重力方向Gに直交する水平方向Hとのなす角B(
図2参照)が、10度以上の角度をなすように配置される。加えて、複数の傾斜板1は、傾斜板装置10内の被処理水Wの流速のばらつきが低減し、それにより傾斜板1の間を流れる被処理水Wからの浮遊汚泥が複数の傾斜板1それぞれの一面1aに捕捉され得るように互いの間隔を調整して配置される。
【0028】
図3に示されるように、傾斜板装置10は、たとえば、原水(被処理水W)の流入部41と流入部41と反対側の処理水の流出部44とを有する下水処理場の最終沈殿池Pの略中央部から下流側(流出部44側)である後段部分に設置される。複数の傾斜板1は、水面側を流入部41側に傾けて並置されている。傾斜板装置10は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面との間に所定の空間が確保されるように、たとえば、図示しない支持体上に載置されるか、図示しない横架材などから吊り下げられる。
【0029】
図3に示される例では、傾斜板装置10の上流側(流入部41側)であって最終沈殿池Pの略中央部分に、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側への流れを阻む阻流板42が設けられている。阻流板42よりも下流側(流出部44側)の被処理水Wの水面付近には、上流側から下流側に向かう方向に沿って越流堰43が設置され、越流堰43に囲まれて流出部44に連通する水路(トラフ)45が設けられている。流入部41から流れてきた被処理水Wは、阻流板42に水流方向を阻まれ、阻流板42の下端と最終沈殿池Pの底面との間の部分に向って下降する。最終沈殿池Pの底面と阻流板42の下端との間を通り抜けた被処理水Wは、トラフ45に向かう上向流Fとなり、傾斜板装置10の各傾斜板1の間を上昇する。そして、被処理水W中の汚泥が、傾斜板装置10内を通過する間に沈降し、傾斜板1の他面1b上に沈殿することにより被処理水Wが浄化される。傾斜板1の他面1b上に沈殿した汚泥は、堆積に伴って自重で滑落する。
【0030】
ここで、本発明の傾斜板および傾斜板装置による下水処理場の最終沈殿池の処理能力向上について説明する。前述のように、下水処理場の最終沈殿池の処理能力を高める1つの方策として、沈降面積を大きくすることが考えられる。本発明者らは、最終沈殿池の面積を大きくすることなく沈降面積を高める手段として、沈殿池を多階層化する傾斜板装置に着眼した。傾斜板装置は、複数の板を傾斜させて並置することによって、汚泥の沈降距離の短縮による効率アップを図ると共に、沈降面積を増大させて沈殿池の能力を高める装置であり、多くの浄水場で用いられている。
【0031】
図9には、傾斜板装置内の傾斜板111が模式的に示されている。沈殿池内に傾斜板装置として複数の傾斜板111が設けられることにより、傾斜板111が設けられている領域における汚泥Mの最大の沈降距離は、傾斜板111全体の重力(垂直)方向の長さh1から、各傾斜板111間の重力方向の間隔h2となるため、沈降効率がh1/h2倍向上する。また、「水道施設設計指針2012」(社団法人日本水道協会)によれば、傾斜板装置の水面積負荷は、被処理水の水量を傾斜板の水平投影面積(
図9における傾斜板111の投影距離Lp×傾斜板111の幅(
図9上の奥行))の合計で除して求めるとされている。従って、たとえば、既存の沈殿池に傾斜板装置を設置する場合は、傾斜板の間隔pをより狭くする方が、沈降距離h2が短くなり、併せて、傾斜板の数が増えることにより沈降面積が増えるため、沈降効率の向上と被処理水の許容量の増大とが図れるものと考えられている。すなわち、狭ピッチで多数の傾斜板を配置するのが、浄水場の沈殿池の能力向上には好ましいと考えられている。
【0032】
一方、下水処理場では、傾斜板装置は使用されておらず、現に、前述の「下水道施設計画・設計指針と解説−2009年版−」にも、傾斜板装置は、最終沈殿池の付帯設備として何も記載されていない。そのような状況の中、本発明者らは傾斜板装置に着眼した。そして、本発明者らは、浄水場と下水処理場とでは、流入する原水の性状(汚泥の成分および濃度、水量など)が異なるため、浄水場の沈殿池で用いられる傾斜板装置と同様の思想に基づく傾斜板装置をそのまま下水処理場に適用しても、必ずしも最良の能力向上作用が得られるとは限らないと考えた。たとえば、本発明者らは、下水処理場では、浄水場と比べて汚泥の粒径は相対的に大きく、また、下水処理場の汚泥は活性汚泥と呼ばれる微生物フロックであることから構成成分が浄水場とは異なり、そのため浄水場とは汚泥の沈降性に違いがあるものと考えた。
【0033】
図9を再び参照し、傾斜板111中の汚泥Mの沈降について説明する。傾斜板111の下端側から傾斜板111の間に流入した汚泥Mは被処理水の上向流Fに乗って傾斜板111の間を上昇する。たとえば、
図9上、右側の傾斜板111a寄りの点aに流入した汚泥は、沈降が不十分な場合、左側の傾斜板111bの表面上に沈降する前に傾斜板111aの上端部(たとえば点b)に達し、最終的に沈殿池から流出してしまうことになり得る。点aに流入した汚泥が流出しないためには、水の上昇中に汚泥が沈降することにより、遅くとも傾斜板111a、111bの上端に達するときには傾斜板111b上(点c)に汚泥が沈殿し、傾斜板111bにより更なる上昇を阻まれる必要がある。すなわち、汚泥Mの沈降終端速度は、被処理水が傾斜板の下端から上端まで流れる間に、少なくとも距離h2だけ沈降できる程度に速いことが好ましい。
【0034】
図10には、本発明者らが、4つの下水処理場から採取した被処理水中の汚泥の沈降終端速度を粒径ごとに調べた平均値を近似直線91により示し、エラーバー92により測定結果の範囲を示している。
図10から、汚泥の沈降終端速度は粒径に対して高い直線性を有しており、汚泥の粒径が大きいほど沈降終端速度は速いことがわかる。
【0035】
また、本発明者らは、下水処理場では一般家庭などからの排水量の変動に応じて原水の流入量が大きく変化するため、安定して所定の処理能力を発揮させるには、被処理水が最終沈殿池内で旋回や短絡すること無くバランスよく流れる構造にするのが、浄水場の沈殿池以上に好ましい可能性があると考えた。そして、傾斜板は被処理水の水流に対して一種の抵抗体となり得るものであり、そのような抵抗体が多くあると最終沈殿池内に流速のばらつきが生じ易くなるため、最終沈殿池全体での効率的な汚泥の沈降の妨げになり得ると考えた。そして、傾斜板の配置間隔と沈降面積との関係、および、下水処理場の最終沈殿池における汚泥の沈降終端速度についての前述の調査結果も勘案し、被処理水の流速のばらつきを少なくすることを加味した理想的な傾斜板の配置間隔が存在し得ることを見出した。この傾斜板の配置間隔と処理水の水質との関係について調べた結果については、後述の実施例で説明する。
【0036】
このように、下水処理場の最終沈殿池では、傾斜板の配置間隔を広げることにより沈降の促進が期待されるが、汚泥が堆積する傾斜板表面の合計面積が減少することもまた事実である。そこで、本発明者らは、傾斜板装置全体の汚泥の保持能力を維持または向上させるべく、さらに検討を重ねた。
図10を再度参照すると、汚泥の粒径が小さくなるほど沈降終端速度は低下する。本発明者らは、汚泥の粒径がさらに小さく沈降終端速度が遅い場合には、
図9に示されるように、傾斜板111aの下面付近は、傾斜板111bの上面付近と比較して微小な汚泥M1の濃度が高まると考えた。そして、このように沈降終端速度の遅い微小な粒径の汚泥を傾斜板の下面で効率的に捕捉することに想到した。
【0037】
本発明者らが傾斜板の下面で汚泥を捕捉することの妥当性を調べた結果が表1に示されている。この調査では、傾斜板装置に組み込まれ、最終沈殿池に2年間設置された傾斜板が、傾斜板装置の上流側から下流側にわたる4か所(検体1〜4)で回収され、上面側および下面側の乾燥汚泥の保持量が調べられた。また、表2には、各検体に付着していた汚泥の有機物の割合の調査結果が示されている。汚泥中の有機物の割合は、汚泥の堆積後の経過時間の目安となり得る。すなわち、堆積後の時間が長いほど活性汚泥中の微生物の自己分解が進むため有機物の割合が減少する。
【0040】
表1から、傾斜板の下面側にも、上面よりは少ないものの相当量の汚泥が付着していることがわかる。また、表2から、汚泥の有機物割合は上面よりも下面の方が高く、付着していた汚泥は下面側の方が新しいものであったことがわかる。すなわち、下面側の付着物は単なる汚れの蓄積では無く、上面側で汚泥の堆積と滑落とが繰り返されるよりも短いサイクルで下面側において汚泥の付着と剥落が繰り返されていることを示しており、被処理水中の浮遊汚泥の捕捉であることがわかる。
【0041】
表1および表2に示される調査で、傾斜板の下面への付着が確認された汚泥は、被処理水中の浮遊汚泥の一部が摩擦または衝突などにより傾斜板111a(
図9参照)の表面(下面)上に留まったものと考えられる。そして、これらの付着汚泥の他に、傾斜板111aの表面に沿って上昇し、そのまま沈殿池から流出してしまうものがあったことは想像に難くない。また、表1および表2に結果が示される調査は、下面側に特に汚泥を捕捉するための処理が施されていない従来の傾斜板についての調査である。従って、傾斜板の下面側に汚泥の捕捉機能を高める捕捉処理を施すことにより、さらに多くの浮遊汚泥が捕捉できるようになり、処理水の水質を向上させることができる。
【0042】
また、傾斜板の下面で汚泥を捕捉する場合も、最終沈殿池内の被処理水の流速のばらつきが少なく、傾斜板装置内の全ての傾斜板で均等に被処理水の水流負荷が掛かるのが、最終沈殿池全体で効率的に汚泥を捕捉し得る点で好ましいと考えられる。流速のばらつきがあると、乱流や逆流が生じ易く、その結果、傾斜板の下面(一面)に沿う整然とした流れが阻害されるため、傾斜板の下面に汚泥の捕捉処理を施しても捕捉機能が十分に発揮されなくなるからである。すなわち、傾斜板の下面への汚泥の捕捉処理と併せて、傾斜板の表面に沿った安定した上向流が得られるように流速のばらつきを少なくすることにより、傾斜板装置全体の汚泥の保持能力を最大限高めることができる。一実施形態の傾斜板1は、単に沈降面積を増やすために狭いピッチで数多く配置されるのではなく、傾斜板が被処理水の流れの抵抗体ともなり得ることに鑑み、抵抗体としての作用を小さくして流速のばらつきが低減されるように配置間隔が調整されるのが好ましい。それにより、傾斜板1の下面に沿って上昇する汚泥が効率よく捕捉される。傾斜板1の配置間隔は、好ましくは、被処理水の流速のばらつき低減による効果と沈降面積の減少による影響との両方を加味して調整される。その結果、最終沈殿池の処理能力を向上することができ、処理水の水質を改善することができる。
【0043】
再び図面を参照して、一実施形態の傾斜板1、および傾斜板装置10の説明を続ける。
図4(a)には、本実施形態の傾斜板1の一面1a側が示され、
図4(b)には、他面1b側が示されている。本実施形態の傾斜板1は、平面形状が略正方形の板材である。傾斜板1の平面形状は、正方形に限定されず、矩形、四角形以外の多角形、円形または楕円形であってもよい。傾斜板1の一面1aには、外周形状の対向する2辺に沿って設けられた溝部3内に、フック装着穴3aが設けられている。
図4に例示される傾斜板1は、フック装着穴3aに装着したフック34(
図1参照)により傾斜板装置10の支持棒33(
図1参照)に取付けられる。しかしながら、傾斜板1の支持棒33への取り付け方法は、フック以外の手段であってもよい。その場合、溝部3やフック穴3aは無くてもよく、また、別の取付け手段が設けられていてもよい。
【0044】
傾斜板1の材質は、前述の捕捉処理が一面1aになされ得るものであれば特に限定されない。傾斜板1の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0045】
傾斜板1の一面1aには、前述のように、汚泥の捕捉処理がなされている。
図1および
図4(a)に示される例では、汚泥の捕捉処理として、傾斜板1の一面1aが粗くされることにより無数の微細な凹み2aが一面1aの略全面に均一に形成され、一面1aが所謂梨地状の表面にされている。このように一面1aが粗くされることにより一面1aに沿って上昇する汚泥の動きが妨げられ、傾斜板1の下面(一面1a)に汚泥が捕捉される。傾斜板1の一面1aの粗面化の方法は特に限定されないが、たとえば、サンドブラストなどで機械的に加工されてよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工、または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、捕捉処理は、一面1aの全面になされていなくてもよい。たとえば、外周付近に所定の幅の余白部分が設けられ、余白部分以外の部分に捕捉処理がなされてもよい。
【0046】
図4(b)に示されるように、本実施形態の傾斜板1の他面1bは、溝部3(
図4(a)参照)に応じて突出部3bが形成されていることを除いて凹凸の無い全くの平坦面にされている。他面1bには汚泥が沈殿する。汚泥が他面1b上に長く滞留して厚く堆積すると、被処理水の流れを妨げるおそれがある。そのため、他面1bは、汚泥が滑落し易いように平坦な面であることが好ましい。前述のように溝部3が形成されない場合は突出部3bも形成されなくてよい。しかしながら、他面1bにも、突出部3b以外の凹みや凸状部があってもよく、たとえば、傾斜板1の補強用のリブなどが形成されていてもよい。そのようなリブは、汚泥の滑落を妨げないように、滑落方向に沿って設けられるのが好ましい。
【0047】
図5a〜gには、傾斜板1の一面1aの捕捉処理の他の例が示されている。
図5aに示される例では、一面1aに、捕捉処理として互いに平行な複数の溝2bが形成されている。被処理水中の汚泥が溝2b内に入り込むことにより捕捉される。
図5bには、
図5aの5B−5B線での断面が拡大して示されている。傾斜板1の厚さの略10分の1程度の深さおよび幅の複数の溝2bが、溝2bの幅と略同じ幅の間隔を空けて等間隔で形成されている。傾斜板1は、一端部1c側が最終沈殿池の底面側となるように設置される。すなわち、溝2bは、最終沈殿池の底面側から上昇する被処理水の流れに沿った方向に形成されている。溝2bは、
図5cに示されるように、一端部1c側が最終沈殿池の底面側となるように設置されたときに、被処理水の上向きの流れに直交する方向に形成されてもよい。
【0048】
或いは、溝2bは、
図5dに示されるように、直交する2つの方向それぞれに形成され、全体として格子模様をなすように形成されてもよい。また、その場合、
図5dの例のように四角形の傾斜板1の外周縁に平行な溝ではなく、外周縁に対して所定の角度、たとえば45度傾斜して互いに直交する2方向の溝が形成されてもよい。たとえば、ローレット加工により、直交する2方向の溝が形成されてよい。また、溝2bの断面形状は、
図5bに示されるような方形ではなく、
図5eに示されるように溝の深部に向ってテーパーする形状であってよく、全体として鋸刃状の形状であってよい。溝2bの形成方法はローレット加工に限定されず、金型成形、または微細な機械加工など、あらゆる方法が用いられてよい。溝2bは、
図5a〜5eに示される例に限定されず、任意の形状、数および間隔で設けられてよい。
【0049】
図5fには、捕捉処理として、平面形状が円形の凹み2cが形成される例が示されている。凹み2cは、円筒状、または円錐状の凹みであってよく、球形の一部分の形状、所謂ディンプル状の凹みであってよい。
図5fの例では、2cは、全体としてドットパターンを呈するように縦横いずれの方向にも等間隔に、一面1aの略全体に設けられている。凹み2cの平面形状は円形に限定されず、三角形や四角形などの多角形や楕円形であってよく、任意の形状であってよい。また、
図5fに示されるように規則的に配置されていなくてもよく、任意の配置パターン、かつ、任意の密度で形成されてよい。
【0050】
また、汚泥の捕捉処理は、傾斜板1の一面1a内で均一でなくてもよい。たとえば、
図5gには、汚泥の捕捉処理として、配置間隔を異ならせて凹み2cが形成されている、
図5fの例の変形例が示されている。凹み2c1は凹み2c2よりも狭い間隔で形成されている。凹み2c1、2c2が形成された傾斜板1が、どのような向きで最終沈殿池Pに設置されるかは任意である。狭い間隔で多く形成されている凹み2c1の方が汚泥の捕捉性が高いと考えられるので、その特性を考慮して、最終沈殿池内に配置される向きが決定される。
【0051】
凹み2a〜2cの深さは特に限定されない。たとえば、汚泥の粒径分布を調査して、最も多く含まれている粒径に応じて設定されてよい。汚泥の捕捉処理は、有底の凹みや溝でなく、貫通孔やスリットであってもよい。しかしながら、他面1b側まで貫通すると、他面1bの堆積汚泥の滑落性が低下する可能性があるので、非貫通の凹みや溝がより好ましい。
【0052】
捕捉処理は、凹みでは無く凸状部であってよい。すなわち、
図5a〜5eに示されるような溝2bが形成されるのでは無く、リブ状の凸状部が形成されてもよい。また、
図5fおよび
図5gに示される凹部2cではなく、任意の平面形状の複数の凸状部が形成されてもよい。浮遊汚泥が、凸状部により上昇を阻まれることにより、傾斜板1の一面1a上に捕捉される。傾斜板1の一面1a上には、あらゆる平面形状や間隔(ピッチ)で凹凸が形成されてよく、そのような凹凸の形成が捕捉処理とされてよい。
【0053】
傾斜板1の一面には、このように、多様な汚泥の捕捉処理がなされてよいが、前述のように、傾斜板1の他面1bの汚泥の滑落性は維持されるのが好ましい。従って、たとえば、一面1aだけが粗くされ、他面1bは粗面化処理されなくてもよい。その結果、一面1aと他面1bとで、表面粗さが異なっていてもよい。また、一面1aの表面粗さは、汚泥の粒径分布を調査して、最も多く含まれている粒径に応じて設定されてよい。
【0054】
傾斜板1の他面1bには、藻の付着を少なくする防藻処理が施されるのが好ましい。他面1aは日光に照らされるため、他面1aの周囲は、被処理水の温度や含有成分次第で藻の繁茂に適した環境となり得る。他面1b上の藻の繁茂は、堆積した汚泥の滑落性を低下させると考えられる。そのため、他面1bには、好ましくは防藻処理が施される。防藻処理としては、殺藻剤や抗菌剤、親水性素材のコーティング、或いはフッ素系塗料などの塗布が例示されるが、これらに限定されない。
【0055】
図1の例では、傾斜板1が、各フレーム31a、31b、32a、32b、および支持棒33によって支持されている。各フレームおよび支持棒33の材質は、ステンレスなどの金属またはポリ塩化ビニルなどの樹脂であってよい。傾斜板1を支持する構造は、
図1に示される構造に限定されず、複数の傾斜板1を所定の傾斜角度で並べて支持できるものであればよい。
【0056】
図2に示されるように、傾斜板1は、一面1aと重力方向Gとのなす角Aが20度以上の角度をなすように配置される。この場合、被処理水の上向きの流れを大きく妨げることなく、汚泥の捕捉を助長する摩擦力が一面1aと汚泥との間に生じ得る。また、傾斜板1は、他面1bと水平方向Hとのなす角Bが10度以上の角度をなすように配置される。この場合、汚泥の沈降面積をある程度確保しながら、堆積量が過大になる前に汚泥を滑落させることができる。傾斜板1は、このように、一面1aおよび他面1bが適度な角度の傾斜面となるように配置される。たとえば、傾斜板1は、互いに平行でない一面1aと他面1bとを有していてもよい。その場合も、傾斜板1は、一面1aが重力方向Gから20度以上、かつ、他面1bが水平方向Hから10度以上の範囲にあるように配置される。当然ながら、一面1aと他面1bとが平行でない場合でも両者が交差することは無い。なお、一面1aと他面1bとが平行な場合、一面1aと重力方向Gとのなす角Aの角度は、たとえば、20度≦A≦80度であり、好ましくは、20度≦A≦45度、より好ましくは、25度≦A≦35度である。
【0057】
傾斜板1の配置間隔は、被処理水の流速のばらつきが少なくなるように調整される。傾斜板1の具体的な配置間隔は特に限定されないが、たとえば、傾斜板1は、20〜400mmの範囲の間隔で配置される。傾斜板1は、好ましくは40〜280mm、より好ましくは70〜140mmの間隔で配置される。
【0058】
傾斜板1は、傾斜板1が設けられる領域内、すなわち傾斜板装置内で所定の領域ごとに間隔を異ならせて配置されてもよい。
図6(a)には、傾斜板1が異なる間隔で配置されている傾斜板装置10aが示されている。傾斜板装置10aは最終沈殿池Pの阻流板42よりも下流側の領域に設置されており、傾斜板1は、傾斜板装置10aの阻流板42側(被処理水Wが流入する側)において流出部44側(被処理水Wの流入側と反対側)よりも狭い間隔で配置されている。阻流板42によって流路を狭められた被処理水Wは、阻流板42の下流側の傾斜板装置10aの設置領域に流入するが、水流の抵抗体ともなり得る傾斜板1が阻流板42に近い部分では相対的に多く、阻流板42から遠い流出部44側では相対的に少なく配置することで抵抗体としての効果に勾配をつけることができ、比較的に流速が低下する流出部44側の流速低下を制限することができる。その結果として、被処理水の上向流Vの流速ばらつきが低減し得る。このように、傾斜板1の配置間隔は領域ごとに変えられてもよい。傾斜板1の配置間隔は、さらに多段階に変えられても、段階的にではなく連続的に変えられてもよい。また、構造などに起因して流入部側で流速が遅くなるような最終沈殿池では、流入部側で傾斜板1の配置間隔が広くされてもよい。
【0059】
被処理水の流速のばらつきは、傾斜板の配置間隔の調整に加えて、傾斜板の長さと配置する深さとを調整することにより低減されてもよい。
図6(b)には、阻流板42側よりも流出部44側において、全長の短い傾斜板が最終沈殿池Pの底面から離れて設置される傾斜板装置10bが示されている。阻流板42と最終沈殿池Pの底面との間を比較的速度を速めて通り抜けた被処理水Wは阻流板42付近の傾斜板1の下方の空間に流れ込む。その後、流出部44側に向かって水平方向に流れていくにつれて流速が低下していくが、流出部44側の傾斜板1の全長が短く比較的高い位置に配置されていることにより抵抗体としての効果が制限されているため流速がある程度維持される。その結果、阻流板42側と流出部44側との流速のばらつきが低減し得る。
【0060】
再び
図3を参照すると、最終沈殿池Pの底面付近には、汚泥掻き寄せ機46が装備されている。最終沈殿池Pの底面には、沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機46が、
図3上、時計回りに回転することにより汚泥ホッパー47に集められ、排泥される。汚泥Mの堆積量が多くなるに伴って汚泥の巻き上がりなどが増加し、最終沈殿池Pの処理水の水質が低下することがある。本発明者らは、汚泥掻き寄せ機46作動停止後の経過時間、すなわち、汚泥Mが底面から除去されることなく堆積し続ける時間と、阻流板42に最も近い傾斜板の下端から最終沈殿池の底面側へ1.4m(底面との距離0.4m)の位置での被処理水のMLSS濃度およびトラフ45内の処理水の水質との関係を調べた。その結果が
図7に示されている。
図7には、符号93で示す近似曲線で被処理水のMLSS濃度が示され、符号94で示す近似曲線で、処理水の水質が示されている。なお、処理水の水質は、汚泥除去率(%)=(処理水の汚泥濃度)/(最終沈殿池に流入する被処理水のMLSS濃度)×100で示されている。
【0061】
図7から明らかなように、時間の経過と共に被処理水のMLSS濃度が上昇し、また、1時間20分程度で、処理水の汚泥除去率が低下、すなわち、水質が悪化する。最終沈殿池の底面付近の被処理水のMLSS濃度の増加は堆積汚泥と被処理水との界面の上昇を意味しており、堆積汚泥の界面をモニタすることにより、汚泥掻き寄せ機46を効率的に動作させ、それにより汚泥界面を一定に保持するよう管理でき、結果として処理水の水質を良好に維持することができると考えられる。
【0062】
一実施形態の固液分離システム5には、好ましくは、最終沈殿池の底面に堆積する汚泥の表面(汚泥と被処理水との界面)と傾斜板1との距離、たとえば、傾斜板1の下端との距離を検知する手段が設けられる。この距離検知手段は、たとえば、1つまたは複数の傾斜板1の下端に設置され、汚泥界面との距離を測定する距離センサなどであってよい。また、この検知手段は、
図7に示される調査のように、傾斜板装置の下面から所定の深さの場所に設置され、その場所での水質の変化を測定することにより堆積汚泥の表面と傾斜板1もしくは傾斜板装置との距離を間接的に検知する水質センサであってもよい。
【0063】
また、本実施形態の固液分離システム5は、藻類の繁茂抑制手段を有していてよい。前述のように、傾斜板1の他面1bには藻が繁殖することがある。そのため、前述の傾斜板1への防藻処理に代えて、または加えて、たとえば傾斜板装置に繁茂抑制手段が設けられることが好ましい。繁茂抑制手段としては、図示されていないが、傾斜板装置10の傾斜板1を覆うように設けられる遮光ネットであってよい。日光が遮られることにより、藻の繁殖が抑制される。遮光ネットは、たとえば、上側フレーム31a、31b(
図1参照)に取付けられてよく、或いは、傾斜板装置10が設置された領域全体を覆うように最終沈殿池の周縁部分に取付けられてもよい。繁茂抑制手段は、遮光ネットに限定されず、日光を遮る硬質のカバー材であってもよく、バブリングまたは水流等による定期的な洗浄、あるいは藻の繁殖に適さない温度に被処理水の温度を維持する温度調節手段など、他の適切な手段であってよい。
【実施例】
【0064】
一実施形態の固液分離システムおよび傾斜板の実施例について説明する。本実施例は、概して、
図3に示される構造の下水処理場の最終沈殿池Pにおいて、最終沈殿池Pへの流入水量を変えながら、トラフ45内の処理水の汚泥濃度を調べた例である。傾斜板の配置間隔を異ならせた3種類の傾斜板装置X、Y、Zについて、それらを最終沈殿池Pに設置したときの処理水の汚泥濃度を調べた。また、比較のために、最終沈殿池Pに隣接する同構造かつ同寸法の最終沈殿池を用いて、傾斜板装置を設置しない最終沈殿池の処理水の汚泥濃度を並行して調べた。最終沈殿池Pは矩形沈殿池であり、構造寸法は、長さ41.6m、幅5.6m、有効水深3.2mであり、水面積233m
2であった。3種類の傾斜板装置X、Y、Zの傾斜板の配置間隔は、順に、70mm、70mm/140mm(阻流板42側略半分の領域が70mmで、残りの流出部44側の領域が140mm)、および140mmであった。傾斜板は、1000mm×1000mmの正方形の平板であり、汚泥の捕捉処理は施されていなかった。傾斜板は最終沈殿池の幅方向に4列にわたって配置され、各列の傾斜板の配置枚数は、傾斜板装置X、Y、Zの順に、186枚、139枚、93枚であった。傾斜板の一面(下面)と重力方向Gとのなす角Aは30度であり、他面(上面)と水平方向Hとのなす角Bは60度であった(
図2参照)。そして、被処理水の流入量を4000m
3/日から18000m
3/日まで変えて、すなわち、傾斜板装置が設置されない状態での水面積負荷を17.2m
3/(m
2・日)から77.2m
3/(m
2・日)まで変化させて、処理水の汚泥濃度を測定した。なお、被処理水のMLSS濃度の平均値は2500g/m
3であった。本実施例の結果が
図8に示されている。
図8において、符号95X〜95Zで示される近似直線は、それぞれ傾斜板装置X〜Zそれぞれを設置した場合の最終沈殿池Pの処理水の汚泥濃度を示している。また、符号96で示される近似直線は、比較のために実施した傾斜板装置なしの最終沈殿池の処理水の汚泥濃度を示している。
【0065】
図8に示されるように、流入水量の増加に伴って、傾斜板装置が設置されていない最終沈殿池では、急勾配で処理水の汚泥濃度が上昇している。一方、符号95X〜95Zに示されるように、傾斜板装置X〜Zが設置された場合は、流入水量が増加しても、汚泥濃度は緩やかに上昇するだけであり、傾斜板装置の設置により大幅に処理水の水質が改善されていることがわかる。符号95Xで示される近似直線の傾き(0.001)および符号96で示される近似直線の傾き(0.008)から、傾斜板装置Xの設置、すなわち、傾斜板を備える一実施形態の固液分離システムの適用により最終沈殿池の固液分離能力が約8倍向上したことがわかる。
【0066】
図8中の直線C1〜C3は、最終沈殿池Pにおいて傾斜板装置が無い状態で水面積負荷が20、40、60m
3/(m
2・日)となる流入水量の例をそれぞれ示している。傾斜板装置X〜Zが設置された最終沈殿池Pでは、処理水の汚泥濃度は、直線C1で例示される20m
3/(m
2・日)の水面積負荷において、前述の管理目標値の例、5g/m
3、10g/m
3、および25g/m
3のいずれよりも低い数値となっている。また、水面積負荷が40m
3/(m
2・日)程度(直線C2の位置)であっても10g/m
3以下の汚泥濃度の処理水が得られ、さらに、水面積負荷が60m
3/(m
2・日)程度(直線C3の位置)まで増加しても、管理目標値の例のうちの25g/m
3よりも十分低い汚泥濃度の処理水が得られると考えられる。
【0067】
前述のように、本実施例に用いた傾斜板には汚泥の捕捉処理は施されていなかった。一面1aに汚泥の捕捉処理がなされた本発明の一実施形態の傾斜板1を用いれば、最終沈殿池Pの処理能力はさらに向上すると考えられる。本実施例では、前述のように被処理水のMLSS濃度の平均値は2500g/m
3であった。被処理水のMLSS濃度の変動を100〜150%程度と想定すると、一実施形態の固液分離システム5および傾斜板1は、少なくとも500g/m
3のMLSS濃度の被処理水が8m
3/(m
2・日)以上の水面積負荷で流入する最終沈殿池に、十分な余力をもって適用可能と考えられる。なお、水面積負荷がさらに増えた場合の処理水の汚泥濃度を近似直線95Xから外挿すると、水面積負荷100m
3/(m
2・日)でも、前述の管理目標値の例のうちの25g/m
3は超えないものと推定される。一実施形態の固液分離システム5および傾斜板1が用いられる最終沈殿池の水面積負荷の上限は特に限定されないが、水面積負荷100m
3/(m
2・日)以下の最終沈殿池に用いられ得ると考えられる。
【0068】
また、符号95X〜95Zで示される結果から、傾斜板の配置間隔を広げた傾斜板装置を設置される最終沈殿池Pの方が、処理能力が向上していることがわかる。傾斜板の数量が少なくなり、沈降面積が減少するにも拘らず、被処理水の水流が整えられ、流速ばらつきが少なくなることにより処理能力が向上している。このように、下水処理場の最終沈殿池では、浄水場とは異なる思想に基づいて、傾斜板を備えた固液分離システムにより処理能力を向上することができる。