特許第6182216号(P6182216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182216マンガン含有原料の酸化物からの有価金属の回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182216
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】マンガン含有原料の酸化物からの有価金属の回収
(51)【国際特許分類】
   C22B 47/00 20060101AFI20170807BHJP
   C22B 5/12 20060101ALI20170807BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20170807BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20170807BHJP
   C05C 5/00 20060101ALI20170807BHJP
   C22B 7/00 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   C22B47/00
   C22B5/12
   C22B3/06
   C22B3/44 101A
   C22B3/44 101B
   C05C5/00
   !C22B7/00 C
【請求項の数】16
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-538059(P2015-538059)
(86)(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公表番号】特表2016-500760(P2016-500760A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】US2013065677
(87)【国際公開番号】WO2014066169
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】61/717,160
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515030587
【氏名又は名称】ディープグリーン エンジニアリング プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドリンカード,ウィリアム,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルナー,ハンス,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ニクソン,ウィリアム,エム.
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−092703(JP,A)
【文献】 特開昭53−083905(JP,A)
【文献】 米国特許第04146572(US,A)
【文献】 特開昭49−123110(JP,A)
【文献】 特開昭56−093838(JP,A)
【文献】 特開昭50−149523(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/137022(WO,A1)
【文献】 米国特許第05912402(US,A)
【文献】 特開昭51−139519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
C05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガン含有原料から金属有価物を回収する方法であって、
a.他の金属類をも含有する二酸化マンガン含有原料を得る工程、
b.MnOを生成させ、他の金属類を遊離させるために、二酸化マンガン含有原料をNHと反応させ、溶液を生成する、工程、
c.金属塩類を生成するために、無機酸を用いて前記反応させた原料を浸出させる、工程、
d.他の金属類を沈殿させて前記金属塩類から前記他の金属類を回収する工程、
及び
e.少なくとも前記工程bの後に実施される、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物を沈殿させて回収する工程を含む方法。
【請求項2】
前記二酸化マンガン含有原料は、任意の水域から得られる重合団塊である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二酸化マンガン含有原料は、深海マンガン団塊である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二酸化マンガン含有原料は、海中採鉱によって回収されるマンガン含有団塊である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二酸化マンガン含有原料は、任意の水域から得られる重合団塊について化学的処理または冶金処理をすることによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重合団塊を圧潰または粉砕する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記二酸化マンガン含有原料を洗浄することによって塩化物を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程bは温度を上昇させて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化マンガン含有原料は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、カドミウム、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、鉛、セリウム、モリブデン、リン、バリウム、及びバナジウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属類をも含む、方法であって、
f.あらゆる鉄を水酸化第二鉄残渣として沈殿させるよう、前記溶液にアルカリ土類酸化物、アルカリ土類水酸化物、またはアルカリ土類炭酸塩を添加することと、
g.前記溶液を濾過して前記残渣を除去することと、
h.前記溶液中に存在する銅、鉛、及びカドミウムをいずれも硫化物として沈殿させることと、
i.コバルト及びニッケル硫化物を沈殿させて、アルカリ土類塩類を残留させることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液から、銅、鉛、またはカドミウムを沈殿させることは、前記溶液のpHを低く調整し、前記溶液にHSまたはNaHSを導入して硫化物を生成することによって実現される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コバルト及びニッケル硫化物の沈殿は、前記溶液のpHを上昇させ、該溶液に、追加のHSまたはNaHSを導入することによって実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
マンガン酸化物及びマンガン水酸化物の沈殿は、前記工程eにおいて、前記溶液のpHを約9にまで上昇させることによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記二酸化マンガン含有原料はまた鉄をも含み、
j.水酸化第二鉄残渣として沈殿させるよう、前記溶液にアルカリ土類酸化物、アルカリ土類水酸化物、またはアルカリ土類炭酸塩を添加することと、
k.前記溶液を濾過して前記残渣を除去することとを、前記a〜eの工程に加えて実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
二酸化マンガン含有原料から硝酸産物を生産する方法であって、
a.他の金属類をも含有する二酸化マンガン含有原料を得る工程、
b.MnOを生成させ、他の金属類を遊離させるために、前記二酸化マンガン含有原料をNHと反応させ、溶液を生成する、工程、
c.金属硝酸塩を生成するために、硝酸を用いて前記反応させた原料を浸出させる、工程、
d.他の金属類を沈殿させて前記金属硝酸塩から前記他の金属類を回収する工程、
及び
e.少なくとも前記工程bの後に実施される、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物を沈殿させて回収し、硝酸産物を残留させる工程、
を含む方法。
【請求項15】
前記硝酸産物はリサイクル可能な硝酸塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記硝酸産物は硝酸肥料産物である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアガスを用いて、酸化物、炭酸塩及び鉱石などのマンガン含有原料を処理するための方法に関する。本発明は海中採鉱により回収された重合マンガン含有団塊を処理するのに好適であり、特にそういった原料から有用な成分、とりわけマンガン、コバルト、ニッケル、銅、及び鉄を回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多金属団塊またはマンガン団塊はコアの周りに鉄とマンガン水酸化物の同心円層が形成された岩石凝固物である。
【0003】
海底の深海団塊はその組成としてマンガン(Mn)を含有し、通常はニッケル、コバルト、銅、亜鉛、及び鉄も含有し、若干量のチタン、バナジウム、モリブデン、及びセリウムもさらに含有する。これらに加えてしばしば微量に含まれる成分として以下の金属類のうちの1種類以上がある:マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、カドミウム、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、鉛、リン、及びバリウム。深海団塊は、通常約28%のMn、約10%のFeO、約1%のCu及び約1.2%のNiを含有する。
【0004】
マンガン団塊中の所望の有価金属の大多数が、不溶性で酸化型のマンガン、例えばMnO2と結合している。団塊に含まれるマンガンの10%に満たない量だけが酸に可溶性である。従って、金属成分を回収するためには、最初の工程として、適切な還元剤でMnO2の還元を行うことが必要である。歴史的には、SO2がこの目的に使用され、一酸化炭素(CO)が銅の回収処理に使用されてきた。しかしこれらの従来技術の方法では、しばしば適切なマンガン産物が回収されず、主な金属有価物のうち約80%〜約92%しか回収できず、回収しきれなかった金属成分を含むこともある、多量の廃棄物を生じてしまうことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、海底マンガン団塊を含む、マンガン含有原料からマンガンを回収するための改良された方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、マンガン含有原料から、金属有価物、例えば、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウム、カドミウム、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、鉛、セリウム、モリブデン、リン、バリウム、及びバナジウムが存在する場合にはそれらを回収するための効果的な方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、例えば深海マンガン団塊のような海底マンガン含有原料から他の金属有価物を回収する効果的な方法を提供することである。
【0008】
本発明の別な目的は、硝酸産物を生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって処理されるマンガン含有原料は、鉱石または深海団塊だけでなく、酸化マンガンを含有する電池を含んでいてもよく、例として亜鉛−炭素、アルカリおよびリチウム(LMOまたはLiMn24)電池や、他のマンガン含有鉱物またはあらゆる形の原料が挙げられる。
【0010】
本発明は、マンガン含有原料をアンモニアで処理することによって、深海マンガン団塊を含む海底のマンガンを含んだ原料からマンガンを回収し、さらにもしも存在するなら他の金属有価物(「可採金属」)を回収するための方法である。気体のNH3と鉱石との反応式は次の通りであり、捕捉されていた所望の有価金属を遊離させる。
7MnO2(s)+2NH3(g) → 7MnO(s)+3H2O(l)+2NO2(g)
1トンのNH3は、8トンのSO2よりも効果がある。
【0011】
MnO2をアンモニアガスで還元した後、マンガン含有出発原料からマンガン及び他の金属類を沈殿させて回収するためにはどのような無機酸を使用してもよい。H2O及びNO2からのアンモニア反応でいくらかの窒素が生成されるため、浸出剤としては硝酸が好ましい。
【0012】
本発明は、火薬類、肥料及び他の硝酸塩などの硝酸産物を作るために特に有用である。
【0013】
上述の目的及びその他の目的は、以下の詳細な記載と添付の図面とを参照すれば容易により明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の方法の好適な実施例を示す模式的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本方法は、深海マンガン団塊などのマンガン含有原料(10)について開始されるが、この原料は海洋、海、または他の水域から入手されてもよい。そのような団塊は大きな湖で見いだされることもある。深海団塊は20%を超えるマンガンを含有し、通常は約28%含有する。
【0016】
深海団塊は、マンガンに加えて、以下の金属類のうちの少なくとも1種類を含有することがある。
ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウム、カドミウム、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、セリウム、モリブデン、リン、バリウム、鉛、及びバナジウム
本発明の方法は、これらの金属有価物の多くを効率的に浸出し回収することを含む。
【0017】
後の反応での表面積を増やすために、団塊または他のマンガン含有原料を圧潰するか粉砕してもよい。団塊に塩化物が含まれている場合いずれも、任意の好都合な方法、例えば、好ましくは水で、洗浄で除去するのも有利である。この工程を実施するのは圧潰の前でも圧潰中でも圧潰後でもよいが、圧潰後に行うのが好ましい。
【0018】
温度を上昇させて(12)で団塊をアンモニアと反応させる。気体のNH3と酸化マンガン鉱石との反応式は、次の通りである。
7MnO2+2NH3 → 7MnO+3H2O+2NO2
【0019】
NH3は、MnO2と反応してMnO、水及びNO2を生成し、工程(14)で他の金属類を団塊から遊離させる。NO2は気体として取り出しても、あるいは、硝酸を生成させるために反応させてもよい。
【0020】
アンモニアを用いてMnO2を還元した後、浸出工程(16)ではどのような無機酸を用いてもよく、これによりマンガン含有出発原料からマンガン及び他の金属塩(18)を浸出させて、回収できる。アンモニア反応でいくらかの窒素が生成されるため、浸出剤としては硝酸が好ましい。
【0021】
可採金属類は(20)にて、浸出化工程で生成された金属塩から沈殿させて回収する。浸出に続き、溶液のpHを約2.2〜2.3にまで変化させて、水和した酸化鉄(FeOOHH2O)を沈殿させる。沈殿した鉄の有価物は溶液を濾過することによって取り出す。このpHの変化は様々な方法で実施すればよく、例えばアンモニア、または、Mg(OH)2若しくはCa(OH)2などのアルカリ土類水酸化物、MgO若しくはCaOなどのアルカリ土類酸化物、またはMg(CO32若しくはCa(CO32などのアルカリ土類炭酸塩などの溶液に添加して実施してもよい。
【0022】
銅、鉛、カドミウム、亜鉛も溶液中に存在する場合はいずれもそこから取り出される。金属有価物は、いったん溶液中に溶解させたら酸化物または硫化物として沈殿させればよい。好ましくは溶液のpHは低くなるよう調整され、硫化水素(H2S)またはNaHSが溶液中に導入されることにより、銅、鉛、カドミウム、及び亜鉛が溶液中に存在する場合はいずれも硫化物として沈殿させられ、沈殿した金属有価物は濾過することによって取り出される。
【0023】
次に溶液のpHを上昇させ、再度硫化水素またはNaHSを溶液中に導入することにより、コバルト及びニッケルを硫化物として沈殿させる。アルミニウムと残存する亜鉛の一部もこの工程で硫化物として沈殿させてもよい。
【0024】
溶液のpHを好ましくは約9まで上昇させて、(22)でマンガン酸化物及び水酸化物を沈殿させて回収する。残渣を濾過すると、残った溶液は肥料または、本方法で再利用する硝酸塩源として利用できる硝酸産物(26)となる。
【0025】
他の実施例
マンガン含有原料は、代わりに、産業廃棄物または化学処理して得たもの、あるいは土を採鉱して得られた鉱石を用いてもよい。これらの鉱石には、マンガン、またはこのような鉱石を処理することによって得られるマンガン含有原料を含む。このマンガン含有原料は、任意の水域から得られた重合団塊について、事前に、化学的処理または冶金処理をすることによって得られる。
【0026】
反応を促進させるために、NH3またはマンガン含有原料のいずれか、あるいは両方を加熱してもよい。また、本方法には液体アンモニアを使用してもよいが、気体のアンモニアが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上の記載から容易に明らかとなるように、我々が発明したのは、海中採鉱によって回収された海底マンガン団塊の処理方法を含む、マンガン含有原料を処理するための改良された方法であり、原料を効率的にアンモニアと反応させて、酸化マンガンの産物を生成させ、任意の有価金属を遊離させる方法であって、且つ、団塊に含まれる金属有価物を効率的に回収するための方法である。我々がもう一つ発明したのは、マンガン含有原料からマンガンを回収するための改良された方法であり、これは、マンガン含有原料から、他の金属有価物、例えばニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウム、カドミウム、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、 鉛、セリウム、モリブデン、リン、バリウム、及びバナジウムがもしも存在する場合はこれらを回収するための効果的な方法、並びに、深海マンガン団塊などの海底マンガン含有原料から金属有価物を回収する効果的な方法、及び硝酸産物を生産するための方法を含む。
【0028】
以上の説明と具体的な実施形態は本発明の最良の態様とその原理を例示するためだけのものに過ぎないこと、そして、本発明の主旨と範囲を超えない限り、本装置に対して様々な変更や追加が当業者によって加えられてもよいことが理解されるべきである。
図1