(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定信号は、前記車両の異なる場所に配置された複数のアンテナから時間差を設けて送信され、前記移動装置では、それぞれのアンテナから送信された測定信号を受信して、それぞれのアンテナに対応した前記信号強度測定情報が生成されて前記車載装置に送信される請求項1記載の車両通信装置。
前記移動装置では、全てのアンテナから送信された測定信号を受信した前記測定受信信号のうちの受信強度の変動幅が最も大きい前記測定受信信号を選択して前記信号強度変動情報が生成される請求項2記載の車両通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に設けられる車載装置と携帯される移動装置との間で通信が行われるインテリジェントキーシステムやスマートキーシステムまたは電子キーシステムと称される車両通信装置では、RSSI測定信号を使用することで、携帯される移動装置が車両に対してどのエリアに存在しているかを判断している。
【0007】
しかし、RSSI測定信号にノイズが重畳していると、移動装置の存在しているエリアを正確に把握することができなくなる。さらに最近では、偽のRSSI測定信号を人為的に生成して送信し、搭乗者が車両から離れているのにもかかわらず、移動装置から車載装置に応答信号を送信させるという不正行為も行われている。
【0008】
特許文献1に記載された発明は、車載装置から送信されるRSSI測定用信号にオン時間とオフ時間を含ませ、電子キーでは、オン時間とオフ時間の双方の受信電界強度の平均値から前記RSSI情報を生成している。前記オフ時間を設けると、ノイズが重畳したときに、ノイズの強度に応じて受信電界強度の平均値が変動する。車載装置では、ノイズを検知するための閾値が設定され、RSSI情報がこの閾値を超えたら、ノイズによる影響があると判断するものとなっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の電子キーシステムでは、ノイズを検知するための閾値を経験的に設定するものとなっているため、予期しないノイズ成分を含むRSSI測定用信号についてはこれを識別できない。例えば、不正行為などにより、信号強度の変動が大きいがその平均値は正常なものと大きく差がないような偽のRSSI測定用信号が発せられたときには、RSSI情報がノイズ検知用の閾値を超えることがないため、正常な通信であると判定されてしまう。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、信号強度の変動の大きな測定信号が発せられたようなときであっても、正常な測定信号の受信であるか否かを識別することができる
車両通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両に搭載されている車載装置と、車両の室内外に移動できる移動装置とを有し、車載装置と移動装置との間で通信が行われる車両通信装置において、
前記車載装置に、車両側制御部が設けられ、
前記移動装置に、前記車載装置から送信された車両側信号を受信する受信部と、受信した前記車両側信号に応答する応答信号を生成する移動側制御部と、前記車載装置に前記応答信号を送信する送信部とが設けられ、
前記車両側信号に測定信号が含まれており、前記応答信号には、前記測定信号を前記移動装置で受信した測定受信信号の受信強度に基づく信号強度測定情報と、前記測定受信信号の受信強度の変動に基づく信号強度変動情報とが含まれて
おり、
前記移動側制御部では、前記測定受信信号を複数の区間に分けてそれぞれの区間で受信強度の平均値を求め、それぞれの区間の平均値の最大値と最小値との比から前記信号強度変動情報が生成され、
前記車両側制御部では、前記信号強度変動情報に含まれている変動係数が閾値よりも小さい場合に正常な通信であると判断されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の車両通信装置では、移動装置が測定信号を受信したときに、測定受信信号の強度の平均値から信号強度測定情報を生成し、さらに、受信強度の変動に基づく信号強度変動情報も生成できるようにしている。したがって、信号強度の変動が大きいが平均値が正常値に近いような異常な波形の測定信号を受信したときに、この通信が正常なものではないと判断できる。
【0014】
また、測定信号を受信した測定受信信号を複数の区間に時分割し、それぞれの区間の平均値をとることで、測定受信信号の変動を容易に認識することができる。
【0015】
本発明は、前記測定信号は、前記車両の異なる場所に配置された複数のアンテナから時間差を設けて送信され、前記移動装置では、それぞれのアンテナから送信された測定信号を受信して、それぞれのアンテナに対応した前記信号強度測定情報が生成されて前記車載装置に送信されるものとして構成できる。
【0016】
この場合に、前記移動装置では、全てのアンテナから送信された測定信号を受信した前記測定受信信号のうちの受信強度の変動幅が最も大きい前記測定受信信号を選択して前記信号強度変動情報が生成されることが好ましい。
【0017】
移動装置から車載装置に向けて、それぞれのアンテナに対応する信号強度測定情報が送信され、それぞれのアンテナと移動装置との距離が個別に判断される。一方で、信号強度変動情報は、測定信号に異常があるか否かを判別するための情報であるので、アンテナごとに受信した複数の測定受信信号のうちの受信強度の変動の最も大きいものを代表させて車載装置へ送信すればよい。このようにすることで、信号強度変動情報の信号長を最短にでき、移動装置から車載装置へ送信されるデータ量を軽減できる。
【0018】
本発明の車両通信装置は、前記受信部では、前記測定信号が互いに直交する3軸方向から受信され、3軸方向から受信された前記測定受信信号の受信強度に基づいて信号強度測定情報が生成されるものとして構成できる。
【0019】
この場合には、3軸の受信信号のそれぞれの前記測定受信信号のうちの受信強度の変動幅が最も大きい前記測定受信信号を選択して前記信号強度変動情報が生成されることが好ましい。
【0020】
1つのアンテナから送信される測定信号を移動装置で3軸方向の信号として受信することで、移動装置では3種類の測定受信信号が得られる。この3種類の測定受信信号のうち受信強度の変動が最も大きいものを代表させて信号強度変動情報を生成すれば、信号強度変動情報を最小の情報量の信号として処理することができる。
【0021】
本発明の車両通信装置は、例えば、前記移動装置で、前記測定受信信号の平均値から車載装置までの距離が算出されて、この距離情報が、前記信号強度測定情報に含まれるものとして構成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両通信装置は、移動装置で受信した測定受信信号の受信強度の平均値が正常値と大きく差がないのにもかかわらず受信強度の変動がきわめて大きい場合に、このときに受信した測定信号を異常信号であると判断できる。これにより、測定信号が異常なノイズの影響を受けているときに、移動装置の位置が誤って判断されることがなく、また、不正な測定信号が送信されているようなときに、正常な受信状態ではない、と判断できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す車両通信装置1は、インテリジェントキーシステムやスマートキーシステムまたは電子キーシステムなどと称されるものであり、車載装置10と移動装置20とが組み合わされて構成されている。
【0025】
車載装置10は、
図2に示す車両(自動車)に搭載されている。移動装置20は、
図2に示す携帯キー3に搭載されている。携帯キー3は、搭乗者が所持するものであり、車両2の車室2aの内部とその外部とに移動可能である。
【0026】
図1に示すように、車載装置10は、車両側制御部11を有している。車両側制御部11はCPUを主体として構成されており、メモリ14が接続されている。車載装置10には、送信部12と受信部13が設けられている。送信部12には、送信アンテナが接続されている。送信アンテナは複数設けられており、少なくとも1つの送信アンテナが車室2aの内部に配置され、他の送信アンテナが車両2の外側に近傍に配置されている。
【0027】
図2に示す実施の形態では、送信アンテナ15aが右側のドアの操作部周辺に配置され、送信アンテナ15bが左側のドアの操作部周辺に配置されている。また送信アンテナ15cがトランクの開閉操作部の周辺に配置されている。そして送信アンテナ15dが車室2aの内部に配置されている。
【0028】
図1に示すように、車載装置10には受信アンテナ16が設けられている。受信アンテナ16は、車室2aの内部に設けられている。
【0029】
移動装置20は、移動側制御部21と送信部22と受信部23を有している。移動側制御部21は
CPUを主体として構成されており、移動側制御部21にはメモリ24が接続されている。送信部
22には送信アンテナ25が接続されている。受信部23は、三軸受信アンテナ26が接続されている。三軸受信アンテナ26は空間上で互いに直交する3軸方向からの電磁波を検知できるように、3方向に向けられアンテナ単位を有している。受信部23は、三軸受信アンテナ26のそれぞれのアンテナ単位の受信信号を時分割で受信することで、3軸方向からの電磁波を受信できるようになっている。または受信部23が、それぞれのアンテナ単位に一対一で接続された3つの受信部単位から構成されていてもよい。
【0030】
車両側制御部11によって、
図3に示す車両側信号30が生成される。車両側の送信部12では、LF帯域(例えば125kHz)の搬送波が生成され、車両側信号30で搬送波が変調されて移動装置20に向けて送信される。このとき、同じ車両側信号30が複数の送信アンテナ15a,15b,15c,15dから重複しないように時間差を有して順番に送信される。
【0031】
この車両側信号30は、例えば車両2のドア開閉ボタンが押されたとき、またはトランク開放ボタンが押されたとき、あるいはエンジン始動キーが押されたときなどに、これらのいずれかの操作信号をトリガーとして送信される。
【0032】
移動装置20では、三軸受信アンテナ26によって、送信アンテナ15a,15b,15c,15dから送信された車両側信号30が順番に受信され、受信部23において検波され受信信号として復調される。複数の送信アンテナ15a,15b,15c,15dから送信された前記車両側信号30のそれぞれは、三軸受信アンテナ26によって、互いに直交するx軸、y軸、z軸の3方向からの受信信号として受信される。移動側の受信部23では、1つの送信アンテナから送信される車両側信号30が、x軸,y軸,z軸の3方向からの受信信号として検波されて復調され、その受信信号が移動側制御部21に与えられる。
【0033】
移動装置20において車両側信号30を受信すると、移動側制御部21において
図4に示す応答信号40が生成される。移動装置20に設けられた移動側の送信部22では、UHF帯(例えば315MHz)の搬送波が生成され、この搬送波が応答信号40で変調されて送信アンテナ25から車載装置10に向けて送信される。移動装置20から送信される応答信号40は、車載装置10の受信アンテナ16で受信され、車両側の受信部13で検波され、復調され、A/D変換されて車両側制御部11に与えられる。
【0034】
実施の形態の車両通信装置1では、
図3に示すように、車載装置10の各送信アンテナ15a,15b,15c,15dから車両側信号30が順番に送信され、移動装置20では、全ての送信アンテナから送られる車両側信号30の受信が完了したら、
図4に示す応答信号40を生成して、車載装置10に向けて送信する通信が行われる。ただし、
図4と
図5に示す波形は信号の一例であって、本発明は
図3と
図4に示す信号内容の通信に限定されるものではない。例えば、車両側信号30が信号の内容ごとに分割されて時間差を有して送信させ、分割されて送信される車両側信号30の中間に、移動装置20から応答信号40が送信されてもよい。このとき、分割されている車両側信号30の内容ごとに応答信号40も分割されて送信されて交互通信が行われるものであってもよい。
【0035】
図3に示す車両側信号30は、ウエイクアップ信号31と、同期信号32と、コマンド信号33と、タイミング信号34ならびに測定信号35(35a,35b,35c,35d)が並んで送信される。車両側信号30は、搬送波がOOK変調(On−OFF/Keying)されて生成される。または、PSK(Phase Shift Keying)など他の変調方式を用いても同様の効果が得られる。
【0036】
コマンド信号33は、移動側制御部21が行うべき動作を指示するものであり、それぞれの移動装置20に割り振られたID信号を送信するように要求する指示も含まれている。
【0037】
タイミング信号34はその後に測定信号35が続くことを示すための信号であり、波長の短いパルスを組み合わせて構成されている。
【0038】
測定信号35は、RSSI(Receive Strength Signal Indicator)のための信号であり、一定時間T1(例えば1ms)だけデューティ比の100%の信号が継続する。
図3では、送信アンテナ15aから送信される測定信号を35a、送信アンテナ15bから送信される測定信号を35b、送信アンテナ15cから送信される測定信号を35c、送信アンテナ15dから送信される
測定信号を35dとして区別して記載されている。
【0039】
図4に示す移動装置20からの応答信号40は、同期信号41に、信号強度測定情報42と信号強度変動情報43とを含む信号群が続き、その後にID応答信号44が生成されている。
【0040】
信号強度測定情報42は、第1の信号強度測定情報42a、第2の信号強度測定情報42b、第3の信号強度測定情報42cならびに第4の信号強度測定情報42dに時分割されている。
【0041】
第1の信号強度測定情報42aは、送信アンテナ15aから送信された測定信号35aを受信した測定受信信号の受信強度に関する情報を含んでいる。測定信号35aは、移動装置20の三軸受信アンテナ26によって、互いに直交するx軸、y軸、z軸の3方向からの測定受信信号として分割されて受信される。
【0042】
測定信号35aをx軸方向から受信した測定受信信号の受信強度(受信電界強度)の平均値をXp、測定信号35aをy軸方向から受信した測定受信信号の受信強度の平均値をYp、測定信号35aをz軸方向から受信した測定受信信号の受信強度の平均値をZpとしたときに、第1の信号強度測定情報42aは、(Xp
2+Yp
2+Zp
2)
1/2で求めることができる。この演算で求められた第1の信号強度測定情報42aは、送信アンテナ15aと移動装置20との距離に関する情報(距離情報)を含んでいる。
【0043】
または、前記平均値Xp,Yp,Zpを使用し、以下に示す演算を行って、第1の信号強度測定情報42aに、送信アンテナ15aと移動装置20との距離を直接示す距離情報Lを含ませてもよい。以下の式のKは、各受信強度の平均値を距離情報Lに換算するための比例定数である。
L=K/{(Xp
2+Yp
2+Zp
2)
1/2}
1/3
【0044】
なお、x軸、y軸、z軸の測定受信信号の受信強度の平均値Xp,Yp,Zpの求め方は以下のとおりである。受信部23で受信されたアナログ値の測定受信信号がA/D変換されて移動側制御部21に与えられ、移動側制御部21において、デジタル値で演算が行われて、測定受信信号の受信強度の時間T1の区間での平均値が求められる。あるいは、受信部23で受信されたアナログ値の測定受信信号が、クロック信号に同期した一定の時間間隔で逐次積分されて時間T1の区間での平均値が求められ、この平均値がA/D変換されて移動側制御部21に与えられる。
【0045】
前記と同様の演算を行うことで、送信アンテナ15bと移動装置20との距離情報を含んだ第2の信号強度測定情報42bが生成され、送信アンテナ15cと移動装置20との距離情報を含んだ第3の信号強度測定情報42cが生成され、送信アンテナ15dと移動装置20との距離情報を含んだ第4の信号強度測定情報が生成される。
【0046】
図4に示す応答信号40に含まれる信号強度変動情報43は、送信アンテナ15a,15b,15c,15dのそれぞれから送信された測定信号35a,35b,35c,35dを受信した測定受信信号の受信強度の変動を示すものである。
【0047】
図5(A)は、送信アンテナ15aから送信された測定信号35aを、移動装置20の三軸受信アンテナ26によりx軸方向から受信したときの測定受信信号45axの波形図である。
図5(A)に示す波形は、測定信号35aの送信強度の変動が激しく正常な信号状態ではないものとして受信された例を仮定している。
【0048】
移動装置20では、
図5(A)に示す測定受信信号45axの信号長T1が、
図5(B)に示すように単位時間taによって分割される。例えば信号長T1が1msである場合には、単位時間taは、(1/5)〜(1/15)ms程度に区分される。そして、測定受信信号45axの受信強度(受信電界強度)が単位時間taごとに区分されて平均化される。
図5(B)では、それぞれの単位時間taで得られた受信強度の平均値が棒グラフ状に図示されている。
【0049】
図5(B)に示すように区分された測定受信信号の受信強度の平均値の求め方は以下の通りである。受信部23で受信されたアナログ値であるx軸の測定受信信号45axがA/D変換されて移動側制御部21に与えられ、移動側制御部21において、単位時間taごとに受信強度がデジタル値として平均化される。あるいは、受信部23で受信されたアナログ値のx軸の測定受信信号45axが、クロック信号に同期した単位時間taの時間間隔で逐次積分されて平均値が求められ、単位時間taごとの平均値がA/D変換されて移動側制御部21に与えられる。
【0050】
図5(B)に示す例では、単位時間taごとに求められた受信強度の平均値の最大値がAmaxで、最小値がAminである。受信強度の変動係数は、Amin/Amaxで表される。移動側制御部21では、受信強度の変動係数が1.0〜25.5の範囲で段階的に表現される。AminとAmaxとが等しいときの変動係数は1.0であり、変動係数はAminとAmaxとの差が広がるにしたがって大きくなり、最大の変動係数は25.5である。
【0051】
移動装置20では、同様にして、測定信号35aが三軸受信アンテナ26のy軸で受信された測定受信信号45ayのAminとAmaxから変動係数が求められ、測定信号35aが三軸受信アンテナ26のz軸で受信された測定受信信号45azのAminとAmaxから変動係数が求められる。
【0052】
移動装置20では、さらに送信アンテナ15bから送信された測定信号35bに関してx軸、y軸、z軸のそれぞれの測定受信信号の変動係数が求められ、送信アンテナ15c,15dから送信された測定信号35c,35dを受信に関しても、x軸、y軸、z軸のそれぞれの測定受信信号の変動係数が求められる。
【0053】
以下の表1には、送信アンテナ15a(Ant1)、送信アンテナ15b(Ant2)、送信アンテナ15c(Ant3)、送信アンテナ15d(Ant4)のそれぞれから送信された測定信号35a,35b,35c,35dを、x軸、y軸、z軸で受信したときの、それぞれの受信強度の変動係数の一例が示されている。
【0055】
前記表1の結果では、送信アンテナ15a(Ant1)からの測定信号35aをx軸で受信した測定受信信号の変動係数が最も大きい値の「5」であるため、
図4に示す応答信号40に含まれる信号強度変動情報43に、前記変動係数「5」が含まれる。
【0056】
移動装置20では、送信アンテナの数にx,y,zの3軸を掛けた数の測定受信強度が得られるが、そのうちの、受信強度の変動値が最も大きい変動係数のみが信号強度変動情報43として送信される。そのため、信号強度変動情報43のデータ長を短くでき、応答信号40の信号長も短くできる。
【0057】
なお、それぞれの送信アンテナから得られた測定受信信号について、{(x軸の変動係数)
2+(y軸の変動係数)
2+(z軸の変動係数)
2}
1/2の演算を行って、その送信アンテナに関する測定受信信号の受信強度の変動値を求め、複数の送信アンテナごとに演算される変動値のうちの最も変動値の大きい値を代表させて信号強度変動情報43としてもよい。
【0058】
なお、前述のように、応答信号40に含まれる前記第1の信号強度測定情報42a、第2の信号強度測定情報42b、第3の信号強度測定情報42cならびに第4の信号強度測定情報42dは、測定信号35a,35b,35c,35dをx軸、y軸、z軸のそれぞれで受信した測定受信信号の受信強度の時間T1での平均値である。この平均値は、前述のように測定受信信号を時間T1で平均することで求めることができるが、
図5(B)に示すように、単位時間taごとに分割された状態で求められた平均値を時間T1の長さで加算し、さらに平均して求めることも可能である。
【0059】
次に、移動装置20のメモリ24に、車載装置10と移動装置20との組み合わせにおいて特有のIDデータが保管されている。車載装置10からの車両側信号30に含まれるコマンド信号33によって、移動装置20からID応答信号を送信するように指示されると、移動側制御部21では、メモリ24からID信号を読み出し、ID信号を含むID応答信号44が生成され、応答信号40として車載装置10に送信される。
【0060】
車載装置10では、
図4に示す応答信号40が受信アンテナ16で受信され、受信部13で検波され復調されて、A/D変換部を経て車両側制御部11に与えられる。
【0061】
車両側制御部11では、信号強度変動情報43を読み込み、信号強度変動情報43に含まれている変動係数(表1の例では「5」)が閾値と比較される。そしてこの変動係数が閾値よりも大きい場合には、通信異常と判断し、移動側制御部21でのそれ以降の処理動作が停止させられる。
【0062】
信号強度変動情報43に含まれている変動係数が閾値よりも小さい場合には、正常な通信であると判断される。この場合に、応答信号40に含まれる第1の信号強度測定情報42a、第2の信号強度測定情報42b、第3の信号強度測定情報42cならびに第4の信号強度測定情報42dが解析されて、車両2に対して移動装置20がどのエリアに位置しているかが判定される。
【0063】
さらに、ID応答信号44に含まれているID信号が、車載装置10側のメモリ14に記憶されているIDと一致しているか否か判別され、一致しているときはその後の制御動作が許可される。
【0064】
例えば、移動装置20が右側のドアに近い位置で操作されたと判断されると、右側のドアの開錠や鎖錠が行われ、左側のドアの近い位置で操作されたと判断されると、左側のドアの開錠や鎖錠が行われる。また、トランクの近くで操作されたと判断されるとトランクが開錠される。さらに車室2aの内部で操作されたと判断されると、エンジンの始動処理が行われる。
【0065】
前記実施の形態では、測定信号35a,35b,35c,35dを受信した
測定受信信号の受信強度の全体の平均値が正常信号の範囲内であると判断された場合であっても、受信強度の変動が激しい場合に、これを判別することができる。そのため、ノイズが重畳して移動装置20の位置を正確に把握できなくなるという問題が生じなくなり、または人為的に不正な測定信号が発せられているような場合に、これを識別でき、常に高いセキュリティの下で、車両の操作を行うことができる。