特許第6182231号(P6182231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6182231-フューエルポンプモジュール 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182231
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】フューエルポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/08 20060101AFI20170807BHJP
   F04D 5/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F02M37/08 E
   F04D5/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-52573(P2016-52573)
(22)【出願日】2016年3月16日
【審査請求日】2017年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津久井 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】泉原 遼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−222055(JP,A)
【文献】 特開2009−162155(JP,A)
【文献】 特開2010−104220(JP,A)
【文献】 特開2013−096323(JP,A)
【文献】 特開2001−280211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/08
F04D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の吸入口(29)および吐出口(33)を有する燃料ポンプ(21)と、
前記吐出口(33)を構成する材料と異なる樹脂材料によって構成されて、前記吐出口(33)を含む範囲で前記燃料ポンプ(21)を包み込んで成形され、前記吐出口(33)に通じる吐出流路(35)を区画する樹脂成形体(34)と
前記吐出流路(35)内に配置されて、前記吐出口(33)に通じる弁体上流側に比べて大きい弁体下流側の圧力に応じて着座する弁体(42)を有するチェック弁(41)と
を備えることを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のフューエルポンプモジュールにおいて、前記樹脂成形体(34)は、配管(17)に接続される外形を有しつつ前記配管(17)に通じる前記吐出流路(35)を区画し、前記チェック弁(41)を含む接続管(38)を備えることを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフューエルポンプモジュールにおいて、前記吐出口(33)を含む範囲で前記燃料ポンプ(21)と前記樹脂成形体(34)との間にはラビリンスシール(36)が配置されることを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のフューエルポンプモジュールにおいて、前記ラビリンスシール(36)は、前記吐出口(33)の中心軸線に同軸に前記燃料ポンプ(21)の端面に形成される溝(37)を含むことを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフューエルポンプモジュールにおいて、前記樹脂成形体(34)は、前記燃料ポンプ(21)から延びる導線(48)に接続される接続端子(47)を有するカプラー(45)を備えることを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフューエルポンプモジュールにおいて、前記樹脂成形体(34)は取り付け片(39)を備えることを特徴とするフューエルポンプモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の吸入口および吐出口を有する燃料ポンプを備えるフューエルポンプモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はフューエルポンプモジュールを開示する。フューエルポンプモジュールには燃料ポンプが組み込まれる。燃料ポンプの吐出管にはチェック弁が配置される。燃料ポンプの動作が停止して吐出圧が低下すると、弁体は着座し、燃料ポンプへの燃料の逆流は阻止される。このとき、弁体の下流側で高い圧力は保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−162155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料ポンプの吐出管は樹脂製モジュールボディの連結筒に嵌め込まれる。吐出管と連結筒との間にはシール部材が挟み込まれる。チェック弁が閉じると、弁体の下流で吐出管と連結筒との境界は高い圧力に曝される。圧力に応じて燃料は境界に沿ってみ込む。シール部材はみ込む燃料の漏出を防止する。
【0005】
本発明は、樹脂成形体で燃料ポンプを包み込む際に特殊なシール機構を省略することができるフューエルポンプモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、燃料の吸入口および吐出口を有する燃料ポンプと、前記吐出口を構成する材料と異なる樹脂材料によって構成されて、前記吐出口を含む範囲で前記燃料ポンプを包み込んで成形され、前記吐出口に通じる吐出流路を区画する樹脂成形体と、前記吐出流路内に配置されて、前記吐出口に通じる弁体上流側に比べて大きい弁体下流側の圧力に応じて着座する弁体を有するチェック弁とを備えるフューエルポンプモジュールは提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記樹脂成形体は、配管に接続される外形を有しつつ前記配管に通じる前記吐出流路を区画し、前記チェック弁を含む接続管を備える。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記吐出口を含む範囲で前記燃料ポンプと前記樹脂成形体との間にはラビリンスシールが配置される。
【0009】
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記ラビリンスシールは、前記吐出口の中心軸線に同軸に前記燃料ポンプの端面に形成される溝を含む。
【0010】
第5側面によれば、第1〜第4側面のいずれかの構成に加えて、前記樹脂成形体は、前記燃料ポンプから延びる導線に接続される接続端子を有するカプラーを備える。
【0011】
第6側面によれば、第1〜第5側面のいずれかの構成に加えて、前記樹脂成形体は取り付け片を備える。
【発明の効果】
【0012】
第1側面によれば、燃料ポンプの動作が停止して吐出圧が低下すると、弁体上流側に比べて弁体下流側で圧力が大きくなり弁体は着座する。チェック弁は閉じる。弁体の下流側で高い圧力は保持される。弁体の上流側は減圧するので、燃料ポンプと樹脂成形体との境界は高い圧力に曝されることはない。こうして境界に沿って燃料のみ込みは防止される。燃料のみ込みを防止する特殊なシール機構は省略されることができる。しかも、燃料ポンプそのものの構造を変更することなく、チェック弁の有無を選択することができ、複数機種にわたって燃料ポンプの共通化が実現され、開発費の削減や生産設備および管理工数の削減は達成されることができる。
【0013】
第2側面によれば、チェック弁は突出する接続管内に収容されるので、チェック弁の配置スペースは最小限に抑制されることができる。
【0014】
第3側面によれば、ラビリンスシールが配置されるので、限られたスペース内で燃料ポンプと樹脂成形体との境界の面積は増大することができ、その結果、燃料ポンプと樹脂成形体との結合力は増強され、両者の間でシール性は強化される。
【0015】
第4側面によれば、燃料ポンプの端面に溝が形成されるので、樹脂成形体の成形時に樹脂材料は溝内に流れ込むことができ、ラビリンス構造は簡単に確立されることができる。
【0016】
第5側面によれば、樹脂成形体にカプラーが一体化されるので、燃料ポンプと接続端子とは確実に電気接続される。こうした電気接続の実現にあたってフューエルポンプモジュールの小型化は実現される。製造コストは低減される。
【0017】
第6側面によれば、他部材への固定にあたって利用される取り付け片が樹脂成形体に一体化されるので、フューエルポンプモジュールおよび取り付け片の組み立てにあたってスナップフィットといった連結機構を省略することができ、その結果、フューエルポンプモジュールの小型化は実現される。燃料ポンプに取り付け片を組み付ける作業が省略され、製造コストは低減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係るフューエルポンプモジュールの全体構成を概略的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は一実施形態に係る燃料供給システム11を概略的に示す。燃料供給システム11はインジェクター12、フューエルポンプモジュール13および燃料タンク14を備える。インジェクター12は内燃機関15の吸気道16に挿入される。インジェクター12には燃料配管17を通じてフューエルポンプモジュール13が接続される。インジェクター12にはフューエルポンプモジュール13から規定の圧力下で燃料が供給される。フューエルポンプモジュール13には燃料配管18を通じて燃料タンク14が接続される。燃料タンク14には燃料が貯留される。フューエルポンプモジュール13は燃料タンク14から燃料を補給する。
【0021】
フューエルポンプモジュール13は燃料ポンプ21を備える。燃料ポンプ21の筐体22は、円筒形のケーシング23と、ケーシング23の一端に結合される第1端面部材24と、ケーシング23の他端に結合される第2端面部材25とで構成される。第1端面部材24と第2端面部材25との間でケーシング23内にはインペラー26および電動モーター27が収容される。インペラー26の回転軸28は第1端面部材24および第2端面部材25に軸心回りに回転自在に支持される。回転軸28には電動モーター27のローター27aが結合される。ローター27aの周囲にステーター27bは配置される。電流の供給に応じて電動モーター27は作動する。電動モーター27は回転軸28の回転を引き起こす。第2端面部材25は比較的に高い融点を有する樹脂材料から成型される。そうした樹脂材料には例えばPPS樹脂が挙げられる。第1端面部材24およびケーシング23は金属材料から成形されればよい。
【0022】
第1端面部材24には吸入路29を区画する第1接続管31が形成される。吸入路29は一端の吸入口で外部に開口する。第1接続管31には燃料タンク14に通じる燃料配管18が結合される。吸入路29の他端はインペラー室32に接続される。インペラー室32内にインペラー26は配置される。回転軸28の回転に応じてインペラー26が回転すると、吸入口からインペラー室32に燃料は導入される。
【0023】
第2端面部材25には吐出口33が区画される。インペラー26が回転すると、吐出口33から燃料は吐出される。インペラー室32から吐出口33に規定の圧力下で燃料は流れ込む。
【0024】
フューエルポンプモジュール13は樹脂成形体34を備える。燃料ポンプ21は吐出口33を含む範囲で樹脂成形体34に包み込まれる。樹脂成形体34は第1端面部材24および第2端面部材25よりも低い融点を有する樹脂材料から成型される。そうした樹脂材料には例えばPOM樹脂が挙げられる。樹脂成形体34には燃料ポンプ21の吐出口33に通じる吐出流路35が区画される。
【0025】
燃料ポンプ21の吐出口33と樹脂成形体34との間にはラビリンスシール36が配置される。ラビリンスシール36は、吐出口33の中心軸線に同軸に燃料ポンプ21の第2端面部材25に形成される溝37を含む。樹脂成形体34は溝37内に入り込む。
【0026】
樹脂成形体34は第2接続管38を有する。第2接続管38はインジェクター12に通じる燃料配管17に接続される外形を有する。第2接続管38内に吐出流路35は区画される。吐出流路35は燃料配管17に通じる。
【0027】
樹脂成形体34は取り付け片39を有する。取り付け片39は例えば回転軸28の軸心に平行な1平面内で広がる取り付け面を区画する。取り付け片39は例えばケーシング23の母線からケーシング23の外側に広がればよい。
【0028】
フューエルポンプモジュール13はチェック弁41を備える。チェック弁41は第2接続管38内に組み込まれる。チェック弁41は吐出流路35内に配置される弁体42を備える。弁体42は、吐出口33に通じる弁体上流側に比べて大きい弁体下流側の圧力に応じて着座する。弁体42には弁座43に向かって弁体42を押し付ける弾性力を発揮する弁ばね44が配置される。弁体上流側の圧力が弁体下流側の圧力よりも大きいと、弁体42は弁座43から離れる。チェック弁41は開く。
【0029】
フューエルポンプモジュール13はカプラー45を備える。カプラー45は樹脂成形体34に組み込まれる。樹脂成形体34はソケット46を形成する。ソケット46内には接続端子47が突出する。接続端子47には燃料ポンプ21の電動モーター27から延びる導線48が接続される。ソケット46には雄側のカプラー(図示されず)が嵌め込まれる。接続端子47から電動モーター27に駆動電流は供給される。
【0030】
燃料ポンプ21の動作が停止して吐出圧が低下すると、弁体上流側に比べて弁体下流側で圧力が大きくなり弁体42は着座する。チェック弁41は閉じる。弁体42の下流側で高い圧力は保持される。弁体42の上流側は減圧するので、燃料ポンプ21と樹脂成形体34との境界は高い圧力に曝されることはない。こうして境界に沿って燃料のみ込みは防止される。燃料のみ込みを防止する特殊なシール機構は省略されることができる。しかも、燃料ポンプ21そのものの構造を変更することなく、チェック弁41の有無を選択することができ、複数機種にわたって燃料ポンプ21の共通化が実現され、開発費の削減や生産設備および管理工数の削減は達成されることができる。
【0031】
フューエルポンプモジュール13では、樹脂成形体34の第2接続管38内にチェック弁41は組み込まれる。チェック弁41は突出する第2接続管38内に収容されるので、チェック弁41の配置スペースは最小限に抑制されることができる。フューエルポンプモジュール13の配置にあたって省スペース化は実現される。
【0032】
吐出口33を含む範囲で燃料ポンプ21と樹脂成形体34との間にはラビリンスシール36が配置される。したがって、限られたスペース内で燃料ポンプ21と樹脂成形体34との境界の面積(接触面積)は増大することができ、その結果、燃料ポンプ21と樹脂成形体34との結合力は増強され、両者21、34の間でシール性は強化される。ここで、ラビリンスシール36の構築にあたって第2端面部材25の表面に溝37が形成される。樹脂成形体34の樹脂成型時に樹脂材料は溝37内に流れ込むことができ、ラビリンス構造は簡単に確立されることができる。
【0033】
樹脂成形体34にはカプラー45が一体化される。したがって、燃料ポンプ21と接続端子47とは確実に電気接続される。こうした電気接続の実現にあたってフューエルポンプモジュール13の小型化は実現される。製造コストは低減される。
【0034】
樹脂成形体34は取り付け片39を備える。取り付け片39は樹脂成形体34の樹脂成型時にいちどに形作られる。こうしてフューエルポンプモジュール13の生産工程では工程数は削減されることができる。製造コストは低減される。
【0035】
フューエルポンプモジュール13の製造にあたって射出成型は用いられる。射出成型では金型内にフューエルポンプモジュール13を象ったキャビティが区画される。キャビティ内には燃料ポンプ21およびカプラー45の構成要素が配置される。キャビティには樹脂成形体34の材料が流し込まれる。このとき、第2端面部材25の融点は樹脂成形体34の融点よりも高いことから、材料が流し込まれる際に第2端面部材25は固体に維持される。樹脂成型に応じて樹脂成形体34は形成される。樹脂成形体34が成型された後、チェック弁41の構成要素は、第2接続管38内に挿入され、熱かしめによって固定される。
【符号の説明】
【0036】
13…フューエルポンプモジュール、17…配管(燃料配管)、21…燃料ポンプ、29…吸入口(吸入路)、33…吐出口、34…樹脂成形体、35…吐出流路、36…ラビリンスシール、37…溝、38…接続管(第2接続管)、39…取り付け片、41…チェック弁、42…弁体、45…カプラー、47…接続端子、48…導線。
【要約】
【課題】樹脂成形体で燃料ポンプを包み込む際に特殊なシール機構を省略することができるフューエルポンプモジュールを提供する。
【解決手段】フューエルポンプモジュール13は、吐出口33を含む範囲で燃料ポンプ21を包み込み、吐出口33に通じる吐出流路35を区画する樹脂成形体34と、吐出流路35内に配置されて、吐出口33に通じる弁体上流側に比べて大きい弁体下流側の圧力に応じて着座する弁体42を有するチェック弁41とを備える。
【選択図】図1
図1