特許第6182237号(P6182237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6182237-害虫を殺虫するための組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182237
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】害虫を殺虫するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20170807BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20170807BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20170807BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A01N25/06
   A01N37/02
   A01N31/02
   A01P7/04
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-93901(P2016-93901)
(22)【出願日】2016年5月9日
(62)【分割の表示】特願2012-129124(P2012-129124)の分割
【原出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2016-164187(P2016-164187A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 百合
(72)【発明者】
【氏名】河本 尚一
(72)【発明者】
【氏名】松原 晶
(72)【発明者】
【氏名】島 恵子
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−265221(JP,A)
【文献】 特開2010−064978(JP,A)
【文献】 特開2002−308704(JP,A)
【文献】 特開2012−046482(JP,A)
【文献】 特開2010−077033(JP,A)
【文献】 特開2010−077036(JP,A)
【文献】 特開2009−227662(JP,A)
【文献】 特開2004−168948(JP,A)
【文献】 特開2003−160418(JP,A)
【文献】 特開平05−105608(JP,A)
【文献】 特開2012−219034(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/081751(WO,A1)
【文献】 特開2012−017464(JP,A)
【文献】 特開2005−281141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを含有し、
ミリスチン酸アルキルエステルの含有量はジメチルエーテルの含有量に対して0.1〜10質量%であり、
ジメチルエーテル以外の噴射剤を含有していない、
害虫の冷却状態を持続させて当該害虫を殺虫するための組成物(石油系溶剤を含有する殺虫エアゾールを除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫の冷却状態を持続させて当該害虫を殺虫するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、害虫を駆除するに際してピレスロイド系薬剤などの有効成分を含有した殺虫剤組成物が用いられている。ところが、これら薬剤を含有する殺虫剤組成物の使用により害虫に薬剤抵抗性の発達が生じて駆除効果が低下するという問題が見られるようになったことから、新たな薬剤を有効成分とした殺虫剤組成物の開発が望まれてきた。
【0003】
このような状況の中、ピレスロイド系薬剤などに代わる有効成分について種々検討がなされており、例えば、n−ペンタンなどの害虫麻酔効果を有する化合物を含有する害虫駆除剤(例えば、下記特許文献1参照)、トリクロロトリフルオロエタンなどを有効成分としたエアゾール噴霧型捕虫剤組成物(例えば、下記特許文献2参照)、2,3−ジハイドロデカフロロペンタンを有効成分とした害虫防除剤(例えば、下記特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−120003号公報
【特許文献2】特開昭62−132803号公報
【特許文献3】特開平9−309802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献には、殺虫剤組成物がエアゾール組成物などとして害虫に噴霧されると、有効成分の冷却作用により害虫が麻痺状態(ノックダウン状態)となり一時的に動かなくなることが示されている。しかしながら、害虫が一時的に麻痺状態となっても、しばらくすると蘇生してしまうことがある。そのため、害虫を駆除するに際しては、害虫を麻痺状態に至らしめるだけでなく、完全に死滅させることが求められている。
【0006】
また、上記の特許文献1のように殺虫剤組成物がペンタンを含有する場合、殺虫剤組成物を室内や倉庫などでエアゾール組成物として大量に用いると、引火や爆発の懸念があることから、殺虫剤組成物に対しては十分な安全性を確保することも求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十分な安全性を確保しつつ、冷却作用による高い殺虫効果を有する、害虫を殺虫するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、冷却作用を増強させることにより害虫を殺虫することに着想し、特定の化合物とミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、十分な安全性を確保しつつ、害虫を冷却状態に保持する時間を持続させて更に高い殺虫効果を得ることができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の第1態様は、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを含有し、害虫の冷却状態を持続させて、当該害虫を殺虫するための組成物である。
【0010】
本発明の第1態様に係る組成物によれば、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、十分な安全性を確保しつつ、害虫に対する冷却作用を増強させることができる。このような組成物によれば、害虫の冷却状態を持続させ易くなり、従来に比べて害虫が冷却されている時間(冷却持続時間)を増長させることができるため、害虫を麻痺状態に至らしめるだけでなく完全に死滅させることができる。したがって、本発明の第1態様に係る組成物によれば、十分な安全性を確保しつつ、冷却作用による高い殺虫効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明の第2態様は、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを含有し、害虫の冷却状態を持続させて当該害虫を殺虫するための組成物である。
【0012】
本発明の第2態様に係る組成物によれば、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、十分な安全性を確保しつつ、害虫に対する冷却作用を増強させることができる。このような組成物によれば、害虫の冷却状態を持続させ易くなり、従来に比して害虫が冷却されている時間(冷却持続時間)を増長させることができるため、害虫を麻痺状態に至らしめるだけでなく完全に死滅させることができる。したがって、本発明の第2態様に係る組成物によれば、十分な安全性を確保しつつ、冷却作用による高い殺虫効果を得ることができる。
【0013】
本発明に係る組成物においてミリスチン酸アルキルエステルは、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸プロピル及びミリスチン酸イソプロピルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、害虫に対する冷却作用を更に増強させて、冷却時間の持続性を更に増長できるため、十分な安全性を確保しつつ、更に高い殺虫効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、又は、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、ジメチルエーテル又はハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとの協働作用に起因して、十分な安全性を確保しつつ、冷却作用による高い殺虫効果を有する、害虫を殺虫するための組成物を提供することができる。
また、本発明に係る組成物によれば、害虫の冷却保持時間を増長させるという新たな作用効果が発揮され、高い殺虫効果を得ることが可能となる。例えば、本発明に係る組成物を噴射距離30cm、噴射量4ml/秒で害虫に対して5秒間噴射した場合、害虫に対する組成物の供給を停止した後における害虫の−40℃以下の冷却保持時間が60秒以上である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】供試虫の体表温度の経時変化を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る組成物(害虫を殺虫するための組成物)、及び当該組成物を用いた殺虫方法について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る組成物は、害虫に対する冷却作用の増強効果を有しており、増強された冷却作用により害虫を完全に死滅させる組成物からなる。
【0018】
本実施形態に係る組成物は、有効成分として、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、ミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。例えば、第1実施形態に係る組成物は、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。第2実施形態に係る組成物は、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。なお、本実施形態に係る組成物は、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンの双方を含有していてもよい。
【0019】
ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンは、それ自体でもある程度の害虫に対する冷却作用を有しており、また、本実施形態に係る組成物において噴射剤としても作用するものである。そのため、本実施形態に係る組成物は、エアゾール組成物として噴霧して用いることが可能であり、その他の噴射剤を含有していなくてもよい。但し、本発明の効果を損なわない限り、公知の噴射剤を併用することを排除するものではない。
【0020】
ジメチルエーテルの含有量は、組成物全体を基準として10質量%以上が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。
【0021】
ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えばハイドロフルオロプロペンが挙げられ、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン等を用いることができる。これらの中でも、ミリスチン酸アルキルエステルとの協働作用に起因する冷却作用に特に優れることから、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが好ましい。
また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンとしては、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(別称「トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン」、「HFO−1234ze」)が好ましい。これにより、害虫に対する冷却作用を更に増強させて、冷却時間の持続性を更に増長できるため、十分な安全性を確保しつつ、更に高い殺虫効果を得ることができる。
【0022】
ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、組成物全体を基準として10質量%以上が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。
【0023】
ミリスチン酸アルキルエステルとしては、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸イソプロピルが好ましく、これらのうちの1種が単独で用いられてもよく、複数種が併用されてもよい。
【0024】
ミリスチン酸アルキルエステルの含有量は、組成物全体を基準として0.1質量%以上が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0025】
また、ミリスチン酸アルキルエステルの含有量は、ジメチルエーテル又はハイドロフルオロオレフィンの含有量(双方を用いる場合にはその合計量)に対して0.1質量%以上が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る組成物は、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、ミリスチン酸アルキルエステルとからなる態様であってもよい。また、本実施形態に係る組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を奏する限り、製剤化のために用いられる必要な基剤を含有してもよく、例えば、エタノール、プロパノール等の低級アルコール;グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール;直鎖、分岐又は環状のパラフィン類;灯油;水;非イオン、陰イオン又は陽イオンの界面活性剤、植物精油、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る組成物は、発明の効果を損なわない限り、必要ならば、例えば、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系殺虫剤;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系殺虫剤;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系殺虫剤;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫剤を含有していてもよいが、殺虫剤を有効成分として含有することなく害虫を死滅させることができる。
また、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素などを含有することを排除するものではない。
【0028】
本実施形態に係る組成物は、各種害虫に適用することができるが、とくにチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ等のゴキブリなどの動きが俊敏な害虫、ムカデなどの大型害虫に対してとくに有効である。
【0029】
本実施形態に係る殺虫方法では、上記組成物を害虫に接触させることにより冷却状態を持続させて完全に死滅させる。例えば、噴射装置を備えた耐圧容器に上記組成物をエアゾール組成物として加圧充填して、害虫に向かって噴射することにより組成物を害虫に接触させて害虫を駆除することができる。
【0030】
本実施形態に係る殺虫方法では、例えば、エアゾール組成物として上記組成物を噴射距離30cm、噴射量4ml/秒で害虫に向かって5秒間噴射する。この場合、害虫に対する組成物の供給を停止した後における害虫の−40℃以下の冷却保持時間は、60秒以上であることが好ましい。また、−40℃以下の冷却保持時間は、更に高い殺虫効果を得る観点から、90秒以上がより好ましい。本実施形態に係る組成物がジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、ミリスチン酸アルキルエステルとを含有することにより、これらの冷却保持時間を容易に得ることができる。なお、組成物の噴射条件は上記に限られるものではない。
【0031】
ところで、従来のエアゾール組成物を用いた場合には、害虫の冷却保持時間が充分に確保されないことが害虫を死滅させ難い一因であると考えられる。これに対し、本実施形態に係る組成物によれば、害虫の冷却保持時間が充分に確保される。この点、本実施形態に係る組成物を用いた場合には、害虫に対する組成物の供給を停止した後において、害虫の温度が一定時間低下し続けた後に徐々に増加する傾向がある。このような特異な現象が害虫の冷却保持時間が充分に確保される一因であると考えられる。
【0032】
本実施形態に係る組成物によれば、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、又は、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを併用することにより、十分な安全性を確保しつつ、害虫に対する冷却作用を増強させることができる。このような組成物によれば、害虫の冷却状態を持続させ易くなり、従来に比べて害虫の冷却保持時間を増長させることができるため、害虫を麻痺状態に至らしめるだけでなく完全に死滅させることができる。したがって、本実施形態に係る組成物によれば、十分な安全性を確保しつつ、冷却作用による高い殺虫効果を得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実験1:冷却保持時間の評価)
表1に示す成分を含有する組成物を評価用サンプルとして調製し、噴霧装置(ステム径0.6mm、アンダータップ径2.2mm、直径1.5mm×4孔の噴口を備えたボタン)を備えたエアゾール容器(300ml)に加圧充填した。
【0035】
【表1】
【0036】
以下のように冷却保持時間の評価を行った。まず、供試虫(クロゴキブリ雌成虫)1匹に麻酔を施した後に、供試虫の体表にデジタル温度計(TM−300Thermometer,ASONE社)の端子を固定した。次に、上記で得られた評価用サンプルを噴射孔から30cmの距離をおいて供試虫に5秒間(20ml)噴射した。試験は、温度20.5℃、湿度26%の環境下で行った。評価用サンプルを噴射した後の供試虫の体表温度の経時変化を測定した。結果を図1に示す。なお、図1の測定値は、2匹の供試虫の温度の平均値である。また、供試虫に対する評価用サンプルの供給を停止した時点を経過時間0秒とした。
【0037】
図1に示すように、実施例1−1、参考例1−2及び参考例1−3においては、冷却保持時間が充分に確保されていることが確認される。−40℃以下の保持時間は、実施例1−1において160秒であり、参考例1−2において120秒であり、参考例1−3において100秒である。
また、実施例1−1、参考例1−2及び参考例1−3においては、供試虫に対する評価用サンプルの供給を停止した後において、供試虫の温度が一定時間低下し続けた後に徐々に増加することが確認される。さらに、実施例1−1では、最大降下温度が特に低くなることが確認される。
一方、比較例1−1〜1−4においては、供試虫に対する評価用サンプルの供給を停止した後、すぐに温度が増加しはじめて冷却保持時間が充分に確保されておらず、−40℃以下の保持時間はいずれも50秒以下であることが確認される。
【0038】
(実験2:殺虫試験1)
表2に示す成分を含有するように、ミリスチン酸イソプロピル、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン−1−エン(HFO−1234ze)、窒素ガスを用いて評価用サンプルを調製し、噴霧装置(ステム径0.6mm、アンダータップ径2.2mm、直径1.5mm×4孔の噴口を備えたボタン)を備えたエアゾール容器(300ml)に加圧充填した。なお、比較例2−2では、ボタンが異なる噴霧装置(ステム径0.6mm、アンダータップ径2.2mm、直径0.23mm×1孔の噴口を備えたボタン)を用いた。
参考例2−1の評価用サンプルは、ミリスチン酸イソプロピル及び(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン−1−エンを含有しており、比較例2−1の評価用サンプルは、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン−1−エンのみを含有しており、比較例2−2の評価用サンプルは、ミリスチン酸イソプロピル及び窒素ガス(0.5MPaとなる量)を含有している。
【0039】
【表2】
【0040】
以下のようにして殺虫試験を行った。上記で得られた評価用サンプルを、カップ内に入れた供試虫(クロゴキブリ雌成虫)1匹に対して、噴射孔から50cmの距離をおいて1秒間噴射(4ml)した。その後、供試虫を餌と水を入れた直径45cm、高さ10cmの円筒内に入れ、温度20.5℃、湿度26%の環境下において、評価用サンプルを噴射した後の供試虫の状態(ノックダウン時間(秒)、及び、24時間後の致死率(%))を観察した。それぞれの評価用サンプルについて、同様の試験を計5回行った。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示すように、比較例2−1では、供試虫がノックダウンするものの、24時間後の致死率は0%であり、全頭が蘇生していることが確認された。また、比較例2−2では、供試虫がノックダウンせず、そのまま24時間後に生存していることが確認された。一方、上記のとおり、単独使用では殺虫効果が観察されないミリスチン酸イソプロピルと(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン−1−エンとを併用した参考例2−1では、全ての供試虫が1秒未満の間にノックダウンすると共に、24時間後において死滅していることが確認された。
【0043】
(実験3:殺虫試験2)
表4に示す成分を含有する組成物を評価用サンプルとして調製し、噴霧装置(ステム径0.5mm、アンダータップ径1.5mm、直径1.2mm×4孔の噴口をもつボタン)を備えたエアゾール容器(300ml)に加圧充填した。
【0044】
【表4】
【0045】
以下のようにして殺虫試験を行った。直径50cm、高さ10cmの円筒内に供試虫(ムカデ1頭、7〜8cm)を入れ、上記で得られた評価用サンプルを噴射孔から50cmの距離をおいて5秒間(20ml)噴射した。そして、評価用サンプルを噴射した後の供試虫の状態(ノックダウンの有無、及び、24時間後の致死率)を観察した。
試験は2回繰り返して行い、いずれも1秒未満の間にノックダウンすると共に、24時間後において死滅していることが確認された。
図1