(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両用エンジン(E)からのトルクを伝達するトルク伝達経路(46,78,98)に、当該トルク伝達経路(46,78,89)の一部を構成する回転伝動部材(54,55;80,81;100,101)と、慣性回転体(65,85,105)との間に複数個のダンパスプリング(53)が介設されて成るダイナミックダンパ機構(64,84,104)が付設される流体式動力伝達装置において、前記回転伝動部材(54,55;80,81;100,101)および前記慣性回転体(65,85,105)のいずれか一方に常時連結される弾性部材(70,88)が、遠心力を受けて変形することを可能としつつ前記ダイナミックダンパ機構(64,84,104)に付加され、前記弾性部材(70,88)は、前記ダンパスプリング(53)でトルク変動を吸収し得る低速回転時には前記回転伝動部材(54,55;80,81;100,101)および前記慣性回転体(65,85,105)の他方との間にトルク方向の遊び(73,93)が生じるものの所定の回転数以上の高速回転時の遠心力による変形に応じて前記回転伝動部材(54,55;80,81;100,101)および前記慣性回転体(65,85,105)間で弾発力を発揮するようにして、前記回転伝動部材(54,55;80,81;100,101)および前記慣性回転体(65,85,105)間に配置されることを特徴とする流体式動力伝達装置。
前記弾性部材(70,88)を有する前記ダイナミックダンパ機構(64,84,104)のバネレートが、前記低速回転時に対する前記高速回転時の比を1よりも大きく4以下とするように設定されることを特徴とする請求項1に記載の流体式動力伝達装置。
少なくとも2種類の前記弾性部材(70,88)が、前記ダイナミックダンパ機構(104)のバネレートを少なくとも2つ以上の異なる回転数で変化させるようにして前記ダイナミックダンパ機構(104)に付加されることを特徴とする請求項1または2に記載の流体式動力伝達装置。
前記慣性回転体(85)の少なくとも一部を両側から挟む一対の前記回転伝動部材(80,81)が、前記慣性回転体(85)との間に介設される前記ダンパスプリング(53)を保持するスプリングホルダ(76)を構成するようにして相対回転不能に連結され、前記弾性部材(88)が前記スプリングホルダ(76)内に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体式動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
本発明の第1の実施の形態について
図1〜
図9を参照しながら説明すると、先ず
図1において、流体式動力伝達装置であるトルクコンバータは、ポンプインペラ11と、このポンプインペラ11に対向して配置されるタービンランナ12と、前記ポンプインペラ11および前記タービンランナ12の内周部間に配置されるステータ13とを備え、前記ポンプインペラ11、前記タービンランナ12および前記ステータ13間には、矢印14で示すように作動オイルを循環させる循環回路15が形成される。
【0023】
前記ポンプインペラ11は、椀状のポンプシェル16と、該ポンプシェル16の内面に設けられる複数のポンプブレード17と、それらのポンプブレード17を連結するポンプコアリング18と、前記ポンプシェル16の内周部にたとえば溶接によって固定されるポンプハブ19とを有し、前記ポンプハブ19には、トルクコンバータに作動オイルを供給するオイルポンプ(図示せず)が連動、連結される。
【0024】
また前記ポンプシェル16の外周部には、前記タービンランナ12を外側から覆う椀状の伝動カバー20が溶接によって結合されており、この伝動カバー20の外周部にリングギヤ21が溶接によって固着され、前記リングギヤ21には駆動板22締結される。また駆動板22には、車両用エンジンEのクランクシャフト23が同軸に締結されており、前記ポンプインペラ11には、車両用エンジンEから回転動力が入力される。
【0025】
前記タービンランナ12は、椀状のタービンシェル24と、該タービンシェル24の内面に設けられる複数のタービンブレード25と、それらのタービンブレード25を連結するタービンコアリング26とを有する。
【0026】
前記車両用エンジンEからの回転動力を図示しないミッションに伝達する出力シャフト27の端部は、前記伝動カバー20がその中心部に一体に有する有底円筒状の支持筒部20aに、軸受ブッシュ28を介して支持される。前記出力シャフト27は、前記ポンプハブ19との間に軸方向の間隔をあけた位置に配置される出力ハブ29にスプライン結合されており、前記出力ハブ29および前記伝動カバー20間にはニードルスラストベアリング30が介装される。
【0027】
前記ステータ13は、前記ポンプハブ19および前記出力ハブ29間に配置されるステータハブ31と、このステータハブ31の外周に設けられる複数のステータブレード32と、それらのステータブレード32の外周を連結するステータコアリング33とを有し、前記ポンプハブ19および前記ステータハブ31間にはスラストベアリング34が介装され、前記出力ハブ29および前記ステータハブ31間にはスラストベアリング35が介装される。
【0028】
前記ステータハブ31と、前記出力ハブ29とともに回転する前記出力シャフト27を相対回転自在に囲繞するステータシャフト36との間には、一方向クラッチ37が介設され、前記ステータシャフト36は、ミッションケース(図示せず)に回転不能に支持される。
【0029】
前記伝動カバー20および前記タービンシェル24間には、前記循環回路15に連通するクラッチ室38が形成され、このクラッチ室38内に、ロックアップクラッチ40と、前記出力ハブ29の外周に回転自在に支持される慣性回転体65と、当該慣性回転体65に対して制限された範囲での相対回転を可能としつつ前記慣性回転体65の少なくとも一部を両側から挟むスプリングホルダ42とが収容される。
【0030】
前記ロックアップクラッチ40は、前記伝動カバー20に摩擦接続可能なクラッチピストン43を有するとともに該クラッチピストン43を前記伝動カバー20に摩擦接続させた接続状態ならびに摩擦接続を解除した非接続状態を切替えることが可能であり、円板状に形成される前記クラッチピストン43の内周部は、前記出力ハブ29に軸方向移動を可能として摺動可能に支持される。
【0031】
前記クラッチ室38内は、前記クラッチピストン43によって、前記タービンランナ12側の内側室38aと、前記伝動カバー20側の外側室38bとに区画されており、前記ニードルスラストベアリング30に隣接して前記出力ハブ29に形成される油溝44が前記外側室38bに連通され、前記油溝44は円筒状の前記出力シャフト27内に連通する。また前記ポンプハブ19および前記ステータシャフト36間には、前記循環回路15の内周部に通じる油路45が形成される。前記油溝44および前記油路45には、前記オイルポンプおよびオイル溜め(図示せず)が交互に接続される。
【0032】
車両用エンジンEのアイドリング時や、極低速運転域では、前記油溝44から前記外側室38bに作動油が供給され、前記油路45から作動油が導出されており、この状態では外側室38bの方が内側室38aよりも高圧となり、前記クラッチピストン43は前記伝動カバー20の内面から離反する側に押されており、ロックアップクラッチ40は非接続状態となっている。この状態では、ポンプインペラ11およびタービンランナ12の相対回転は許容されており、車両用エンジンEによってポンプインペラ11が回転駆動されることで前記循環回路15内の作動油が、矢印14で示すように、ポンプインペラ11、タービンランナ12、ステータ13の順に循環回路15内を循環し、前記ポンプインペラ11の回転トルクが前記タービンランナ12、前記スプリングホルダ42および前記出力ハブ29を介して前記出力シャフト27に伝達される。
【0033】
前記ポンプインペラ11および前記タービンランナ12間でトルクの増幅作用が生じている状態では、それに伴う反力がステータ13で負担され、ステータ13は、前記一方向クラッチ37のロック作用によって固定される。またトルク増幅作用を終えたときに、前記ステータ13は、該ステータ13が受けるトルク方向の反転によって一方向クラッチ37を空転させながらポンプインペラ11およびタービンランナ12とともに同一方向に回転する。
【0034】
このようなトルクコンバータがカップリング状態となったとき、もしくはカップリング状態に近づいたときには、前記油路45から前記外側室38bに作動油が供給され、前記油溝44から作動油が導出されるように、前記油溝44および前記油路45と、前記オイルポンプおよびオイル溜めとの接続状態が切替えられる。その結果、クラッチ室38内では内側室38aの方が外側室38bよりも高圧となり、その圧力差によってクラッチピストン43が前記伝動カバー20側に押圧され、前記クラッチピストン43の外周部が前記伝動ケース20の内面に圧接して伝動ケース20に摩擦接続され、ロックアップクラッチ40が接続状態となる。
【0035】
前記ロックアップクラッチ40が接続状態となったときに、前記車両用エンジンEから前記伝動カバー20に伝わるトルクは、前記クラッチピストン43および前記スプリングホルダ42を含むトルク伝達経路46を経て前記出力ハブ29に機械的に伝達されるものであり、このトルク伝達経路46にはダンパ機構47が介設される。
【0036】
前記ダンパ機構47は、回転軸線まわりに相対回転することが可能な前記クラッチピストン43および前記スプリングホルダ42間に、周方向に等間隔をあけて配置される複数個たとえば4個の第1のダンパスプリング49が介設されて成るものである。
【0037】
前記クラッチピストン43の外周部の前記伝動ケース20とは反対側の面には、環状の収容凹部50が形成されており、その収容凹部50内に周方向に等間隔をあけて収容される第1のダンパスプリング49を、前記クラッチピストン43との間に挟むリテーナ51が前記クラッチピストン43に固定される。
【0038】
前記リテーナ51は、前記収容凹部50の内周にほぼ対応した外周を有して前記クラッチピストン43と同軸に配置されるリング板部51aと、前記クラッチピストン43の半径方向に沿う前記第1のダンパスプリング49の内方側を覆うように横断面円弧状に形成されて前記リング板部51aの外周の周方向に等間隔をあけた4箇所に連設されるとともに前記クラッチピストン43の周方向に沿って長く形成されるスプリングカバー部51bと、それらのスプリングカバー部51b相互間に配置されて前記リング板部51aの外周に連設される第1ばね当接部51cとを一体に有するように形成され、前記リング板部51aが複数の第1のリベット52で前記クラッチピストン43に固定される。
【0039】
また第1ばね当接部51cは、4個の前記第1のダンパスプリング49相互間に配置されており、前記ロックアップクラッチ40が非接続状態にあるときに、第1ばね当接部51cは、その両側の第1のダンパスプリング49の端部に当接する。
【0040】
前記スプリングホルダ42は、前記トルク伝達経路46の一部を構成する回転伝動部材である第1および第2の保持板54,55で構成されるものであり、第1の保持板54は、前記タービンシェル24の内周部とともに前記出力ハブ29に複数の第3のリベット59で固定され、前記出力シャフト27の軸線に沿う方向で第1の保持板54との間に間隔をあけた第2の保持板55は、複数の第2のリベット56で第1の保持板54に相対回転不能に連結される。
【0041】
また前記第2の保持板55の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所の外周には、前記第1のダンパスプリング49を、前記リテーナ51の第1ばね当接部51cとの間に挟むようにして収容凹部50内に突入される第2ばね当接部55bが一体に連設され、前記リテーナ51における前記スプリングカバー部51bには、前記第2ばね当接部55bすなわち前記スプリングホルダ42との間の制限された範囲での相対回転を許容するようにして前記第2ばね当接部55bを挿通させる開口部61が形成される。
【0042】
前記ロックアップクラッチ40が接続状態となって前記クラッチピストン43および前記リテーナ51が回転すると、前記第1ばね当接部51cが、第1のダンパスプリング49を前記第2ばね当接部55bとの間で圧縮し、第1のダンパスプリング49から前記第2ばね当接部55
bに連なるスプリングホルダ42を経て前記出力ハブ29に動力が伝達される。すなわち前記クラッチピストン43および前記出力ハブ29間でトルク伝達経路46を介してトルクが機械的に伝達されることになり、前記トルク伝達経路46が、前記クラッチピストン43、前記リテーナ51、第1のダンパスプリング49および前記スプリングホルダ42で構成されることになる。
【0043】
前記トルク伝達経路46には、ダイナミックダンパ機構64が付設されるものであり、このダイナミックダンパ機構64は、前記トルク伝達経路46の一部を構成する回転伝動部材である第1および第2の保持板54,55すなわちスプリングホルダ42と、慣性回転体65との間に、複数個たとえば6個の第2のダンパスプリング53が介設されて成る。
【0044】
前記慣性回転体65の少なくとも一部(この実施の形態では一部)は、前記スプリングホルダ42を構成する第1および第2の保持板54,55間に挟まれるとともに前記出力ハブ29に内周部が回転自在に支持される円板状の慣性プレート41と、その慣性プレート41の外周に固定される付加重量部材66とから成る。
【0045】
第1および第2の保持板54,55間には、前記慣性プレート41の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば6箇所に設けられた長孔58にそれぞれ挿通される円筒状のカラー57が介装され、それらのカラー57を貫通する第2のリベット56で第1および第2の保持板54,55が連結される。すなわち前記慣性プレート41は、前記長孔58内を前記カラー57が移動するだけの制限された範囲で、前記スプリングホルダ42に対して相対回転することが可能である。
【0046】
図2を併せて参照して、第1の保持板54の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば6箇所には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部54aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。また第1の保持板54の前記ばね保持部54aに対応する部分で第2の保持板55には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部55aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。
【0047】
前記慣性プレート41の前記ばね保持部54a,55aに対応する部分には、前記第2のスプリング53の一部を収容するばね収容孔60が、前記ロックアップクラッチ40の非接続状態では、前記慣性プレート41の周方向に沿う前記ばね収容孔60の両端部が前記第2のダンパスプリング53の両端部に当接するようにして形成される。
【0048】
前記慣性プレート41は、その外周部が前記スプリングホルダ42を構成する第1および第2の保持板54,55よりも半径方向外方に突出するように形成されており、前記付加重量部材66が前記慣性プレート41の外周部に固定される。
【0049】
前記付加重量部材66は、第1の保持板54の外周部に前記タービンランナ12側から間隔をあけて対向するリング板部66aと、そのリング板部66aの外周から前記慣性プレート41の外周部側に延びる筒部66bとを一体に有して、その横断面形状が略L字状となるように形成されており、前記リング板部66aおよび前記慣性プレート41間に介在する大径部67aを有する複数の第4のリベット67で、前記筒部66bを前記慣性プレート41に当接させるようにして前記慣性プレート41の外周部に固定される。
【0050】
ところで車両用エンジンEの燃費低減を図るために、低エンジン回転数で車両を走行させる場合、車両用エンジンEのトルク変動に起因するこもり音や振動等の抑制が課題となる。このような課題をダイナミックダンパ機構64で解決するのであるが、ダイナミックダンパ機構64の減衰率は一義的に定まるものであり、
図3の破線で示すように、ロックアップクラッチ40の接続領域で最も低速回転側(800〜1500rpm)にダイナミックダンパ機構64の作動回転数を設定するのが一般的である。そうすると、大きな減衰効果が得られるエンジン回転数領域が限定的となり、
図3の点描で示す領域のように、減衰効果が充分に得られない領域が生じる場合がある。
【0051】
そこでダイナミックダンパ機構64のバネレートをエンジン回転数に応じて変化させることで、
図3の実線で示すように、幅広い回転数領域で減衰効果が得られるようにすることが考えられ、本発明に従えば、前記ダイナミックダンパ機構64の前記スプリングホルダ42における第1の保持板54および前記慣性回転体65のいずれか一方に常時連結される弾性部材70が、遠心力を受けて変形することを可能としつつ前記ダイナミックダンパ機構64に付加される。
【0052】
この実施の形態では、前記弾性部材70は、第4のリベット67を介して前記慣性回転体65に常時連結されるものであり、この弾性部材70は、前記第2のダンパスプリング53でトルク変動を吸収し得る低速回転時には前記第1の保持板54との間で弾発力を発揮することはないものの、所定の回転数以上の高速回転時の遠心力による変形に応じて前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間で弾発力を発揮するようにして、前記慣性回転体65内に配置されつつ、前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間に配設される。
【0053】
前記第1の保持板54の外周の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所には、前記慣性プレート41および前記付加重量部材66間に形成される環状凹部71に突入するようにして半径方向外方に突出する突部54bが一体に形成されており、前記弾性部材70は、第1の保持板54の前記突部54bおよび前記慣性回転体65間で弾発力を発揮することが可能である。
【0054】
前記弾性部材70は、ダイナミックダンパ機構64の回転軸線まわりで周方向に延びるようにして板ばねの曲げ加工で波形に形成されるものであり、この弾性部材70の自然な状態での前記周方向に沿う中央部に、前記慣性回転体65における第4のリベット67の大径部67aが常時連結される。
【0055】
図4を併せて参照して、前記突部54bには、前記弾性部材70の少なくとも一部(この実施の形態では一部)を収容する収容部72が、前記突部54bの両面に開放した透孔として形成され、前記収容部72は、内側収容部分72aと、ダイナミックダンパ機構64の回転軸線を中心とする半径方向に沿う外側から前記内側収容部分72aに連なる外側収容部分72bとから成り、前記内側収容部分72aの前記周方向に沿う長さL1は、該内側収容部分72aの前記周方向に沿う両端部が車両用エンジンEの低速回転時に、
図4で明示するように、前記弾性部材70の前記周方向に沿う両端部に接触することを回避するようにして自然な状態に在る前記弾性部材70よりも前記周方向に長く設定される。
【0056】
また前記外側収容部分72bの前記周方向に沿う長さL2は、当該外側収容部分72bの前記周方向に沿う両端部が前記車両用エンジンEの高速回転時に遠心力を受けて変形した前記弾性部材70の前記周方向に沿う両端部に接触するようにして前記内側収容部分72aよりも前記周方向に短く設定される。
【0057】
このような弾性部材70の挙動について
図5を参照しながら説明すると、車両用エンジンEの回転数が低く、前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間の相対回転角が小さく、弾性部材70に作用する遠心力も小さい状態では、
図5(a)で示すように、弾性部材70は収容部72の内側収容部分72aに対応する位置にあり、第1の保持板54および前記弾性部材70間にはトルク方向の遊び73が生じており、弾性部材70は第1の保持板54および前記慣性回転体65間で非作動状態にある。
【0058】
車両用エンジンEの回転数が増加し、前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間の相対回転角が大きくなっても、弾性部材70に作用する遠心力がまだ小さい状態では、
図5(b)で示すように、弾性部材70は収容部72の内側収容部分72aに対応する位置にあり、第1の保持板54および前記弾性部材70間にはトルク方向の遊び73が生じたままであり、前記弾性部材70は第1の保持板54および前記慣性回転体65間で非作動状態にある。
【0059】
車両用エンジンEの回転数増大に応じて、前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間の相対回転角が大きく、かつ弾性部材70に作用する遠心力が大きくなると、
図5(c)で示すように、前記弾性部材70はその両端部が前記収容部72の前記外側収容部分72bに入り込むように変形し、弾性部材70が、第1の保持板54および前記慣性回転体65間で弾発力を発揮するように作動することになる。すなわちダイナミックダンパ機構64に弾性部材70のばね力が加わることになり、ダイナミックダンパ機構64の共振周波数が高回転側に変化する。その結果、
図3の実線で示すように、弾性部材70が作動し始める作動回転数で減衰率が高くなる側に周波数特性が変化して減衰範囲が拡大することになる。
【0060】
車両用エンジンEの回転数増大に応じて、弾性部材70に作用する遠心力がより大きくなった状態では、
図5(d)で示すように、前記弾性部材70の両端部は前記収容部72の前記外側収容部分72bに収容された状態で第1の保持板54の前記突部54bに当接するが、共振周波数よりも高回転側で相対回転角が減少していくダイナミックダンパ機構64の特性により、前記第1の保持板54および前記慣性回転体65間の相対回転角は小さくなり、弾性部材70に必要以上に大きな荷重が作用することはない。
【0061】
ところで常用回転域を800〜2500rpmとした車両用エンジンEのクランクシャフト23およびミッション間に設けられるトルクコンバータの前記トルク伝達経路46に介設されたダイナミックダンパ機構64の減衰率について、一般的な車両の振動モデルを基準として計算すると、
図6で示すような結果が得られた。ここで共振周波数を1000rpmとして計算して得られた結果を
図6の実線で示したときに、共振周波数を1000rpmとしたときの基準例に対してダイナミックダンパ機構64のバネレートを2倍としたときには、
図6の破線で示す結果が得られた。
【0062】
そこで低速回転時のバネレートが示す周波数特性を基準例とし、追加の弾性部材70が作動する高回転時のバネレートを低回転時の2倍に設定すると、弾性部材70が付加されたダイナミックダンパ機構64では、
図7の実線で示すような周波数特性が得られることになる。すなわち弾性部材70が作動する前は基準例の周波数特性に従い、追加の弾性部材70が作動した後の高回転域ではバネレートを2倍としたときの周波数特性に従うことになる。ここで弾性部材70の作動回転数の最も有利な設定方法は、1つのダイナミックダンパ共振点の間にある交点であり、そのように作動回転数を設定すると、その作動回転数の両側にダイナミックダンパの共振点があるので、より有利な作動回転数の範囲は、車両用エンジンEの常用回転域付近である800〜2000rpmとなる。
【0063】
ところで低速回転時のバネレートが示す周波数特性を基準例とし、追加の弾性部材70が作動する高回転時のバネレートを低回転時の2倍、3倍、4倍および5倍に設定したときの周波数特性は、
図8で示すように変化するものであり、バネレートを高く設定することでダイナミックダンパの共振周波数は高速側に変位することになるが、低速回転域で励起される低周波振動は知覚され易く、しかもその振動による異音も聞こえ易い傾向にあるので、バネレートを低速回転域(800〜1500rpm)に対応した値に設定して低速回転域(800〜1500rpm)での低周波振動の発生を抑えることが望ましい。
【0064】
そこで低速回転域のダイナミックダンパの共振周波数を
図8の基準例のように1000rpmに設定すると、車両用エンジンEの常用回転域である800〜2500rpmの範囲でより
広範囲に制振性能の向上を図るためには、弾性部材70の作動による高回転域のバネレートを3倍以上に設定することが望ましく、バネレートを3倍とすると
図9の実線で示すような周波数特性が得られることになる。但し高回転域のバネレートを低回転域の5倍に設定すると、
図9の点線で示すような周波数特性となり、追加の弾性部材70が作動を開始する回転数付近(
図9の1200〜1700付近)での制振性能が不足することになり、それを考慮すると、弾性部材70を有する前記ダイナミックダンパ機構64のバネレートが、低速回転時に対する高速回転時の比を1よりも大きく4以下とするように設定されることが望ましい。
【0065】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、車両用エンジンEからのトルクを伝達するトルク伝達経路46に、当該トルク伝達経路46の一部を構成する第1および第2の保持板54,55で構成されるスプリングホルダ42と、慣性回転体65との間に複数個の第2のダンパスプリング53が介設されて成るダイナミックダンパ機構65が付設されており、前記スプリングホルダ42および前記慣性回転体65のいずれか一方である前記弾性回転体65に常時連結される弾性部材70が、遠心力を受けて変形することを可能としつつ前記ダイナミックダンパ機構64に付加され、前記弾性部材70は、第2のダンパスプリング53でトルク変動を吸収し得る低速回転時には前記スプリングホルダ42および前記慣性回転体65の他方である前記スプリングホルダ42との間にトルク方向の遊び73が生じるものの所定の回転数以上の高速回転時の遠心力による変形に応じて前記スプリングホルダ42および前記慣性回転体65間で弾発力を発揮するようにして、前記スプリングホルダ42および前記慣性回転体65間に配設される。
【0066】
したがってダイナミックダンパ機構64では、高速回転時には、第2のダンパスプリング53に弾性部材70のばね力が加わることになり、ダイナミックダンパ機構64の共振周波数が高速回転側に変化することになり、ダイナミックダンパ機構64のバネレートを回転数に応じて変化させることができ、それを実現するにあたって弾性部材70を付加するのみであり、部品点数の増大を抑えた簡単な構造とすることができる。
【0067】
また前記弾性部材70を有する前記ダイナミックダンパ機構64のバネレートが、前記低速回転時に対する前記高速回転時の比を1よりも大きく4以下とするように設定されるので、車両用エンジンEの常用回転域で広範囲に制振性能を高めることができる。すなわち低速回転域で励起される低周波振動は知覚され易く、しかもその振動による異音も聞こえ易い傾向にあるので、バネレートを低速回転域に対応した値に設定することで低速回転域での低周波振動の発生を抑えつつ、車両予エンジンEの常用回転域での広範囲かつ効果的な制振性能を得ることができる。
【0068】
また前記弾性部材70が、前記慣性回転体65内に配置されるので、弾性部材70の付加によるダイナミックダンパ機構64の大型化を回避することができる。
【0069】
本発明の第2の実施の形態について
図10〜
図12を参照しながら説明するが、
図1〜
図9で示した第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0070】
ロックアップクラッチ40が接続状態となったときに、車両用エンジンEから伝動カバー20に伝わるトルクは、クラッチピストン43およびスプリングホルダ76を含むトルク伝達経路78を経て出力ハブ29に機械的に伝達されるものであり、このトルク伝達経路78にはダンパ機構47が介設される。
【0071】
前記ダンパ機構47は、回転軸線まわりに相対回転することが可能な前記クラッチピストン43および前記スプリングホルダ76間に、周方向に等間隔をあけて配置される複数個たとえば4個の第1のダンパスプリング49が介設されて成るものである。
【0072】
前記スプリングホルダ76は、前記トルク伝達経路78の一部を構成する回転伝動部材である第1および第2の保持板80,81で構成されるものであり、第1の保持板80は、前記タービンシェル24の内周部とともに出力ハブ29に複数の第3のリベット59で固定され、前記出力シャフト27の軸線に沿う方向で第1の保持板
80との間に間隔をあけた第2の保持板81は、図示しない複数のリベットで第1の保持板80に相対回転不能に連結される。
【0073】
また前記第2の保持板81の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所の外周には、前記第1のダンパスプリング49を、前記クラッチピストン43に固定された前記リテーナ51の第1ばね当接部51cとの間に挟むようにして収容凹部50内に突入される第2ばね当接部81cが一体に連設され、前記リテーナ51における前記スプリングカバー部51bには、前記第2ばね当接部81cすなわち前記スプリングホルダ76との間の制限された範囲での相対回転を許容するようにして前記第2ばね当接部81cを挿通させる開口部61が形成される。
【0074】
前記ロックアップクラッチ40が接続状態となって前記クラッチピストン43および前記リテーナ51が回転すると、前記第1ばね当接部51cが、第1のダンパスプリング49を前記第2ばね当接部81cとの間で圧縮し、第1のダンパスプリング49から前記第2ばね当接部81cに連なるスプリングホルダ76を経て前記出力ハブ29に動力が伝達される。すなわち前記クラッチピストン43および前記出力ハブ29間でトルク伝達経路78を介してトルクが機械的に伝達されることになり、前記トルク伝達経路78が、前記クラッチピストン43、前記リテーナ51、第
1のダンパスプリング49および前記スプリングホルダ76で構成されることになる。
【0075】
前記トルク伝達経路78には、ダイナミックダンパ機構84が付設される。このダイナミックダンパ機構84は、スプリングホルダ76と、慣性回転体85との間に、複数個たとえば6個の第2のダンパスプリング53が介設されて成る。
【0076】
前記慣性回転体85は、前記スプリングホルダ76を構成する第1および第2の保持板80,81間に少なくとも一部(この実施の形態では一部)が挟まれるとともに前記出力ハブ29に内周部が回転自在に支持される円板状の慣性プレート77と、その慣性プレート77の外周に複数の第5のリベット87で固定される付加重量部材86とから成る。
【0077】
第1の保持板80の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば6箇所には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部80aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。また第1の保持板80の前記ばね保持部80aに対応する部分で第2の保持板81には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部81aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。
【0078】
前記慣性プレート77の前記ばね保持部80a,81aに対応する部分には、前記第2の
ダンパスプリング53の一部を収容するばね収容孔82が、前記ロックアップクラッチ40の非接続状態では、前記慣性プレート77の周方向に沿う前記ばね収容孔82の両端部が前記第2のダンパスプリング53の両端部に当接するようにして形成される。
【0079】
前記慣性プレート77は、その外周部が前記スプリングホルダ76を構成する第1および第2の保持板80,81よりも半径方向外方に突出するように形成されており、前記付加重量部材86が前記慣性プレート77の外周部に固定される。
【0080】
前記ダイナミックダンパ機構84の前記スプリングホルダ76における第1の保持板80および前記慣性回転体85のいずれか一方に常時連結される弾性部材88が、遠心力を受けて変形することを可能としつつ前記ダイナミックダンパ機構84に付加される。
【0081】
前記弾性部材88は、前記慣性回転体85の一部を構成する前記慣性プレート77に常時連結されるものであり、この弾性部材88は、前記第2のダンパスプリング53でトルク変動を吸収し得る低速回転時には前記第1および第2の保持板80,81から成るスプリングホルダ76との間で弾発力を発揮することはないものの、所定の回転数以上の高速回転時の遠心力による変形に応じて前記スプリングホルダ76および前記慣性回転体85間で弾発力を発揮するようにして、前記スプリングホルダ76内に配置されつつ、前記スプリングホルダ76および前記慣性回転体85間に配設される。
【0082】
前記慣性プレート77において、第2のダンパスプリング53よりも半径方向外方、かつ付加重量部材86を固定するための第5のリベット87よりも半径方向内方に位置する部分の周方向に等間隔をあけた複数箇所には、前記慣性プレート77の周方向に沿って長いばね収容孔89が形成される。
【0083】
前記弾性部材88は、ダイナミックダンパ機構84の回転軸線まわりで周方向に延びるようにして板ばねの曲げ加工で波形に形成され、前記ばね収容孔89の長手方向両端部に自然な状態に在る前記弾性部材88の両端部が当接するようにして前記ばね収容孔89に収容されるものであり、この弾性部材88の自然な状態での前記周方向に沿う中央部に、前記ばね収容孔89の前記周方向に沿う中央部から前記ばね収容孔89内に突出するようにして前記慣性プレート77に一体に突設される突部77a
が連結される。
【0084】
一方、前記慣性プレート77の両側に配置される第1および第2の保持板80,81には、前記弾性部材88の一部を収容する収容部92が、それらの保持板80,81の両面に開放した透孔としてそれぞれ形成され、その収容部92に対応する部分で第1および第2の保持板80,81には、前記弾性部材88を保持するためのばね保持部80b,81bが、前記弾性部材88の一部を外部に臨ませるようにして形成される。
【0085】
前記収容部92は、内側収容部分92aと、ダイナミックダンパ機構84の回転軸線を中心とする半径方向に沿う外側から前記内側収容部分92aに連なる外側収容部分92bとから成る。前記内側収容部分92aの前記周方向に沿う長さL3は、当該内側収容部分92aの前記周方向に沿う両端部が車両用エンジンEの低速回転時に、
図12(a)で明示するように、前記弾性部材88の前記周方向に沿う両端部に接触することを回避するようにして自然な状態に在る前記弾性部材88よりも前記周方向に長く設定される。また前記外側収容部分92bの前記周方向に沿う長さL4は、当該外側収容部分92bの前記周方向に沿う両端部が前記車両用エンジンEの高速回転時に遠心力を受けて変形した前記弾性部材88の前記周方向に沿う両端部に接触するようにして前記内側収容部分
92aよりも前記周方向に短く設定される。
【0086】
このような弾性部材88および前記収容部92によれば、車両用エンジンEの回転数が低く、弾性部材88に作用する遠心力も小さい状態では、
図12(a)で示すように、弾性部材88は収容部92の内側収容部分92aに対応する位置にあり、第1および第2の保持板80,81と、前記弾性部材88との間にはトルク方向の遊び93が生じており、弾性部材88は、第1および第2の保持板80,81と、前記慣性回転体85との間で非作動状態にある。
【0087】
車両用エンジンEの回転数が増加し、弾性部材88に作用する遠心力が大きくなると、
図12(b)で示すように、前記弾性部材88はその両端部が前記収容部92の前記外側収容部分92bに入り込むように変形し、弾性部材88が、第1および第2の保持板80,81と、前記弾性部材88間で弾発力を発揮するように作動することになる。すなわちダイナミックダンパ機構84に弾性部材88のばね力が加わることになる。
【0088】
しかも弾性部材88を有するダイナミックダンパ機構84の高速回転時のバネレートは、上述の第1の実施の形態と同様に、低速回転時に対する高速回転時の比を1よりも大きく4以下とするように設定されることが望ましい。
【0089】
この第2の実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、しかも弾性部材88がスプリングホルダ76内に配置されるので、弾性部材88の付加によるダイナミックダンパ機構84の大型化を回避することができる。
【0090】
本発明の第3の実施の形態について
図13〜
図15を参照しながら説明するが、
図1〜
図9で示した第1の実施の形態ならびに
図10〜
図12で示した第2の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0091】
ロックアップクラッチ40が接続状態となったときに、車両用エンジンEから伝動カバー20に伝わるトルクは、クラッチピストン43およびスプリングホルダ96を含むトルク伝達経路98を経て出力ハブ29に機械的に伝達されるものであり、このトルク伝達経路98にはダンパ機構47が介設される。
【0092】
前記ダンパ機構47は、回転軸線まわりに相対回転することが可能な前記クラッチピストン43および前記スプリングホルダ96間に、周方向に等間隔をあけて配置される複数個たとえば4個の第1のダンパスプリング49が介設されて成るものである。
【0093】
前記スプリングホルダ96は、前記トルク伝達経路98の一部を構成する回転伝動部材である第1および第2の保持板100,101で構成されるものであり、第1の保持板100は、前記タービンシェル24の内周部とともに出力ハブ29に複数の第3のリベット59で固定され、前記出力シャフト27の軸線に沿う方向で第1の保持板100との間に間隔をあけた第2の保持板101は、複数の第2のリベット5
6で第1の保持板100に相対回転不能に連結される。
【0094】
前記第2の保持板101の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所の外周には、前記第1のダンパスプリング49を、前記クラッチピストン43に固定されたリテーナ51の第1ばね当接部51cとの間に挟むようにして収容凹部50内に突入される第2ばね当接部101bが一体に連設され、前記リテーナ51におけるスプリングカバー部51bには、前記第2ばね当接部101bすなわち前記スプリングホルダ96との間の制限された範囲での相対回転を許容するようにして前記第2ばね当接部101bを挿通させる開口部61が形成される。
【0095】
前記ロックアップクラッチ40が接続状態となって前記クラッチピストン43および前記リテーナ51が回転すると、前記第1ばね当接部51cが、第1のダンパスプリング49を前記第2ばね当接部101bとの間で圧縮し、第1のダンパスプリング49から前記第2ばね当接部101bに連なるスプリングホルダ96を経て前記出力ハブ29に動力が伝達される。すなわち前記クラッチピストン43および前記出力ハブ29間でトルク伝達経路98を介してトルクが機械的に伝達されることになり、前記トルク伝達経路98が、前記クラッチピストン43、前記リテーナ51、第1のダンパスプリング49および前記スプリングホルダ96で構成されることになる。
【0096】
前記トルク伝達経路98には、ダイナミックダンパ機構104が付設される。このダイナミックダンパ機構104は、前記トルク伝達経路9
8の一部を構成する回転伝動部材である第1および第2の保持板100,101すなわち前記スプリングホルダ96と、慣性回転体105との間に複数個たとえば4個の第2のダンパスプリング53が介設されて成る。
【0097】
前記慣性回転体105は、前記スプリングホルダ96を構成する第1および第2の保持板100,101間に少なくとも一部(この実施の形態では一部)が挟まれるとともに前記出力ハブ29に内周部が回転自在に支持される慣性プレート97と、その慣性プレート97の外周に固定される付加重量部材66とから成る。
【0098】
第1および第2の保持板100,101間には、前記慣性プレート97の周方向に等間隔をあけた
複数箇所たとえば6箇所に設けられた長孔58にそれぞれ挿通される円筒状のカラー57が介装される。すなわち前記スプリングホルダ96は、前記長孔58内を前記カラー57が移動するだけの制限された範囲で、前記慣性プレート97に対して相対回転することが可能である。
【0099】
第1の保持板100の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部100aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。また第1の保持板100の前記ばね保持部100aに対応する部分で第2の保持板101には、第2のダンパスプリング53を保持するためのばね保持部101aが、第2のダンパスプリング53の一部を外部に臨ませるようにして形成される。
【0100】
前記慣性プレート97は、その外周部が前記スプリングホルダ96を構成する第1および第2の保持板100,101よりも半径方向外方に突出するように形成されており、前記付加重量部材66が前記慣性プレート97の外周部に固定される。
【0101】
前記慣性プレート97の前記ばね保持部100a,101aに対応する部分には、前記第2のスプリング53の一部を収容するばね収容孔(図示せず)が形成されており、このばね収容孔は、前記ロックアップクラッチ40の非接続状態では、前記慣性プレート97の周方向に沿う前記ばね収容孔の両端部が前記第2のダンパスプリング53の両端部に当接するようにして形成される。
【0102】
前記ダイナミックダンパ機構104には、少なくとも2種類の弾性部材が、前記ダイナミックダンパ機構104のバネレートを少なくとも2つ以上の異なる回転数で変化させるようにして付加されるものであり、この第3の実施の形態では、弾性部材70および弾性部材88がダイナミックダンパ機構104に付加される。
【0103】
前記弾性部材70は、第1の実施の形態と同様にして、第4のリベット67を介して前記慣性体105に常時連結されるものであり、前記慣性回転体105内に配置されつつ、前記第1の保持板100および前記慣性回転体10
5間に配設される。
【0104】
また前記弾性部材88は、第2の実施の形態と同様にして、前記弾性回転体105の一部を構成する前記慣性プレート97に常時連結されるものであり、前記スプリングホルダ96内に配置されつつ、前記スプリングホルダ96および前記慣性回転体105間に配設される。
【0105】
上述のように弾性部材70,88が付加されることで、ダイナミックダンパ機構104は、
図15で示すような周波数特性を示すことになる。すなわち弾性部材70,88の一方が、その作動によって低速回転時に比べてばねレートを2倍とするものであるときには、たとえば1100rpmの作動回転数で作動することでたとえば1350rpm付近でダイナミックダンパ共振点Pが生じ、弾性部材70,88の他方が、その作動によって低速回転時に比べてばねレートを4倍とするものであるときには、たとえば1500rpmの作動回転数で作動することでたとえば1900rpm付近でダイナミックダンパ共振点Qが生じることになる。
【0106】
この第3の実施の形態によれば、上述の第1および第2の実施の形態による効果に加えて、2種類の弾性部材70,88がダイナミックダンパ機構104に付加され、それらの弾性部材70,88により、ダイナミックダンパ機構104のバネレートを2つの異なる回転数で変化させるので、車両用エンジンEの乗用回転域でのより効果的な制振性能を得ることができる。
【0107】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。